20く562東京高裁平成20・11・17316条の20第1項棄却 主文 本件即時抗告を棄却する。 理由 本件即時抗告の趣意は,主任弁護人A,弁護人B,同C,同D共同作成の即時抗告申立書記載のとおりであるから,これを引用する。所論は,要するに,主張関連証拠であるE,F,G,H,I,J,K及びLの各取調べに関して作成された検察官の取調べメモ(手控え),取調べ小票,調書案,備忘録等の各証拠の開示命令を求める本件請求を棄却した原決定の判断は誤っているから,原決定を取り消した上,検察官に対し,上記各証拠の開示を命じる裁判を求める,というのである。 そこで,記録を調査して検討することとする。 記録によって認められる事実関係記録によれば,原決定に至る経過として,次のような事実が認められる。すなわち,(1)被告人は,要旨,E,F,G,H,Iらと共謀の上,平成19年5月7日午後9時30分ころから同日午後11時30分ころまでの間,M県N市内の会社事務所内において,Oに対し,その頭部,顔面,腹部等を多数回手拳で殴打し,足蹴にするなどの暴行を加え,よって,同人に脳挫傷等に伴う硬膜下血腫,肝臓・膵臓挫滅等の傷害を負わせ,同月8日午前3時20分ころ,同市内の病院において,上記傷害により同人を死亡させたという傷害致死の公訴事実で,同年6月15日に原審裁判所に起訴された(なお,検察官は,同年12月6日の第3回公判前整理手続期日において,被告人が上記犯行について共謀したのは,上記Eら5名のほか,J,K及びLであると釈明した。以下,これら8名を併せて「共犯者ら」という。)。 (2)さらに,被告人は,要旨,Hと共謀の上,同年5月5日午前零時30分ころから同日午前3時ころまでの間,上記会社事務所内において,Oに対し,その顔面及び両肩等を手拳で 共犯者ら」という。)。 (2)さらに,被告人は,要旨,Hと共謀の上,同年5月5日午前零時30分ころから同日午前3時ころまでの間,上記会社事務所内において,Oに対し,その顔面及び両肩等を手拳で多数回殴打するなどの暴行を加え,よって,同人に加療約2週間を要する顔面打撲及び頸椎捻挫の傷害を負わせたという傷害の公訴事実で,同年7月9日に原審裁判所に起訴され,原審裁判所は,同月11日に両事件の弁論を併合する決定をした。 (3)そして,検察官は,証明予定事実記載書等や公判前整理手続期日において,本件傷害被告事件について,前記会社の実質的経営者である被告人が,同社の経理部長であったOに対し,金員着服の疑いを抱き,そのことについて同人を追及するうちに,同人に対し,自ら暴行を加えるとともに,同社の従業員であるHに指示して暴行を加えさせた旨主張し,本件傷害致死被告事件について,被告人を共謀共同正犯として起訴した旨釈明した上,被告人が,同社の役員や従業員である共犯者らに対し,順次,黙示的あるいは明示的に,着服金の使途先等について,暴力を加えてでもOを追及するように指示し,これを受けた共犯者らが,Oに対し,公訴事実記載のとおりの暴行を加えた旨主張している。 (4)これに対し,弁護人は,予定主張記載書等や公判前整理手続期日において,本件傷害及び傷害致死被告事件のいずれについても,共犯者らとの共謀の成立等を争う旨主張し,平成20年5月16日付け証拠開示請求書にて,検察官に対し,その主張関連証拠として,共犯者らの取調べに関して作成された警察官及び検察官の取調べメモ(手控え),取調べ小票,調書案,備忘録等の開示を請求し,さらに,主張との関連性及び開示の必要性がないとして,上記各証拠の開示には応じられない旨の検察官の回答を受けて,同年7月8日に,原審裁判所 モ(手控え),取調べ小票,調書案,備忘録等の開示を請求し,さらに,主張との関連性及び開示の必要性がないとして,上記各証拠の開示には応じられない旨の検察官の回答を受けて,同年7月8日に,原審裁判所に対し,上記各証拠の開示命令を請求した。 (5)検察官は,同月17日付け意見書にて,上記請求は,上記各証拠について,主張との関連性又は必要性が認められないので,理由がない旨の意見を述べたが,同年9月1日に,上記各証拠のうち,警察官作成の取調べメモを開示した(これを受けて,弁護人は,上記請求のうち,共犯者らの取調べに関して作成された警察官の取調べメモ(手控え),取調べ小票,調書案,備忘録等の開示命令請求を取り下げた。以下,上記請求のうち,その後も維持されている部分を「本件請求」という。)。 (6)そして,検察官は,同年10月27日付け意見書にて,公判担当検察官及び捜査主任検察官が現に保管している証拠中に,検察官作成の取調べメモは存在せず,また,共犯者らを取り調べた各担当検察官に問い合わせて調査したが,同検察官らの手元にも,取調べメモは存在しないので,本件請求は理由がない旨の意見を述べた。 検討そこで,検討すると,検察官の前記1の㨯の調査結果を前提とする限り,本件請求に係る証拠は存在しないのであり,このような存在しない証拠の開示を命じることはできないから,本件請求は,理由がないといわざるを得ない。所論は,検察官に対し,検察官作成の取調べメモの廃棄の時期及び理由等について釈明を求めるべきであるとするが,本件請求に係る証拠が存在しない旨の検察官の回答は,自らの検察官としての立場,その職責の重さ等を十分に認識した上で,誠実に対処した結果なされたものであろうから,他にその回答の真実性を疑わしめるような状況が窺われない限り,信ずるに足るものである 答は,自らの検察官としての立場,その職責の重さ等を十分に認識した上で,誠実に対処した結果なされたものであろうから,他にその回答の真実性を疑わしめるような状況が窺われない限り,信ずるに足るものであるというべきである。そして,前記のとおり,弁護人からの開示請求に対し,当初はこれに全く応じていなかったのに,調査の上,警察官作成の取調べメモについては,その存在を確認して開示に応じたという検察官の応答状況等に照らすと,本件においてそのような状況は認められない。したがって,本件請求を棄却した原決定の判断は正当である。 よって,本件即時抗告は,理由がないから,刑事訴訟法426条1項により,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官・中山隆夫,裁判官・服部悟,裁判官・中島真一郎)
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