平成21(行ウ)333 相続税更正処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年5月17日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文40,586 文字)

主文 1 札幌南税務署長が原告に対し平成19年3月2日付けでした相続税の更正処分(平成21年1月7日付け裁決による一部取消し後のもの)のうち原告が納付すべき税額4815万0500円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分(平成21年1月7日付け裁決による一部取消し後のもの)のうち過少申告加算税額587万1000円を超える部分を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その7を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求札幌南税務署長が原告に対し平成19年3月2日付けでした原告の相続税の更正処分(被相続人P1(以下「亡P1」という。)の平成▲年▲月▲日相続開始に係るもの。以下「本件更正処分」という。ただし,平成21年1月7日付け裁決による一部取消し後のもの。)のうち申告納付税額566万6600円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。ただし,平成21年1月7日付け裁決による一部取消し後のもの。)を取り消す。 第2 事案の概要本件は,被相続人を亡P1とする相続(以下「本件相続」という。)に際し,相続税の申告をした原告が,札幌南税務署長から,① 亡P1の医療法人社団P2(以下「P2」という。)又はP2の理事長であるP3(以下「P3理事長」という。)に対する貸付金債権(以下「本件貸付金債権」という。),②亡P1のP4に対する3億1111万0950円の不当利得返還請求債権(以下「P4不正使用金債権」という。),③ 亡P1のP5に対する966 3万8959円の不当利得返還請求債権(以下「P5不正使用金債権」という。)が相続財産に含まれるなどとして, 還請求債権(以下「P4不正使用金債権」という。),③ 亡P1のP5に対する966 3万8959円の不当利得返還請求債権(以下「P5不正使用金債権」という。)が相続財産に含まれるなどとして,相続税の更正処分(本件更正処分)及び過少申告加算税の賦課決定処分(本件賦課決定処分)を受けたため,本件更正処分等はいずれも違法であるとして,本件更正処分(ただし,裁決による一部取消し後のもの)の一部(申告納付税額を超える部分)及び本件賦課決定処分(ただし,裁決による一部取消し後のもの)の取消しを求めている事案である。 1 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 相続の開始亡P1は,平成▲年▲月▲日に死亡した。同人の相続人は,長男P4,次男P5,三男原告の3名(以下,この3名を併せて「本件相続人ら」という。)であった。 (甲1,10~15)(2) 相続税の申告等ア相続税の申告原告は,平成16年4月1日,札幌南税務署長に対し,本件相続に係る相続税について,別紙1(本件更正処分等の経緯)の「申告」欄記載のとおり相続税申告書(甲1)を提出して申告(以下「本件申告」という。)をした。 イ本件更正処分及び本件賦課決定処分(ア) 原告は,平成17年3月30日,相続税額を零円とする減額更正を求める更正の請求(乙7)をしたところ,札幌南税務署長は,同年6月23日,更正をすべき理由がない旨の通知(以下「本件処分通知」という。 乙8)をした。 (イ) 札幌南税務署長は,平成19年3月2日,別紙1(本件更正処分等の経緯)の「更正等処分」欄記載のとおり相続税更正処分及び加算税賦課 決定処分(本件更正処分等。甲2) )をした。 (イ) 札幌南税務署長は,平成19年3月2日,別紙1(本件更正処分等の経緯)の「更正等処分」欄記載のとおり相続税更正処分及び加算税賦課 決定処分(本件更正処分等。甲2)をした。 (ウ) 原告は,平成19年4月27日,本件更正処分等を不服として,札幌南税務署長に対し異議申立て(甲3)をしたところ,同年12月19日,札幌南税務署長は,上記異議申立てを棄却する旨の決定(甲4)をした。 (エ) 原告は,平成20年1月18日,国税不服審判所長に対し,異議の申立てを経た後の本件更正処分等を不服として,審査請求(甲5)をしたところ,平成21年1月7日,国税不服審判所長から,本件更正処分等の一部を取り消す旨の裁決(甲6の1)を受け,同月15日,その裁決書の送達を受けた。 これにより,上記裁決後の本件更正処分等の内容は,別紙1(本件更正処分等の経緯)の「裁決」欄記載のとおりとなった。 ウ本件訴訟の提起原告は,平成21年7月3日,本件訴訟を提起した。 (顕著な事実)(3) 亡P1の相続財産に関する事情ア本件貸付金債権に関して(ア) 原告は,平成17年12月頃,札幌地方裁判所に対し,P2を被告として,本件貸付金債権に基づく貸付金のうち自己の相続分に相当する6338万3333円の支払を求める貸金請求訴訟(札幌地方裁判所平成○年(ワ)第○号貸金請求事件。以下「P6別件訴訟」という。)を提起したところ,平成21年11月13日,同裁判所から,原告の請求を棄却する旨の判決の言渡しを受け,同判決は,同年12月1日確定した。 (甲3,8,9)(イ) P5は,平成19年頃,札幌地方裁判所に対し,P2等を被告として,本件貸付金債権に基づく貸付金のうち自 旨の判決の言渡しを受け,同判決は,同年12月1日確定した。 (甲3,8,9)(イ) P5は,平成19年頃,札幌地方裁判所に対し,P2等を被告として,本件貸付金債権に基づく貸付金のうち自己の相続分に相当する6338万3333円の支払等を求める貸金等請求訴訟(札幌地方裁判所平成○ 年(ワ)第○号貸金等請求事件。以下「P5別件訴訟」という。)を提起したところ,平成21年3月27日,同裁判所から,P5の請求をいずれも棄却する旨の判決の言渡しを受け,同判決は,同年4月17日確定した。 (甲7,調査嘱託の結果)(ウ) P6別件訴訟の原告代理人であったP7弁護士らは,① 平成15年8月6日,P2が運営するP8病院のP9から,「P10氏」からの借入れの一覧であるとして,「P10氏(P11氏・P12氏・P13)借入状況」と題する書面(以下「本件借入一覧表」という。乙1)を入手し,② P2に対し,平成16年4月9日付けで,本件貸付金債権に係る照会をしたところ,P2から,同年6月22日付けで,「平成11年頃,知り合いから亡P1を紹介され,同人から借入れをすることになり,借入れの交渉相手は,当初亡P1及びP4であったが,徐々にP4に移行した」旨の回答書(以下「本件貸付金回答書」という。乙3)を入手した。 (乙1,3)イ P4不正使用金債権に関して(ア) 亡P1,P4,P5及び原告は,平成13年9月22日,P7弁護士の事務所において,亡P1の財産の分配に関する協議(以下「本件協議」という。)をした。 (乙9~11)(イ) P7弁護士らは,平成13年10月19日,原告及びP5の代理人として,亡P1に対し,「平成13年9月22日(土)の貴殿を中心とした三兄弟の話し合いはご苦労様でした。当日確認で 1)(イ) P7弁護士らは,平成13年10月19日,原告及びP5の代理人として,亡P1に対し,「平成13年9月22日(土)の貴殿を中心とした三兄弟の話し合いはご苦労様でした。当日確認できた部分と,引き続き調査が必要とされる部分とがございました。そこで確認できた部分については,次のとおりでありますので,早急に依頼人に関する部分の手 続をお願いします。」として,亡P1名義のP14電力の株式2万7000株及びP15電力の株式2万6000株(以下「本件各電力株」という。)につき,「貴殿がP5氏の歯科医院に出資されているP14及びP15電力の株1億円相当についてはP5氏に分与すること」とし,「P4氏が不正に資金移動した,P4名義並びにP16名義の株式については,依頼人において管理ができないため,P4氏に分与するものとし,その後の運用管理はP4氏が行うものとする。」とする旨の通知書(乙11)を内容証明郵便で送付したところ,亡P1は,同年11月5日,P7弁護士らに対し,「平成13年9月26日代理人に電話で申し上げた様に三兄弟の話し合いが不成立と成り,当方としては,白紙撤回の意志を,伝えましたが,書面にて再度回答致します。」旨の回答書(以下「亡P1回答書」という。乙12)を内容証明郵便で送付した。 (乙11,12) 2 相続税額等の計算の基礎となる金額及び計算方法被告が本件訴訟において主張する本件相続に係る原告の納付すべき相続税額等(相続税額及び過少申告加算税額をいう。以下同じ。)の金額は,別紙2(なお,別紙2添付の別表については,別表2-1等と表記することとする。)のとおりであり,本件の争点に関する部分を除き,相続税額等の計算の基礎となる金額及び計算方法に争いはない。 3 争点本件の争点は,亡P1の相続財産 いては,別表2-1等と表記することとする。)のとおりであり,本件の争点に関する部分を除き,相続税額等の計算の基礎となる金額及び計算方法に争いはない。 3 争点本件の争点は,亡P1の相続財産の内容であり,具体的には次のとおりである。 (1) 本件貸付金債権の有無(2) P4不正使用金債権の有無及び価額(3) P5不正使用金債権の有無及び価額 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)(本件貸付金債権の有無)について (被告の主張の要旨)ア原告は,① 平成16年4月1日,札幌南税務署長に対し,本件相続に係る相続財産として本件貸付金1億9500万円があると記載した相続税の申告書(甲1)を自主的に提出して相続税を確定させ,② 亡P1の相続財産の内容が不明であり,裁判等により内容が明確になるまで相続税額を零円として減額更正してほしいとしてした更正の請求について,札幌南税務署長から,同年6月23日付けで,更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けたにもかかわらず,③ 同通知処分に対して,異議を申し立てていないところ,上記通知処分後に本件更正処分がなされたことを奇貨として,本来,更正の請求により減額を求めるべき本件貸付金の不存在を,本件更正処分の適法性を争うために主張しているから,このような場合には,納税者(原告)において自らの申告の際に確認した内容が課税要件事実を満たしていないことを積極的に主張・立証すべきである。 イ上記アの点をおくとしても,次の事実を総合すれば,亡P1は,本件相続開始時点において,P2又はP3理事長に対して,本件貸付金債権を有していたと認められる。 (ア) P2作成の本件借入一覧表とP8病院の総勘定元帳(乙2の1及び2)の記載内容とがおおむね一致 開始時点において,P2又はP3理事長に対して,本件貸付金債権を有していたと認められる。 (ア) P2作成の本件借入一覧表とP8病院の総勘定元帳(乙2の1及び2)の記載内容とがおおむね一致する。 (イ) 本件借入一覧表及びP8病院の総勘定元帳に沿う金員の移動等の存在a 別表3-1のとおり,P3理事長名義のP17信用金庫P18支店の普通預金口座並びにP19銀行P20支店の普通預金口座及び当座預金口座には,本件借入一覧表の相手先欄に「P10氏」と記載されている借入金に係る借入年月日及び借入金額とおおむね一致する現金入金及び振込入金がされている(乙18~20)。 なお,① 別表3-1順号1の借入金2000万円については,平 成11年10月25日,P3理事長名義のP19銀行P20支店の普通預金口座にその一部と考えられる1951万円が入金されており(乙19の3枚目),② 別表3-1順号16の借入金500万円については,P8病院の総勘定元帳(乙2の2の22枚目)上,P21信販に対する返済に充当され,③ 別表3-1順号17の借入金2100万円については,P8病院の総勘定元帳(乙2の1の12枚目)上,1673万9794円を「小樽社保事務所」に対する法定福利費外15件の支払に充当するとともに,残金426万0206円のうち396万0206円を相手科目「P19預金1」に,30万円を「その他預金」に,それぞれ入金したとされており,実際に,上記P19銀行P20支店の普通預金口座に396万0206円,上記P17信用金庫P18支店の普通預金口座に30万円がそれぞれ入金されている。 