平成21(行ウ)123 上陸不許可処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年7月24日 東京地方裁判所 警察関係
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判決文本文5,325 文字)

主文 本件訴えをいずれも却下する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 大阪入国管理局関西空港支局特別審理官が原告に対して平成20年9月17日付けでした出入国管理及び難民認定法7条1項2号に掲げる上陸のための条件に適合していない旨の処分を取り消す。 大阪入国管理局関西空港支局特別審理官が原告に対して平成20年9月17日付けでした出入国管理及び難民認定法7条1項2号に掲げる上陸のための条件に適合していない旨の処分が不適法であることを確認する。 第2事案の概要本件は,ウガンダ共和国(以下「ウガンダ」という。)国籍を有する外国人である原告が,関西国際空港(以下「関西空港」という。)に到着して本邦への上陸の申請をしたところ,大阪入国管理局(以下「大阪入管」という。)関西空港支局特別審理官から出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)7条1項2号所定の上陸のための条件に適合していないとの認定を受けたことから,同認定処分の取消しと違法確認を求めている事案である。 前提事実本件において前提となる事実は,以下のとおりであり,当事者間に争いのある事実は,各末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨により認定した。 (1)原告の身分事項について 原告は,昭和▲年(▲年)▲月▲日に出生したウガンダ国籍を有する外国人である。(乙1,2)(2)原告の上陸拒否に至る経緯等ア原告は,平成20年9月17日,A航空762便で関西空港に到着し,入管法6条2項に基づき,大阪入管関西空港支局入国審査官に対し,渡航目的を「商用」,日本滞在予定期間を「68日」と記載した外国人入国記録を提出し,上陸の申請をした。同入国審査官は,同日,上陸審査を行い,原告が入管法7条1項に掲げる上陸のための条件に適合しているとは認定す 商用」,日本滞在予定期間を「68日」と記載した外国人入国記録を提出し,上陸の申請をした。同入国審査官は,同日,上陸審査を行い,原告が入管法7条1項に掲げる上陸のための条件に適合しているとは認定することができなかったことから,入管法9条5項に基づき,原告を大阪入管関西空港支局特別審理官に引き渡した。同特別審理官は,同日,入管法10条1項に基づき口頭審理を行い,原告が本邦において行おうとする活動に係る申請の内容が虚偽のものでないとは認められないとして入管法7条1項2号に掲げる上陸のための条件に適合していない旨の認定処分(以下「本件認定処分」という。)をし,入管法10条10項に基づき,原告に対し,上記理由を示して本件認定処分がされたことを通知するとともに,認定に不服があるときは同通知を受けた日から3日以内に法務大臣に対して異議を申し出ることができる旨を通知した。(甲1,乙4)イ原告は,平成20年9月19日,法務大臣に対し,入管法11条1項に基づく異議の申出をしたが,法務大臣から権限の委任を受けた大阪入国管理局長は,同月20日,上記異議の申出には理由がない旨の裁決をし,同裁決の通知を受けた大阪入管関西空港支局主任審査官は,同日,これを原告に通知し,入管法11条6項に基づき,原告に対し,本邦からの退去を 命ずるとともに,A航空に対してその旨を通知した。(甲2,3,乙5,6)ウ原告は,平成20年9月20日,関西空港からA航空317便により出国した。 (3)訴えの提起について原告は,平成21年3月17日,本件認定処分の取消しを求める訴えを提起し(請求1),同年6月24日,行政事件訴訟法7条及び民訴法143条による訴えの追加的変更として,本件認定処分が不適法であることを確認することを求める訴え(請求2)を提起した。(当裁判所に顕著な事 起し(請求1),同年6月24日,行政事件訴訟法7条及び民訴法143条による訴えの追加的変更として,本件認定処分が不適法であることを確認することを求める訴え(請求2)を提起した。