主文 被告人A1を懲役4年6月に,被告人A2を懲役3年に処する。 被告人A2に対し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人A1は,昭和50年4月26日から平成11年5月23日まで,大阪市(以下省略)に本店を置く株式会社G銀行の代表取締役社長として,同銀行における資金の貸付け並びに貸付債権の保全及び回収などその業務全般を統轄していたもの,同A2は,昭和55年5月6日から平成11年5月21日まで,同銀行の代表取締役副社長として,被告人A1を補佐し,上記業務全般を掌理していたものであるが,同銀行の社長又は副社長である被告人両名は,貸付けに当たっては,法令・定款等の規定を遵守するのはもとより,業績不芳の取引先に対して1件当たり20億円を超える新たな貸付けを行う場合には取締役会の決議による承認を受けるとともに,貸付先の資産・経営状態やその信用の程度を精査して貸付けの当否を慎重に検討した上,確実かつ十分な担保を徴求するなど貸付金の安全確実な回収のための適切な措置を講じ,もって,金融機関としての業務の健全かつ適切な運営の確保に努め,同銀行に損害を加えることのないよう誠実にその職務を遂行すべき任務があるところ,被告人両名は,被告人A1の長男で同銀行常務取締役のA3及び宅地建物取引業等を営む株式会社Hハウジング代表取締役D1らと共謀の上,同銀行から,Hハウジングに対し,多額の資金を不正に貸し付けようと企て,Hハウジングが,K3株式会社からの借入金25億円の利息の支払等資金に窮していたため,同銀行からHハウジングに25億円を貸し付けるべく,同社及び被告人両名の利益を図り,同銀行に損害を加える目的をもって,その任務に背き,平成7年8月2日こ 金25億円の利息の支払等資金に窮していたため,同銀行からHハウジングに25億円を貸し付けるべく,同社及び被告人両名の利益を図り,同銀行に損害を加える目的をもって,その任務に背き,平成7年8月2日ころ,同銀行本店において,当時,Hハウジングの業績が極めて不振で見るべき収益がなく,同銀行のHハウジングに対する貸付金42億円余の回収がほとんど不可能となっていた上,自己資本のぜい弱な同社の資金繰りが借入金の金利負担過重のため極めてひっ迫し,実質的には同社が経営破綻の状態に陥っていたのであるから,このような状況下において,同社に対し,必要かつ十分な担保を徴求せずに25億円の資金の追加貸付けを実行すれば,その債権の回収が著しく困難となることを十分に認識しながら,あえて,その貸付けの実行を差し控えることなく,また,その債権の保全・回収のため,確実かつ十分な担保の徴求も,その他安全確実な回収をするための適切な措置も講ずることなく,かつ,取締役会の決議による承認も受けないで,同銀行から,同社に対し,25億円の資金を貸し付けて,その貸付金の回収を著しく困難にさせ,もって,同銀行に対し,同額から根抵当権の設定された土地の担保価値約6億9000万円を除いた約18億1000万円の財産上の損害を加えた。 第2 被告人両名は,前記のとおり,貸付けに当たっては,法令・定款等の規定を遵守するのはもとより,貸付先の資産・経営状態やその信用の程度を精査して貸付けの当否を慎重に検討した上,確実かつ十分な担保を徴求するなど貸付金の安全確実な回収のための適切な措置を講じ,もって,金融機関としての業務の健全かつ適切な運営の確保に努め,同銀行に損害を加えることのないよう誠実にその職務を遂行すべき任務があるところ,G銀行専務取締役のA3並びに宅地建物取引業等を営むI不動産株式会社代表 としての業務の健全かつ適切な運営の確保に努め,同銀行に損害を加えることのないよう誠実にその職務を遂行すべき任務があるところ,G銀行専務取締役のA3並びに宅地建物取引業等を営むI不動産株式会社代表取締役E1及び同E2らと共謀の上,G銀行から,I不動産に対し,多額の資金を不正に貸し付けようと企て,同社及び被告人両名の利益を図り,同銀行に損害を加える目的をもって,その任務に背き,別紙一覧表記載のとおり,平成9年4月28日ころから(前記E2との共謀は同10年3月27日ころから)同11年3月30日ころまでの間,前後24回にわたり,同銀行本店において,当時,I不動産の業績が極めて不振で,同銀行のI不動産に対する貸付金約165億円の回収がほとんど不可能となっていた上,自己資本のぜい弱な同社の資金繰りが借入金の金利負担過重のため極度にひっ迫しており,実質的には同社が経営破綻の状態に陥っていたのであるから,このような状況下において,同社に対し,無担保で追加貸付けを実行すれば,その債権の回収が著しく困難となることを十分に認識しながら,あえて,その貸付けの実行を差し控えることなく,また,その債権の保全・回収のため,確実かつ十分な担保の徴求も,その他安全確実な回収をするための適切な措置も講ずることなく,同銀行から,I不動産に対し,金額合計68億1970万円の資金を貸し付けて,その貸付金の回収を著しく困難にさせ,もって,同銀行に対し,同額の財産上の損害を加えた。 第3 被告人A1は,G銀行において前記の地位にあったものであるが,同銀行の経営が破綻し,同年5月22日,同銀行に対し,金融再生委員会が金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分をしたものであるところ,同銀行の取締役であった同被告人及びA3に対し,近く,同銀行を債権者とし,商法266条1項に基 銀行に対し,金融再生委員会が金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分をしたものであるところ,同銀行の取締役であった同被告人及びA3に対し,近く,同銀行を債権者とし,商法266条1項に基づく取締役の会社に対する損害賠償を請求され,同請求権を保全するため同被告人及びA3所有の各財産について仮差押え等の強制執行を受けるおそれがあることを察知し,これを免れる目的をもって 1 A3,その妻A4及び同女の実父B1と共謀の上(1) 同月26日ころ,兵庫県西宮市(以下省略)の当時の同被告人方金庫内等に保管していた同被告人所有の現金5000万円及び同所のA3方寝室内等に保管していた同人所有の現金5000万円を(2) 同年6月1日ころ,前記当時の同被告人方において前同様に保管していた同被告人所有の現金5000万円を同市(以下省略)の前記B1方に 2 A3,前記A4,同被告人の妻A5及び同女の実姉B2と共謀の上(1) 同月4日ころ,株式会社M1銀行a支店の前記A5名義の貸金庫内からいったん前記当時の同被告人方に持ち帰った同被告人所有の現金3000万円を(2) 同月10日ころ,前記当時の同被告人方において前同様に保管していた同被告人所有の現金4000万円を大阪府堺市(以下省略)の株式会社M2銀行b支店に開設された前記B2名義の貸金庫にそれぞれひそかに運び込んで隠匿し,もって,同被告人又はA3所有の前記各財産を隠匿した。 第4 被告人A1は,次いで,G銀行の金融整理管財人が,同銀行を債権者,同被告人を債務者として,商法266条1項5号に基づく損害賠償請求債権の執行を保全するため申し立てた不動産仮差押命令申立事件等についての大阪地方裁判所による不動産仮差押決定等に基づき,同年8月31日,同被告人の所有 として,商法266条1項5号に基づく損害賠償請求債権の執行を保全するため申し立てた不動産仮差押命令申立事件等についての大阪地方裁判所による不動産仮差押決定等に基づき,同年8月31日,同被告人の所有不動産等につき仮差押えが行われたことから,以後の自己所有の財産に対する強制執行を免れる目的をもって 1 A3及び同被告人の長女のB3と共謀の上,同年9月上旬ころ,前記当時の同被告人方において前同様に保管していた同被告人所有の現金2400万円を兵庫県西宮市(以下省略)の前記B3方に 2 同被告人の次男のA6と共謀の上,同月中旬ころ,前記当時の同被告人方において前同様に保管していた同被告人所有の現金2000万円を神戸市(以下省略)の前記A6方に 3 A3及び前記B3と共謀の上,同月中旬ころ,前記当時の同被告人方において前同様に保管していた同被告人所有の現金1500万円を前記B3方にそれぞれひそかに運び込んで隠匿し,もって,同被告人所有の前記各財産を隠匿した。 (事実認定の補足説明)第1 弁護人らの主張被告人A1の弁護人ら(以下「A1弁護人」という。)及び被告人A2の弁護人ら(以下「A2弁護人」という。A1弁護人とA2弁護人とを併せて「弁護人ら」ということがある。)は,判示第1及び第2の各事実について,いずれも被告人両名が公訴事実記載の貸付けを行ったという客観的事実は争わないものの,本件貸付けはいずれも任務違背に当たらず,被告人両名には故意及び図利加害目的がないなどと主張し,さらに,A2弁護人は,被告人A2はHハウジング事件については共謀も認められないなどとして,いずれも無罪を主張し,被告人両名も公判廷においてこれに沿う供述をする。 そこで,前記のとおり判示事実を認定した理由を補足して説明する。 第2 捜査段階における供 共謀も認められないなどとして,いずれも無罪を主張し,被告人両名も公判廷においてこれに沿う供述をする。 そこで,前記のとおり判示事実を認定した理由を補足して説明する。 第2 捜査段階における供述の任意性について 1 被告人A1の供述調書等A1弁護人は,被告人A1の捜査段階の供述調書等について,任意性に疑いがあると主張し,その論拠として,A1弁護人が取調べについて可視化の申入れをしたにもかかわらず,取調べ検察官が無視したこと,取調べ検察官が,被告人A1に対し,その弁護人を誹謗・中傷したこと,被告人A1は高齢である上,心筋梗塞の病歴があり,いつ発作を起こすかもしれないという不安な状態にあったこと,連日長時間にわたって取調べが強行されたこと,取調べ検察官が一方的に検察側のストーリーを押し付けたことなどを挙げる。 しかしながら,被告人A1については,G銀行の破綻後,刑事事件が立件されることを予想し,捜査情報を収集するなどしていたこと,身柄拘束当初から弁護人が選任され,ほぼ毎日弁護人と接見し,その支援を受けていたことなどが認められ,また,その調書等の内容について,被告人A1の弁解や,被告人A1自身が述べなければ検察官も知り得なかったと思われる事項が含まれていることが認められる上,被告人A1は,公判廷において,取調べ中,検察官に対し,調書内容を変更するように申し入れ,実際に変更された部分があり,署名を拒否したこともある旨供述していることなどをも考慮すると,署名がされている前記供述調書等についてはその任意性に疑いがあるとまでは認められず,前記供述調書等には証拠能力が認められる。 2 被告人A2の供述調書A1弁護人は,被告人A2の捜査段階の供述調書についても,任意性が疑わしいと主張する。 しかし,被告人A2も,被告人A 記供述調書等には証拠能力が認められる。 2 被告人A2の供述調書A1弁護人は,被告人A2の捜査段階の供述調書についても,任意性が疑わしいと主張する。 しかし,被告人A2も,被告人A1を通じて捜査情報を入手し,身柄拘束当初から弁護人が選任され,その援助を受けられたこと,被告人A2の供述調書の内容をみると,銀行内での被告人A1と被告人A2との関係や,頴川家の内実など,検察官が知り得ない事実を具体的に供述している上,複数回にわたり,調書の記載内容の訂正を申し立てていることなどが認められ,さらに,被告人A2及びその弁護人は任意性を争っていないことをも考慮すると,任意性に疑いがあるとは認められない。 また,上記事情に加え,被告人A2の公判廷での供述状況等を併せ考慮すると,上記供述調書には特信性が認められ,上記供述調書の内容と公判供述とを対比すると相反性も認められるから,上記供述調書には被告人A1との関係でも証拠能力が認められる。 第3 G銀行について 1 G銀行の概要等(1) G銀行の沿革G銀行は,大正15年和歌山県において設立されたG無尽株式会社を前身とするところ,同社は,昭和18年J1無尽株式会社を吸収合併した後,昭和26年1月本店を大阪に移転し,同年10月株式会社G相互銀行となった。さらに,平成元年2月普通銀行に転換して株式会社G銀行となった。 また,G銀行は,平成10年10月,同銀行と密接な関係があり,破綻した株式会社J2銀行から営業権を譲り受けている。 (2) A家とG銀行との関係A家は,江戸時代にJ3の屋号で廻船問屋を営んで財を成し,初代A7が本家のある長崎から分家し,大阪に本拠を移した。明治42年,A家は,広島の山林を購入して林業を始め,山林業を営む株式会社J4商店を中心に,近 江戸時代にJ3の屋号で廻船問屋を営んで財を成し,初代A7が本家のある長崎から分家し,大阪に本拠を移した。明治42年,A家は,広島の山林を購入して林業を始め,山林業を営む株式会社J4商店を中心に,近畿,中国,四国,東北及び中部地方の山林を所有するまでに発展していった。なお,A家では,3代目から代々当主が「A1」を襲名していた。 このように,A家は,山林業を中心に発展していったが,4代目A1(以下「先代A1」という。)は,これに止まらず,銀行業にも乗り出し,昭和18年ころまでに,J1無尽株式会社の株式の過半数以上を所有した。同年,G無尽株式会社がJ1無尽株式会社を吸収合併した後,先代A1は,同23年ころまでにG無尽株式会社の株式を全部所有するに至った。 先代A1は,その後相互銀行となったG相互銀行のオーナー社長として,二十数社の会社を設立するなどし,資本構成上も経営上もこれらを支配した。G相互銀行の株式は非公開であり,そのすべてをA一族及びその関係する会社が所有しており,同銀行以外の会社の株式も,その一部をA一族が持ち,その余は同銀行及び関係する会社相互間で持ち合っていた。 (3) 被告人両名の経歴等被告人A1は,昭和2年10月8日先代A1の長男として生まれ,「A8」と命名された。被告人A1は,A家の主な家業である林業を継ぐべく,M3大学農学部林学科に進み,同26年農林省林野庁c営林局に入局した後,同28年に退職してJ4商店に入社し,同32年にJ4商店代表取締役社長に就任した。 被告人A2は,同4年6月1日先代A1の次男として生まれ,M4大学文政学部政治科卒業後,同27年に当時のG相互銀行に入行し,同38年同銀行の取締役に就任した。 先代A1は,当初,長男である被告人A1にA家の関係する会社の中核で の次男として生まれ,M4大学文政学部政治科卒業後,同27年に当時のG相互銀行に入行し,同38年同銀行の取締役に就任した。 先代A1は,当初,長男である被告人A1にA家の関係する会社の中核であるJ4商店を継がせ,次男である被告人A2に当時のG相互銀行を継がせようと考えていたが,その後,高度成長期に入って同銀行の業容が拡大し,他の企業を束ねる最重要企業となったため,方針を変え,被告人A1に同銀行を継がせることにした。このような先代A1の意向を受けて,被告人A1は,同39年にG相互銀行の非常勤取締役として入行し,同50年4月26日に先代A1の後を継いで同銀行代表取締役社長に就任した。被告人A1は,先代A1死亡後の同53年に「A1」を襲名し,名実共にA家の当主となった。 被告人A2は,同50年G相互銀行専務取締役に,同55年5月6日に同銀行代表取締役副社長に就任した。 本件当時,被告人A1は,A家の当主として,G銀行の代表取締役社長として,同銀行の経営の采配を振っていた。また,被告人A2は,同様にA家の次男として,G銀行の代表取締役副社長として,被告人A1に次ぐ地位にあった。 なお,被告人A1の長男であるA3は,同61年G相互銀行に入行し,同銀行がG銀行となった後,平成6年取締役に,同7年常務取締役に,同8年専務取締役に就任したものであり,将来の社長と目されていた。 2 関係する会社G銀行には,昭和50年の大蔵省通達等(なお,同通達は平成10年に廃止された。)による関連会社(金融機関が出資する会社で,その設立経緯,資金的,人的関係等からみて,金融機関と密接な関係を有する会社をいう。)として,Gカード株式会社,G総合リース株式会社,G総合管理株式会社,G投資顧問株式会社(同社は同8年3月末に閉鎖した。)の4 資金的,人的関係等からみて,金融機関と密接な関係を有する会社をいう。)として,Gカード株式会社,G総合リース株式会社,G総合管理株式会社,G投資顧問株式会社(同社は同8年3月末に閉鎖した。)の4社があった。また,同通達等により,関連会社に行わせてはならない業務を行っていたため適正化が図られた適正化措置済み会社として,I不動産,Hハウジング,J5不動産株式会社など7社があった。その他に,J4商店をはじめ,J6クレジット株式会社,J7クレジット株式会社,株式会社J8,J9ゴルフ株式会社等,G銀行と密接な関係を有する会社が約20社存在した(なお,後記のとおり,G銀行の内規では,同通達等による関連会社([1])と適正化措置済み会社とを併せて「関連会社」としている場合があり,また,本件訴訟においては,同通達等による関連会社,適正化措置済み会社及びその他の密接な関係を有する会社をまとめて「関連会社」ということがあったが([2]),本判決においては,[1]の意味では「通達上の関連会社」,[2]の意味では「グループ会社」という語を用いることがある。)。 その中で,J4商店は,かつてグループの中核企業であった上,資本関係上もG銀行の筆頭株主であるなど,グループ会社の中でも別格として扱われていた。このJ4商店の代表取締役は被告人両名の実弟であるA9であるが,被告人A1は,毎日,J4商店に出向いて社内稟議書をチェックするなどしており,実質的には被告人A1が経営していた。 これらのグループ会社は,法人格は別であったが,互いに株式を持ち合い,G銀行やJ4商店の出身者あるいはA家の親族が役員を務めるなど,密接な関係にあり,被告人A1が,各グループ会社の役員等から報告を受け,また指示を出すなどして,実質的に経営を行っていた。もっとも,グループ会社のうち 店の出身者あるいはA家の親族が役員を務めるなど,密接な関係にあり,被告人A1が,各グループ会社の役員等から報告を受け,また指示を出すなどして,実質的に経営を行っていた。もっとも,グループ会社のうち,J9ゴルフ株式会社,株式会社J10など数社については,被告人A1ではなく,被告人A2が実質的に経営していた。 このような関係から,G銀行とそのグループ会社は,「A商店」,「Aグループ」又は「G銀行グループ」などと呼ばれており,世間的にもG銀行とグループ会社は一体と考えられていた。 3 組織構成(1) 概要G銀行の組織(平成7年4月1日以降)は,最高意思決定機関である株主総会の下に,取締役会,代表取締役社長,常務会という経営方針を決定する組織と,社内の監査についてつかさどる監査役会があり,常務会の下に本部各部等と各営業店が組織されている。G銀行において,与信取引に関する審査を担当する部署は,正常先債権を所管する「審査部(同9年の組織変更前の名称は融資部)」,支援先債権を所管する「審査第2部(同9年の組織変更前の名称は融資第2部)」,海外特定企業に対する貸出業務及び証券業務を扱う「証券国際部(同9年の組織変更前の名称は国際部)」と,後記の「関連事業部(同5年の組織変更前の名称は融資第2部)」であった(なお,以下では,時期にかかわらず,いずれも変更後の名称で表記する。)。 (2) 被告人両名の地位前記のとおり,本件当時,被告人A1はG銀行の代表取締役社長の地位に,被告人A2は,代表取締役副社長の地位にあった。 G銀行では,定款及び職制により,対外的に社長及び副社長は各自銀行を代表すること,対内的に社長は銀行の業務を統轄すること,副社長は銀行の業務を掌理し,社長を補佐することがそれぞれ定められていた。 銀行では,定款及び職制により,対外的に社長及び副社長は各自銀行を代表すること,対内的に社長は銀行の業務を統轄すること,副社長は銀行の業務を掌理し,社長を補佐することがそれぞれ定められていた。 (3) 関連事業部関連事業部については,平成7年4月1日付け本部職務権限規定によると,分掌として,関連会社((証拠略)によると,前記2でいう通達上の関連会社及び適正化措置済み会社をいうとされる。)に対する支援,管理,指導に関する事項及び特定企業先(同じく通達上の関連会社及び適正化措置済み会社を除いたグループ会社をいうとされる。)に関する事項が定められ,前者に関する職務として,[1]関連会社等の資金調達,運用の方針,[2]関連会社等に対する貸出しの審査,管理,[3]関連会社等の監査,[4]関連会社等と本部各部の調整,[5]役員の特命事項が,後者に関する職務として,[1]特定企業先の選定,[2]その他がそれぞれ定められ,決定を要する事項についての決定権限はいずれも社長にあるとされている。 このような関連事業部の存在は,グループ会社について他の取引先と異なる取扱いをすることを示すものであり,グループ会社との関係では,関連会社の監査に検査部が関与する以外,他の部の関与を排除する形態となっていて,社長の直轄とされていた。また,後記のとおり,関連事業部以外の部署では,貸付けをする部署と審査を担当する部署が分かれているのに対し,関連事業部だけは,貸付案件を自ら審査するものとされていた。 4 貸付手続(1) 審査規定G銀行には,貸付けに関する規定として,審査規定,貸出規定,貸出協議会規定及び本部内貸出権限表が存在した(これらの規定は度々改訂されているところ,以下では必要に応じて変更されている点を指摘し,実質的に変更されていない 関する規定として,審査規定,貸出規定,貸出協議会規定及び本部内貸出権限表が存在した(これらの規定は度々改訂されているところ,以下では必要に応じて変更されている点を指摘し,実質的に変更されていない点については特に断らないものとする。)。 まず,審査規定では,審査部,審査第2部,関連事業部(「関連事業部(特定企業先)」と規定されているが,他の規定との関係上,ここでいう「特定企業先」は関連事業部が扱うグループ会社のことを指すものとみられる。)及び証券国際部が,与信取引に関する審査等を行うこと(1条),この4部は,各営業店(本店営業部を含む。)より提出する与信取引に関する稟議書等により審査を行うこと(2条),審査の結果,稟議事項を正当と認めたときは,上司に申達すること(6条)などが定められている。 貸出規定は,同規定がすべての貸出しについて適用されること(1条),貸出しはすべて稟議の上承認を要すること(2条),原則として債権額に見合う担保の徴求を要すること(6条),原則として保証人1名以上の徴求を要すること(8条)などを定め,本部稟議を要しないもの(9条)と本部稟議が必要なもの(10条)を規定し,関連事業部の扱う特定企業先((証拠略)によると,ここでいう「特定企業先」は関連事業部が扱うグループ会社のことを指す。)については,本部稟議を要するものとされていた(同条(9))。また,同規定中の担保の評価基準(同基準以外の担保掛け目を適用する案件については,本部決裁を受けることになる。)によると,平成7年12月1日改訂時には不動産評価基準は市街化地区内の更地などは評価額の70パーセント,その他の不動産については評価額の60パーセントとされていたが,同9年3月11日改訂時には一律70パーセントとされた。なお,不動産評価額の算出方式をみる 化地区内の更地などは評価額の70パーセント,その他の不動産については評価額の60パーセントとされていたが,同9年3月11日改訂時には一律70パーセントとされた。