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主文 1 被告らは,原告Aに対し,各自1500万円及びこれに対する平成9年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2 被告らは,原告B,同C及び同Dそれぞれに対し,各自500万円及びこれに対する平成9年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。4 訴訟費用は,原告Aと被告らとの間においては,これを10分し,その7を同原告,その余を被告らの各負担とし,その余の原告らと被告らとの間においては,これを2分し,その1を同原告ら,その余を被告らの各負担とする。事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告Aに対し,各自5275万6470円及びこれに対する平成9年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2 被告らは,原告B,同C及び同Dそれぞれに対し,各自1118万5490円及びこれに対する平成9年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2 事案の概要本件は,原告らが,医師である被告Fが原告らの被相続人に胸腔ドレナージを施行する際に注意義務に違反したとして,被告E病院組合に対して債務不履行又は不法行為(民法715条,709条),被告Fに対して不法行為(同法709条)に基づき,それぞれ損害賠償を請求した事案である。1 争いのない事実(1) 原告Aは,Gの妻であり,原告B,同C及び同Dは,原告AとGの間の子である。(2) 被告E病院組合は,地方自治法284条に基づき許可された一部事務組合であり,社会保険E綜合病院(以下「被告病院」という。)を経営管理しており,被告Fは,被告病院に勤務する医師であり,Gの検査,治療等の医療行為を担当した。(3) Gは,平成9年4月7日,H内科循環器科の紹介で被告病院 合病院(以下「被告病院」という。)を経営管理しており,被告Fは,被告病院に勤務する医師であり,Gの検査,治療等の医療行為を担当した。 は,地方自治法284条に基づき許可された一部事務組合であり,社会保険E綜合病院(以下「被告病院」という。)を経営管理しており,被告Fは,被告病院に勤務する医師であり,Gの検査,治療等の医療行為を担当した。(3) Gは,平成9年4月7日,H内科循環器科の紹介で被告病院 合病院(以下「被告病院」という。)を経営管理しており,被告Fは,被告病院に勤務する医師であり,Gの検査,治療等の医療行為を担当した。(3) Gは,平成9年4月7日,H内科循環器科の紹介で被告病院を受診し,被告組合との間で診療契約を締結し,種々の検査を受け,同月17日,被告Fから胸水を抜くため左胸部胸腔内に胸腔ドレーンを挿入する処置(以下「本件ドレナージ」という。)を施されたが,その後容体が急変し,同年5月13日死亡した。2 争点(1) 被告Fは,本件ドレナージを実施した際,Gの容体の急変を予見できたか。(原告らの主張)被告Fは,Gのように一側無気肺と多量の喀痰が認められる患者に胸腔ドレナージを実施すると,喀痰吸引による窒息の危険が高かったのであるから,本件ドレナージを実施した際,これによって患側の肺からの喀痰が健側の肺に吸引されてGが窒息することを予見することができた。(被告らの反論)被告Fは,胸腔ドレナージによって患側の肺の喀痰が健側の肺に吸引されて窒息するという合併症は知られていなかったのであるから,本件ドレナージを実施した際,これによって患側の肺からの喀痰が健側の肺に吸引されてGが窒息することは予見できなかった。(2) 被告Fは,本件ドレナージを実施する必要がなかったのに,これを実施する必要があると誤った判断をしたか。