主 文 1 原告A,同B及び同Cを除くその余の原告らの関係において,本件主位的請求に係る訴え及び本件予備的請求に係る訴えをいずれも却下する。 2 原告Aと被告らとの間の訴訟は平成25年3月5日同原告の死亡により,原告Bと被告らとの間の訴訟は平成26年2月18日同原告の死亡により,原告Cと被告らとの間の訴訟は平成24年5月3日同原告の死亡により,いずれも終了した。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判【被告広島県に対する訴え】 1 請求の趣旨(主位的請求)広島県知事が被告府中市に対して平成24年3月9日付けでした地方独立行政法人府中市病院機構設立認可処分を取り消す。 (予備的請求)広島県知事は,地方独立行政法人府中市病院機構に対し,地方独立行政法人法89条4項に基づき,府中市a 町,三次市b 町,及びc 町に居住する住民に必要な医療提供体制を持続的に確保するために必要な措置をとるべきことを命ぜよ。 2 本案前の答弁本件主位的請求に係る訴え及び本件予備的請求に係る訴えをいずれも却下する。 3 請求の趣旨に対する答弁 原告らの主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。 【被告府中市に対する訴え】 1 請求の趣旨(主位的請求)被告府中市が地方独立行政法人府中市病院機構の設立に伴う関係条例の整備に関する条例(平成23年府中市条例第33号)の制定をもってした府中市立甲病院を廃止する旨の処分を取り消す。 (予備的請求)府中市長は,地方独立行政法人府中市病院機構に対し,地方独立行政法人法89条1項に基づき,府中市a 町,三次市b 町,及びc町に居住する住民に必要な医療提供体制を を取り消す。 (予備的請求)府中市長は,地方独立行政法人府中市病院機構に対し,地方独立行政法人法89条1項に基づき,府中市a 町,三次市b 町,及びc町に居住する住民に必要な医療提供体制を持続的に確保するために必要な措置をとるべきことを命ぜよ。 2 本案前の答弁本件主位的請求に係る訴え及び本件予備的請求に係る訴えをいずれも却下する。 3 請求の趣旨に対する答弁原告らの主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要本件は,府中市a 町,三次市b 町又はc 町に居住する原告らが,府中市立甲病院(以下「本件病院」という。)が平成24年4月1日に後記経緯で廃止されたことに関連して,被告広島県に対し,主位的に,広島県知事が地方独立行政法人法7条に基づいてした地方独立行政法人府中市病院機構(以下「本件病院機構」という。)設立の認可(以下「本件認可」という。)の取消しを,予備的に,同法89条4項に基づき本件病院機構に対して必要な措置をとるべきことを命ずることを広島県知事に対して義務付けることを求め,被 告府中市に対し,主位的に被告府中市が,地方独立行政法人府中市病院機構の設立に伴う関係条例の整備に関する条例(平成23年府中市条例第33号,以下「本件整備条例」という。)の制定をもってした本件病院の廃止が処分であるとして,その主張に係る処分(以下「本件整備条例制定行為」という。)の取消しを求め,予備的に,同法89条1項に基づき本件病院機構に対して必要な措置をとるべきことを命ずることを府中市長に対して義務付けることを求める事案である。 1 関連法令 地方独立行政法人法(平成25年法律第44号による改正前のもの)2条この法律において「地方独立行政法人」とは,住民の生活, て義務付けることを求める事案である。 1 関連法令 地方独立行政法人法(平成25年法律第44号による改正前のもの)2条この法律において「地方独立行政法人」とは,住民の生活,地域社会及び地域経済の安定等の公共上の見地からその地域において確実に実施されることが必要な事務及び事業であって,地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち,民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるものと地方公共団体が認めるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として,この法律の定めるところにより地方公共団体が設立する法人をいう。 7条地方公共団体は,地方独立行政法人を設立しようとするときは,その議会の議決を経て定款を定め,都道府県(都道府県の加入する一部事務組合又は広域連合を含む。以下この条において同じ。)又は都道府県及び都道府県以外の地方公共団体が設立しようとする場合にあっては総務大臣,その他の場合にあっ ては都道府県知事の認可を受けなければならない。 89条1項設立団体の長は,地方独立行政法人又はその役員若しくは職員の行為がこの法律,他の法令若しくは設立団体の条例若しくは規則に違反し,又は違反するおそれがあると認めるときは,当該地方独立行政法人に対し,当該行為の是正のため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。 2項及び3項(省略)4項総務大臣又は都道府県知事は,前項の規定によるほか,地方独立行政法人又はその役員若しくは職員の行為がこの法律若しくは他の法令に違反し,又は違反するおそれがあると認める場合において,緊急を要するときその他特に必要があると認めるときは,自ら当該地方独立行政法人に対し,当該行為の是正のため必要な措置 の法律若しくは他の法令に違反し,又は違反するおそれがあると認める場合において,緊急を要するときその他特に必要があると認めるときは,自ら当該地方独立行政法人に対し,当該行為の是正のため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。 地方独立行政法人府中市病院機構の設立に伴う関係条例の整備に関する条例(本件整備条例)7条府中市病院事業の設置及び管理等に関する条例(平成15年府中市条例第79号)の一部を次のように改正する。 (中略)別表第1府中市立甲病院の項を削る。 別表第5府中市立甲病院の項を削る。 別表第6府中市立甲病院の欄を削る。 附則 この条例は,地方独立行政法人府中市病院機構の成立の日から施行する。(ただし書以下略) 府中市病院事業の設置及び管理に関する条例(平成15年府中市条例第79号)(平成23年府中市条例第33号による改正前のもの。以下「本件設置条例」という。)1条1項国民健康保険法(昭和33年法律第192号)第82条の規定により,府中市病院事業(以下「病院事業」という。)を設置する。 2項ないし3項(省略)2条1項(省略)2項病院事業において設ける病院は,別表第1のとおりとする。 3項(省略)3条1項この病院は,次に掲げる事項を達成することを任務とする。 国民健康保険その他各種社会保険の主旨に基づき模範的な診療を行うとともに無医地区解消対策に協力し,国民健康保険事業を円滑に実施すること。 疾病の予防並びに療養及び介護サービスの給付の一体的運営を図り,住民の健康保持増進に寄与し,保険財政の合理化に貢献すること。 事業を円滑に実施すること。 疾病の予防並びに療養及び介護サービスの給付の一体的運営を図り,住民の健康保持増進に寄与し,保険財政の合理化に貢献すること。 2項ないし3項(省略) 別表第1ないし別表第6別紙本件設置条例別表部分のとおり 府中市の地域医療を守り育てる基本条例(平成22年府中市条例第26号,以下「本件基本条例」という。)前文地域医療は,地域住民に必要な医療に対応した身近な医療提供体制であり,私たち市民が安心して暮らすために欠かすことのできないものである。地域医療に関わるすべての関係者が,地域医療が抱える課題を正しく認識し,それぞれの立場で課題の解決に取り組まなければ,地域医療は守ることができない。府中地域が,私たちと私たちの将来の世代にとって安心して暮らすことができる地域であるよう,市,医療機関,医療従事者及び市民が一致協力し地域医療を守り育てるため,この条例を制定する。 1条この条例は,本市の地域医療を守り育てるための基本理念を定めるとともに,市,医療機関,医療従事者及び市民がそれぞれ果たすべき責務及び役割について定めることにより,将来にわたって市民が安心して医療を受けることができる体制を確保することを目的とする。 2条1項地域医療は,市民の健康と生命を守るかけがえのないものであるため,地域に必要な医療提供体制は将来にわたって持続的に確保されなければならない。 2項地域医療は,市民をはじめ,関係者の理解と協力により切 れ目なく確実に提供されなければならない。 3条1項市は,基本理念に基づき,社会状況の変化に的確に対 医療は,市民をはじめ,関係者の理解と協力により切 れ目なく確実に提供されなければならない。 3条1項市は,基本理念に基づき,社会状況の変化に的確に対応し,市民が安心して暮らすことができる地域医療提供体制を構築しなければならない。 2項市は,基本理念に基づき,医療機関及び医療関係者が切れ目のない連携ができるよう必要な施策を講じなければならない。 3項市は,国及び広島県並びに関係機関と連携して,基本理念に沿った政策を推進しなければならない。 2 前提事実(当事者間に争いがないか又は弁論の全趣旨及び後掲の各証拠により容易に認められる事実) 原告A,同B及び同Cを除く原告らは,府中市a 町(平成16年4月1日編入前のb 郡a 町),三次市b 町(平成16年4月1日合併前のb 郡b 町),又はc 町(平成11年11月5日合併前のe 郡d 町,e 町,f 町及びg 村)に居住する者である。