1 令和6年7月5日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 令和2年(ワ)第28384号 不正競争行為差止等請求事件 口頭弁論終結日 令和6年4月18日 判 決 原 告 株式会社スノーピーク 5 同訴訟代理人弁護士 角 谷 直 紀 墳 﨑 隆 之 大 野 徹 同訴訟復代理人弁護士 成 田 凌 被 告 株 式 会 社 山 谷 産 業 10 (以下「被告会社」という。) 被 告 X (以下「被告X」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士 高 瀬 亜 富 高 橋 正 憲 15 丸 山 真 幸 同訴訟代理人弁理士 高 林 芳 孝 主 文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 20 事 実 及 び 理 由 第1 請求 1 被告会社及び被告Xは、別紙被告商品目録記載の各商品を製造し、譲渡し、 引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入してはなら ない。 25 2 被告会社及び被告Xは、原告に対し、連帯して、2億1507万3874円 2 及びこれに対する令和2年12月11日から支払済みまで年5分の割合による 金員を支払え。 3 被告会社及び被告Xは、第1項の各商品を廃棄せよ。 4 被告会社及び被告Xは、別紙広告目録記載第1の内容の謝罪広告を、同記載 第2の要領で掲載せよ。 5 第2 事案の概要等 1 事案の要旨 本件は、原告が、被告らに対し、原告の販売する別紙原告商品目録記載の各 商品(以下、項番号に従って「原告商品1」などといい、これらを総称して 「原告商品」という。)の形態は、原告の商品等表示 案の要旨 本件は、原告が、被告らに対し、原告の販売する別紙原告商品目録記載の各 商品(以下、項番号に従って「原告商品1」などといい、これらを総称して 「原告商品」という。)の形態は、原告の商品等表示として需要者の間に広く認 10 識されており、原告商品の形態と実質的に同一の別紙被告商品目録記載の各商 品(以下、これらを総称して「被告商品」という。)を販売等して原告の商品と 混同を生じさせた被告会社及び被告Xの行為は、不正競争防止法(以下「不競 法」という。)2条1項1号の不正競争に該当すると主張して、 ① 不競法3条1項に基づき、被告商品の製造、譲渡、引渡し、譲渡及び引渡 15 しのための展示、輸出並びに輸入の差止めを、 ② 不競法3条2項に基づき、被告商品の廃棄を、 ③ 不競法4条及び民法719条に基づき、平成29年11月10日から令和 2年11月9日までの間にされた不正競争による損害金2億1507万38 74円(不競法5条1項により算定される損害金1億9552万1704円 20 及び弁護士費用相当額1955万2170円の合計)及びこれに対する令和 2年12月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法(平成29 年法律第44号による改正前のもの)所定年5分の割合による遅延損害金の 連帯支払を、 ④ 原告のブランド価値の著しい毀損により、営業上の信用が害され、これを 25 回復する必要があるとして、不競法14条に基づき、別紙広告目録記載第2 3 の要領による同記載第1の内容の謝罪広告の掲載を、 それぞれ求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠(以下、特記しな い限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実) (1) 当事者 5 ア 原告は、主にキャンプ用品、登山用品等の開発・製造 者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠(以下、特記しな い限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実) (1) 当事者 5 ア 原告は、主にキャンプ用品、登山用品等の開発・製造・販売等を業とす る株式会社である。 イ 被告会社は、金属プレス加工等、船具等の販売、機械工具等の販売、家 庭雑貨器物の販売を業とする株式会社である。 被告Xは、被告会社の代表取締役である。 10 (2) 原告商品の販売 ア 原告は、平成7年3月頃、「ソリッドステーク」との名称で、キャンプ等 のアウトドア・レジャーで使用するテント、タープ(幕体)用ペグ(地中 に打ち込んで、テントやタープから延びるロープを固定するための杭。以 下、特記しない限り、「ペグ」とは、キャンプ等のアウトドア・レジャーで 15 使用するペグのことをいう。)である原告商品の販売を開始した。 原告商品1ないし4の長さは、順に、20cm、30cm、40cm及 び50cmである。また、原告商品の外観は、別紙原告商品外観目録のと おりであり、頭部に穴及び長さのあるフックを備えている(ただし、原告 商品1ないし4は、それぞれの軸やフックの長さ等に応じ、外観に差異が 20 ある。)。 イ 平成11年から令和2年4月までの原告商品の販売数は、別紙販売数一 覧表の「原告商品」欄記載のとおりである(甲3)。 (3) 原告が保有していた意匠権(甲12、乙42) ア 原告は、平成6年10月4日、意匠に係る物品を「テント張設用ペグ」 25 とする意匠登録出願をし、平成9年5月30日、意匠権の設定登録がされ 4 た(意匠登録第990949号。以下、当該意匠権を「原告意匠権」とい い、原告意匠権に係る登録意匠を「原告意匠」という。)。 原告意匠権は、平成24年5月30日、存続期間の満了により消滅した 4 た(意匠登録第990949号。以下、当該意匠権を「原告意匠権」とい い、原告意匠権に係る登録意匠を「原告意匠」という。)。 原告意匠権は、平成24年5月30日、存続期間の満了により消滅した。 イ 原告意匠は、別紙原告意匠図面目録のとおりである。 (4) 被告商品の販売等 5 ア 被告会社は、平成25年以降、「エリッゼステーク」との名称で、テント、 タープ用ペグである被告商品を、販売及び販売のために展示している。 被告商品は、品番に応じて、軸の長さ(18cm、28cm、38cm 及び48cm)及び色に違いがある。また、被告商品の外観は、別紙被告 商品外観目録のとおりであり、頭部に穴及び長さのあるフックを備えてい 10 る(ただし、各品番の被告商品は、それぞれの軸やフックの長さ、色等に 応じ、外観に差異がある。)。 イ 平成25年から令和2年7月1日までの被告商品の販売数は、別紙販売 数一覧表の「被告商品」欄記載のとおりである(乙2)。 (5) 他社が販売するテント、タープ用ペグの状況 15 原告及び被告会社以外の他社が販売するテント、タープ用ペグのうち、頭 部に穴及び長さのあるフックをいずれも備える金属製ペグの販売状況は、別 紙同種商品一覧表記載のとおりである(以下、番号に従って「本件同種商品 1」などということがある。)。 なお、別紙同種商品一覧表の「販売数」欄が空欄の箇所は、本件全証拠に 20 よってもその数量が明らかでない。 3 争点 (1) 不競法2条1項1号の不正競争の成否(争点1) ア 原告商品の形態が原告の周知な商品等表示であるか(争点1-1) イ 原告商品の形態に係る商品等表示と被告商品の形態に係る商品等表示が 25 同一又は類似であるか(争点1-2) 5 ウ 被告商品の販売等が原告の商品と混同を生じさ あるか(争点1-1) イ 原告商品の形態に係る商品等表示と被告商品の形態に係る商品等表示が 25 同一又は類似であるか(争点1-2) 5 ウ 被告商品の販売等が原告の商品と混同を生じさせる行為であるか(争点 1-3) エ 被告Xが被告会社と共同して被告商品の販売等をしたか(争点1-4) (2) 差止め及び廃棄の必要性(争点2) (3) 故意又は過失の有無(争点3) 5 (4) 損害の有無及びその額(争点4) (5) 謝罪広告の必要性(争点5) 4 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1-1(原告商品の形態が原告の周知な商品等表示であるか)につい て 10 (原告の主張) ア 原告商品の形態 (ア) 主位的主張 原告商品全体の形態は、別紙原告商品外観目録のとおりであり、次の ような特徴(以下、頭書の符号に従って「本件特徴1①」などという。) 15 を有する(以下、これら全ての特徴を有する形態を「本件形態1」とい う。)。 ① 鍛造されたスチールが構成材料として選択されている。 ② 上記①により、硬く、重みがあり、光沢感のない金属の質感を有す ることが外観的に明らかである。 20 ③ 頭部のうち打撃部が円柱形であり、その部分が頭部全体よりやや大 きくなっている。 ④ 頭部フック部分の長さが25ないし40mmであり、全体に比して 大型である。 ⑤ 頭部において、フックとは別に引き抜く際にハンマーのフックを引 25 っかける穴がある。 6 ⑥ 会社名(ブランド名)のロゴが記載されている上部から打ち込み部 にかけてなだらかに細くなっており、打ち込み部分の先端もなだらか に細くなっている。 ⑦ 上記①ないし⑥が組み合わされている。 (イ) 予備的主張 5 本件形態1では特定が不十分であると判断される場合に備 だらかに細くなっており、打ち込み部分の先端もなだらか に細くなっている。 ⑦ 上記①ないし⑥が組み合わされている。 (イ) 予備的主張 5 本件形態1では特定が不十分であると判断される場合に備え、原告商 品全体の形態として、次のような特徴(以下、頭書の符号に従って「本 件特徴2①」、「本件特徴2④ア」などという。)を有する形態(以下、こ れらの全ての特徴を有する形態を「本件形態2」という。)を主張する。 ① 鍛造されたスチールが構成材料として選択されたテント、タープ用 10 ペグであり、上方がやや太く、下方がそれに比べると細くなっている 軸及び軸の上方側面に軸に沿って設けられたテント、タープのロープ を引っ掛けるための板状の掛具部から構成されている。 ② 軸の頭部は、短い円柱形で軸の他の部分よりやや大きくなっている (以下、この頭部を「原告商品打撃部」という。)。 15 ③ 軸の上方には、ロゴが記載されている。 ④ 掛具部は、次の形態を有している。 ア ペグを地面から引き抜く際にハンマーのカギ部を引っ掛けるため の穴が設けられている。 イ テント、タープのロープを引っ掛けるためのフックが設けられて 20 いる。 ウ 穴は、原告商品打撃部の斜め下に位置し、軸とフックの隙間部分 の直上に位置する。また、穴は、掛具部の幅の半分以上を占め軸に 接するように位置し、フックの上に及んでいる。 エ フックの先端の長さは、掛具部全体の長さのほぼ半分か、それ以 25 上であり(25ないし40mm)、フックは軸と平行に直線的に伸び 7 ている。 オ 掛具部の厚さは掛具部の設けられている部分の軸の直径よりやや 薄く、横幅は当該軸の直径の1.5倍以上である。 カ フックと軸との間の隙間は、フックの横にある会社名(ブランド 名)のロゴの記載がある箇所の軸 部の厚さは掛具部の設けられている部分の軸の直径よりやや 薄く、横幅は当該軸の直径の1.5倍以上である。 カ フックと軸との間の隙間は、フックの横にある会社名(ブランド 名)のロゴの記載がある箇所の軸の直径とほぼ同じ比率であり、フ 5 ックの先端の直径はこれよりやや小さい。 キ 掛具部の上部は、フック穴に沿うように丸みを帯びている。 ⑤ 鍛造されたスチールが構成材料として選択されていることから、硬 く、重みがあり、光沢感のない金属の質感を有することが、外観的に 見て取れる。 10 ⑥ 上記①ないし⑤が組み合わされている。 原告商品は、この本件形態2に係る特徴により、くちばし(フック)、首 (フックと平行に伸びる軸)、目(掛具部の穴)からなるフラミンゴの頭部 のような印象を需要者に与え、需要者の注意を強く引き付けている。 イ 原告商品の形態が周知な商品等表示に当たること 15 (ア) 「鍛造されたスチールが構成材料として選択され」ていることが商品 等表示となること 不競法2条1項1号は、「商品等表示」を「人の業務に係る氏名、商号、 商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示する ものをいう。」と定義している。同号の「氏名、商号、商標、標章、商品 20 の容器」又は「包装」が例示列挙であることからも、本来、商品等表示 となり得るものに制限はないから、商品等表示として認められる商品の 形態的特徴から、商品を構成する素材や材料は排除されない。 ある素材が同種商品において全く用いられていない場合、当該素材を 構成材料とすることは、それだけで需要者の目を引くものであるから、 25 商品等表示となり得る。そして、ある素材を構成材料とすることが商品 8 等表示となっている場合、需要者は、表面の特徴や手に持った際の質感 といった当該構成材 の目を引くものであるから、 25 商品等表示となり得る。そして、ある素材を構成材料とすることが商品 8 等表示となっている場合、需要者は、表面の特徴や手に持った際の質感 といった当該構成材料が持つ一つ又は複数の特徴を経路として、当該素 材を認識することになるところ、どのような経路で認識したとしても、 他の同種商品において用いられていない素材が商品に用いられているこ とを認識できれば、需要者は当該商品の出所を認識することができる。 5 なお、商品等表示の全体又はその一部の要素は、視覚や触覚等の五感 のみで知覚されなければならないのではなく、広告宣伝等における記述 的表示によって認識できるものでもよい。広告宣伝等の記述的表示は、 当該記述的表示の文字による情報と視覚や触覚等の五感により知覚され る情報とを互いに結合させることによって、当該素材を構成材料とする 10 商品の識別力を高めることになる。 したがって、「鍛造されたスチールが構成材料として選択され」ている ことは、原告商品の商品等表示の要素となる形態的特徴である。 (イ) 原告商品の形態の特別顕著性 a 原告が原告商品の販売を開始した平成7年3月当時、テント、ター 15 プ用ペグの構成材料には、プラスチックやアルミ等の素材が用いられ るのが一般的であり、鍛造されたスチールが用いられることは皆無で あった。 