平成23年(ワ)第1305号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成24年9月21日判決東京都豊島区〈以下略〉原告株式会社インターリンク同訴訟代理人弁護士生田哲郎同森本晋同佐野辰巳同中所昌司同訴訟代理人弁理士吉浦洋一東京都港区〈以下略〉被告ソフトバンクBB株式会社同訴訟代理人弁護士五十嵐敦同岡田誠同関真也同訴訟代理人弁理士髙村和宗 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成23年1月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,名称を「インターネット電話用アダプタ」とする発明についての特許権を有する原告が,被告が譲渡,貸与等している別紙物件目録記載のインタ ーネット電話用アダプタが同特許権の技術的範囲に属すると主張して,被告に対し,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金の一部請求として,1億円及びこれに対する平成23年1月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 争いのない事実等(証拠略)(1) 当事者ア原告は,電気通信事業法に定める電気通信事業等を業とする株式会社である。 イ被告は,A 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 争いのない事実等(証拠略)(1) 当事者ア原告は,電気通信事業法に定める電気通信事業等を業とする株式会社である。 イ被告は,ADSL事業,FTTH事業,コンテンツサービス事業,流通事業等を業とする株式会社であり,ソフトバンク株式会社の連結子会社で,ソフトバンクグループのブロードバンド・インフラ事業を行う会社である。 (2) 原告の有する特許権原告は,次の内容の特許権の特許権者である(以下,この特許権を「本件特許権」といい,同特許権に係る特許を「本件特許」という。また,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書等」といい,その内容は別紙特許公報写し(略)のとおりである。)。 特許番号第4397507号発明の名称インターネット電話用アダプタ出願日平成12年4月27日登録日平成21年10月30日(3) 本件特許に係る特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲請求項1及び2の各記載は,別紙特許公報の写しの各該当項記載のとおりである(以下,請求項1及び2記載の特許発明をそれぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」といい,これらを総称して「本件発明」という。)。 (4) 構成要件の分説 ア本件発明1本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件1A」などという。)。 1A 公衆回線用電話機を用いてインターネットを介した通話を行うためのアダプタであって,1B(a) 中央演算装置と,(b) 呼出信号発生部と,(c) インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段と,(d) 公衆回線用電話機との接続手段と, めのアダプタであって,1B(a) 中央演算装置と,(b) 呼出信号発生部と,(c) インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段と,(d) 公衆回線用電話機との接続手段と,(e) オフフック検出部と,(f) DTMF信号検出部と,(g) トーン発生部と,を備え,1C インターネットを介した通話呼出がなされた場合に,前記呼出信号発生部において呼出信号を発生し,該呼出信号を公衆回線用電話機に対して出力し,1D 相手方のIPアドレスを変換した番号をダイヤルすることで発呼することを可能とする,1E ことを特徴とするインターネット電話用アダプタ。 イ本件発明2本件発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件2A」などという。)。 2A 公衆回線用電話機を用いてインターネットを介した通話を行うためのアダプタであって,2B(a) 中央演算装置と,(b) 呼出信号発生部と,(c) インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段と, (d) 公衆回線用電話機との接続手段と,(e) オフフック検出部と,(f) DTMF信号検出部と,(g) トーン発生部と,を備え,2C インターネットを介した通話呼出がなされた場合に,前記呼出信号発生部において呼出信号を発生し,該呼出信号を公衆回線用電話機に対して出力し,2D 相手方のIPアドレスを意味する番号をダイヤルすることで発呼することを可能とする,2E ことを特徴とするインターネット電話用アダプタ。 (5) 被告の行為被告は,本件特許の出願後である平成13年9月1日以降,「Yahoo! BB」などのADSLサービスを提供している。そして,被告は,本件特許の登録以前 用アダプタ。 (5) 被告の行為被告は,本件特許の出願後である平成13年9月1日以降,「Yahoo! BB」などのADSLサービスを提供している。そして,被告は,本件特許の登録以前から現在まで,被告のADSLサービスの利用者に対し,別紙物件目録記載のインターネット電話用アダプタ(以下,同目録記載1の各製品を「被告アダプタ1」,同目録記載2の製品を「被告アダプタ2」,同目録記載3の製品を「被告アダプタ3」といい,これらを総称して「被告アダプタ」という。)を,有償で譲渡し若しくは貸与し,又はその申出をしている。 (6) 被告アダプタの構成等被告アダプタ1ないし3は,本件特許に関係する範囲で,それぞれ別紙被告アダプタ説明書1ないし3の構成を有している。 被告アダプタは,いずれも公衆回線用電話機を用いてインターネットを介した通話を行うためのアダプタであって,中央演算装置,呼出信号発生部,公衆回線用電話機との接続手段,オフフック検出部,DTMF信号検出部及びトーン発生部を備えており,インターネットを介した通話呼出がなされた場合に,呼出信号発生部において呼出信号を発生し,呼出信号を公衆回線用 電話機に対して出力するものである。よって,被告アダプタは,本件発明1の構成要件1A,1B(a),1B(b),1B(d)ないし(g)及び1Cをそれぞれ充足し,同様に,本件発明2の構成要件2A ,2B(a),2B(b),2B(d)ないし(g)及び2Cをそれぞれ充足する。 なお,被告アダプタにおいては,同アダプタに接続された公衆回線用電話機で,「050」で始まる相手方のIP電話番号をダイヤルすることにより,発呼が可能である。 3 争点(1) 被告アダプタが本件発明の技術的範囲に属するか否かア構成要件1B(c)及び2 話機で,「050」で始まる相手方のIP電話番号をダイヤルすることにより,発呼が可能である。 3 争点(1) 被告アダプタが本件発明の技術的範囲に属するか否かア構成要件1B(c)及び2B(c)の充足性イ構成要件1Dの充足性ウ構成要件2Dの充足性エ構成要件1E及び2Eの充足性オ均等侵害の成否(2) 本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものか否か(3) 損害の発生及びその額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(構成要件1B(c)及び2B(c)の充足性)について〔原告の主張〕(1) 「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」の意義構成要件1B(c)及び2B(c)の文言は「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」である。 この「インターネットに接続されたコンピュータ」は,コンピュータが「直接」インターネットに接続されていることを要するものではなく,例えば,アダプタ等を介してインターネットに接続される形態を排除するものではない。 また,「通信手段」は,コンピュータとアダプタとの間で通信を行うための「手段」が設けられていることをもって足りるというべきであり,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データを「コンピュータ」及び「アダプタ」との間でやり取りするという意味での「通信手段」に限定されることはなく,また,コンピュータとアダプタとの間での通信が実際に行われることまで要求されるものではない。 (2) 構成要件充足性被告アダプタは,インターネット回線,コンピュータ及び公衆回線用電話機とそれぞれ接続可能であるから,このコンピュータは,被告アダプタを介してインターネット回線と接続可能であり,また,コン 件充足性被告アダプタは,インターネット回線,コンピュータ及び公衆回線用電話機とそれぞれ接続可能であるから,このコンピュータは,被告アダプタを介してインターネット回線と接続可能であり,また,コンピュータと被告アダプタは,ケーブルを介して接続可能で,これにより両者間の通信(後記(3)イのとおり,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データの通信には限定されない。)