なお原告Aは平成25年3月5日に,同Bは平成26年2月18日に,同Cは平成24年5月3日にそれぞれ死亡した。 本件病院について本件病院は,旧広島県b郡a 町が管理運営する「国民健康保険a 病院」として,昭和18年4月に同町に開設された病院である。 上記a 町は,平成16年4月1日,被告府中市に編入されたため,それ以降,本件病院の事業は被告府中市がその管理運営を行い, 名称も「府中市立甲病院」に改められた(なお本件病院は,被告府中市とは別の法人格を有しないが,地方公営企業法17条の2第2項の適用により,原則として被告府中市の一般会計とは切り離され,企業会計原則に基づく独立採算制が採られている地方公営企業で 院は,被告府中市とは別の法人格を有しないが,地方公営企業法17条の2第2項の適用により,原則として被告府中市の一般会計とは切り離され,企業会計原則に基づく独立採算制が採られている地方公営企業である。)。 その後,後記のとおり,平成24年4月1日に本件病院機構が設立されたことに伴う本件整備条例の施行により本件病院は廃止され,本件病院として営まれていた病院事業は本件病院機構が設置して管理運営する「甲病院」(以下「本件新病院」という。)に承継された。 本件病院の廃止に至る事実経過等ア被告府中市は,平成24年4月に本件病院と広島県厚生農業協同組合連合会府中総合病院(以下「府中総合病院」という。)を経営統合し,地方独立行政法人に経営形態を変更することを内容とする府中市地域医療再生計画(以下「本件再生計画」という。)を策定し,平成23年3月2日に同計画を発表した(甲4)。 イ被告府中市は,本件再生計画に従い,平成24年2月29日,広島県知事に対し,地方独立行政法人府中市病院機構(本件病院機構)の設立認可申請をした。 なお,上記申請の添付図書には,平成24年4月1日を目途に,府中市立病院としての本件病院を廃止し,その病院事業を,本件病院機構が新たに設立する本件新病院に承継させること,この本件新病院においては,病床数が110床から70床へ減じられ,また,常勤の外科医を置かず,これにより常勤医数が5名から4名に減じられる旨の計画が記載されている(甲5)。 ウ上記設立認可申請を受け,広島県知事は,平成24年3月9日,被告府中市に対し,地方独立行政法人府中市病院機構(本件病院機構)の設立認可をした。 エ平成24年4月1日,本件病院機構が設立され(丙3),また,同日,本件整備条例が同条例の 4年3月9日,被告府中市に対し,地方独立行政法人府中市病院機構(本件病院機構)の設立認可をした。 エ平成24年4月1日,本件病院機構が設立され(丙3),また,同日,本件整備条例が同条例の附則に従い施行されて,本件病院は廃止され,被告府中市が本件病院を設けて営んでいた病院事業は,本件新病院に承継された。また,府中総合病院の病院事業は,本件病院機構が運営する乙病院(以下「乙病院」という。)に承継された。 原告らの訴訟提起原告らは,平成24年3月30日,広島地方裁判所に本件訴訟を提起した(なお,訴訟提起時の被告府中市に対する主位的請求に係る訴えは府中市長に対する本件病院を廃止してはならない旨の義務付けの訴えであったが,同年4月1日に本件整備条例が施行されて本件病院が廃止されたため,同年7月20日,その部分は,本件整備条例制定行為の取消しの訴えに変更された。)。 3 争点 本案前の争点【被告広島県に対する訴えにつき】ア本件認可の取消しの訴え(主位的請求に係る訴え)の適法性 本件認可は処分に当たるか。 原告らは本件認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するか。 本件認可を取り消す利益があるか。 イ地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付けの訴え(予備的請求に係る訴え) の適法性 地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることが「一定の処分」といえるか。 「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」があるか。 「その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」に当たるか。 原告らが地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずる ことにより重大な損害を生ずるおそれ」があるか。 「その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」に当たるか。 原告らが地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付けを求めるにつき法律上の利益を有するか。 【被告府中市に対する訴えにつき】ア本件整備条例制定行為の取消しの訴え(主位的請求に係る訴え)の適法性 本件整備条例制定行為は処分に当たるか。 原告らは本件整備条例制定行為の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するか。 イ地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付けの訴え(予備的請求に係る訴え)の適法性地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置を執るべきことを命ずることが「一定の処分」といえるか。 「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」があるか。 「その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」に当たるか。 原告らが地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措 置をとるべきことを命ずることの義務付けを求めるにつき法律上の利益を有するか。 地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付けを求める利益があるか。 本案の争点【被告広島県に対する請求につき】ア本件認可に裁量権の逸脱,濫用があるか(主位的請求につき)。 イ地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命じないことが裁量権の逸脱,濫用となるか(予備的請求につき)【被告府中市に対する請求につき】ア本件整備条例制定行為に裁量権の逸脱,濫用があるか(主位的請求につき)。 イ地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命 求につき)【被告府中市に対する請求につき】ア本件整備条例制定行為に裁量権の逸脱,濫用があるか(主位的請求につき)。 イ地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命じないことが裁量権の逸脱,濫用となるか(予備的請求につき)。 4 争点に関する当事者の主張 本案前の争点に関する当事者の主張【被告広島県に対する訴えにつき】ア本件認可の取消しの訴えについて本件認可は処分に当たるか。 (原告らの主張)原告ら本件病院の医療圏に居住する者らは,医師法(19条1項),医療法(1条,1条の2第2項,1条の3)の規定に鑑み,自らが診療を受ける医療機関を選択すること,又は選択した医療機関において診療を受け,診療を継続的に受 けるという権利又は利益を有する。 本件認可は,本件整備条例制定行為と相まって,平成24年4月1日付けで本件病院を廃止するとともに,本件病院機構の運営する本件新病院において,本件病院よりも病床数及び常勤医数を減じられて,本件病院の事業を行うものである。 これにより,本件新病院では,入院を必要とする相当数の患者の受入れや外科手術の実施が困難となるほか,人工透析の管理体制も不十分となり,受入困難な救急患者が相当数生じることになる(現に,本件病院が廃止された平成24年4月1日以降,心肺停止状態の救急患者が本件新病院に搬送してもらえず公立丙病院に搬送された事態が複数件生じている。)。 したがって,本件認可は,原告らの上記の権利又は利益を侵害するものであるから,行政庁の処分というべきである。 (被告広島県の主張)本件認可は,行政の内部行為(行政庁相互間の行為)であって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではないから,処分には当た 庁の処分というべきである。 (被告広島県の主張)本件認可は,行政の内部行為(行政庁相互間の行為)であって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではないから,処分には当たらない。 原告らは本件認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するか。 (原告らの主張)わが国では,全国民が何らかの医療保険に加入することが義務付けられ,その代償として医療保険の適用を受けることができるという国民皆保険制度によって,国民が健康で文化的な生活を営むための医療保障が実現されてきた。 