昭和52(行コ)5 懲戒戒告処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
昭和57年3月10日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】○ 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 ○ 事実 控訴代理人らは、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和四一年一二月二六日付で控 訴人に対してした懲戒戒告処分を取り消す。訴訟費用は

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判決文本文4,258 文字)

○ 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 ○ 事実 控訴代理人らは、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和四一年一二月二六日付で控 訴人に対してした懲戒戒告処分を取り消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人 の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人らは、控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の事実上の主張は、左記のとおり付加、訂正するほか、原判決の事実摘 示と同一であるので、これを引用する。 (控訴人) 一 本件組合掲示板は、物品管理法二条にいう物品であるから、これにつき国有財 産法一八条三項の適用はない。 本件組合掲示板が国有財産法三条にいう行政財産であるか、それとも物品管理法二 条にいう物品であるかは、右掲示板が足立税務署庁舎という不動産の従物かどうか により決せられるものであるところ、右掲示板は、分会が使用し、庁舎所有者が使 用することを全く目的としていないから、主物である庁舎の常用に供せられたもの とはいえず、とうてい庁舎の従物ということはできない。本件組合掲示板は、庁舎 とは別個の所有権の客体で、庁舎とは釘で附着させられているに過ぎないものであ るが、仮に、原判決の判示するように、廊下のコンクリート壁面に凹みをつくつて はめ込み接着させたものであるとしても、右掲示板は、なお、国有財産法による行 政財産に当らず、物品管理法にいう物品に当るものというべきである。 二 仮に、本件組合掲示板が国有財産法に定める行政財産であるとしても、これに つき私法上の使用権を設定することを国有財産法が禁じているものではない。 右掲示板が分会に貸与されるに当つて、分会は使用許可願を提出するなど特別の法 的手続をとつてはおらず、又足立税務署長(以下「署長」という。)が分会に対 し、許可証を交付したことも、使用料を徴収したこともない。従つて、本件組合掲 示板の使用関係は、 用許可願を提出するなど特別の法 的手続をとつてはおらず、又足立税務署長(以下「署長」という。)が分会に対 し、許可証を交付したことも、使用料を徴収したこともない。従つて、本件組合掲 示板の使用関係は、私法上の無名契約によるものというべきである。 三 本件組合掲示板が分会に貸与された後は、その貸与の法的性格が行政処分とし ての「許可」であれ、私法上の「無名契約」であれ、基本的人権としての憲法二八 条の定める団結権行使の場となるものであるから、右掲示板に庁舎管理権は及ぶも のではない。 仮に、原判決が判示するように、右掲示板の貸与、使用について、国有財産法一八 条三項にいう「その用途又は目的を妨げない限度において」という制約をうけると しても、それは、「組合掲示板としての使用方法、態様においてなされることを要 する。」趣旨と解すべきで、「庁舎設置の目的達成に障害とならない方法、態様に おいてなされることを要する。」趣旨と解すべきではない。 四 仮に、本件組合掲示板に庁舎管理権が及び、その使用は、庁舎設置の目的達成 に障害とならない方法、態様においてなされるという制約を受けるとしても、署長 が自力救済の方法により本件掲示板を撤去することは違法である。 自力救済が許されるのは、緊急の事情があつて、後に裁判所の保護を求めることが 不可能または甚しく困難となる場合に限られると解すべきであるから、本件の場合 に署長の自力救済を肯認すべき何らの事情も存在しない。 従つて、控訴人らが署長の撤去行為に抗議したことはもとより正当であり、違法な 右撤去を容易ならしめるために出された職場復帰命令は違法であるから、これに従 うべき義務はない。 (被控訴人) 一 右主張はいずれも争う。 二 1本件組合掲示板は、国有財産法上の行政財産であり、行政財産について私法 上の使用関係を設定することができないことは あるから、これに従 うべき義務はない。 (被控訴人) 一 右主張はいずれも争う。 二 1本件組合掲示板は、国有財産法上の行政財産であり、行政財産について私法 上の使用関係を設定することができないことは、同法一八条一ないし三項により明 らかである。なお、被控訴人が右掲示板を分会に貸与したのは、昭和三六年七月で 国有財産法の改正前であるが、その貸与が行政処分である許可により行われたこと には変りはない。 2 本件掲示紙は、その内容において国家公務員法九八条二項、一〇二条一項の規 定に違反するものであり、分会は、署長の再三にわたる撤去要求に応じなかつたの で、署長は止むなくその撤去を行つたものであるから、被控訴人の行為には何らの 違法もない。 ○ 理由 一 請求原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。 二 本件処分の理由とされた控訴人の昭和四一年一〇月一四日及び一五日における 行動については、左記のとおり付加、訂正のうえ、原判決の理由説示二1(第一九 丁表五行目から第二一丁裏二行目まで)を引用する。 1 第一九丁裏七行目の「原告本人尋問の結果」を「控訴人本人尋問の結果(原 審)」に、九行目の「原告本人尋問の結果」を「控訴人本人尋問の結果(原審及び 当審)」にそれぞれ改める。 2 第二〇丁裏三行目の「できなかつた。」を「できず、」に改め、その次に 「「秋斗四大要求獲得」及び「最低賃金制」は、掲示板から取りはずしはしたもの の、控訴人らに奪われ、これを保管するには至らなかつた。」を加える。 三 1 本件組合掲示板が昭和三六年七月足立税務署庁舎が新築された際、当局が 設置して分会に使用を許したものであることは、控訴人の明らかに争わないところ であり、成立に争いのない乙第六号証の一、二、乙第二三号証の一、二、第二四号 証によれば、右掲示板は、緑色の布地を張つたベニア板に木枠をめぐら 用を許したものであることは、控訴人の明らかに争わないところ であり、成立に争いのない乙第六号証の一、二、乙第二三号証の一、二、第二四号 証によれば、右掲示板は、緑色の布地を張つたベニア板に木枠をめぐらした縦九一 センチメートル、横一九〇センチメートルのもので、同庁舎一階正面ホールから食 堂に通じる廊下のコンクリート壁に凹みを作つてはめ込み接着させ、行政財産であ る右庁舎の一部をなしていることが認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。 2、当局が分会に対し、右掲示板の使用を許した際、分会から当局宛に右掲示板の 使用願いを提出し、当局がこれを書面により許可する形式をとらなかつたことは、 弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。 控訴人は、右掲示板は物品管理法二条にいう物品であり、仮にこれが被控訴人の主 張するように国有財産法三条にいう行政財産であるとしても、分会は、署長との私 法上の契約(無名契約)によりその使用権を取得したと主張し、被控訴人は、右主 張を争い、右掲示板は、国有財産法三条の行政財産であつて、分会への使用許可 は、同法一八条三項の規定に基づく行政処分であると主張するのであるが、証人A の証言(原審)によれば、右掲示板は、分会の組合活動に対する便宜のため提供さ れたものであり、右提供に当つては、前記認定のように、分会の使用願いに対する 当局の書面による許可の形式がとられなかつたことを併せ考えろと、右提供は、署 長が庁舎管理権に基づき、庁舎の一部である本件組合掲示板を分会の組合活動のた め、事実上その使用を許したに過ぎないものというべきである(組合掲示板の利用 関係を私法上の無名契約と解する説にも、また、国有財産法一八条三項に基づく行 政処分と解する説にも左祖しない。)。従つて、分会の右掲示板の利用について は、掲示板の維持、保全の目的や公務秩序に違反しないことを 私法上の無名契約と解する説にも、また、国有財産法一八条三項に基づく行 政処分と解する説にも左祖しない。)。従つて、分会の右掲示板の利用について は、掲示板の維持、保全の目的や公務秩序に違反しないことを当然の制約としてお り、その使用がこれに反するときは、署長は、庁舎管理権に基づき、その違反状態 除去のため、適宜の措置を採りうると解するのが相当である。 3 ところで、組合掲示板は、労働組合の指令、意思、情報等の伝達の媒介体とし て、団結の維持、確保等労働組合活動に重要不可欠の役割を果すものであることは 控訴人の主張するとおりである。従つて、本件組合掲示板の利用関係を前記認定の とおり考えるとしても、署長が庁舎管理権に基づき、分会の意思に反してもその掲 示物を撤去しうるのは、その掲示行為が明らかに違法であつて、しかもその違法状 態を緊急に排除しなければならない特段の事情の存在することを必要とするといわ なければならない。 四 そこで、本件掲示物の撤去の正当性について判断する。 当裁判所は、当審における証拠調べの結果を考慮しても、本件掲示紙及びその掲示 行為は明らかに違法であり署長が庁舎管理権に基づき緊急にその撤去をすることを 許容すべき特段の事情が存在し、これを妨害する控訴人らに対し、職場復帰命令を 出したことには何らの違法もなかつたと判断するものであつて、その理由は、原判 決の理由説示中第二三丁裏八行目から第三〇丁裏六行目までと同一であるので、こ れを引用する。 五 以上によれば、控訴人の所為は、国公法九八条一項、九九条、一〇一条一項前 段の各規定に違反し、同法八二条各号の規定に該当し、その態様、程度に照らし、 被控訴人が懲戒処分として戒告処分を選択したことは相当と認められる。 六 控訴人は、本件処分が処分権の濫用であり、不当労働行為に当ると抗争する が、右主張は、前記各認定 該当し、その態様、程度に照らし、 被控訴人が懲戒処分として戒告処分を選択したことは相当と認められる。 六 控訴人は、本件処分が処分権の濫用であり、不当労働行為に当ると抗争する が、右主張は、前記各認定に照らし、失当である。 七 以上によれば、控訴人の本訴請求は理由がないから、これを棄却した原判決は 相当であつて本件控訴は理由がなく、これを棄却すべきものである。 よつて、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとお り判決する。 (裁判官 鰍澤健三 枇杷田泰助 野崎幸雄)

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