平成21(行コ)28 違法公金支出による損害賠償履行請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成22年10月27日 仙台高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文9,161 文字)

- 1 - 主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 訴訟の総費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,Aに対し,3万1500円の支払を請求せよ。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,いわき市(以下,単に「市」という。)の住民である控訴人らが,市出身で地元選出の福島県議会議員の同県議会議長就任等を新聞紙上で祝賀する企画に協賛する内容の「いわき市水道局」名の新聞広告の掲載について,平成17年4月28日にされた広告料3万1500円の支出(以下「本件支出」という。)が政治的中立性を害する違法なものであるなどと主張して,被控訴人に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当時の市水道事業管理者であったAに対し,上記支出相当額の損害賠償請求をすることを求めた事案である。 原判決は,本件支出は違法とはいえないとして控訴人らの請求を棄却したが,控訴人らが控訴し,差戻し前の控訴審判決(当庁平成▲年(行コ)第▲号)は,本件支出は違法であると判断して控訴人らの請求を認容した。これに対し,被控訴人が上告受理申立てをしたところ,最高裁判所はこれを受理し,上告審判決(同裁判所平成▲年(行ヒ)第▲号同21年12月3日第一小法廷判決)は,地方公営企業の管理者の権限に属する財務会計上の行為を補助職員が専決により処理した場合,管理者は,同補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によりこれを阻止しなかったときに限り,普通地方公共団体に対し,同補助職員がした財務会計上の 合,管理者は,同補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によりこれを阻止しなかったときに限り,普通地方公共団体に対し,同補助職員がした財務会計上の違- 2 -法行為により当該普通地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当であるから,本件において,Aが,専決権者として本件支出をした補助職員の財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によりこれを阻止しなかったかどうかを確定しなければ,本件支出についてのAの損害賠償責任の有無を判断することができず,本件支出が違法であるということから直ちに控訴人らの請求を認容することはできないとした上,Aに上記の帰責事由が存するか否かについて更に審理を尽くす必要があるとして,上記控訴審判決を破棄し,本件を当審に差し戻した。 2 前提事実次の(1)の事実は当事者間に争いがなく,(2)~(9)の各事実は,各事実ごとにそれぞれ掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 (1) 市水道事業は,市の水道事業及び簡易水道事業を行うために地方公営企業法(以下「法」という。)に基づいて設置された,市が経営する地方公営企業であり,その業務を執行させるために市に管理者(市水道事業管理者。以下単に「管理者」という。)が置かれている(法7条)。市水道局は,管理者の権限に属する事務を処理させるために設けられた組織である(法14条)。 (2) Aは,平成14年12月1日から平成17年9月27日まで管理者を務めていた。また,Bは,平成17年3月ないし同年4月当時,市水道局の経営管理課長の職にあった者であり,法10条に基づき制定されたいわき市水道局職務権限規程(昭和51年いわき市水道局管理規程第9号。乙 ていた。また,Bは,平成17年3月ないし同年4月当時,市水道局の経営管理課長の職にあった者であり,法10条に基づき制定されたいわき市水道局職務権限規程(昭和51年いわき市水道局管理規程第9号。乙2。以下「職務権限規程」という。)20条,別表第2の規定により,本件支出のような200万円未満の広告料の支出命令及び支出につき専決権限を有していた。 (乙2,22,23)(3) 広告会社である株式会社C(以下「本件広告会社」という。)の担当者は,平成17年3月29日,市水道局の経営管理課の担当者に対し,L衆議院議- 3 -員(以下「L議員」という。)の自由民主党福島県支部連合会会長就任祝いと,D福島県議会議員(以下「D議員」という。)の同県議会議長就任祝いとの2種類の新聞広告の企画趣意書等(乙4の1~4)を送付し,市水道局の協賛広告の掲載を勧誘した。 これに対し,経営管理課の課長補佐であったEは,L議員に関しては,市水道局として特定の政党の役員就任祝いにつき協賛広告を掲載することは適当でないから,市出身で地元選出のD議員の福島県議会議長就任祝いに対してのみ協賛広告を掲載すべきであるとする意見をBに具申したところ,Bも当該意見のとおりであると判断し,経営管理課の担当者を通じ,その旨を本件広告会社の担当者に伝えた。(乙3,4の1~4,原審証人E)(4) 経営管理課の担当者は,平成17年3月30日,本件広告会社の担当者から「御礼と契約内容のご確認」と題する書面(乙5の1,2)の送付を受けた。この書面には,「ご請求金額:31,500円」との記載があり,また,市水道局による協賛広告の原稿内容(単に「いわき市水道局」とのみ表示されているもの)の記載はあったものの,被祝賀者に関する記事や祝賀の文言等及び他の協賛広告掲載者による協 円」との記載があり,また,市水道局による協賛広告の原稿内容(単に「いわき市水道局」とのみ表示されているもの)の記載はあったものの,被祝賀者に関する記事や祝賀の文言等及び他の協賛広告掲載者による協賛広告の部分等を含んだ祝賀広告の企画全体の表示内容を示す記載はされていなかった。(乙5の1,2,原審証人E)(5) 平成17年3月31日,F新聞福島全県版に,原判決添付別紙のとおりの新聞広告(以下「本件広告」という。)が掲載された。本件広告は,紙面の下方5段分を頁の左右全体にわたって一体として使用し,その全体が大きな長方形の太い線の枠で囲まれ,その上部中央部分の左側に,「祝 L氏自民党県連会長就任」との祝賀文言の下にL議員の略歴や業績,抱負等が記載された部分(以下「L議員祝賀部分」という。)があり,また,上部中央部分右側に,「祝 D氏福島県議会議長 G氏福島県議会副議長就任」との祝賀文言の下に上記両県議会議員の略歴や抱負等が記載された部分(以- 4 -下「D議員等祝賀部分」という。)がある上,これら両部分の両側や下方に協賛広告のための長方形の小さな枠が多数設けられ,その枠内に協賛広告掲載者の名前等が記載されているものであって,L議員祝賀部分とD議員等祝賀部分とは接しているものの,装飾された直線で区分されており,また,市水道局の協賛広告は,紙面右側のD議員等祝賀部分の下方でこれに接して掲載されており,「いわき市水道局」という文字のみが太字で表示されているものであった。(甲1)(6) 平成17年4月28日,Bの専決決裁により,広告料3万5000円の支出命令及び支出(本件支出)が行われた。(乙7の1~3)(7) 控訴人らは,平成17年5月27日付けで,本件支出が公務員の政治的中立性を害する違法なものであるとして ,広告料3万5000円の支出命令及び支出(本件支出)が行われた。(乙7の1~3)(7) 控訴人らは,平成17年5月27日付けで,本件支出が公務員の政治的中立性を害する違法なものであるとして,市監査委員に対し,本件支出のてん補等必要な措置を求める住民監査請求(以下「本件住民監査請求」という。)をした。市監査委員は,同年7月25日付けで,市水道局は,D議員の県議会議長就任祝いの広告のみを依頼したところ,上記依頼は,社交儀礼的な意味でされたもので政治的中立性を害するとはいえないとの理由で本件住民監査請求を棄却したものの,市長に対し,本件支出には,例えば郷土の誇りとなるスポーツ選手の活躍などに対する祝賀広告とは異なり,様々な受け止め方があると考えられ,事務処理に当たっては慎重に対応するよう要望する旨の意見を提出した旨を付言した。(甲2,3)(8) 市水道局は,平成17年6月6日,本件住民監査請求がされたことを踏まえ,誤解を招く支出を回避するため,また,市水道局における昨今の厳しい経営状況を考慮して,今後は直接「水」に関する内容以外の新聞広告は一切掲載しない旨を決定した。(乙8)(9) なお,市水道局においては,本件広告以前に,次のとおり,本件広告と同様の体裁による国会議員の公職就任祝賀についての協賛広告を掲載し,B又はその前任者の専決決裁により,広告料の支出を行っていた。