なお,不動産評価額の算出方式をみると,土地について,路線価設定地区は,路線価による評価を基準としていた。 貸出協議会規定では,審査部所管の対象案件について協議を行うとされ,協議会対象案件として7億円超貸付けなどが挙げられていた。ただし,同規定は,関連事業部所管の案件には適用されなかった。 本部貸出決裁権限表では,金額ごとに決裁権限者が決められており,1億円以下は審査課長,5億円以下は審査部長,7億円以下は担当常務取締役,10億円以下は副社長,10億円超のものは社長とされていた。しかし,貸出協議会規定同様に,同規定は関連事業部所管の案件には適用されず,同部所管の案件については,金額にかかわらず社長が決裁していた。 以上の諸規定に加えて,本部職務権限規定では,取締役会付議事項として,貸付け等の実行については,業績不芳の取引先(直近の事業年度の末日において債務超過の状態にある先をいうとされる。)に対する新たな貸付け等のうち1件当たり20億円超のものが定められていた。同規定には,案件を所管する部についての制限規定はなかった。 (2) 一般的な貸付手続本部職務権限規定によると,審査部の貸付けの審査については,前記審査規定,貸出規定,貸出協議会規定及び本部内貸出権限表により運営されることになっていた。 例えば,G銀行における一般企業法人等に対する本店営業部(以下「営業部」ということがある。)所管の貸付手続は,以下のとおりである。 まず,新規取引先への貸付けの場合,担当者がその資産状態を確認するために,取引先の商業登記簿謄本,決算書3期分,他行 以下「営業部」ということがある。)所管の貸付手続は,以下のとおりである。 まず,新規取引先への貸付けの場合,担当者がその資産状態を確認するために,取引先の商業登記簿謄本,決算書3期分,他行借入分を含めた借入状況表,資金繰表等を徴求するとともに,不動産担保として差し入れ可能なものを調査するために,取引先の所有不動産や代表取締役等の連帯保証人となる者の自宅の不動産登記簿謄本を確認し,更に,差し入れ不動産の土地建物の登記簿謄本,公図,地積図,地積測量図,建物の図面等を徴求するなどして担保評価を行い,貸付可能金額を決定し,貸出稟議書を作成する。貸出稟議書には,貸付種別,貸出期間,貸出金額,利率,資金目的,返済方法,返済財源,取引に至る経緯,企業力,担保保全状況等の所定事項を記載し,徴求した決算書等に基づいてG銀行で作成した信用調査書,試算表,比較貸借対照表,比較損益計算書,借入残高推移表,資金繰表,現地調査の上作成される不動産担保物件明細書,担保不動産総合表等を添付し,一件書類とする。G銀行では,すべての貸付けに適用される貸出規定によって,債権額に見合う担保の徴求等が要求されていたため,貸出稟議書は,この貸出規定に沿って作成されていた。 このように作成された貸出稟議書は,営業部内の稟議に回され,不備がなければ審査部に回されて担当審査役による審査を受け,本部貸出決裁権限表に基づき,最終決裁権限者の決裁を受ける。その決裁を得ると,貸出稟議書は審査部に戻され,営業部において貸付けを実行する。なお,前記のとおり,貸付金額が大きいものについては,貸出協議会規定に基づき貸出協議会で協議され,あるいは,本部職務権限規定に基づき,取締役会の付議事項とされる。 次に,追加貸付けや継続貸付けの場合は,手続的にはほとんど新規取引先への貸付け ,貸出協議会規定に基づき貸出協議会で協議され,あるいは,本部職務権限規定に基づき,取締役会の付議事項とされる。 次に,追加貸付けや継続貸付けの場合は,手続的にはほとんど新規取引先への貸付けの場合と同じであるが,改めて信用調査を行うことはなく,決算書や他行借入分を含めた借入状況表,資金繰表を毎期徴求するため,これらに基づいて貸出稟議書を作成することになる。その後の手続は新規取引先への貸付けの場合と同じである。 (3) グループ会社に対する貸付手続関連事業部が所管するグループ会社に対する貸付手続は前記の一般的な貸付手続と異なり,次のような手続であった。 まず,約30社あるグループ会社のうち,I不動産等の一部の会社については,毎月社長室等で月例の報告会議が行われており,当該グループ会社の社長等が,G銀行の社長であった被告人A1に対し,当該会社の毎月の営業状況や資金状況等の報告・説明をし,当該会社への貸付けの可否やその金額等が決定される。月例の報告会議が行われないHハウジング等のグループ会社に対する貸付けについても,適宜各グループ会社の社長らが被告人A1と面談して相談するなどし,貸付けの可否やその金額等が決定されていた。 なお,このように,グループ会社によって報告会議がなされるものとなされないものとがあったところ,その要否,頻度,出席者などは被告人A1の指示によって決定されていた。 グループ会社に対する貸出稟議書については,貸付金額,金利等貸出稟議書に記載するほとんどの事項について関連事業部が営業部に指示し,営業部においては,貸出先の返済能力や担保の調査を行わず,その指示どおりに貸出稟議書を作成していた。貸出稟議書は,月例の報告会議又はその他の席において,被告人A1の事実上の承認を得た後に作成されるこ 業部においては,貸出先の返済能力や担保の調査を行わず,その指示どおりに貸出稟議書を作成していた。貸出稟議書は,月例の報告会議又はその他の席において,被告人A1の事実上の承認を得た後に作成されることもあれば,それ以前に関連事業部からの指示で一応作成されていることもあったが,どちらにしても,被告人A1の事実上の承認を得た後,決裁に回されていた。 このようにして作成されたグループ会社に対する貸出稟議書は,その後,営業部の各決裁権者の決裁に回されるが,これらは関連事業部からの指示で形式的に作成されたものであり,実質的な審査がなされることはなく,各決裁権者において形式的に決裁印が押され,再び関連事業部に回されていた。その後,関連事業部の各決裁権者が形式的に決裁印を押し,関連事業部長において,関連事業部担当取締役であったA3,副社長であった被告人A2,社長であった被告人A1にそれぞれ決裁印を押してもらっていた。なお,このようなグループ会社への貸付けについては,その貸付金額が7億円超のものであっても貸出協議会に諮られることはなく,貸付金額が20億円超のものであっても,前記本部職務権限規定において関連事業部所管の貸付けを除外する旨の規定はなかったにもかかわらず,取締役会に付議されることもなかった。 5 経営状況(1) 決算の状況決算書類による本件前後のG銀行の経営成績及び財政状態は以下のとおりである。 まず,経営成績をみると,貸倒引当金繰入額,貸出金償却の増加などの影響で,平成8年3月期以降,経常利益が大幅に減少している。すなわち,経常利益は,同5年3月期(同4年4月1日から同5年3月31日まで(銀行法17条参照)。以下同様である。)は約57億円,同6年3月期は約37億円,同7年3月期は約53億円であったところ,同8 わち,経常利益は,同5年3月期(同4年4月1日から同5年3月31日まで(銀行法17条参照)。以下同様である。)は約57億円,同6年3月期は約37億円,同7年3月期は約53億円であったところ,同8年3月期以降赤字に転落して,同8年3月期は約4億円,同9年3月期は約296億円,同10年3月期は約321億円,同11年3月期に至っては約2286億円の赤字を計上している。 また,G銀行は,同6年3月期以降,グループ会社であり多額の負債を抱えていたG総合リースの支援のため,債務の肩代わりや債権の放棄を行っていたことから,特別損失も増加し,その額は同6年3月期から同11年3月期まで合計約427億円に上り,他方,同7年3月期以降,G銀行所有の支店,社宅,電算システム等をグループ会社に売却し,売却益を特別利益として計上するいわゆる「益出し」を行うなどしていた。 これらを合わせた当期利益は,同5年3月期は約20億1900万円であったが,それから次第に減少して,同6年3月期は約7億6900万円,同7年3月期は約5億5500万円となり,その後は赤字に転落し,同8年3月期は約44億円,同9年3月期は約260億円,同10年3月期は約337億円を超える赤字となり,同11年3月期には約2292億円を超える赤字を計上している。 次に,財政状態をみると,前記のような経営成績の悪化に対応して,同7年以降では,同8年3月,同10年3月,同11年1月の3回にわたり,いずれもグループ会社への第三者割当てにより各60億円,合計180億円の増資が行われた(なお,同11年の増資は,グループ会社であったJ6クレジットを売却した資金によるものである。)ものの,G銀行の自己資本は減少し続けた。すなわち,G銀行の自己資本は,同5年3月期から同8年3月期までは約650億円 年の増資は,グループ会社であったJ6クレジットを売却した資金によるものである。)ものの,G銀行の自己資本は減少し続けた。すなわち,G銀行の自己資本は,同5年3月期から同8年3月期までは約650億円以上を保持していたが,同9年3月期には約409億円,同10年3月期には約131億円と落ち込み,同11年3月期には約2101億円のマイナスとなっている。 (2) 平成7年大蔵省検査ア検査結果(ア) G銀行に対しては平成7年8月18日現在での大蔵省検査がなされ,同8年2月23日,その結果に基づく示達がされた。その示達事項をも含めて検査の結果が記載されている検査報告書には,経営上の際だった特徴として以下の点が指摘されている。 [1] 資産内容については,前回検査(同4年8月18日)よりも更に悪化の度合いを強め,分類額は倍増し,しかも前回検査のⅡ分類債権の劣化などから,今回検査の欠損見込額は1241億円に上り,欠損見込み率も5.79パーセントへと上昇し劣悪となっている(貸付債権は,正常債権のほか,「債権確保上の諸条件が満たされないか,あるいは信用上の疑義が存するなどの理由により,その回収が通常の度合いを超える危険を含むと認められる貸出金」であるⅡ分類債権,「回収又はその価値について重大な疑念が存し,損失発生の可能性が高い不良貸出金」であるⅢ分類債権及び「回収不能な不良貸出金」であるⅣ分類債権に分類され,Ⅱ,Ⅲ及びⅣ分類債権を合わせて分類債権という。)。 [2] 損益については,資産不計上未収利息の増加等から利益水準は総じて低下していることに加え,多額の債権償却と同5年度から関連ノンバンク(G総合リース)への支援損を計上したため,多額の益出しにより経常利益及び当期利益を確保しているが,収益予算達成のため,利息貸し て低下していることに加え,多額の債権償却と同5年度から関連ノンバンク(G総合リース)への支援損を計上したため,多額の益出しにより経常利益及び当期利益を確保しているが,収益予算達成のため,利息貸し増しによる多額の貸出金利息収入の確保を行っており,これらを除外した実態の当期利益は同5年度は赤字に転落している。 [3] 自己資本比率については,同5年3月末以降,総資産量の伸び悩みもあって4パーセント台を辛うじて維持している状況となっているが,今回検査の結果,多額の欠損見込額の発生により自己資本は大きく毀損されており,正味自己資本額はマイナス382億円と実態的には債務超過となっている。 [4] グループ会社については,G総合リースとの関係で,債権放棄による多額の支援損の計上,営業貸付金の肩代わり等を余儀なくされている。また,Hハウジングについても,プロジェクトの頓挫により実質的に経営破綻しており,I不動産についても,大規模プロジェクトの超長期化により資金繰りがひっ迫しているなど,G銀行の支援負担は多大なものとなっている。 (イ) 同報告書には,主要留意事項として,融資姿勢の厳正化,審査管理の充実強化及び融資構造の改善,収益力の強化と不良資産の整理促進等が挙げられている。 また,グループ会社との関係で,関連事業部は融資権限を有しているものの,実態的には経営から指示されたことを実行しているにすぎず,事実上審査不在となっていることから,今後,組織的な審査体制を構築する必要があると指摘されている。 イ示達に対するG銀行の回答前記示達に対し,G銀行は,平成8年4月18日付けの「検査示達に対する回答」と題する書面を大蔵省大臣官房金融検査部長,大蔵省銀行局長宛に提出している。 これによると G銀行の回答前記示達に対し,G銀行は,平成8年4月18日付けの「検査示達に対する回答」と題する書面を大蔵省大臣官房金融検査部長,大蔵省銀行局長宛に提出している。 これによると,G銀行の貸出しの基本姿勢は,[1]大口貸出しの是正,[2]業種偏重の回避,[3]超長期貸出しの抑制を図ることであったが,これらの是正ができず反省しているとして,融資姿勢の厳正化(不動産業に対する融資の減少を含む),不良資産の整理促進,リストラの推進等の方針を掲げている。 しかし,この回答において,関連事業部及びグループ会社に関する記載はほとんどない。 (3) 資産の自己査定及び会計監査G銀行では,平成9年3月末を基準日として資産の自己査定の試行を実施し,その後同年9月末を基準日としてその見直しを行い,以後,同年12月末を基準日として第1回自己査定を,同10年3月末を基準日としてその見直しを行い,同年6月末を基準日として第2回自己査定を,同年9月末を基準日としてその見直しを行った。 資産の自己査定制度は,金融機関経営の健全性を確保していくための新しい監督手法である早期是正措置が同年4月から導入されることとなったのに伴い,金融機関が自己責任で自己の資産分類を行い,適正な貸倒償却や貸倒引当金の計上をすることによって,財務内容の健全化を図る目的で実施されることになったものである。この自己査定については同9年3月5日付けで「早期是正措置制度導入後の金融検査における資産査定について」と題する大蔵省通達が発せられており,G銀行でもこれに準拠した基準を作成して自己査定を行っていた。同通達によれば,資産査定においては,回収の危険性又は価値の毀損の危険性の度合いに応じて資産をⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳの4段階に判定するとされ,Ⅰ分類は,「Ⅱ分類 に準拠した基準を作成して自己査定を行っていた。同通達によれば,資産査定においては,回収の危険性又は価値の毀損の危険性の度合いに応じて資産をⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳの4段階に判定するとされ,Ⅰ分類は,「Ⅱ分類,Ⅲ分類及びⅣ分類としない資産」であり,回収の危険性又は価値の毀損の危険性について,問題のない資産,Ⅱ分類とするものは,「債権確保上の諸条件が満足に充たされないため,あるいは,信用上疑義が存する等の理由により,その回収について通常の度合いを超える危険を含むと認められる債権等の資産」であり,Ⅲ分類とするものは,「最終の回収又は価値について重大な懸念が存し,したがって損失の発生の可能性が高いが,その損失額について合理的な推計が困難な資産」であり,Ⅳ分類とするものは,「回収不可能又は無価値と判定される資産」であるとされている。 当時,G銀行では償却財源が乏しかったことから,被告人両名は,資産の自己査定に当たり,適正な償却・引当が必要になるⅢ分類及びⅣ分類をできるだけ低く抑えるように指示し,その指示に従った査定が行われていた。 これに対し,G銀行の会計監査人らは,査定の甘さや要償却・引当金の不足などを指摘し,これを改善するように要請したが,被告人両名は聞き入れなかった。 このような問題があったことから,同10年3月期決算では,3人の会計監査人のうちC1監査人及びC2監査人が監査報告書の適正意見の署名ができないとして辞任を申し出た。しかし,被告人A1の,2人同時に辞められてはG銀行に与える影響が大きすぎるので辞めないでほしいとの意向を受け,まずC1監査人が適正意見の署名をせずに辞任し,C2監査人は適正意見の署名をした後に辞任した。 (4) 破綻平成10年9月末を基準日とするG銀行の自己査定見直しの結果,Ⅱ分類貸出金約3 まずC1監査人が適正意見の署名をせずに辞任し,C2監査人は適正意見の署名をした後に辞任した。 (4) 破綻平成10年9月末を基準日とするG銀行の自己査定見直しの結果,Ⅱ分類貸出金約3756億円,Ⅲ分類貸出金約501億円,Ⅳ分類貸出金約58億円(いずれも償却・引当前)とされたが,同日を基準日として同11年1月に実施された金融監督庁検査の結果では,Ⅱ分類貸出金約3920億円,Ⅲ分類貸出金約1030億円,Ⅳ分類貸出金約336億円となっており,自己査定の結果を大幅に上回った。 同年4月13日,金融監督庁による検査の結果がG銀行に通知されるとともに,前記不良債権の償却等に必要な資金の手当てをするため,1か月以内に資本増強策を提出するように求められた。しかし,G銀行では資本増強策を提出することができなかったため,同年5月14日,金融監督庁から早期是正措置の発動を受け,経営改善計画の提出を求められた。G銀行は,経営改善計画を策定することもできなかったため,同月21日,金融再生委員会に対し,預金等の払戻しを停止するおそれが生ずると認める旨の申出を行い,翌22日,金融再生委員会が金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分の認定を行い,G銀行は実質的に破綻した。 被告人A1は同月23日に社長を,被告人A2は同月21日に副社長を,それぞれ辞任した。 第4 Hハウジングについて 1 会社概要Hハウジングは,昭和47年5月22日,先代A1により,宅地建物取引業等を目的として設立されたG銀行のグループ会社である(なお,設立当時の商号は「株式会社GHハウジング」であったが,同50年大蔵省通達によって適正化措置を済ませ,「株式会社Hハウジング」となった。)。その株主は,J4商店を筆頭に,A家及びG銀行のグループ会社の関係者 商号は「株式会社GHハウジング」であったが,同50年大蔵省通達によって適正化措置を済ませ,「株式会社Hハウジング」となった。)。その株主は,J4商店を筆頭に,A家及びG銀行のグループ会社の関係者又はHハウジング役員等で占められていた。Hハウジングの代表取締役は,代々G銀行からの退職出向という形で派遣されており,その地位はG銀行では支店長クラスのポストとされていた。また,Hハウジングは,G銀行のグループ会社の一つとして,被告人A1に対する事業報告をしばしば行っており,被告人A1が実質的に経営を行っていた。 2 事業状況(1) 概要Hハウジングは,設立当初は主に建売住宅やマンション等の販売業務やそれに伴うローン設定の斡旋業務をその事業として行っていたが,設立3年後ころから,開発業者と共同企業体を組織し,マンション建設等を目的とする開発事業を行うようになり,平成4年ころまでにそのような開発事業が主たる業務となっていた。そして,同2年ころまではバブル景気に乗り,順調に利益を上げていたが,その後のバブル崩壊と地価下落の影響を受け,急激に業績不振となっていった。 同4年1月ころ,Hハウジングでは,大阪府高槻市d,神戸市e区f,大阪府枚方市g,奈良県大和高田市の4つの物件を扱っていたが,いずれも地価が高騰していた同2年から同3年にかけて土地を取得したため,地価が下落しだした同4年ころには,開発費用を掛けて事業化し,市場価格で販売しても,大幅な損失が見込まれる状態であった。 そのため,Hハウジング代表取締役社長のD1はその状況を被告人A1に報告し,被告人A1を中心に対応策が検討され,同年6月には,「独力で再建は不可能である。」として,Hハウジングをグループ会社であるI不動産,J8,J6クレジット又はJ7クレジットに吸収 被告人A1に報告し,被告人A1を中心に対応策が検討され,同年6月には,「独力で再建は不可能である。」として,Hハウジングをグループ会社であるI不動産,J8,J6クレジット又はJ7クレジットに吸収合併することも検討されたが,結局その案は立ち消えになった。 同年10月,被告人A1は,神戸市e区fの物件については共同事業者に買い取らせること,枚方市g及び大和高田市の各物件については,グループ会社に譲渡する予定であったがそれを取りやめて凍結すること,高槻市dの物件の開発事業(以下「高槻プロジェクト」という。)については開発申請の進捗状況を見守ることを指示し,これ以降のHハウジングの事業は,実質的には高槻プロジェクトのみとなった。 (2) 高槻プロジェクトの状況高槻市dの土地は,平成2年1月,株式会社K1が,住宅金融専門会社(いわゆる住専)であるK2株式会社の子会社であったK3株式会社から100億円を借り入れて取得し,開発していたところ,同年8月,Hハウジングは,被告人A1の承諾を得て,K4株式会社及び株式会社K5とともに共同事業者としてこの開発に加わった。 その際,K1等共同事業者との間の協定により,販売による利益及び販売までに要する費用の負担等共同事業による権利及び義務の割合について,Hハウジングは25パーセントとされ,同社は開発の対象となっていた土地の持分20分の5を取得するとともに,それまでにK1が投下していた資金のうち合計約26億円について負担することになった。。 この開発は,高槻市が計画していた住宅地高度利用地区計画として進める予定であり,そのためには幅員9メートル以上の進入路を設置することが絶対的な条件となっていた。しかし,道路用地の地権者が用地買収に反対していたことから,その確保は難航していた。このよ 画として進める予定であり,そのためには幅員9メートル以上の進入路を設置することが絶対的な条件となっていた。しかし,道路用地の地権者が用地買収に反対していたことから,その確保は難航していた。このような進入路問題のため,開発許可を得るにも至らない状況のまま,高槻プロジェクトは進んでいなかった。もっとも,進入路用地の買収交渉をしていた高槻市からは,進入路確保が完全に不可能になったとの連絡も来ておらず,共同事業であることもあり,Hハウジングとしては成り行きを見守る程度のことしかできない状態であった。 高槻プロジェクトは,採算の面でも極めて困難な状況にあった。すなわち,Hハウジングが作成した含み損予想明細によると,同6年2月28日現在では,土地売却による売却損は約20億円(枚方市g及び大和高田市を合わせた全体では約43億円),同年11月末日現在では,約21億円(同様に全体では約46億円),同7年6月末現在では,約22億円(同様に全体では約49億円)となっている。また,同年1月11日及び同年8月23日作成の収支計画表では,いずれも,開発をすると約28億円の,開発をせず土地のみで売却すると約22億円の各損失が生じると試算されていた。 被告人A1は,同6年12月1日及び同7年1月下旬ころから2月上旬ころ,D1から,高槻プロジェクトについて,当初計画していた進入路は用地買収が困難であること,含み損が大きく,採算が取れないので事業化も困難であることについて報告を受け,この報告を非常に心配した様子で聞いていたが,特に指示は出さなかった。 3 財務状況(1) 概要前記のような事業状況を反映して,Hハウジングの財務状況は悪化していた。 すなわち,平成7年6月期の総資産合計金額は約68億4033万円,そのうち商品土地建物 状況(1) 概要前記のような事業状況を反映して,Hハウジングの財務状況は悪化していた。 