そして、鍛造に由来する表面の細かいざらつきを有し、硬質性の金 属特有の重厚感がある原告商品の外観は、原告商品の販売開始から約 20 10年が経過した平成16年当時も、他のテント、タープ用ペグと比 較して全く異質なものであったから、需要者は、外観から原告商品と 他の商品とを識別できた。また、外観で識別できない需要者がいたと しても、原告商品を手に取ったり、使用したりすれば、手触 タープ用ペグと比 較して全く異質なものであったから、需要者は、外観から原告商品と 他の商品とを識別できた。また、外観で識別できない需要者がいたと しても、原告商品を手に取ったり、使用したりすれば、手触り、硬さ、 重量感、打感、打音の違いにより、原告商品と他の商品とを容易に識 25 別することができた。さらに、原告商品を紹介する多くの雑誌記事に 9 おいて、「鋼材を鍛造した」などのように、鍛造スチール製であること が言及されており、原告のウェブサイトやカタログなどにおいても、 「鍛造」、「鍛造ペグ」という表記や、「鋼を打って叩いて形を整える」、 「プレス機で叩いて成形」、「高熱処理を施した鋼を叩き成型する製造方 法」という鍛造の製造過程が説明されていた。このように、需要者は、 5 平成16年当時、原告商品の外観等の特徴に加え、原告商品について の雑誌記事、ウェブサイトやカタログにおける表示、説明といった記 述的表示を目にすることで、原告商品が鍛造スチール製であることを 強く認識することができた。 したがって、本件特徴1①及び②は、商品等表示の要素としての、 10 客観的に他の同種商品とは異なる顕著な形態的特徴である。 b 加えて、他社の販売するテント、タープ用ペグには様々なデザイン が採用されているものの、原告が原告商品の販売を開始した平成7年 3月頃はもちろんのこと、それから約10年が経過した平成16年当 時も、本件特徴1③ないし⑥を有するペグは、原告商品以外には皆無 15 であった。 c このように、本件形態1は、客観的に他の同種商品とは異なる顕著 な特徴を有している。 また、本件形態2は、本件形態1をより具体化したものにすぎない。 したがって、原告商品の形態は、客観的に他の同種商品とは異なる 20 顕著な特徴を有しているといえる。 (ウ) 特徴を有している。 また、本件形態2は、本件形態1をより具体化したものにすぎない。 したがって、原告商品の形態は、客観的に他の同種商品とは異なる 20 顕著な特徴を有しているといえる。 (ウ) 原告商品の形態の周知性 a 販売期間及び販売数量 原告は、平成7年3月頃に原告商品の販売を開始した後、平成11 年から平成16年までの約6年間で、少なくとも63万5133本の 25 原告商品を販売し、その売上高は2億7158万8190円を下らな 10 い。その後も、原告商品の販売数及び売上高は増加し続け、平成11 年から令和2年4月までの間の原告商品の販売数量は少なくとも66 3万5618本、同期間の原告商品の売上高は26億9726万09 60円に上る。 b 販売店舗数 5 原告商品は、販売開始当初から、全国において販売されている。 原告商品の販売開始から約10年が経過した平成16年時点におい て原告商品を取り扱っていた店舗の数は、原告商品1が238店舗、 原告商品2が243店舗、原告商品3が151店舗、原告商品4が7 1店舗である。また、平成25年時点において原告商品を取り扱って 10 いた店舗の数は、原告商品1が292店舗、原告商品2が272店舗、 原告商品3が182店舗、原告商品4が94店舗である。 c 広告宣伝等 原告商品の販売開始以来、原告商品は、新聞、雑誌等で繰り返し取 り上げられているところ、これらの記事等の大半で、「スノーピーク」 15 との原告を表す表示と共に原告商品の写真が掲載され、かつ「鍛造し た」、「鍛造で作られる」、「最強ペグの秘密は“鍛造”にあり」などと、 本件形態1及び2の最大の特徴である鍛造製である旨が記載されてい る。 また、原告は、原告商品を含め、原告が販売する商品を実際に使用 20 してもら 、「最強ペグの秘密は“鍛造”にあり」などと、 本件形態1及び2の最大の特徴である鍛造製である旨が記載されてい る。 また、原告は、原告商品を含め、原告が販売する商品を実際に使用 20 してもらうイベントを開催したり、直営店や量販店の一画などに原告 商品の魅力について説明するスタッフを配置したりなどして、原告商 品を宣伝している。 d まとめ 原告が、平成7年3月頃から平成16年まで約10年間という長期 25 間にわたり継続して、膨大な数量の原告商品を全国的かつ独占的に販 11 売してきたことや、原告商品を原告の表示と共に多数の新聞、雑誌等 において広告宣伝してきたことなどにかんがみれば、平成16年12 月31日時点において、また、遅くとも平成24年までには、本件形 態1及び2を有する原告商品の形態が周知となっていたことは明白で ある。 5 ウ 本件形態1及び2は機能的形態であること等を理由に特別顕著性(自他 識別力)が否定されるものではないこと 機能的形態であることを理由に特別顕著性(自他識別力)が否定される のは、特定の商品形態が不可避で、他の形態を選択する余地がないような 必須の形態に限られ、ある技術的機能等の実現のために複数の商品形態が 10 考えられ、特定の商品形態以外を選択する余地がある場合には、その選択 の余地の程度に応じて、個別具体的に特別顕著性(自他識別力)の有無を 判断すべきである。 テント、タープ用ペグの技術的機能及び効用に由来する必然的、不可避 的な特徴は、①テントやタープのロープを引っ掛ける部分があること及び 15 ②ペグを地面に打ち込むための軸部分があることである。本件形態1及び 2における上記以外の特徴は、出所を表示するために記載しているロゴを 除き、いずれも機能に関連する特徴ではあるものの、それらの特徴に係る ペグを地面に打ち込むための軸部分があることである。本件形態1及び 2における上記以外の特徴は、出所を表示するために記載しているロゴを 除き、いずれも機能に関連する特徴ではあるものの、それらの特徴に係る 形態には多数の選択肢が存在するのであるから、必然的な形態ではない。 このようにテント、タープ用ペグの形態に多くの選択肢がある状況下に 20 おいて、原告は、原告商品の形態として本件形態1及び2を選択したもの であり、その点に他の同種商品と異なる独自性(自他識別力)がある。 エ 本件形態1及び2の特別顕著性及び周知性の判断において原告意匠権の 存在を考慮する必要はないこと (ア) 原告意匠権に基づく独占期間内に獲得した特別顕著性及び周知性も商 25 品等表示該当性の基礎として考慮できること 12 a 意匠権の存続期間中に広告宣伝しても不競法による保護を得られな いのであれば、販売開始から3年間は、不競法2条1項3号に基づい て商品の形態が保護されることも考慮して、意匠登録を受けず、当該 3年間で当該形態について同項1号所定の商品等表示を獲得し、以後 25年間より長期にわたって保護を受けるという判断の方が、合理性 5 を有することとなり、意匠権制度を設けた趣旨が没却される。そして、 同項1号に基づく保護は、権利者による販売実績、広告宣伝の継続等 がなければ失われるものであるから、意匠権の存続期間中に行った広 告宣伝等により獲得した周知性も商品等表示該当性の基礎として考慮 すべきである。 10 b ある技術を実現するための形態を一つしかとりえない場合、かかる 形態につき特許法や実用新案法によらない半永久的な保護を認めれば、 その技術を有した製品を市場に参入させることができず、公正な競争 を害する。 他方で、デザインを保護する意匠法は、ある技術を実現する 形態につき特許法や実用新案法によらない半永久的な保護を認めれば、 その技術を有した製品を市場に参入させることができず、公正な競争 を害する。 他方で、デザインを保護する意匠法は、ある技術を実現するために 15 形態がその一つに絞られるのであればともかく、そうでない限り、同 技術の効果を達成する他の形態を選択して市場に参入することが可能 であり、公正な競争を害するものではない。すなわち、意匠法は、物 品の機能を確保するために不可欠な形状等からなる意匠(同法5条3 号)や、市場において混同を生ずるおそれのある意匠(同条2号)の 20 ような、市場における公正な競争を阻害するような意匠を登録の対象 から除外している。原告意匠が実際に意匠登録されたということは、 特許庁において、その形状等が物品の機能を確保するために不可欠な 形状等ではなく、市場における公正な競争を阻害するような意匠では ないと判断されたことになる。 25 このように、特許権及び実用新案権とは異なり、意匠権の対象とな 13 った形状等については、第三者は、当該技術の機能効果を果たす他の 形状等を選択して市場に参入することが可能であるから、原告意匠を 不競法で保護しても、公正な競争を阻害するといった事態は生じない。 c また、原告は、本件において、原告意匠権の効力の及ぶ形態よりも 狭い範囲について、すなわち、「鍛造されたスチールを構成材料とする 5 こと」及び「硬く、重みがあり、光沢感のない金属の質感を有するこ と」との特徴を有する形態に限定して、原告商品の形態が商品等表示 に該当すると主張している。そして、原告意匠の範囲に、鍛造スチー ル製という特徴は含まれていないから、原告意匠権は、上記各特徴が 需要者に原告の周知な商品等表示の特徴として認識されていることと 10 全く関係がない。すな いる。そして、原告意匠の範囲に、鍛造スチー ル製という特徴は含まれていないから、原告意匠権は、上記各特徴が 需要者に原告の周知な商品等表示の特徴として認識されていることと 10 全く関係がない。すなわち、本件形態1及び2が周知性を獲得するに 至ったことは、原告の努力の賜物である。 (イ) 原告意匠権の存続期間満了後に十分な期間があったこと 原告意匠権の存続期間満了日から被告商品が販売されるまで、約1年 の期間があるところ、原告は、その間も、原告意匠権の存続期間満了前 15 と同様の広告宣伝と販売実績を継続し、本件形態1及び2が周知性を獲 得するために十分な実績を残している。 オ 原告商品の形態が獲得した商品等表示該当性は喪失していないこと 前記イのとおり、原告商品の形態は、販売開始から10年が経過した平 成16年頃、遅くとも被告商品の販売開始前の平成24年頃までには、原 20 告の周知な商品等表示となっていた。 また、平成24年から現在に至るまで、原告商品の販売数量及び売上高 が著しく減少したり、広告宣伝や新聞雑誌等で取り上げられる頻度が著し く減少したりするといった事実もない。 したがって、原告商品の形態がいったん獲得した商品等表示該当性は、 25 現時点においても、喪失していない。 14 カ 小括 以上のとおり、原告商品全体の形態は、原告商品の販売開始から10年 が経過した平成16年頃までには、また、遅くとも被告商品の販売開始前 の平成24年頃までには、原告の周知な商品等表示となり、現在もその状 態が継続している。 5 (被告らの主張) ア 原告商品の形態について (ア) 本件形態1は抽象的かつ不明確で、形態としての特定性を欠くもので あること a 本件特徴1①について 10 不競法における「商品の形態」とは、「需要者が通 ア 原告商品の形態について (ア) 本件形態1は抽象的かつ不明確で、形態としての特定性を欠くもので あること a 本件特徴1①について 10 不競法における「商品の形態」とは、「需要者が通常の用法に従った 使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部 の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう」 (不競法2条4項)から、需要者が知覚によって認識することができな い特徴は、同法の保護の対象である商品等表示としての商品の形態に 15 当たらない。 ある商品が「鍛造」との製法で製造されたものであるとしても、原 材料やその後の加工如何で全く異なる外観(光沢・質感)となり得る から、「鍛造」であるか否かを商品の外観のみから区別することは不可 能である。同様に、「スチール」との材料の点についても、炭素を含む 20 鉄の合金であれば広くこれに該当し、その最終製品は様々な形態をと り得るから、外観のみから材料がスチールか否かを判断することは不 可能である。そもそも、打音、打感、質感、重量感といった五感の作 用により知覚できる要素を離れて、「鍛造されたスチール」を構成材料 とするとの特徴を有することのみで同法2条1項1号所定の商品等表 25 示に該当する商品の形態を特定できるとすることは、そのような材料 15 及び製造方法自体を保護することとなり不当である。 したがって、「鍛造されたスチールが構成材料として選択されている」 という点(本件特徴1①)は、単に原告商品の製造方法及び材料につ いて述べたものにすぎず、原告商品の形態を特定する特徴となり得な い。 5 b 本件特徴1②について 「硬く」、「重みがある」との特徴は、商品の形態ではなくその性質に ついて述べたものである上、「硬さ」や「重み」の程度も具体的に特定 され 定する特徴となり得な い。 5 b 本件特徴1②について 「硬く」、「重みがある」との特徴は、商品の形態ではなくその性質に ついて述べたものである上、「硬さ」や「重み」の程度も具体的に特定 されておらず、極めて抽象的である。また、「光沢感のない」との特徴 については、あらゆる商品の光沢感は「有」か「無」のどちらかに分 10 類し得るのであるから、このような抽象的な特徴は、特別顕著性や周 知性を基礎付ける要素となり得ない。さらに、「金属の質感」について も、「金属」の素材や製法は様々で、その「質感」も素材や製法に応じ て変化し得るものであるから、「金属の質感」との特徴は、個別具体的 な素材、製法により製造された原告商品とはかけ離れたものを措定し 15 てその特徴を述べるものにすぎない。 したがって、「硬く、重みがあり、光沢感のない金属の質感を有する」 との点(本件特徴1②)は、原告商品の形態を特定する特徴となり得 ない。 c 本件特徴1③ないし⑥について 20 本件特徴1③ないし⑥においては、商品の形態の特定において必須 となる全体の形状並びにペグという商品に特有の構成要素である「軸 部」、「頭部」、「打撃部」、「フック部」、「穴」等における具体的な形状、 寸法及び位置関係が何ら具体的に特定されていない。