主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告が原告に対して平成10年3月13日付でした平成6年分(課税期間平成6年1月1日から同年12月31日まで),平成7年分(課税期間平成7年1月1日から同年12月31日まで)及び平成8年分(課税期間平成8年1月1日から同年12月31日まで)の所得税についての各更正処分のうち給与所得金額を0円とした部分をいずれも取り消す。 (2) 訴訟費用は,被告の負担とする。 2 請求の趣旨に対する答弁主文同旨第2 当事者の主張 1 請求原因(1) 原告の平成6年分,平成7年分及び平成8年分(課税期間平成6年1月1日から平成8年12月31日まで,以下「本件各課税期間」という。)の各所得税について,原告のした確定申告,これに対して被告のした更正処分(以下,「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定の経緯は,別表記載のとおりであり,原告の本件各課税期間における給与所得(以下,「本件給与所得」という。)と不動産所得(以下,「本件不動産所得」という。)を含む他の所得との総合課税方式による損益通算は認められなかった。 (2) しかしながら,以下のとおり,本件各更正処分は違法である。 ア本件各更正処分にかかる各更正通知書に,更正の理由が記載されていなかった。 更正の理由を附記することなく納税義務を課すことは,特に権利意識が高まっている現代社会においては不合理であるというべきであり,憲法で規定された租税法律主義に反する。青色申告書にかかる更正処分をする場合に,処分庁に対し理由附記を義務づけている以上,納税者に課せられた義務という観点からは青色申告と差異がない白色申告にかかる更正処分をする場合に 法律主義に反する。青色申告書にかかる更正処分をする場合に,処分庁に対し理由附記を義務づけている以上,納税者に課せられた義務という観点からは青色申告と差異がない白色申告にかかる更正処分をする場合にも,法律の規定がなくとも当然に理由附記が義務づけられるべきである。 イ被告は,本件各更正処分において,課税方法に関する重大な主張の変更を行ったものであるが,かかる主張変更は適正手続に反し許されない。 ウ(ア) 被告は,本件各更正処分において,原告が所得税法164条1項1号に規定された非居住者であるとの事実認定をした。 しかしながら,原告はいつでも帰国できるように,奈良県北葛城郡α22番地9所在の有限会社ラフィーネ中山台が所有する一戸建て住宅(以下,「原告所有家屋」という。)に家財道具一切を残したまま渡米し,アメリカ合衆国(以下,「米国」という。)滞在中も日本への航空券を常に所持していた。また,米国の永住権を取得しておらず,日本国籍を有している。’したがって,原告の生活の本拠は日本国内の原告所有家屋であり,原告は所得税法上の「居住者」に該当する。 (イ) 原告は,日本と米国それぞれに住居を有しており,所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との条約(以下,旧米租税条約」という。)における「日本国の居住者」及び「合衆国の居住者」のいずれにも該当する。 にもかかわらず,本件各更正処分は,原告が所得税法上の「非居住者」に該当することを前提としており,違法である。 エ原告は,その所有する奈良県生駒郡β-23-12所在の「γ」等の建物(以下,「原告所有建物」という。)を賃貸し(以下,「本件賃貸事業」という。),不動産収入(以下,「本件不動産収入」という。)を得ていた。 そして,原告は,本件賃貸事業の業務を行 在の「γ」等の建物(以下,「原告所有建物」という。)を賃貸し(以下,「本件賃貸事業」という。),不動産収入(以下,「本件不動産収入」という。)を得ていた。 そして,原告は,本件賃貸事業の業務を行うための事務所として「γ」の事務室(以下,「本件事務室」という。)を使用していた。 したがって,本件事務室は所得税法164条1項1号の所定の施設(以下,「恒久的施設」という。)に該当する。 にもかかわらず,被告は,本件事務室が恒久的施設に該当しないとの事実認定を前提として本件各更正処分を行ったものであり,違法である。 (3) 原告は,平成10年5月8日に,被告に対して本件各更正処分について異議を申し立てたが,同申立ては同年8月7日付で棄却された。 そのため,原告は,同年9月18日付で国税不服審判所に対し,本件各更正処分の審査請求をしたが,国税不服審判所は,平成12年12月21日付で,上記審査請求を棄却する旨の裁決をした。 (4) よって,原告は,被告に対し,本件各更正処分の取消しを求める。 2 請求原因に対する認否請求原因(1)及び(3)はいずれも認め,同(2)アないしエ及び同(4)はいずれも争う。 