すなわち,平成7年6月期の総資産合計金額は約68億4033万円,そのうち商品土地建物及び仕掛品が約67億5555万円であり,その後の決算期も同様な金額を示し,一方,短・長期借入金は,同年6月期は67億6700万円,それ以後も本件肩代わり融資により長期借入金が短期借入金に振り替わったものの金額的には同様の金額が続いているところ,前記のとおり,Hハウジングが開発しようとしていた土地は,いずれもバブル景気の土地高騰期に取得していた物件であるため,バブル崩壊後の土地の下落等から事業を動かして販売しても赤字,保有土地をそのまま売却しても赤字の状況に陥っている。 また,当期利益をみると,同4年6月期には約7038万円の赤字となり,以後同7年6月期まで毎期赤字を計上し,本件肩代わり融資により,ようやくK3に対する高い利息の支払がなくなった同8年6月期に約163万円の黒字となり,同9年6月期には約1037万円の黒字と続いたが,同10年6月期には約80万円の赤字となっている。 一方,損益計算書により売上げ状況をみると,同6年6月期は業務指導料2160万円,賃貸媒介手数料及び提携販売手数料合計64万5631円以外に売上げがなく,同7年6月期は業務指導料以外に売上げがなく,同8年6月期は業務指導料2224万8000円,売買媒介手数料195万円以外に売上げがなく,売上げによる資産増加の見込みもない状態であった。このうち業務指導料は,Hハウジングが同4年6月期の決算から赤字となり,利益も上がらないため,J4商店が同5年6月期から毎年行っていた支援である。さらに,この他にもG銀行からの借入金で必要経費を支払ったりする状態であったことが認め が同4年6月期の決算から赤字となり,利益も上がらないため,J4商店が同5年6月期から毎年行っていた支援である。さらに,この他にもG銀行からの借入金で必要経費を支払ったりする状態であったことが認められる。 この間,Hハウジングでは,上記のとおり同年6月期以降J4商店から業務指導料の名目で毎月180万円の資金援助を受け,これを利益として計上するなどしていたほか,同4年5月ころから,人件費節減のため人員を削減して社員をG銀行に戻すなどし,同7年には,その実質人員は,D1,D2及びD3の3名になった。そして,D1及びD2の給与は,両名をG銀行に転籍させることによってG銀行が支払っており,同年8月末D1が退職したことによりHハウジング代表取締役社長に就任したD4の給与は,同人がJ4商店の従業員を兼務していたことから,J4商店が支払っていた。なお,D3の給与はHハウジングが支払っていたが,これは,J4商店からの援助金で賄われていた。 (2) 借入状況Hハウジングでは,前記のとおり高槻プロジェクトに共同事業者として加わるに際し,同社が参加するまでにK1が投下していた資金のうち合計約26億円について負担することになった。そして,同プロジェクトでは当初からK1がK3から借入れをしていたことから,平成2年8月31日,HハウジングもK3から25億円を借り入れた。この借入れの金利は長期プライムレートプラス0.5パーセントの変動利率(同日現在年8.4パーセント),最終返済期日は同9年1月9日であり,弁済方法は最終弁済日に借入金全額を一括弁済するとされていた。なお,K1及びHハウジング以外の共同事業者も,同様にK3から借り入れた。 その後,高槻市dの開発が進行しなかったため,共同事業者であるK1は同3年10月から,K4は同年11月から れていた。なお,K1及びHハウジング以外の共同事業者も,同様にK3から借り入れた。 その後,高槻市dの開発が進行しなかったため,共同事業者であるK1は同3年10月から,K4は同年11月から,K5は同4年5月から利払いを棚上げしていた。 一方,Hハウジングは,同年春ころから,K3に対し,再三金利の引下げ要求をし,同5年3月23日には長期プライムレートプラス0.2パーセント(同日現在5.1パーセント)に,同年6月30日には長期プライムレート(同日現在5.4パーセント)にまで金利が引き下げられたが(なお,本件貸付けが行われた同7年8月2日現在の利率は2.7パーセントであった。),K3への利払いは遅滞なく続けていた。 Hハウジングの借入金は,K3から借り入れた25億円以外については,すべてG銀行からの借入れであり,その金額は同5年6月期は38億3700万円,同6年6月期は40億5200万円,同7年6月期は42億6700万円と増加していた。 (3) 本件貸付け当時の状況G銀行において,平成7年8月8日ころに同年6月期のHハウジングの財務状況を分析した結果について見ると,「CASTER総合表」BRAINS(安全性分析)のチェック1(経常収支比率分析),評価コメント欄の当期では「経常収支比率は90%をわり,安全性は最低の状態にある。」,「あらかん分析表」評価コメントの総合評価では「自己資本脆弱,金利負担過重で復元力を欠き,資金繰り極めて危険!このままでは経営破綻に陥る可能性がある。在庫安売りの有無について厳重監視が必要。」などとされていた。 4 本件貸付け(1) 本件貸付けの決定被告人A1は,平成7年7月5日,Hハウジングの同年6月期決算では約1855万円の当期欠損金が生じるとの報告を受け,同年7月初旬には,同 いた。 4 本件貸付け(1) 本件貸付けの決定被告人A1は,平成7年7月5日,Hハウジングの同年6月期決算では約1855万円の当期欠損金が生じるとの報告を受け,同年7月初旬には,同月3日作成の含み損予想明細等の資料により,同年6月末現在で,高槻市dの物件は約22億円の,全体では約49億円の含み損があること,借入金はK3とG銀行を合わせて約67億6700万円に上り,K3への利払いだけでも年間約1億1000万円になっていることなどの報告を受けた。 被告人A1は,この報告を聞き,Hハウジングの対応策として,K3への利払いを何とかしなくてはならないと考えた。D1は,他の共同事業者がいずれもK3への利払いを停止しており,これを続けているのがHハウジングだけであったことから,K3への利払いをやめることを被告人A1に提案したが,被告人A1は反対した。A3は,被告人A1に対し,Hハウジングをつぶす方法もあると提案したが,被告人A1はこれも採用しなかった。なお,このころ,いわゆる住専問題により,住専子会社であるK3の先行きに対する不安説が出ていた。 同年7月24日,G銀行社長室において,Hハウジング対応策について会議が行われた。この会議には,被告人A1,A3,C3関連事業部長,C4関連事業部次長及びC5関連事業部審査役が出席した。 この会議のためにC3が作成した「(株)Hハウジング対応策」と題する書面には,対応策として,G銀行からHハウジングに25億円を貸し出してK3からの借入金を返済させること,G銀行からHハウジングに対して既に貸付けしていた分と今回貸付けする25億円を合わせた合計67億6700万円の金利をストップすること,高槻以外の物件を早急に売却すること,必要経費については,Hハウジングの従業員であるD2,D て既に貸付けしていた分と今回貸付けする25億円を合わせた合計67億6700万円の金利をストップすること,高槻以外の物件を早急に売却すること,必要経費については,Hハウジングの従業員であるD2,D3について所属を変更することなどによって人件費を節減すること,収入については引き続きJ4商店から業務指導料の名目で年間2160万円を支払うこと,その他仲介手数料を確保することなどが記載されており,そのとおり決定された。 (2) 貸出稟議書の作成このようにして,平成7年7月24日,被告人A1は,Hハウジングに対する25億円の貸付けを決定し,これを受けてC3は,C5に対し,営業部と連絡を取って,貸出稟議書の作成を指示した。そこで,C5は,同月27日,営業部C6に対し,金額,貸出方法,利率,期間,資金使途,担保等を指示して貸出稟議書を作成させた。 この稟議書には,科目は「手貸(都度)」(手形貸付けで都度増額の意味),金額は25億円,利率は2パーセント,期限は平成9年1月,返済方法・財源欄は空白,資金使途は「K3肩代わり資金」などと記載されている。 また,今回担保明細欄には,「高槻市d2丁目,土地23944.34平方メートル,持分20分の5,共同プロジェクトに付権利書は預からず,印鑑,資格証明の差し替えしない,手形は一覧払い,設定額1番根1000→3500百万円,登記留保Ⅰ予定」などと記載されている。 これは,高槻市dの土地のうちHハウジングの持分20分の5を担保とするが,「登記留保」とするということである。登記留保とは,抵当権等の設定登記をしないが,権利書等必要書類を預かり,いつでも登記手続を行えるようにするものであるが,本件貸付けについては,共同プロジェクトであり,権利書が他社の下にあるため預からず,通常3か月ごとに の設定登記をしないが,権利書等必要書類を預かり,いつでも登記手続を行えるようにするものであるが,本件貸付けについては,共同プロジェクトであり,権利書が他社の下にあるため預からず,通常3か月ごとに差し替える印鑑証明書や資格証明書の差し替えはしないこととされた。また,当時,G銀行は,前記土地のHハウジング持分につき極度額を10億円として担保を設定し,登記留保していたところ,これを今回貸し付ける25億円と合わせて極度額を35億円とするが,Hハウジングがこの25億円の資金をK3への返済に充てることにより,前記土地のHハウジング持分に対して設定登記されていたK3の抵当権が抹消されることから,G銀行の根抵当権が「1番」すなわち最先順位となるというのである。 今回保証人氏名欄は空欄であった。 このような貸出稟議書に,添付資料として,資金目的等を記載した書面,貸出先取引状況表,担保物件の記載された書面が付され,また担保不動産総合表,借入残高推移表が添付されていた。 (3) 被告人A2の決裁等被告人A2は,D1からHハウジングに関する報告を聞いておらず,平成7年7月24日の社長室におけるHハウジング対応策についての会議にも出席していない。しかし,被告人A2は,C3からHハウジングの内容に関する報告を聞き,貸出稟議書を検討した上で,これを決裁した。 なお,本件貸付けについては取締役会の付議事項とされなかった。 (4) 本件貸付けの実行本件貸出稟議書の決裁後,根抵当権設定契約証書,念書(根抵当権設定登記留保依頼書),委任状,印鑑証明申請書,証明申請書(Hハウジングの商号,本店,代表者に関するもの。),手形期日ならびに利払いに関する念書,約束手形がそろってから,平成7年8月2日,本件貸付けが実行された。 任状,印鑑証明申請書,証明申請書(Hハウジングの商号,本店,代表者に関するもの。),手形期日ならびに利払いに関する念書,約束手形がそろってから,平成7年8月2日,本件貸付けが実行された。 この根抵当権設定契約証書によると,極度額は35億円,被担保債権は[1]銀行取引による一切の債権,[2]G銀行が第三者から取得する手形上,小切手上の債権,債務者はHハウジング,確定期日は定めないとされている。 (5) 本件貸付け後の状況Hハウジングは,平成7年8月2日,本件貸付けにより得た資金でK3に対する債務を弁済し,高槻市dの土地のHハウジング持分を目的とするK3の抵当権設定登記も同日付けで抹消された。 同年12月26日,変更稟議書によりHハウジングに対する貸付金すべての利率を2パーセントから0.6パーセントに引き下げる決裁がなされ,本件25億円の貸付けについては,同年9月1日からの計算で利率が引き下げられたが,その後のHハウジングからG銀行に対する返済としては,同8年2月29日,本件25億円の貸付けの利息として約250万円が入金されただけであった。 G銀行においては,同9年3月末を基準日とする自己査定においてHハウジングを実質破綻先(法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの,深刻な経営難の状態にあり,再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者をいう。)とし,同社に対する67億6700万円の債権のうち,同10年3月期決算に50億9700万円,同年上期に5500万円,同年下期に2億0150万円の合計53億5350万円を償却処理した。 5 任務違背(1) 被告人両名の任務Hハウジングへの貸付けに関する被告人両名の任務の内容として,公訴事実では,「法令・定款等の 0150万円の合計53億5350万円を償却処理した。 5 任務違背(1) 被告人両名の任務Hハウジングへの貸付けに関する被告人両名の任務の内容として,公訴事実では,「法令・定款等の規定を遵守するはもとより,20億円を超える貸付けを行う場合には取締役会の決議による承認を受けるとともに,貸付先の資産・経営状態やその信用の程度を精査して貸付けの当否を慎重に検討した上,確実かつ十分な担保を徴求するなど貸付金の安全確実な回収のための適切な措置を講じ,もって,金融機関としての業務の健全かつ適切な運営の確保に努め,銀行に損害を加えることのないよう誠実にその職務を遂行すべき任務」が主張されているところ,本件貸付けについて取締役会決議による承認が必要であるかはともかく,一般論としては,このような任務があることを被告人両名は争っておらず,前記被告人両名の地位に照らすと,このような任務を負っていることは明らかに認められる。 (2) 貸付手続そこで,前記取締役会の決議による承認について検討する。 前記第3の4(1)のとおり,本部職務権限規定によると,取締役会付議事項として,貸付け等の実行については,業績不芳の取引先(直近の事業年度の末日において債務超過の状態にある先をいうとされる。)に対する新たな貸付け等のうち1件当たり20億円超のものが定められているところ,本件貸付けは取締役会の決議による承認を受けていない。 この点について,弁護人らは,Hハウジングは,直近の事業年度の末日の決算上債務超過となっておらず,「業績不芳の取引先」に当たらないと主張するので,検討すると,本件貸付けに際して,G銀行内において,直近の事業年度の末日におけるHハウジングが債務超過になっていたか否かを判断するために,非常貸借対照表を作るなどして検 に当たらないと主張するので,検討すると,本件貸付けに際して,G銀行内において,直近の事業年度の末日におけるHハウジングが債務超過になっていたか否かを判断するために,非常貸借対照表を作るなどして検討した形跡はない。 そこで,前記3で指摘したHハウジングの同7年6月期の貸借対照表を見ると,負債と資本合計68億4033万4986円(内負債は67億7567万1914円)であり,これに対する資産68億4033万4986円のうち流動資産である商品土地建物及び仕掛品が67億5555万8437円と,資産のほとんどを占めていることが認められる。この状況は同8年6月期もほとんど変わっていない。この不動産の時価を検討すると,前記4で述べたとおり,D1が被告人A1に事業報告するに当たって作成した同7年7月3日付け含み損予想明細表によれば,高槻市dの物件は同2年8月31日に坪当たり137万円で取得し,簿価については34億4700万円とされているものの,同7年6月末現在では坪当たり70万円であり,時価は12億6800万円であって,支払猶予中の特別土地保有税をも考慮すると約22億7000万円の含み損があり,全体では簿価は67億5100万円とされているものの,同7年6月末現在では時価は20億4600万円であり,同様に約49億2400万円の含み損があることが認められる。さらに,本件貸付け当時,G銀行本店営業部において,主として関連事業部への貸付窓口業務を担当していたC6が実地調査者として作成した同7年7月28日付け担保不動産物件明細書によれば,高槻市dの物件は決算簿価でも25億1800万円,同年8月24日付け担保不動産総合表によれば,同年路線価では高槻市dの物件は9億8700万円,全体では17億7400万円にすぎなかったことが認められる。 以上によれば も25億1800万円,同年8月24日付け担保不動産総合表によれば,同年路線価では高槻市dの物件は9億8700万円,全体では17億7400万円にすぎなかったことが認められる。 以上によれば,Hハウジングが債務超過となっていたことは明らかであるといわなければならず,重要な取引を取締役会の付議事項とし,業務執行の適正を期するというのが前記本部職務権限規定の趣旨であると解されることからも,同社は同規定の「業績不芳の取引先」に該当するものといえるから,同社に対して25億円を貸し付けた本件貸付けについては,取締役会の付議事項であったといわなければならない。 なお,G銀行では,前記(第3の4(3))のとおり,従前から関連事業部が所管するグループ会社への貸付けについては取締役会決議を経ていないという実態があった。しかし,前記本部職務権限規定では,業績不芳の取引先への20億円超の貸付けが取締役会の付議事項であることは,各部(室)の権限の共通事項として定められていた上,グループ会社への貸付けについても,取締役会決議付議事項から除外されていない以上,従前から同規定に違反する貸付けが行われていたというにすぎず,取締役会の承認を受けないことが正当化されるものではない。 そうすると,本件貸付手続は,本部職務権限規定に違反するものであったことに疑問の余地はない。 (3) 本件貸付金の回収可能性及び担保の徴求ア回収可能性本件貸付け当時,Hハウジングでは,枚方市g及び大和高田市の事業は止まっていたこと,高槻プロジェクトも進入路の問題や採算の問題のため進んでいなかったこと,事業による利益はほとんど上がっておらず,主たる収入はJ4商店からの援助であったこと,HハウジングだけではK3に対する金利の支払や経費の負担もできない状 問題や採算の問題のため進んでいなかったこと,事業による利益はほとんど上がっておらず,主たる収入はJ4商店からの援助であったこと,HハウジングだけではK3に対する金利の支払や経費の負担もできない状態であり,財務状況が悪化していたことは前記のとおりである。これらの事情に加え,平成7年大蔵省検査では,Hハウジングについて「プロジェクトの頓挫により実質的に経営破綻」していると評されていたこと,結果的にも,高槻プロジェクトは進展せず,状況が好転することもないまま,同社に対する債権の大部分が償却されたという経緯などをも併せ考慮すると,本件貸付け当時,Hハウジングの業績は極めて不振で見るべき収益がなく,G銀行のHハウジングに対する貸付金42億円余りの回収がほとんど不可能となっていた上,自己資本のぜい弱な同社の資金繰りが借入金の金利負担過重のため極めてひっ迫し,実質的には同社が経営破綻の状態に陥っており,本件貸付金の回収は著しく困難であったと認められる。 イ J8との合併A1弁護人は,被告人A1はHハウジングと消費者金融会社であるJ8との合併で赤字を埋めようとも考えていたのであり,これによれば本件貸付金の回収可能性があったと主張し,被告人A1も,公判廷において,これに沿う供述をする。 確かに,前記第4の2(1)のとおり,被告人A1が,J8との合併を検討していたことは認められる。しかし,これは,I不動産,J6クレジット,J7クレジットなどとの吸収合併等を併せて検討していたうちの1案にすぎない。また,その後これについて具体的に検討された形跡は見られず,本件貸付けを決定した平成7年7月24日のHハウジング対応策の会議でも全く検討されていない。被告人A1の第49回公判供述によっても,この計画は「J8が大きくなるのを待っていずれ合併しよ 跡は見られず,本件貸付けを決定した平成7年7月24日のHハウジング対応策の会議でも全く検討されていない。被告人A1の第49回公判供述によっても,この計画は「J8が大きくなるのを待っていずれ合併しようと思っていた。」などというものにすぎず,具体性を欠くものである。そうすると,J8との合併については,本件貸付金の回収可能性を根拠付ける事情とはいえないから,A1弁護人の主張は理由がない。 ウ担保前記のとおり,本件貸付けの担保(登記留保による。)は,高槻市dの土地に対するHハウジング持分であったが,この担保価値は約6億9000万円しかなく,枚方市g及び大和高田市の土地を合わせても約12億4000万円の担保価値しかなかった。G銀行では,本件貸付け以前に,Hハウジングに対し既に42億6700万円の貸付けを行っており,これらに対する担保も高槻市d,枚方市g及び大和高田市の各土地だけであったのであるから,更に貸付けする25億円のための確実かつ十分な担保が徴求されなかったことは明らかである。 また,前記の担保以外に債権保全の措置は執られていないから,被告人両名は,確実かつ十分な担保の徴求も,その他安全確実な回収をするための適切な措置も講じなかったと認められる。 (4) 母体行責任,銀行の信用維持等ア弁護人らの主張弁護人らは,「自らが設立し,あるいは,自らの活動を補完する目的で実質支配した企業に,経営不振などの問題が生じたとき,これを支配してきた母体行が他の債権者に負担をかけずにその企業の問題を処理する」とする考え方,あるいは,「銀行が資本を出資し,あるいは経営者を派遣して,融資先の経営に当たっている場合,その銀行(母体行)は融資先に損害が発生した場合,その損失をすべて負担すべきとする考え方」を,母体行 え方,あるいは,「銀行が資本を出資し,あるいは経営者を派遣して,融資先の経営に当たっている場合,その銀行(母体行)は融資先に損害が発生した場合,その損失をすべて負担すべきとする考え方」を,母体行責任あるいは母体行主義とし,本件貸付けはこのような考え方に基づいて行われたものであると主張する。そして,本件貸付け当時,母体行責任は当然のこととされていた,G銀行はHハウジングの母体行であると一般的に認識されていた,G銀行が母体行責任を果たさない場合,G銀行の信用が損なわれ,取り付け騒ぎが起こり,あるいは,銀行間での資金調達が困難になるおそれがあった,などというのである。 また,A1弁護人は,前記母体行責任を前提として,経営者には広範な裁量があり,本件貸付けには「経営判断の法則」が適用されるから,任務違背には当たらないと主張する。 イ母体行責任,銀行の信用維持について銀行法は,その目的として,銀行の業務の公共性にかんがみ,信用を維持し,預金者等の保護を確保するとともに金融の円滑を図るため,銀行業務の健全かつ適切な運営を期し,もって国民経済の健全な発展に資することを定めている(同法1条)。そして,具体的には,銀行業の免許申請の際には申請者が銀行の業務を健全かつ効率的に遂行するに足りる財産的基礎を有し,かつ,申請者の当該業務に係る収支の見込みが良好であることなどの審査基準を設け(同法4条2項),自己資本の額について規定を置き(同法5条),その固有業務が他の業務の影響を受けることを抑制するため銀行業務の範囲を明確化し(同法10条),危険分散を図るため同一人に対する信用の供与を制限する(同法13条)などの諸規定が設けられている。このような銀行法の諸規定からは,銀行の信用はその財務内容を堅固なものとすることにより維持されるべ ,危険分散を図るため同一人に対する信用の供与を制限する(同法13条)などの諸規定が設けられている。このような銀行法の諸規定からは,銀行の信用はその財務内容を堅固なものとすることにより維持されるべきであり,またこれにより預金者等の保護や金融の円滑を図ろうとしているものと解される。