(原告らの主張)被告Fは,Gに本件ドレナージを実施する必要性はなく,その判断は容易であり,しかも,Gの状態からみて胸腔ドレナージの危険性は高かったので,その必要性を厳格に判断すべきであったのに,安易に本件ドレナージが必要であると判断した。(被告らの反論)被告Fは,若干早期に胸腔ドレナージを実施すると判断したが,Gに早晩胸腔ドレナージが必要となることが明らかであり,しかも,一般に胸腔ドレナージが危険 ージが必要であると判断した。(被告らの反論)被告Fは,若干早期に胸腔ドレナージを実施すると判断したが,Gに早晩胸腔ドレナージが必要となることが明らかであり,しかも,一般に胸腔ドレナージが危険な処置とは考えられておらず,上記のとおりGが窒息することは予見できなかったのであるから,上記判断に特に問題はなかった。 ,Gに早晩胸腔ドレナージが必要となることが明らかであり,しかも,一般に胸腔ドレナージが危険 ージが必要であると判断した。(被告らの反論)被告Fは,若干早期に胸腔ドレナージを実施すると判断したが,Gに早晩胸腔ドレナージが必要となることが明らかであり,しかも,一般に胸腔ドレナージが危険な処置とは考えられておらず,上記のとおりGが窒息することは予見できなかったのであるから,上記判断に特に問題はなかった。(3) 被告Fは,Gの喀痰吸引による窒息に備え,事前の準備をし,Gが窒息したときは直ちに開胸措置等を行い,呼吸停止等を短時間に止めるべき注意義務があったのに,これを怠ったか。(原告らの主張)被告Fは,本件ドレナージを実施するに当たり,Gが喀痰吸引により窒息することは十分予想できたのであるから,救急カートを用意し,開胸手術の可能性を念頭に置いて準備すべきであったのに,これらの事前の準備を怠り,救急措置が遅れた。(被告らの反論)被告Fは,Gが呼吸困難を呈したため,酸素をマスクで投与し,更に気管内挿管,心マッサージ等の処置を実施したのであり,その救急措置には何ら問題はなく,痰等が詰まった場合の対応を怠ったということはできない。(4) 被告Fは,原告らに対し,胸腔ドレナージを実施することやその必要性等について説明すべき注意義務があったのに,これを怠ったか。(原告らの主張)被告Fは,一般に胸腔ドレナージを実施するにはその必要性等を説明して同意を得るべきであるから,本件ドレナージを実施する際にも事前の説明をすべきであったのに,これを怠り,何ら説明をしないまま本件ドレナージを実施した。(被告らの反論)胸腔ドレナージは,胸腔に貯留した滲出液等を排出する目的で行われるものであり,本質的に手術ではなく,たとえば傷口を切開して排膿するといった処置であるから,これについて事前の説明義務はない。また,被告Fは,事前に本件ドレナージを実施する 等を排出する目的で行われるものであり,本質的に手術ではなく,たとえば傷口を切開して排膿するといった処置であるから,これについて事前の説明義務はない。また,被告Fは,事前に本件ドレナージを実施することを説明した。(5) 被告らが原告らに賠償すべき損害額はいくらか。原告らは,別紙損害一覧記載のとおりであると主張しているが,被告らは,Gについては,肺癌で余命3か月であったから,逸失利益を想定することはできず,慰謝料も少額に止めるべきであるし,Gに逸失利益を想定できない以上,被告A固有の逸失利益も想定できないはずであると反論している。 説明義務はない。また,被告Fは,事前に本件ドレナージを実施することを説明した。(5) 被告らが原告らに賠償すべき損害額はいくらか。原告らは,別紙損害一覧記載のとおりであると主張しているが,被告らは,Gについては,肺癌で余命3か月であったから,逸失利益を想定することはできず,慰謝料も少額に止めるべきであるし,Gに逸失利益を想定できない以上,被告A固有の逸失利益も想定できないはずであると反論している。第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について(1) 証拠(乙2の1・5,証人I,被告F本人,証人Jの回答書2通,鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によると,次の諸点を指摘することができる。