b 少なくとも,次のとおり,P8病院への入金を示す証拠(本件借入一覧表及びP8病院の総勘定元帳。乙1,2の1及び2)に 金庫P18支店の普通預金口座に30万円がそれぞれ入金されている。 b 少なくとも,次のとおり,P8病院への入金を示す証拠(本件借入一覧表及びP8病院の総勘定元帳。乙1,2の1及び2)に対応する時期に亡P1の資金から出金がされた。 (a) 平成13年5月31日,P22證券株式会社P23支店の亡P1の口座(以下「P22證券亡P1口座」という。)から2300万円が引き出されたところ(乙5の1及び2),本件借入一覧表には,同日,P10氏から2100万円の現金入金があった旨記載され(乙1),また,P8病院の総勘定元帳(事業主借勘定)にも,同日,P10氏からの借入分として2100万円(18口分の合計)と記載されている(乙2の1)。 (b) 平成13年6月29日,P22證券亡P1口座から4971万3418円が引き出されたところ(乙5の1及び3),本件借入一覧表には,同日,P10氏から1200万円の現金入金があった旨記 載されており(乙1),また,P8病院の総勘定元帳(借入金勘定)にも,同日,「事務長より借入」として1200万円と記載されている(乙2の2)。 c また,平成22年8月20日付け調査報告書(乙21)のとおり,亡P1が現金で所持していた金員(以下「亡P1手持ち金」という。)は,平成10年1月1日の手持ち金の金額を0円とすると,本件貸付金の貸付けが始まる平成11年10月の時点で手持ち金の残高が1億円を超えており,その後相続開始までの間,その他に亡P1の生活費等の支出を亡P1手持ち金から差し引いたとしても,亡P1に本件貸付金を貸し付けるだけの十分な資力があったと認められる。 (ウ) P2のP7弁護士らに対する本件貸付金回答書及びP2のP3理事長の札幌国税局職員に対する答述 し引いたとしても,亡P1に本件貸付金を貸し付けるだけの十分な資力があったと認められる。 (ウ) P2のP7弁護士らに対する本件貸付金回答書及びP2のP3理事長の札幌国税局職員に対する答述(乙6)にP2が亡P1から多額の貸付けを受けていた旨の記載又は供述がある。 (エ) 原告は,P6別件訴訟において,本件貸付金債権が存在したことを前提に裁判を提起しており,本件貸付金が返済されたと認めるに足る証拠はない。 なお,P6別件訴訟の判決(甲7)及びP5別件訴訟の判決(甲8)は,いずれも上記(イ)a及びcの事実並びに後記(オ)の事実が裁判資料とされていないから,これらの判決によって本件貸付金債権の有無を判断することはできない。 (オ) 本件貸付金については,P7弁護士がP10氏に対する支払一覧であるとして送付を受けた「P10氏(P11氏・P12氏・P13)借入状況」と題する一覧表(以下「本件利息支払一覧表」という。乙22)のとおり,その利息と認められる金員(乙6参照)が,P8病院から亡P1又はP4に対して前後57回にわたり合計8860万4259円の現金支払又は振込支払がされた(これに符合する振込入金としては,別 表3-2(本件利息支払一覧表に対応するP24名義口座への振込入金の状況)のとおり,P19銀行P25支店のP24名義の普通預金口座にP3理事長名義で14回,P8病院名義で1回,P24名義で10回,合計1458万7597円の振込入金がある。)。 なお,「P24」及び「P16」名義は,① 本件貸付金回答書(乙3)の回答内容,② P4がP16名義で株取引を行っていたこと(乙10),③ 「P24」及び「P16」の各住所はP26方とされていたところ(乙25,27),P4はP26に対して上 件貸付金回答書(乙3)の回答内容,② P4がP16名義で株取引を行っていたこと(乙10),③ 「P24」及び「P16」の各住所はP26方とされていたところ(乙25,27),P4はP26に対して上記両名宛で何か通知が来たら連絡を頼むなどと依頼していたこと(乙26),④ P27証券株式会社(以下「P27」という。)にP16名義の証券口座及びP4名義の証券口座が同日開設され,その各口座開設申込書の緊急連絡先及びファックス番号が同一であること(乙28の3枚目)等を総合すれば,いずれもP4が使用した借名であると推認することができる。 (原告の主張の要旨)ア被告の主張アは,否認し,又は争う。 本件貸付金債権については,P5別件訴訟及びP6別件訴訟において,それぞれその存在が認められない旨の判決がされ,同判決がいずれも既に確定しているから,本件更正処分等には,その存在を前提として本件相続税に係る相続税の課税価格及び原告が納付すべき税額を算出した誤りがある。 イ次の事実に照らすと,亡P1が,本件相続開始時点において,本件貸付金債権を有していたとは認められない。 (ア) 本件借入一覧表とP8病院の総勘定元帳(乙2の1及び2)の記載内容がおおむね一致すること(被告の主張の要旨イ(ア))は,否認する。 本件借入一覧表は,亡P1が,平成14年7月17日のP2の設立以前である平成11年10月から平成14年7月1日までの間に,P8病 院に対して貸付けをしたとするものであり,P2が本件貸付金債権の存在を争っている上,P5別件訴訟の判決(甲7)では「弁論の全趣旨によれば,当該文書は,被告P2から多額の現金を持ち出した被告P2の元事務長が作成した文書であることが認められ,具体的な借入れの日時,返済 争っている上,P5別件訴訟の判決(甲7)では「弁論の全趣旨によれば,当該文書は,被告P2から多額の現金を持ち出した被告P2の元事務長が作成した文書であることが認められ,具体的な借入れの日時,返済の日時,その金額も記載されていないもので,到底信用することはでき」ないとされていることから,本件貸付金の存在を認めるに足りる資料とはならない。 (イ) 被告主張の本件借入一覧表及びP8病院の総勘定元帳に沿う金員の移動等があったことは,否認する。 aP3理事長は,平成14年7月17日に医療法人としてP2を設立するまでP8病院を経営していたところ,平成11年初め頃,P8病院の事務長であったP28から亡P1を紹介され,同年7月12日,亡P1から4000万円を借り受けたが,その際には,返済期限を同年10月13日とし,謝礼金200万円を支払い,返済期限までに支払わないときは,年14.5%の遅延損害金を支払う旨を定め,P29を連帯保証人として,金銭消費貸借契約証書を作成した。 これに対し,本件貸付金債権については,そのような借入れを示す金銭消費貸借契約書,領収書等が存在せず,また,P2に貸し渡したという多額の金員の出所を示す証拠もない。 また,被告主張に係るP3理事長名義のP17信用金庫P18支店及びP19銀行P20支店の各預金口座の通帳にある「P10さん」等との記載は,これが亡P1を指すものであるかが明らかでないから,本件貸付金債権に係る金銭授受を裏付けるものではない。 bP3理事長と亡P1は,上記aのとおり平成11年初め頃にP28の紹介で知り合ったというだけであるから,仮に亡P1に十分な資力があったとしても,亡P1がP3理事長に対して何らの返済もないま まに30回にわたって1 上記aのとおり平成11年初め頃にP28の紹介で知り合ったというだけであるから,仮に亡P1に十分な資力があったとしても,亡P1がP3理事長に対して何らの返済もないま まに30回にわたって1億9015万円もの多額の金員を無利息,無担保で貸付けを継続したこと自体が極めて不自然,不合理である。 (ウ) 被告主張に係る本件貸付金回答書の記載内容及びP3理事長の答述が存在することは認めるが,P2はP5別件訴訟及びP6別件訴訟で亡P1からの借入金はないと争っていたのであるから,本件貸付金回答書の記載どおりの事実を認めることはできない。 なお,P28は,P2から多額の現金を持ち出したとして刑事告発されており,P13株式会社の代表者であるP30は,別件の訴訟(札幌地方裁判所平成○年(ワ)第○号事件)の尋問において,同社がP2に1億9500万円を貸し付けたことを否定する供述をした。 (エ) P5別件訴訟及びP6別件訴訟の確定判決は,上記アのとおり,それぞれ本件貸付金債権の存在が認められない旨判示している。 (オ) 本件利息支払一覧表記載の入金は,P3理事長,P8病院名義又はP24名義でされているから,これが貸付金の当事者間の利息の支払であるかは全く明らかでなく,仮に被告主張のとおりP4が「P24」名義の口座を利用していたとしても,P4と亡P1とは全くの別人であるから,これらの入金された金銭がどのように亡P1に渡っていたかも明らかではないから,これをもって本件貸付金債権の存在が裏付けられるものではない。 (2) 争点(2)(P4不正使用金債権の有無及び価額)について(被告の主張の要旨)ア P4不正使用金債権の存在次の事実を総合勘案すれば,本件相続の開始時点において,亡P1は ) 争点(2)(P4不正使用金債権の有無及び価額)について(被告の主張の要旨)ア P4不正使用金債権の存在次の事実を総合勘案すれば,本件相続の開始時点において,亡P1は,P4に対して,P4不正使用金相当額の不当利得返還請求債権及び当該請求債権に係る遅延損害金支払請求債権を有していたことは明らかである。 (ア) P4は,亡P1所有に係る金員を不正使用した(なお,亡P1がP4 に実印及び銀行取引印の管理を任せたとは認められない。)。 (イ) 亡P1及び本件相続人らは,本件協議の際,P4により不正に使用された金員の返還について協議した。 (ウ) (イ)の後,亡P1は,亡P1回答書(乙12)において,本件協議が不成立である旨の意思を表明しているが,P4に対して債務を免除し,又はP4が不正使用した金額に相当する額の金員を贈与する旨の意思は表明しておらず,その後に亡P1がP4の債務を免除し,又は当該債務に相当する金額の金員を贈与した事実も認められない。 イ P4不正使用金債権のうち,P4に帰することとなる債権・債務の混同は,相続財産の価額に影響しないこと(ア) 相続税法2条1項の「財産」は,消極財産を含むものではなく,飽くまでも積極財産のみを指すものと解されるから,相続税の計算は,各相続人が取得した財産(積極財産)の価額を基礎として計算される。 (イ) 亡P1は,P4不正使用金債権を積極財産として保有していたから,たとえ本件相続によってP4に債権と債務が帰属することに伴い混同が生じたとしても,本件相続に係る相続税の計算には何ら影響するものではなく,その基礎となる本件相続人らが取得した財産の価額から混同により消滅する上記部分を除外する必要はない。 ウ 伴い混同が生じたとしても,本件相続に係る相続税の計算には何ら影響するものではなく,その基礎となる本件相続人らが取得した財産の価額から混同により消滅する上記部分を除外する必要はない。 ウ P4不正使用金債権の一部が混同によって消滅するとしても,その時価に影響を与えないことP4不正使用金債権は,その一部が混同によって消滅するとしても,混同による消滅部分の金額を含む全債権額をもって当該財産の取得時における時価とすべきであるから,これに反する原告の主張(後記(原告の主張の要旨)ウ)は,独自の解釈にすぎない。 (原告の主張の要旨)ア P4不正使用金債権の不存在 次の事実を総合すれば,本件相続の開始時点において,亡P1が,P4に対して,P4不正使用金相当額の不当利得返還請求債権及び当該請求債権に係る遅延損害金支払請求債権を有していなかったことは明らかである。 (ア) P4は,平成11年12月,亡P1と生活を始め,平成12年には,亡P1から実印及び銀行取引印の管理を任せられた。 (イ) 亡P1は,P4が亡P1の口座等を利用して株取引をしていることを了解していたが,その金額と運用先を具体的に知らなかったことから,平成13年9月22日の本件協議の際には,強く怒っているという感じではなく,「それは知らなかった」,「そんなことをやっていたのか」と発言した。 (ウ) 亡P1は,遅くとも平成13年11月5日の時点では,P4が行った亡P1の金員の使用を認めており,同日,P4に対する責任追及をしない趣旨でP7弁護士らに対して亡P1回答書を送付した。同日以降,亡P1は,P4に対し,同人に流用された金員の返還請求をしていないから,当時のP4の資産状況からすれば,これにより,その返還を 及をしない趣旨でP7弁護士らに対して亡P1回答書を送付した。同日以降,亡P1は,P4に対し,同人に流用された金員の返還請求をしていないから,当時のP4の資産状況からすれば,これにより,その返還を免除し,又は当該金員を贈与したものというべきである。 イ混同法理によるP4不正使用金債権の減少(ア) 相続税法上の「財産」には,民法上の相続の対象となる財産と同様に,積極財産と消極財産とが含まれるものと解されるところ,共同相続の場合,相続した可分債権及び可分債務は,共同相続人にその相続割合に従って分割承継されるから,被相続人と相続人との間で債権債務関係がある場合には民法上混同が生じる以上,混同の対象となる相続人の消極財産は相続財産の価格から当然に控除されるべきである。 (イ) そうであるとすれば,仮に亡P1のP4に対するP4不正使用金債権3億1111万0950円が存在したとしても,本件相続の開始時点において,これは,P4,P5及び原告にそれぞれ法定相続分に相当する 1億0370万3650円ずつに分割承継され,P4に分割承継された分が混同法理により当然に消滅するから,亡P1の相続財産としては,その余の2億0740万7300円分が残存するにすぎない(なお,原告と亡P1の間には,直接の債権債務関係はなく,原告には本件貸付金債権に関して担税力は認められないから,混同法理を適用しても何ら不合理ではない。)。 ウ混同法理によるP4不正使用金債権の時価の減額亡P1のP4に対するP4不正使用金債権は,上記イ(イ)のとおり,本件相続の開始時点において,その一部が混同により消滅し,その回収が不能となるから,当該部分についての時価評価(相続税法22条)は零となり,相続税の課税対象にはならないと解すべきで (イ)のとおり,本件相続の開始時点において,その一部が混同により消滅し,その回収が不能となるから,当該部分についての時価評価(相続税法22条)は零となり,相続税の課税対象にはならないと解すべきである。 (3) 争点(3)(P5不正使用金債権の有無及び価額)について(被告の主張の要旨)ア P5不正使用金債権の存在(ア) 次の事実を総合勘案すれば,本件相続開始時点において,亡P1は,P5に対して,P5不正使用金相当額の不当利得返還請求債権及び当該請求債権に係る遅延損害金支払請求債権を有していたことは明らかである。 aP5は,P27の医療法人P31医院(以下「本件医院」という。)名義口座の損失が増大し,信用取引口座を維持できない状態になったところ,P4から担保にするようにとして亡P1名義のP14電力の株式2万7000株及びP15電力の株式2万6000株(本件各電力株)がゆうパックで送られてきたことから,これらをαのP32銀行で本件医院名義に変更し,本件医院名義口座に入庫した(乙14)。 b その後,P5は,本件医院名義口座において,次のとおり本件各電力株(なお,P14電力の株式については,P5が保有していた18 00株も含む。)を売却し,他の株取引の資金として運用している(乙15)。 (a) 平成13年8月28日,P15電力株式2万6000株(売却代金4955万4110円)(b) 平成13年10月5日,P14電力株式2600株(売却代金453万2720円)(c) 平成13年10月9日,P14電力株式2万6200株(売却代金4569万1120円)cP5自身も,亡P1に対して,当該売却金相当額を返還しなければならないと )(c) 平成13年10月9日,P14電力株式2万6200株(売却代金4569万1120円)cP5自身も,亡P1に対して,当該売却金相当額を返還しなければならないと認識しており(乙15),亡P1がP5に対して債務を免除するという意思表示をした事実もない(仮に当該債務免除の意思表示があったとすれば,P5が当該売却金相当額を返還しなければならないと認識するはずがない。)。 (イ) 受益者は,法律上の原因なく利得した代替性のある物を第三者に売却処分した場合には,損失者に対し,原則として,売却代金相当額の金員の不当利得返還債務を負うと解するのが相当であるところ,本件においては,P5は,自己の株式取引の損失補てん等をするため,P4から受け取った本件各電力株を亡P1に無断で売却し,当該売却代金を亡P1にその相続開始まで返還せず,法律上の原因なく当該売却代金相当額の利得を得,これにより亡P1に損失を生じさせたのであるから,亡P1は,P5に対し,P5不正使用金相当額の不当利得返還請求債権を有していたというべきである。 イ P5不正使用金債権のうち,P5に帰することとなる債権・債務の混同は,相続財産の価額に影響しないこと前記(2)(被告の主張の要旨)イ(ア)のとおり,相続税の計算は,各相続人が取得した財産(積極財産)の価額を基礎として計算されるところ,亡 P1はP5不正使用金債権を積極財産として保有していたから,たとえ本件相続によってP5に債権と債務が帰属することに伴い混同が生じたとしても,本件相続に係る相続税の計算上,何ら影響するものではなく,その基礎となる本件相続人らが取得した財産の価額から混同により消滅する上記部分を除外する必要はない。 ウ P5不正使用金債権の一部が ,本件相続に係る相続税の計算上,何ら影響するものではなく,その基礎となる本件相続人らが取得した財産の価額から混同により消滅する上記部分を除外する必要はない。 ウ P5不正使用金債権の一部が混同によって消滅するとしても,その時価に影響を与えないことP5不正使用金債権は,その一部が混同によって消滅するとしても,混同による消滅部分の金額を含む全債権額をもって当該財産の取得時における時価とすべきであるから,これに反する原告の主張(後記(原告の主張の要旨)ウ)は,独自の解釈にすぎない。 (原告の主張の要旨)ア P5不正使用金債権の不存在(ア) 次の事実を総合勘案すれば,本件相続開始時点において,亡P1が,P5に対して,P5不正使用金相当額の不当利得返還請求債権及び当該請求債権に係る遅延損害金支払請求債権を有していないことは明らかである。 a 亡P1は,P4らが株式投資を行っていたP27で追い証が必要になったことを了解して,P5に対し,本件各電力株を送付した。 b ところが,亡P1は,P5が本件各電力株を売却して損切りをすることを了解していなかったため,平成14年8月26日,「去年の夏に融通したP14電力の株式と配当はどうした。」との電話照会をした。 そこで,P5は,亡P1に対し,本件各電力株の売却代金相当額9663万8750円の融通を受けたことになる旨を記載した書面をファックス送信した。 c その後,亡P1は,P5の資産状態が悪化しているにもかかわらず,P5に対し,P5不正使用金の返済を求めていないから,P5に対し,P5不正使用金債権に係る債務を免除し,又は当該金員を贈与したというべきである。 (イ) P5は,亡P1名義の本件各電力株 らず,P5に対し,P5不正使用金の返済を求めていないから,P5に対し,P5不正使用金債権に係る債務を免除し,又は当該金員を贈与したというべきである。 (イ) P5は,亡P1名義の本件各電力株を他の名義に変更にしたことにより,亡P1に対して株式返還又は株式名義書換の債務を負うが,その後に本件各電力株を売却しても,当該株式が市場に存在する限りは,これを買い戻して亡P1に返還し又はその名義書換をすることができるから,当該売却の事実のみをもって被告主張のP4不正使用金債権が発生するとはいえない。 イ混同法理によるP5不正使用金債権の減少前記(2)(原告の主張の要旨)イ(ア)のとおり,被相続人と相続人との間で債権債務関係がある場合には,民法上混同が生じるため,混同の対象となる相続人の消極財産は相続財産の価格から当然に控除されるから,仮に亡P1のP4に対するP5不正使用金債権9663万8959円が存在するとしても,本件相続の開始時点において,これは,P4,P5及び原告にそれぞれ法定相続分に相当する3221万2986円ずつに分割承継され,P5が分割承継した分が混同法理により当然に消滅するから,亡P1の相続財産としては,その余の6442万5972円分が残存するにすぎない。 ウ混同法理によるP5不正使用金債権の時価の減額亡P1のP5に対するP5不正使用金債権は,前記(2)(原告の主張の要旨)イ(イ)のとおり,本件相続の開始時点において,その一部が混同により消滅し,その回収が不能となるから,当該部分についての時価評価(相続税法22条)は零となり,相続税の課税対象にはならないと解すべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件貸付金債権の有無)について(1)ア相続税に関 価評価(相続税法22条)は零となり,相続税の課税対象にはならないと解すべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件貸付金債権の有無)について(1)ア相続税に関する課税処分の取消訴訟においては,相続財産の存在及びその金額について被告(処分行政庁)が立証責任を負うことはいうまでもないから(所得税についての最高裁昭和36年(オ)第1214号同38年3月3日第三小法廷判決・訟務月報9巻5号668頁等参照),たとえ本件更正処分等の際に認定された本件相続により取得した財産の一部につき,原告が,その存在を否定してした更正の請求に対し,更正をすべき理由がない旨の通知処分(本件処分通知)を受けながら,これに異議を申し立てていないものが含まれているとしても,被告(処分行政庁)は,当該財産を含む本件相続に係る相続財産の存在及びその金額について立証責任を負うものと解すべきことは当然である。 これに対し,被告は,本件においては,納税者である原告が自らの申告の際に確認した内容が課税要件事実を満たしていないことを積極的に主張・立証すべきである旨主張するが,原告は,本件訴訟において,本件更正処分のうち申告額を超える部分のみを争っているのであり,本件更正処分等によって確定された税額が総額において租税法規によって客観的に定まっている税額を上回らないことは,被告において立証すべきことは明らかであって,以上の説示と異なる解釈を採るべき理由はなく,被告の上記主張は採用することができない。 イ以上の解釈を踏まえて検討するに,本件貸付金債権の発生原因事実である亡P1とP2又はP3理事長との間の金銭消費貸借契約等の契約締結の事実(以下「本件貸付金債権発生事実」という。)については,本件全証拠を精査しても,金銭消費貸借契約 件貸付金債権の発生原因事実である亡P1とP2又はP3理事長との間の金銭消費貸借契約等の契約締結の事実(以下「本件貸付金債権発生事実」という。)については,本件全証拠を精査しても,金銭消費貸借契約書のような当該事実を認めるに足りる直接証拠はないから,以下,本件貸付金債権発生事実を被告主張に係る間接事実から推認することができるか否かを検討する。 ウ前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件貸付金債権発生事実を積極的に推認させる事情として,次の事実が認められる。 (ア) 平成15年8月6日,P8病院のP9がP7弁護士にファックス送信した本件借入一覧表(乙1)には,平成14年4月1日付けの相手先をP33とする1300万円の入金を除き,相手先をいずれも「P10氏」とし,平成11年10月から平成14年7月1日までの間に,合計30回にわたり,総額1億9015万円の借入れがあった旨の記載(詳細は,別表3-1の「日付」欄及び「借入金額」欄参照)がある。 