そして,このような見地から,銀行の貸付けに当たっては,その貸出金の確実な回収という安全性が最も重要であるといえる。 ところで,従前,金融界においては,母体行が他の債権者よりも重い負担をするという母体行責任の考え方が存在したことが認められる。しかし,これによると,母体行は,その関係する会社の債務について,法律上負担している金額以上の責任を負うことになるのであるから,前記のような銀行の信用維持の要請に反する要素がある上,これを果たすには,それだけの財務状況の裏付けを欠かすことができないのであり,その妥当範囲には自ずから限界があるといわなければならない。また,本件当時,母体行責任の考え方によらずに銀行の系列ノンバンクの債務処理が行われた事例も現れており,このような考え方が確固たるものであったとは認められない。 そして,前記のとおり母体行責任の妥当範囲には限界がある以上,母体行責任を理由に認められる経営者の裁量の範囲にも限界があるというべきである。 ウ本件貸付けについて前記(3)のとおり,Hハウジングからの回収は著しく困難で,確実かつ十分な担保も徴求されていないのであるから,本件貸付けは,G銀行の財務状況を悪化させるものであることは明らかである。一方,前記第3の5(2)のとおり,本件貸付けと近接した平成7年8月18日を基準日とする大蔵省検査では,多額の欠損見込額の発生により自己資本は大きく毀損されており,実態的には債務超過となっている る。一方,前記第3の5(2)のとおり,本件貸付けと近接した平成7年8月18日を基準日とする大蔵省検査では,多額の欠損見込額の発生により自己資本は大きく毀損されており,実態的には債務超過となっているとの指摘がなされるなど,本件貸付け当時のG銀行の財務状況は甚だしく悪化していた。このような財務状況を踏まえると,G銀行は,更に不良債権を増加させ,財務状況を悪化させることにつながる本件貸付けが許される状況になかったというべきである。 また,前記のとおり,HハウジングがK3に弁済した債務は,期限が到来していたものではなく,G銀行がK3から肩代わりを要求されたものでもなく,高槻プロジェクトの他の共同事業者は利息の支払を停止していたのであって,本件貸付けをしなければG銀行の信用が損なわれるような状況であったとは認め難い。 この点,弁護人らは,本件貸付けを行わなければ,G銀行の信用が失われ,取り付け騒ぎが起こり,あるいは,銀行間での資金調達が困難になるおそれがあったなどと主張する。しかし,本件貸付けを行わないことによりそのような事態の生じるおそれがあったとすれば,それは母体行責任を果たさないこと自体から生じる結果というよりも,Hハウジングを支援しないG銀行の財務状況が現実に悪化していると判断される結果というべきである。そして,前記のとおりG銀行の財務状況は既に相当程度悪化しており,本件貸付けがその財務内容を更に悪化させるものであることに照らすと,本件貸付けは一時的にG銀行の財務状況の悪化を隠蔽するだけであって,結局はG銀行の信用を損なうものとみざるを得ない。 また,弁護人らは,母体行責任を前提に,最終的にはG銀行がHハウジングのK3に対する債務を弁済することになる以上,K3に対する金利を支払い続けるよりも,元本を一括して支 とみざるを得ない。 また,弁護人らは,母体行責任を前提に,最終的にはG銀行がHハウジングのK3に対する債務を弁済することになる以上,K3に対する金利を支払い続けるよりも,元本を一括して支払った方が結局はその金利を節減することになると主張する。しかし,金利の節減となるのはHハウジングにとってであって,G銀行にとってではなく,G銀行としては,HハウジングのK3に対する債務を保証していたわけでもなく,形式的な母体行責任を理由にしてHハウジングの債務全額を肩代わりしなければならないという考え方自体に疑問があることは前記のとおりであるから,弁護人らの主張は採用できない。 さらに,A1弁護人は,K3を排除する必要があったと主張する。すなわち,K3は住専子会社であり,同7年春にはいわゆる住専問題が社会問題化しており,K3も遠からず整理されることが予想されていたところ,K3の債権回収が加速してHハウジングが一括返済を求められたり,そもそも債権がどこに行くか分からないという不安があり,K3を排除する必要があったというのである。しかし,K3の問題が,Hハウジング,さらにはG銀行にどのような影響を及ぼすかについては不明確であり(被告人A1は,第49回公判において,K3からの火の粉を恐れたと供述するものの,その具体的な不安の内容については,実際どのような影響が出てくるかは予想できず,答えられない,ちょっとでも危ないところとは縁を切って自己防衛するといった曖昧な供述をしている。),本件貸付けを正当化するような事情はうかがわれない。 以上から,母体行責任を理由に本件貸付けを正当化することはできず,また本件貸付けが「経営判断の法則」により被告人らの裁量の範囲内にあったということもできない。 (5) 結論以上から,被告人両名 ,母体行責任を理由に本件貸付けを正当化することはできず,また本件貸付けが「経営判断の法則」により被告人らの裁量の範囲内にあったということもできない。 (5) 結論以上から,被告人両名の行った本件貸付けが任務違背に当たることは明らかである。 6 損害商法486条1項の「会社ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ」とは,経済的見地において会社の財産状態を評価し,被告人の行為によって会社の財産の価値を減少したとき又は増加すべかりし価値が増加しなかったときをいうと解される(本条は平成9年法律第107号により改正されているが,上記文言の趣旨が変更されたものとは解されない。)。 ところで,本件貸付けにより高槻市dの土地に設定された根抵当権の被担保債権は,本件貸付けによるものだけではなく,それ以前の貸付けによるものを含むことから,本件貸付けの前後でG銀行のHハウジングに対する債権額の合計及びその担保となる土地の価値の合計を比較すると,本件貸付け前には,債権額が合計42億6700万円,土地の担保価値が合計約5億5000万円(平成7年8月24日付け担保不動産総合表による大和高田市及び枚方市gの各土地の担保価値の合計である。高槻市dの土地にはK3の先順位抵当権が設定登記されていたことから,G銀行との関係では実質的に担保価値がなかったと認められる。)であり,差し引き約37億1700万円の担保不足であったのに対し,本件貸付け後は,債権額が合計67億6700万円,土地の担保価値が合計約12億4000万円であり,差引き約55億2700万円の担保不足となっており,担保不足額が約18億1000万円増加している。 なお,前記のとおり,G銀行はK3に対して代位弁済したものではなく,Hハウジングに対する貸付けとして同社の口座に返済資金を振り込んだもの っており,担保不足額が約18億1000万円増加している。 なお,前記のとおり,G銀行はK3に対して代位弁済したものではなく,Hハウジングに対する貸付けとして同社の口座に返済資金を振り込んだものであり,これをHハウジングがK3に振り込み,K3の抵当権設定登記が抹消され,その結果,G銀行が高槻市dの土地に設定した担保権が実質的な価値を持つに至ったものであり,G銀行による本件貸付けと担保価値の取得とが必然的に結びついているものではない。しかし,本件貸付けが肩代わり融資として行われていることやG銀行とHハウジングとの関係に照らすと,本件貸付けと担保価値の取得との間には密接な対応関係があるものといえる。 また,Hハウジング所有地又は共有持分に設定したG銀行の担保はいずれも登記留保の方式によっており,設定登記されていないところ,担保権は契約のみで成立すること,両社の関係などに照らし,担保権設定契約と同時に登記手続をしなくても,将来登記手続を行うことに支障が生じたり,担保権の登記をしなければ対抗できない第三者が現れることは具体的に予見されなかったこと(租税債権を含む何らかの債権に基づき当該土地に対する差押えなどがなされる可能性がなかったとはいえないものの,本件貸付け当時,それが具体的に予見されたと認めるに足りる証拠はない。)などを考慮すると,設定登記がなされていないから実質的に無担保であったとまでは断定し難い。 これらを踏まえ,経済的見地においてG銀行の財産状態を評価すると,本件貸付けにより同銀行の財産の価値が約18億1000万円相当減少したといえ,これが損害と認められる。公訴事実においては,判示第1の所為による損害額は25億円とされているが,以上のとおりであるから,約18億1000万円を超える部分については,これを認めるに足りる証 といえ,これが損害と認められる。公訴事実においては,判示第1の所為による損害額は25億円とされているが,以上のとおりであるから,約18億1000万円を超える部分については,これを認めるに足りる証拠がないことになる。 7 任務違背の認識等(1) 被告人A1の認識被告人A1は,G銀行の代表取締役社長として同銀行の業務を統轄する地位にあり,またD1からHハウジングの状況について報告を受け,必要な指示をするなどして実質的に同社を経営していたのであるから,本件貸付け当時,同社が実質的に経営破綻の状態に陥っており,そのような状況下において,同社に対し,追加貸付けを実行すれば,その債権の回収が著しく困難になることを十分に認識しており,そのような認識をしながら,あえて,その貸付けの実行を差し控えることなく,また,その債権の保全・回収のため,確実かつ十分な担保の徴求も,その他安全確実な回収をするための適切な措置も講ずることなく,本件貸付けを行ったものと認められる。 ところで,A1弁護人は,被告人A1がHハウジングから本件25億円の回収可能性があると考えていた旨主張し,被告人A1も,公判廷において,これに沿う供述をする。しかしながら,回収可能性の認識についての被告人A1の公判供述は,Hハウジング自体の事業による回収にせよ,HハウジングをJ8と合併させることによる回収にせよ,その時期・方法・金額などについて具体性・確実性を欠くものであって,同供述から,被告人A1が回収への期待・希望を有していたことはうかがわれるとしても,回収可能であると認識していたとまでは認められない。また,関係各証拠を総合して検討しても,被告人A1が回収可能であるとの認識を有していたことはうかがわれず,A1弁護人の主張は採用できない。 (2) 被告人A2の認識 していたとまでは認められない。また,関係各証拠を総合して検討しても,被告人A1が回収可能であるとの認識を有していたことはうかがわれず,A1弁護人の主張は採用できない。 (2) 被告人A2の認識被告人A2は,G銀行の代表取締役副社長として,同銀行の業務を掌理する地位にあり,またC3から報告を聞いて本件貸出稟議書を検討した上,決裁しているのであるから,Hハウジングが実質的に経営破綻の状態に陥っており,そのような状況下において,同社に対し,確実かつ十分な担保を徴求せずに追加貸付けを実行すれば,その債権の回収が著しく困難になることを十分に認識しており,そのような認識をしながら,あえて,その貸付けの実行を差し控えることなく,また,その債権の保全・回収のため,確実かつ十分な担保の徴求も,その他安全確実な回収をするための適切な措置も講ずることなく,本件貸付けを行ったものと認められる。 ところで,A2弁護人は,被告人A2には,Hハウジングが実質的に破綻していたとの認識がなかったので,任務違背の認識はなかったと主張し,被告人A2も,公判廷において,これに沿う供述をする。しかし,被告人A2は日ごろから貸出稟議書をよく検討していたこと(公判廷においても多くの関係者がその旨供述している。),被告人A2自身も回収困難であるとの認識を有していたことを認める供述をしていること,本件貸出稟議書についてC3から報告を受けていることなどに照らすと,被告人A2がHハウジングの財務状況や本件貸付金の回収可能性について前記5(3)の事実と異なる認識を有していたことはうかがわれず,A2弁護人の主張は採用できない。 (3) 母体行責任など弁護人らは,被告人両名は前記母体行責任を理由に本件貸付けを行ったのであるから,任務違背の認識がないとも主張するよ うかがわれず,A2弁護人の主張は採用できない。 (3) 母体行責任など弁護人らは,被告人両名は前記母体行責任を理由に本件貸付けを行ったのであるから,任務違背の認識がないとも主張するようである。 しかしながら,母体行責任が本件貸付けを正当化するものではないことは前記のとおりであるから,本件貸付けが母体行責任に基づくものであるとの認識を被告人両名が有していたとしても,それは任務違背の故意を阻却するものとはいえず,違法性の意識の問題となり得るにすぎない。また,違法性の意識がないことは故意を阻却せず,本件では被告人両名に違法性の意識の可能性すらなかったともいえない。 いずれにしても被告人両名に任務違背の認識があったことは否定されず,弁護人らの主張は理由がない。 8 図利加害目的(1) Hハウジングの利益を図る目的本件貸付けは,K3のHハウジングに対する貸付けをG銀行が肩代わりするためのものであるが,Hハウジングの当時の経営状況に照らすと,他の金融機関からこのような貸付けを受けることは困難であったと認められる。また,本件貸付けは,Hハウジングの金利支払を停止させ,その経費を削減する目的でなされたものであり,実際に,本件貸付け後間もなく,G銀行に対する金利は低減され,それもほとんど支払われておらず,実質的には元利金の支払を猶予した状態となっている。 そうすると,本件貸付けがHハウジングの利益を図る目的で行われたものであることは明らかである。 (2) 被告人両名の利益を図る目的ア被告人A1について本件貸付けにより,HハウジングはK3に対する債務を弁済し,G銀行との関係では実質的に元利金の支払を猶予された状態となっていたのであり,本件貸付けは,Hハウジングの事業の失敗やG銀行の て本件貸付けにより,HハウジングはK3に対する債務を弁済し,G銀行との関係では実質的に元利金の支払を猶予された状態となっていたのであり,本件貸付けは,Hハウジングの事業の失敗やG銀行の同社へのそれまでの貸付けの失敗が表面化することを一時的に防ぎ,問題を先送りし,貸付けの失敗につき問題となる被告人A1の経営責任をも免れさせ,あるいはG銀行及びHハウジングを経営するA家の当主である被告人A1の体面を保つという効果を有しており,このような効果は被告人A1にとっても自明のことであったといえる。そして,後記のとおり本件貸付けがG銀行の利益を図ったものと考えられないことをも併せ考慮すると,被告人A1には自己の利益を図る目的があったものと認められる。 ところで,A1弁護人は,G銀行及びHハウジングの株式はいずれも被告人A1を中心とするG銀行グループによって所有されているのであるから,その責任を追及されることは考えられないと主張する。しかし,経営責任は,必ずしも株主だけから問われるものではなく,関係する取引先等から問われることもあり得るのであって,Hハウジングの経営の失敗が明るみに出れば,内外から被告人A1に対する相応の経営責任を問われる可能性を否定できず,A1弁護人の前記主張は採用できない。 イ被告人A2について前記のとおり,被告人A2は,C3からHハウジングの内容に関する報告を聞き,貸出稟議書を検討した上で,これを決裁している。 ところで,被告人A2は,公判廷において,関連事業部の所管する貸付けについての稟議は,一般の稟議と異なり,既に社長が決定したことを知らせるもので,自分の任務は形式的なものであるとする趣旨の供述をしている。そして,被告人A1がA家の当主であり,G銀行の社長であって,グループ会社 議は,一般の稟議と異なり,既に社長が決定したことを知らせるもので,自分の任務は形式的なものであるとする趣旨の供述をしている。そして,被告人A1がA家の当主であり,G銀行の社長であって,グループ会社を実質的に経営する立場にあったことや,被告人A2が先代A1や被告人A1からG銀行を出て別のグループ会社に移るように言われてはこれを断ってきた経緯があることなどをも考慮すると,被告人A2が前記のような無責任な態度で決裁を行っていた動機は,被告人A1との関係で,自己の保身を図ることであったものと認められる。 そうすると,被告人A2には,自己の利益を図る目的があったものと認められる。 (3) G銀行に損害を加える目的本件貸付けは,前記のとおりHハウジングに利益を与えるものである反面,G銀行にとっては,回収が著しく困難であり,それにもかかわらず確実かつ十分な担保を徴求しないでなされた貸付けであり,金利も通常より低く設定されていたのであるから,損害を与えるものであったことは明らかである。そして,被告人両名は,このような認識を有していたものと認められる上,Hハウジングの利益を図る目的があったものと認められ,また後記のとおりG銀行の利益を図ったものとは考えられないのであるから,被告人両名にはG銀行に損害を加える目的もあったものと認められる。 ところで,A1弁護人は,G銀行と被告人A1の利害は一致しており,被告人A1において,G銀行に害を加える目的などは考えられないと主張する。しかし,前記のとおり,本件貸付けがHハウジングの事業の失敗や同社への貸付けの失敗が表面化することを一時的に防ぎ,問題を先送りにし,貸付けの失敗につき問題となる被告人A1の経営責任をも免れさせ,あるいはG銀行及びHハウジングを経営するA家の当主である被告人A1 への貸付けの失敗が表面化することを一時的に防ぎ,問題を先送りにし,貸付けの失敗につき問題となる被告人A1の経営責任をも免れさせ,あるいはG銀行及びHハウジングを経営するA家の当主である被告人A1の体面を保つという効果を有していたことなどに照らすと,G銀行と被告人A1との間で必ずしも利害が一致するとは限らず,弁護人らの主張は採用できない。 (4) G銀行の利益を図る目的弁護人らは,前記母体行責任の考え方を前提として,本件貸付けの主たる目的は,G銀行の信用を維持し,取り付け騒ぎや銀行間の資金調達難を避けるなどG銀行の利益を図ることであったと主張し,被告人両名もこれに沿う供述をする。 しかし,前記のとおり本件貸付けがG銀行に損害を与えるものであることは明らかであること,弁護人らの主張する取り付け騒ぎや銀行間の資金調達難については,それが起こる具体的な危険性があったことをうかがわせる証拠はなく,被告人両名もそのような危機感を抱いていなかったものとみられること(被告人A1は,第30回公判において,Hハウジングへの融資の場合,時間的な余裕があったと供述しており,被告人A2も,第42回公判において,平成7年は金融不安もまだ厳しくなかったと供述している。),被告人両名を含めてG銀行内部において銀行の信用維持について具体的に検討がなされた形跡がないことなどに照らすと,被告人両名には前記のような趣旨でG銀行の利益を図る目的はなかったものと認められる。 (5) 結論以上から,被告人両名には,本件貸付けを行うに当たり,Hハウジング及び被告人両名の利益を図り,G銀行に損害を加える目的があったものと認められる。 9 共謀本件貸付けは,平成7年7月24日,被告人A1らの出席した会議で決定され,その後,被告人A2が本件貸出稟議 被告人両名の利益を図り,G銀行に損害を加える目的があったものと認められる。 9 共謀本件貸付けは,平成7年7月24日,被告人A1らの出席した会議で決定され,その後,被告人A2が本件貸出稟議書を決裁したものであり,このような経緯を通じて被告人A1らと被告人A2との間に順次共謀が成立したことは明らかである。 また,前記の経緯に照らし,被告人両名とA3及びD1らとの間にも共謀関係が認められる。 10 結論以上から,判示第1のとおり認められる。 第5 I不動産について 1 会社概要I不動産は,昭和38年,先代A1により宅地建物取引業等を目的として設立されたG銀行のグループ会社であり,同50年以降は,被告人A1が実質的に経営していたものである。その代表取締役社長はG銀行の出身者が務め,監査役のほとんどはJ4商店の出身者が務め,従業員にはG銀行やそのグループ会社からの出向者もおり,G銀行の一支店のような存在であった。 I不動産では,同63年ころまでの間に,大阪府泉南市h,兵庫県西宮市i町及び奈良県北葛城郡j町の宅地造成及びその販売事業などを行い,また,ゴルフ場開発許可を得て,同52年J9ゴルフ場を完成するなどしていた。 平成元年以降は,後記kの宅地開発及びその販売事業だけを行っており,その他の事業は行っていなかった。 2 事業状況(1) kの開発kの開発は,先代A1が,昭和43年ころから買収を開始していた兵庫県宝塚市(以下「宝塚市」という。)lの土地について,同51年ころから,m開発計画という名称で宅地開発事業を開始したものである。これは170万平方メートルを超える土地(その後188万平方メートル余りに拡大された。)を開発するという大規模なものであったため,I不動産単独で行うのは無理があるとし 地開発事業を開始したものである。これは170万平方メートルを超える土地(その後188万平方メートル余りに拡大された。)を開発するという大規模なものであったため,I不動産単独で行うのは無理があるとして,同54年L1株式会社を共同事業会社に加えたが,同59年同社が撤退し,次に共同事業会社となったL2株式会社も撤退する意向を示していたため,同年12月26日,L3不動産株式会社と共同事業を行う基本協定を締結し,土地について50パーセントずつの共有持分として所有権移転登記を完了した(なお,この時,L2もまだ共同事業会社として参加していたが,開発許可を得る関係で,登記上はL2の持分とすることなく,I不動産の持分50パーセントの中においてL2が全体の25パーセントの持分を保有することとされた。)。これにより,L3不動産が50パーセント,I不動産とL2が各25パーセントの持分を有し,その割合で総事業費を負担することとなった。前記基本協定では,その14条で「I及びL3は,それぞれの保有土地につき担保物件として,第三者に提供しないことは勿論名目の如何を問わず,本件事業からの脱退,又は肩代わりなど本協定の地位を第三者に譲渡してはならない。万一,前項の禁止事項及び本協定書の取決めを不履行した場合,その損害賠償の代物弁済としてI又はL3は他方に対し,その持分所有権を譲渡する。又,前項の代物弁済以外にI及びL3は相手方が蒙った損害金の一切を弁済するものとする。」と定められていた。 平成元年秋ころ,L2が完全に事業撤退することになったため,I不動産がL2の25パーセントの持分を取得した。しかし,L3不動産がその25パーセントの半分を欲しいと申し出たため,I不動産は全体の5パーセントをL3不動産に譲ることとなった。このとき,L3不動産は,株式会社L4にその5パ ントの持分を取得した。しかし,L3不動産がその25パーセントの半分を欲しいと申し出たため,I不動産は全体の5パーセントをL3不動産に譲ることとなった。このとき,L3不動産は,株式会社L4にその5パーセントを譲渡してほしいとの意向であったため,I不動産は,これを受け入れ,同年11月,I不動産の持分50パーセントの中においてL4が5パーセントの持分を保有し,総事業費の5パーセントをL4が負担することとなった。なお,L2同様,L4についても,開発許可の関係で持分登記をしない扱いとすることになった。