(当裁判所に顕著な事実) 争点 (1)訴えの利益の有無(2)本件認定処分の適法性 争点に関する当事者の主張の概要(1)争点(1)(訴えの利益の有無)について(原告の主張)ア本件認定処分の理由によっては,原告が今後の上陸申請においても同様の理由により上陸のための条件に適合していない旨の認定を受けることになるから,原告には,本邦を出国した後も本件認定処分の正当性を争う利益がある。 イ上陸申請をした外国人が上陸のための条件に適合していない旨の認定を受けた後に本邦から出国したときは上記認定処分の取消し又は違法確認を求める訴えの利益が失われるとすると,上記認定処分を訴訟で争うことが ほとんど不可能となり,当該外国人の裁判を受ける権利を侵害する結果となる。 (被告の主張)入管法の上陸の手続に関する諸規定に照らすと,入管法は,上陸の申請に対して上陸のための条件に適合しているか否かの認定を受けるためには,当該外国人の身柄が入国審査官や特別審理官の下にあり,旅券に上陸許可の証印を受け,又は特別審理官から通知を受けることができる状態にあることを要するものとしているというべきである。そうすると,当該外国人が本邦から出国した場合には,もはや当該外国人の身柄は入国審査官や特別審理官の下にないばかりか,その旅券に上陸許可の証印を受け,又は特別審理官から通知を受ける余地がなくなる。そうすると,上陸の申請をした外国人が上陸のための条件に適合していない旨の認定を受けた後に本邦から出国したときは,もはや当該上陸の申請に対して新たな判断を受けて上陸許可の証印を受ける可能性 くなる。そうすると,上陸の申請をした外国人が上陸のための条件に適合していない旨の認定を受けた後に本邦から出国したときは,もはや当該上陸の申請に対して新たな判断を受けて上陸許可の証印を受ける可能性はないから,上記認定処分の取消し又は違法確認を求める訴えの利益は失われるというべきである。 そして,原告は,本件認定処分を受けた後,大阪入管関西空港支局主任審査官から退去命令を受けて平成20年9月20日に本邦から出国しているから,原告には本件認定処分の取消し又は違法確認を求める訴えの利益はない。 (2)争点(2)(本件認定処分の適法性)について(原告の主張)原告は,本邦において行おうとする活動につき虚偽の事実を述べたことはないから,本件認定処分には理由がない。 (被告の主張)争う。 第3争点に対する判断 争点(1)(訴えの利益の有無)について(1)入管法は,本邦に上陸しようとする外国人は,上陸しようとする出入国港において入国審査官に対し上陸の申請をして上陸のための審査を受けなければならず(入管法6条2項),入国審査官は,当該外国人が入管法7条1項に規定する上陸のための条件に適合しているかどうかを審査して(同項),これに適合していると認定したときは,当該外国人の旅券に上陸許可の証印をしなければならないとする一方,上記条件に適合していると認定しないときは,口頭審理を行うため,当該外国人を特別審理官に引き渡さなければならないとし(入管法9条1項,5項),特別審査官において速やかに口頭審理を行い,当該外国人が入管法7条1項に規定する上陸のための条件に適合しているかどうかを認定するものとし,適合していると認定したときは,直ちにその者の旅券に上陸許可の証印をしなければならないとする一方,適合していないと認定したときは,その者に対し,速やか 条件に適合しているかどうかを認定するものとし,適合していると認定したときは,直ちにその者の旅券に上陸許可の証印をしなければならないとする一方,適合していないと認定したときは,その者に対し,速やかに理由を示してその旨を知らせなければならないとする(入管法10条1項,8項及び10項)など,上陸審査手続においては,上陸の申請をした外国人が上陸しようとする出入国港又は仮上陸許可(入管法13条1項)において定められた場所にとどまっていることを前提とする規定を置いている。他方,入管法には,上陸審査手続中に本邦から出国した外国人について当該手続を更に進めるべきことを定めた規定は見当たらない。このような入管法上の上陸審査に関する規 定に照らすと,入管法は,上陸の申請をした外国人は,上陸審査手続中,本邦にいることを要するものとしていると解するのが相当である。 