また,同日,P9がP7弁護士にファックス送信した本件利息支払一覧表(乙22)にも,支払の相手先を「P24」,「P10氏」,「P4」,「P34」,「P16」,「P10氏利息」,「P13(株)」とし,合計57回にわたり,総額8860万4259円の現金支払及び振込支払がされた旨の記載がある。 (乙1,22)(イ) P8病院の総勘定元帳(乙2の1及び2)の借入金勘定及び事業主借勘定は,その摘要欄の一部に「院長より」又は「事務長」と記載されているものの,日付欄及び金額欄には,上記(ア)の本件借入一覧表に記載された「P10氏」からの借入金額とおおむね一致した記載がある。 (乙2の1及び2)(ウ) 別表3-1のとおり,P3理事長名義の の,日付欄及び金額欄には,上記(ア)の本件借入一覧表に記載された「P10氏」からの借入金額とおおむね一致した記載がある。 (乙2の1及び2)(ウ) 別表3-1のとおり,P3理事長名義のP17信用金庫P18支店の普通預金口座並びにP19銀行P20支店の普通預金口座及び当座預金口座には,上記(イ)の記載とおおむね一致する現金入金及び振込入金がされている。 (乙18~20)(エ) 本件借入一覧表において「P10氏」からの借入金額の記載がある平成13年5月31日(借入金額2100万円)及び同年6月29日(借入 金額1200万円)には,P22證券亡P1口座から次の各金員が引き出された。 a 平成13年5月31日 2300万円b 平成13年6月29日 4971万3418円(乙5の1~3)(オ) 札幌国税局職員は,平成22年8月20日,① 亡P1に帰属すると認めた預金口座及び証券口座並びに② これに関連すると認めた同人の配偶者P35名義の預金口座の平成10年1月1日から平成15年6月3日までの入出金状況等を確認したところ,本件貸付金1億9015万円及びP4不正使用金総額3億5716万2006円を,それぞれ発生の時点で,これらの預金口座等から入出金状況を基に亡P1が現金で所有していたと想定した金額(本件手持ち金)から差し引いても,本件手持ち金の額は一度も0円を下回ることがなかったとの調査結果を取りまとめた。 (乙21)(カ) P2は,平成16年6月22日,P7弁護士らの照会に対し,「P2は,平成11年頃,知り合いのゼネコンに勤務していたP36氏に融資を受けられる人物として亡P1の紹介を受け,亡P1から借入れをし,平成14年10月時点の残高が1億9500万円であった に対し,「P2は,平成11年頃,知り合いのゼネコンに勤務していたP36氏に融資を受けられる人物として亡P1の紹介を受け,亡P1から借入れをし,平成14年10月時点の残高が1億9500万円であったが,返済をしないまま,P30氏の依頼により,その貸主名義をP13株式会社に変更する消費貸借契約公正証書を作成した。」旨の本件貸付金回答書を作成し,これを送付した。 (乙3)(キ) P3理事長は,平成18年9月1日,札幌国税局職員らの事情聴取に対し,「亡P1からの借入れは,本件借入一覧表のとおりである。亡P1からの借入金については,元本については返済しておらず,利息のみ 返済していた。消費貸借契約公正証書の債務者がP2になった理由に記憶はないが,個人の借入れが法人のものになってほしいという気持ちがあったのは確かである」旨申述した。 (乙6)(ク) P19銀行P25支店のP24名義の普通預金口座には,P3理事長名義で14回,P8病院名義で1回,P24名義で10回,本件利息支払一覧表記載の入金日及び入金額の振込入金(合計1458万7597円)がされた(別表3-2参照)。 (乙23)エこれに対し,前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実も認められる。 (ア) P4は,平成11年9月頃から遅くとも同年12月頃までの間に,自分の家族と別居して亡P1と同居を始めたところ,P5に対し,原告に対する財産分与に関して不平不満を述べ,亡P1の財産を独り占めしたいとの意向を示し,平成12年頃には,亡P1の実印を手元に管理するようになり,P5に対し,亡P1の実印を取り上げたなどと述べた。 (甲16,乙9,12)(イ) 亡P1は,P8病院の事務長であったP28から,P3理事長を紹 ,亡P1の実印を手元に管理するようになり,P5に対し,亡P1の実印を取り上げたなどと述べた。 (甲16,乙9,12)(イ) 亡P1は,P8病院の事務長であったP28から,P3理事長を紹介され,平成11年7月12日,P3理事長に対し,4000万円を貸し付けたが,その際には,返済期日を同年10月13日,遅延損害金を年14.5%とし,謝礼金として200万円を支払う旨の記載もある金銭消費貸借契約証書を作成し,P29を連帯保証人とした。 (甲8,乙6)(ウ) P4は,別表2-4のとおり,平成11年8月6日から平成13年11月8日までの間,亡P1名義の預貯金口座又は証券口座で管理されていた亡P1所有に係る金員合計4億2052万3095円のうち3億1 111万0950円を,無断でP4管理に係るP4名義又はP16名義の証券口座又は預金口座に移動させ,これを不正に使用した。 (乙21)(エ) P4は,遅くとも平成13年8月22日までに,P5に対し,担保にするように言って,亡P1所有に係る本件各電力株(P15電力株式2万6000株及びP14電力株式2万7000株)を送付した。 (乙14,15)(オ) P4は,従来から,預金口座や証券口座の名義として「P24」及び「P16」を使用していた(なお,「P24」や「P34」も,上記各名義に関連するものと推認される。)。 (乙26~28)(カ) 平成13年9月22日,本件協議の際,P5は,亡P1,P4及び原告に対し,P4が,亡P1の財産を流用し,自己及び第三者の名義で多額の株取引を行っている旨を話したところ,亡P1は,これを全く知らなかったようで怒った。 そこで,亡P1,P4,P5及び原告は,P4が流用した財産の詳細については,今 第三者の名義で多額の株取引を行っている旨を話したところ,亡P1は,これを全く知らなかったようで怒った。 そこで,亡P1,P4,P5及び原告は,P4が流用した財産の詳細については,今後明らかにしていくことを確認した。 (乙9)(キ) P7弁護士らは,平成13年10月19日,原告及びP5の代理人として,亡P1に対し,同年「9月22日(土)の貴殿を中心とした三兄弟の話し合いはご苦労様でした。当日確認できた部分と,引き続き調査が必要とされる部分とがございました。そこで確認できた部分については,次のとおりでありますので,早急に依頼人に関する部分の手続をお願いします。」として,本件各電力株につき「貴殿がP5氏の歯科医院に出資されているP14及びP15電力の株1億円相当についてはP5氏に分与すること」とし,「P4氏が不正に資金移動した,P4名義並 びにP16名義の株式については,依頼人において管理ができないため,P4氏に分与するものとし,その後の運用管理はP4が行うものとする。」とする旨の通知書を内容証明郵便で送付した。 (前提事実(3)イ(イ))(ク) これに対し,亡P1は,平成13年11月5日,P7弁護士らに対し,「平成13年9月26日代理人に電話で申し上げた様に三兄弟の話し合いが不成立と成り,当方としては,白紙撤回の意思を,伝えましたが,書面にて再度回答致します。」旨の亡P1回答書を内容証明郵便で送付した。 (前提事実(3)イ(イ))(ケ) P28は,P8病院及びP2の事務長として経理全般に携わり,P3理事長から資金繰りを任されていたが,P2から,多額の現金を持ち出したとして,平成18年3月10日付けで解雇され,私文書偽造,業務上横領,詐欺の容疑で刑事告発された。 に携わり,P3理事長から資金繰りを任されていたが,P2から,多額の現金を持ち出したとして,平成18年3月10日付けで解雇され,私文書偽造,業務上横領,詐欺の容疑で刑事告発された。 なお,P28は,自ら本件借入一覧表を作成し,本件貸付金回答書及び本件利息支払一覧表もP9に指示して作成させた。 (甲8,乙6)オ以上の認定事実によれば,本件貸付金債権発生事実を積極的に推認させる事情として,a 本件貸付金債権に関する金銭の授受につき,P8病院の総勘定元帳と本件借入一覧表におおむね一致する記載があり(前記ウ(ア),(イ)),これと符合するP22證券亡P1口座からの出金やP3理事長名義の預金口座への入金があったほか(前記ウ(ウ),(エ)),亡P1が本件貸付金債権に係る金銭の授受を行い得る十分な手持ち金を有していたこと(前記ウ(オ)),b 本件貸付金債権の利息の支払として,支払の相手先を「P24」,「P10氏」,「P4」,「P34」,「P16」,「P37氏利息」,「P13(株)」とする本件利息支払一覧表があり(前 記ウ(ア)),これと符合するP24名義の預金口座への入金があったこと(前記ウ(ク)),c 本件貸付金債権の存在を認めるP2作成の本件貸付金回答書やP3理事長の答述があること(前記ウ(カ),(キ))が認められる。 しかしながら,他方,d 亡P1がP3理事長に対して平成11年7月12日付けで4000万円を貸し付けた際には金銭消費貸借契約証書を作成して連帯保証人も徴求したにもかかわらず(前記エ(イ)),多数回かつ多額にわたる本件貸付金債権に係る貸付けについては,契約書を作成したり担保を取ったりしていないこと,eP4は,同年頃から,亡P1の了解を得ずに,亡P1の預貯金口座又は証券口座から亡P1所 数回かつ多額にわたる本件貸付金債権に係る貸付けについては,契約書を作成したり担保を取ったりしていないこと,eP4は,同年頃から,亡P1の了解を得ずに,亡P1の預貯金口座又は証券口座から亡P1所有に係る金員をP4名義又はP16名義の銀行証券口座又は預金口座に移動させて不正に使用したり,亡P1所有に係る本件各電力株をP5に送付したりするなどしており,亡P1の実印も手元で管理していたが(前記エ(ア),(ウ),(エ)),亡P1は,平成13年9月22日に本件協議をした時まで,このようなP4による亡P1の財産の流用事実を知らなかったこと(前記エ(カ)),f 同日の本件協議の際に,亡P1がP4,P5及び原告との間で一応確認した亡P1の財産の管理方法についても,遅くとも同年11月5日に亡P1回答書の作成・送付がされるまでには,白紙撤回されたこと(前記エ(カ)~(ク)),g 本件利息支払一覧表記載の支払の相手先及びこれに符合する入金先は,亡P1のものと断定できるものではなく,むしろP4又は同人が利用していた名義のものであったこと(前記エ(オ)),h 本件貸付金債権に関する金銭の授受等の記載があるP8病院の総勘定元帳及び本件借入一覧表,本件貸付金回答書は,いずれもP2から多額の現金を持ち出したとして解雇・刑事告発されたP28が作成したものであり(前記エ(ケ)),P3理事長は,P28にP8病院やP2の資金繰りを任せており,その実情を掌握していなかったこと(前記エ(ケ))が認めら れる。 そこで,以上の事情を総合考慮すれば,上記a~cの事実は,上記d・hの事実も考慮すると,亡P1からP2又はP3理事長に貸付けがされたとすればあるべき契約書等がなく,本件貸付金債権の存在をうかがわせる内容の書面の作成者であるP28やP3理事長にはそれ は,上記d・hの事実も考慮すると,亡P1からP2又はP3理事長に貸付けがされたとすればあるべき契約書等がなく,本件貸付金債権の存在をうかがわせる内容の書面の作成者であるP28やP3理事長にはそれぞれその供述の信用性を減殺する事情がある点で,必ずしも亡P1からP2又はP3理事長に対して現実に金銭の授受が行われたことを推認させるに十分なものとはいえないし,仮に,上記a~cの事実から,亡P1からP2又はP3理事長に対する金銭の授受の事実が推認できたとしても,上記b・e~gの事実を考慮すると,その金銭の授受は,P4が,亡P1の了解を得ずに行い,P28と申し合わせて貸付金の外形をとったにすぎないものであるとの合理的な疑いが残るというべきであるから,亡P1とP2又はP3理事長との間で本件貸付金債権に係る返還合意がされたと推認することはできない。 他に本件貸付金債権発生事実を認めるに足りる証拠はない。 