そして,市町村は国民健康保険の保険者として,保険給付を行う義務を課されており(国民健康保険法2条,3条1項), この保険給付のうち,「療養の給付」(同法36条)については,原則として現物の給付を行わなければならないから,その前提となる医師及び医療提供施設の存在が必要不可欠である。 そこで,療養の給付を行うために,厚生労働大臣から指定を受けた保険医療機関が保険診療を行っているが,へき地医療,救急医療,高度先進医療などにおいては,民間の保険医療機関だけでは不十分であるため,国民健康保険法82条は,市町村が保険者として設置・運営する病院において療養の給付がされることを義務付けている。 本件病院は同条を受けて療養の給付を行うために設置された病院であり,単に住民の福祉を増進する目的で設置したにすぎない公立病院とは異なる。また,医師法,医療法の規定に鑑みれば,原告ら本件病院の医療圏に居住する者らは,自らが診療を受ける医療機関を選択すること,又は選択した医療機関において診療を受け,診療を継続的に受けることについて法的に保護されるべき地位を有する。さらに,地方独立行政法人法の趣旨目的は,地域住民に対し,医療を受ける権利をより ること,又は選択した医療機関において診療を受け,診療を継続的に受けることについて法的に保護されるべき地位を有する。さらに,地方独立行政法人法の趣旨目的は,地域住民に対し,医療を受ける権利をより手厚く保障することあるから,都道府県知事が同法7条の認可をするに当たり,地域住民の医療を受ける権利が侵害される場合には,当該認可の取消しにつき,当該地域住民に法律上の利益が認められる。 (被告広島県の主張)地方独立行政法人法7条に基づく認可において考慮されるべき利益は,永続的な事業を営むための財政基盤の確保,適切な執行体制の確保(迅速で効率的な経営体制)である。同 法に違反してなされた同条に基づく認可によって侵害される利益は,十分な財政基盤がないまま地方独立行政法人が設立され,事業実施が不可能となること,適切な執行体制が確保されず非効率な経営がなされることなどであり,原告らが主張する地域医療が崩壊し住民の生命に危機が生ずるおそれは,法律上の利益とはいえない。また,原告らは,本件病院の周辺住民という病院の一般利用者にすぎない。 したがって,原告らには原告適格はない。 本件認可を取り消す利益があるか。 (原告らの主張)訴えの利益を欠く旨の被告広島県の主張は争う。 (被告広島県の主張)地方独立行政法人法の認可は,それを受けなければ設立をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないから,法人の設立が完了した場合,同認可の取消しを求める訴えの利益は失われている。 イ地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付けの訴えの適法性について地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることが「 イ地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付けの訴えの適法性について地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることが「一定の処分」といえるか。 (原告らの主張)① 義務付け訴訟は,取消訴訟とは異なり,行政行為の公定力を排除するための訴訟手続ではないから,義務付けの対象となる「一定の処分」に処分性は要求されない。 また,原告らは,地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることによって,地域 住民の権利(法益又は法的地位)の救済を図るよう求めているから,本件で原告らが義務付けを求める同法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることは,「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが,法律上認められている」処分というべきものである。 ② さらに,原告らは,平成24年4月1日以降の,本件病院機構による本件新病院の運営において,地域住民の医療を受ける権利(法的利益又は法的地位)を侵害し,地域住民の生命・身体の安全を害する違法な運営がなされているため,この違法な運営に対し,同法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることを請求しているから,一定の処分としてその対象が特定されている。 (被告広島県の主張)地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることは処分には当たらない。また,原告らが求める同措置は,その処分の内容が個別的具体的に特定されていない。 したがって,予備的請求に係る義務付けの訴えは不適法である。 「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」があるか。 (原告らの主張) 定されていない。 したがって,予備的請求に係る義務付けの訴えは不適法である。 「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」があるか。 (原告らの主張)原告らは,本件病院の医療圏内に居住し,現に又は将来的に本件病院を利用するものであるところ,現在,本件病院の事業を承継した本件新病院においては,入院を必要とする患者の受入れが困難となるなどの事態が生じている。そのため, 原告らに本件新病院において適切な治療を受けることができず,病状の重篤化や死亡といった重大な結果が生じるおそれがある。また,本件新病院での治療を断念し,より適切な治療が可能となる地域への移転を余儀なくされるなど,日常生活の基盤を揺るがすような損害が生じかねない。これらの損害は,事後的な金銭賠償により容易に救済を受けることができるものではないから,原告らには重大な損害が生ずるおそれがある(被告広島県の主張)地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命じられなくても,原告らには重大な損害は生じない。 「その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」に当たるか。 (原告らの主張)「その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」とは,法律上の利益を共通にする原告を含めた全員の法律上の利益の侵害という損害を避けるために他に適当な方法がない場合と解すべきである。本件においては,原告らが個別の訴訟手続で,自己の生命,身体の安全に対する危険を除去できたとしても,その判決は訴訟当事者間でしかその効力はないから,本件新病院の運営が是正されるわけではない。しかも,いつ入通院や手術を要するか予見することはほとんど不可能であるから,個々の住民らに各々 としても,その判決は訴訟当事者間でしかその効力はないから,本件新病院の運営が是正されるわけではない。しかも,いつ入通院や手術を要するか予見することはほとんど不可能であるから,個々の住民らに各々の生命,身体の安全に対する危険を除去するための訴訟提起を期待することはできない。さらに,今後,本件病院機構が本件新病院の医療供給体制を本 件病院と同程度の状態に是正することは期待できないし,広島県知事において,地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを自発的に命ずる可能性はない。 したがって,被告広島県に対する義務付け訴訟によって,広島県知事が同法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることを請求する以外には,原告らを含め多数の住民の生命,身体の安全が脅かされている状況を解消するため他に適当な方法はない。 (被告広島県の主張)「その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」に当たるとの原告の主張については争う。 原告らが地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることを求めるにつき法律上の利益を有するか。 (原告らの主張)地方独立行政法人法が病院事業を地方独立行政法人の対象業務に含めた究極的な目的は,地域住民に対し,医療を受ける権利をより手厚く保障することにあるから,同法89条1項,同条4項は,地域住民自身の医療を受ける権利を個人的利益として保護すべき趣旨と解される。そして,本件新病院では,入院を必要とする患者の受入拒否などの地域住民の生命,身体の安全を脅かすような病院運営がされているから,地域住民であれば,原告適格を有する。 (被告広島県の主張)原告らは,地方独立行政法人法89条4項に などの地域住民の生命,身体の安全を脅かすような病院運営がされているから,地域住民であれば,原告適格を有する。 (被告広島県の主張)原告らは,地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付け訴訟を提起す る原告適格を有しない。 【被告府中市に対する訴えにつき】ア本件整備条例制定行為の取消しの訴えの適法性本件整備条例制定行為は処分に当たるか。 (原告らの主張)①主張)のとおり,本件整備条例制定行為は原告らの権利,利益を侵害するものである② 原告らの上記権利又は利益が反射的利益にとどまらないことa 医療機関には,医師と同様の診療義務(医師法19条1項)が課せられていると解すべきであるところ,同条同項の文言は,不特定多数の患者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,個々の患者の個別的利益を保護すべきものとする趣旨も含むことは明らかである。 b ところで,医師法19条1項における診療拒否が認められる「正当な事由」については,原則として医師の不在又は病気等により事実上診療が不可能である場合を指すが,診療を求める患者の病状,診療を求められた医師又は病院の人的・物的能力,代替医療施設の存否等の具体的事情によっては,ベッドの満床も正当事由に当たるとされている。 そうすると,高齢者に対する医療需要が高い一方で,医療過疎が進んだ地域において,中核病院の医療機能(病院の人的資源や病床数を含む物的能力)の縮小・低減は, 診療拒否の理由たり得る正当事由の拡大を意味するから,医師法19条1項により法的に保護されるべき地域住民の権利ないし利益の範囲を制約するものといえ 病床数を含む物的能力)の縮小・低減は, 診療拒否の理由たり得る正当事由の拡大を意味するから,医師法19条1項により法的に保護されるべき地域住民の権利ないし利益の範囲を制約するものといえる。 c さらに,一般に,公立の病院(ないし診療所)は,医療水準の向上や民間医療機関の進出が期待できない地域における医療の充実等の必要性から設置されているが,本件病院は,それらの事情にとどまらず,国民健康保険の実施義務者である被告府中市(保険者)が,へき地においても療養の給付をするために,国民健康保険法82条に基づいて設立・運営してきた病院であるから,一般の公立病院とはその性質を異にするのである(本件設置条例1条1項,同3条1項1号,同4条参照)。国民皆保険制度の下で,国民健康保険の被保険者が指定保険医療機関である病院を利用することは,事実上の利益(反射的利益)を受けているにとどまるものではない。 d 以上から,原告らを含む本件病院周辺住民が,単に,本件病院から事実上の利益(反射的利益)を受け得る立場にあるにすぎない旨の被告府中市の主張は失当である。 ③ 構築された「身近な医療提供体制」を弱体化させ,あるいは崩壊させるような行為は,住民の身近な医療を受ける権利・利益を侵害するものであること住民にとっては,現在の居住地・生活地における病院・診療所などの設置・配置の状況のなかで,それぞれの居住環境,生活や身体・健康の状況などからみて病院・診療所などを現実に選択し得ることが重要である。本件病院は中核病院として位置づけられ,複数の診療科,入院病床を有し,救急医療 にも対応できる,旧b 郡三町(a 町,b 町,h 町)における唯一の病院であり,本件病院が存在することによって病院・診療所を適切に選択できた者 ,複数の診療科,入院病床を有し,救急医療 にも対応できる,旧b 郡三町(a 町,b 町,h 町)における唯一の病院であり,本件病院が存在することによって病院・診療所を適切に選択できた者は多数いるはずである。それらの者は,病院・診療所などを選択する権利・利益を現実的に享受していたのであるから,本件病院が廃止されることにより,この権利・利益を侵害される結果になったことは明らかである。 ④ 一般的抽象的規範だから処分性は認められないとの主張に対する反論本件病院は,旧b 郡三町(a 町,b 町,h 町)内の唯一の救急指定病院かつ中核病院であり,他の中核病院(府中総合病院,c 町立病院,丙病院)とも地理的に隔絶しており,周辺地域を含めても医療資源(医療機関・医師等)に極めて乏しいことに加えて,本件病院の医療圏域が,現在も,将来も,高齢者に対する医療需要の程度が非常に高い地域である上,中山間地域でもあり,公共交通機関による移動も限定されているから,原告らの社会生活上において,同病院に代替し得る医療機関は皆無に等しい。 かかる客観的な状況に照らせば,原告ら本件病院の周辺地域住民らには,本件病院での診療を受け得ることについて直接の利害関係があることは明らかであり,同人らは,診療拒否をする正当な理由のない限り,本件病院において診療を受ける具体的な権利又は法的利益を有するというべきである。 そして,本件認可及び本件整備条例の施行により,行政庁の他の処分を待つまでもなく,平成24年4月1日付けで本件病院は廃止され,同病院の事業は,本件病院機構の運営す る本件新病院において病床数及び常勤医数が減じられた状態で行われている。 病床数及び常勤医数(具体的には外科医1名)が減 廃止され,同病院の事業は,本件病院機構の運営す る本件新病院において病床数及び常勤医数が減じられた状態で行われている。 病床数及び常勤医数(具体的には外科医1名)が減じられた結果,本件病院の周辺地域の住民らには,患者の受入拒否等の現実的な不利益が数多生じていることは上記のとおりであり,これにより,原告らの上記権利ないし法的利益が制約される。 そして,本件認可及び本件整備条例の施行により上記のような不利益を受けているのは,本件病院の周辺地域住民という限られた特定の者らだけである。 また,少なくとも本件病院の周辺地域住民らのうち,被告府中市の行う国民健康保険の被保険者というさらに限られた者については,国民健康保険法上保護されるべき療養の給付を受ける権利又は利益が制約される。 したがって,本件整備条例制定行為が一般的抽象的規範であり,処分性は認められないとの被告府中市の主張は失当である。 ⑤ 以上より,本件整備条例制定行為は,行政庁の他の処分を待つまでもなく,原告ら本件病院の周辺地域住民らの個別・具体的な権利義務又は法的利益に直接に影響を及ぼすものであるから,抗告訴訟の対象となる処分に該当する。 (被告府中市の主張)① 本件整備条例制定行為は,一般的抽象的法規範の制定行為であり,仮に原告らの主張する利益の制限があるとしても,それは法令による制限と同じであるから,直接,原告らの権利義務を形成し,又は,その範囲を確定するもので はなく,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たらない。 そもそも,公の施設の利用者の地位は,当該施設が公の用に供された結果として設定される事実上の利益にすぎず,これを権利又は法的利益 「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たらない。 そもそも,公の施設の利用者の地位は,当該施設が公の用に供された結果として設定される事実上の利益にすぎず,これを権利又は法的利益と構成することはできない。 本件設置条例をみても,本件病院の設置は,住民の健康保持に寄与し保険財政の合理化に貢献するという公益の達成を目的としたものであり(本件設置条例3条2号),本件病院の周辺住民の権利義務に関する規定を置いてはいないから,本件病院の設置によって,本件病院の周辺住民が本件病院の利用に関して何らかの権利又は法的利益を付与されていたものではない。 したがって,原告らを含む本件病院の周辺住民は,単に本件病院という営造物の利用を事実上期待しうる地位を有するだけで,その受ける利益は反射的利益にすぎない。 ② 原告らは,憲法25条,医療法1条の2,1条の3及び本件基本条例1条ないし3条に基づき,原告らが本件病院を通じて良質かつ適切な医療の提供を効率的に受ける権利を有することを前提としている。 しかし,憲法25条に具体的権利性を認めることはできないし,医療法の規定が国及び地方公共団体に対して適切な医療体制の定立,確保を義務付けているとしても,その具体化は国会の立法権や地方議会の条例制定権の行使に委ねられているから,この規定から国民や住民の適切な医療を受ける権利を具体化することはできない。また,本件基本条例は,確かに,市が地域医療提供体制を構築しなけれ ばならないこと(3条1項)等を定めているが,限られた財源と人的資源,時間等をやり繰りしていかなる地域医療提供体制を具体的に構築するかは,市議会の条例制定権等の行使及び市長による市議会決定事項の執行に委ねられている。したがって,本件基本条例を根拠として,原告ら 源,時間等をやり繰りしていかなる地域医療提供体制を具体的に構築するかは,市議会の条例制定権等の行使及び市長による市議会決定事項の執行に委ねられている。したがって,本件基本条例を根拠として,原告らが,本件病院を通じて良質かつ適切な医療の提供を効率的に受ける権利を具体的権利として有しているということもできない。 さらに,適切な地域医療提供体制の構築は,民間病院等の適切な配置や連携強化等によっても可能なのであって,被告府中市が直接経営する病院を設置する方法のみに限定されているわけでもない。したがって,原告らが良質かつ適切な医療の提供を効率的に受けることが,被告府中市が直接経営する本件病院における医療を通じて実現されなければならないわけではない。 ③ 原告ら主張の不利益の不存在本件整備条例制定行為によって,原告らを含む本件病院の周辺住民に健康に関する重大な不利益は生じていない。 第1に,本件新病院は,従来の本件病院所在地で診療を継続しているから,本件整備条例の施行により本件病院が物理的に存在しなくなったわけではない。また,本件新病院と本件病院との間で診療科目には変更はない。 第2に,本件病院機構に経営が移った後,本件新病院では入院が必要な患者を受け入れることが困難となっているとの原告らの主張は誤りである。 