が行われるから,結局,被告アダプタは,インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段を有しており,構成要件1B(c)及び2B(c)をいずれも充足する。 (3) 被告の主張に対する反論ア 「インターネットに接続されたコンピュータ」につき被告は,「インターネットに接続されたコンピュータ」とは,アダプタとは別個のものである,直接インターネットに接続されたコンピュータを意味すると主張する。 しかし,特許請求の範囲請求項1及び2の文言にも,本件明細書等の記載にも,コンピュータが「直接」インターネットに接続されていることを要するとの限定はない。被告が引用する本件明細書の段落【0008】,【0009】及び【0011】には,コンピュータが「直接」インターネットに接続されていることを要する旨の記載は一切なく,また,段落【0029】及び【0030】は,実施例の記載にすぎず,本件発明の技術的 範囲を実施例のものに限定すべき旨の記載はない。 イ 「通信手段」につき被告は,構成要件1B(c)及び2B(c)の「通信手段」とは,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データを「コンピュータ」及び「アダプタ」との間でやり取りするという意味での「通信」を行う機能を少なくとも有する通信手段を意味すると主張する。 しかし,特許請求の範 した通話を行うために必要な信号・データを「コンピュータ」及び「アダプタ」との間でやり取りするという意味での「通信」を行う機能を少なくとも有する通信手段を意味すると主張する。 しかし,特許請求の範囲請求項1及び2の文言は,「通信手段」であるにすぎず,コンピュータとアダプタとの間で通信を行うための「手段」が設けられていることをもって足りるというべきであり,コンピュータとアダプタとの間での通信が実際に行われることまでは要求していない。 被告が指摘する本件明細書等の段落【0021】以下の各段落の記載は実施例の記載にすぎず,本件発明がその実施例に限定されるべき根拠はなく,また,段落【0009】及び【0011】の各記載は,パーソナルコンピュータに制御ソフトウェアがインストールされているという一つのケースを想定した記載にすぎず,いずれも本件発明の「通信手段」の意義を,被告主張のように限定する根拠となるものではない。 〔被告の主張〕(1) 「インターネットに接続されたコンピュータ」の意義ア本件発明の構成要件1B(c)及び2B(c)は,インターネット電話用アダプタが「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」を備えることを規定する。 ここで,「インターネットに接続されたコンピュータ」とは,アダプタとは別個のものである,直接インターネットに接続された「コンピュータ」を意味すると解するべきである。 すなわち,本件発明は,公衆回線用電話機を用いて「インターネットを介した通話を行うためのアダプタ」についての発明であり,特許請求の範 囲の記載上,「インターネットを介した通話」を行うことが予定されているが(構成要件1A,1C),本件発明の中でインターネットとの接続について記載されている部分は,「インターネットに接続 囲の記載上,「インターネットを介した通話」を行うことが予定されているが(構成要件1A,1C),本件発明の中でインターネットとの接続について記載されている部分は,「インターネットに接続されたコンピュータ」のみであり,当該アダプタは,かかる「インターネットに接続されたコンピュータ」との「通信手段」を備えるとされていることからすれば,特許請求の範囲の記載上,アダプタとは別個のものである「コンピュータ」がまず直接インターネットに接続され,かかる「コンピュータ」との「通信手段」によってアダプタが接続され,当該アダプタが備える「公衆回線用電話機との接続手段」によって電話機が接続されるという構成が予定されているというべきである。 イまた,本件発明において,インターネットと直接接続されるのがコンピュータとされていることは,発明の詳細な説明における記載からも明らかである。 すなわち,「本発明のアダプタは,通常家庭等で用いられている公衆回線(一般回線)用の電話機を用い,この電話機とコンピュータの間に接続されるものである。」(段落【0008】)と記載されていることに加えて,電話の受信時の処理手順につき,コンピュータ-アダプタ-電話機の順で処理を行うものとされており(段落【0009】),また,電話の発呼時の処理手順についても,電話機-アダプタ-コンピュータの順で処理を行った上でインターネットを介して発呼するものとされている(段落【0011】,【0029】及び【0030】)。 これらの記載から,インターネットに直接接続されているのはコンピュータであることは明らかである。