【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人栗原宰之助の上告理由第一点乃至第四点について。 論旨は、いずれも原
主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人栗原宰之助の上告理由第一点乃至第四点について。 論旨は、いずれも原審のした事実認定を非難するか、原審の認定しない事実にもとずいて原判決の判断を攻撃するものであつて上告適法の理由とならない。(論旨第二点も、第一審判決摘示にかかる大審院判例の趣旨を正解せざるにもとずくものであつて採るに足りない)よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条により主文のとおり判決する。 この判決は上告理由第二点に関する裁判官小谷勝重、谷村唯一郎の少数意見、裁判官藤田八郎の補足意見を除く他の裁判官の一致した意見によるものである。 上告理由第二点に関する裁判官藤田八郎の補足意見は左のとおりである。 原判決の確定するところによれば、本件公正証書に記載された強制執行受諾に関する合意は被上告人(債務者)の代理人としてのDと上告人(債権者)との間に締結され、右両人の嘱託に基き公証人によつて右公正証書に記載されたことは明らかである。しかして右Dに被上告人を代理してかかる行為をすることの権限のなかつたこともまた、原判決の確定するところである。従つて、上告人が民法一一〇条表見代理の法理を主張して、右合意が被上告人に対して効力を及ぼすことを主張するがためには、右表見代理人Dについて民法一一〇条所定の要件を具備することを主張、立証しなければならない。しかるに、上告人の原審において主張するところは、終始、上告人においてEに被上告人を代理する権限あることを信ずべき正当の事由ありというに過ぎないのであつて、このことがいかにして右執行受諾約款をして有効ならしめるかの法理と事実関係を毫も主張、立証しないのであるから原判決が、- 1 -判示のごとく上告人の べき正当の事由ありというに過ぎないのであつて、このことがいかにして右執行受諾約款をして有効ならしめるかの法理と事実関係を毫も主張、立証しないのであるから原判決が、- 1 -判示のごとく上告人のこの主張を容れなかつたことをもつて違法とすることはできない。 さらに、かりに、民法一一〇条表見代理の法理によつて、上告人と被上告人との間に強制執行受諾に関する合意が有効に成立したとしても、右Dに被上告人を代理する権利のないことは前叙のとおりであるから、右合意に関する公正証書の記載は無権代理人の嘱託に基いてなされたものと云わなければならない。公証人に公正証書の記載を嘱託する行為は、公法上の関係であり、殊に執行受諾に関する合意を公正証書に記載することを嘱託する行為は、公証人に対し、当該公正証書をして、強制執行の債務名義たるの要件を具備せしめることを要求する行為であつて、その間に民法一一〇条の適用の余地のないことは勿論であるから(上告人も公証人に対する関係において民法一一〇条の適用ありとは主張していない)右合意は「強制執行による権利保護の要件を形成する訴訟法上の法律行為たる性質を有する」の故を以て民法の表見代理の規定はその適用を見ないとして上告人の請求を排斥した原判決は正当であるといわなければならない。(昭和一九年九月二八日大審院判決民集五六九頁参照)裁判官小谷勝重、同谷村唯一郎の少数意見は次のとおりである。 原審は本件につき上告人の控訴を棄却し、その理由については第一審判決の理由を引用している。そして一審判決によれば、上告人には本件公正証書作成に関し訴外Eが被上告人の代理権を有したものと信ずべき正当の理由があつたとの上告人の抗弁に対し、強制執行の受諾に関する合意は訴訟上の法律行為たる性質を有するから、私法上の原則として表見代理につき認められ 訴外Eが被上告人の代理権を有したものと信ずべき正当の理由があつたとの上告人の抗弁に対し、強制執行の受諾に関する合意は訴訟上の法律行為たる性質を有するから、私法上の原則として表見代理につき認められた民法一一〇条の適用はないとの理由で、右抗弁を排斥しているのである。 上告理由第二点は結局右判断の違法を主張するものであつて、しかもそれは法令の解釈に関する重要なる主張と認むべきであるから、当裁判所はこれにつき判断を- 2 -示すべきものと考える。 思うに、訴訟上の法律行為(以下訴訟行為という)は私法上の法律行為(以下法律行為という)とその性質を異にし、したがつて法律行為につき認められた民法上の諸原則がそのまま訴訟行為に適用さるべきでないことはいうをまたない。しかしながら、両者その性質を異にするとの理由のみにより、法律行為に関する原則は訴訟行為には全く適用の余地がないものとなすべきではなく、法律行為につき定められた民法の規定であつても、これを訴訟行為に類推適用することがむしろ相当と認められる場合の存することを否定すべきではない。現に民法一〇八条は公正証書における執行受諾行為についてもこれを類推適用すべしとすること当裁判所の判例とするところである(昭和二六年六月一日第二小法廷判決民集五巻三六七頁参照。)。 そして民法一一〇条もまた執行受諾行為にこれを類推適用すベきである。けだし、執行受諾行為は訴訟行為ではあつても、これに一一〇条の法意を類推し、相手方が代理人に公正証書作成の代理権ありと信じかつこれを信ずるにつき正当の事由があつた場合においては、公正証書は本人に対しその効力を有するものと解しても、これを不当となすべき何等実質的理由を発見することはできないばかりでなく、かえつてかく解することが、取引の実情に合致し、取引の安全を重視する法律の精神に 書は本人に対しその効力を有するものと解しても、これを不当となすべき何等実質的理由を発見することはできないばかりでなく、かえつてかく解することが、取引の実情に合致し、取引の安全を重視する法律の精神に適合するものと信ぜられるからである。原審の見解は、形式論に拘泥して取引の実情を無視し、法律の精神に背馳せるものであつて、とうていこれを支持することはできない。 よつて本件上告は理由があるから原判決を破棄し、上告人につき民法一一〇条所定の正当の理由があつたか否か等を審理せしめるため、本件を原審へ差し戻すベきである。 最高裁判所第二小法廷裁判官栗山茂- 3 -裁判官小谷勝重裁判官藤田八郎裁判官谷村唯一郎裁判長裁判官霜山精一は退官につき署名押印することができない。 裁判官栗山茂- 4 -
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