第3に,本件新病院の患者で手術を必要とする者に対し ては,乙病院で手術を行っており,本件新病院の患者が外科手術を受けることができないわけではない。 第4に,本件新病院では,人工透析は,不測の事態に備えて乙病院へ異動した外科医が来院した上で行っている。 第5に,本件新病院を含む本件医療機構が経営する病院で受入れが困難となるような救急患者が多数発生した事実はない。 ④ 医師法等を に備えて乙病院へ異動した外科医が来院した上で行っている。 第5に,本件新病院を含む本件医療機構が経営する病院で受入れが困難となるような救急患者が多数発生した事実はない。 ④ 医師法等を根拠とする原告ら主張についてa そもそも,本件整備条例と医師法,医療法及び国民健康保険法とは,その目的を共通にしておらず,医師法,医療法及び国民健康保険法をして,本件整備条例の関連法規であるということはできない。 b 医師法を根拠とする原告ら主張について医師法は,医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項等を定め,もって国民の健康の保持に寄与するという公益の確保を目的として(同法1条),国と医師又は医師となろうとする者との法律関係及び医師と患者との間の法律関係を規定するものであって(同法2条,7条1項,23条,31条1項,同条2項),医師の属している診療機関(特に市立病院)が周辺住民に対してどのような医療体制を提供しなければならないのかを定めている法律ではない。また,同法19条1項の応召義務は個々の医師に対する訓示規定であり,同規定から医師が所属する診療機関に対して一定の診療体制の確保を義務付けることはできない。 したがって,同法が本件病院の周辺住民に対して何らかの具体的利益を付与しており,本件整備条例制定行為がかかる具体的利益を侵害したとはいえないから,原告らの主張は失当である。 c 医療法を根拠とする原告ら主張について医療法は,病院,診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備並びに医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するために必要な事項等を定め,もって国民の健康の保持に寄与することを目的とし(同法1条) 及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備並びに医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するために必要な事項等を定め,もって国民の健康の保持に寄与することを目的とし(同法1条),国及び地方公共団体と医療機関の間の権利義務関係(同法7条1項)や国又は地方公共団体の役割を規定するものであって(同法1条の3),医療機関の周辺住民に対し,具体的な権利義務関係を付与することを目的としてはいない。 したがって,医療法が本件病院の周辺住民に対して何らかの具体的利益を付与しており,本件整備条例が係る具体的利益を侵害したとはいえないから,原告らの主張は失当である。 d 国民健康保険法を根拠とする原告ら主張について本件整備条例制定行為によっても,原告らを含む本件病院の周辺住民の国民健康保険の被保険者としての地位に変動があるわけではない(同法20条,21条1項,同条2項)。 また,同法は,保険者である市町村及び特別区或いは国民健康保険組合と被保険者である市町村住民との間で保険給付に関する権利義務関係を定めてはいても(同 法2条,3条1項,5条,36条1項),住民と医療機関との間の権利義務関係を定めるものではない。 したがって,国民健康保険法を根拠に,原告ら住民が本件整備条例制定行為によって本件病院に関して有していた具体的な法的利益を侵害されたということもできないから,原告らの主張は失当である。 ⑤ 医療を受ける権利の制限・侵害の原因について原告らが本件訴訟において医療を受ける権利の制限・侵害の理由として主張しているのは,本件病院の管理運営が被告府中市から本件病院機構に移った後に病床数及び常勤医数を減じたことであるが,それは本件整備条例制定行為の効果ではな 療を受ける権利の制限・侵害の理由として主張しているのは,本件病院の管理運営が被告府中市から本件病院機構に移った後に病床数及び常勤医数を減じたことであるが,それは本件整備条例制定行為の効果ではない。 原告らの主張は,本件整備条例制定行為の効果でないことにより医療を受ける権利が侵害されたとしながら,本件整備条例制定行為の取消しを求めているものであって失当である。 ⑥ 以上のとおり,本件整備条例制定行為に処分性は認められない。 原告らは本件整備条例制定行為の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するか。 (原告らの主張)①主張)のとおり,原告ら本件病院の医療圏に居住する者らは,自らが診療を受ける医療機関を選択すること,又は選択した医療機関において診療を受け,診療を継続的に受けることについて法的に保護されるべき地位を有するから, 本件整備条例制定行為により,地域住民の医療を受ける権利が侵害される場合には,当該条例の取消しにつき,当該地域住民に法律上の利益が認められる。 ② 被告府中市の行う国民健康保険の被保険者である原告らについて原告らのうち国民健康保険の被保険者である者は,国民健康保険制度に照らし,保険者である被告府中市から療養の給付を受けることにつき法律上の利益を有しており,これは,恩恵的な利益,事実上の利益,又は反射的利益ではない。そして,本件病院が廃止された結果,入院を必要とする患者の受入れが困難になるなどの事態が生じているから,これにより原告らの上記法律上の利益が侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある。 この侵害され又は侵害されるおそれのある法益は,人格的利益のうちでも,最も重要で重大な生命身体に関する利益であり,その侵害の程度も極 記法律上の利益が侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある。 この侵害され又は侵害されるおそれのある法益は,人格的利益のうちでも,最も重要で重大な生命身体に関する利益であり,その侵害の程度も極めて重大である。 ③ 被告府中市の行う国民健康保険の被保険者ではない原告らについて原告らのうち国民健康保険の被保険者ではない者は,被告府中市から療養の給付を受け得るものではないが,いずれも国民皆保険制度の下で,治療等の現物給付を受けることにつき,法的利益を有している。そして,原告らは治療等の現物給付を受ける医療機関を選択できるのであり,本件病院において治療等の現物給付を受けることもできるから,被告府中市の行う国民健康保険の被保険者ではない原告らであっても,本件病院において治療等の現物給付を受 けることにつき法的な利益が存する。 そうすると,少なくとも,被保険者ではない原告らの法的利益の性質・内容は,被保険者である原告らのそれと異ならず,かつ,法的利益が侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり,その侵害の程度,態様も同様であることから,被保険者ではない原告らも原告適格を有するというべきである。 (被告府中市の主張)公の施設である本件病院の廃止は,地方自治法149条7号,同法244条の2に基づくものであるところ,同法は住民が公の施設を利用する利益を個々の住民の個別的利益として保護しているとは解されない。 また,本件整備条例は,本件病院を被告府中市の直営から本件病院機構の管理運営に移行することをその趣旨とし,もって住民に必要な医療に対応した身近な医療提供体制を構築することを目的とするものであって,基本的には行政組織の改編に関するものであるから,そもそも 病院機構の管理運営に移行することをその趣旨とし,もって住民に必要な医療に対応した身近な医療提供体制を構築することを目的とするものであって,基本的には行政組織の改編に関するものであるから,そもそも原告らが主張する利益を保護する趣旨を含むものではないし,原告らを含む本件病院の周辺住民の医療に関する権利義務を制限するものでもない。 また,本件設置条例にも,原告らを含む本件病院の周辺住民の個別具体的な法的利益に関する規定は存在しない。 したがって,原告らは,病院の一般利用者にすぎず,原告らが主張する利益はいわゆる営造物の利用者の利用権を超えるものではないから,個別具体的な法的利益を有しておらず,原告適格を欠いている。 イ地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付けの訴えの適法性地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることが「一定の処分」といえるか。 (原告らの主張) 張)に同じ。 (被告府中市の主張)① 地方独立行政法人は,設立団体である被告府中市により設立され(地方独立行政法人法2条),被告府中市は地方独立行政法人設立後も中期計画の認可権限を有しており(同法26条1項),地方独立行政法人の経営に関与することが予定されている。このような同法の法体系のもとでは,同法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることは,いわば,行政機関の内部行為と類似の関係にあり,直接国民の権利義務を形成又は確定するものではない。 