これらのうち,- 5 -Aが管理者に就任した後に掲載されたのはエのみであり,Bを専決決裁者として支出されたのはウ及びエである。(乙10・11の各1~4,乙12~19の各1~5,乙20)ア L衆議院議員通産総括政務次官就任祝賀協賛広告平成12年8月11日付けH,同年9月12日付けIに掲載同年9月7日,同年10月5日に 2~19の各1~5,乙20)ア L衆議院議員通産総括政務次官就任祝賀協賛広告平成12年8月11日付けH,同年9月12日付けIに掲載同年9月7日,同年10月5日に各1万0500円を支出イ L衆議院議員財務金融委員長就任祝賀協賛広告平成14年2月10日付けH,同月15日付けI,同年3月2日付けJに掲載同年3月7日,同月14日,同月28日に各1万0500円を支出ウ K参議院議員国土交通大臣政務官就任祝賀協賛広告平成14年11月16日付けJ,同月17日付けI,同日付けHに掲載平成14年12月12日に各1万0500円を支出エ L衆議院議員経済産業副大臣就任祝賀協賛広告平成15年12月24日付けH,同月25日付けIに掲載平成16年2月19日,同年1月22日に各1万0500円を支出 3 主な争点及び当事者の主張当審における本件の主な争点は,Aが,本件支出につき専決権者であったBの財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によりこれを阻止しなかったかどうか(指揮監督上の帰責事由の有無)であり,この点に関する当事者の主張は,次のとおりである。 (1) 控訴人らの主張ア本件広告の掲載は平成17年3月31日に,本件支出は同年4月28日にそれぞれされたものであるところ,この間の28日間にAは本件広告を少なくとも市水道局で現認しているはずである。すなわち,掲載後に本件広告会社から市水道局に見本版が送付され,Bは,これを目にして,本件- 6 -広告には,注文を断ったはずのL議員に関する就任祝いの部分(L議員祝賀部分)も併せて掲載されていることを認識し,市水道局による協賛 市水道局に見本版が送付され,Bは,これを目にして,本件- 6 -広告には,注文を断ったはずのL議員に関する就任祝いの部分(L議員祝賀部分)も併せて掲載されていることを認識し,市水道局による協賛広告が政治的中立性を害することも認識していたというべきである。そして,職務権限規程5条(5)は,自己の権限内の事項であっても特に重要な事項に該当するものについては上司の決裁を受けなければならないと定め,同規程4条(9)によれば,ここにいう「特に重要な事項」には政治性を伴う事項が含まれているから,Bは,Aに本件広告の見本版を添付してその掲載経過を上申しているはずである。しかるに,Aは,本件支出を阻止しなかったのであるから,指揮監督上の義務違反がある。 イ仮にBが上記アのような上申をしなかったとしても,市水道局が当時定期購読していた新聞にはF新聞も含まれていたというのであるから,Aは本件広告を現認していたはずであり,それにもかかわらず,本件支出を阻止しなかった点で指揮監督上の義務違反がある。 ウ仮にBが上記アのような上申をせず,Aが上記イのように本件広告の現認もしていなかったとすれば,Bが上記上申をしなかったことは職務権限規程に違反していることが明白であり,Aにはこれを把握できなかった点で指揮監督上の義務違反がある。また,Aには定期購読紙に大きく掲載された本件広告を見過ごしたこと自体において過失がある。 (2) 被控訴人の主張ア Aは,自宅ではF新聞を購読しておらず,本件支出の専決権者がBである以上,本件広告の見本版がAに回覧されることはなく,Bから控訴人らが主張するような上申を受けたこともなかったから,本件支出に先立って本件広告が掲載された事実自体を認識しておらず,本件住民監査請求を受けるまで本件支出がされた に回覧されることはなく,Bから控訴人らが主張するような上申を受けたこともなかったから,本件支出に先立って本件広告が掲載された事実自体を認識しておらず,本件住民監査請求を受けるまで本件支出がされたことも知らなかったものであって,同人に本件支出を阻止すべき指揮監督上の義務の違反はない。なお,市水道局は,従前から専決権者である経営管理課長の決裁で市出身者の公職就任祝いの協- 7 -賛広告を掲載していたし,本件広告についても,L議員祝賀部分とD議員等祝賀部分とは中央の装飾線で区切られ,市水道局の協賛広告はD議員等祝賀部分に接する位置に掲載されていたのであるから,Bは本件支出が政治性を伴う事項と考えていなかったのであり,そのこと自体によってBが職務権限規程に違反したといえるものではない。 