これにより,kの開発は,L3不動産が50パーセント,I不動産が45パーセント,L4が5パーセントの持分を有し,かつ,その比率で総事業費を分担することとなった。 I不動産は,昭和61年にkの造成等開発工事に着工した。当時は地価が上昇しており,多額の先行投資をしても十分に採算が取れると考えられていた。そこで,I不動産は,G銀行をはじめ,株式会社L5銀行,株式会社L6銀行,株式会社L7銀行,株式会社L8銀行等大手銀行からも多額の先行投資を受けて開発を行った。 kの造成は,平成5年11月19日付けの計画では,同10年までに第1工区,第2-1,2-2,2-3工区,第3-1,3-2工区,第4-1,4-2工区の合計1137区画が完成する予定であったが,実際には造成予定は大幅に遅れ,同5年4月に第1工区410区画が完成して販売を開始し,同8年3月,第2-1工区138区画が,同年9月第3-3工区商業用地が,同10年10月には第2-2,2-3工区61区画がそれぞれ完成した。 kは,高級住宅地としての開発を予定していたため,第1工区においては,費用を投入して,緑地スペースを広く取り,電線を地下に埋没するなどしていたが,その後の業績悪化に伴い,造成費 れ完成した。 kは,高級住宅地としての開発を予定していたため,第1工区においては,費用を投入して,緑地スペースを広く取り,電線を地下に埋没するなどしていたが,その後の業績悪化に伴い,造成費用を抑えるため,第2工区以降はこのような高級仕様の工事はしていない。また,同9年3月には,計画を変更し,全体の戸数を2750戸から3246戸に増加させている。 (2) 販売状況kの開発工事に着工したころ,坪単価160万円程度での販売が予定されていた。しかし,その後地価が下落し,1坪当たりの販売単価は平成5年9月期は約107万円,同6年9月期は約104万円,同7年9月期は約108万円,同8年9月期には約84万円,同9年9月期には約104万円,同10年9月期は約88万円であった(なお,kの近隣地の公示価格を見ると,nが同5年は約94万円,同6年は約89万円,同7年は約80万円,同8年は約76万円,同9年は約74万円,oが,同5年は約105万円,同6年は約92万円,同7年は約85万円,同8年は約80万円,同9年は約74万円と,いずれも年々下落し続けている。)。 一方,1坪当たりの販売原価は,同5年9月期は約90万円,同6年9月期は約102万円,同7年9月期は約104万円と販売単価を下回っていたが,その後販売単価を上回り,同8年9月期は約104万円,同9年9月期は約107万円,同10年9月期は約109万円と,原価割れとなった。そのため,kの宅地は,販売すればするほど損失が増加する状況になった。 また,バブル経済の崩壊や,同7年1月に起こった阪神大震災の影響による宅地等の買い控えなどにより,その後は更に販売不振となった。販売金額は,同5年度は約4億円,同6年度は約34億円(同5年11月21日計画試算では約149億円),同7年度 こった阪神大震災の影響による宅地等の買い控えなどにより,その後は更に販売不振となった。販売金額は,同5年度は約4億円,同6年度は約34億円(同5年11月21日計画試算では約149億円),同7年度は約12億円(同試算では約150億円),同8年度は約53億円(兵庫県及び宝塚市に対する土地及び学校施設の売上金約31億円を含む,同試算では約150億円),同9年度は約15億円(同試算では約153億円),同10年度は約28億円(同試算では約99億円),同11年度5月までは約16億円(同試算では約153億円)であり,計画を大きく下回った。 このような販売不振を受けて,G銀行では,同7年12月15日付けで関連事業部長から各支店長に対し「『k』の販売協力のお願い」と題する書面を出すなどして販売協力を依頼した。この際,G銀行においては,kの物件を購入する法人に対し,購入金額とその運転資金等を加えた優遇貸付けを行うなどしていた。 (3) 収支見込みI不動産作成の平成5年3月末のkの収支予想では,販売価格を同年9月時点で坪単価110万円としてその後毎年10万円ずつ伸びる見込みで計算し,最終的には利益が上がるとされていたが,地価の低迷が長引きそうだとして,同6年3月末には,販売価格を坪単価110万円から年4万円程度しか上昇しない計算で,繰越し損益が約50億円以上の赤字になると収支予想を変更した。 同7年5月25日には,同年1月の震災の影響による販売不振を受けて収支試算をケース別に検討し,現状の販売方法で同18年9月までに完売すると約416億円の,株式売却等の資産処分をした上で,現状の販売方法で同18年9月までに完売すると約336億円のそれぞれ赤字となると試算し,同様に同8年7月9日には,販売完了を同23年9月とし,土地値上率を同11年 の,株式売却等の資産処分をした上で,現状の販売方法で同18年9月までに完売すると約336億円のそれぞれ赤字となると試算し,同様に同8年7月9日には,販売完了を同23年9月とし,土地値上率を同11年10月以降2.5パーセントとすると約483億円の,同様に1.0パーセントにすると約571億円の赤字となり,同9年10月1日で開発事業を打ち切り,残存している宅地等を売却すると約311億円の赤字となると試算している。 3 財務状況I不動産は,平成元年以降,経常利益については赤字が続いている。kの販売を開始した同5年以降を見ると,同5年9月期は約7億8400万円,同6年9月期は約14億1400万円,同7年9月期は約9億6200万円,同8年9月期は約9億8300万円,同9年9月期は約6億4900万円,同10年9月期は約10億7600万円の赤字となっている。 当期利益も同元年以降,同7年を除いていずれも前記経常利益と同程度の赤字となっている。同年9月期は,約27億8000万円の黒字となっているが,これは,I不動産の保有株式を売却したことによる特別利益を約37億円計上したためである。なお,同10年10月から同11年8月3日までの期間については,約15億円の経常利益及び当期利益を計上しているが,これは後記マンションの売却益を計上したためである。 I不動産の借入金は,同5年9月期は約701億円,同6年9月期は約754億円,同7年9月期は約761億円,同8年9月期は約762億円,同9年9月期は約778億円,同10年9月期は約871億円,同11年8月3日現在では約849億円である。 同7年から同8年にかけては保有株式の売却益を計上したことにより借入金は余り増加しておらず,同11年には後記マンションの売却益を計上したことにより借入金は減少してい 3日現在では約849億円である。 同7年から同8年にかけては保有株式の売却益を計上したことにより借入金は余り増加しておらず,同11年には後記マンションの売却益を計上したことにより借入金は減少しているが,それ以外では借入金は増加している。これら借入金は,G銀行及び他の金融機関からなされたものであるが,同7年12月にL8銀行から15億円を借り入れたのを最後に,他の金融機関からは新たな借入れをしておらず,同8年以降の増加分はすべてG銀行及びグループ会社からの借入れである。 本件貸付け当時のI不動産の資本金額は4000万円にすぎず,前記の財務状況のため金利負担が過重で資金繰りがひっ迫しており,G銀行からの貸付けがなければ資金繰りができない状態であった。 4 G銀行のI不動産に対する貸付け(1) 貸付金額の推移及び担保I不動産のG銀行からの借入金は,平成5年3月期は約66億円,同6年3月期は約106億円,同7年3月期は約136億円,同8年3月期は約129億円,同9年3月期は約165億円,同10年3月期は約213億円,同年9月期は約217億円である。 G銀行のI不動産に対する貸付金は,このように毎年増加していたため,銀行法13条で定められた同一人に対する信用供与の限度額(以下「銀行法13条の信用限度枠」又は単に「信用限度枠」ということがある。)に接近していた。この信用限度枠までの金額は,同5年3月は約97億円,同6年3月は約66億円,同7年3月は約44億円となっており,同8年3月はI不動産の保有株式の売却により約45億円をG銀行に返済したため約75億円まで増加したが,その後再び減少し,同9年3月は約46億円,同10年3月には約17億円であった。 I不動産に対する貸付けの担保としては,kの土地に登記留保の方法で根抵 に返済したため約75億円まで増加したが,その後再び減少し,同9年3月は約46億円,同10年3月には約17億円であった。 I不動産に対する貸付けの担保としては,kの土地に登記留保の方法で根抵当権が設定されていた。しかし,kの宅地(商品土地)については他の金融機関が先順位の担保権を設定しており,G銀行は最も後順位であったため,同7年3月31日現在,G銀行にとって担保価値がなかった。一方,kの開発地を除く土地(商品外)についてはG銀行が最先順位の根抵当権を設定していたが,同土地の担保価値は約10億9600万円にすぎず,同年5月当時のG銀行のI不動産に対する貸付金額約157億0620万円に比べて著しく不足しており,本件貸付けに関する貸出稟議書(平成9年4月3日決裁のものを除く。)の各保全状況欄にも担保不足であることを示す記載がなされていた。 (2) G銀行の自己査定等G銀行において平成9年以降行われていた資産の自己査定(前記第3の5(3))で,会計監査人らは,I不動産は少なくとも破綻懸念先(現状,経営破綻の状況にはないが,経営難の状態にあり,経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく,今後,経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者をいう。)であり,同社に対する債権をⅢ分類又はⅣ分類に当たると判断していた。 しかし,G銀行では,Ⅲ分類及びⅣ分類をできるだけ低く抑えるようにという被告人両名の指示に基づき,I不動産を一貫して要注意先(金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者,元本返済若しくは利息支払が事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか,業況が低調ないし不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する先をいう。)とし,これに対する債権をⅡ分類としていた。 ているなど履行状況に問題がある債務者のほか,業況が低調ないし不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する先をいう。)とし,これに対する債権をⅡ分類としていた。 同10年10月にL7銀行が破綻した際には,L7銀行のI不動産に対する債権がⅢ分類とされ,整理回収機構に移管される可能性が高かったところ,同年12月上旬,被告人A2は,被告人A1の意向も受け,被告人A2の娘婿であるB4代議士に相談して,L7銀行の債権の移管を決める部署に,I不動産に対する債権をL7銀行に残すように働きかけてもらうなどした。 同11年1月のG銀行に対する金融監督庁の検査の際,検査官は,I不動産は破綻懸念先であるとしたのに対し,当時関連事業部長であったC7が,金融機関の支援があり,長期事業計画があることを必死に説明して,同社は要注意先とされたが,検査官から,今度検査に来た時に事業計画どおり進んでいなければ同社を要注意先とは認められないとくぎを刺された。 (3) 貸付手続I不動産については,本件貸付け以前から,その扱う金額が大きいため,G銀行において,その収支を完全に管理するとの目的で,I不動産の売上げを一度すべてG銀行に入金し,その後必要額を改めて「運転資金」としてI不動産に貸し付けるという,いわゆる「ゼロバランス方式」が採られており,どの貸付けとどの返済とが対応するかということが意識されていなかった。I不動産の返済及び借入れは,G銀行にあるI不動産の口座の出し入れによってなされていた。本件貸付け当時もそのような方式が採られていたが,その具体的な貸付手続は次のとおりである。 I不動産は,G銀行で毎月報告会議を行うグループ会社であり,G銀行において,I不動産代表取締役社長(当初はE1,平成10年12月22日以降 れていたが,その具体的な貸付手続は次のとおりである。 I不動産は,G銀行で毎月報告会議を行うグループ会社であり,G銀行において,I不動産代表取締役社長(当初はE1,平成10年12月22日以降はE2。),同取締役総務部長E3らが,被告人A1及び関連事業部員等に対し,当該月のI不動産の営業状態や,資金繰り等を説明していた。この報告会議において,被告人A1は,I不動産の社内稟議書をチェックし,G銀行のI不動産に対する貸付けについて事実上の承認をし,G銀行では,これに基づいてI不動産に対する貸付けを行っていた。この報告会議には,被告人A1のほか,A3,関連事業部員等が出席しており,同9年7月ころ以降は被告人A2も出席していた。 この報告会議においては,I不動産の資金繰予定表などに基づいて,これだけの金額が必要だという報告があり,同8年以降は既にG銀行以外に資金調達先がなかったため,その金額がそのままG銀行の貸付金額となっていた。このようなことから,I不動産の報告会議は,資金繰り会議とも呼ばれていた。 I不動産に対する貸付けの貸出稟議書の作成・決裁の手順は次のとおりである。まず,報告会議の2,3日前に,I不動産の担当者がG銀行本店営業部のC6にI不動産の資金借入申込書と報告会議で使用する資金繰予定表を提出し,C6がこれらの資料と関連事業部からの指示により貸出稟議書を作成する。I不動産が作成した資金借入申込書及び資金繰予定表は貸出稟議書の補充用紙に添付され,各書面記載の借入申込額又は10万円単位の端数を切り上げた金額が,そのまま貸付金額になっている。また,利率や担保明細については,C6が関連事業部の指示によって記載していた。 このようにして作成された貸出稟議書は,報告会議において被告人A1の事実上の承認が得られた後,決 額になっている。また,利率や担保明細については,C6が関連事業部の指示によって記載していた。 このようにして作成された貸出稟議書は,報告会議において被告人A1の事実上の承認が得られた後,決裁に回された。まず,営業部に決裁が回されるが,既に最終決裁権者である被告人A1の事実上の承認を得た貸出稟議書であることは周知の事実だったため,実質的な審査がなされることはなく,決裁権者において形式的に印を押すのみで,関連事業部に回されていた。関連事業部においては,関連事業部員が順次決済印を押し,その後,A3,被告人A2,被告人A1と順次決裁印を押した。 I不動産に対する貸付けは,手形貸付けの分割実行により行われた。すなわち,I不動産の借入希望日前後に,I不動産が約束手形,資金使途明細書及び念書を営業部に差し入れ,その手形に基づいて貸付係がI不動産の指定口座に貸付金を入金した。その際,営業部では実行明細を作成していた。 5 本件貸付けの経緯(1) 平成7年の状況kの販売不振が続く中,平成7年1月の阪神大震災もあり,同年5月ころには,I不動産がそのまま事業を進めることは困難になった。 そこで,被告人A1に対しこのようなI不動産の現状を説明するため,臨時会議が同月25日に開かれた。この会議には,被告人A1,E1,E3らが出席し,E1及びE3は,「[k]収支試算合計表(ケース別)」と題する書面に基づき,被告人A1に対し,kの開発が,このままでは最終的に約475億円の赤字となることや,同年9月には銀行法13条の信用限度枠の空きがマイナス5億0500万円になり,G銀行からの貸付けが受けられなくなることなどを説明した。被告人A1は,I不動産の現状に対するこのような説明を受けて,ショックを受けた様子で,「夜明け前が一番暗い。」な ナス5億0500万円になり,G銀行からの貸付けが受けられなくなることなどを説明した。被告人A1は,I不動産の現状に対するこのような説明を受けて,ショックを受けた様子で,「夜明け前が一番暗い。」などと述べた。そして,しばらく考え込み,土地を半分でも,全部でも売るか,荷を軽くするかなどと言ったものの,具体的な指示は出さず,その会議は終了した。 その後の同年6月2日の報告会議の際,E1は,被告人A1に対し,土地の一部を売却した場合の試算をE3作成の資料に基づいて説明し,kの開発は最低でも約256億円の損失が出ることなどを説明した。 このころ,I不動産は,既に他の金融機関から貸付けを受けるのは困難な状況であったため,被告人A1がL8銀行の経営陣のトップに直接I不動産に対する貸付けを依頼して,同年8月及び12月に,同行からそれぞれ15億円ずつ合計30億円の貸付けを受けた。また,被告人A1の指示により,I不動産は,同年8月から9月にかけて,その保有するG銀行及びJ2銀行の株式をG銀行の他のグループ会社に売却し,これにより約37億円の売却益を上げた。これらにより,銀行法13条の信用限度枠の問題などは当面先送りとなった。 また,前記(第5の2(2))のとおり,kの販売促進を図るため,G銀行は,同年12月15日,関連事業部長から各支店長に対し,kの物件について販売促進を依頼した。 なお,同7年の大蔵省検査の結果,「I不動産についても,大規模プロジェクトの超長期化により資金繰りが逼迫している」との指摘があったことは前記(第3の5(2))のとおりである。 (2) 平成8年の状況ア J6クレジットとの合併案等の検討G銀行は,平成8年1月16日,支店長会議でkの物件の販売促進の依頼を行い,同年2月には,kの土地 )のとおりである。 (2) 平成8年の状況ア J6クレジットとの合併案等の検討G銀行は,平成8年1月16日,支店長会議でkの物件の販売促進の依頼を行い,同年2月には,kの土地の一部を兵庫県に対して一括販売し,また,販売未了で在庫となっている完成宅地について,L3不動産との協議により共有関係を解消しI不動産の単独所有地として販売するなど,販売促進を図った。 しかし,I不動産の事業だけでその損失を埋めることは困難であったことから,被告人A1は,同年6月,C3(G銀行関連事業部長)及びE1にI不動産とJ6クレジットとの合併を検討するように指示し,同年7月1日,C3が作成した同日付け「I不動産(株)の現状を打開するについて」と題する書面に基づいて,その内容についての説明を受けた。その書面には,[1]I不動産の長期見通しについては大幅赤字となる,借入金も多額の残となる,[2]現状有姿のまま,売却可能価格で売却すると大幅赤字となり,借入金も多額の残となる,[3]現状で資金調達を継続していくことは,資金使途,業種,G銀行の信用状態より,G銀行の保証付きでも困難である,[4]残存借入金をG銀行及び関連金融機関で債権放棄ないし償却できないとして,I不動産は「いずれにしても破綻は避けられない状況である」と記載されており,J6クレジットとの合併についても,銀行法13条の信用限度枠の問題や,資金調達の困難などから,G銀行の力では困難と記載されている。また,I不動産とJ6クレジットを一括で買い取ってくれる相手を探すこと,I不動産の対応作業にコンサルタントを導入することなどが提案されている。さらに,同月9日,報告会議において,被告人A1らは,前記C3作成の書面に加え,「収支見込み合計表」と題する書面を基に,説明を受けた。それによると コンサルタントを導入することなどが提案されている。さらに,同月9日,報告会議において,被告人A1らは,前記C3作成の書面に加え,「収支見込み合計表」と題する書面を基に,説明を受けた。それによると,I不動産は,kの土地値上がり率を年2.5パーセントで計算しても483億円の,同9年10月1日に残存分土地を売却しても311億円の,それぞれ赤字となると見込まれた。被告人A1は,少しでも可能性がある限りは,I不動産の延命策は何でもやろうと指示し,関連事業部に対し,引き続きI不動産とJ6クレジットとの合併や一括売却を検討するよう指示した。 被告人A1のこのような指示を受けて,関連事業部では,同8年7月以降,さらにI不動産とJ6クレジットとの合併の問題点について検討したが,同月9日に検討した段階から存在した銀行法13条の信用限度枠の問題及び資金調達の問題を解決する方法はなかった。 一方,I不動産とJ6クレジットとの一括売却については,L3不動産との基本協定書14条により,事業からの撤退等が禁じられており,これに違反した場合は,損害賠償の代物弁済としてI不動産の持分所有権をL3不動産に譲渡するほか,それ以外に損害金の一切を弁済することが定められていたため,I不動産としては,事業を撤退して他の会社等にこの事業を引き継がせることはできなかった。 そこで,被告人A1は,同年8月ころ,E1とともにL3不動産本社に同社社長を訪れ,その数日後,L3電鉄本社のF1会長を訪ね,I不動産とJ6クレジットを併せて買い取ってほしいとの申入れを行ったが,話はまとまらなかった。 また,G銀行では,L3不動産以外の他の会社に対しても,I不動産とJ6クレジットを併せて買い取ってほしいとの依頼をしたが,いずれも断られた。 イ他の金融機関の対 はまとまらなかった。 また,G銀行では,L3不動産以外の他の会社に対しても,I不動産とJ6クレジットを併せて買い取ってほしいとの依頼をしたが,いずれも断られた。 イ他の金融機関の対応G銀行以外の金融機関は債権保全に不安を抱き,平成8年ころからI不動産に対し厳しい姿勢を示してきていた。 L5銀行は,同6年4月ころ,独自にkの開発につきケース別の試算をし,地価上昇率を3パーセントとし,I不動産の提出した計画通り同12年に完売すると22億円の,完売が2年遅れると74億円の,地価上昇率を1パーセントから3パーセントとし,同14年に完売すると137億円の債務超過になると計算していたこともあり,I不動産に対して経営再建案等を策定するように要請していた。しかし,I不動産及びG銀行では,具体的な経営再建案等を示すことができなかった。 また,L8銀行から同7年に借り入れた30億円の返済日が同8年11月末日であったところ,I不動産はその継続についてL8銀行から担保を要求された。その結果,J4商店名義の10億円の定期預金に質権を設定し,残りの20億円についてはG銀行が保証することとなった(なお,G銀行の保証分については,同9年3月にG銀行から差し入れた国債に対する質権に切り替えられた。)。 その他の金融機関においても,同様にI不動産の今後について不安を抱き,経営再建案等の提示を求めるなどしていた。 (3) 平成8年末から同9年4月ころまでの状況ア会社更生法の適用申請の検討平成8年12月22日,被告人A1の自宅でI不動産についての会議が行われた。この会議には,G銀行から被告人A1,被告人A2,A3,C3,C7(関連事業部次長)が,I不動産からE1が出席したほか,J4商店代表取締役社長で ,被告人A1の自宅でI不動産についての会議が行われた。この会議には,G銀行から被告人A1,被告人A2,A3,C3,C7(関連事業部次長)が,I不動産からE1が出席したほか,J4商店代表取締役社長であり,被告人両名の実弟であるA9,J4商店元専務であるF2,J2銀行代表取締役社長であるF3も出席し,G銀行の顧問弁護士であるF4,F5の意見を聞いた。なお,F2は,A家の番頭格の人物であり,A家の重大な会議には必ず出席していた。 