また,住民に必要な医療提供体制を持続的に確保することについて,原告らを含む本件病院の周辺住民は具体的権利を持っていない。 したがって,原告らが求める同法89条1項に基 確定するものではない。 また,住民に必要な医療提供体制を持続的に確保することについて,原告らを含む本件病院の周辺住民は具体的権利を持っていない。 したがって,原告らが求める同法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることは処分性を欠くから,その義務付けを求める訴えは不適法である。 ② また,原告らが求める同法同条項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることは,その処分の内容が個別的具体的に特定されていない。 したがって,予備的請求に係る訴えは義務付けを求める処分が特定されていない点でも,不適法である。 「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」があるか。 (原告らの主張) 張)に同じ。 (被告府中市の主張)原告らが主張する権利,利益を具体的に定めた実定法規は存在しないし,地方独立行政法人法89条1項に定められた必要な措置をとらなかった場合に,原告らに生じる損害の内容も程度も不明である。本件病院は,経営主体が被告府中市から本件病院機構に移行しただけであり,施設としての病院が消滅したわけではなく,本件新病院と本件病院とは診療科数にも変化はないから,原告らに重大な損害を生じるおそれはない。 「その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」に当たるか。 (原告らの主張)上記張)に同じ。 (被告府中市の主張)原告らの主張からは,「その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」であることを基礎づける事実は窺えないから,地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付けの訴えは不適法である。 原告らが地方独立 とき」であることを基礎づける事実は窺えないから,地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付けの訴えは不適法である。 原告らが地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付けを求めるにつき法律上の利益を有するか。 (原告らの主張)上記【被告広張)に同じ。 (被告府中市の主張)地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることは,設置団体の長が,地方独立行政法人が違法行為を行っていると認められる場合に,公共上の利益を維持するために行使するものであり,地方独立行政法人の役務の提供を受けている者など個々人の具体的利益の保護を目的としたものではない。また,地方独立行政法人法と国民健康保険法,医療法及び医師法とはその趣旨目的を共通にする法令とはいえない。他方,原告らが主張する権利,利益を具体的な権利,利益として認めることはできないし,本件病院が廃院されずに存続しており,原告らが主張するような医療提供に欠ける事態も生じていないから,原告らが主張する不利益の性質や内容は,本件病院の経営主体が被告府中市から本件病院機構へと移行したことに伴う漠然とした不安感にすぎず,原告らには地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付けを求める法律上の利益はない。 地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置を求める利益があるか。 (原告らの主張) 本件予備的請求に係る訴えに,訴えの利益がないとの被告府中市の主張は争う。 (被告府中市の主張)被告府中市が本件病院に対し地方独立行政法人法89条1項 本件予備的請求に係る訴えに,訴えの利益がないとの被告府中市の主張は争う。 (被告府中市の主張)被告府中市が本件病院に対し地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命じたとしても,それは本件病院機構に対して同措置の内容の履行とその後の設立団体の長への報告義務を課するにとどまり,原告ら本件病院の周辺住民に対し,何らかの法的利益を付与又は設定するものではない。仮に,同措置により本件新病院における原告ら住民に対する待遇が改善されたとしても,それは,住民らが得た事実上の利益又は反射的利益にすぎないから,同措置によって原告らが自己の法的利益に関する紛争を解決することはできないのであって,地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることの義務付けを求める訴えに,訴えの利益はない。 本案の争点に関する当事者の主張【被告広島県に対する請求につき】ア本件認可に裁量権の逸脱,濫用があるか。 (原告らの主張) 被告府中市は,地域住民に対し,本件病院を通じて良質かつ適切な医療を効率的に提供する義務があるから,本件病院の廃止そのものがこの義務に反するものである。 また,本件病院が廃止されることにより,都市地域と中山間地域との間で医療提供の格差を殊更に拡大させることになるから,平等原則にも違反している。 本件病院の縮小の目的が不当であること 本件整備条例の施行による本件病院の廃止は,本件病院の規模を縮小して手術後やガン末期,高齢者終末医療に特化し,府中市,福山市地域のための後方支援病院とする目的でなされている。本件病院が地域の救急医療に最も必要かつ唯一の救急中核病院であることからすれば,この 小して手術後やガン末期,高齢者終末医療に特化し,府中市,福山市地域のための後方支援病院とする目的でなされている。本件病院が地域の救急医療に最も必要かつ唯一の救急中核病院であることからすれば,このような目的は不当である。 本件病院の財政悪化という主張について本件病院の財務状況は,広島県下の他の公立病院に比較しても,突出して悪くはない。加えて,被告府中市は,国からの特別交付金の一部しか本件病院の予算に繰り入れていないが,その繰入額を増やせば,府中市の一般財源から繰入額を減少させることができる。このような状況に照らせば,本件病院の財政悪化を原因として,本件病院を廃止する必要性はないというべきである。 医師不足の解消について過疎地における医師不足問題の解消策は,院長や事務長が大学病院に日参して,ひたすら医師の派遣を要請するしか有効な策はないのに,被告府中市はこのような策を適切に講じていない。また,本件病院の医師不足は,府中総合病院の医師不足により問題化したにすぎない。本件病院の廃止は,上足が原因となったのではない。 被害の重大性原告ら本件病院の周辺住民が受けている被害,及び将来受けると予想される被害は,適切な医療を適宜に受けられず,病状が進行して生命,身体,健康が害されるという最も重大 かつ切実な被害である。 以上のような本件病院を廃止した目的の不当性や,廃止する必要性が乏しいことに比して,本件病院が廃止された後の被害は重大であるから,これらの事情を考慮すれば,本件認可及び本件整備条例の施行によって,本件病院の病床数及び常勤医数を削減したことは,裁量権を逸脱しており,違法である。 (被告広島県の主張)本件認可が違法であるとの主張は 本件認可及び本件整備条例の施行によって,本件病院の病床数及び常勤医数を削減したことは,裁量権を逸脱しており,違法である。 (被告広島県の主張)本件認可が違法であるとの主張は争う。 本件認可によって原告らの権利利益が侵害されるわけではないし,そもそも本件病院は本件病院機構の下で本件新病院として存続しているのであって,およそ重大な権利侵害があるとはいえない。 地方独立行政法人法の認可において考慮されるべき事情は,安定的長期的な事業を営むための財政基盤の確保,適切な執行体制の確保などであり,被告広島県は被告府中市の申請が上記要件を満たしていると判断して本件認可をしたものであり,本件認可は適法である。 イ地方独立行政法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命じないことが裁量権の逸脱,濫用に当たるか。 (原告らの主張)本件病院は,被告府中市の実施する国民健康保険の被保険者に対し,診療等の療養の給付を行うことを本来的な事業目的として設立された病院であり,かつ無医地区解消対策に協力し,国民健康保険事業を円滑に実施することが任務とされた病院である。そして,本件病院機構は本件病院が有した事業目的及 び任務を効率的かつ効果的に達成するために設立された法人である。 それにもかかわらず,本件病院機構は,本件病院当時よりも病床数や常勤医数を減少させて本件新病院を運営しており,地域の医療需要に応えられないことは明らかで,何ら合理的理由なく原告ら地域住民が療養の給付を受け得る権利又は利益を侵害しており,憲法25条に違反し,かつ違法である。 したがって,本件病院機構による病院事業の運営において,上記事業目的及び任務に悖り,合理的な理由なく,被保険者が け得る権利又は利益を侵害しており,憲法25条に違反し,かつ違法である。 