また,本邦に在留する外国人が,再入国の許可を得ないまま,いったん本邦から出国したときは,その有する在留資格及び在留期間が消滅する結果,再び本邦に入国する場合には,入国に先立って所要の査証を取得し,上陸審査を受ける必要があるとされるのであるから,これとの均衡上も,上陸審査手続中に本邦から出国した外国人が再び本邦に上陸する場合には,改めて上陸審査を受ける必要があると解するのが合理的である。 以上の諸点に照らすと,上陸の申請をした外国人が特別審理官から上陸のための条件に適合しない旨の認定を受けた後本邦から出国した場合において,当該外国人が再び本邦に上陸しようとするときは,改めて上陸審査を受けなければならず,仮に,上記認定処分が取り消され,又はその不適法であることが確認されたとしても,もはや当初の上陸申請に基づく上陸許可がされる余地はないというべきである。 (2)これを本件についてみるに,前記前提事 仮に,上記認定処分が取り消され,又はその不適法であることが確認されたとしても,もはや当初の上陸申請に基づく上陸許可がされる余地はないというべきである。 (2)これを本件についてみるに,前記前提事実によれば,原告は,本件認定処分を受けた後本邦から出国していることが認められるのであるから,仮に,本件認定処分を取り消し,又はその不適法であることを確認する判決がされたとしても,当初の上陸申請に基づく上陸許可がされる余地はない。したがって,本件訴えは,いずれも原告が本邦から出国したことにより訴えの利益を欠くに至ったものというほかない。 (3)原告は,本件認定処分の理由の内容によっては,今後の上陸申請においても同様の理由で上陸のための条件に適合しない旨の認定を受けることにな るから,原告には本邦から出国した後も本件認定処分の正当性を争う利益が存すると主張する。 しかし,原告が今後本邦への上陸申請をした際に本件認定処分を理由に原告を不利益に取り扱い得ることを認めた法令の規定は見当たらないから,原告が主張する本件認定処分による不利益は,原告が今後本邦への上陸申請をした際に本件認定処分の存在又はその理由とするところが考慮されるおそれがあるという事実上のものにすぎず,本件認定処分により当然かつ直接的に招来されるものということはできないのであって,このような不利益をもって本件訴えにつき訴えの利益が存在することの根拠とすることはできないというべきである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (4)また,原告は,本邦を出国したことにより本件訴えの訴えの利益が失われるとすると,上陸のための条件に適合しない旨の認定を訴訟で争うことがほとんど不可能となり,裁判を受ける権利を侵害する結果になると主張する。 しかし,憲法32条は,訴訟の当事者が訴訟 訴えの利益が失われるとすると,上陸のための条件に適合しない旨の認定を訴訟で争うことがほとんど不可能となり,裁判を受ける権利を侵害する結果になると主張する。 しかし,憲法32条は,訴訟の当事者が訴訟の目的たる権利関係につき裁判所の判断を求める法律上の利益を有することを前提として,かかる訴訟につき本案の裁判を受ける権利を保障したものであって,そのような利益の有無にかかわらず,常に本案につき裁判を受ける権利を保障したものではないから(最高裁昭和32年(オ)第195号同35年12月7日大法廷判決・民集14巻13号2964頁参照),原告が本邦から出国したことにより訴えの利益が失われたとして本案の裁判がされないことをもって直ちに裁判を受ける権利が侵害されたということはできない。また,実質的にみても,原告は,本件認定処分又は退去強制令書(入管法24条5号の2)の執行につ いて執行停止の申立てをすることにより本邦にとどまった状態で本件認定処分を争うこともできたのに,このような手段を執ることなく自ら本邦から出国したのであるから,本邦からの出国により訴えの利益が失われたとして本件訴えにつき本案の裁判がされないことが不当であるということはできない。 したがって,原告の上記主張も採用することができない。 以上によれば,本件訴えはいずれも不適法な訴えであるからこれらを却下することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官杉原則彦裁判官品田幸男裁判官角谷昌毅 谷昌毅

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