他方で,コンピュータがインターネットに直接接続された構成以外の構成は一切開示されていない。 ウ以上により,「インターネットに接続されたコンピュータ」とは,アダプ であることは明らかである。他方で,コンピュータがインターネットに直接接続された構成以外の構成は一切開示されていない。 ウ以上により,「インターネットに接続されたコンピュータ」とは,アダプタとは別個のものである,直接インターネットに接続された「コンピュ ータ」を意味する。 (2) 「通信手段」の意義構成要件1B(c)及び2B(c)の「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」における「通信手段」とは,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データを「コンピュータ」及び「アダプタ」との間でやり取りするという意味での「通信」を行う機能を少なくとも有する通信手段であると解すべきである。 すなわち,本件発明には,「インターネットを介した通話を行うためのアダプタ」と記載されているから,アダプタが備える構成は,インターネットを介した通話を行うための機能を少なくとも有するものでなければならない。 このことは,本件明細書等の段落【0009】,【0011】,【0021】,【0022】,【0029】,【0030】及び【0031】において,「コンピュータ」がインターネットを介した音声等のやり取り,すなわちインターネットを介した通話を行うために必要な機能を発揮するものとされており,また,「通信手段」が,「コンピュータ」がかかる機能を発揮するために必要な信号・データ等のやり取りを「コンピュータ」と「アダプタ」との間で行うためのものとされていることからも明らかである。 したがって,「通信手段」とは,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データを「コンピュータ」と「アダプタ」との間でやり取りするという意味での「通信」を行う機能を少なくとも有する通信手段を意味する。 (3) 構成要件充足性ア被告アダ うために必要な信号・データを「コンピュータ」と「アダプタ」との間でやり取りするという意味での「通信」を行う機能を少なくとも有する通信手段を意味する。 (3) 構成要件充足性ア被告アダプタにおいては,「コンピュータ」に相当するパーソナルコンピュータは,被告アダプタを介してインターネットに接続されるのであり,直接インターネットに接続されるものではない。したがって,被告アダプタは,前記(1)で述べた,直接インターネットに接続された「コンピュータ」 との通信手段を有していないから,この点において,構成要件1B(c)及び2B(c)を充足しない。 イまた,被告アダプタにパーソナルコンピュータを接続することは,インターネット電話機能を発揮するための要件ではなく,パーソナルコンピュータが接続されていなくても,固定電話機を被告アダプタに接続すればインターネット電話として使用することができる。 実際,被告アダプタを流れる信号・データには,①電話機が通常のアナログ回線を介した通話呼出・発呼及び通話を行うための信号・データ,②電話機がインターネットを介した通話呼出・発呼及び通話を行うための信号・データ及び③パーソナルコンピュータがインターネットを介したデータの送受信を行うための信号・データの3種類があるが,これらの3種類の通信信号のうち,被告アダプタとパーソナルコンピュータとの間で行われる通信は,上記③の信号の送受信のみであり,上記②の信号が被告アダプタとパーソナルコンピュータとの間で送受信されることはない。 このように,被告アダプタにおいて,コンピュータはインターネットを介した通話を行うための機能を全く担っておらず,被告アダプタとコンピュータとの通信手段も,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データを アダプタにおいて,コンピュータはインターネットを介した通話を行うための機能を全く担っておらず,被告アダプタとコンピュータとの通信手段も,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データを被告アダプタとやり取りするという,本件発明の「通信手段」が最低限有すべき機能を有していない。 したがって,被告アダプタは,インターネットに接続されたコンピュータとの「通信手段」を備えておらず,この点においても,構成要件1B(c)及び2B(c)を充足しない。 2 争点(1)イ(構成要件1Dの充足性)について〔原告の主張〕(1) 「相手方のIPアドレスを変換した番号」の意義広辞苑(第四版)によれば,「変換」とは「①かえること。かわること。」 とされている。