ア Gが本件ドレナージ後に呼吸困難,血圧測定不能状態に陥った原因については,本件ドレナージ前から喀痰が多かったこと,左肺は無気肺で機能していなかったこと,本件ドレナージ後の動脈血ガス分析で高炭酸ガス血症を示したことを考慮すると,本件ドレナージの処置中,又は処置直後に患側(左)肺からの喀痰を健側肺に吸引して窒息したことによるものと考えるのが妥当である。イ一般に胸腔ドレナージはそれほど危険なものではなく,本件ドレナージ後にGに生じたような事態は胸腔ドレナージの合併症として知られていないが,Gのように一側無気肺と多量の喀痰がみられる患者では,喀痰吸引による窒息の危険があり,処置中の右側臥位又は半側臥位による体位ドレナージ効果や,胸膜刺激による咳嗽・怒責による患側肺から健側肺への喀痰吸引の危険性が高いことを想定しなければならない。ウ中枢気道の狭窄・閉塞がある患者では,それより末梢に多量の気道分泌物等が貯留しているので,このような患 る咳嗽・怒責による患側肺から健側肺への喀痰吸引の危険性が高いことを想定しなければならない。ウ中枢気道の狭窄・閉塞がある患者では,それより末梢に多量の気道分泌物等が貯留しているので,このような患者に咳嗽・怒責させると,貯留した分泌物が一時かつ大量に狭窄・閉塞部位を超えて中枢側に流出するおそれがあるし,また,ドレナージ処置中の体位は患側が高く,健側が低くなっているので,流出した分泌物は健側気道に流入又は吸引される可能性が高いと考えられる。エところで,Gは,平成8年11月ころ約30秒の意識消失があって4日間入院したが,そのころから咳があり,同年12月26日ころには咳と同時に左胸痛も現れ,治療を受けたものの症状が改善せず,平成9年4月5日胸部X線写真で左肺に胸水が貯まっていることが分かり,同月7日被告病院を紹介されて入院し,咳と痰が多く,肺癌,肺炎等が疑われ,胸部X線写真,胸部CT等の検査を受けた。 吸引される可能性が高いと考えられる。エところで,Gは,平成8年11月ころ約30秒の意識消失があって4日間入院したが,そのころから咳があり,同年12月26日ころには咳と同時に左胸痛も現れ,治療を受けたものの症状が改善せず,平成9年4月5日胸部X線写真で左肺に胸水が貯まっていることが分かり,同月7日被告病院を紹介されて入院し,咳と痰が多く,肺癌,肺炎等が疑われ,胸部X線写真,胸部CT等の検査を受けた。オ被告Fは,Gにつき,本件ドレナージ実施前には,左肺が無気肺になり,左肺門から下葉枝入口近くに大きな腫瘍が存在し,肝臓等に転移していることなどが分かり,肺癌(小細胞癌Ⅳ期)と診断したが,医師であれば,胸部CTで気管分岐部直下の左主気管支内腔に腫瘍と思われる閉塞が認められ,これが原因で左無気肺となっており,また喀痰が多いのは気管支閉塞部位より末梢に分泌物が貯留しているためであると判断するのは困難ではなかった。(2) 以上の諸点を勘案すると,一般に胸腔ドレナージによって患側の肺の喀痰が健側の肺に吸引されて窒息するという合併症は知られていなかったのであるが,被告Fは,Gには本件ドレナージ前から喀痰が多く,左主気管支の閉塞のため左肺が無気肺で機能していなかったのであるから,このような場合に胸腔ドレナージを実施すれば,これによって患側の肺からの あるが,被告Fは,Gには本件ドレナージ前から喀痰が多く,左主気管支の閉塞のため左肺が無気肺で機能していなかったのであるから,このような場合に胸腔ドレナージを実施すれば,これによって患側の肺からの喀痰が健側の肺に吸引されてGが窒息するかも知れないことを認識し得たというべきである。しかし,証拠(証人I,被告F本人)によると,被告Fは,Gに対し,仰臥位ではなく座位で本件ドレナージを実施したことが認められるし,また,被告Fが本件ドレナージを実施するに当たり,どのような点に注意を払えば,上記結果を回避することができたかについて,証拠上明らかでなく,かえって,被告病院内科部長のIは,本件ドレナージによって患側の肺から健側の肺へ痰や腫瘍の一部が移動することがあり得るかも知れないが,これを防ぐ方法はないと思うと証言しているので,上記のとおり予見可能性が認められたとしても,そのことから直ちに被告Fに過失があったと断定することはできない。