3 抗弁(本件各更正処分の適法性)(1) 原告は,本件各課税期間に,いずれも内国法人である有限会社池田,有限会社ラフィーネ三室,株式会社ウッドストックイン及び有限会社バンガード甲子園からの給与収入(以下,「本件給与収入」という。)ならびに原告所有建物を賃貸して本件賃貸事業を営み,本件不動産収入を得ていた。 そして,本件賃貸事業の業務はいずれも有限会社ラフィーネコーポレーションないしラフィーネコーポレーション(以下,両者をあわせて「受託会社」という。)が原告の委託を受けて行っていた。 (2) 原告は,葛城税務署長に対して,原告所有家屋が住所である フィーネコーポレーションないしラフィーネコーポレーション(以下,両者をあわせて「受託会社」という。)が原告の委託を受けて行っていた。 (2) 原告は,葛城税務署長に対して,原告所有家屋が住所である旨申告し,それぞれ法定申告期限内である別表「年月日」の「確定申告」欄記載の日にいわゆる白色申告書を提出して,別表の「確定申告」欄のとおり,本件不動産収入から必要経費を控除した本件不動産所得の金額,本件給与収入から給与所得控除をした本件給与所得の金額,本件給与所得に係る源泉徴収額(以下「本件源泉徴収額」という。)及び還付金(別表に注記のとおり。以下「本件各還付金」という。)等を記載して本件課税期間に係る所得税の各還付申告をした(以下,「本件各申告」という。)。 (3)ア所得税法2条1項3号及び5号は,日本国内に住所を有さず,かつ現在まで引き続き居所を有する期間が1年に満たない者を「非居住者」と規定しているところ,同条における「住所」とは民法21条所定の住所と同様に生活の本拠となる場所であると解されている。 イ原告は,平成2年ころから平成9年3月までそのほとんどの期間を米国に家族とともに居住しており,日本へは,主に正月,ゴールデンウィークないし夏休み期間中に家族(夫,長女及び次女)とともに帰国し,原告所有家屋を利用し滞在していたが,その滞在日数は平成6年が29日,平成7年が36日,平成8年が14日と極めて短かった。 ウそのため,被告は,原告所有家屋を「住所」にあたらず,また,「居所」にもあたらないと判断して,原告が非居住者に該当すると判断した。 (4)ア本件不動産所得は,所得税法161条3号に該当する国内源泉所得であるから,本件給与所得が同法161条8号イに該当する国内源泉所得であり,かつ原告が同法164条1項1号,2号ロ,3号ロのいずれか )ア本件不動産所得は,所得税法161条3号に該当する国内源泉所得であるから,本件給与所得が同法161条8号イに該当する国内源泉所得であり,かつ原告が同法164条1項1号,2号ロ,3号ロのいずれかに該当すれば,本件不動産所得との損益通算が認められる。 イしかしながら,上記(3)イのとおり日本での原告の滞在期間が極めて短かったことからすれば,本件給与所得は日本国内において行う勤務その他の人的役務の提供に基因するものと認められず,所得税法161条8号イに該当しない。 ウまた,本件給与所得は,所得税法164条1項1,2,3号の各国内源泉所得にあたらない。 (ア) 本件事務室は,あくまで原告から本件賃貸事業の委託を受けた受託会社が賃貸業務のための施設として使用していたものであり,原告自身が本件賃貸事業を行うために使用していたものではないから,所得税法164条1項1号の所定の恒久的施設にあたらない。 (イ) さらに,本件賃貸事業は,同項2号所定の「事業」に該当しないから,原告は同号に該当しない。 (ウ) 加えて,本件賃貸事業が所得税法164条1項3号所定の「事業」に該当する余地があるものの,本件給与所得は当該「事業」により得られたものではないから,同号にも該当しない。 (5) 以上のとおり,本件給与所得と本件不動産所得との損益通算は認められないから,本件各課税期間における総所得金額(総合課税の対象となる本件不動産所得の金額)から基礎控除(平成6年分は35万円,平成7年及び8年分は38万円)して得られる納付すべき所得税の税額は,別表記載のとおり,いずれも0円であり,本件各還付金相当額の還付金は発生しない。 また,国税通則法は更正処分により還付金に相当する税額が減少したときは当該減少額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算 円であり,本件各還付金相当額の還付金は発生しない。 また,国税通則法は更正処分により還付金に相当する税額が減少したときは当該減少額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を賦課する旨規定するとともに(国税通則法65条1項,35条2項2号,28条2項3号ロ),当該還付金の減少額に相当する税額が期限内申告税額相当額か50万円のいずれかが多い金額を超えるときは当該金額を超えた部分に相当する税額に100分の5の割合を乗して計算した金額を加算する旨規定する(国税通則法65条2項)。 