したがって,構成要件1D「相手方のIPアドレスを変換した番号」とは,相手方のIPアドレスを何らかの方法で「かえた」番号であるということになる。 もっとも,本件発明1は,「相手方のIPアドレスを変換した番号」をダイヤルすることによって相手方のIPアドレスを特定し,インターネットにおける通話を可能にするものである。 よって,「相手方のIPアドレスを変換した番号」とは,相手方のIPアドレスを何らかの方法で「かえた」番号ではあるが,「その番号を利用することによって相手方との間のインターネット接続に必要なIPアドレスを何らかの方法によって特定することが可能となる番号」ということになる。 (2) 構成要件充足性被告アダプタにおいては,公衆回線用電話機において,「050」で始まる相手方のIP電話番号をダイヤルすることにより発呼が可能であるところ,この「050」で始まる電話番号は,相手方のIPアドレスそのものではないが,これをダイヤルすることにより相手方のIPアドレスが る相手方のIP電話番号をダイヤルすることにより発呼が可能であるところ,この「050」で始まる電話番号は,相手方のIPアドレスそのものではないが,これをダイヤルすることにより相手方のIPアドレスが特定され,相手方とのインターネット電話を可能にするものであるから,相手方のIPアドレスを何らかの方法で「かえた」番号であり,かつ,「その番号を利用することによって相手方との間のインターネット接続に必要なIPアドレスを何らかの方法によって特定することが可能となる番号」である。 よって,被告アダプタにおける「050」で始まる電話番号は,構成要件1Dの「相手方のIPアドレスを変換した番号」に該当するから,被告アダプタは構成要件1Dを充足する。 (3) 被告の主張に対する反論ア被告は,「相手方のIPアドレスを変換した番号」について,相手方のIPアドレスを構成する番号をもとに当該IPアドレスのドット(「.」)の部分を電話機でダイヤル可能な記号(「#」や「*」)に置き換えた番 号に限定して解釈すべきと主張する。 しかし,構成要件1Dの文言は「相手方のIPアドレスを変換した番号」であり,その文言上IPアドレスのドット(「.」)の部分を電話機でダイヤル可能な記号(「#」や「*」)に置き換えた番号に限定すべき根拠はなく,被告が根拠とする本件明細書等の記載のうち,段落【0010】及び【0011】には,そのように限定すべき根拠は何ら見いだすことはできないし,段落【0028】及び【0030】の記載も,実施例の記載にすぎない。 しかも,いかなる方法で相手方のIPアドレスを番号に変換するかは,本件明細書等の記載に基づき,技術常識から当業者が適宜設計し得る事項であり,その意味においても,本件明細書の実施例に限定されるべき根 しかも,いかなる方法で相手方のIPアドレスを番号に変換するかは,本件明細書等の記載に基づき,技術常識から当業者が適宜設計し得る事項であり,その意味においても,本件明細書の実施例に限定されるべき根拠はない。 イ被告は,相手方の電話機を特定するために,その電話機に対応する「VoIP呼制御用識別番号」という,IPアドレスを構成する番号とは何ら関連性のない番号を用いているから,かかる点においても,「相手方のIPアドレスを変換した番号」に該当しないと主張する。 しかし,被告アダプタにおいては,各々電話番号を異にする複数の電話機を接続することが可能なアダプタは一つも存在しないから,被告アダプタにおいてVoIP呼制御用識別番号が使用されているという,被告の上記主張には全く裏付けがない。 仮に被告のいうように被告アダプタにおいて相手方電話機を特定する番号がVoIP呼制御用識別番号であり,IPアドレスがアダプタを特定するものであるとしても,VoIP呼制御用識別番号は相手先に各々電話番号を異にする電話機が複数ある場合の電話機の特定用の番号であって,この場合も相手先のIPアドレスは一つであると考えられるから(各々の電話機の電話番号に同一のIPアドレスが割り当てられることになる。), 電話番号とIPアドレスとは対応しており,その電話番号に架電することによって,相手方アダプタのIPアドレスが特定されてインターネット接続が行われることになる。 したがって,被告アダプタにおいては,050電話番号によってIPアドレスが特定されているということができる。 〔被告の主張〕(1) 「相手方のIPアドレスを変換した番号」の意義構成要件1Dは,本件発明1のインターネット電話用アダプタが,「相手方のIPアドレスを変換した番号をダ いうことができる。 〔被告の主張〕(1) 「相手方のIPアドレスを変換した番号」の意義構成要件1Dは,本件発明1のインターネット電話用アダプタが,「相手方のIPアドレスを変換した番号をダイヤルすることで発呼することを可能とする」ことを規定する。 