イ F新聞は,本件広告の掲載当時,市水道局が定期購読していた全国紙6紙,地方紙4紙中の1紙にすぎない上,本件広告が掲載された日は,朝から出向者や退職者の辞令交付式等が実施されていて,Aは全ての新聞紙面に目を通せる状況ではなく,実際に本件広告を目にすることもなかった。 ウ補助職員に財務会計上の行為を専決させている場合において,管理者が損害賠償責任を負うのは,専決権者による個別具体的な財務会計行為の違法を阻止すべき指揮監督上の義務に違反したときに限られ,上司の部下に対する一般的抽象的な指揮監督義務に違反したというだけでは足りない。 控訴人らの主張ウは,一般的抽象的な任命責任や指揮監督責任を問題にするものに過ぎず,失当である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,Aが,本件支出につきBの財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によりこれを阻止しなかったものと認めることはできず,控訴人らの本件請求は理由がないも 1 当裁判所は,Aが,本件支出につきBの財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によりこれを阻止しなかったものと認めることはできず,控訴人らの本件請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。 2 AにBの専決決裁による本件支出を阻止しなかったことについて指揮監督上の義務違反及び故意・過失があったと認めるためには,①Aが本件支出に先立って本件広告の掲載を認識していたこと,②Aが,本件広告中の市水道局による協賛広告が違法なものと認識していたか,又は管理者として通常要求される注意を払えばそのような認識を持つことができたのに,そのような注意を怠って認識しなかったことを控訴人らにおいて立証する必要がある。 - 8 -3(1) そこで,検討するに,本件に顕れた全証拠によっても,Aが本件支出に先立って本件広告の掲載を認識していたと認めるには至らない。 (2) この点につき,控訴人らは,本件広告には,Bが政治性があると判断して掲載を断ったL議員の自由民主党福島県支部連合会会長就任祝いの部分(L議員祝賀部分)も併せて掲載されているから,市水道局による協賛広告は政治的中立性を害するもので,これに対する広告料の支出は,職務権限規程4条(9)の「政治性を伴う事項」に当たり,Bとしては同規程5条(5)に基づいてAに本件広告を添付して決裁を求めたはずであるとした上,それにもかかわらず,Aが本件支出を容認して,これを阻止すべき義務に違反したと主張する。そして,本件職務規程(乙2)には,自己の権限内の事項であっても特に重要な事項に該当するものについては上司の決裁を受けなければならないとの規定(5条(5))及び政治性を伴う事項が「特に重要な事項」に当たる旨の規定(4条(9))がある。 しかし, ても特に重要な事項に該当するものについては上司の決裁を受けなければならないとの規定(5条(5))及び政治性を伴う事項が「特に重要な事項」に当たる旨の規定(4条(9))がある。 しかし,証拠(乙7の1・3)によれば,本件支出に係る支出伝票,振替伝票のいずれにもAの決裁印はないことが認められるほか,BがAに決裁を求めたことを認める証拠はない。かえって,Bの陳述書(乙22)によれば,同人は,市水道局の協賛広告に係る本件支出が政治性を伴う事項とは考えなかったため,Aに相談することなく,Bの専決により本件支出を決裁したことが認められる(なお,当時,市水道局経営管理課長補佐であった原審証人Eが,D議員に関する協賛広告は,地元選出議員の公職就任を祝う社交儀礼の範囲内のもので違法でないと認識した上で,本件広告は,イメージとは若干異なるものの,L議員祝賀部分とD議員等祝賀部分とは中央の飾り線で区分され,市水道局の協賛広告は,D議員等祝賀部分に接して掲載されていたことから,基本的には注文に沿うものと判断し,本件支出を拒否する理由はないと考えた旨を証言していることに照らして,その上司であるBの認識もこれと同様であったと推認されるから,同人の上記陳述書の陳述記載は措信- 9 -することができる。)。 したがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 (3) 控訴人らは,市水道局はF新聞を定期購読していたから,Aは本件広告を現認していたはずであるとも主張する。 