本件において,原告は,本件各更正処分により本件各申告における還付金に相当する税額(本件各還付金相当額)が114万2959円(平成6年分),139万6498円(平成7年分),619万8600円(平成8年分)からいずれも0円に減少しており,かつ当該税額はいずれも50万円を上回っているから,原告に対する過少申告加算税は14万6000円(平成6年分),18万3500円(平成7年分)及び90万3500円(平成8年分。なお,いずれの税額も国税通則法118条3項に基づいて1万円未満の金額を切り捨てた金額を基にして計算して得られた金額から,同法119条1項に基づいて100円未満の金額を切り捨てた金額である。)となる。 (6)ア請求原因(2)アについて所得税法上,税務署長が白色申告書に係る更正処分をする際に当該更正処分に係る更正通知書にその更正の理由を附記しなければならない旨の規定はなく,かかる所得税法の規定は憲法に違反しない。 原告は,本件各課税期間における確定申告の際,いずれも白色申告書を提出して行っているから,本件各更正処分にかかる更正通知書に更正の理由を附記しなかったとしても違法ではない。 イ同イについて(ア) 国税通則法及び同法80条 ける確定申告の際,いずれも白色申告書を提出して行っているから,本件各更正処分にかかる更正通知書に更正の理由を附記しなかったとしても違法ではない。 イ同イについて(ア) 国税通則法及び同法80条が準用する行政不服審査法上,原処分庁が審査請求において処分の適法性に関する主張の変更を制限する規定はない。 (イ) 行政処分の基礎となった事実及び法的根拠が客観的に当該行政処分に係る法令所定の要件を充たしていれば,処分庁の主観的意図にかかわらず,当該行政処分は適法とされる。 したがって,審査請求における被告の主張内容にかかわらず,本件更正処分が客観的に所得税法所定の要件を充たしている以上,本件各更正処分は適法である。 ウ同エについて原告は,前記(3)のとおり所得税法上の非居住者に該当するから,当該個人が居住者か非居住者かが明らかでない場合の推定規定である所得税法施行令14条1項及び居住者であることを前提とする日米租税条約3条は,いずれも適用する前提を欠く。 (7) よって,本件各更正処分は,いずれも適法である。 4 抗弁に対する認否(1) 抗弁(1)のうち,原告が本件賃貸事業の業務の一部を受託会社に委託していたことは認める。 (2) 同(3)ア及びウは争い,同イのうち,米国に居住していること及び日本に帰国した際にその滞在日数が短かったことは認め,その余は否認する。 (3) 同(4)のうち,受託会社が本件事務室を使用していたことは認め,その余は争う。 (4) 同(5)ないし(7)はいずれも争う。 理由 1 請求原因(1)及び(3)の各事実は当事者間に争いがない。 2 抗弁について(1) 抗弁(1)のうち,原告が本件賃貸事業の業務の一部を受託会社に委託していた事実,同(3)イのうち,米国に居住していること及び日本に帰国した際に 事実は当事者間に争いがない。 2 抗弁について(1) 抗弁(1)のうち,原告が本件賃貸事業の業務の一部を受託会社に委託していた事実,同(3)イのうち,米国に居住していること及び日本に帰国した際にその滞在日数が短かった事実,同(4)のうち,受託会社が本件事務室を使用していた事実は,いずれも当事者間に争いがない。 (2) 同(3)(原告が所得税法上の「非居住者」に該当するか否か)についてア所得税法は,所得税の納税義務者が所得税法上の居住者であるか非居住者であるかによって,その課税所得の範囲を異に規定しているところ,被告は,原告が所得税法上の非居住者に該当すると主張する。 そして,同法2条1項3号,5号によれば,国内に住所を有し,または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人は居住者とされ,居住者以外の個人は非居住者とされている。 (ア) 「住所」の意義そもそも所得税法の規定における「住所」の意義については,所得税法の明文またはその解釈上,民法21条の定める住所の意義,即ち各人の生活の根拠と異なる意義に解すべき根拠を見出し難いといえる。 また,実際に当該個人の生活の本拠がいずれに存在するかを決するにあたっては,租税法は多数人を相手方として課税を行う関係上,客観的な表象に着目して画一的に規律せざるを得ない。 