この「相手方のIPアドレスを変換した番号」の意義については,相手方のIPアドレスを何らかの形で変更した番号であることが分かるところ,本件明細書等の段落【0010】,【0011】,【0028】及び【0030】において,ユーザがダイヤルする番号は,いずれも相手方のIPアドレスを構成する番号をもとにしており,当該IPアドレスに対して行われる「変換」(構成要件1D)又は「加工」(段落【0010】)については,IPアドレスを構成する番号のうち,電話機でダイヤルすることができない「ドット部分」を,電話機でダイヤル可能な記号に置換する態様のみが記載されている。他方,これ以外に相手方のIPアドレスの変換又は加工の態様に関する記載が一切ない。 そうすると,構成要件1Dにおける「相手方のIPアドレスを変換した番号」とは,相手方のIPアドレスを構成する番号をもとに,当該IPアドレスのドットの部分を電話機でダイヤル可能な記号に置換した番号をいうものと解される。 (2) 構成要件充足性被告アダプタにおいて,発呼の際にダイヤルされる番号は「相手方の電話 番号」そのものであって,そもそも,相手方のIPアドレスを何らかの形で変更した番号ではないので,「相手方のIPアドレスを変換した番号」に該当しない。また,同様に,「相手方のIPアドレスを変換した番号」が意味する「相手方のIPアドレスを構成する番号をもとに,当該IPアドレスのドットの部分を電話機でダイヤル可能な記号に置換した番号」に 当しない。また,同様に,「相手方のIPアドレスを変換した番号」が意味する「相手方のIPアドレスを構成する番号をもとに,当該IPアドレスのドットの部分を電話機でダイヤル可能な記号に置換した番号」に該当しないことも明白である。 さらに,被告アダプタにおいては,相手方の電話機を特定するために,「IPアドレス」ではなく,その電話機に対応する「VoIP呼制御用識別番号」を用いており,この識別番号は,IPアドレスを構成する番号とは何ら関連性がないから,かかる点においても,被告アダプタが「相手方のIPアドレスを変換した番号」の構成に該当しないことは明白である。なお,IPアドレス情報は,(相手方電話機が接続された)アダプタを特定するものであって,相手方電話機までを特定するものではなく,相手方電話機を特定するものはVoIP呼制御用識別番号であるから,VoIP呼制御用識別番号は,電話機が単数である場合か複数である場合かにかかわらず用いられる。 よって,被告アダプタは,構成要件1Dを充足しない。 (3) 原告の主張に対する反論ア原告は,「相手方のIPアドレスを変換した番号」とは,その番号を利用することによって相手方との間のインターネット接続に必要なIPアドレスを何らかの方法により特定することが可能となる番号であれば足りると主張するが,本件明細書等に記載されているのは,相手方のIPアドレスを構成する番号のうち,電話機でダイヤルすることができない「ドット部分」を電話機でダイヤル可能な記号に置換する態様のみであり,当該態様以外の,IPアドレスを特定するための方法・手段が,本件明細書等において当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは到底いえないから,原告が主張するような拡大解釈は許されない。 イ原告は,被告 定するための方法・手段が,本件明細書等において当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは到底いえないから,原告が主張するような拡大解釈は許されない。 イ原告は,被告がVoIP呼制御用識別番号を使用していないと主張するが,そうであれば,原告において,被告アダプタの具体的な動作について,自ら具体的証拠を持って立証すべきである。 また,原告は,発呼の際に「相手方のIPアドレスを変換した番号をダイヤルする」(各々の電話機の電話番号が一つのIPアドレスに変換される)ものであることに変わりはないと主張するが,「相手方のIPアドレスを変換した番号をダイヤルする」ことと「各々の電話機の電話番号が一つのIPアドレスに変換される」ことがなぜ同義であるのか,全く理由が不明である。 3 争点(1)ウ(構成要件2Dの充足性)について〔原告の主張〕(1) 「相手方のIPアドレスを意味する番号」の意義広辞苑(第四版)によれば,「意味」とは「①ある表現に対応し,それによって指示される内容。②ある言語形式によって示され,表される内容。または,その指し表し方の型。わけ。」とされている。したがって,構成要件2Dの「相手方のIPアドレスを意味する番号」とは,相手方のIPアドレスを何らかの形で指示あるいは指し表す表現形式による番号であるということになる。 もっとも,本件発明2は,「相手方のIPアドレスを意味する番号」をダイヤルすることによって相手方のIPアドレスを特定し,インターネットにおける通話を可能にするものである。 