本件特徴1③な いし⑥は、いずれもペグという商品の構成要素として、ごくありふれ 25 た形状及び構造を示すものにすぎないし、これらの特徴を全て充足す 16 るペグについても数多くのバリエーションが想定されるから、本件特 徴1③ないし⑥により特定される形態は、需要者が、その形状、構造 及び位置関係を知覚によって具体的に認識することはできないもので ある。 また、ペグの「頭部フック部分の長さ」には、フックの外縁部分の 5 長さと、ロープを引っ掛け 形態は、需要者が、その形状、構造 及び位置関係を知覚によって具体的に認識することはできないもので ある。 また、ペグの「頭部フック部分の長さ」には、フックの外縁部分の 5 長さと、ロープを引っ掛ける内側部分の長さの2通りがあり得るとこ ろ、本件特徴1④の「頭部フック部分の長さ」がどこを指すのかが明 らかでない。 さらに、本件特徴1⑤の「引き抜く際にハンマーのフックをひっか ける」との特徴は、原告商品の用途や使い方を示すものであって、客 10 観的な形状を特定するものではないから、原告商品の形態的特徴とな り得ない。そうすると、本件特徴1⑤のうち、原告商品の形態の特定 として意味を有するのは、「頭部において、フックとは別に穴があるこ と」という特徴のみであるが、このような特定では頭部のどこに穴が あるのかが不明確である。 15 加えて、本件特徴1⑥は、原告商品の客観的な外観に反している上、 どこが「打ち込み部」であるのかも特定されておらず、不明確である。 d まとめ したがって、本件形態1は、具体的な原告商品を離れた抽象的かつ 観念的なもので、かつ、形態の特定として不明確なものであるから、 20 原告商品の出所を識別する表示となり得ない。 (イ) 本件形態2について 本件特徴2①について、「鍛造されたスチールが構成材料として選択さ れた」との点は、前記(ア)aのとおり、需要者が知覚によって認識できる 形態ではない。また、原告は、「フック」と「軸とフックの隙間部分」を 25 合わせたものを「掛具部」と称していると考えられるところ、「板状」な 17 のは「掛具部」ではなく「フック」であるから、「板状の掛具部」は「板 状のフック」とするのが正当である。 さらに、本件特徴2③について、原告商品のロゴに関する正しい形態 は、「軸の上方には、『SNOW のは「掛具部」ではなく「フック」であるから、「板状の掛具部」は「板 状のフック」とするのが正当である。 さらに、本件特徴2③について、原告商品のロゴに関する正しい形態 は、「軸の上方には、『SNOWPEAK』のロゴが刻印されている」で ある。 5 加えて、本件特徴2⑤の「鍛造されたスチール」であるとの点は、前 記(ア)aのとおり、需要者が知覚によって認識できる形態ではなく、「硬 く」、「重みがあ(る)」、「光沢感のない」、「金属の質感」といった各要素 も不明確かつ抽象的で、原告商品の形態を特定するに足りるものとはい えない。 10 イ 本件形態1及び2はいずれも特別顕著性を有しないこと (ア) 本件形態1について a 原告商品と、平成24年以前に発売された本件同種商品1ないし3 とを対比すると、本件同種商品1及び3は、本件特徴1①ないし⑥の うち円柱形の打撃部(本件特徴1③)以外の全てを備えており、本件 15 同種商品2は、本件特徴1①ないし⑥の全てを備えている。そして、 本件同種商品1は、世界的な著名ブランドである「コールマン」の商 品で、同社の製品カタログに掲載されて販売されていたこと、本件同 種商品2は、販売開始後1年半で約100件もの口コミが付けられて いたこと等を踏まえると、これらの同種商品が市場において相当数販 20 売されていたことは明らかである。 したがって、本件形態1は、平成24年時点において、特別顕著性 を有しない。 b また、平成29年11月10日より前の時点で、鍛造スチール製の 同種商品は10商品存在し、本件特徴1③ないし⑥についても、これ 25 らを備える商品は、各特徴それぞれにつき約10商品以上に上る。 18 令和4年3月1日時点でみると、鍛造スチール製の同種商品は18 商品存在し、本件特徴1③ないし⑥を備える も、これ 25 らを備える商品は、各特徴それぞれにつき約10商品以上に上る。 18 令和4年3月1日時点でみると、鍛造スチール製の同種商品は18 商品存在し、本件特徴1③ないし⑥を備える同種商品は、各特徴(細 部の構成のみが異なるものを含む。)それぞれにつき、約40商品存在 する。 このように、鍛造スチール製であるとの点及び本件特徴1③ないし 5 ⑥は、いずれも同種商品においてありふれたものであるところ、同種 商品においてありふれた形態的特徴を組み合わせても、ありふれた形 態にしかならない。 c さらに、平成29年から令和2年にかけて、鍛造スチール製である との点を除く本件形態1の全ての特徴を備えている複数の意匠につき、 10 意匠に係る物品をペグ又はテント用ペグとする意匠登録出願がされ、 いずれも意匠登録の査定がされた。特に原告商品と形態が酷似する意 匠については、その審査過程で原告意匠が参照された上で、意匠登録 の査定がされている。 これは、本件形態1はありふれた形態にすぎず、それ以外の具体的 15 な形態上の差異があることをもって、本件形態1と上記意匠登録出願 に係る意匠とが非類似と評価されていることにほかならない。 d したがって、本件形態1は、特別顕著性を有しない。 (イ) 本件形態2について a 本件形態2のうち、本件形態1との相違点である本件特徴2④ウな 20 いしキを備える同種商品は、平成29年11月10日より前の時点で、 各特徴につきそれぞれ10商品以上、令和4年3月1日時点で、各特 徴につきそれぞれ約40商品以上存在する。 このように、本件特徴2④ウないしキは、いずれも同種商品におい てありふれたものであるところ、同種商品においてありふれた形態的 25 特徴を組み合わせても、ありふれた形態にしかならない。 19 このように、本件特徴2④ウないしキは、いずれも同種商品におい てありふれたものであるところ、同種商品においてありふれた形態的 25 特徴を組み合わせても、ありふれた形態にしかならない。 19 b 前記(ア)cと同様に、平成29年から令和2年にかけて、鍛造スチー ル製であるとの点を除く本件形態2の全ての特徴を備えている複数の 意匠について、意匠に係る物品をペグ又はテント用ペグとする意匠登 録出願がされ、特に原告商品と形態が酷似する意匠については、その 審査過程で原告意匠が参照された上で、いずれも意匠登録の査定がさ 5 れていることからすると、本件形態2はありふれた形態にすぎず、そ れ以外の具体的な形態上の差異があることをもって、本件形態2と上 記意匠登録出願に係る意匠とが非類似と評価されているといえる。 c したがって、本件形態2は、特別顕著性を有しない。 ウ 本件形態1及び2は鍛造スチールを構成材料とするペグ(以下「鍛造ペ 10 グ」ということがある。)としての機能に由来する技術的形態、競争上似ざ るを得ない形態又は独占適応性を認めるべきではない形態であること (ア) 本件形態1について a 本件特徴1①及び②について ペグを製造するに当たり、鍛造スチールを構成材料とすることは、 15 強度を有するペグを製造するという機能的な要請に由来するものであ ると共に、技術、コストの面からこれに代わる選択肢が容易に見つか らないものであるから、競争上似ざるを得ない事項である。また、ス チールはごく一般的な材料であり、鍛造という製法自体も古くから存 在する一般的な技術であるから、独占適応性もない。このように、本 20 件特徴1①は、鍛造ペグにおける必須の性質であり、同②は、同①に より不可避的、必然的にもたらされるものである。したがって、これ らの特徴 般的な技術であるから、独占適応性もない。このように、本 20 件特徴1①は、鍛造ペグにおける必須の性質であり、同②は、同①に より不可避的、必然的にもたらされるものである。したがって、これ らの特徴は、鍛造ペグとしての機能に由来する技術的形態、競争上似 ざるを得ない形態及び独占適応性を認めるべきではない形態に当たる。 b 本件特徴1③及び④について 25 鍛造ペグのように深く地面に打ち込むペグであれば、その打撃部は 20 ハンマーで叩きやすいように大きい方が望ましく、その形態として円 柱を選択することも自然である。 また、テントやタープのロープをしっかりと地面に固定するために は、ある程度大型のフックであることが必須となるし、当該ロープを ペグに引っ掛けて使いやすくすることを考えると、頭部フック部分の 5 長さも必然的に25ないし40mmほどの範囲に収まる。 c 本件特徴1⑤及び⑥について 地中深くに打ち込まれる鍛造ペグにおいては、引き抜く際に土砂と の間に大きな抵抗力(摩擦力)が発生するから、本件特徴1⑤のよう に、ハンマーのフックや他のペグを引っ掛けて抜きやすくするための、 10 ペグの直径よりやや大きいサイズの穴がほぼ必須となる。本件特徴1 ⑥についても、鍛造ペグが地面に刺して使用する器具である以上、打 ち込み時に土中に埋まってしまうことのないヘッド部分にロゴを設け、 かつ、先端側を細くするのは必然的な形態といえる。 d まとめ 15 本件特徴1①ないし⑥及びその組合せである同⑦は、いずれも、鍛 造ペグの機能に由来する技術的形態であり、競争上似ざるを得ない形 態であると共に独占適応性を欠く形態である。 (イ) 本件形態2について a 本件特徴2④ウについて 20 ペグの軸にはハンマーの打撃により大きな力が加わるため、軸の延 長 争上似ざるを得ない形 態であると共に独占適応性を欠く形態である。 (イ) 本件形態2について a 本件特徴2④ウについて 20 ペグの軸にはハンマーの打撃により大きな力が加わるため、軸の延 長上に穴を設けてしまうと、強度が保たれずに穴がつぶれてしまった り、ハンマーの力が逃げてしまったりするため、軸からずらした位置 に穴を設けることが望ましい。また、穴をフックの隙間部分より下に 設けてしまうと、ペグを打ち込んだ際に土中に埋まってしまい、引き 25 抜く際にハンマーのフック等を差し込んで抜きやすくするとの役割を 21 果たせなくなるから、必ずフックの隙間部分よりも上に穴を設ける必 要がある。 さらに、鍛造ペグは、スチール製の丸棒を熱してから金型でプレス し、ハンマーで叩いて成形するとの工程で製造されるところ、軸を挟 んでフックと逆の側に穴を設けるには、当該丸棒を太くする必要があ 5 り、プレス加工の際に廃棄部分が増えて材料効率が悪くなる。そのた め、穴はフックと同じ側に設けることが好ましく、その場合の穴の位 置として最も自然なのは、軸とフックの隙間部分の直上である。 そして、当該形態が、頭部に穴及び長さのあるフックを有する同種 商品のほぼ全てに備わっていることも、上記の理解の正当性を裏付け 10 ている。 したがって、本件特徴2④ウは、技術的機能等に由来する形態、競 争上似ざるを得ない形態であって、独占適応性に乏しいものである。 b 本件特徴2④エについて フックの伸びる方向については、軸から見て内向きにするとロープ 15 が入れにくくなり、外向きにするとロープが外れやすくなるから、フ ックを軸と平行に直線的に伸ばすのが最もバランスが良く、製造する 際も簡単である。そして、当該形態が頭部に長さのあるフックを有す る同種商品のほぼ全てに備わっ 向きにするとロープが外れやすくなるから、フ ックを軸と平行に直線的に伸ばすのが最もバランスが良く、製造する 際も簡単である。そして、当該形態が頭部に長さのあるフックを有す る同種商品のほぼ全てに備わっていることも、上記の理解の正当性を 裏付けている。 20 したがって、本件特徴2④エは、技術的機能等に由来する形態、競 争上似ざるを得ない形態であり、独占適応性に乏しいものである。 c 本件特徴2④オについて 鍛造ペグは、スチール製の丸棒を熱してから金型でプレスし、ハン マーで叩いてペグを成形するとの工程で製造されるところ、その過程 25 で、フック部分は、幅をもたせるために叩いて引き伸ばされるため、 22 必然的に本体部分(軸)よりも薄くなる。また、本体部分(軸)は、 打込時にハンマーの力を受け止めるためにある程度厚く頑丈に作る必 要があるものの、掛具部は、ロープの張力に耐えられる程度の強度が あれば足り、軽量化のためには薄い方が望ましい。掛具部の横幅につ いては、穴を掛具部に設けると、それだけで掛具部の横幅は軸の直径 5 より大きくなるし、他のペグ等を通して引き抜くという穴の役割上、 穴の直径は必然的に軸の直径より大きくなる。そして、フックは必ず 本体(軸)から見て穴の外側に形成されるから、穴の直径にフックの 幅を足すと、掛具部の幅は軸の直径の1.5倍以上にならざるを得な い。そして、当該形態が頭部に穴及び長さのあるフックを有する同種 10 商品のほぼ全てに備わっていることも、上記の理解の正当性を裏付け ている。 したがって、本件特徴2④オは、技術的機能等に由来する形態、競 争上似ざるを得ない形態であり、独占適応性に乏しいものである。 d 本件特徴2④カについて 15 テントやタープのロープの直径は、4ないし6mm程度とされてい るため、 機能等に由来する形態、競 争上似ざるを得ない形態であり、独占適応性に乏しいものである。 d 本件特徴2④カについて 15 テントやタープのロープの直径は、4ないし6mm程度とされてい るため、これを引っ掛けるためのフックと軸の間の隙間部分の大きさ も、ロープの直径に合わせて必然的に決まる。また、前記cのとおり、 穴の大きさは軸の直径よりやや大きい程度となるから、前記aの理由 により当該隙間部分の直上に穴を設けると、必然的に軸の直径、穴の 20 直径及びフックの隙間はいずれも同程度となる。そして、当該形態が 頭部に穴及び長さのあるフックを有する大半の同種商品に備わってい ることも、上記の理解の正当性を裏付けている。 また、フックの先端の直径がフックの隙間より小さい、すなわち、 フックの直径が軸部の直径より小さいのは、前記cのとおり、フック 25 には軸部ほどの強度が要求されないことと軽量化のためである。そし 23 て、当該形態が頭部に長さのあるフックを有する同種商品のほぼ全て に備わっていることも、上記の理解の正当性を裏付けている。 したがって、本件特徴2④カは、技術的機能等に由来する形態、競 争上似ざるを得ない形態であり、独占適応性に乏しいものである。 