2 争点(2)について(1) 証拠(証人I,被告F本人,証人Jの回答書2通,鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によると,次の諸点を指摘することができる。 ,本件ドレナージによって患側の肺から健側の肺へ痰や腫瘍の一部が移動することがあり得るかも知れないが,これを防ぐ方法はないと思うと証言しているので,上記のとおり予見可能性が認められたとしても,そのことから直ちに被告Fに過失があったと断定することはできない。2 争点(2)について(1) 証拠(証人I,被告F本人,証人Jの回答書2通,鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によると,次の諸点を指摘することができる。ア胸水貯留に対してドレナージ処置が適応となるのは,①大量の胸水により肺が圧迫され虚脱肺又は無気肺となって呼吸障害を来す場合,②心臓,大血管が圧迫され循環障害を来す場合,③横隔膜,胸郭が圧迫され換気運動が障害される場合,④膿胸等で胸腔内の清浄化が必要な場合であるが,本事例では,上記②から④までの適応となる所見を認めることはできないので,上記①のみが問題となる。イ Gについては,左無気肺と胸水貯留は確認できるが,胸部X線写真や胸部CTの結果に照らすと,無気肺や呼吸障害の原因を胸水の圧迫によると考えるには無理があり,癌による左主気管支の閉塞のため無気肺となっており,胸水貯 左無気肺と胸水貯留は確認できるが,胸部X線写真や胸部CTの結果に照らすと,無気肺や呼吸障害の原因を胸水の圧迫によると考えるには無理があり,癌による左主気管支の閉塞のため無気肺となっており,胸水貯留は少量で,無気肺と閉塞性肺炎・リンパ管炎による二次的なものと判定できるので,将来的にはともかく,平成9年4月17日の時点で緊急に胸腔ドレナージを実施する必要性はなかった。ウ被告Fは,前同日,Gの喀痰が多くなっており,呼吸困難を改善する必要があったことに加え,腫瘍が大きく浸潤も著しかったため,翌18日からでもGに抗癌剤の全身投与を実施したいと考えたが,これによって血小板が減少し出血しやすくなったり,白血球が減少し免疫力が落ちたりすることから,早めに胸腔ドレーンを挿入しておきたいと判断し,被告病院内科部長のIに報告した上,本件ドレナージを実施した。(2) 以上のとおり,Gについて,平成9年4月17日の時点では胸水貯留が少量であり,緊急に胸腔ドレナージを実施する必要はなかったが,将来的には胸腔ドレナージが必要になる可能性は十分にあったということができ,しかも,前記1(1)イのとおり,一般に胸腔ドレナージはそれほど危険なものではないのであるから,被告Fにおいて,Gの呼吸困難を胸水の圧迫によるものと考えたことには疑問があるとしても,全く不必要な処置を施したわけではなく,本件ドレナージを実施すると判断したことが医師としての裁量の範囲を逸脱するものであったと断定することはできない。 来的には胸腔ドレナージが必要になる可能性は十分にあったということができ,しかも,前記1(1)イのとおり,一般に胸腔ドレナージはそれほど危険なものではないのであるから,被告Fにおいて,Gの呼吸困難を胸水の圧迫によるものと考えたことには疑問があるとしても,全く不必要な処置を施したわけではなく,本件ドレナージを実施すると判断したことが医師としての裁量の範囲を逸脱するものであったと断定することはできない。3 争点(3)について(1) 証拠(乙2の1,証人I,被告F本人,鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によると,次の諸点を指摘することができる。