この会議では,C3が,I不動産には現在各金融機関から総額約760億円の借入れがあり,そのうちG銀行から約160億円を,G銀行グループから総額約230億円の貸付けを受けていること,このままでは300億円から400億円もの赤字となり,事業を続けても採算が取れず,関連事業部としてはI不動産は法的に整理すべきであると考えているとの意見を述べた。被告人A2は,会社更生法の適用申請をてこにして,他の金融機関と交渉すべきであるという考えもあってこれに賛成し,A3も会社更生法の適用を申請するしかないとの意見を述べた。また,F4も,商法上の会社整理は困難なので,会社更生法の適用を考えた方がよいとの意見を述べた。 しかし,被告人A1は,他の手段はないのかなどと言い,結局その日の会議では結論は出なかった。 同月23日,A3は,被告人A1からの依頼で,C3とともに,個人的に親しかった日本銀行(以下「日銀」という。)のF6を訪ね,I不動産の処理について相談をした。F6は,整理等をする場合の手続等についてアドバイスをした。また,F6は,A3から,G銀行が既にG総合リースへの再建支援のため償却財源を注ぎ込んでおり,益出しに使える資産が乏しくなっていることから,新たな償却財源について心当たりがないかとの質問を受け,電算ソフトをグル A3から,G銀行が既にG総合リースへの再建支援のため償却財源を注ぎ込んでおり,益出しに使える資産が乏しくなっていることから,新たな償却財源について心当たりがないかとの質問を受け,電算ソフトをグループ会社に売却する方法を考えてみてはどうかなどと答えた。 同9年1月8日,C3,C7及びE3は,I不動産の処理等について,F4に相談に行った。F4は,前回の被告人A1の自宅における会議と同様に,I不動産の欠損見込みが大きく,再建計画が成り立たないことから,商法上の会社整理で必要とされる債権者全員の承認が得られないと判断されるので,商法上の会社整理では生ぬるく,会社更生法の適用申請が望ましいとの意見を述べた。その場合,会社更生法の適用申請前に,L4への所有権移転登記を完了し,全債権者に根抵当権等の設定登記を行うことが必要であると指摘した。 このように,会議の大勢は会社更生法の適用申請の方向で動いていたため,同月20日,C3は「I不動産スケジュール」と題する書面を作成し,A3に提出した。これには,同年1月に宅地をまとめて売却し,借入金の返済を図ること,同年3月又は4月に約定返済をストップし,金利を1パーセントにすること,同年7月以降「X日(なるべく遅く)」と記載され,当社の破綻は否定できない,時期がいつであるかのみの状態である,X日が何時であっても即対応できる準備は早期に完了するなどと記載されている。A3は,C3に対し,この書面のとおり準備するよう指示し,C3は,E1,E3,I不動産取締役営業部長E4らにもこれを説明した。被告人A1は,A3からこの資料の内容について説明を受けた。 イ他の金融機関の動きとそれに対する対応G銀行以外の金融機関のI不動産に対する姿勢は,債権保全を図ろうと,さらに厳しくなった。平成8年 からこの資料の内容について説明を受けた。 イ他の金融機関の動きとそれに対する対応G銀行以外の金融機関のI不動産に対する姿勢は,債権保全を図ろうと,さらに厳しくなった。平成8年12月,L5銀行は手形書換期間を3か月から1か月に短縮することや,登記留保としていた担保不動産に対して仮登記を行うことを決定した。また,同9年1月16日には,L5銀行は,I不動産及びG銀行(I不動産と同社に対する債権者12社との間の担保に関する協定で,G銀行が幹事となっていた。)に対して,それまで留保していたkの根抵当権について登記手続の実行のための協議の開始を申し込み,同月末までに設定登記をしてほしい旨申し入れた。しかし,後記ウのL4問題もあり,I不動産はこれに応じられなかったため,協議の結果,G銀行及びI不動産がL5銀行に同月31日付け念書を差し入れることになった。これには,G銀行及びI不動産として,「抵当権仮登記手続に関する合意書を締結し,抵当権の目的たる持分の上に抵当権設定仮登記を行う所存である,G銀行がこれを承諾して責任を持って抵当権設定仮登記を完了させ,I不動産が協定者に対し迷惑をかけないように十分に配慮を行う」旨記載されている。 このような他の金融機関の動きに対応するため,同年2月17日,G銀行社長室において会議が行われた。この会議には,G銀行から被告人A1,A3,C3,C7が,I不動産からE1,E3が出席した。この席で,A3は,I不動産は法的整理以外に採るべき道はないこと,L5銀行だけがI不動産の再建計画の提出や担保権の設定登記を求めたりしてきているのではなく,他の銀行すべてであること,時間的余裕もなく,延ばせばそれだけロスが増え,すべてがダメになること,資金的には同年6月が限度であること,結局はI不動産の今後の説明を 記を求めたりしてきているのではなく,他の銀行すべてであること,時間的余裕もなく,延ばせばそれだけロスが増え,すべてがダメになること,資金的には同年6月が限度であること,結局はI不動産の今後の説明をしなければ進まない状態であるが,G銀行の方針と了解を得ないと説明することもできないことなどを主張した。そして,いずれにしても,L4への所有権移転登記をして,各銀行の根抵当権設定の仮登記は何としてもやるなどと主張した。被告人A1は,このようなA3の意見を聞いたが,はっきり決断して方針を述べることはせず,もう一度みんなで集まって協議する必要があるとして,A3にその段取りを指示した。 同年2月25日,G銀行の寮となっていた大阪市北区にあるJ3において会議が行われた。この会議には,F4,F5のほか,G銀行から被告人A1,被告人A2,A3,C3,C7らが,I不動産からE1が,J4商店からA9,F2が出席した。被告人A1が,弁護士らに法的整理の問題点等を尋ね,F4は,これまでと同様に「会社整理では生ぬるい,徹底的な整理が必要である。そのためには信義を守らなくてはならない。」との意見を述べ,会社更生法の適用申請前にしておかなければならない処理として,L4への所有権移転登記をして,全債権者に対する仮登記をすることの必要性を指摘した。被告人A1は,I不動産について会社更生法の適用申請をすると,他のグループ会社に対する貸付けもストップしないかなどと発言した。この会議でも,会社更生法の適用申請に反対する者はおらず,I不動産を法的に整理する方向で話が進んでいたが,被告人A1は,この会議においても会社更生法の適用申請について結論を出さなかった。 ウ L3不動産及びL4との交渉前記イのとおり,平成9年1月16日にL5銀行から根抵当権設定仮登記をす 告人A1は,この会議においても会社更生法の適用申請について結論を出さなかった。 ウ L3不動産及びL4との交渉前記イのとおり,平成9年1月16日にL5銀行から根抵当権設定仮登記をするよう申入れがあったものの,この登記を行うためには,L4の持分について所有権移転登記を完了しなければいけないという問題(以下「L4問題」ともいう。)があった。すなわち,L5銀行の要求は,I不動産の持分に根抵当権設定仮登記をするというものであったが,登記上のI不動産の持分の中には,L4の持分5パーセントが含まれており,この5パーセントについてL4への所有権移転登記を完了しなければ,L4の持分についても根抵当権設定仮登記がなされてしまうので,他の金融機関への根抵当権設定仮登記を行う前に,L4の持分について所有権移転登記をしなければならないというのである。 また,I不動産とL3不動産との基本協定書14条では,それぞれの保有地につき担保物件として第三者に提供しないことが定められていた(前記2(1))ため,L3不動産ともこれについて協議する必要があった。 そこで,同年1月下旬ころから,I不動産及びG銀行は,L3不動産及びL4との協議を始め,L5銀行から抵当権設定仮登記の申入れがあったことなどを伝えた。これに対し,L3不動産は,抵当権設定仮登記はI不動産の持分だけに限り,未造成地には絶対に設定しないでほしいこと,L3不動産としては上記基本協定書14条を行使することもあり得ることなどを主張し,また,L4は,そのような事態になった以上,5パーセントの持分をI不動産に買い取ってほしいと主張し,最終的には,I不動産にL4の持分5パーセントを45億円で買い取るとともに,L4に対するG銀行の債権40億円を債権放棄することなどを要求したため,L4問題 の持分をI不動産に買い取ってほしいと主張し,最終的には,I不動産にL4の持分5パーセントを45億円で買い取るとともに,L4に対するG銀行の債権40億円を債権放棄することなどを要求したため,L4問題は解決しなかった。 なお,この協議において,同月28日には,E1が,I不動産は今や「死に体」であるので,L3のお力をお借りしたいと述べているほか,同年2月25日には,L3不動産の担当者がG銀行に方針を尋ねに訪れた際,C3が,銀行団としてはI不動産が事業を続行するのは無理と認識しており,今後の追加融資はできないと伝えている。同年3月4日には,E4及びE3が,L3不動産に対し,今日明日の倒産はないが,今の状態が続けば数か月で倒産は免れないなどと述べていた。 エ新会社設立案の検討G銀行及びI不動産では,I不動産につき会社更生法の適用を申請する方向で話が進んでいたが,平成9年2月24日ころ,E3は,会社更生法の適用申請よりも穏便な整理の方法として,I不動産からkの土地を買い取って事業を引き継ぐ新会社を設立し,kの開発を継続するとともに,G銀行グループに対する負債はI不動産に残し,時期を見て清算するとの計画を考案し,C3に提案した。C3は,これを良案と考え,E3に引き続き検討するように指示した。また,C3は,被告人A1及びA3にこの新会社設立案について説明し,賛同を得て,同年4月22日の会議では,新会社設立案について検討することとなった。 同日,G銀行本店社長室で行われた会議には,G銀行から被告人A1,A3,C3,C7,I不動産からE1,E3,E4が出席した。この会議では,新会社設立案について,変態現物出資の方法を採るか,営業権譲渡の方法を採るかなどといった検討がなされた。また,C3は,I不動産の資金繰りについて説明し 産からE1,E3,E4が出席した。この会議では,新会社設立案について,変態現物出資の方法を採るか,営業権譲渡の方法を採るかなどといった検討がなされた。また,C3は,I不動産の資金繰りについて説明し,これによると,同年4月から12月までの調達資金(G銀行からI不動産に貸し出さなくてはならない金額)は約52億円であった。このような資金繰りやG銀行グループ全体の負担状況等の説明のほか,他の金融機関に対する金利減免・約定弁済ストップの要請,L4問題等についても検討がなされた。 被告人A1は,他の金融機関への金利減免等の要請については,マスコミリスクが大きいことを指摘したり,L4問題についてはL4にも応分の負担をしてもらわなくてはならないと主張するなどしたが,結局,全行に約定弁済ストップ,金利1パーセントで依頼すること,マスコミリスクについては体制を組むこと,L4の持分を買い取ることなどが結論とされ,新会社設立案については,変態現物出資ではなく営業権譲渡方式とすることとされた。 しかし,被告人A1は,これらの方針について,具体的にこれをいつから進めるなどの指示を出さなかったため,その時点からこれらについて動き出すことはなく,被告人A1がこの時にこれで行くという最終判断を下したということではなかった。 オ近畿財務局及び日本銀行への報告平成9年3月4日,被告人A1は,近畿財務局及び日銀に対し,I不動産の状況を報告した。この時に近畿財務局及び日銀に提出した書面には,I不動産の現状について,現在の価格を前提とすれば将来大幅な赤字事業となる見込みであること,返済財源不足が見込まれること,資金繰り上も他の金融機関からの返済要請が強く,G銀行による貸付け以外調達方法がなくなりつつあること,社会的に表面化しない方法で処理し 赤字事業となる見込みであること,返済財源不足が見込まれること,資金繰り上も他の金融機関からの返済要請が強く,G銀行による貸付け以外調達方法がなくなりつつあること,社会的に表面化しない方法で処理したいと考えているが,返済猶予,金利減免等の申出をせざるを得ない事態になっていること,同年2月末現在,G銀行の負担は257億4200万円となっており,今後も増加し債権償却負担となる可能性があることなどが記載されている。 これに対する近畿財務局の返答は,「1,先ず再建計画をはっきり建てることである。イ,G銀行及びJ4商店を含むグループがどれだけの犠牲を払うか腹を決めなさい。(債権放棄を含め)ウ,その上でそうすればどうゆう見通しがたつのか内部固めを充分行うこと。2,その後他行に支援を求める(金利返済条件等)ことにしないと各行の了解をとるのは無理だろう。3,各行に申し出るにしてもその時期を充分に考えなくてはいけない。4,法的整理をするにしてもその前に再建の可否をはっきり見極めてください。5,銀行,その他グループの資金繰り,その他も充分配慮の要あり。6,情報管理を充分行って下さい。7,計画の立案および実施についても,各行の処理などでノウハウもあるので相談にきて下さい。8,当行の経営再建計画との関わりはどうなるか。」というものであった。 また,日銀の返答は,「1,Iの処理について決断されたのですね,決断が遅すぎても傷が深くなりますからね。2,支払い準備を厚くしておいて下さい。」というものであった。 (4) 平成9年5月ころから12月ころまでの状況ア新会社設立案の廃案まで平成9年6月末になり,被告人A1は,同年4月22日の会議において決定したとおり,他の金融機関に金利減免の要請をするよう指示した。これを受けて,同年 状況ア新会社設立案の廃案まで平成9年6月末になり,被告人A1は,同年4月22日の会議において決定したとおり,他の金融機関に金利減免の要請をするよう指示した。これを受けて,同年7月2日,E1及びE3は,L8銀行,L6銀行,L5銀行,L7銀行へ金利減免要請に行ったところ,各行は,再建計画もなしでは進められないとして,再建計画を示すことを要求した。そこで,被告人A1は,E1らに対し,他の金融機関に提出する再建計画案として,新会社設立による再建計画案を提出するように指示した。 同月4日,I不動産は,被告人A1に対し,新会社設立による経営改善計画を提出した。この計画では,I不動産の子会社ではない新会社を設立してkの土地を時価で売買し事業を引き継ぐ,L4の持分はI不動産が約85億円で買い戻すとされていた。 同月8日,G銀行本店社長室において,新会社設立案によるI不動産再建計画案の検討を行う会議が行われた。この会議には,被告人A1,被告人A2,A3,C3,C7等が出席していた。この席で,C3が前記経営改善計画について説明したところ,被告人A2は,この計画ではG銀行のI不動産に対する約400億円もの債権が償却債権として確定してしまうので,そのような再建計画は絶対に採用できないと反対した。そして,このような計画を立てるようでは,I不動産について関連事業部に任せることはできないとして,今後は被告人A2が主導して,以前G銀行の管理部長を務めていたC8等に検討させるとした。そこで,被告人A1は,I不動産の処理を被告人A2に検討させることとし,新会社設立案は立ち消えとなった。 なお,その後,C8らによりI不動産の再建について検討されたが,新たな提案がなされたわけではなかった。 イ他の金融機関に対する抵当権設 せることとし,新会社設立案は立ち消えとなった。 なお,その後,C8らによりI不動産の再建について検討されたが,新たな提案がなされたわけではなかった。 イ他の金融機関に対する抵当権設定仮登記前記((3)イ)のとおり,G銀行及びI不動産は,平成9年1月31日にL5銀行に対し念書を差し入れて,根抵当権設定仮登記をすることを約したものの,L4問題は解決せず,仮登記手続は進んでいなかった。また,G銀行及びI不動産は,L5銀行等にI不動産の債務について金利減免要請をしていたが,これも難航していた。 L5銀行は,同年8月末までに仮登記手続をしない限り,同月末の手形書換えには応じられないとしたが,それまでにL4問題は解決せず,仮登記もできなかったため,同月末の手形書換えをせずに,延滞扱いとした。 そのため,I不動産は,根抵当権設定仮登記をする必要に迫られ,L4の5パーセントの持分を買い取ることとした。L4の持分5パーセントの価格は約40億円程度であったが,L4の要求により,同年9月1日,I不動産は約85億円でこれを買い取った。そのための資金は,銀行法13条の信用限度枠の問題から,G銀行からI不動産に直接貸付けすることができず,G銀行からJ5不動産に貸付けし,同額をJ5不動産からI不動産に貸付けするという迂回貸付けによって賄った。 I不動産がL4の持分を買い取ったため,同月24日になって,ようやく他の金融機関に対する根抵当権設定仮登記が完了した。 L5銀行は,仮登記手続が完了したことや,I不動産が宅地が販売できたときの返済割合を50パーセントとすることに応じることとなったことなどから,同10年3月分から,延滞措置を解除し,金利の引下げに応じた。 (5) 平成10年以降の状況平成10 販売できたときの返済割合を50パーセントとすることに応じることとなったことなどから,同10年3月分から,延滞措置を解除し,金利の引下げに応じた。 (5) 平成10年以降の状況平成10年2月3日,G銀行出身のE2がI不動産代表取締役副社長に就任し,同年12月22日,同社代表取締役社長となった。E2は,I不動産の財務状況を知り,大幅な債務超過に陥っており,kの宅地も原価割れしているため販売しても赤字になることを理解したが,I不動産にはkの宅地販売の事業しかない以上,損失が出ても,これを販売するしかないと考え,積極的に販売するよう活動した。E2は,G銀行からkの購入者に対し,優遇貸付けをしてもらうなどして販売促進に努めたが,販売は好転しなかった。 E2は,G銀行からの貸付けも銀行法13条の信用限度枠の問題でストップする可能性が高かったため,I不動産で運転資金だけでも賄うために,k以外の不動産仲介等を行うことによって収益を上げようと考え,被告人A1に打診したところ,被告人A1は,積極的に進めるように指示した。 同11年,E2は,被告人A1に対し,Z株式会社が所有していたマンションの取引を行うことを打診した。この取引は,I不動産及びJ7クレジット両社で,Zが所有していた合計47棟のマンションを約120億円でまとめて買い取り,これを直ちに新設会社4社に約180億円で売り渡すものであり,I不動産にとって,うまくいけば非常に有益なものであったが,リスクも高いものだった。すなわち,売却先の会社は,設立早々の実績の少ないペーパー会社ともいうべきものであり,G銀行は,これらの会社に対し,買取り代金及び費用に運転資金約30億円を加えた210億円を貸し付けることとなっていた。その担保は,当該47棟のマンションであったが,これは,住宅 いうべきものであり,G銀行は,これらの会社に対し,買取り代金及び費用に運転資金約30億円を加えた210億円を貸し付けることとなっていた。その担保は,当該47棟のマンションであったが,これは,住宅金融債権管理機構でさえ110億円の損切りをして担保抹消した物件であり,担保の保全が不十分となるおそれがある上,返済期間も25年と長期であったことなどから,G銀行としては,大きな損失を受ける可能性の少なくないものであった。被告人A1は,ぎりぎりまでこの取引を行うか検討していたが,E2に押し切られるような形でこれを決断した。 なお,この取引に関する問題点は,同年3月19日付け「元Z所有不動産の取引に関する問題点」と題する書面において,F7弁護士が検討しているが,この書面には,「三その他若干の問題」として,「債権の保全を確実なものにしなければ万一再び不良債権となり,G銀行が損失を受けるようになったとき,G銀行が関連会社であるI等両者(I不動産及びJ7クレジット)に利益を上げさせるために任務に背き本件貸付けを実行したとされる懸念がある。」旨記載されている。 被告人A1の決断により,I不動産はこの取引を敢行し,同年2月18日にZと売買契約を結び,同月26日,これを決裁し,同日,有限会社L10及び株式会社L11と売買契約を結んでこれを売却し,同年3月29日決済して,約30億円以上の売却益を上げた。 I不動産は,ゼロバランス方式により,得た利益はすべてG銀行に返済金として入金していたが,この取引で上げた約30億円の利益については,銀行法13条の信用限度枠の問題から,G銀行からI不動産に対する貸付けができなくなった場合に備えて,運転資金等として確保するため,G銀行に返済金として入金することはせず,I不動産の預金として留保していた。 の信用限度枠の問題から,G銀行からI不動産に対する貸付けができなくなった場合に備えて,運転資金等として確保するため,G銀行に返済金として入金することはせず,I不動産の預金として留保していた。 (6) 本件貸付けこの間,毎月の報告会議においてG銀行からI不動産への貸付金額が決定され,その後,分割実行されていたことは前記(第5の4(3))のとおりである。本件貸付けは,平成9年4月から同11年3月までに実行された貸付けのうち,貸付金額が1億円以上のものであり(なお,同10年4月30日に2億0650万円の貸付けが実行されているが,これは除く。),別紙一覧表記載のとおり,同9年4月28日ころから,同11年3月30日ころに至るまで,G銀行からI不動産に対し,24回にわたり合計約68億円の貸付けが実行された。 なお,G銀行が同9年3月31日に旧債務償還資金として貸し付けた合計171億5500万円並びに同年4月から同10年1月までの間の貸付けのうち本件貸付けを含めて貸付金額が比較的大きいもの及び同年2月以降に貸し付けたものについては,返済日が同年3月31日とされている。これらの貸付けについては,同日,G銀行が旧債務償還資金として合計213億6690万円を貸し付けてその返済を受けた形になっている。また,同日の貸付け並びに同10年4月から同年9月までの間の貸付けのうち本件貸付けを含めて比較的金額が大きいもの(前記同年4月30日実行分を除く。)及び同年10月以降に貸し付けたものについても,同様に同11年3月31日が返済日とされ,同日,G銀行が合計224億7090万円を貸し付けてその返済を受けた形となっている。これらは旧債務の借換えといえ,したがって本件貸付けについては実質的な返済がなされていないことになる。 (7) 本件貸付け後の状況 224億7090万円を貸し付けてその返済を受けた形となっている。これらは旧債務の借換えといえ,したがって本件貸付けについては実質的な返済がなされていないことになる。 (7) 本件貸付け後の状況G銀行が平成11年5月22日に破綻した後,同銀行からの資金が途絶えたI不動産は,同年7月26日,自己破産の申立てをし,同年8月4日,破産宣告を受けた。 6 任務違背(1) 被告人両名の任務I不動産への貸付けに関する被告人両名の任務の内容として,公訴事実では,「法令・定款等の規定を遵守するはもとより,貸付先の資産・経営状態やその信用の程度を精査して貸付けの当否を慎重に検討した上,確実かつ十分な担保を徴求するなど貸付金の安全確実な回収のための適切な措置を講じ,もって,金融機関としての業務の健全かつ適切な運営の確保に努め,銀行に損害を加えることのないよう誠実にその職務を遂行すべき任務」が主張されているところ,前記被告人両名の地位に照らすと,このような任務を負っていることは明らかに認められる。 (2) 貸付手続I不動産に対する本件貸付手続は前記のとおりであって,通常の貸付手続(前記第3の4(2))とは全く異なるゼロバランス方式により貸付けと返済が行われており,どの貸付けとどの返済とが対応するかということすら意識されていなかったというのである。そうすると,本件貸付けについても,I不動産の資産・経営状態やその信用の程度を精査して,貸付けごとの個別の回収可能性を判断し,その当否を慎重に検討するというより,同社の運転資金等として必要があればその金額を貸し付けるという態勢になっていたものと認められる。 また,毎月の貸付金額は報告会議において事実上決められ,貸出稟議書が作成されているものの,形式的なものであって,貸付担 要があればその金額を貸し付けるという態勢になっていたものと認められる。 また,毎月の貸付金額は報告会議において事実上決められ,貸出稟議書が作成されているものの,形式的なものであって,貸付担当者の起案を各段階の決裁者が審査することにより貸付担当者の思い込みや決裁者の独断を排するという意味での実質的な稟議はなされていなかった。この点について,平成7年の大蔵省検査では,関連事業部は融資権限を有しているものの,実態的には経営から指示されたことを実行しているにすぎず,事実上審査不在となっていることから,今後,組織的な審査体制を構築する必要があると指摘されているが,その後も組織的な審査体制が構築されたことはうかがわれない。 さらに,I不動産に対する貸付手続が従前から本件貸付けと同様のものであったとしても,代表取締役である被告人両名は,貸付手続を適正に運用すべき立場にあったというべきであり,本件貸付手続が正当化されるものではない。 したがって,本件貸付けの際,被告人両名は,その任務に従って,適正な貸付手続を遵守し,貸付けの当否について慎重に検討しなかったものと認められる。 (3) 本件貸付金の回収可能性及び担保の徴求ア回収可能性前記の諸点に照らすと,本件貸付け当時,I不動産の業績は著しく不振で,G銀行のI不動産に対する貸付け約165億円がほとんど回収不能となっていた上,自己資本のぜい弱な同社の資金繰りが借入金の金利負担過重のため極度にひっ迫しており,実質的には同社が経営破綻の状態に陥っていたと認められ,同社に無担保で追加貸付けをすればその債権の回収は著しく困難であったといえる。 すなわち,平成7年当時から,I不動産は当時行っていた唯一の事業であるkの開発事業が大幅な赤字となることが予見されていたこ 保で追加貸付けをすればその債権の回収は著しく困難であったといえる。 すなわち,平成7年当時から,I不動産は当時行っていた唯一の事業であるkの開発事業が大幅な赤字となることが予見されていたこと,同8年にはI不動産が「いずれにしても破綻は避けられない状況である」ことを前提に,J6クレジットとの合併や同社との一括売却についても検討,協議されたが,進展しなかったこと,同年末から同9年初めにかけてはG銀行及びI不動産において会社更生法の適用申請が検討され,他の金融機関は一層厳しく債権保全の動きを見せる程度にまでI不動産の経営状態が悪化していたことなどを考慮すると,本件貸付け当時,I不動産が実質的に経営破綻の状態に陥っており,同社に対する追加貸付金は回収が著しく困難であったことは明らかである。 ところで,A1弁護人は,I不動産は,同10年に代表取締役に就任したE2の努力により,同年半ばからのI不動産のG銀行に対する借入額は激減し,同年4月以降は借入額よりも返済額の方が多い月が頻繁に生じ,同11年には不動産取引による30億円の利益により返済額が借入額を上回り,当分借入れを行わなくてもよい状態にまで再建されたと主張する。しかし,[1]平成10年以降も本件貸付けの返済はなされておらず,その目途も立っていないこと,[2]約30億円の利益が上がった同11年のZに関する取引は特異な例であり,背任のおそれも指摘されるような極めて危険性の高い取引であったことは既に認定したとおりであり,I不動産がその後もこのような取引によって継続的に収益を上げることが可能であったかは疑わしいこと,[3]前記30億円の利益の存在を前提としても,それはI不動産の最低限必要な資金繰りを賄うことができるにすぎないのであって,これまで投下した資金の額やkの販売状況を考えれ であったかは疑わしいこと,[3]前記30億円の利益の存在を前提としても,それはI不動産の最低限必要な資金繰りを賄うことができるにすぎないのであって,これまで投下した資金の額やkの販売状況を考えれば,G銀行及び他の金融機関からの借入れを返済することまではできなかったこと(E2は,第14回公判において,I不動産の事業を継続していって,I不動産を維持することが大切なことである,2,3年維持してその間にG銀行が自己資本を充実し,債権償却特別勘定で引当してもらうつもりであったなどと供述しており,I不動産のそれまでの借入金を返済することまでは想定していなかったことが認められる。)などを考慮すると,I不動産の破綻が避けられない状態であったことに変わりなく,再建されたとは考えられない。 また,A2弁護人は,企業が破綻又は実質破綻したとは,企業が法的整理ないし手形交換所の取引停止処分などにより支払を停止していることをいうか,そのような事実がなくとも深刻な経営状態にあり,再建の見通しがないと認められることをいい,I不動産は引き続き事業を継続し,所定の利払いは継続し,支払を停止した事実はないので同9年3月ころには実質的に破綻していないと主張する。しかし,支払停止などに至っていないのはG銀行からの貸付けがなされていたからにほかならず,I不動産の経営状況は前記のとおりであって,まさに「深刻な経営状態にあり,再建の見通しがない」と認められる状態であったことは明らかである。また,G銀行の資産の自己査定において,I不動産が要注意先とされていた点についても,前記4(2)の経緯に照らすと,その実態に即した査定とはいえない。そうすると,A2弁護人の主張は採用できない。 したがって,本件貸付金は,その回収が著しく困難であったと認められる。 イ担保の 2)の経緯に照らすと,その実態に即した査定とはいえない。そうすると,A2弁護人の主張は採用できない。 したがって,本件貸付金は,その回収が著しく困難であったと認められる。 イ担保の徴求本件貸付けに対する担保としては,kの土地に根抵当権が登記留保の方法でなされているだけであるが,前記のとおり,他の金融機関により同土地の評価額を大幅に超える被担保債権額の根抵当権が先順位に設定されるなどしていたため,そこから回収できる見込みはなく,実質的には無担保であったといえる。 したがって,被告人両名は,債権の保全・回収のための確実かつ十分な担保の徴求も,その他安全確実な回収をするための適切な措置も講ずることがなかったと認められる。 (4) 母体行責任,銀行の信用維持等弁護人らは,前記同様,母体行責任や銀行の信用維持を理由に,本件貸付けは任務違背に当たらないと主張する。 しかしながら,前記(第4の5(4))のとおり,母体行責任の妥当範囲には自ずから限界がある。また,前記(第3の5(3))のとおり,本件貸付けの前に,金融機関の自己責任の原則に基づく早期是正措置制度や自己査定制度が導入されることが決まっていたことからも,平成7年当時以上に,従前のいわゆる護送船団方式・母体行責任の考え方は変わりつつあったものとみられる。 そして,I不動産からの回収が著しく困難であり,確実かつ十分な担保も徴求されておらず,本件貸付けは不良債権を増加させるものといえること(前記(3)),本件貸付け当時のG銀行の財務状況は同7年当時と比較して悪化し続けていたこと(前記第3の5)などを考慮すると,G銀行としては,更に不良債権を増加させ,財務状況を悪化させることにつながる本件貸付けが許されるような状況にはなかったというべき 当時と比較して悪化し続けていたこと(前記第3の5)などを考慮すると,G銀行としては,更に不良債権を増加させ,財務状況を悪化させることにつながる本件貸付けが許されるような状況にはなかったというべきである。 ところで,弁護人らは,G銀行が母体行責任を果たさず,I不動産への貸付けを行わなかったとすると,G銀行の信用が失われ,取り付け騒ぎが起こり,銀行間の取引が困難となり,破綻する可能性が高かったなどと主張する。しかし,既にG銀行には弁護人が主張する信用力の裏付けとなる実際の体力はなかったのであり,本件当時,G銀行が破綻するおそれがあったとすれば,その原因は同銀行の財務状況が悪化していたことにこそ求められるべきであって,I不動産への貸付けをしないことは,そのような財務状況を表面化させる一要因となり得たにすぎない。このことは,I不動産への貸付けを続け,したがって弁護人らのいう母体行責任を果たしていたG銀行が,最終的には,金融監督庁の検査を契機として,その財務状況の悪化が表面化したことにより破綻したことからも明らかである。なお,I不動産への貸付けを一定期間続けることにより,G銀行の財務状況の悪化を一時的に隠蔽し,その間にG銀行の財務状況を改善させるということも考えられないわけではないが,本件では財務状況が改善される具体的な見通しがあったことをうかがわせる証拠はない。 したがって,弁護人らの主張は理由がない。 (5) ゼロバランス方式との関係A2弁護人は,G銀行とI不動産との間でゼロバランス方式が採られていたことなどから,I不動産に対する見せかけの貸付けが存在するものの,信義誠実の原則に照らし,通常の業務執行を逸脱するような違法不当な実質貸付けは存在しないなどと主張し,その論拠として,[1]I不動産は余剰資金をG銀行に借入 に対する見せかけの貸付けが存在するものの,信義誠実の原則に照らし,通常の業務執行を逸脱するような違法不当な実質貸付けは存在しないなどと主張し,その論拠として,[1]I不動産は余剰資金をG銀行に借入金返済金として入金しており,これを考慮すると平成9年4月から同11年4月までの借入金増は50億6340万円であること,[2]ゼロバランス方式による特殊な会計処理をしたことによる貸付金増加額として合計11億2031万6000円があり,その内訳は,(a)I不動産がG銀行に対して支払うべき利息決済資金として同銀行から借り入れた3億5019万4000円,(b)I不動産が宝塚市から支払を受け,本来であれば同社で保管しておき建設業者にk小中学校建設資金として支払うべきものを,G銀行への返済に充てる処理をしたため,改めて同銀行から借り入れた4億3050万円,(c)I不動産が宝塚市からk小中学校建設資金として支払を受け,本来であれば同社で保管しておき後日同市に事業主負担金として支払うべきものを,G銀行の返済に充てる処理をしたため,改めて同銀行から借り入れた3億3962万2359円であるが,これらは貸付金と評価し得ないこと,[3]G銀行が保証しているI不動産の他の金融機関に対する債務返済資金としての貸付けで,実質同銀行の保証債務元利金の履行に当たるための貸付金10億3834万4626円は,貸付金として評価し得ないこと,[4]その上,I不動産はZが所有していたマンションの売買により約30億円の収益を得ており,これを同9年4月から同11年3月までの間の貸出超過額に充てると,この間の貸出超過額は存在せず,従前の貸付金9526万円を回収していること,などを挙げる。 しかし,G銀行とI不動産との間でゼロバランス方式を採るかどうかは両者間で自由に決められることであっ この間の貸出超過額は存在せず,従前の貸付金9526万円を回収していること,などを挙げる。 しかし,G銀行とI不動産との間でゼロバランス方式を採るかどうかは両者間で自由に決められることであって,この方式を採ったことにより,別の法人格を有するI不動産に対して回収が著しく困難である貸付けを行うことが正当化されるものではない。また,前記主張を個別に検討しても,以下のとおり理由がない。 すなわち,[1]についてみると,ゼロバランス方式によればI不動産からG銀行への入金もあることは当然であるものの,本件貸付けに限れば実質的に返済されていない上(前記5(6)),返済期限が各年度の年度末とされ,その年度末に借換えが行われて実質的に返済されていないことに照らすと,本件貸付けについては,その回収が著しく困難であることから,翌年度に繰り越すつもりでその返済期限を各年度末としていたものと考えられる。そうすると,これを他の貸付金と一括して扱うことはできず,他の貸付金についてG銀行への入金があったことが本件貸付けを正当化することになるとはいえない。 [2]についてみると,まず,G銀行がI不動産の同銀行への利息決済資金を貸し付けている点((a))については,本件貸付けの一部が同銀行への利払いに充てられた可能性があるとはいえ,本件貸付金は,I不動産の口座に振り込まれた後,他の資金と一体となって同銀行への利払いに充てられているのであるから,本件貸付けにより直接利息が回収される関係にあったとは認められない。また,もしG銀行がI不動産に同銀行への利息決済資金を貸し付けず,I不動産の利払いが滞れば,資産の自己査定においてI不動産を要注意先とすること(前記4(2))ができなくなるのであり,同社への利息決済資金の貸付けは,これにより同銀行が利息の支払を受け 貸し付けず,I不動産の利払いが滞れば,資産の自己査定においてI不動産を要注意先とすること(前記4(2))ができなくなるのであり,同社への利息決済資金の貸付けは,これにより同銀行が利息の支払を受けているという外形を作り,更に貸付けを繰り返すために行われていたと考えられる。 したがって,G銀行がI不動産に貸し付けた資金で同社が同銀行に利息を支払うとしても,貸付けに見合った経済的利益が同銀行に帰属するとは認められないのであって,このような貸付けが損害を発生させないものとして正当化されるとはいえない。 次に,k小中学校の建設と関連して,本来であればI不動産で保管しておくべき金額((b)(c))については,それらがI不動産のG銀行への返済に充てられている以上,G銀行が新たに貸付けを行うことを正当化する理由にはならない。 [3]については,他の金融機関に対する支払はI不動産により行われているのであって,G銀行の保証債務の履行として行われているのではない上,前記[2]の利息決済資金と同様,本件貸付金は他の資金と一体となって他の金融機関への元利金の支払に充てられており,本件貸付けと他の金融機関への元利金支払との関係は明確でない。 また,G銀行が代位弁済した場合には債権者である他の金融機関の担保権を代位行使することができる可能性があったのに比べ,本件貸付けではその可能性がない。さらに,I不動産の他の金融機関に対する支払が滞れば,他の金融機関から延滞扱いをされ,G銀行の自己査定においてI不動産を要注意先とすることができなくなることに照らすと,G銀行が同社に対して他の金融機関への支払資金を貸し付けていたのは,これによりI不動産が他の金融機関への支払を続けているという外形を作ってI不動産の延命を図り,更に貸付けを繰り返すためであったと考え G銀行が同社に対して他の金融機関への支払資金を貸し付けていたのは,これによりI不動産が他の金融機関への支払を続けているという外形を作ってI不動産の延命を図り,更に貸付けを繰り返すためであったと考えられる。そうすると,G銀行の貸付金でI不動産が他の金融機関に支払をすることにより,G銀行の保証債務の一部が消滅するとしても,貸付けに見合った経済的利益がG銀行に帰属するとは認められず,このような貸付けが正当化されるとはいえない。 [4]については,本件貸付け当時,前記利益約30億円がその返済に充てられると見込まれていたものではなく,また,結果的にも,この利益が本件貸付けの返済に充てられたことはうかがわれず,むしろI不動産の運転資金とすることが予定されていたのであるから,これが本件貸付けを正当化し,あるいは,損害の発生を否定する理由とはならない。 そうすると,弁護人の主張はいずれも理由がなく,採用することができない。 (6) 結論以上から,被告人両名の行った本件貸付けが任務違背に当たることは明らかである。 7 損害G銀行とI不動産との間では,前記のとおりゼロバランス方式が採られていたこととの関係で,弁護人らは,前記6(5)と同様の論拠により,損害額の算定に問題があると主張するが,その主張に理由がないことはそこで述べたとおりである。 また,A1弁護人は,G銀行からI不動産に対する貸付けは,G銀行内部の計算上の処理にとどまるもので,G銀行からの資金の流出は,I不動産口座への記帳ではなく,I不動産から外部への支払がなされた時点とすべきであり,形式的には返済・借入れとなっていても,実質は借換えにすぎず,全額がG銀行の損害となるものではない旨主張する。 しかし,I不動産は,G銀行のグループ会社とはいえ,別の法 れた時点とすべきであり,形式的には返済・借入れとなっていても,実質は借換えにすぎず,全額がG銀行の損害となるものではない旨主張する。 しかし,I不動産は,G銀行のグループ会社とはいえ,別の法人格を有する会社であるから,I不動産に対する貸付けが,G銀行内のI不動産口座に対してなされたとしても,同銀行から資金が流出していないなどとはいえない。また,本件貸付けはいずれも貸付けとしての形式を備えており,I不動産においてその資金を運転資金や借入金の弁済などI不動産自身の使途に費消することが予定されていた上,前記のとおり回収が著しく困難であるために返済期限が各年度末とされていたと考えられるから,その全額が損害であると認められる。したがって,A1弁護人の主張は理由がなく,採用できない。 8 任務違背の認識等(1) 被告人A1の認識被告人A1は,G銀行の代表取締役社長として同銀行の貸付手続に関する内規について認識していたと認められる。 また,前記のとおり,被告人A1は,報告会議などによりI不動産の状況を把握していたこと,特に,平成7年以降,I不動産の行っていたkの事業が大幅な赤字となることを認識し,同8年末以降は同社の破綻処理方法について検討していたこと,被告人A1自身,第1回公判における被告事件に対する意見陳述において,本件貸付時に,I不動産が実質的に経営破綻状態にあったことを認めていることなどに照らすと,本件貸付け当時,同社が実質的に経営破綻の状態に陥っており,そのような状況下において,同社に対し,無担保で追加貸付けを実行すれば,その債権の回収が著しく困難になることを十分に認識していたものと認められ,また,そのような認識をしながら,あえて,その貸付けの実行を差し控えることなく,また,その債権の保全・回収のため,確実か ば,その債権の回収が著しく困難になることを十分に認識していたものと認められ,また,そのような認識をしながら,あえて,その貸付けの実行を差し控えることなく,また,その債権の保全・回収のため,確実かつ十分な担保の徴求も,その他安全確実な回収をするための適切な措置も講ずることなく,本件貸付けを行ったものと認められる。 これに対し,被告人A1は,第49回公判等において,同8年以降も報道等で地価が上昇するとの見方が出ており,被告人A1自身も地価が上昇することを期待していたなどと供述している。しかし一方,被告人A1は,第48回公判において,地価動向は,同7年の4月ころには反騰すると思っていたが,同年10月には,ちょっと様子がおかしい,反騰すると思ったがむしろ逆に動くんじゃないかと思った,同8年春ころには,予想と違って地価は上がるつもりが下がるぞ,それ以降はますます下がるというよりは横ばいで上がらないという感覚を持っていた,同8年,9年になったら,これは当分上がらない,横ばい若しくは下がり気味で推移すると考えたと供述し,支店長会議において,このような自分の見解を表明していたと供述している。その後の第49回公判においても,被告人A1は,同8年春ころには,地価は上がらないと個人的には心配していたと供述している。その他,第30回公判においても,同7年いっぱいか同8年初めくらいまでは土地の反騰があり得ると考えていたと供述しているのであって,このような供述内容からすると,被告人A1は,同8年以降地価の上昇を期待する気持ちは有していたかもしれないが,実際に地価が上がるという見通しを立てていたとは認められず,むしろ上昇しないと予測していたことが認められる。したがって,地価上昇によるI不動産の再建の見込みを信じていたとも認められない。 (2) 被告人A 上がるという見通しを立てていたとは認められず,むしろ上昇しないと予測していたことが認められる。したがって,地価上昇によるI不動産の再建の見込みを信じていたとも認められない。 (2) 被告人A2の認識被告人A2は,本件貸付け以前から,資料役員会(月2回開かれる取締役会のうちの1回で,本部各部から簡単な資料を提出して各取締役に対しその月の事業内容を説明するもの)やI不動産への貸出稟議書の決裁を通じて同社の状況を把握していたと認められること,特に,前記平成8年7月1日付けの「I不動産(株)の現状を打開するについて」と題する書面及び同月9日付け「収支見込み合計表」と題する書面(いずれも被告人A2が書斎代わりに利用していた場所から押収されている。)について説明を受けていること,平成8年12月末以降,数度にわたりI不動産について検討するための会議に出席し,同月22日に被告人A1の自宅で行われた会議では会社更生法の適用申請について発言をしていること,同9年7月8日以降は,被告人A2自ら主導してI不動産の問題に対応するなどしていることなどに照らすと,本件貸付け当時,I不動産が実質的に経営破綻の状態に陥っており,そのような状況下において,同社に対し,無担保で追加貸付けを実行すれば,その債権の回収が著しく困難になることを十分に認識していたものと認められ,そのような認識をしながら,あえて,その貸付けの実行を差し控えることなく,また,その債権の保全・回収のため,確実かつ十分な担保の徴求も,その他安全確実な回収をするための適切な措置も講ずることなく,本件貸付けを行ったものと認められる。 (3) 母体行責任など弁護人らは,被告人らは前記母体行責任を理由に本件貸付けを行ったのであるから,任務違背の認識がないとも主張するようであるが,前記( 貸付けを行ったものと認められる。 (3) 母体行責任など弁護人らは,被告人らは前記母体行責任を理由に本件貸付けを行ったのであるから,任務違背の認識がないとも主張するようであるが,前記(第4の5(4))と同様,この主張には理由がない。 9 図利加害目的(1) I不動産の利益を図る目的I不動産は,平成8年以降は他の金融機関から新たな貸付けを受けられない状況であり,G銀行からの本件貸付けがなければ利息の支払,さらには会社の存続も困難な財務状況にあり,資金繰りがひっ迫した状態だったのであるから,貸付けを受けることはI不動産の利益であるといえ,特に,本件各貸付けに対する金利は,当初から1パーセントと極めて低いもので,同9年10月7日決裁の貸出稟議書からは,0.6パーセントにまで減免されており,I不動産の金利負担は大きく削減されているのであって,本件貸付けがI不動産の利益であることは明らかである。 