したがって,本件病院機構による病院事業の運営において,上記事業目的及び任務に悖り,合理的な理由なく,被保険者が療養の給付を受け得る権利又は利益を侵害しているから,このような法令違反又はそのおそれについて地方独立行政法人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことが命じられるべきである。 (被告広島県の主張)地方独立行政法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命じないことが裁量権の逸脱,濫用に当たるとの原告の主張は争う。 【被告府中市に対する請求につき】ア本件整備条例制定行為に裁量権の逸脱,濫用があるか。 (原告らの主張)上記【被告広島県に対する請求につき】ア(原告らの主張)に同じ。 (被告府中市の主張) 本件整備条例制定行為の合理性本件病院は,経常収支の赤字が続いていたために被告府中市の一般会計から繰り入れるなどしており,その財政状況は 破たんしているか,又は破たん寸前であったし,医師不足という問題も生じていた。これらの問題を解消し,府中市全体の地域医療を維持するためには,本件病院機構の下で府中総合病院と経営統合する手段しか残されていなかった。そして,本件再生計画の策定は条例に定められた手続に沿って適正公平に行われたから,本件再生計画の策定経緯,その内容及び策定手続には合理性が認められる。 本件病院が廃止されても原告らが主張する不利益が生じないこと 市の主張)のとおり,本件病院が廃止されても,原告らが主張する不利益は生じない。 以上のような,本件整備条例の制定に至る経緯や本件整備条例が施行された後の状況等に照らせば,被告府中市 市の主張)のとおり,本件病院が廃止されても,原告らが主張する不利益は生じない。 以上のような,本件整備条例の制定に至る経緯や本件整備条例が施行された後の状況等に照らせば,被告府中市の本件病院機構の設立に係る一連の行為に,裁量権の逸脱,濫用はない。 イ地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命じないことが裁量権の逸脱,濫用となるか。 (原告らの主張)上記【被告広島県に対する請求につき】イと同旨であり,地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることは当然である。 (被告府中市の主張)本件においては,何ら地方独立行政法人法89条1項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずる事由は存在しないため,同措置をとるべきことを命じなくても裁量権の逸脱,濫用とは ならない。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 本件病院は,昭和18年4月,国民健康保険a 病院との名称で,旧b 郡a 町に開設された病院である(平成16年4月1日,病院の運営者であった旧b 郡a 町が被告府中市に編入され,運営者が被告府中市となったことに伴い,その名称も府中市立甲病院に改められた。)。 本件病院は,廃止前の平成24年3月当時,病床数が一般病床60床,療養型病床50床の合計110床あり,勤務医も常勤医が5名,非常勤医は日平均で3.23人であった。また,診療科は,内科,外科,産婦人科,整形外科,小児科,リハビリテーション科,耳鼻咽喉科,皮膚科及び泌尿器科の9診療科あり,人工透析治療は,常勤外科医が担当して実施されていた。 平成21年度のデータによると,本件病院の外来診療を受けた 外科,小児科,リハビリテーション科,耳鼻咽喉科,皮膚科及び泌尿器科の9診療科あり,人工透析治療は,常勤外科医が担当して実施されていた。 平成21年度のデータによると,本件病院の外来診療を受けた者及び入院治療を受けた者のうちそれぞれ93パーセントは,いずれも旧b 郡(現在の府中市a 町,三次市b 町及び庄原市h 町。 以下「旧b 郡三町」という。)及びc 町の住民であり,a 町を除く府中市住民の占める割合は,外来診療で2パーセント,入院治療で1パーセントであった。なお旧b 郡三町は,中山間地域に位置し,冬季は積雪や道路凍結も生じることがある。平成24年3月当時で人口はおよそ2万人であり,高齢化が進んでいる地域(平成22年現在で旧b 郡a 町地域の65歳以上の人口が総人口に占める割合は約37.9パーセントである。)であるとともに,県内で最も医療過疎の進んだ地域である。 本件病院は,旧b 郡三町内に存する唯一の救急指定病院であるとともに,唯一の中核病院の機能を果たしうる医療機関であった。 なお,a 町中心部から最も近い救急指定病院としては,同中心部から片道約17.5キロメートルの場所に位置する丙病院と,片道約17.6キロメートルの場所に位置するc 町立病院があるだけである。また本件病院の所在地は,府中市役所a 支所から直線距離にして概ね300メートルのa 町中心部に位置するが,府中市役所a 支所周辺から府中市中心部である府中市役所周辺までの距離は,片道約28キロメートルであり,標高差も約360メートルある。 本件病院は,被告府中市とは別の法人格を有しないが,地方公営企業法17条の2第2項の適用により,原則として被告府中市の一般会計とは切り離されて企業会計原則に基づく独立採算制が採られている地方公営企業として営まれてい 中市とは別の法人格を有しないが,地方公営企業法17条の2第2項の適用により,原則として被告府中市の一般会計とは切り離されて企業会計原則に基づく独立採算制が採られている地方公営企業として営まれていたところ, 平成24年4月1日,本件病院機構が設立され(丙3),これに伴う本件整備条例の施行により廃止され,本件病院として営まれていた病院事業は,本件新病院に承継された。 そして,上記承継後の本件病院機構が営む本件新病院においては,本件病院機構設立申請時の計画どおり,病床数が本件病院当時の110床から70床へ減じられ,また,外科医が常勤から非常勤となって常勤医数が5名から4名に減少した。しかし,診療科は,そのまま9科が維持され,また人工透析も引き続き実施されている。また本件新病院は,現在も救急指定病院であり,旧b郡三町地域の中核病院としての機能を果たしている。 に当たるか。)について 原告ら(原告A,同B及び同Cを除く。以下,同じ。)は,本件認可が処分であることを前提にその取消しを求めている。 ところで,行政庁の処分とは,行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものである(最高裁判所昭和39年10月29日第1小法廷判決・最高裁判所民事判例集18巻8号1809頁)。 これを本件についてみるに,本件認可は広島県知事が被告府中市に対してするものであって,同認可がされることによって被告府中市が地方独立行政法人を設立できることになるが,これによって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する効果を有するものではないことが明らかである。なお,後記 認可がされることによって被告府中市が地方独立行政法人を設立できることになるが,これによって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する効果を有するものではないことが明らかである。なお,後記検討のとおり,本件整備条例の附則によれば,本件認可後にされる本件病院機構の設立によって,本件整備条例が施行される関係にあるが,本件整備条例によりもたされる効果は本件認可の効果そのものではないから,その点を斟酌して本件認可が処分であると解することはできない(なお,本件整備条例制定行為も処分といえないことは後記のとおりである。)。 したがって,本件認可は,行政庁の処分には当たらないから,本件認可の取消しを求める原告らの訴えは不適法というべきであって却下を免れない。 定行為は処分に当たるか。)について 上記2のとおり,行政庁の処分とは,行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく,公権力の主体たる国又は公 共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものであるところ,本件において原告らは,本件整備条例の制定をもってした本件病院の廃止が処分である旨主張して,その取消しを求めている。 しかし,地方公共団体の行う条例の制定は,通常は,一般的,抽象的な規範を定立する立法作用の性質を持つものであり,そのような条例を制定する行為は,原則として個人の具体的権利義務に直接の効果を及ぼすものではなく,抗告訴訟の対象となる処分ということはできないというべきである。ただ,条例の形式をとっている場合であっても,他に行政庁の具体的処分を待つまでもなく当該条例そのものによってその適用を受ける特定の者の具体的な権利義務や法的地位に直接影響 できないというべきである。ただ,条例の形式をとっている場合であっても,他に行政庁の具体的処分を待つまでもなく当該条例そのものによってその適用を受ける特定の者の具体的な権利義務や法的地位に直接影響を及ぼすような場合には,条例の制定行為自体をもって,抗告訴訟の対象となる行政処分と解することができるというべきである。 そこで,以上を前提に本件についてみるに,本件整備条例は,本件病院機構の設立に伴って関係条例を整備することを目的に制定された条例であるが,その7条において,本件設置条例の別表から本件病院に関する部分を削除する改正規定があり,その施行により被告府中市の病院事業において設ける病院から本件病院が除外される,すなわち被告府中市が管理運営主体となる病院としては本件病院が廃止されるという結果が生じるものである。 