以上に加え,前記前提事実(3)ア(ア)及び(イ)のとおり,P6別件訴訟及びP5別件訴訟における原告及びP5の各請求を棄却する旨の判決が確定していることをも併せ考慮すれば,亡P1の死亡時に亡P1のP2又はP3理事長に対する本件貸付金債権が存在したと認めることはできない。 カ以上によれば,その余の点を検討するまでもなく,被告の主張は理由がないが,念のため,仮に,亡P1の死亡時に亡P1のP2又はP3理事長に対する本件貸付金債権が存在した可能性があったとした場合における本件貸付債権の価額について更に検討する。 (2)ア相続税法は,相続により取得した「財産」の価額は,当該財産の取得の時における時価により,当該財産の価額から控除すべき債務の金額は,その時の現況による(同法22条)と規定している。 また,財産評価基本通達(昭 り取得した「財産」の価額は,当該財産の取得の時における時価により,当該財産の価額から控除すべき債務の金額は,その時の現況による(同法22条)と規定している。 また,財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁 長官通達。以下「評価基本通達」という。)204は,貸付金,売掛金,未収入金,預貯金以外の預け金,仮払金,その他これらに類するもの(以下「貸付金債権等」という。)の価額は,元本の価額(その返済されるべき金額)及び利息の価額(課税時期現在の既経過利息として支払を受けるべき金額)との合計額によって評価するとし,評価基本通達205は,前項の定めにより貸付金債権等の評価を行う場合において,その債権金額の全部又は一部が,課税時期(相続開始時)においてその回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときにおいては,それらの金額は元本の価額に算入しない旨定めている。 そして,被相続人が有していたとされる貸付金債権等について,その相続開始後,その相続人が当該貸付金債権等の債務者とされる者に対して当該貸付金債権に基づき金員の支払を求める民事訴訟を提起した場合において,当該相続人の請求を棄却する旨の確定判決を受けたときは,その主文に包含される「当該相続人の当該債務者とされる者に対する貸付金債権等がその口頭弁論終結時に存在しない」という点について,当該訴訟の当事者である上記両名間に既判力を生じ(民事訴訟法114条1項,115条1項1号),もはや当該相続人が当該債務者とされる者に対して当該貸付金債権の強制履行(民法414条参照)を求めることはできなくなるため,そのような判決を受けることとなった原因が,相続開始時から当該訴訟の口頭弁論終結時までに生じた事情による認められる場合を除き,原則として,その債権金額 414条参照)を求めることはできなくなるため,そのような判決を受けることとなった原因が,相続開始時から当該訴訟の口頭弁論終結時までに生じた事情による認められる場合を除き,原則として,その債権金額の全部が課税時期(相続開始時)においてその回収が不可能又は著しく困難であると見込まれたものというべきであるから,それらの金額は元本の価額に算入しないことになるものと解すべきである。 イ以上の点を本件についてみると,前記前提事実によれば,原告及びP5は,P2を被告としてP6別件訴訟又はP5別件訴訟を提起したところ,いずれもその請求を棄却する旨の判決を受け,これらの判決が確定したこ とが認められるから,上記各判決の既判力により,もはや原告及びP5がP2に対してそれぞれ本件貸付金債権の強制履行を求めることはできなくなっているものといわざるを得ない(なお,原告及びP5は,P6別件訴訟又はP5別件訴訟において,本件貸付金債権に基づく請求につき,P3理事長を被告にしていないが,証拠(甲7,8)によれば,上記各判決がいずれも原告又はP5の本件貸付金債権に基づく請求を認めるに足りる証拠がないとの理由でその請求を棄却したことが認められ,上記(1)のとおり,本件訴訟で提出された証拠をもってしても,亡P1のP2又はP3理事長に対する本件貸付金債権があると推認するには足らないことをも併せ考慮すれば,改めてP3理事長を被告として本件貸付金債権に基づく金員の支払を求める民事訴訟を提起したとしても,その勝訴の見込みは乏しく,その回収が著しく困難であると見込まれるというべきである。)。 そうすると,本件においては,上記アで説示した原則と異なる解釈をすべき事情はうかがわれないから,亡P1のP2又はP3理事長に対する本件貸付金債権は,その債権金額の というべきである。)。 そうすると,本件においては,上記アで説示した原則と異なる解釈をすべき事情はうかがわれないから,亡P1のP2又はP3理事長に対する本件貸付金債権は,その債権金額の全部が課税時期においてその回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとして,それらの金額を元本の価額に算入しないこととすべきである。 (3) 以上によれば,① 前記(1)のとおり,本件貸付金債権が本件相続の開始時点において存在したとは認められないし,② 仮に①の点をおくとしても,前記(2)のとおり,亡P1のP2又はP3理事長に対する本件貸付金債権は,その債権金額の全部が課税時期においてその回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとして,それらの金額を元本の価額に算入しないこととすべきである。 したがって,被告の主張は,以上の説示に照らして理由がなく,採用することができない。 2 争点(2)(P4不正使用金債権の有無及び価額)について (1) P4不正使用金債権の有無についてア前記1(1)エ(ア),(ウ),(カ)~(ク)及びオeの認定事実によれば,P4は,亡P1の了承を得ず,亡P1所有に係る金員3億1111万0950円を自己名義等の証券口座又は預金口座に移動させて不正に使用したものであるから,本件相続の開始時点において,亡P1がP4に対してこれと同額(P4不正使用金相当額)の不当利得返還請求債権及び当該請求債権に係る遅延損害金請求債権(その具体的金額は別表2-5の⑥欄記載のとおり)を有していたことが認められる。 イこれに対し,原告は,P4が,亡P1から,P4不正使用金債権に係る債務の免除又は同額の贈与を受けた旨主張する(前記第2の4(2)(原告の主張の要旨)ア)。 しかしな られる。 イこれに対し,原告は,P4が,亡P1から,P4不正使用金債権に係る債務の免除又は同額の贈与を受けた旨主張する(前記第2の4(2)(原告の主張の要旨)ア)。 しかしながら,① 前記1(1)エ(ア)及び(カ)の事実によれば,亡P1が,平成12年頃から,P4に対し,亡P1の実印等の管理を任せ,P4の意思で亡P1所有の財産を自由に使用することを許していたとはいえず,平成13年9月22日の本件協議の際にも,P4が亡P1の口座等を利用して株取引をすることを了承していたとはいえないこと,② 前記1(1)エ(ク)の事実,特に亡P1回答書の文面に照らせば,亡P1回答書をもって,亡P1がP4に対して亡P1所有に係る財産の使用を認めたとはいえないこと,③ 本件全証拠によっても,亡P1が,同年11月5日以降本件相続の開始までの間,P4に対してP4不正使用金の返還を求めたことは認められないものの,上記①・②の点及び前記1(1)エ(ア)の事実のほか,亡P1が高齢であり,P4と実の親子関係にあったことも考慮すれば,亡P1がP4に対してP4不正使用金の返還を求めなくても不自然不合理ではない上,亡P1が積極的にP4による亡P1の財産の不正使用を了承する意思を示したことはなかった以上,P4不正使用金の返還を求めない意思を有していたとまでは認めることができないから,亡P1がP4に対して P4不正使用金の返還を求めていないことのみをもって,亡P1がP4に対してその返還を免除し,又は当該金員を贈与したとはいえず,他に原告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は,理由がなく採用することができない。 (2) 亡P1の相続財産となるP4不正使用金債権の価額についてア相続人が数人ある場合に りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は,理由がなく採用することができない。 (2) 亡P1の相続財産となるP4不正使用金債権の価額についてア相続人が数人ある場合において,その相続財産中に金銭その他の可分債権があるときは,その債権は,法律上当然分割され,各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解すべきであるところ(最高裁昭和27年(オ)第1119号同29年4月8日第一小法廷判決・民集8巻4号819頁参照),前記前提事実及び前記(1)の認定事実によれば,亡P1のP4に対するP4不正使用金債権(これに対する遅延損害金債権も含む。 以下同じ。)は,本件相続の開始により,法律上当然分割され,亡P1の共同相続人であるP4,P5及び原告がその相続分(3分の1)に応じてこれを承継するものと認められるから,このうちP4に分割承継された部分(以下「P4不正使用金債権のP4承継部分」という。)は,債権者としての地位と債務者としての地位が同一人に帰属することとなる。 イ原告は,上記アのとおり,亡P1のP4に対するP4不正使用金債権のP4承継部分は,債権者としての地位と債務者としての地位が同一人に帰属するため,混同法理により当然に消滅するから,そもそも亡P1の相続財産にはならないし,本件相続の開始時点において,その回収が不能であり,その時価評価が零であるから,相続税の課税対象にはならない旨主張するので,以下この点について検討する。 ウ(ア) まず,相続税法は,前記1(1)アのとおり,相続により財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの(同法1条の3第1号)については,その者が相続により取得した「財産」の全部に対し,相続税を課する(同法2条1項)旨規定して 個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの(同法1条の3第1号)については,その者が相続により取得した「財産」の全部に対し,相続税を課する(同法2条1項)旨規定して いる。 そして,相続税法2条1項の「財産」とは,ある主体に属する積極財産のみをいい(したがって,消極財産は除かれる。),金銭に見積もることができる経済的価値のあるものがこれに該当するものと解され(相続税法基本通達11の2-1参照),法律上の根拠を有しないものであっても経済的価値が認められているものも含まれると解される(同通達11の2-1(2)参照)。 (イ) また,相続税法は,① 相続税は,相続により財産を取得した者の被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の総額を計算し,当該相続税の総額を基礎としてそれぞれこれらの事由により財産を取得した者に係る相続税額として計算した金額により,課し(同法11条),② 相続税の総額を計算する前提になる「相続税の課税価格」は,「相続により財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの」については,「当該相続により取得した財産の価額の合計額」であるとした上(同法11条の2第1項),③ 相続により取得した「財産」の価額は,当該財産の取得の時における時価により,当該財産の価額から控除すべき債務の金額は,その時の現況により評価する(同法22条)旨規定している。 なお,相続による財産取得の時期は,相続税法上明文の規定はないものの,民法の規律(民法882条,896条,909条参照)に従い,相続の開始の時であると解される(相続税法基本通達1の3・1の4共-8(1)参照)。 (ウ) 他方,民法は,債権及び債務が のの,民法の規律(民法882条,896条,909条参照)に従い,相続の開始の時であると解される(相続税法基本通達1の3・1の4共-8(1)参照)。 (ウ) 他方,民法は,債権及び債務が同一人に帰属したとき(1個の債権について,その債権者としての地位と債務者としての地位とが同一人に帰属することを,以下「混同」という。)は,その債権は,これが第三者の権利の目的であるときを除き,消滅する旨規定している(民法520 条)が,その趣旨は,混同が生じたときは,自分が自分に対して請求することや自分の財産を一方から他方に弁済することは通常意味のないことであることから,その債権は,原則として,便宜上消滅させることとしたものであると解される。 エ以上の関係法令の規定並びにその趣旨及び解釈を踏まえ,前記イの点について検討する。 まず,前記アのように,相続財産である金銭債権を相続した共同相続人の中に混同を生じる者がいる場合においては,① 相続の開始により,当該金銭債権が法律上当然に分割された上,各共同相続人に相続分に応じて承継されるが,② その結果,当該金銭債権の債権者としての地位と債務者としての地位を有するに至った者については,その承継に係る部分が直ちに混同(民法520条)により消滅し,その反射的効果としてその者にその承継に係る部分に相当する債務の減少という利益(以下「混同による債務減少利益」という。)がもたらされることになる。 このように,上記の場合においても,上記①のとおり,その者が相続の開始により当該金銭債権のうち混同が生じる部分を承継取得することを当然の前提としており,上記②の時点における「混同」は,上記ウ(ウ)の趣旨から法律上の便宜的な処理として認められたものにすぎないということができる。 債権のうち混同が生じる部分を承継取得することを当然の前提としており,上記②の時点における「混同」は,上記ウ(ウ)の趣旨から法律上の便宜的な処理として認められたものにすぎないということができる。 そうであるとすれば,当該金銭債権のうち混同が生じる部分についても,相続の開始により,共同相続人の1人に承継取得される以上,相続税法2条1項及び11条の2第1項にいう「相続・・・により取得した財産」に該当するというべきであり,これがその取得と同時に混同により消滅したことをもって,その該当性を否定することはできないと解すべきである(このことは,当該金銭債権が第三者の権利の目的となっていて混同により消滅しない場合があることを考えれば明らかである。)。 これを「財産」の価額及び担税能力の見地から見ても,a ここで相続により取得した財産は金銭債権であり,原則としてその債権額がその価額になるところ,混同により消滅するものについても,現実には,上記②のとおり,当該金銭債権の債務者としての地位を有していて相続により債権者としての地位をも有するに至った相続人については,混同による債務減少利益がもたらされており,これは,いわば相続の開始により相続人に帰属した金銭債権に代わるものといえるし,b 当該金銭債権の債務者としての地位を有していた相続人にとっては混同による債務減少利益という担税能力の増加が見られるのであり,相続税法2条1項及び11条の2第1項にいう「財産」は,金銭に見積もることができる経済的価値のあるものの全てをいうと解されることからすると,混同による債務減少利益自体が「相続により取得した財産」(同法2条1項,11条の2第1項)に該当するとみることもできる(相続税法8条及び9条は,対価を支払わないで債務の免除等による利益 からすると,混同による債務減少利益自体が「相続により取得した財産」(同法2条1項,11条の2第1項)に該当するとみることもできる(相続税法8条及び9条は,対価を支払わないで債務の免除等による利益を受けるなどした場合は,当該利益を贈与又は相続によって取得したものみなして贈与税又は相続税の課税対象としており,上記のように解することが同法の目的・趣旨に反するとはいえないし,他方,混同による債務減少利益が,債務の免除等による利益とは異なり,上記aのとおりいわば相続の開始により相続人に帰属した金銭債権に代わるものであることをも併せ考慮すれば,同法2条1項及び11条の2第1項の文言(相続・・・により取得した財産)に反するともいえない。)。こうした点からしても,前記の解釈を不当ということはできない。 なお,混同による債務減少利益は,当該金銭債権のうち上記の者に承継された部分に係る債務が消滅するのと同時に確定的に生じるものであることに照らすと,混同による債務減少利益の「価額」は,混同により消滅した当該部分に係る債務の返済されるべき金額(当該債務の遅延損害金債務がある場合には,課税時期現在の既経過遅延損害金として支払を受けるべ き金額も含む。)であるというべきであるから(相続税法22条,前記1(2)ア参照),「相続により取得した財産」を当該金銭債権とみるにせよ,その代替物としての債務減少利益とみるにせよ,本件相続の開始時点において,その回収が不能であり,その時価評価が零であるなどの理由から相続税の課税対象にならないということはできない。 オこれを本件についてみると,前記アで認定したところによれば,亡P1のP4に対するP4不正使用金債権は,本件相続の開始により,法律上当然に分割され,亡P1の共同相続人であるP4,P5及び原 オこれを本件についてみると,前記アで認定したところによれば,亡P1のP4に対するP4不正使用金債権は,本件相続の開始により,法律上当然に分割され,亡P1の共同相続人であるP4,P5及び原告がその相続分(3分の1)に応じてこれを承継し,P4不正使用金債権のP4承継部分については,P4に承継されると同時に混同により消滅するが,その反射的効果として,P4がP4不正使用金債権のP4承継部分に相当する債務の減少という利益を得たものと認められる。 したがって,P4不正使用金債権のP4承継部分についても,相続により取得した「財産」として,本件相続に係る相続税の課税対象になり,その価額を本件相続に係る相続税の計算の基礎となる本件相続人らが取得した財産の価額から除外する必要はないというべきである。 カ以上によれば,原告の前記イの主張は,いずれも理由がないから採用することができない。 3 争点(3)(P5不正使用金債権の有無及び価額)について(1) P5不正使用金債権の有無についてア民法703条は,法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け,そのために他人(以下「損失者」という。)に損失を及ぼした者(以下「受益者」という。)は,その利益の存する限度において,これを返還する義務を負うと規定しているところ,不当利得の制度は,ある人の財産的利得が法律上の原因ないし正当な理由を欠く場合に,法律が,公平の観念に基づいて,受益者にその利得の返還義務を負担させるものである(最 高裁昭和45年(オ)第540号同49年9月26日第一小法廷判決・民集28巻6号1243頁参照)。 このような不当利得の制度の趣旨に鑑みれば,受益者が法律上の原因なく利得した物を第三者に売却処分した場合には,それが代 同49年9月26日第一小法廷判決・民集28巻6号1243頁参照)。 このような不当利得の制度の趣旨に鑑みれば,受益者が法律上の原因なく利得した物を第三者に売却処分した場合には,それが代替性のある物であったとしても,受益者は,損失者に対し,原則として,売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負うと解するのが相当であり(最高裁平成17年(受)第1996号同19年3月8日第一小法廷判決・民集61巻2号479頁参照),上記原則と異なる解釈をすべき事情がない限り,受益者が損失者に対して同種・同等・同量の物の不当利得返還義務は負わないものと解すべきである。 イ前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) P5による本件各電力株の売却aP5は,P27の本件医院名義口座の損失が増大し,信用取引口座を維持できない状態になったところ,遅くとも平成13年8月22日までに,P4から,担保にするように言われて本件各電力株(P15電力株式2万6000株及びP14電力株式2万7000株)の送付を受けた。 b そこで,P5は,亡P1の承諾を得ずに,① その名義を本件医院名義に変更した上,平成13年8月22日,P27の本件医院名義口座に入庫し,② P14電力の株式については,P5が保有していたP14電力の株式1800株も含めて次のとおり順次売却し,③ その売却代金相当額のうち亡P1所有に係る株式の売却代金に相当する9663万8959円(下記(d)参照)を他の株取引の資金として運用した。 (a) 平成13年8月28日,信用取引の決済のため,このうちP15 電力株式2万6000株を代金4955万6000円(うち手数料等1890円)で売却した。 用した。 (a) 平成13年8月28日,信用取引の決済のため,このうちP15 電力株式2万6000株を代金4955万6000円(うち手数料等1890円)で売却した。 (b) 平成13年10月5日,P14電力株式2600株を代金453万4400円(うち手数料等1680円)で売却した。 (c) 平成13年10月9日,P14電力株式2万6200株を代金4569万2800円(うち手数料等1680円)で売却した。 (d) 上記(b)及び(c)のP14電力株式のうち1800株は,P5の所有分であるため,これに相当する売却代金313万9200円(単価1744円×1800株)を差し引く必要がある。 その上で(a)~(c)の各売却代金9966万4000円(9978万3200円-313万9200円)から各手数料等5041円(ただし,P14電力株式のP5所有分の売却手数料等209円(P14電力株式の売却手数料等合計3360円を2万8800で除して1800を乗じたもの。小数点以下切捨て)を除いた額)を差し引いた手取りの売却代金相当額合計は9663万8959円となる(別表2-6参照)。 ((ア)につき,乙14,15)(イ) その後のP5及び亡P1の言動a 亡P1は,平成14年8月26日頃,P5に対し,P14電力株式とその配当金について電話で尋ねたところ,P5は,同日,本件各電力株を売却して合計9663万8750円を融通していただいたことになる旨の文書(乙16)をファックス送信した。 (乙13,16)bP5は,平成18年10月26日,国税調査官に対し,亡P1から本件各電力株の贈与を受けた意識はなく,P5が個人的に預かっていた本件各電力株を株 ァックス送信した。 (乙13,16)bP5は,平成18年10月26日,国税調査官に対し,亡P1から本件各電力株の贈与を受けた意識はなく,P5が個人的に預かっていた本件各電力株を株取引の損失穴埋めのため運用せざるを得なくなり, これを返却できないまま,亡P1が死亡するに至った旨供述した。 (乙14)(ウ) 前記1(1)エ(ア),(ウ),(エ),(カ)~(ク)並びに上記(ア)及び(イ)の各認定事実を総合すれば,① 本件各電力株は,その当時亡P1所有に係る財産をほしいままに不正に使用していたP4が,亡P1に無断でP5に送付したものであり,② P5が本件各電力株を売却することについても,亡P1の承諾はなかったものと優に推認することができる。 これに対し,原告は,亡P1が,P4らが株式投資を行っていたP27の追い証が必要になったことを了解して,本件各電力株をP5に送付したものである旨主張し,これに沿う証拠(乙13,14,16)もある。しかし,前記のとおり,P4は,亡P1の実印を管理するなどして,亡P1の財産をほしいままに無断で流用しており,亡P1は,その事実を本件協議の時まで知らなかったこと,P5も,本件各電力株の送付について,平成13年9月25日付けで作成した書面(乙10)で要旨「会議中は,亡P1がP5に贈与したとの見解をとり,出席者の同意を得られた形となっていたが,受け取ったのは法人格であり,出資の形式が妥当と考えられる。しかしながら,詳細は当法人顧問税理士と打合せ中であり,法解釈等勘案し,お知らせする。」と記載し,平成14年8月26日の亡P1のP5に対する電話については,亡P1の意思で架けたものではなく,P4が架けさせたものである旨供述していたこと(乙13)等に照らすと,前掲各証拠のう せする。」