したがって,所得税法上の「住所」も,民法21条の定める「住所」と同様に各人の生活の本拠をいうと解すべきであり,実際に当該個人の生活の本拠がいずれに存在するかを認定するにあたっては,客観的な事実,即ち住居,職業,国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有するか否か,資産の所在等に基づき判定するのが相当である(最高裁判所昭和63年7月15日判決・税務訴訟資料159号51頁,神戸地方裁判所昭和60年12月2日判決・判例タイムズ6 配偶者その他の親族を有するか否か,資産の所在等に基づき判定するのが相当である(最高裁判所昭和63年7月15日判決・税務訴訟資料159号51頁,神戸地方裁判所昭和60年12月2日判決・判例タイムズ614号58頁参照)。 (イ) 「居所」の意義「居所」についても,「住所」と同様民法22条の定める居所と同様に解すべきであるところ,同条によれば住所を有しない場合には居所を住所とすると規定し,住所が存在する場合と同様の法的効果を付与していることからすれば,居所といいうるためには一時的に居住するだけでは足りず,生活の本拠という程度には至らないものの,個人が相当期間継続して居住する場所をいうものと解される。 イ検討(ア) 住所が日本国内にあるか否かについて乙1,2及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 原告は,平成2年ころから平成9年3月までそのほとんどの期間を米国において家族とともに居住していた。 b 原告及びその家族は,年末年始,ゴールデンウィークないし夏期休暇(8月中)に日本へ帰国し,再度出国するまでの間は原告所有家屋ないし原告の実家に滞在していた。 c 原告の日本での滞在日数は以下のとおりであった。 (a) 平成6年・1月1日から1月7日まで 7日・8月16日から9月2日まで 18日・12月26日から12月31日まで 6日・合計 31日(b) 平成7年・1月1日から1月5日まで 5日・5月1日から5月6日まで 6日・8月14日から8月29日まで 16日・12月20日から12月31日まで 12日・合計 39日(c) 平成8年・1月1日から1月7日まで 7日・5月3日から5月10日まで 8日・合計 15日原告は,米国内に住所を有していること自体は争っていないところ,同事実及び上記認定事実を総合的に判断す 平成8年・1月1日から1月7日まで 7日・5月3日から5月10日まで 8日・合計 15日原告は,米国内に住所を有していること自体は争っていないところ,同事実及び上記認定事実を総合的に判断すれば,原告の日本における原告所有家屋での滞在は里帰り目的等の一時的なものにすぎず,客観的には原告の生活の本拠は米国内の住所であったと認められる。 なお,乙1によれば,原告の夫であるAは,平成6年及び同7年については日本国内に1年の約半分程度は滞在していたことが認められ,原告とAが生計を一にしている可能性がないとはいえないが,国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有するかという点は,原告の住所が日本国内にあるのか否かの判断をするに際しての補完的な役割を果たすものと解すべきであって,上記cで認定したとおり,原告が住所であると主張する場所での滞在期間が客観的に明らかである以上,上記可能性の存在によって前記認定が覆るものではない。 (イ) 居所が日本国内にあるかについて上記(ア)cで認定した日本での滞在日数からすれば,原告が継続して原告所有建物に滞在していた期間は最長でも18日であり,原告が原告所有家屋に相当期間継続して居住していたと認めることはできない。 (ウ) なお,原告は,日本と米国それぞれに住居を有しており,日米租税条約における「日本国の居住者」及び「合衆国の居住者」のいずれにも該当すると主張する。 しかしながら,そもそも日米租税条約は,当該個人に対して二重課税を課すことを回避するとの目的のもとに米国との間で締結されたものであって,同条約3条3項は,①日本と米国双方の居住者となる個人は,その保有する恒久的住居が存在する国の居住者とみなす,②恒久的住居を日本及び米国双方の国内に有する場合には,当該個人はその人的及び経済的関係が最も密 条3項は,①日本と米国双方の居住者となる個人は,その保有する恒久的住居が存在する国の居住者とみなす,②恒久的住居を日本及び米国双方の国内に有する場合には,当該個人はその人的及び経済的関係が最も密接な締約国(重要な利害関係の中心がある国)の居住者とみなす,③重要な利害関係の中心がある国が決定できない場合には当該個人は自己が国民である締約国の居住者とみなすと規定し,当該個人が日本及び米国のいずれの居住者にも該当する場合に二重課税を回避するためにいずれか一方の居住者とみなすとした推定規定に過ぎない。 そして,上記規定③により国籍を有する国の居住者とみなされるのは,上記①のとおり当該個人が「日本の居住者」であることを前提としており,そこにいう「日本国の居住者」とは,同条1項(b)によれば,日本国の租税に関し日本国における居住者とされる法人以外の者をいうとされているところ,上記(ア)及び(イ)で検討したとおり,原告は所得税法上の居住者ではないと認められるから,この点に関する原告の主張は前提を欠く。 (3) 同(4)について所得税法上の非居住者については,同法5条2項により国内源泉所得を有するときは,同法の規定に基づき所得税の納税義務があるとされているところ,同法7条1項2号によれば,同法164条1項各号に掲げる非居住者の区分に応じそれぞれ同項各号及び同条2項各号に掲げる国内源泉所得が非居住者の課税所得とされる旨規定されている。 そして,同法161条8号イによれば,給与,報酬,年金等については,俸給,給料,賃金,歳費,賞与またはこれらの性質を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち,国内において行う勤務その他人的役務の提供に基因するものが国内源泉所得とされているところ,仮に本件給与所得がこれに該当したとしても,同法164条1項1号 給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち,国内において行う勤務その他人的役務の提供に基因するものが国内源泉所得とされているところ,仮に本件給与所得がこれに該当したとしても,同法164条1項1号,同項2号ロ及び同項3号ロのいずれにも該当しない場合には,同法164条2項により納税額の計算について分離課税の方法によるとされ,他の国内源泉所得との総合課税の方法すなわち損益通算の方法により納税額を計算することができないとされていることから,本件給与所得が,上記いずれかの場合に該当するかについて以下検討する。 アウ(ア)(所得税法164条1項1号該当性)について所得税法164条1項1号の適用を受けるためには,納税義務者が恒久的施設を有している必要があるところ,同法施行令289条1項によれば,恒久的施設とは,支店,出張所その他の事業所等ないし事業を行う一定の場所でこれらの場所に準ずるものをいうとされている。 そして,所得税法が非居住者の国内源泉所得の納税方法につき分離課税の方法を原則としつつ,同号該当の場合に例外的に総合課税の方法による納税額の算出を認めたのは,当該非居住者が恒久的施設を設けて事業を行う場合には,当該事業自体がわが国との緊密性が強く,したがって当該事業から生じる国内源泉所得についても,その国内での依存度が居住者の所得と同視することができるほどに極めて高いと認められることから,納税額の算出にあたっても居住者と同様の方法によることを認めた趣旨であると解される。 だとすれば,同号における恒久的施設に該当するためには,単に事業を行う場所を設置するだけでは足りず,日本の居住者と同視することができる程度に当該場所で実質的な事業が行われ,当該事業によって発生する所得についての日本国内での依存度が高い所得であると認められる必要があると解す 設置するだけでは足りず,日本の居住者と同視することができる程度に当該場所で実質的な事業が行われ,当該事業によって発生する所得についての日本国内での依存度が高い所得であると認められる必要があると解すべきである。 本件においてこれをみてみると,原告が本件賃貸事業の業務の一部を受託会社に委託していた事実及び受託会社が本件事務室を使用していた事実はいずれも当事者間に争いがなく認められ,乙1及び弁論の全趣旨によれば,原告が本件事務室で行っていた本件賃貸事業に関する業務は,不動産業者から顧客の斡旋を受けること及び契約管理等の簡易な業務であり,家賃については自動集金のため自ら集金を行うことはなかったことが認められる。 上記認定事実及び前記(2)イで認定したとおり,原告の日本での滞在日数が極めて短くまたその目的も実家への里帰り等であるなど一時帰国であったことならびにその滞在期間中に本件事務室で労務を提供したこと及び本件事務室に本件賃貸事業の事業活動の遂行にとって一般的に必要とされる環境が備わっていることについてはいずれもこれを認めるに足りる証拠がないこと等を総合して判断すれば,原告は本件事務室において日本の居住者と同視しうると評価するに足りる実質的な作業を行っていないと認められ,本件事務室が恒久的施設であると認めることはできない。 イ同(イ)(所得税法164条1項2号ロ該当性)について所得税法164条1項2号は,日本国内において建設,据付け,組立てその他の作業又はその作業の指揮監督の役務の提供を1年を超えて行う非居住者のうち同条1項1号に該当するものを除く非居住者については,同号イ及びロに規定する国内源泉所得について総合課税方式を認めているところ,同号ロは,161条4号から12号までに掲げる国内源泉所得のうち,その非居住者が国内において行う建設 除く非居住者については,同号イ及びロに規定する国内源泉所得について総合課税方式を認めているところ,同号ロは,161条4号から12号までに掲げる国内源泉所得のうち,その非居住者が国内において行う建設作業等に係る事業に帰せられるものと規定されている。 