被告人両名は,これらを十分認識し,回収が著しく困難であるにもかかわらず,あえて貸付けを継続したものと認められるから,被告人両名にはI不動産の利益を図る目的が認められる。 (2) 被告人両名の利益を図る目的ア被告人A1についてG銀行のI不動産に対する債権は多額であり,その回収は著しく困難である一方,G銀行の財務状況も悪く,I不動産に対する債権について引当・償却処理することもできない状態であって,G銀行の経営の失敗が明るみに出れば,その代表取締役社長である被告人A1は内外からその経営責任を問われる立場にあったと認められる。また,前記のとおり,本件貸付け当時,I不動産は,G銀行以外の金融機関に対しても多額の債務を負担していたのであるから,I不動産の支払が滞れば,I不動産の実質的な経営者である被告人A1 と認められる。また,前記のとおり,本件貸付け当時,I不動産は,G銀行以外の金融機関に対しても多額の債務を負担していたのであるから,I不動産の支払が滞れば,I不動産の実質的な経営者である被告人A1が,その経営責任を問われることになったとみられる。 本件貸付けはこのような状況の中で行われたものであり,I不動産の事業の失敗やG銀行の同社への貸付けの失敗が表面化することを一時的に防ぎ,問題を先送りし,貸付けの失敗につき問題となる被告人A1の経営責任をも免れさせ,あるいはG銀行及びI不動産を経営するA家の当主である被告人A1の体面を保つという効果があったといえ,このような効果は被告人A1にとっても自明のことであったとみられる。そして,後記のとおり本件貸付けがG銀行の利益を図ったものとは認められないことをも併せ考慮すると,被告人A1には自己の利益を図る目的があったものと認められる。 なお,G銀行及びI不動産の株式はいずれも被告人A1を中心とするG銀行グループによって所有されているのであるから,その責任を追及されることは考えられないというA1弁護人の主張に理由がないことは,前記(第4の8(2)ア)のとおりである。 イ被告人A2について被告人A2は,G銀行の代表取締役副社長として,その経営に携わっていたのであり,G銀行において被告人A1に次ぐ立場にあったことは前記認定のとおりであり,I不動産及びG銀行の経営の失敗が明るみに出れば,被告人A1に準じて,内外からその経営責任を問われる立場にあったといえ,そのことは被告人A2にとっても明らかであったと認められる。そして,後記のとおり本件貸付けがG銀行の利益を図ったものとは認められないことをも併せ考慮すると,被告人A2には自己の利益を図る目的があったものと認められる。 とっても明らかであったと認められる。そして,後記のとおり本件貸付けがG銀行の利益を図ったものとは認められないことをも併せ考慮すると,被告人A2には自己の利益を図る目的があったものと認められる。 (3) G銀行に損害を加える目的本件貸付けは,前記のとおりI不動産に利益を与えるものである反面,G銀行にとっては,回収が著しく困難であり,それにもかかわらず実質的には無担保で,金利収入もほとんど得られないのであるから,損害を与えるものである。そして,被告人両名は,このような認識を有していたものと認められ,しかも前記のとおりI不動産の利益を図る目的があったものと認められるのであるから,被告人両名にはG銀行に損害を加える目的もあったものと認められる。 なお,被告人両名とG銀行の利益が同一になるものではないことは前記(第4の8(3))のとおりである。 (4) G銀行の利益を図る目的弁護人らは,前記母体行責任の考え方を前提として,本件貸付けにI不動産の利益を図る面があったことは否定しないものの,それは主たる目的ではなく,あくまでもG銀行の利益を図ることが主たる目的でなされたものである旨主張し,被告人両名もこれに沿う供述をする。すなわち,被告人らの認識では,I不動産に対する貸付けをせずに,同社を法的に整理するなどすると,平成9年ころには金融不安が非常に深刻な状態であったから,風評により取り付け騒ぎなどが起こって,G銀行が倒産する具体的な可能性が多分にあったこと,I不動産の他の金融機関に対する抵当権設定仮登記を完了する前はもちろん,その後も破産法上の否認権の関係で,1年間は,I不動産を法的に整理すると銀行間の信用を失墜し,銀行間の資金調達が困難となって,同様にG銀行が破綻する可能性が高かったこと,G銀行としても,同年4月の その後も破産法上の否認権の関係で,1年間は,I不動産を法的に整理すると銀行間の信用を失墜し,銀行間の資金調達が困難となって,同様にG銀行が破綻する可能性が高かったこと,G銀行としても,同年4月の段階で,I不動産を法的に整理するなどして同社に対する債権を不良債権として確定すると,その償却財源に乏しく,破綻する可能性が高かったことなどから,結局,I不動産に貸付けを続けるほか,G銀行の破綻の危険性を回避する方法がなかったというのである。 しかし,前記のとおり,本件当時,G銀行の財務状況が悪化していて,本件貸付けが更にその財務状況を悪化させ,信用を失わせるものであることや,G銀行の財務状況を改善する具体的な見通しもなかったことは明らかであり,被告人らはこのような事実を認識していたと認められる。 また,同8年末から同9年初めにかけて,I不動産について会社更生法を適用申請する方向で検討がなされているところ,G銀行の破綻につながるからという理由で反対された形跡がないことからすると,被告人両名を含む関係者の間では,I不動産について会社更生法を適用申請したからといって直ちにG銀行の破綻につながるとは認識されていなかったものと認められる。同年3月4日に被告人A1が近畿財務局及び日銀にI不動産の状況を報告した(前記5(3)オ)のも,金融当局の支援を得られれば,I不動産につき会社更生法の適用申請をしてもG銀行の破綻につながらないとの認識があったからであると認められる。 したがって,被告人両名において,回収が著しく困難な貸付けを継続していたのは,結局I不動産の延命を図り,認定したとおりの図利加害目的を達成するためにすぎないというべきであって,前記のような趣旨でG銀行の利益を図る目的があったとは認められない。 (5) 結論以上 結局I不動産の延命を図り,認定したとおりの図利加害目的を達成するためにすぎないというべきであって,前記のような趣旨でG銀行の利益を図る目的があったとは認められない。 (5) 結論以上から,被告人両名には,本件貸付けを行うに当たり,I不動産及び被告人両名の利益を図り,G銀行に損害を加える目的があったものと認められる。 10 共謀前記のような経緯に照らすと,本件貸付けについて被告人両名,A3,E1,E2らの間で共謀があったことは明らかに認められる。ただし,E2は平成10年2月3日にI不動産の代表取締役に就任していること,本件貸付けのうち同月26日ころ実行されたもの(別紙一覧表番号11)は同年1月30日付けの資金借入申込書に基づくものであること,同じく同年3月27日ころ実行されたもの(同番号12)は同年2月27日付けの資金借入申込書に基づくものであることを考慮すると,本件貸付けのうちE2が関与したのは同年3月27日ころ以降のものだけであると認められる。 11 結論以上から,判示第2のとおり認められる。 (法令の適用) 1 被告人A1罰条判示第1の所為行為時においては刑法60条,平成9年法律第107号による改正前の商法486条1項に,裁判時においては刑法60条,その改正後の商法486条1項に該当するが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑によることとする。 判示第2の所為包括して刑法60条,商法486条1項に該当する。 なお,別紙一覧表1ないし9については,刑法60条,平成9年法律第107号による改正前の商法486条1項に,同一覧表10ないし24については刑法60条,その改正後の商法486条1項に該当するが, なお,別紙一覧表1ないし9については,刑法60条,平成9年法律第107号による改正前の商法486条1項に,同一覧表10ないし24については刑法60条,その改正後の商法486条1項に該当するが,これらは包括して1罪となるから,包括して改正後の規定を適用する。 判示第3の所為被告人A1所有の財産を隠匿した点包括して刑法60条,96条の2に該当する。 A3所有の財産を隠匿した点刑法60条,96条の2に該当する。 判示第4の所為包括して刑法60条,96条の2に該当する。 科刑上一罪の処理判示第3について被告人A1所有財産の隠匿とA3所有財産の隠匿とは1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により1罪として犯情の重い被告人A1所有財産の隠匿についての強制執行妨害罪の刑で処断する。 刑種の選択いずれも所定刑中懲役刑を選択する。 併合罪加重刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重をする。 訴訟費用の連帯負担刑事訴訟法181条1項本文,182条 2 被告人A2罰条判示第1の所為行為時においては刑法60条,平成9年法律第107号による改正前の商法486条1項に,裁判時においては刑法60条,その改正後の商法486条1項に該当するが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑によることとする。 判示第2の所為包括して刑法60条,商法486条1項に該当するなお,別紙一覧表1ないし9については,刑法60条,平成9年法律第107号による改正前の商 によることとする。 判示第2の所為包括して刑法60条,商法486条1項に該当するなお,別紙一覧表1ないし9については,刑法60条,平成9年法律第107号による改正前の商法486条1項に,同一覧表10ないし24については刑法60条,その改正後の商法486条1項に該当するが,これらは包括して1罪となるから,包括して改正後の規定を適用する。 刑種の選択いずれも所定刑中懲役刑を選択する。 併合罪加重刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第2の罪の刑に法定の加重をする。 刑の執行猶予情状により刑法25条1項を適用する。 訴訟費用の連帯負担刑事訴訟法181条1項本文,182条(量刑の理由) 1 本件は,G銀行代表取締役社長であった被告人A1及び同副社長であった被告人A2が,G銀行のグループ会社2社に対し,各社の代表取締役らと共謀の上,各社及び自己の利益を図るなどの目的で,それぞれ25億円及び約68億円の合計約93億円余りを不正に貸し付け,G銀行に合計約86億円余りの財産上の損害を加えたという各特別背任(判示第1及び第2,以下判示第1を「Hハウジング案件」,判示第2を「I不動産案件」ともいう。)と,被告人A1が,G銀行の破綻後,商法266条1項に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求債権を被保全債権とする仮差押え等の強制執行を免れるため,自己及びA3の財産合計2億7900万円を隠匿したという各強制執行妨害(判示第3及び第4)の各事案である。 2 本件各特別背任事件についてみると,被告人両名が行った各貸付けは,Hハウジング案件については,一度に25億円もの金額を貸し付けたというものであり,I不動産案件については,約2年間,前後24回にわ 2 本件各特別背任事件についてみると,被告人両名が行った各貸付けは,Hハウジング案件については,一度に25億円もの金額を貸し付けたというものであり,I不動産案件については,約2年間,前後24回にわたり,継続的に不正な貸付けを繰り返し,その金額は合計約68億円に達するというものである。これらの合計額は約93億円という巨額に上り,本件のような乱脈融資を原因の一つとして,G銀行は多額の不良債権を抱えて破綻に至ったのであり,社会に与えた影響も大きく,誠に重大な犯行である。 Hハウジング案件は,前記のとおり,Hハウジングが債務超過に陥っていて再建の見通しはなく,A3がHハウジングを整理することも考えられると進言したりしたことなどがあったにもかかわらず,被告人A1は,G銀行の適正な手続を無視して取締役会に付議することもせずに貸付けを決定し,被告人A2もこれに追従したものである。I不動産案件は,前記のとおり,I不動産が多額の債務を抱えて再建の見通しがなく,その対策を検討する会議においても多くの関係者が会社更生法の適用申請を是とし,日銀及び近畿財務局に相談に行った際も,これらに了承を得られる方向での回答が得られるなどしていたにもかかわらず,被告人A1においては結論を先延ばしにし,被告人両名において,回収が著しく困難な貸付けを継続したものである。これら本件各貸付行為は,公共的使命を有する銀行の経営者としてあってはならないものであり,犯情は悪質である。 G銀行及びそのグループ会社は,A家の同族会社という色彩が濃厚であったところ,本件各特別背任は,いずれも,G銀行の代表取締役社長及びA家の当主として,いわばワンマン経営を行っていた被告人A1と,同銀行の代表取締役副社長及び被告人A1の次弟として,被告人A1に次ぐ地位にあった被告人A2が,同銀行に対す G銀行の代表取締役社長及びA家の当主として,いわばワンマン経営を行っていた被告人A1と,同銀行の代表取締役副社長及び被告人A1の次弟として,被告人A1に次ぐ地位にあった被告人A2が,同銀行に対する支配力を背景に,身内ともいえる各グループ会社に対して不正に巨額の貸付けを行ったものである。G銀行では,関連事業部という特別部を設け,グループ会社に対し,他の行員の関与を最小限度に抑え,実質的には被告人A1の判断によって決定し,被告人A2がこれに同調して貸付けを行ってきたのであって,本件各特別背任も,これら問題のある業務運営の一環として行われたものということができ,このような被告人両名の経営姿勢は厳しく非難されるべきである。 本件の背景として,バブル経済とその崩壊,特に地価の著しい高騰と下落,長期にわたる景気の低迷といった経済情勢や,それに伴う金融行政の変遷があったこと,また,このような状況下において,G銀行のみならず,我が国の多くの金融機関が業績を悪化させ,中には破綻に至ったものもあったことが認められる。しかし,銀行には,その公共性にかんがみ,経済情勢の変動などにも耐え得るように堅固な財務内容を保持すべきことや,貸付けに当たってはその回収可能性に慎重な配慮をすべきであることが要請されているのであって,前記の点が本件を正当化するものではないことは明らかである。 3 被告人A1は,G銀行の社長という最高責任者の地位にあった上,同銀行のグループ会社についても掌握しており,各グループ会社の代表取締役等から詳細な報告を求めたり,経営に関する指示命令を与えるなどしていたもので,本件においても,HハウジングやI不動産は,実質的には被告人A1が経営していたと評価できる状態であった。そして,Hハウジング案件についてもI不動産案件についても,前記の各経緯があ どしていたもので,本件においても,HハウジングやI不動産は,実質的には被告人A1が経営していたと評価できる状態であった。そして,Hハウジング案件についてもI不動産案件についても,前記の各経緯があり,最終的には被告人A1の判断により本件各貸付けがなされたことからすると,被告人A1は,主導的な立場にあったと認められ,その果たした役割は他の者とは比較にならないほど大きい。 本件各貸付けは,長年にわたりG銀行の最高責任者の地位にあった被告人A1が,自ら実質的に経営・支配してきた各社が実質的に破綻していたのにその延命を図るとともに,これまで各社に進めさせた事業の失敗やこれに対する貸付けの失敗の表面化を避け,自らの保身をも図る目的で行われた悪質な行為であって,厳しく非難されなければならないというべきである。 また,被告人A1は,公判廷において,G銀行を経営破綻させたことについて道義的責任を感じるとしつつも,各特別背任事件について自己の刑責を逃れようとする態度をとっており,真摯な反省悔悟の情も認め難い。 判示第3及び第4についてみると,被告人A1は,G銀行の破綻により商法266条1項の責任を追及される危険があると察知するや,これを免れようと,G銀行が破綻したわずか4日後から約4か月の間に,前後7回にわたって,自己の現金合計2億2900万円及びA3の現金5000万円を隠匿したというものである。被告人A1は,破綻したG銀行の代表取締役社長としての責任を忘れ,自分たちの個人的な生活保持を目的として犯行に及んだものとみられるのであって,その自己中心的な動機に酌量の余地は乏しい。また,隠匿金額は極めて多額である上,犯行態様も,多数の親族と共謀し複数の隠匿場所を確保して同種行為を繰り返したり,仮差押えに備えて自宅内に隠匿し,それにより執行官による差押 に酌量の余地は乏しい。また,隠匿金額は極めて多額である上,犯行態様も,多数の親族と共謀し複数の隠匿場所を確保して同種行為を繰り返したり,仮差押えに備えて自宅内に隠匿し,それにより執行官による差押えを逃れた現金を更に隠匿するなどしており,悪質である。さらに,このような強制執行妨害行為は民事執行制度の実効性を失わせ,司法に対する信頼を揺るがせるものである上,破綻した金融機関の処理のため公的機関が旧経営陣の責任追及に関与して損害回復を図ろうとしているところ,被告人A1の行為はこれを阻害するものであることなどをも併せ考慮すると,犯情は甚だ悪い。 以上によれば,被告人A1の刑事責任は極めて重大であるといわざるを得ない。 一方,被告人A1は,これまでG銀行の業績伸長,業容拡大等に尽力し,被告人A1なりに経営努力を行ってきたこと,G銀行が破綻し,また本件が広く報道されるなどしたことにより,長年にわたって築き上げてきた社会的地位,信用,名声を失うなど,一定の社会的制裁を受けていること,これまでに前科前歴はなく,犯罪と無縁の生活を送っていたこと,強制執行妨害事件については事実をすべて認めて反省の弁を述べていること,隠匿した財産のうち被告人A1所有の現金については,税金の支払に充当されたものを除いた約4100万円が供託されていること,道義的責任を感じているとし,被告人A1所有の不動産や美術品等の動産を競売又は任意売却した代金合計約3億5100万円余りが,商法266条1項5号に基づく損害賠償の内金として支払われるなど私財提供をしていること,被告人A1のG銀行に対する預金1億6400万円余りが相殺されていること,その他にもJ4商店に賃貸していた被告人A1所有土地の任意売却に協力(譲渡所得税の負担)していること,既に75歳と高齢であり,心筋梗塞を患い心 に対する預金1億6400万円余りが相殺されていること,その他にもJ4商店に賃貸していた被告人A1所有土地の任意売却に協力(譲渡所得税の負担)していること,既に75歳と高齢であり,心筋梗塞を患い心臓の一部が壊死したため,現在も体調が思わしくないことなど,被告人A1のために酌むべき事情も存在する。 しかしながら,これらの事情を最大限斟酌しても,前記のとおり被告人A1の責任は重大であるといわざるを得ず,実刑を免れることはできないのであって,主文の刑に処するのが相当であると判断した。 4 被告人A2は,当初G銀行の社長となるべく,被告人A1に先んじてG銀行に入行したため,銀行業務に精通しており,代表取締役副社長としてもA家の当主の次弟としても,被告人A1に次ぐ地位にあった上,債権管理の責任者の職歴を有するなど貸付審査の重要性について熟知していたにもかかわらず,本件貸付けに加担したものであって,その果たした役割は軽視できない。 被告人A2は,Hハウジング案件については,回収が著しく困難な貸付けであることを知りながら,本件貸付けに異を唱えることなく,自己保身等の目的から安易に貸出稟議書の決裁をしており,I不動産案件においては,会議等に参加して会社更生法の適用申請が望ましいとの意見を述べ,平成9年7月ころからは,自らその処理について采配を振るなど積極的に関与しながら,本件貸付けを続けていたものであって,長年にわたり被告人A1とともにG銀行を経営してきた者としては厳しく非難されなければならない。 さらに,被告人A2も,公判廷において,自己の刑責を逃れようとする態度をとり続けており,その供述態度からは,真摯な反省悔悟の情は認められない。 以上によれば,被告人A2の刑事責任は重い。 しかしながら,G銀行においては,被告人A1を中心とする体制 ようとする態度をとり続けており,その供述態度からは,真摯な反省悔悟の情は認められない。 以上によれば,被告人A2の刑事責任は重い。 しかしながら,G銀行においては,被告人A1を中心とする体制が確立しており,被告人A2も,被告人A1に対しては追従的な立場にあったことが認められ,その刑事責任は被告人A1に比べれば小さいというべきである。また,被告人A2は,これまで被告人A2なりにG銀行の業績伸長,業容拡大等に尽力してきたこと,G銀行の破綻や,本件が広く報道されるなどしたことにより,長年にわたって築き上げてきた社会的地位,信用,名声を失うなど一定の社会的制裁を受けていること,これまで前科前歴がなく,犯罪と無縁の生活を送っていたこと,被告人A1において上記のとおり私財提供をしていること,既に73歳と高齢であることなど,被告人A2のために酌むべき事情も存在する。 そこで,以上を総合考慮し,被告人A2に対しては,主文のとおり刑を量定した上,その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 5 よって,主文のとおり判決する。 (求刑・被告人A1に対し懲役7年6月,被告人A2に対し懲役4年)平成15年3月28日大阪地方裁判所第13刑事部裁判長裁判官傳田喜久裁判官地引広裁判官田辺麻里子別紙一覧番号犯行年月日(平成・ころ) 被害金額(円) 1 9年 4月28日 461,700,000 2 9年 5月12日 262,300,000 3 9年 5月29日 834,100,000 4 9年 6月27日 641,000,000 5 9年 7月30日 日262,300,000 39年5月29日834,100,000 49年6月27日641,000,000 59年7月30日202,700,000 69年8月28日300,800,000 79年9月29日362,300,000 89年10月30日206,800,000 99年11月27日142,700,000 109年12月26日447,400,000 1110年2月26日355,600,000 1210年3月27日379,700,000 1310年5月12日174,300,000 1410年5月28日180,700,000 1510年6月29日201,300,000 1610年7月30日145,800,000 1710年8月28日122,100,000 1810年9月29日213,600,000 1910年10月29日107,200,000 2010年11月27日156,800,000 2110年12月28日267,000,000 2211年2月17日216,900,000 2311年2月25日203,000,000 2411年3月30日233,900,000 合計819,700,000 3月30日 233,900,000合計 819,700,000
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