e 本件特徴2④キについて 5 掛具部の上部が丸みを帯びているのは、人に接触した際に痛みが少 なく取り扱いやすいようにするためである。そして、当該形態が掛具 部を有する大半の同種商品に備わっていることも、上記の理解の正当 性を裏付けている。 したがって、本件特徴2④キは、技術的機能等に由来する形態、競 10 争上似ざるを得ない形態であり、独占適応性に乏しいものである。 f まとめ 前記aないしeの各特徴は、本件形態1の抽象的な特徴を具体化し たものにすぎないから、前記(ア)の主張と合わ 態、競 10 争上似ざるを得ない形態であり、独占適応性に乏しいものである。 f まとめ 前記aないしeの各特徴は、本件形態1の抽象的な特徴を具体化し たものにすぎないから、前記(ア)の主張と合わせると、結局のところ、 本件特徴2①ないし⑤及びその組合せである同⑥は、いずれも鍛造ペ 15 グの機能に由来する技術的形態であり、競争上似ざるを得ない形態で あると共に独占適応性を欠く形態である。 エ 原告意匠権に基づく独占期間内に獲得した特別顕著性及び周知性のみを もって商品等表示該当性を認めるべきではないこと (ア) 意匠権等の知的財産権の存在により独占状態が生じ、これに伴って当 20 該意匠権に係る形態につき周知性ないし著名性を獲得するのは当然のこ とであるから、この過程で獲得した特別顕著性及び周知性のみを根拠と して、当該形態に不競法の適用を認めることは、結局、知的財産権の存 続期間経過後も、第三者による当該形態の利用を妨げてしまうことに等 しい。したがって、商品等表示該当性を判断するに当たっては、意匠権 25 等による独占状態の過程において獲得した特別顕著性及び周知性を考慮 24 すべきではなく、意匠権等に基づく独占状態の影響が払拭された後でも なお当該形態に特別顕著性及び周知性が認められるか否かに基づいて判 断すべきである。 (イ) 原告意匠は、本件形態1との関係において、材料や質感に関する特徴 (本件特徴1①及び②)を除く全ての特徴を備えている。なお、原告商品 5 における具体的なフック部分の長さの点は、登録意匠に記載がないもの の、別紙原告意匠図面目録のとおり、ペグ全体の長さを基準としたとき のフック部分の長さの割合は、本件形態1も原告意匠もほぼ同じである。 したがって、原告意匠が本件形態1と同一又は類似するものであること は明らかである 匠図面目録のとおり、ペグ全体の長さを基準としたとき のフック部分の長さの割合は、本件形態1も原告意匠もほぼ同じである。 したがって、原告意匠が本件形態1と同一又は類似するものであること は明らかである。 10 また、原告意匠は、本件形態2との関係においても、材料や質感に関 する特徴(本件特徴2①及び⑤)を除く全ての特徴を備えている。一方 で、構成材料やそれに起因する外観、穴の大きさ、フックの太さといっ た点は、いずれも需要者等が外観上注目する大きな差異点とはいえない から、原告意匠と本件形態2は類似する。 15 このように、本件形態1及び2のいずれを前提としても、原告商品の 形態と原告意匠とは、同一又は類似するものである。 (ウ) そうすると、原告商品の形態に対応した原告意匠権が平成24年5月 30日まで存続していたのであるから、仮に原告が主張するように、同 日時点で原告商品の形態について特別顕著性及び周知性が認められると 20 しても、それは原告意匠権の存在による独占状態に伴って生じた結果で あるから、そのような独占状態の過程において獲得した特別顕著性及び 周知性のみを根拠として、原告商品の形態についての商品等表示該当性 を肯定することはできない。 そして、原告意匠権の存続期間が満了して間もなく、多くの他社がテ 25 ント、タープ用ペグ市場に参入してきたため、原告商品の形態と同一又 25 は類似の形態を有するテント、タープ用ペグが多数販売されるに至って おり、現在もその数は減るどころか増える一方である。 (エ) したがって、原告意匠権による独占状態の影響が払拭された後で、原 告商品の形態が特別顕著性及び周知性を獲得したとはいえない。 オ 原告商品の形態が獲得した出所識別能力は喪失していること 5 著名ブランドの「コール 意匠権による独占状態の影響が払拭された後で、原 告商品の形態が特別顕著性及び周知性を獲得したとはいえない。 オ 原告商品の形態が獲得した出所識別能力は喪失していること 5 著名ブランドの「コールマン」から、平成17年に、同じ鍛造スチール を構成材料とし、形態が酷似するテント、タープ用ペグが発売され、その 後も、鍛造スチールを構成材料とする点を含め、原告商品と同一の形態的 特徴を多く備えた同種商品が次々と発売され、これらの同種商品の多くは、 市場において十分な販売実績があった。 10 したがって、仮に、原告商品の形態が、平成16年時点において、一定 の出所識別能力を有していたとしても、当該出所識別能力は平成17年時 点をピークとして、以後徐々に下降し続け、それから10年以上が経過し た平成29年までの間に希釈化し、優に消滅している。 カ アンケートの結果について 15 原告が実施したアンケートの結果によれば、ペグを使用する機会が多い 「キャンプ・登山関心層」においても、原告商品の外観自体から原告のブラ ンドを想起する者は3パーセント弱であり、メーカー又はブランド名を答 えるように誘導したり、選択肢を示したりした場合でも、正解率は15な いし20パーセントにとどまる。かえって、他のメーカー又はブランドを 20 回答したり、不明と回答したりする者が大半を占め、選択肢を示しても不 正解の割合が80パーセント近い。 したがって、アンケートの結果からも、原告商品の形態が原告の周知な 商品等表示であるとはいえない。 キ 小括 25 以上によれば、原告が損害賠償請求をする期間の始期である平成29年 26 11月10日以降、現在に至るまで、原告商品の形態が周知な商品等表示 であったことはない。 (2) 争点1-2(原告商品の形態に係る商品等表示と被告商品 する期間の始期である平成29年 26 11月10日以降、現在に至るまで、原告商品の形態が周知な商品等表示 であったことはない。 (2) 争点1-2(原告商品の形態に係る商品等表示と被告商品の形態に係る商 品等表示が同一又は類似であるか)について (原告の主張) 5 ア 被告商品の形態に係る商品等表示 被告商品の形態は、以下の共通する特徴を有する。 ① 鍛造されたスチールが構成材料として選択されている。 ② 上記①により、硬く、重みがあり、光沢感のない金属の質感を有す ることが外観的に明らかである。 10 ③ 頭部のうち打撃部が円柱形であり、その部分が頭部全体よりやや大 きくなっている。 ④ 頭部フックの長さが25ないし40mm程度であり、全体に比して 大型である。 ⑤ 頭部において、フックとは別に引き抜く際にハンマーのフックを引 15 っかける穴がある。 ⑥ 会社名(ブランド名)のロゴが記載されている上部から打ち込み部 にかけてなだらかに細くなっており、打ち込み部分の先端もなだらか に細くなっている。 ⑦ 上記①ないし⑥が組み合わされている。 20 そして、被告らは、この特徴を備える被告商品の形態を、商品等表示と して使用している。 イ 原告商品の商品等表示と被告商品の商品等表示との対比 (ア) 本件形態1に係る商品等表示との対比 被告商品の商品等表示は、原告商品の最大の特徴である本件特徴1① 25 を有し、かつ、その結果として本件特徴1②を有する。また、被告製品 27 の形態は、本件特徴1③ないし⑥を有し、本件特徴1①ないし⑥を組み 合わせている(同⑦)点で、原告商品の細部にわたる形態をそのまま剽 窃するものである。 したがって、被告商品の商品等表示は、原告商品の商品等表示と酷似 している。 5 (イ) 本 ①ないし⑥を組み 合わせている(同⑦)点で、原告商品の細部にわたる形態をそのまま剽 窃するものである。 したがって、被告商品の商品等表示は、原告商品の商品等表示と酷似 している。 5 (イ) 本件形態2に係る商品等表示との対比 a 被告商品は、鍛造されたスチールを構成材料としており、上方がや や太く、下方がそれに比べると細くなっている軸及び軸の上方側面に 軸に沿って設けられたテント及びタープのロープを引っ掛けるための 板状の掛具部から構成されているから、本件特徴2①を備えている。 10 b 被告商品の軸の頭部は、楕円の短い円柱形で軸の他の部分より大き くなっている(以下「被告商品打撃部」という。)から、被告商品は、 本件特徴2②を備えている。 c 被告商品においても、記載内容が異なるものの、軸の上方に英文字 でロゴが記載されているから、被告商品は、本件特徴2③を備えてい 15 る。 d 被告商品の掛具部には、ハンマーのカギ部を引っ掛けるための穴 (本件特徴2④ア)及びロープを引っ掛けるためのフック(本件特徴2 ④イ)が設けられている。当該穴は、被告商品打撃部の斜め下に位置 し、軸とフックの隙間部分の直上に位置し、掛具部の幅の半分以上を 20 占め、軸に接するように位置し、フックの上に及んでいる(本件特徴 2④ウ)。掛具部のフックの先端の長さは、掛具部全体の長さのおよそ 半分かそれ以上であり、フックは軸と平行に直線的に伸びている(本 件特徴2④エ)。そして、掛具部の厚さは掛具部の設けられている部分 の軸の直径よりやや薄く、その横幅は当該軸の直径の1.5倍以上で 25 あり(本件特徴2④オ)、掛具部のフックと軸との間の隙間はその真横 28 に位置する軸の直径とほぼ同じ比率であり、フックの先端の直径はこ れよりやや小さく(本件特徴2④カ)、掛具部の 25 あり(本件特徴2④オ)、掛具部のフックと軸との間の隙間はその真横 28 に位置する軸の直径とほぼ同じ比率であり、フックの先端の直径はこ れよりやや小さく(本件特徴2④カ)、掛具部の上部は、掛具部の穴に 沿うように丸みを帯びている(本件特徴2④キ)。 したがって、被告商品は、原告商品の本件特徴2④アないしキを全 て備えている。 5 e 被告商品は、鍛造されたスチールを構成材料として選択しているこ とから、硬く、重みがあり、光沢感のない金属の質感を有することが 外観的に見て取れるから、本件特徴2⑤を備えている。 f 前記aないしeのとおり、被告商品は、本件特徴2①ないし⑤をい ずれも備えており、それらが組み合わされているから、本件特徴2⑥ 10 を備えている。 (ウ) 以上のとおり、被告商品の商品等表示は、原告商品の本件形態2に係 る商品等表示の特徴を全て備えている。 そして、前記(1)(原告の主張)ア(イ)のとおり、原告商品は、これら の形態的特徴により、くちばし(フック)、首(フックと平行に伸びる 15 軸)、目(掛具部の穴)からなるフラミンゴの頭部のような印象を需要者 に与え、需要者の注意を強く引き付けるものであるところ、被告商品も 同じ形態的特徴を備えており、被告商品においても原告商品と同じよう にフラミンゴの頭部のような印象を需要者に与える。 したがって、本件形態2に係る商品等表示との対比においても、被告 20 商品の商品等表示は、原告商品の商品等表示と酷似している。 ウ 被告らの主張する相違点について 被告商品は、被告商品打撃部分、すなわち、フックから連なる部分がハ ンマーで打撃する部分の上端まで達している点において、円柱状の打撃部 分が出っ張っている原告商品と相違しているものの、被告商品には被告商 25 品打 告商品打撃部分、すなわち、フックから連なる部分がハ ンマーで打撃する部分の上端まで達している点において、円柱状の打撃部 分が出っ張っている原告商品と相違しているものの、被告商品には被告商 25 品打撃部分の下部に全周囲にわたるくびれがあることで、打撃部分のみが 29 出っ張り円柱形に見える外観となっていることから、当該相違点は全体の 印象に特に影響を与えない些末なものである。 また、①軸部の断面形状が楕円であること、②カラーバリエーションを 有すること、③「ELLISSE」の刻印があることは、いずれも被告商 品の特徴といえるほどのものではないし、需要者が原告商品と被告商品と 5 を離隔的に観察した場合にその差を認識することは困難なものである。 したがって、原告商品の形態と被告商品との形態との間に、被告らが主 張するような相違点があるとしても、これらは、原告商品の形態と被告商 品の形態とに共通するフラミンゴの頭部のような印象を凌駕するものでは ないから、被告商品の形態に係る商品等表示が、原告商品の本件形態1及 10 び2に係る商品等表示に類似していることを否定する根拠とはならない。 エ 小括 したがって、被告商品の形態に係る商品等表示は、原告商品の形態に係 る商品等表示と同一であるか、又は少なくとも類似している。 (被告らの主張) 15 ア 原告商品の本件形態1に係る商品等表示と被告商品の形態に係る商品等 表示との対比 (ア) 被告商品の形態に係る商品等表示 a 被告商品の形態に係る商品等表示が、原告の主張する本件特徴1① ないし⑦のうち、以下の特徴を有することは認める(以下、頭書の番 20 号に従って「共通点1①」などという。)。 ① 鍛造されたスチールが構成材料として選択されている。 ④′ フックの長さが25ないし40mm程度であ 特徴を有することは認める(以下、頭書の番 20 号に従って「共通点1①」などという。)。 ① 鍛造されたスチールが構成材料として選択されている。 ④′ フックの長さが25ないし40mm程度である。 ⑤ 頭部において、フックとは別に引き抜く際にハンマーのフック を引っかける穴がある。 25 ⑥ 会社名(ブランド名)のロゴが記載されている上部から打ち込 30 み部にかけてなだらかに細くなっており、打ち込み部分の先端も なだらかに細くなっている。 b しかし、被告商品の形態に係る商品等表示は、以下のとおり、原告 商品の本件形態1に係る商品等表示とは異なる特徴を有する(以下、 頭書の番号に従って「相違点1①」などという。)。 5 ① 軸部の断面形状が、被告商品では楕円形であるのに対し、原告商 品では真円に近い。 ② 被告商品は、色彩豊富なカラーバリエーションを有するのに対し、 原告商品は、黒一色のみである。 ③ 被告商品は、ヘッド部分のうち打撃部が出っ張っておらず、フッ 10 ク部分の上端と一体となったなだらかな湾曲面を形成しているのに 対し、原告商品は、打撃部が円柱状に出っ張っている。 ④ 被告商品には、軸部のうち穴の真横に周方向のくびれが形成され ているのに対し、原告商品には、当該くびれがない。 ⑤ 被告商品の頭部には、商品名を示す「ELLISSE」の刻印が 15 あるのに対し、原告商品の頭部には、会社名を示す「SNOWPE AK」の刻印がある。 (イ) 共通点及び相違点の評価 a 共通点について 共通点1①についてみると、スチールを鍛造すること自体は、金属 20 製品の加工法において古くから一般的に用いられている技法で、少な くとも20商品弱以上の同種商品がこの特徴を備えている。 また、共通点1④′は、ほぼ全ての同種商品 ルを鍛造すること自体は、金属 20 製品の加工法において古くから一般的に用いられている技法で、少な くとも20商品弱以上の同種商品がこの特徴を備えている。 また、共通点1④′は、ほぼ全ての同種商品に備わっている形態で あり、同⑤も、「フックとは別に穴がある」という意味において、頭部 に穴及び長さのあるフックを備えている全ての同種商品がこれを備え 25 ている。 31 さらに、共通点1⑥についても、少なくとも20商品以上の同種商 品で採用されている形態であり、特に鍛造ペグにおいてほぼ必須な形 態である。 加えて、前記(1)(被告らの主張)ウのとおり、本件形態1を構成す る各特徴は、いずれも鍛造ペグとしての機能に由来する技術的形態、 5 競争上似ざるを得ない形態及び独占適応性を認めるべきではない形態 に当たる。 以上のとおり、原告商品の商品等表示と被告商品の商品等表示にお ける形態上の共通点は、いずれも同種商品においてありふれた形態に すぎない。 10 b 相違点について 相違点1①に係る被告商品の形態である軸部の断面形状が楕円であ ることは、「エリッゼ」という被告商品の名称の一部ともなっているも のであると共に、地面への打ち込みやすさ、地面からの抜きやすさと のメリットをもたらすとの点で、被告商品を他の商品と差別化するた 15 めの重要な要素となっている。 相違点1②に係る被告商品の形態であるカラーバリエーションにつ いては、被告商品ほど豊富なカラーバリエーションを取り揃えた同種 商品は存在しない。暗がりや草むらにおけるペグの視認性を高める上 で役立つこと、鍛造ペグという商品の性質上、どの商品もある程度似 20 たようなデザインにならざるを得ない中、豊富な色彩の中から自分好 みの色を選べることから、需要者において好評を博している。このよ う 役立つこと、鍛造ペグという商品の性質上、どの商品もある程度似 20 たようなデザインにならざるを得ない中、豊富な色彩の中から自分好 みの色を選べることから、需要者において好評を博している。このよ うに、原告商品と被告商品とは、カラーバリエーションの有無という 点において、需要者に与える印象を大きく異にする。 相違点1③に係る被告商品の形態につき、ペグの頭部、特に打撃部 25 付近は、ペグをハンマーで地面に打ち込む際に使用者が必ず見る部分 32 であると共に、ペグという商品の使い勝手に大きく影響する部分でも あるから、ペグ全体の中でも特に注目度の高い部分である。そして、 原告商品のように打撃部が円柱形に出っ張った形状は同種商品におい てありふれている一方で、被告商品のように打撃部が出っ張っていな い形態は極めて少数であるから、相違点1③に係る被告商品の形態は、 5 それのみで他の同種商品と大きく異なる形態上の特徴である。 相違点1④に係る被告商品の形態は、それのみで他の同種商品と大 きく異なる形態上の特徴である。 相違点1⑤に係る被告商品の形態である「ELLISSE」の刻印 は、被告商品の商品名(ブランド名)であり、鍛造ペグのように競争 10 上似ざるを得ない形態を有する商品においては、自他商品を識別する ための有力な手がかりとなる。 このように、原告商品の本件形態1に係る商品等表示と被告商品の 形態に係る商品等表示との相違点は、他の同種商品において見られな い特徴的なもので、かつ、需要者に対し強い印象を与えるものである。 15 c まとめ 以上のとおり、原告商品の本件形態1に係る商品等表示と被告商品 の形態に係る商品等表示とは、他の同種商品においてありふれた形態 においてのみ共通する一方で、他の同種商品には見られない形態にお いて相違する。 とおり、原告商品の本件形態1に係る商品等表示と被告商品 の形態に係る商品等表示とは、他の同種商品においてありふれた形態 においてのみ共通する一方で、他の同種商品には見られない形態にお いて相違する。 20 イ 原告商品の本件形態2に係る商品等表示と被告商品の形態に係る商品等 表示との対比 (ア) 被告商品の形態に係る商品等表示 a 被告商品の形態に係る商品等表示が、原告の主張する本件特徴2① ないし⑥のうち、以下の特徴を有することは認める(以下、頭書の番 25 号に従って「共通点2①」などという。)。 33 ① 鍛造されたスチールが構成材料として選択されたテント、タープ 用ペグであり、上方がやや太く、下方がそれに比べると細くなって いる軸及び軸の上方側面に軸に沿って設けられたテント、タープの ロープを引っ掛けるための板状の掛具部から構成されている。 ④ 掛具部は、次の形態を有している。 5 ア ペグを地面から引き抜く際にハンマーのカギ部を引っ掛けるた めの穴が設けられている。 イ テント・タープのロープを引っ掛けるためのフックが設けられ ている。 ウ 穴は、打撃部の斜め下に位置し、軸とフックの隙間部分の直上 10 に位置する。また、穴は、掛具部の幅の半分以上を占め軸に接す るように位置し、フックの上に及んでいる。 エ フックの先端の長さは、掛具部全体の長さのほぼ半分か、それ 以上であり(25ないし40mm)、フックは軸と平行に直線的に 伸びている。 15 オ 掛具部の厚さは掛具部の設けられている部分の軸の直径よりや や薄く、横幅は当該軸の直径の1.5倍以上である。 カ フックと軸との間の隙間は、フックの横にある会社名(ブラン ド名)のロゴの記載がある箇所の軸の直径とほぼ同じ比率であり、 フックの先端の直径はこれよりやや小さい。 2 直径の1.5倍以上である。 カ フックと軸との間の隙間は、フックの横にある会社名(ブラン ド名)のロゴの記載がある箇所の軸の直径とほぼ同じ比率であり、 フックの先端の直径はこれよりやや小さい。 20 b しかし、被告商品の形態に係る商品等表示は、以下のとおり、本件 形態2とは異なる特徴を有する(以下、頭書の番号に従って「相違点 2①」などという。)。 ① 被告商品の軸の頭部は、フック部分の上端と一体となったなだら かな湾曲面を形成している。 25 ② 被告商品の頭部には、商品名を示す「ELLISSE」の刻印が 34 あるのに対し、原告商品の頭部には、会社名を示す「SNOWPE AK」の刻印がある。 ③ 被告商品における穴は、軸方向に沿う直径の全域が、フック部分 の外形線が直線を維持している範囲内に収まるように形成されてい る。 5 ④ 被告商品のカラーバリエーションのうち、表面に粉体塗装が施さ れた赤・黄・青・白・ピンク・オレンジ・紫といった色や、表面に メッキ処理が施されたゴールド・シルバー・ブロンズ・クロームと いった色は、いずれも光沢のある色合いである。 (イ) 共通点及び相違点の評価 10 前記(1)(被告らの主張)ウのとおり、原告商品の本件形態2に係る商 品等表示と被告商品の形態に係る商品等表示との共通点は、いずれも鍛 造ペグとしての機能に由来する技術的形態、競争上似ざるを得ない形態 及び独占適応性を認めるべきではない形態であって、同種商品において ありふれた形態である。 15 これに対し、原告商品の本件形態2に係る商品等表示と被告商品の形 態に係る商品等表示との相違点、特に、相違点2①及び④は、前記ア(イ) bのとおり、他の同種商品において見られない特徴的なもので、かつ、 需要者に対し強い印象を与えるものである。 ウ 小括 告商品の形 態に係る商品等表示との相違点、特に、相違点2①及び④は、前記ア(イ) bのとおり、他の同種商品において見られない特徴的なもので、かつ、 需要者に対し強い印象を与えるものである。 ウ 小括 20 以上のとおり、原告商品の本件形態1及び2に係る商品等表示と被告商 品の形態に係る商品等表示とは、両形態の相違点が与える印象が、他の同 種商品においてありふれた形態であるフラミンゴの頭部のような形状の共 通点がもたらす印象を凌駕する一方で、両形態の共通点は、いずれも鍛造 ペグとしての機能に由来する技術的形態、競争上似ざるを得ない形態及び 25 独占適応性を認めるべきではない形態であって、同種商品においてありふ 35 れた形態である。 したがって、被告商品の形態に係る商品等表示は、原告商品の形態に係 る商品等表示と類似していない。 (3) 争点1-3(被告商品の販売等が原告の商品と混同を生じさせる行為であ るか)について 5 (原告の主張) 原告の商品等表示である原告商品の形態は、テント、タープ用ペグに用い られた形態であるところ、原告商品の形態と同一又は類似した形態を、商品 等表示として、同じテント、タープ用ペグである被告商品に使用して販売又 は販売のための展示をすると、需要者において、被告商品が原告の商品であ 10 るとの誤認を生じさせるおそれがある。 実際に、インターネット上のSNSサイトやフリーマーケットサイトにお いて、一般の消費者が記事を投稿したり、商品を出品したりする際に、被告 商品に原告や原告商品の名称を付している例が生じている。 したがって、被告商品の販売及び販売のための展示は、不競法2条1項1 15 号所定の不正競争に当たる。 (被告らの主張) 否認ないし争う。 (4) 争点1-4(被告Xが被告会社と共同して被 したがって、被告商品の販売及び販売のための展示は、不競法2条1項1 15 号所定の不正競争に当たる。 (被告らの主張) 否認ないし争う。 (4) 争点1-4(被告Xが被告会社と共同して被告商品の販売等をしたか)に ついて 20 (原告の主張) 被告Xは、被告会社と共同して、被告商品の販売及び販売のための展示を している。 したがって、被告Xは、不競法2条1項1号所定の不正競争の行為主体で ある。 25 (被告らの主張) 36 否認ないし争う。 (5) 争点2(差止め及び廃棄の必要性)について (原告の主張) 前記(1)ないし(4)の各(原告の主張)のとおり、被告らは、被告商品を販 売等して、需要者に被告商品が原告の商品であるとの誤認を生じさせている 5 ところ、これは、不競法2条1項1号所定の不正競争により、原告による原 告商品の販売機会を収奪し、原告の営業上の利益を侵害するものである。 したがって、被告らに対し、不競法3条1項に基づき、被告商品の製造、 譲渡、引き渡し、譲渡及び引渡しのための展示、輸出並びに輸入の差止めを、 同条2項に基づき、被告商品の廃棄を、それぞれ命じる必要がある。 10 (被告らの主張) 否認ないし争う。 (6) 争点3(故意又は過失の有無)について (原告の主張) 被告らが被告商品を販売等するまでに、原告商品は既に約18年間販売さ 15 れており、本件形態1又は2は商品等表示として需要者の間に広く認識され ていた。また、被告らは、被告商品の商品化前に、ペグの市場を調査し、日 本国内で鍛造製のペグを販売しているのは1社のみで、被告会社が2社目で あると認識し、類似品の研究を行っていた。さらに、原告と被告会社とは、 新潟県三条市という同一地域に本店を置く競業企業であることからすると、 20 ペグを販売しているのは1社のみで、被告会社が2社目で あると認識し、類似品の研究を行っていた。さらに、原告と被告会社とは、 新潟県三条市という同一地域に本店を置く競業企業であることからすると、 20 被告らは、原告が本件形態1又は2を備える原告商品を販売していたことを 知っていた。加えて、被告らは、原告が平成25年9月に被告商品の販売停 止を求めたにもかかわらず、これを敢えて無視して、継続的に被告商品を販 売等している。 これらの事実に照らせば、被告らには、被告商品を販売等するに当たり、 25 不競法2条1項1号の不正競争行為についての故意又は過失があったといえ 37 る。 (被告らの主張) 否認ないし争う。 (7) 争点4(損害の有無及びその額)について (原告の主張) 5 ア 不競法5条1項により算定される損害額 (ア) 譲渡数量 被告らは、平成29年4月から平成30年3月までの1年間で、被告 商品を40万本以上販売しているから、平成29年11月10日から令 和2年11月9日までの3年間で、被告商品を少なくとも120万本販 10 売したといえる。 また、被告商品には、長さの違いにより、18cm、28cm、38 cm及び48cmの4種類がある。これに対し、原告商品1ないし4の 長さは、それぞれ20cm、30cm、40cm及び50cmであり、 その販売数量の割合はそれぞれ37.75パーセント、58.05パー 15 セント、3.50パーセント及び0.70パーセントである。原告商品 と被告商品の各長さはいずれも4種類で、その異同の程度に照らせば、 被告商品もその長さに応じて原告商品と同様の割合で販売されたものと 考えられるから、被告商品については、18cmのものが45万300 0本、28cmのものが69万6600本、38cmのものが4万20 、 被告商品もその長さに応じて原告商品と同様の割合で販売されたものと 考えられるから、被告商品については、18cmのものが45万300 0本、28cmのものが69万6600本、38cmのものが4万20 20 00本、48cmのものが8400本販売されたといえる。 (イ) 単位数量当たりの利益の額 原告商品1ないし4の1本当たりの利益額は、直営店及び原告のウェ ブサイト(以下「直営店等」という。)で販売する場合、これらの店舗以 外の卸先(以下「小売店等」という。)で販売する場合のそれぞれにおい 25 て、別紙損害額計算表の「原告商品」「1本当たり利益額(円)」欄記載 38 のとおりである。 そして、原告における販路ごとの原告商品の販売数量の割合は、別紙 損害額計算表の「原告商品」「販売割合」欄記載のとおりであるところ、 被告らによる被告商品の販売等がなければ販売することができた原告商 品の販路及び販売数量の割合も同様になると考えられる。 5 (ウ) まとめ 前記(ア)及び(イ)によれば、平成29年11月10日から令和2年11 月9日までの間の被告らの不正競争についての不競法5条1項により算 定される損害額は、1億9552万1704円となる。 イ 弁護士費用相当額 10 被告らの不正競争と相当因果関係のある弁護士費用は1955万217 0円を下らない。 