本件においてこれをみてみると,乙1によれば原告が営んでいた事業は不動産賃貸業であることが認められるところ,不動産賃貸業が所得税法164条2号ロに規定する建設作業等に係る事業に含まれないことは明らかであるから,本件給与所得をもって原告が国内で行う建設事業等に係る事実により帰せられるものであると認めることはできない。 ウ同(ウ)(所得税法164条1項3号ロ該当性)について所得税法164条1項3号ロに該当するためには,当該非居住者が日本国内に自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者で政令で定めるもの(以下,「代理人等」という。)を置いている必要がある。 本件においてこれをみてみると,乙1及び弁論の全趣旨によれば,原告が本件賃貸事業を行うにあたり,原告所有建物の管理業務等を受託会社に委託していることは認められるものの,仮に受託会社が「代理人等」に該当したとしても,本件給与所得はいずれも受託会社ではなく,有限会社池田,有限会社ラフィーネ三室,株式会社ウッドストックイン及び有限会社バンガード甲子園からの給与収入に基づくものであることが認められるから,本件給与所得が代理人等を通じて行う事業に帰せられるものと認めることはできない。 (4) 以上のとおりであるから,原告は本件給与所得に係る所得税額の計算にあたり,総合課税の方法により本件不動産所得との損益通算の方法をとることはできず,分離課税の方法により本件不動産収入についてのみ所得税法の規定により所得控除を行えば,原告が本件各課税期間 額の計算にあたり,総合課税の方法により本件不動産所得との損益通算の方法をとることはできず,分離課税の方法により本件不動産収入についてのみ所得税法の規定により所得控除を行えば,原告が本件各課税期間において納税義務を負う額は別表の「更正処分等」の「申告納税額」記載のとおりいずれも0円となり本件還付金は発生しない。また,所得税法65条の規定により原告に対しては「過少申告加算税」欄記載のとおり過少申告加算税が発生することになる。 (5)ア本件各更正処分にかかる各更正通知書への更正の理由の記載について所得税法168条が引用する同法155条2項は,居住者が提出した青色申告書に係る年分の総所得金額,退職金額若しくは山林所得金額又は純損失の金額(同条1項1号に規定する事由のみに基因するものを除く。)をする場合には,その更正に係る更正通知書にその更正の理由を附記しなければならないとされているところ,同条がいわゆる白色申告書による所得税の確定申告を行った場合に適用されないのはその文言上明らかであり,また,不利益処分に理由附記を要求した行政手続法14条の規定も国税通則法74条の2によってその適用が除外されている。 したがって,理由の記載のないことをもって本件各更正処分が違法となるものではないというべきである。 なお,仮に行政手続に憲法31条が適用されると解するとしても,同条が,「法律の定める手続によらなければ」と規定している以上,不利益処分に関する手続上の要件については原則として立法府の定める法律に従うべきであると解されるから,前記結論を左右しない。 イ被告の本件訴訟における主張の変更について課税処分取消訴訟の訴訟物は,処分の主体,内容,手続,方式等すべての面における違法,すなわち処分の違法性一般であり,課税庁が処分時に認識した処分理由に誤りが 告の本件訴訟における主張の変更について課税処分取消訴訟の訴訟物は,処分の主体,内容,手続,方式等すべての面における違法,すなわち処分の違法性一般であり,課税庁が処分時に認識した処分理由に誤りがあったとしても,課税処分によって確定された税額が処分時に客観的に存在した税額を上回らない限り,課税処分は適法であると解するのが相当である(総額主義)。 そうすると,課税庁が異議申立てに対する裁決ないし審査請求手続における主張と異なる処分理由を主張すること(処分理由の追加,差替え)のみをもって処分が違法になるとはいえず,原告の主張は理由がない。 3 よって,本件各更正処分はいずれも適法である。 なお,原告は,原告の夫が逮捕されたことにより捜査機関に押収されている証拠物を本件事件の証拠として提出したいとして,原告の夫の刑事事件が終了し,捜査機関から証拠物の返還を受けるまで本件事件の期日を延期することを求めているが,本訴の審理及び原告の主張及び立証の経過等から,当裁判所は弁論終結相当と判断したものである。 4 結語以上のとおりであって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第5民事部裁判長裁判官前坂光雄裁判官寺本明広裁判官窪田俊秀
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