ア被告Fは,本件ドレナージ後,Gが呼吸困難を訴え,顔面蒼白で,血圧が測定できなくなったので,他の医師の援助を得て,アンビューバッグで )及び弁論の全趣旨によると,次の諸点を指摘することができる。ア被告Fは,本件ドレナージ後,Gが呼吸困難を訴え,顔面蒼白で,血圧が測定できなくなったので,他の医師の援助を得て,アンビューバッグで人工呼吸を行い,呼吸が微弱になったため気管内挿管をして気道を確保する一方,心マッサージを続け,ボスミンを投与した結果,意識は回復しなかったものの,心拍動と自発呼吸が戻った。イまた,一般に,気道閉塞による呼吸困難と心停止が起こった場合,気道確保,酸素投与,補助呼吸及び心マッサージによる主要臓器への循環の維持を速やかに行う必要があるところ,事後的に見て,Gの場合,気道確保がやや遅れたものの,気管内挿管を行うまで呼吸があったと判断される上,結果的に救命しているため,救急措置に問題があったとはいえない。(2) 以上のとおりであるから,被告Fが本件ドレナージ後に行った救急措置に問題があったということはできない。なお,前記(1)の諸点の外,Gの病室の前に救急カートがあったこと(被告F本人)をも考慮すると,被告Fが本件ドレナージの実施に当たって救急カートを用意しなかったとしても,これをもって過失があったということはできない。4 争点(4)について(1) 証拠(証人K,被告F本人,証人Jの平成13年10月1日付回答書,鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によると,大要,次の事実を認めることができる。ア被告Fは,平成9年4月17日の本件ドレナージの実施前,Gの姉のLに胸腔ドレナージを行う旨を伝えGにも呼吸困難を改善するため挿管する旨を話したが,それ以上に詳しく胸腔ドレナージに関する説明を行わず,同月8日及び同月11日に行った胸水穿刺とは別の処置であるという説明もしなかった。 告F本人,証人Jの平成13年10月1日付回答書,鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によると,大要,次の事実を認めることができる。ア被告Fは,平成9年4月17日の本件ドレナージの実施前,Gの姉のLに胸腔ドレナージを行う旨を伝えGにも呼吸困難を改善するため挿管する旨を話したが,それ以上に詳しく胸腔ドレナージに関する説明を行わず,同月8日及び同月11日に行った胸水穿刺とは別の処置であるという説明もしなかった。イ Gの弟のKは,Gの病状説明を聞くため被告病院に赴いたが,そのころ本件ドレナージが レナージに関する説明を行わず,同月8日及び同月11日に行った胸水穿刺とは別の処置であるという説明もしなかった。イ Gの弟のKは,Gの病状説明を聞くため被告病院に赴いたが,そのころ本件ドレナージが実施されており,Lに尋ねると,被告Fから水を抜くと言われたが,それ以外の説明はなかったとの答えであったので,Gから以前に2回程水を抜いて検査したことがあると聞いていたことから,また注射器で水を抜いて検査していると思った。ウ一般に医師が胸腔ドレナージを実施するには,その必要性,すなわち現在の状態,実施しなかった場合の今後の予測,実施した場合に得られる利点を説明すると共に,胸腔ドレナージに伴う不便,不快の外,肺水腫その他の比較的あり得る合併症について説明し,患者の同意を得るべきであると考えられている。(2) 以上の事実にかんがみると,被告Fは,少なくともGに対し,胸腔ドレナージを実施することを告げ,その具体的な内容や必要性の程度,これに伴う危険性についても説明し,Gの同意を得た上で胸腔ドレナージを実施すべきであったのに,これらについて十分な説明をせず,Gの同意を得ないまま,本件ドレナージを実施したのであるから,説明義務を怠ったといわなければならない。