と記載し,平成14年8月26日の亡P1のP5に対する電話については,亡P1の意思で架けたものではなく,P4が架けさせたものである旨供述していたこと(乙13)等に照らすと,前掲各証拠のうち原告の上記主張に沿う部分は,いずれも信用性に乏しいものといわざるを得ず,原告の上記主張を採用することはできない。 ウ以上の認定事実によれば,P5は,亡P1の承諾を受けないで,P4から,亡P1の所有に係る本件各電力株の送付を受けるや,直ちに本件各電力株を本件医院名義に変更してP27の本件医院名義口座に入庫した上, これらを亡P1に無断で順次売却したもの(本件各電力株に係る(手取り)売却代金相当額合計9663万8959円)と認められる。 これらの事実に照らすと,P5は,法律上の原因なく利得した本件各電力株を第三者に売却処分したといえるから,本件各電力株が代替性のあるものであったとしても,亡P1に対し,上記売却代金相当額9663万8959円の不当利得返還義務を負うものと認められる。 エこれに対し,原告は,① P5が,亡P1から,P5不正使用金債権に係る債務の免除又は同額の贈与を受けた(前記第2の4(3)(原告の主張の要旨)ア(ア)),② P5は亡P1に対して本件各電力株の返還又は名義書換義務を負うにすぎない(同(イ))旨主張するので,以下検討する。 (ア) 原告の主張①についてこの点,ア本件各電力株は,その当時亡P1所有に係る財産をほしいままに不正に使用していたP4が,亡P1に無断でP5に送付したものであり,P5が本件各電力株を売却することについての亡P1の承諾もなかったことは,前記イ(ウ)のとおりであること,イ前記イ(イ)aの事実については,P5の陳述書(乙13)によれば,平成1 したものであり,P5が本件各電力株を売却することについての亡P1の承諾もなかったことは,前記イ(ウ)のとおりであること,イ前記イ(イ)aの事実については,P5の陳述書(乙13)によれば,平成14年8月26日の亡P1のP5に対する電話は,亡P1の意思で架けたものではなく,P4が架けさせたものであったというのであるから,これを受けてP5が亡P1に対して本件各電力株を売却して合計9663万8750万円を融通していただいたことになる旨の文書(乙16)をファックス送信したことをもって,亡P1においてP5が本件各電力株を売却したことを了承したということはできないこと,ウ本件全証拠によっても,亡P1が,同日以降本件相続の開始までの間,P5に対してP5不正使用金債権に基づく請求をしたことは認められないが,上記ア・イの点のほか,亡P1が高齢であり,P5と実の親子関係にあったこと,上記の間,P4が亡P1所有に係る財産を事実上自己の管理下に置いてい たことがうかがわれること(前記1(1)エ(ア),(キ),(ク)の認定事実,上記イ(ウ)参照)も考慮すれば,亡P1は,P5に対してP5不正使用金債権に基づく請求をしないことが不自然とはいえないし,逆に,積極的に本件各電力株の売却等を了承したことはない以上,P5に対してP5不正使用金債権に基づく請求をしない意思を有していたとまでは認めることができないから,亡P1がP5に対してP5不正使用金債権に基づく請求をしないことのみをもって,亡P1がP5に対してその返還を免除し,又は当該金員を贈与したとはいえず,他に原告の主張①を認めるに足りる証拠もない。 したがって,原告の主張①は,採用することができない。 (イ) 原告の主張②について原告の主張②は,その前提が前記アで 原告の主張①を認めるに足りる証拠もない。 したがって,原告の主張①は,採用することができない。 (イ) 原告の主張②について原告の主張②は,その前提が前記アで判示したところと異なる独自の見解に基づくものであるから,採用することができない。 (2) 亡P1の相続財産となるP5不正使用金債権の価額についてア前記2(2)アのとおり,相続人が数人ある場合において,その相続財産中に金銭その他の可分債権があるときは,その債権は,法律上当然分割され,各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解すべきであるところ,前記前提事実及び前記(1)ウの認定事実によれば,亡P1のP5に対するP5不正使用金債権(これに対する遅延損害金債権を含む。以下同じ。)は,本件相続の開始により,法律上当然分割され,亡P1の共同相続人であるP4,P5及び原告がその相続分(3分の1)に応じてこれを承継するものと認められるから,このうちP5に分割承継された部分(以下「P5不正使用金債権のP5承継部分」という。)は,債権者としての地位と債務者としての地位が同一人に帰属することととなる。 イそこで,P5不正使用金債権のP5承継部分は,P5に承継されると同時に混同(民法520条)により消滅するが,その反射的効果として,P 5がP5不正使用金債権のP5承継部分に係る債務の減少という利益を得ることとになるところ,P5不正使用金債権のP5承継部分が相続により取得した「財産」として,本件相続に係る相続税の課税対象になり,その価額を本件相続に係る相続税の計算の基礎となる本件相続人らが取得した財産の価額から除外する必要はないことは,前記2(2)エで説示したところと同様である。 ウよって,① 原告の前記主張( の価額を本件相続に係る相続税の計算の基礎となる本件相続人らが取得した財産の価額から除外する必要はないことは,前記2(2)エで説示したところと同様である。 ウよって,① 原告の前記主張(第2の4(3)(原告の主張の要旨)イ及びウ)の全部及び② 被告の前記主張(同(3)(被告の主張の要旨)イ)のうち上記イの説示に反する部分は,いずれも採用することができない。 4 相続税の課税価格及び納付すべき税額並びに過少申告加算税について(1) 相続税についてア前記1から3までの各判示部分並びに前記第2の2の当事者間に争いがない計算の基礎となる金額及び計算方法によれば,原告が納付すべき相続税額は,別表4ー1(相続税の課税価格計算明細表(裁判所認定額))のとおり,4815万0500円となる。 なお,上記計算の基礎となった相続により取得した財産(本来の相続財産)の価額の内訳は,次のとおりである。 (ア) 宅地 1397万1320円(別紙2の1(1)ア(ア)参照)(イ) 本件貸付金債権 0円(前記1のとおり)(ウ) P4に対する債権等 4億4858万7178円aP4に対する立替金 9820万円(別紙2の1(1)ア(ウ)a参照)bP4不正使用金債権 3億5038万7178円(前記2及び別紙2の1(1)ア(ウ)bのとおり)(エ) P5不正使用金債権 1億0489万5796円(前記3及び別紙2の1(1)ア(エ)のとおり)イしたがって,本件更正処分のうち原告が納付すべき税額4815万05 00円を超える部分は,違法であるから,取り消されるべきである。 (2) 過少申告加算税についてア上記(1)のとおり,本件更正処分のうち, 原告が納付すべき税額4815万05 00円を超える部分は,違法であるから,取り消されるべきである。 (2) 過少申告加算税についてア上記(1)のとおり,本件更正処分のうち,原告が納付すべき税額4815万0500円を超える部分は違法であり,取り消されるべきであるから,本件更正処分のうち適法な部分に基づき原告が新たに納付すべきこととなる相続税額は4248万3900円となる。一方,前記第2の2の当事者間に争いがない計算の基礎となる金額及び計算方法によれば,本件相続人らが取得した財産のうち,P4が亡P1から贈与により取得した財産2180万円については,税額の計算の基礎としなかったことにつき正当な理由があることは,当事者間に争いがない。そうすると,上記4248万3900円から,上記の正当な理由があると認められる事実のみに基づく税額として計算した金額145万3200円(別紙2の別表2-8順号⑨欄であり,当事者間に争いがない。)を控除した4103万円(ただし,通則法118条3項により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)が原告の過少申告加算税の基礎となる税額となる(別紙4-2(過少申告加算税の基礎となる税額の計算表(裁判所認定額)参照)。 そこで,原告が納付すべき過少申告加算税は,次の(ア)の金額及び(イ)の金額の合計額587万1000円となる。 (ア) 通則法65条1項に基づき,4103万円に100分の10の割合を乗じて算出した金額410万3000円(イ) 通則法65条2項に基づき,4103万円から本件申告時の税額566万6600円を控除した後の金額3536万円(同法118条3項により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の5の割合を乗じて算出した金額176万8000円 から本件申告時の税額566万6600円を控除した後の金額3536万円(同法118条3項により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の5の割合を乗じて算出した金額176万8000円 イしたがって,本件賦課決定処分のうち過少申告加算税額587万1000円を超える部分は,違法であるから,取り消されるべきである。 5 結論以上によれば,原告の請求は,本件更正処分のうち原告が納付すべき税額4815万0500円を超える部分及び本件賦課決定処分のうち過少申告加算税額587万1000円を超える部分の取消しを求める限度で理由があるから,その限度でこれを認容し,その余は理由がないので棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官川神 裕 裁判官林 史高 裁判官牛尾可南 【別紙2】 被告主張に係る本件更正処分等の根拠及び計算 1 本件相続に係る相続税の課税価格及び納付すべき税額の算定根拠本件相続に係る原告,P4及びP5(本件相続人ら)の相続税の課税価格及び納付すべき税額は,別表2-1に記載のとおりであり,その内訳は次のとおりである。 (1) 相続税の課税価格の合計額(別表2-1の順号19の合計欄の金額)7億5972万9000円上記金額は,本件相続人らの相続税の課税価格(別表2-1の順号19の各人欄の金額)の合計額であり,次のアの金額とイの金額の合計額から,ウの金額を控除し,エの金額を加算した金額(ただし,国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項の規定により,本件相続人らごとに課税価格の 合計額であり,次のアの金額とイの金額の合計額から,ウの金額を控除し,エの金額を加算した金額(ただし,国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項の規定により,本件相続人らごとに課税価格の1000円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。 ア相続により取得した財産の価額(別表2-1の順号5の合計欄)7億5760万4294円上記金額は,本件各相続人らが本件相続により取得した財産の価額であり,その内訳は次のとおりである。 (ア) 宅地(別表2-1の順号1の合計欄の金額)1397万1320円上記金額は,別表2-2の順号①の「被告主張額」欄記載のとおりである。 (イ) 貸付金(別表2-1の順号2の合計欄の金額)1億9015万円上記金額の内訳は,別表2-2の順号③の「被告主張額」欄記載のと おりである。 この金額は,原告が本件相続に係る相続税の申告書において相続財産であるとして記載している貸付金(貸付金返還請求債権)の価額1億9500万円(別表2-2の順号③の「当初申告額」欄の金額)のうち,確実に亡P1からの貸付金(亡P1が有する貸付金返還請求債権)であると認められた金額である(以下「本件貸付金」という。)。 (ウ) P4に対する債権等(別表2-1の順号3の合計欄の金額)4億4858万7178円上記金額の内訳は,次のa及びbのとおりである。 