しかし,弁論の全趣旨によれば,F新聞は市水道局の10紙に及ぶ定期購読紙の一つにすぎなかったことが認められるところ,Aが,本件支出までの間にF新聞を見て本件広告を現認していたことを認めるに足りる証拠はない。かえって,Aは,同人の陳述書(乙23)には,自宅では 期購読紙の一つにすぎなかったことが認められるところ,Aが,本件支出までの間にF新聞を見て本件広告を現認していたことを認めるに足りる証拠はない。かえって,Aは,同人の陳述書(乙23)には,自宅ではF新聞は購読しておらず,市水道局が広告主となった広告を局内で回覧する制度もなかったので,本件住民監査請求を受けるまで,本件広告の掲載はもとより,本件支出についても知らなかったとの陳述記載があるところ,この陳述記載を覆す証拠はない。 したがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 (4) 控訴人らは,さらに,Aが本件広告の掲載を知らなかったとすれば,BがAに本件支出の是非につき上申をしなかったことが職務権限規程に違反するとした上,Aがかかる職務権限規程違反行為を把握できなかったこと自体が指揮監督上の義務に違反するとか,本件広告を見過ごしたこと自体が過失に当たると主張する。 しかし,本件で問題となる管理者の指揮監督上の義務の違反とは,補助職員が財務会計上の行為を専決するに当たっての個別具体的な指揮監督の懈怠をいうというべきであるから,管理者において,当該補助職員が当該財務会計行為を専決しようとしているとの認識を有することが前提となるというべきであって,控訴人らの主張する内容がAの一般的抽象的な管理者としての義務違反に当たるか否かにつき判断するまでもなく,控訴人らの主張は失当である。 (5) なお,控訴人らの主張は,Aが本件広告を現認してさえいれば,当然に本- 10 -件広告中に市水道局による協賛広告が掲載されたこと,ひいては本件支出が違法であることを認識し,又は認識すべきであって,本件支出を阻止しなかったことにつき故意又は過失があるとの立論を前提とすることがうかがわれる。 しかし,前提事実の こと,ひいては本件支出が違法であることを認識し,又は認識すべきであって,本件支出を阻止しなかったことにつき故意又は過失があるとの立論を前提とすることがうかがわれる。 しかし,前提事実のとおり,市水道局においては,Aが管理者に就任する以前から,市出身の政治家が政府や議会の公職に就任した場合にはB又はその前任者の専決決裁により祝賀の協賛広告を掲載して広告費を支出していたものであって,本件住民監査請求がされる前にこの種の広告費の支出が局内で問題視された形跡はうかがわれない。そして,この種の広告費の支出を違法とする最高裁判所の判例はなく,公刊物に登載された同裁判所の判例の中には地元出身の衆議院議員の大臣就任に当たり町が祝賀式典を行って公金を支出した事案において,社交儀礼の範囲を逸脱しているとは断定できず違法といえないとした原審の判断を正当として是認したもの(同裁判所昭和61年(行ツ)第121号平成元年7月4日第三小法廷判決・判タ734号86頁)もあったことにも照らすと,平成17年3月ないし同年4月の時点においては,本件広告を認識したとの一事をもって,Aにつき,当然に本件広告中に市水道局による協賛広告が掲載されたことを違法と認識すべきであり,ひいては本件支出が違法であることを認識してこれを阻止しなかったことに故意又は過失があったと直ちに認めることはできないというべきである。控訴人らの主張は,この観点からも理由がない。 第4 結論以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人らの本件請求は理由がないものとして棄却すべきである。よって,原判決は,結論において相当であるから,本件控訴をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 - 11 -仙台高等裁判所第3民事部 棄却すべきである。よって、原判決は、結論において相当であるから、本件控訴をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 主文 理由 事実 争点 判断 仙台高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官石原直樹 裁判官瀬戸口壯夫 裁判官谷村武則

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