これに対し,被告は,胸腔ドレナージについては事前の説明義務はないと主張しているが,胸腔ドレナージも医的侵襲を伴う医療行為であり,それほど危険なものではないとはいえ,これに伴う危険性が軽微であるとまではいえないこと,前記2で判断したとおり,本件ドレナージを緊急に実施する必要性はなかったこと,Gが胸腔ドレナージを実施されるのは初めてであったことなどを考慮すると,被告の上記主張を採用することはできない。5 争点(5)について(1) 前記争いのない事実の外,証拠(乙2の1,証人J,被告F本人,鑑定の結 的侵襲を伴う医療行為であり,それほど危険なものではないとはいえ,これに伴う危険性が軽微であるとまではいえないこと,前記2で判断したとおり,本件ドレナージを緊急に実施する必要性はなかったこと,Gが胸腔ドレナージを実施されるのは初めてであったことなどを考慮すると,被告の上記主張を採用することはできない。5 争点(5)について(1) 前記争いのない事実の外,証拠(乙2の1,証人J,被告F本人,鑑定の結 ージを実施されるのは初めてであったことなどを考慮すると,被告の上記主張を採用することはできない。5 争点(5)について(1) 前記争いのない事実の外,証拠(乙2の1,証人J,被告F本人,鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。ア被告Fは,Gにつき,胸部X線写真,胸部CT等の検査の結果,左肺門から下葉枝入口近くに大きな腫瘍が存在し,肝臓等に転移していることなどが分かり,肺癌(小細胞癌Ⅳ期)と診断し,その余命につき,何も治療しなければ約1か月,治療をしても約6か月と判断した。また,Iの判断もほぼ同様であった。イ鑑定人は,Gにつき,肺癌(小細胞癌Ⅳ期)に罹患し,肺局所においても肝転移など全身においても極めて進行している状況であったため,治癒は不可能であり,適切な化学療法や放射線療法が加えられ,たとえ奏功したとしても,呼吸困難等の症状を緩和するだけで,予後の延長や改善は期待できず,Gの予後は3か月前後と思われると判断している。ウ被告Fは,平成9年4月17日午後5時にGの家族と面談し,Gが肺癌であることを告げ,その病状や治療方針を説明し,その翌日からでも化学療法(抗癌剤の投与)を始めようと考えていたが,本件ドレナージ後,Gがショックに陥り,意識不明の状態が続いたため,化学療法を実施できなくなり,同年5月13日にGは死亡した。(2) 前記4の判断に加え,前記(1)で認定した事実を勘案すると,被告Fに説明義務違反があり,それに引き続いて本件ドレナージが実施され,これによってGが意識不明の状態となり,化学療法を受けられないまま死亡したのであるが,被告FがGに胸腔ドレナージの必要性や危険性の程度を十分に説明しておれば,Gが本件ドレナージを受けなかった可能性があり,その場合には,Gが化学療法を受け,その死亡の時点 ないまま死亡したのであるが,被告FがGに胸腔ドレナージの必要性や危険性の程度を十分に説明しておれば,Gが本件ドレナージを受けなかった可能性があり,その場合には,Gが化学療法を受け,その死亡の時点においてなお生存していたという関係が認められるので,たとえ本件ドレナージ自体に過誤があったとはいえないとしても,被告Fの説明義務違反とGの当該時点での死亡との間に相当因果関係があるということができる。 時点 ないまま死亡したのであるが,被告FがGに胸腔ドレナージの必要性や危険性の程度を十分に説明しておれば,Gが本件ドレナージを受けなかった可能性があり,その場合には,Gが化学療法を受け,その死亡の時点においてなお生存していたという関係が認められるので,たとえ本件ドレナージ自体に過誤があったとはいえないとしても,被告Fの説明義務違反とGの当該時点での死亡との間に相当因果関係があるということができる。これを前提として被告らが原告らに賠償すべき損害額を判断した結果は,次のとおりである。ア Gの損害(ア) 逸失利益Gは,被告Fの説明義務違反がなければ,約3ないし6か月は生存できたと考えられるにもかかわらず,上記説明義務違反があったために約1か月しか生存できなかったのであるが,被告Fの説明義務違反がなかったとしても,その肺癌の進行状況に照らして,死亡するまでの間に就労できたとは考え難いので,Gについて逸失利益を認めることは困難であり,上記の生存可能期間に関する損害は慰謝料の額の算定に当たって考慮することとせざるを得ない。