ウ 合計 以上によれば、被告らの不正競争によって原告に生じた損害額は、2億 1507万3874円を下らない。 15 (被告らの主張) 否認ないし争う。 (8) 争点5(謝罪広告の必要性)について (原告の主張) 原告商品は、耐久性が高く、かつ、緻密なつくりの高品質な商品であるの 20 に対し、被告商品は、原告商品に比して耐久性が低く品質も低いものである から、両商品が混同されるこ ついて (原告の主張) 原告商品は、耐久性が高く、かつ、緻密なつくりの高品質な商品であるの 20 に対し、被告商品は、原告商品に比して耐久性が低く品質も低いものである から、両商品が混同されることによって、原告のブランドの価値が著しく毀 損され、原告の営業上の信用が害された。 したがって、原告の営業上の信用を回復させるためには、被告らによる別 紙広告目録記載第2の要領による同記載第1の内容の謝罪広告の掲載が必要 25 である。 39 (被告らの主張) 否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1-1(原告商品の形態が原告の周知な商品等表示であるか)について (1) 商品の形態の商品等表示該当性について 5 不競法2条1項1号の「商品等表示」とは、「人の業務に係る氏名、商号、 商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの」 をいうところ、商品の形態は、「商標」等と異なり、本来的には商品の出所を 表示する目的を有するものではないが、商品の形態自体が特定の出所を表示 する二次的意味を有するに至る場合がある。このように商品の形態自体が特 10 定の出所を表示する二次的意味を有し、同号にいう「商品等表示」に該当す るためには、その形態が「商標」等と同程度に不競法による保護に値する出 所表示機能を発揮し得ること、すなわち、①商品の形態が客観的に他の同種 商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性)、かつ、②その形態が 特定の事業者によって長期間独占的に利用され、又は極めて強力な宣伝広告 15 や爆発的な販売実績等により、需要者においてその形態を有する商品が特定 の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)を要 すると解するのが相当である。 本件において、原告商品の形態の商品等表示該当性を検 り、需要者においてその形態を有する商品が特定 の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)を要 すると解するのが相当である。 本件において、原告商品の形態の商品等表示該当性を検討するに当たり、 その判断の基準となる需要者については、原告が、主にキャンプ用品、登山 20 用品等の開発・製造・販売等を業とする株式会社であり、原告商品が、キャ ンプ等のアウトドア・レジャーで使用するテント、タープ用ペグであること (前提事実(1)ア及び(2)ア)に照らし、我が国においてキャンプ等のアウトド ア・レジャーで使用するテント、タープ用ペグの購入及び使用に関心のある 一般消費者並びにこれらを取り扱う事業者と認めるのが相当である。 25 (2) 原告商品の形態的特徴について 40 ア 原告は、原告商品全体の形態について、本件特徴1①ないし⑦の形態的 特徴を有すると主張する。 しかし、証拠(甲11、乙8、9、40)によれば、フックや穴は、多 くのテント、タープ用ペグが備える構成要素であって、これらの形状、位 置関係及び取付方向は、ペグによって様々であることが認められる。そう 5 であるにもかかわらず、本件特徴1③ないし⑤は、フックや穴といった原 告商品の構成要素について、それらの形状、位置関係及び取付方向を何ら 特定していない。このように、本件特徴1③ないし⑤は、フックや穴の形 状、位置関係及び取付方向において様々な態様が存在しているテント、タ ープ用ペグについて、不競法2条1項1号所定の商品等表示としての形態 10 に当たるか否かを議論する前提であるべき特徴としてはあまりにも抽象的 であって、同号の保護の対象となる形態を明確に特定するものとはいえな い。 したがって、形態としての特定性を欠く本件特徴1③ないし⑤を含んだ 本件形態1について同号 るべき特徴としてはあまりにも抽象的 であって、同号の保護の対象となる形態を明確に特定するものとはいえな い。 したがって、形態としての特定性を欠く本件特徴1③ないし⑤を含んだ 本件形態1について同号所定の商品等表示を論じる原告の主張は、失当で 15 あるといわざるを得ない。 イ したがって、原告商品全体の形態が商品等表示に当たるか否かについて は、原告の主張する本件形態2に基づいて検討するのが相当である。 (3) 原告意匠権の存在による商品等表示該当性判断に対する影響について ア 総論 20 前提事実(3)のとおり、原告は、平成9年5月30日、意匠に係る物品を 「テント張設用ペグ」とする原告意匠について原告意匠権の設定登録を受け、 原告意匠権は、平成24年5月30日、存続期間の満了により消滅した。 この原告意匠権の存在により、原告意匠に類似する形態の独占状態が生 じ、これに伴って、特別顕著性及び周知性が獲得又は維持されるのは、当 25 然のことであるから、このような独占状態に基づいて獲得又は維持された 41 特別顕著性及び周知性のみを根拠として、原告商品の形態について不競法 2条1項1号所定の商品等表示としての保護を認めることは、結局、原告 意匠権の存続期間満了後も、第三者による原告意匠の利用を妨げることに なる。このような事態は、価値ある意匠の提供の対価として一定期間の独 占を認める一方、期間経過後はこれを公衆に開放することとした意匠権の 5 制度趣旨に反する上、事業者間の公正な競争等を確保し、もって国民経済 の健全な発展に寄与するという不競法の目的に反するものであって、相当 でない。 もっとも、原告商品の形態に係る特別顕著性や周知性が原告意匠権に基 づく独占により生じ又は維持された場合でも、原告意匠権が消滅し、第三 10 者の同 不競法の目的に反するものであって、相当 でない。 もっとも、原告商品の形態に係る特別顕著性や周知性が原告意匠権に基 づく独占により生じ又は維持された場合でも、原告意匠権が消滅し、第三 10 者の同種商品が市場に投入されて相当期間経過するなどして、原告意匠権 に基づく原告商品の形態に係る独占状態の影響が払拭された後で、新たに 原告商品の形態が出所を表示するものとして特別顕著で周知となったとの 事情が認められれば、原告商品の形態について、不競法2条1項1号所定 の商品等表示として保護する余地があると解すべきである。 15 イ 原告商品の形状等と原告意匠との類否 原告意匠権の存在により原告商品の形態の独占状態が生じていたか否か を判断する前提として、原告の主張する本件形態2に基づき、原告商品の 形状等と原告意匠とが類似しているか否かについて検討する。 (ア) 共通点について 20 前提事実(2)ア及び(3)イ(別紙原告商品外観目録及び同原告意匠図面 目録参照)によれば、原告意匠は、本件特徴2②及び④アないしウ、オ ないしキを備えていると認められる。 本件特徴2①に関し、原告意匠に係る物品が鍛造されたスチールが構 成材料として選択されたものであるか否かは明らかでないが、原告意匠 25 は、本件特徴2①に係るその余の特徴を有するものと認められる。 42 また、本件特徴2④エに関し、原告意匠における頭部フック部分の具 体的な長さは明らかでない。しかし、原告商品の軸の長さは20ないし 50cm(前提事実(2)ア)、頭部のフック部分の長さは25ないし40 mm(本件特徴2④エ)であるところ、原告意匠の軸の長さと頭部のフ ック部分の長さとの割合にかんがみれば、原告商品と原告意匠とでは、 5 軸の長さと頭部フック部分の長さとの割合が概ね一致しているといえる。 本件特徴2④エ)であるところ、原告意匠の軸の長さと頭部のフ ック部分の長さとの割合にかんがみれば、原告商品と原告意匠とでは、 5 軸の長さと頭部フック部分の長さとの割合が概ね一致しているといえる。 (イ) 差異点について 本件特徴2③に関し、原告商品の軸の上方には、「SNOWPEAK」 とのロゴが記載されているのに対し、原告意匠の軸の上部には、頭部の フック部分と平行に、二つの半円と二つの直線を組み合わせた長円形状 10 の模様が設けられているとの点において、両者の間には差異がある。 また、本件特徴2①及び⑤に関し、原告商品は、鍛造されたスチール が構成材料として選択されており、そのことから、硬く、重みがあり、 光沢感のない金属の質感を有することが、外観的に見て取れるというも のであるのに対し、原告意匠では、構成材料、硬さ、重量感及び質感が 15 特定されていない点において、両者の間には差異がある。 (ウ) 検討 前記(イ)のとおり、原告商品の形状等と原告意匠との間には、軸の上部 に長円形状の模様があるか、「SNOWPEAK」とのロゴが記載されて いるかとの差異点がある。しかし、当該部分は、形状等の基本的な外縁 20 を構成するものではない上、形状等全体に占める割合も大きくないこと からすると、当該差異点は細部における差異にすぎないから、類否判断 に及ぼす影響は小さいといえる。また、意匠は、「物品…の形状、模様」 又は「色彩若しくはこれらの結合」を保護するものであるから(意匠法 2条1項)、原告意匠において構成材料、硬さ、重量感及び質感が規定さ 25 れていないことは、原告商品の形状等との実質的な差異点とはいえない。 43 そして、前記(ア)において認定した共通点にかんがみれば、原告商品の 形状等と原告意匠とは、需要者の視覚を通じて起こさせる ないことは、原告商品の形状等との実質的な差異点とはいえない。 43 そして、前記(ア)において認定した共通点にかんがみれば、原告商品の 形状等と原告意匠とは、需要者の視覚を通じて起こさせる全体的な美感 を共通にしているものと認められる。 したがって、原告商品の形状等は、原告意匠に類似するものといえる。 (エ) まとめ 5 以上によれば、原告意匠権が存在することにより、原告商品の形態の 独占状態が生じていたと認められる。 ウ 原告意匠権に基づく原告商品の形態に係る独占状態の影響が払拭された か (ア) 前記ア及びイにおいて検討したとおり、原告が、従前、原告商品の形 10 態を独占的に使用できたのは、原告意匠権を有していたことによるもの と認められるから、原告商品の形態が商品等表示に当たるというために は、原告意匠権に基づく原告商品の形態に係る独占状態の影響が払拭さ れた後に、新たに原告商品の形態が出所を表示するものとして特別顕著 かつ周知となる必要がある。 15 (イ) そこで、原告意匠権に基づく原告商品の形態に係る独占状態の影響が 払拭されているか否かについて検討する。 a 前提事実(2)イのとおり、原告商品は、被告商品の販売が開始された 平成25年(前提事実(4)ア)から令和2年4月まで、合計約425万 本販売されており(別紙販売数一覧表参照)、その間の平均年間販売数 20 は約58万本であった。 他方で、原告意匠権が存続期間満了により消滅した平成24年5月 30日から上記の被告商品の販売開始時までは、長くみても1年半程 度しか経過しておらず、この期間において、原告商品と同種の商品の うち、本件同種商品1ないし3の販売がされていたものの、その販売 25 数は●(省略)●にとどまる(前提事実(5)。別紙同種商品一覧表参 44 ず、この期間において、原告商品と同種の商品の うち、本件同種商品1ないし3の販売がされていたものの、その販売 25 数は●(省略)●にとどまる(前提事実(5)。別紙同種商品一覧表参 44 照)。 その後、被告商品の販売数は、平成26年に年間10万本を超え、 平成28年に年間約41万本、平成30年に年間約59万本、令和元 年に約77万本に達した(前提事実(4)イ。別紙販売数一覧表参照)。 また、原告商品と同種の商品のうち、●(省略)●の販売数は、● 5 (省略)●に上っていた(前提事実(5)。別紙同種商品一覧表参照)。 b 前記aのとおり、原告意匠権が存続期間の満了により消滅した平成 24年5月30日から被告商品の販売が開始された平成25年までは、 長くみても1年半程度という比較的短い期間しか経過しておらず、か つ、その間に販売されていたと認められる同種商品は3商品にとどま 10 り、その販売数も●(省略)●にすぎなかったことからすると、この 期間をもって、第三者の同種商品が市場に投入されて相当期間経過す るなどして、原告意匠権を有していたことに基づく独占状態の影響が 払拭されたとはいえない。 これに対し、被告商品の販売開始後についてみると、前記aのとお 15 り、被告商品の販売数は平成28年に年間約41万本、平成30年に 年間約59万本と、原告商品の販売数と肩を並べる程度となっていた 上、令和元年以降、原告商品及び被告商品以外にも、それらの同種商 品が●(省略)●販売されていたことからすると、遅くとも令和元年 には、原告意匠権に基づく原告商品の形態に係る独占状態の影響が払 20 拭されたといえる。 (ウ) したがって、原告商品の形態については、原告意匠権に基づく原告商 品の形態に係る独占状態の影響が払拭されたといえる令和元年以降、新 たに当該形態 独占状態の影響が払 20 拭されたといえる。 (ウ) したがって、原告商品の形態については、原告意匠権に基づく原告商 品の形態に係る独占状態の影響が払拭されたといえる令和元年以降、新 たに当該形態が出所を表示するものとして特別顕著かつ周知となったと の事情が認められれば、不競法2条1項1号所定の商品等表示に該当し 25 得る。 45 エ 原告意匠権の存在を考慮する必要はないとの原告の主張について (ア) 原告は、意匠権の存続期間中に広告宣伝しても不競法による保護を得 られないのであれば、意匠権制度を設けた趣旨が没却されるし、不競法 2条1項1号に基づく保護は、権利者による販売実績、広告宣伝の継続 等がなければ失われるものであるから、意匠権の存続期間中に行った広 5 告宣伝等により獲得又は維持された特別顕著性及び周知性も商品等表示 該当性の基礎として考慮すべきであると主張する。 