aP4に対する立替金(別表2-2の順号④の「被告主張額」欄)9820万円上記金額は,別表2-3の順号⑥の「売買価格」欄に記載した亡P1の土地及び建物の売却代金1億2000万円のうち,P4が自己の借入金返済に充てた金額である。 bP4に対する不当利得返還請求債権等(別表2-2の順号⑤及び順号⑥の「被告主張額」欄)3億5038万7178円 却代金1億2000万円のうち,P4が自己の借入金返済に充てた金額である。 bP4に対する不当利得返還請求債権等(別表2-2の順号⑤及び順号⑥の「被告主張額」欄)3億5038万7178円上記金額は,P4が,亡P1所有に係る金員を無断で,P4管理に係る同人及びP16名義の証券口座及び預金口座に移動させて不正に使用したことにより,亡P1が取得した,P4に対する不当利得返還請求債権及びその遅延損害金支払請求債権に相当する金額である(以下,P4が不正に使用した当該金員を「P4不正使用金」といい,その遅延損害金と併せて「P4不正使用金等」という。)。 上記金額の内訳は,次の(a)及び(b)のとおりである。 (a) P4に対する不当利得返還請求債権(別表2-2の順号⑤の「被告主張額」欄の金額) 3億1111万0950円上記金額は,別表2-4の「被告主張額」欄に記載したとおり,P4及びP16名義の証券口座及び預金口座に入金された金員のうち,亡P1所有に係る金員の合計額に相当する金額である。 (b) P4に対する遅延損害金(別表2-2の順号⑥の「被告主張額」欄の金額)3927万6228円上記金額は,別表2-5の「⑥合計」欄のうち「合計」欄に記載したとおり,P4の各不当利得の額に対する,各遅延損害金の金額を合計したものである。 (エ) P5に対する不当利得返還請求債権等(別表2-1の順号4の合計欄の金額)1億0489万5796円上記金額は,P5が,亡P1所有に係る本件各電力株を無断で売却した代金(本件P15電力株の売却代金4955万4110円及び本件P14電力株の売却代金4708万4849円)を自らの株式取引等に使用したことにより,亡P1が取得した,P5に対する不当利得返還請求債権及びその遅延損害金支払 の売却代金4955万4110円及び本件P14電力株の売却代金4708万4849円)を自らの株式取引等に使用したことにより,亡P1が取得した,P5に対する不当利得返還請求債権及びその遅延損害金支払請求債権に相当する金額である(以下,P5が不正に使用した当該金員を「P5不正使用金」といい,その遅延損害金と併せて「P5不正使用金等」という。)。 上記金額の内訳は,次のa及びbのとおりである。 aP5に対する不当利得返還請求債権(別表2-6の「⑤差引売却金額」欄のうち「本件各電力株」欄の金額)9663万8959円上記金額は,別表2-6の「⑤差引売却金額」欄に記載したとおり,P5が売却した亡P1所有に係る本件各電力株の売却金額から売買の 手数料等を差し引いた金額の合計額に相当する金額である。 bP5に対する不当利得返還請求債権(別表2-7の「⑦合計」欄のうち「合計」欄の金額)825万6837円上記金額は,別表2-7「⑦合計」欄に記載したとおり,P5の各不当利得の額に対する各遅延損害金の金額を合計したものである。 イみなし相続財産の価額(別表2-1の順号12の合計欄の金額)149万4097円上記金額は,別表2-2の順号②の「被告主張額」欄記載のとおりであり,相続税法3条1項の規定によって相続財産とみなされる金額である。 この金額の算定根拠は,いずれも亡P1を契約者及び被保険者,P4を受取人とする生命保険に係る死亡保険金の合計額1649万4097円(P38保険相互会社から平成15年6月12日に支払われた死亡保険金1019万6347円とβ郵便局から同月11日に支払われた死亡保険金629万7750円の合計額)から,相続税法12条1項5号の規定に基づき非課税限度額1500万円を控除した後の金額である。 ウ控 1019万6347円とβ郵便局から同月11日に支払われた死亡保険金629万7750円の合計額)から,相続税法12条1項5号の規定に基づき非課税限度額1500万円を控除した後の金額である。 ウ控除すべき債務等の金額(別表2-1の順号16の合計欄の金額)2116万6900円上記金額は,別表2-2の順号⑫の「被告主張額」欄記載のとおりであり,その内訳は,次の(ア)及び(イ)のとおりである。 (ア) 所得税2025万4500円上記金額は,別表2-2の順号⑩の「被告主張額」欄記載のとおりである。 この金額は,本件相続の開始時において,無申告であった別表2-3に記載した亡P1に帰属する土地及び建物の譲渡に係る所得税であり, 本件相続に係る相続税の計算上,債務として計上されていなかったことから,これを加算したものである。 (イ) 未納租税公課(固定資産税及び住民税)91万2400円上記金額は,別表2-2の順号⑪の「被告主張額」欄記載のとおりである。 この金額は,本件相続の開始時において,未納となっていた公租公課の合計額(固定資産税64万1900円と住民税27万0500円の合計額)であり,本件相続に係る相続税の計算上,債務として計上されていなかったことから,これを加算したものである。 エ 3年以内の贈与加算額(別表2-1の順号18の合計欄の金額)2180万円上記金額は,別表2-3に記載した亡P1に帰属する土地及び建物の売却代金1億2000万円のうち,P4が亡P1からの贈与により取得したものであることから,相続税法19条の規定により相続税の課税価格に加算した金額である。 (2) 原告の課税価格(別表2-1の順号19の原告欄の金額)2億5274万5000円上記金額は,次のアからイの金額を控除した金額 法19条の規定により相続税の課税価格に加算した金額である。 (2) 原告の課税価格(別表2-1の順号19の原告欄の金額)2億5274万5000円上記金額は,次のアからイの金額を控除した金額(ただし,通則法118条1項の規定により,本件相続人らごとに課税価格の1000円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。 ア未分割財産の価額(別表2-1の順号11の原告欄の金額)2億5980万1431円上記金額は,特別受益を考慮に入れて,民法の規定による相続分に見合うように未分割財産を相続人間で配分する方法で計算した後のものである(別表2-1の順号5ないし順号11)。 イ控除すべき債務等の金額(別表2-1の順号16の原告欄の金額)705万5633円上記金額は,前記(1)ウの金額に,民法に規定する法定相続分割合を乗じたものである。 (3) 原告が納付すべき相続税額(別表2-1の順号28の原告欄の金額)7348万5600円上記金額(ただし,通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)は,次のとおり算出したものである。 ア相続税の課税価格の合計額(別表2-1の順号19の合計欄の金額)7億5972万9000円上記金額は,前記(1)記載の金額と同額である。 イ遺産に係る基礎控除額(別表2-1の順号20の合計欄の金額)8000万円上記金額は,相続税法15条の規定により,課税価格の合計額(上記アの金額)から控除すべき遺産に係る基礎控除である。 ウ課税遺産総額(別表2-1の順号21の合計欄の金額)6億7972万9000円上記金額は,前記アの金額から前記イの金額を控除した後の金額である。 エ法定相続分に応ずる取得金額(別表2-1の順号23の各人欄の金額) 1の順号21の合計欄の金額)6億7972万9000円上記金額は,前記アの金額から前記イの金額を控除した後の金額である。 エ法定相続分に応ずる取得金額(別表2-1の順号23の各人欄の金額)原告 2億2657万6000円P4 2億2657万6000円P5 2億2657万6000円上記各金額は,相続税法16条の規定により,本件相続人らが前記ウの金額を民法900条及び901条の規定による相続分に応じて取得したものとした場合の金額であり,前記ウの金額に法定相続分の割合(別表2-1の順号22の各人欄の割合)をそれぞれ乗じて算出した金額(ただし,昭 和34年1月28日付け直資10による国税庁長官通達「相続税法基本通達の全部改正について」16-3の取扱いにより,本件相続人らごとに1000円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。 オ相続税の総額(別表2-1の順号25の合計欄の金額)2億2089万1200円上記金額は,前記エの本件相続人らの各取得金額に,相続税法16条に規定する率をそれぞれ乗じて算出した金額(別表2-1の順号24の各人欄の金額)の合計額である。 カ原告が納付すべき相続税額(別表2-1の順号28の原告欄の金額)7348万5600円上記金額は,相続税法17条の規定により,前記オの金額に原告の相続税の課税価格が当該課税価格の合計額のうちに占める割合(別表2-1の順号26の原告欄の割合)を乗じて算出した金額(別表2-1の順号27の原告欄の金額)に対し,通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた金額である。 2 相続税に係る過少申告加算税の額ア過少申告加算税の基礎となる税額の計算上 -1の順号27の原告欄の金額)に対し,通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた金額である。 2 相続税に係る過少申告加算税の額ア過少申告加算税の基礎となる税額の計算上,納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められる場合には,納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額を控除して計算することとされている(通則法65条4項)。 イ本件の場合,原告の過少申告加算税の基礎となる税額の計算上,本件相続人らが取得した財産のうち,前記1(1)エに記載したP4が亡P1から贈与により取得した財産2180万円について,原告は,相続税の申告書の提出期限後に当該贈与があったことを知ったことから,本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があるもの として取り扱うべきこととなる。 ウそこで,上記1のとおり,本件更正処分は適法であり,当該処分により原告が新たに納付すべきこととなる相続税額は別表2-8の順号⑧のとおり6148万5000円であるところ,原告の過少申告加算税の基礎となる税額は,正当な事由があると認められる事実のみに基づいて更正決定等があった場合の相続税の総額711万9800円(別表2-8の順号⑤のハ欄)と,申告時の相続税の総額566万6600円(別表8の順号⑤のイ欄)との差額である145万3200円(別表2-8の順号⑨欄)が控除され,別表2-8の順号⑦のとおり6003万円(通則法118条3項により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)となる。 エしたがって,原告の納付すべき過少申告加算税の金額は,次の(ア)と(イ)の合計額872万1000円となる。 (ア) 通則法65 8条3項により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)となる。 エしたがって,原告の納付すべき過少申告加算税の金額は,次の(ア)と(イ)の合計額872万1000円となる。 (ア) 通則法65条1項の規定に基づき,6003万円に100分の10の割合を乗じて算出した金額600万3000円(イ) 通則法65条2項の規定に基づき,6003万1800円から期限内申告税額566万6600円を控除した後の金額5436万円(同法118条3項により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の5の割合を乗じて算出した金額271万8000円

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