そして,原告らは,その結果,本件病院の原告ら主張に係る医療圏に居住する者らが有するとされる,医師法19条1項,医療法1条,同法1条の2第2項及び同法1条の3の規定から導かれ得る診療を受ける医療機関を選択すること,又は選択した医療機 関において診療を受け,診療を継続的に受けるという権利又は利益,あるいは身近な医療を受ける権利・利益,さらには国民健康保険法上の「療養の給付」を受ける利益等の権利又は利益が侵害される旨主張する。 しかしながら,上記原告ら主張に係る権利又は利益は,いずれも抽象的であって具体的な権利又は法的利益というに足りないものであるし,またその点をおいたとしても,そもそも本件整備条例は特定の者に対してのみ適用される条例ではない。原告らは,本件病院の廃止によって,原告ら主張に係る医療圏に居住する者らが原告ら主張に係る権利又は法的利益に影響を受けることがあると主張するが,本件整備条例が適用される対象を 用される条例ではない。原告らは,本件病院の廃止によって,原告ら主張に係る医療圏に居住する者らが原告ら主張に係る権利又は法的利益に影響を受けることがあると主張するが,本件整備条例が適用される対象を原告ら主張に係る医療圏に居住する者と特定したとしても,これでは本件整備条例制定行為を行政処分と解することができるほどに,当該条例の適用を受ける特定の者として特定されているとまではいえない。すなわち,原告らが問題とする本件整備条例制定行為による効果は,一般的抽象的規範たる条例のそれと異ならないものといえるから,本件整備条例制定行為をもって処分と実質的に同視することはできない。 ただ本件整備条例制定行為による本件病院の廃止は,当然のことながら,本件病院で診療を受けていたという限られた特定の者との関係では,その診療契約という個別の関係における診療主体の変更をもたらすという意味で直接の影響を及ぼすものと見る余地がある。 しかしながら,本件整備条例の制定は,それだけを見れば,直接には被告府中市が設置する本件病院の廃止をもたらす効果を有するが,それは被告府中市による本件病院機構の設立と同時に 一体としてなされるものであって,これらの施策は本件病院として営んでいた病院事業をそのままに本件新病院に承継させるものである(個別の診療契約も承継されると解される。)。そして,実際にも,本件新病院は診療科目を減らすことなくそのまま存続して診療を継続しており,本件病院で診療を受けていた者との関係で直接具体的に不利益となる影響が及ぼされたとは認められない。要するに,本件整備条例の制定を含む一連の施策は,一体となって被告府中市における本件病院の管理運営方法を,被告府中市が地方公営企業として直接事業を営む方式から,地方独立行政法人を設置して管理運営する するに,本件整備条例の制定を含む一連の施策は,一体となって被告府中市における本件病院の管理運営方法を,被告府中市が地方公営企業として直接事業を営む方式から,地方独立行政法人を設置して管理運営する方式に変更するという,病院事業の経営形態の改編をなしたものにすぎず,そうであれば,本件病院において診療を受けていた者という限られた特定の者との関係であっても,本件整備条例制定による本件病院の廃止が,その法的利益に直接具体的に影響を及ぼすものとは解されない。 なお,この点に関連して,原告らは,本件病院機構が管理運営する本件新病院では,病床数,常勤医数が本件病院から減じられている点を指摘する。 しかし,病床数,常勤医数が減じられたことによる影響は,本件新病院を利用する潜在的可能性のある本件新病院の付近住民が等しく受ける影響であって,それが限られた特定の者に対する関係でのみ,その権利又は法的利益に影響するものではないから,その点を捉えても,やはり特定の者の具体的権利又は法的地位に対する影響があるものと解することもできない。 したがって,本件整備条例制定行為は,処分には当たらないから,本件整備条例制定行為が処分であることを前提に,その取消しを求める原告らの訴えは不適法というべきであって却下を免 れない。 人法89条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずることが「一定の処分」といえるか。)及び同【被告府中市に対する訴えにとるべきことを命ずることが「一定の処分」といえるか。)について 原告らは,各被告に対する予備的請求として,被告広島県に対しては,地方独立行政法人法89条4項に基づき,本件病院機構に対して,府中市a 町,三次市b 町,及びc 町に居住する住民に必要な医療提供体制を持続的に確保するために必要な措置 して,被告広島県に対しては,地方独立行政法人法89条4項に基づき,本件病院機構に対して,府中市a 町,三次市b 町,及びc 町に居住する住民に必要な医療提供体制を持続的に確保するために必要な措置をとるべきことを命ずることを認可権者である広島県知事に対して義務付けることを求め,被告府中市に対しては,同法89条1項に基づき,本件病院機構に対して,府中市a 町,三次市b 町,及びc 町に居住する住民に必要な医療提供体制を持続的に確保するために必要な措置をとるべきことを命ずることを本件病院機構の設立団体の長である府中市長に対して義務付けることを求めている。そして,原告らの各被告に対する上記義務付けの訴えは,いずれも行政事件訴訟法3条6項1号に定められた義務付けの訴えとして提起されている。 ところで,行政事件訴訟法3条6項1号に定められた義務付けの訴えは,「行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき」に「行政庁がその処分」「をすべき旨を求める訴訟」として定められている。そして,ここでいう「処分」とは,同法3条2項に定義された処分,すなわち「行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為」と解されることから,当該訴 訟が義務付けを求める訴えとして適法であるためには,義務付けを求める行為が,上記「処分」の要件を満たすことが必要である。 これを本件についてみるに,原告らが求める行政庁の行為は,広島県知事が地方独立行政法人法89条4項に基づき,府中市長が同条1項に基づき,いずれも本件病院機構に対して,府中市a町,三次市b 町,及びc 町に居住する住民に必要な医療提供体制を持続的に確保するために必要な措置をとるべきことを命ずることである。 しかし,地方独立行政法人の認可権者が同条4項に基づいて同 a町,三次市b 町,及びc 町に居住する住民に必要な医療提供体制を持続的に確保するために必要な措置をとるべきことを命ずることである。 しかし,地方独立行政法人の認可権者が同条4項に基づいて同法人に対して必要な措置をとるべきことを命ずること,あるいはその法人の設置団体の長が同条1項に基づいて同法人に対して必要な措置をとるべきことを命ずることは,いずれも行政機関が地方独立行政法人に対してすることである。これらは,行政機関間で行われる行為と同様に,行政行為として外部に効力を有するものではなく,また,これらによって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する効果を伴うものではないから,いずれも行政事件訴訟法3条6項1号の「処分」に当たるものとは解されない。 そうすると,原告らが義務付けを求めている,広島県知事が地方独立行政法人法89条4項に基づいてする本件病院機構に対して必要な措置をとるべきことを命ずること,あるいは府中市長が同条1項に基づいてする本件病院機構に対して必要な措置をとるべきことを命ずることは,いずれも行政事件訴訟法3条6項1号の「処分」には当たらないといわなければならない。 したがって,原告らの各被告に対する予備的請求に係る義務付けの訴えは,いずれも処分の義務付けを求めるものではないから 不適法であって,却下を免れない。 5 よって,原告らの主位的請求に係る訴え及び予備的請求に係る訴えはいずれも不適法であるから,これらを却下することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 なお,原告Aは平成25年3月5日に,同Bは平成26年2月18日に,同Cは平成24年5月3日にそれぞれ死亡したことが認められるところ,同各原告が本件認可及び本件整備 して,主文のとおり判決する。 なお,原告Aは平成25年3月5日に,同Bは平成26年2月18日に,同Cは平成24年5月3日にそれぞれ死亡したことが認められるところ,同各原告が本件認可及び本件整備条例制定行為の取消し並びに地方独立行政法人法89条1項及び同条4項に基づき必要な措置をとるべきことを命ずる義務付けを求める法律上の利益として主張していたのは,本件病院の周辺住民としての地位に基づく一身専属の利益であって相続の対象になり得ないものである。そうすると,同各原告と被告らとの間の訴訟は,訴訟承継が生じる余地はなく同各原告の死亡によっていずれも終了したものであるから,主文第2項のとおり宣言する。 広島地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官森崎英二 裁判官吉岡茂之 裁判官土山雅史
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