しかし、意匠権による意匠の保護制度は、登録意匠を公開した者に対 し、一定期間、当該登録意匠に係る物品の製造、使用等についての独占 的権利を付与することによって、意匠の創作を奨励すると共に、第三者 10 が当該登録意匠を利用する機会を与え、産業の発達に寄与することを目 的とするものであるから(意匠法1条参照)、意匠権が存続期間満了等に より消滅した後は、何人も当該登録意匠を自由に利用できるようにする ことで、更に産業の発達に寄与させることが前提とされていると解され る。そうすると、登録意匠と同一又は類似する商品の形態につき、当該 15 登録意匠に係る意匠権に基づく独占状態を前提として獲得又は維持され た特別顕著性及び周知性を根拠として、当該意匠権の存続期間の満了後 に直ちに不競法2条1項1号による保護を受け得るとすることは、上記 の意匠の保護制度が前提とするところと相容れない して獲得又は維持され た特別顕著性及び周知性を根拠として、当該意匠権の存続期間の満了後 に直ちに不競法2条1項1号による保護を受け得るとすることは、上記 の意匠の保護制度が前提とするところと相容れないというべきである。 そして、意匠権を取得して維持するためには、登録意匠を公開し(意 20 匠法20条3項、4項)、登録料を納付することが必要である一方(同法 42条)、意匠権者は、当該登録意匠を自ら実施したり、当該登録意匠を 実施した物品に係る広告宣伝等をしたりしなくとも、登録意匠について 意匠権による保護を受けることができる。その結果、意匠権者は、意匠 権の存続期間中、当該登録意匠に係る物品の形状等を独占して利用する 25 ことができるから、大規模な広告宣伝をすることなく、当該物品の販売 46 等から多額の利益を得られる可能性がある。そうすると、原告の主張す るように、販売開始から3年間は、不競法2条1項3号に基づいて商品 の形態が保護されることも考慮して、意匠登録を受けず、当該3年間で 当該形態について同項1号所定の商品等表示性を獲得し、以後意匠権の 存続期間よりも長期にわたって保護を受けるという判断の方が、より合 5 理性を有するとは、必ずしもいえない。そもそも、同項3号による短い 保護期間で商品等表示性を獲得するには、相当規模の広告宣伝等が必要 であるとも考えられるから、その点からしても、原告の主張する方法が 必ずしも合理性を有するとはいえないというべきである。したがって、 意匠権制度を設けた趣旨が没却されるとの原告の上記主張は、その前提 10 を欠くものであるといわざるを得ない。 確かに、登録意匠を利用した商品の形態が周知性を獲得するためには、 その前提として意匠権者による当該物品に係る相応の販売実績や広告宣 伝が必要になると考えられるものの、そ のであるといわざるを得ない。 確かに、登録意匠を利用した商品の形態が周知性を獲得するためには、 その前提として意匠権者による当該物品に係る相応の販売実績や広告宣 伝が必要になると考えられるものの、その周知性を獲得する過程におい て意匠権に基づく当該形態の独占状態が大きく寄与していることは明ら 15 かであるから、意匠権者による当該物品に係る販売、広告宣伝の有無及 びその程度は、上記判断を左右する事情とはいえない。 (イ) また、原告は、特許権及び実用新案権とは異なり、意匠権の対象とな った形状等については、第三者は、当該技術の機能効果を果たす他の形 状等を選択して市場に参入することが可能であって、原告意匠を不競法 20 で保護しても、公正な競争を阻害するといった事態は生じないと主張す る。 しかし、第三者において、意匠権の存在により、その対象となった形 状等と同一又は類似の形状等を選択して市場に参入できないという点で は、特許権及び実用新案権が存在する場合と変わりがないというべきで 25 ある。そして、意匠法も、特許法及び実用新案法と同様に、意匠権消滅 47 後の意匠の自由利用を志向しているものと解するのが相当である。そう すると、原告が主張する根拠のみをもって、意匠権による影響について 特許権及び実用新案権による影響と別異に解するのは、無理があるとい わざるを得ない。 (ウ) その他、原告が種々主張するところを検討しても、いずれも、原告商 5 品の形態が出所を表示するものとして特別顕著かつ周知か否かの判断に おいて、原告意匠権の存在を考慮することを否定するには足りないとい うべきである。 (4) 原告商品の形態の特別顕著性について ア 前記(3)で検討したとおり、本件において、原告商品の形態が不競法2条 10 1項1号所定の商品等表示として 定するには足りないとい うべきである。 (4) 原告商品の形態の特別顕著性について ア 前記(3)で検討したとおり、本件において、原告商品の形態が不競法2条 10 1項1号所定の商品等表示として保護され得るのは、原告意匠権に基づく 原告商品の形態に係る独占状態の影響が払拭されたと認められる令和元年 以降に限られる。 そして、商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するた めには、需要者において特定の事業者の出所を表示するものとして周知と 15 なった当該商品の形態が、他の同種商品から識別できる程度に客観的に他 の同種商品とは異なる顕著な特徴(特別顕著性)を備えることが必要であ るところ、どのような特徴が客観的に他の同種商品とは異なる顕著なもの となるかは、その時点で市場に存在する他の同種商品が備える形態によっ ても変化し得る。そうすると、原告意匠権に基づく原告商品の形態に係る 20 独占状態の影響が払拭されたと認められる令和元年以降において、新たに 原告商品の形態が出所を表示するものとして特別顕著となったというため には、令和元年以降に市場に存在する他の同種商品との対比において、原 告商品の形態が客観的に異なる顕著な特徴を有しているかを検討する必要 があると考えられる。 25 また、原告商品の形態的特徴が、市場においてごく少数しか流通してい 48 ない商品の形態的特徴と合致していたとしても、そのことから、直ちに、 原告商品の形態がありふれたものである、すなわち客観的に他の同種商品 とは異なる顕著な特徴を有していないものであるとはいい難い。 このような観点からすると、原告商品の形態が客観的に他の同種商品と は異なる顕著な特徴を有しているか否かを検討するに当たっては、原告商 5 品と、被告商品並びに●(省略)●と認められる本件同種商品2、 このような観点からすると、原告商品の形態が客観的に他の同種商品と は異なる顕著な特徴を有しているか否かを検討するに当たっては、原告商 5 品と、被告商品並びに●(省略)●と認められる本件同種商品2、4、5、 13、15、19、20、22、27及び39とを、対比するのが相当で ある。 イ 原告商品と、被告商品並びに本件同種商品2、4、5、13、15、1 9、20、22、27及び39とを対比すると、本件形態2が有する各形 10 態的特徴につき以下の指摘をすることができる(乙38、40)。 (ア) 本件特徴2① a 本件特徴2①は、「鍛造されたスチールが構成材料として選択された」 との特徴を含むものである。 まず、この点について検討すると、商品の形態を不競法2条1項1 15 号所定の商品等表示として保護する趣旨は、客観的に他の同種商品と は異なる顕著な特徴を持つ当該商品の形態自体が特定の出所を表示す る二次的意味を有することに着目し、それを保護しようとするもので あるから、客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴というために は、当該特徴が出所表示機能を有するもの、すなわち、需要者におい 20 て、通常の用法に従って使用する際に、五感によって認識できるもの でなければならないと解される。 これを原告商品についてみると、本件全証拠によっても、需要者が 通常の用法に従って使用する際に、原告商品が金属製であることに由 来する重量感、打音といった質感を有することを超えて、五感によっ 25 て構成材料が鍛造スチールであることを認識することができると認め 49 ることはできない。したがって、原告商品が、「鍛造されたスチールが 構成材料として選択された」との特徴を有するとしても、当該特徴は、 商品等表示該当性の判断に際し、他の同種商品と対比されるべき特徴 に当たる とはできない。したがって、原告商品が、「鍛造されたスチールが 構成材料として選択された」との特徴を有するとしても、当該特徴は、 商品等表示該当性の判断に際し、他の同種商品と対比されるべき特徴 に当たるとはいえない。 そして、本件特徴2①のうち、「鍛造されたスチールが構成材料とし 5 て選択された」との点を除く形態的特徴は、被告商品のほか、少なく とも本件同種商品2、4、5、13、15、19、20、22、27 及び39が備える特徴と認められる。 b 仮に、原告が主張するように、「鍛造されたスチールが構成材料とし て選択された」との特徴が他の同種商品と対比されるべき特徴に当た 10 るとしても、本件特徴2①は、被告商品のほか、少なくとも本件同種 商品2、4、5、27及び39が備える特徴と認められる。 (イ) 本件特徴2② 少なくとも本件同種商品2、13、15、19、20及び22が備え る特徴と認められる。 15 (ウ) 本件特徴2③ 本件特徴2③に関し、原告商品では「SNOWPEAK」とのロゴが 記載されているところ(前提事実(2)ア。別紙原告商品外観目録参照)、 原告以外の事業者が販売する商品に、原告の名称の英語表記である「S NOWPEAK」とのロゴが付されることは通常あり得ないから、当該 20 特徴は、軸の上方に何らかのロゴが記載されているとの趣旨と解するの が相当である。そして、軸の上方に何らかのロゴが記載されているとの 特徴は、被告商品のほか、少なくとも本件同種商品2、4、5、15、 19、20、27及び39が備える特徴と認められる。 これに対し、本件同種商品13では、ロゴがフックの上に記載されて 25 いること、本件同種商品22では、商品にロゴが記載されていないこと 50 から、いずれも本件特徴2③を備えていないと認められる。 、本件同種商品13では、ロゴがフックの上に記載されて 25 いること、本件同種商品22では、商品にロゴが記載されていないこと 50 から、いずれも本件特徴2③を備えていないと認められる。 (エ) 本件特徴2④ア 被告商品のほか、少なくとも本件同種商品2、4、5、13、15、 19、20、22、27及び39が備える特徴と認められる。 (オ) 本件特徴2④イ 5 被告商品のほか、少なくとも本件同種商品2、4、5、13、15、 19、20、22、27及び39が備える特徴と認められる。 (カ) 本件特徴2④ウ 本件同種商品4、13、15、19、20及び27が備える特徴と認 められる。 10 これに対し、被告商品及び本件同種商品5においては、軸の頭部が掛 具部から突出しておらず、ハンマーで打撃することになる部分が穴の直 上にまで広がっていることに伴って、穴が打撃部の斜め下に位置すると の特徴を備えていないものの、その余の特徴を備えていると認められる。 また、本件同種商品2は、穴が軸に接するように位置しておらず、か 15 つ、本件証拠上、穴がフックの上にまで及んでいるか否かが明らかでな いものの、その余の特徴を備えていると認められる。 さらに、本件同種商品22及び39は、穴が軸とフックの隙間部分の 斜め上にあり、かつ、軸に接するように位置していないものの、その余 の特徴を備えていると認められる。 20 (キ) 本件特徴2④エ 被告商品のほか、少なくとも本件同種商品2、4、5、13、15、 19、20、22及び27が備える特徴と認められる。 (ク) 本件特徴2④オ 被告商品のほか、少なくとも本件同種商品2、4、5、13、15、 25 19、20、22、27及び39が備える特徴と認められる。 51 (ケ) 本件特徴2④カ 被告商 本件特徴2④オ 被告商品のほか、少なくとも本件同種商品2、4、5、13、15、 25 19、20、22、27及び39が備える特徴と認められる。 51 (ケ) 本件特徴2④カ 被告商品のほか、少なくとも本件同種商品4、5、13、15、19、 20、22、27及び39が備える特徴と認められる。 なお、本件同種商品2のフックと軸との間の隙間は、フックの横にあ るロゴの記載がある箇所の軸の直径よりもかなり広いと認められるから、 5 本件特徴2④カを備えると認めることはできない。 (コ) 本件特徴2④キ 被告商品のほか、少なくとも本件同種商品2、4、5、13、15、 19、20、22、27及び39が備える特徴と認められる。 (サ) 本件特徴2⑤ 10 a 前記(ア)のとおり、本件全証拠によっても、需要者が通常の用法に従 って使用する際に、原告商品が金属製であることに由来する重量感、 打音といった質感を有することを超えて、五感によって構成材料が鍛 造スチールであることを認識することができると認めることはできな い。したがって、原告商品が「鍛造されたスチールが構成材料として 15 選択されている」との特徴を有するとしても、当該特徴は、商品等表 示該当性の判断に際し、他の同種商品と対比されるべき特徴に当たる とはいえない。 そして、本件特徴2⑤のうち、「鍛造されたスチールが構成材料とし て選択されていることから、」との点を除く形態的特徴は、被告商品の 20 ほか、少なくとも本件同種商品2、4、5、13、22、27及び3 9が備える特徴と認められる。 b 仮に、原告が主張するように、「鍛造されたスチールが構成材料とし て選択されていることから、」との特徴が他の同種商品と対比されるべ き特徴に当たるとしても、本件特徴2⑤は、被告商品のほか、本件 。 b 仮に、原告が主張するように、「鍛造されたスチールが構成材料とし て選択されていることから、」との特徴が他の同種商品と対比されるべ き特徴に当たるとしても、本件特徴2⑤は、被告商品のほか、本件同 25 種商品2、4、5、27及び39が備える特徴と認められる。 52 (シ) 本件特徴2⑥ 前記(ア)ないし(サ)のとおり、本件証拠上、本件特徴2①ないし⑤の形 態的特徴の全てを厳密に備えた同種商品が存在すると認めることはでき ない。 ウ 検討 5 (ア) 前記イ(シ)のとおり、本件証拠上、本件特徴2①ないし⑥の形態的特徴 の全てを厳密に備えた同種商品が存在すると認めることはできない。 しかし、本件同種商品13は、ロゴの記載位置が軸上かフック上かと いう商品の形状の基本的な外縁を構成しない要素において差異がある点 及び「鍛造されたスチールが構成材料として選択された」との特徴を除 10 き、本件形態2に係る形態的特徴を全て備えていると認められる。 