(イ) 慰謝料証拠(甲4及び5の各1・2,原告A本人)及び弁論の全趣旨によると,G(昭和12年4月16日生)は,有限会社M商店の代表取締役を務め,原告Aら家族の生活を支えていたことなどが認められ,これに加え,Gは,被告Fの説明義務違反のため,意識不明の状態となり,化学療法等の適切な治療を受ける機会を奪われたまま死亡し,被告病院に寄せた信頼を裏切られたことをも考慮すると,その精神的苦痛に対する慰謝料の額としては2600万円が相当というべきである。なお,Gは,その余命が当該死亡の時点から約2ないし5か月であり,平均余命までは生存できなかったと考えられるが,Gの余命が短いことをもって慰謝料の減額事由とすることできない。(ウ いうべきである。なお,Gは,その余命が当該死亡の時点から約2ないし5か月であり,平均余命までは生存できなかったと考えられるが,Gの余命が短いことをもって慰謝料の減額事由とすることできない。(ウ) その他その他のGの損害として,葬祭費100万円,弁護士費用300万円が相当と認められるので,これらを前記慰謝料に加えると,Gの損害額は合計3000万円となる。イ原告らによる相続Gの死亡により,原告Aは,上記損害額の2分の1である1500万円を相続し,その余の原告らは,それぞれ上記損害額の6分の1である500万円を相続した。 るが,Gの余命が短いことをもって慰謝料の減額事由とすることできない。(ウ) その他その他のGの損害として,葬祭費100万円,弁護士費用300万円が相当と認められるので,これらを前記慰謝料に加えると,Gの損害額は合計3000万円となる。イ原告らによる相続Gの死亡により,原告Aは,上記損害額の2分の1である1500万円を相続し,その余の原告らは,それぞれ上記損害額の6分の1である500万円を相続した。ウ原告Aの損害(逸失利益)原告Aは,別紙損害一覧3記載のとおり原告A自身の逸失利益を主張しているが,その主張に係る損害が発生したと認めることはできない。6 結論以上のとおりであるから,原告Aの請求は1500万円の限度で,その余の原告らの請求は各500万円の限度で理由がある。但し,遅延損害金の起算日は,不法行為の日である平成9年4月17日とすべきである(なお,原告らは,仮執行宣言の申立てをしていない。)。和歌山地方裁判所民事部裁判官河田充規損害一覧 1 Gの損害 6711万2940円(1) 逸失利益 3511万2940円Gは,死亡当時60歳で,有限会社M商店の代表取締役として年収368万4000円を得ており,その平均余命は20.75年で,死亡するまで仕事を続けて上記年収を得ることができたので,生活費3割を控除し,労働可能年数20年に対応する新ホフマン係数13.616によって逸失利益を算定した。(2) 慰謝料 2600万円(3) 葬祭費 100万円(4) 弁護士費用 500万円 2 原告らによる相 し,労働可能年数20年に対応する新ホフマン係数13.616によって逸失利益を算定した。(2) 慰謝料 2600万円(3) 葬祭費 100万円(4) 弁護士費用 500万円 2 原告らによる相続原告Aは,上記損害額の2分の1である3355万6470円を相続し,その余の原告らは,それぞれ上記損害額の6分の1である1118万5490円を相続した。3 原告Aの損害(逸失利益) 1920万円原告Aは,Gの死亡当時56歳で,有限会社M商店に経理担当として勤務して年収96万円を得ており,その平均余命は28.90年で,Gが仕事ができた期間(少なくとも20年)は上記年収を得ることができたのに,その死亡によって後継者の育成ができないまま閉店を余儀なくされ,上記収入が得られなくなったので,上記年収に20を乗じて逸失利益を算定した。
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