また、本件同種商品22は、ロゴが商品に記載されているか否かや、 穴が軸とフックの隙間部分の斜め上にあり、かつ、軸に接するように位 置していないという商品の形状の基本的な外縁を構成しない要素におい て差異がある点及び「鍛造されたスチールが構成材料として選択された」 15 との特徴を除き、本件形態2に係る形態的特徴を全て備えていると認め られる。 さらに、被告商品のほか、本件同種商品2、4、5、15、19、2 0、27及び39についても、本件形態2に係る形態的特徴の大半を備 えているものと認められる。 20 (イ) そして、前提事実(2)イのとおり、原告商品は、令和元年以降も、年間 約58万本が販売されていたと推認できる。 これに対し、被告商品、本件同種商品5及び22に限っても、これら の令和元年以 (イ) そして、前提事実(2)イのとおり、原告商品は、令和元年以降も、年間 約58万本が販売されていたと推認できる。 これに対し、被告商品、本件同種商品5及び22に限っても、これら の令和元年以降の年間販売数は、●(省略)●と認められる(●(省略) ●前提事実(4)イ、(5)。別紙販売数一覧表及び別紙同種商品一覧表参照)。 25 (ウ) このように、令和元年以降、原告商品の形態的特徴の大半を備えた同 53 種商品が、被告商品を含めて複数種類、かつ、原告商品の販売数と同程 度以上の数量が市場に流通していることが認められる。 仮に、原告が主張するように、「鍛造されたスチールが構成材料として 選択された」との特徴を考慮しても、「鍛造されたスチールが構成材料と して選択された」との特徴を除く原告商品の形態的特徴は、本件同種商 5 品13及び22がそのほとんど全てを備えているところ、「鍛造されたス チールが構成材料として選択された」との特徴は、被告商品のほか、少 なくとも本件同種商品2、4、5、27及び39等の多数の同種商品が 備えるものであることからすると、これらの特徴を組み合わせたからと いって、直ちに、客観的に他の同種商品とは異なる顕著な形態的特徴を 10 有することになるとはいえない。 (エ) 以上によれば、令和元年以降において、原告商品の形態が、客観的に 他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していると認めることはできな い。 エ 「鍛造されたスチールが構成材料として選択され」ていることが商品等 15 表示を基礎付ける形態的特徴となるとの原告の主張について (ア)a まず、スチールを構成材料として選択されたとの点についてみる と、商品の構成材料は、一般消費者であっても、手に持った際の重量 感や打音などによってある程度推測することが可能と考え について (ア)a まず、スチールを構成材料として選択されたとの点についてみる と、商品の構成材料は、一般消費者であっても、手に持った際の重量 感や打音などによってある程度推測することが可能と考えられる。し かし、商品の重量は、構成材料の密度及び商品の体積によって決まる 20 ものであるところ、スチール(炭素鋼)やステンレス鋼など、異なる 種類の金属であっても密度が概ね同程度である素材が存在する上(顕 著な事実)、商品によってもその具体的な構成材料の組合せや体積は 様々であるから、需要者が、商品を手に持った際の重量感や打音から、 当該商品の構成材料が金属であることを認識できたとしても、テント、 25 タープ用ペグの購入及び使用に関心のある一般消費者及び取扱事業者 54 の有する能力に照らし、具体的な金属の種類まで認識できるのが通常 であるとはいえない。そして、本件全証拠によっても、需要者が、原 告商品の構成材料がスチールであると具体的に認識することができる と認めることはできない。 b また、鍛造製であるとの点についてみると、構成材料である金属を 5 鍛造とすることによって、客観的に当該構成材料の密度が大きくなっ たり打音に変化が生じたりするとしても、その変化の程度から、テン ト、タープ用ペグの購入及び使用に関心のある一般消費者及び取扱事 業者が、当該構成材料が鍛造により製造されたことを認識できるのが 通常であるとはいえない。 10 この点、原告は、原告商品の表面に細かいざらつきがあるとの特徴 が、鍛造に由来するものであると主張する。 確かに、証拠(甲232)によれば、鉄やスチールを鍛造する過程 において、素材を加熱した際に当該素材の表面に酸化膜が形成され、 その後当該素材を叩くなどした際に当該酸化膜が部分的に剥がれるこ 15 とで、表面 証拠(甲232)によれば、鉄やスチールを鍛造する過程 において、素材を加熱した際に当該素材の表面に酸化膜が形成され、 その後当該素材を叩くなどした際に当該酸化膜が部分的に剥がれるこ 15 とで、表面にざらつきや凹凸模様が形成される場合があることが認め られる。 しかし、鍛造は、加工時の温度によって、熱間鍛造、冷間鍛造など に分類されるところ(乙184。なお、原告が、原告商品の表面に細 かいざらつきがあるとの特徴が生ずる理由として主張している鍛造と 20 は、熱間鍛造を意味すると解される。)、熱間鍛造以外の方法によって 製造した場合にも、当然に素材の表面に細かいざらつきが形成される ことが立証されているとはいえない。 そもそも、商品の表面の性状は、仕上げの有無やその方法によって 様々に変化し得るところ、原告商品の表面の細かいざらつきが、構成 25 材料を鍛造とすることによってのみ形成される性状であると認めるに 55 足りる証拠はない。 このほか、本件全証拠によっても、需要者が、原告商品の構成材料 が鍛造により製造されたものであると具体的に認識することができる と認めることはできない。 c 以上によれば、需要者が、原告商品の構成材料がスチールであり、 5 かつ、それが鍛造により製造されたものであるとのいずれの点につい ても、五感によって認識できると認めることはできないから、「鍛造さ れたスチールが構成材料として選択され」たことは、商品等表示該当 性を基礎付ける他の同種商品と対比されるべき特徴に当たるとはいえ ない。 10 (イ) 仮に、需要者が、原告商品の構成材料がスチールであり、かつ、それ が鍛造により製造されたものであるとの特徴を、五感によって認識でき るとしても、前記イ及びウのとおり、令和元年以降、当該特徴は、被告 商品のほか、少なくとも本 商品の構成材料がスチールであり、かつ、それ が鍛造により製造されたものであるとの特徴を、五感によって認識でき るとしても、前記イ及びウのとおり、令和元年以降、当該特徴は、被告 商品のほか、少なくとも本件同種商品2、4、5、27及び39等の多 数の同種商品が備えているものであるから、客観的に他の同種商品と異 15 なる顕著な特徴とはいえない。 (ウ) したがって、原告の前記各主張を採用することはできない。 (5) 新たに原告商品の形態が出所を表示するものとして周知となったか ア なお、令和元年以降、新たに原告商品の形態が出所を表示するものとし て周知となったか否かについても検討する。 20 (ア) テント、タープ用ペグの販売状況 前記(4)ウ(イ)のとおり、原告商品の令和元年以降の年間販売数は約5 8万本と推認される。これに対し、被告商品の令和元年の年間販売数は 77万本を上回っており、●(省略)●と認められる。 (イ) 広告宣伝の状況 25 証拠(甲9、15ないし73)によれば、原告は、原告商品の販売開 56 始以降、原告商品に関し、新聞、雑誌、ウェブサイト等に広告を掲載し たり、直営店や量販店等において宣伝したりしているほか、第三者によ る原告商品の紹介記事がウェブサイトに複数掲載されていると認められ る。しかし、原告商品について、令和元年以降、需要者において原告商 品の形態を強く認識、記憶させるに足りるような、極めて強力な広告宣 5 伝が行われていることを認めるに足りる証拠はない。 (ウ) 原告が実施したアンケートの結果(甲122) a 概要 原告は、株式会社日本能率協会総合研究所に依頼して、原告商品の 形態が原告の商品を示すものとして認識されているかどうかを確認す 10 る目的で、アンケート方式による調査を実施した。 b 調査 概要 原告は、株式会社日本能率協会総合研究所に依頼して、原告商品の 形態が原告の商品を示すものとして認識されているかどうかを確認す 10 る目的で、アンケート方式による調査を実施した。 b 調査期間 令和3年5月27日から同年6月2日まで c 調査対象及び回答人数 自身が使用する目的でテント、タープ又はペグのいずれかを所有し 15 ている全国の20歳から65歳の男女を対象とし、1008人から有 効回答を得た。 d 質問内容 原告商品の外観が写った写真を呈示した上で、どこのブランドの商 品だと思うかを、自由回答式(純粋想起)及び選択式(助成想起)で 20 尋ねた。 e 結果 (a) 原告商品の外観が写った写真から、メーカー名又はブランド名を 自由回答式で回答させたところ、次のとおりの結果であった。 原告又は原告商品 9.3パーセント 25 コールマン 7.8パーセント 57 被告会社又は被告商品 1.2パーセント モンベル 2.1パーセント ロゴス 1.3パーセント その他計 6.4パーセント わからない 71.8パーセント 5 同様に選択式で回答させたところ、次のとおりの結果であった。 原告又は原告商品 12.2パーセント ユージャック 2.1パーセント コールマン 9.6パーセント ホールアース 4.5パーセント 10 ハイランダー 4.8パーセント 被告会社又は被告商品 3.4パーセント キャプテンスタッグ 4.7パーセント その他のブランド 5.5パーセント わからない 53.4パーセント 15 (b) ①最近3年以内に、テント、タープ及びペグのいず キャプテンスタッグ 4.7パーセント その他のブランド 5.5パーセント わからない 53.4パーセント 15 (b) ①最近3年以内に、テント、タープ及びペグのいずれかを購入し た、かつ、②キャンプ、登山のどちらかに1年に1回以上行くとの 二つの条件を満たす者に対し、原告商品の外観が写った写真から、 メーカー名又はブランド名を自由回答式で回答させたところ、次の とおりの結果であった。 20 原告又は原告商品 14.9パーセント コールマン 7.8パーセント 被告会社又は被告商品 1.2パーセント モンベル 2.1パーセント ロゴス 1.3パーセント 25 その他計 6.4パーセント 58 わからない 61.4パーセント 同様に選択式で回答させたところ、次のとおりの結果であった。 原告又は原告商品 20.4パーセント ユージャック 4.7パーセント コールマン 11.7パーセント 5 ホールアース 8.9パーセント ハイランダー 8.6パーセント 被告会社又は被告商品 6.0パーセント キャプテンスタッグ 7.6パーセント その他のブランド 6.3パーセント 10 わからない 25.8パーセント (エ) 検討 前記(4)ウにおいて検討したとおり、令和元年以降、原告商品の年間販 売数は約58万本と推認されるのに対し、原告商品に係る形態的特徴の 大半を備えている被告商品及び本件同種商品5の年間販売数は、少なく 15 ともそれぞれ77万本及び●(省略)●と認められる。そして、「鍛造さ れたスチールが構成材料として選択され」ている点を除いて原告商品に 係 ている被告商品及び本件同種商品5の年間販売数は、少なく 15 ともそれぞれ77万本及び●(省略)●と認められる。そして、「鍛造さ れたスチールが構成材料として選択され」ている点を除いて原告商品に 係る形態的特徴のほとんど全てを備えている本件同種商品22の年間販 売数は、●(省略)●と認められる。このように、令和元年以降、原告 商品の形態的特徴の大半を備えた同種商品が、被告商品を含めて複数種 20 類、かつ、原告商品の販売数と同程度以上の数量が市場に流通している ことが認められるから、需要者は、頭部に穴及び長さのあるフックを備 えているテント、タープ用ペグ市場において、原告商品とほぼ同様の形 態的特徴を有する商品を多数目にしているといえ、需要者の認識におい て、原告商品の形態は、同種商品の形態に埋没している可能性が高い。 25 また、原告商品について、令和元年以降、需要者において原告商品の 59 形態を強く認識、記憶させるに足りるような、極めて強力な広告宣伝が 行われていると認めるに足りる証拠はない。 さらに、原告が実施したアンケート(被告らが実施したアンケート (乙78)と比較すると、原告商品の外観が写った写真から、原告又は原 告商品名を正答した割合が高い結果が得られている。)においても、自身 5 が使用する目的でテント、タープ及びペグのいずれかを所有している者 であっても、どこの商品であるのかがわからないと回答した者が、自由 回答式で71.8パーセント、選択式で53.4パーセントに達してい る上、誤った回答が様々なブランド名に広く分散していることは、むし ろ、原告商品の形態が出所を表示するものとして広く知られていないこ 10 とを示すものといえる。 イ 前記アの各事情を総合しても、令和元年以降、新たに、原告商品の形態 が出所を表示するものとして周 ろ、原告商品の形態が出所を表示するものとして広く知られていないこ 10 とを示すものといえる。 イ 前記アの各事情を総合しても、令和元年以降、新たに、原告商品の形態 が出所を表示するものとして周知であるということはできず、本件全証拠 によっても、周知であるとの評価に至る事実を認めることはできないとい うべきである。 15 (6) まとめ 以上によれば、原告主張の原告商品の形態については、いずれも、原告の 周知な商品等表示であると認めることはできない。 2 小括 よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない 20 というべきである。 第4 結論 以上のとおり、原告の請求は理由がないから、これをいずれも棄却すること として、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 25 60 裁判長裁判官 國 分 隆 文 5 裁判官 間 明 宏 充 10 裁判官 木 村 洋 一
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