よって,構成要件2Dの「相手方のIPアドレスを意味する番号」の意義は,単に,相手方のIPアドレスを何らかの形で指示あるいは指し表す表現形式による番号というにとどまらず,「その番号を利用す ある。 よって,構成要件2Dの「相手方のIPアドレスを意味する番号」の意義は,単に,相手方のIPアドレスを何らかの形で指示あるいは指し表す表現形式による番号というにとどまらず,「その番号を利用することによって相手方との間のインターネット接続に必要なIPアドレスを何らかの方法によって特定することが可能となる番号」ということになる。 (2) 構成要件充足性被告アダプタにおける「050」で始まる電話番号は,相手方のIPアドレスそのものではないが,これをダイヤルすることにより相手方のIPアドレスが特定され,相手方とのインターネット電話を可能にするものであるから,「その番号を利用することによって相手方との間のインターネット接続に必要なIPアドレスを何らかの方法によって特定することが可能となる番号」である。 よって,被告アダプタにおける「050」で始まる電話番号は「相手方のIPアドレスを意味する番号」に該当するから,被告アダプタは構成要件2Dを充足する。 (3) 被告の主張に対する反論被告は,構成要件2Dに関し,被告アダプタは「相手方のIPアドレスを意味する番号」をダイヤルするものではないと主張する。 しかし,前記2〔原告の主張〕と同様の理由により,構成要件2Dの「相手方のIPアドレスを意味する番号」は,IPアドレスのドット(「.」)の部分を電話機でダイヤル可能な記号(「#」や「*」)に置き換えた番号に限定されるものではないし,被告アダプタが「相手方のIPアドレスを意味する番号をダイヤルする」との構成を充たすことは明らかである。 〔被告の主張〕(1) 「相手方のIPアドレスを意味する番号」の意義構成要件2Dは,「相手方のIPアドレスを意味する番号をダイヤルすることで発呼することを可能とする」と規 明らかである。 〔被告の主張〕(1) 「相手方のIPアドレスを意味する番号」の意義構成要件2Dは,「相手方のIPアドレスを意味する番号をダイヤルすることで発呼することを可能とする」と規定するが,「相手方のIPアドレスを意味する番号」の意義については,前記2〔被告の主張〕と同様に,特許請求の範囲及び本件明細書等の記載からすれば,構成要件1Dにおける「相手方のIPアドレスを変換した番号」と同義,すなわち,相手方のIPアドレスを構成する番号をもとに,当該IPアドレスのドットの部分を電話機で ダイヤル可能な記号に置換した番号をいうものと解すべきである。 (2) 構成要件充足性構成要件1Dについて主張したとおり,被告アダプタにおいては,そもそも,発呼の際にダイヤルされる番号は「相手方の電話番号」そのものであって,相手方のIPアドレスを意味する番号ではないから,「相手方のIPアドレスを意味する番号」という特許請求の範囲の記載に該当しない。また,同様に,「相手方のIPアドレスを意味する番号」が意味する「相手方のIPアドレスを構成する番号をもとに,当該IPアドレスのドットの部分を電話機でダイヤル可能な記号に置換した番号」に該当しないことも明白である。 さらに,前記2〔被告の主張〕のとおり,被告アダプタは,相手方の電話機を特定するためには,その電話機に対応する「VoIP呼制御用識別番号」を用いているのであり,かかる点においても,被告アダプタで用いられる050電話番号が「相手方のIPアドレスを意味する番号」に該当しないことは明白である。 したがって,被告アダプタは,「相手方のIPアドレスを意味する番号」をダイヤルするものではないから,構成要件2Dを充足しない。 4 争点(1)エ(構成要件1E及び2Eの充足性)につい る。 したがって,被告アダプタは,「相手方のIPアドレスを意味する番号」をダイヤルするものではないから,構成要件2Dを充足しない。 4 争点(1)エ(構成要件1E及び2Eの充足性)について〔原告の主張〕構成要件1E及び2Eは,それぞれ構成要件1Aないし1D又は構成要件2Aないし2Dの特徴を有するインターネット電話用アダプタであるところ,被告アダプタは,上記各構成要件の特徴を有するインターネット電話用アダプタであるから,構成要件1E及び2Eをいずれも充足する。 〔被告の主張〕被告アダプタは,前記のとおり,本件発明1の構成要件1B(c)及び1D,本件発明2の構成要件2B(c)及び2Dを充足しないから,上記各構成要件の特徴を有するインターネット電話用アダプタには当たらず,構成要件1E及び2E をいずれも充足しない。 5 争点(1)オ(均等侵害の成否)について〔原告の主張〕(1) 仮に,被告アダプタと本件発明との間に相違点があり,本件発明1の構成要件1B(c)及び1D,本件発明2の構成要件2B(c)及び2Dを,文言上充足しないとしても,次のとおり,最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決の示す均等論適用の5要件が充足されるから,被告アダプタと本件発明は均等であり,被告アダプタは本件発明の技術的範囲に属する。 (2) 第1要件(相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと)についてア本件発明の課題は,従来のインターネット電話はコンピュータの1機能としてのものであり,一般の電話機による電話とは概念も取扱いも異なり,コンピュータの扱いに不慣れなものにとってとりつきにくいものであったことから,一般の電話機と同様の感覚で取り扱うことができるインターネット電話を実現するという点にある(段落 は概念も取扱いも異なり,コンピュータの扱いに不慣れなものにとってとりつきにくいものであったことから,一般の電話機と同様の感覚で取り扱うことができるインターネット電話を実現するという点にある(段落【0004】及び【0005】)。 そして,そのような課題を解決するための手段を特徴づける技術的原理は,アダプタと公衆回線用電話機とを接続し,①通話呼出がなされた場合にアダプタが呼出信号を公衆回線用電話機に対して出力することにより電話機が鳴り,ユーザが公衆回線用電話機の受話器を持ちあげて会話することができ(段落【0009】,【0022】,【0023】及び【0024】),また,②発呼する場合には,公衆回線用電話機において相手方のIPアドレスを変換した番号をダイヤルすることで発呼することができるものとし(段落【0010】ないし【0013】,【0026】ないし【0032】),これら①,②によって,一般の電話と同様に着信時に電話機自身のベルが鳴り,通常の電話機と同様の操作でインターネット電話をかけることができ,ユーザがコンピュータを意識することなく,インターネット電話を使用することができるようにする(段落【0034】)という点にある。 他方,被告アダプタにおいてパーソナルコンピュータが直接インターネットに接続されていなくとも,また,被告アダプタとパーソナルコンピュータとの間でインターネットを介した通話を行うために必要な信号・データのやり取りがなされていない場合があり得るとしても,いずれにせよ,被告アダプタにおいては,①通話呼出がなされた場合に被告アダプタが呼出信号を公衆回線用電話機に対して出力することにより電話機が鳴り,ユーザが公衆回線用電話機の受話器を持ちあげて会話することができ,また,②発呼する場合には,公衆回線用電話機にお 合に被告アダプタが呼出信号を公衆回線用電話機に対して出力することにより電話機が鳴り,ユーザが公衆回線用電話機の受話器を持ちあげて会話することができ,また,②発呼する場合には,公衆回線用電話機において「相手方のIPアドレスを変換した番号」であるところの「050」で始まる番号をダイヤルすることで発呼することができ,これら①,②によって,一般の電話と同様に着信時に電話機自身のベルが鳴り,通常の電話機と同様の操作でインターネット電話をかけることができ,ユーザがコンピュータを意識することなく,インターネット電話を使用することができるようにするという効果を奏するものである。 したがって,被告アダプタと本件発明との間に仮に上記のような相違点があるとしても,両者は課題解決手段を基礎づける技術的原理において同じであるから,両者の相違点は本質的部分に係る相違点であるということはできない。 イ被告は,本件発明1の構成要件1Dについての相違部分は,本質的部分の相違であると主張する。 しかし,本件発明1の本質的部分は,発呼する場合においては,電話機で何らかの電話番号をダイヤルすることだけで相手方のIPアドレスが特定され,インターネット接続が可能となることによって,通常の電話機と同様の操作によってインターネット電話が可能であるという点にあるのであり,被告アダプタにおいても,電話機で050電話番号をダイヤルすることだけで相手方のIPアドレスが特定され,インターネット接続が可能 となることによって,通常の電話機と同様の操作によってインターネット電話を可能としている。 したがって,番号がIPアドレスの「.」(ドット)を「#」や「*」に置き換えたものであるか,050電話番号であるかの相違は本質的部分の相違ではない。 インターネット電話を可能としている。 したがって,番号がIPアドレスの「.」(ドット)を「#」や「*」に置き換えたものであるか,050電話番号であるかの相違は本質的部分の相違ではない。 (3) 第2要件(相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても特許発明の目的を達成することができ同一の作用効果を奏するものであること)についてア被告アダプタと本件発明に係るアダプタは,いずれも一般の電話と同様に着信時に電話機自身のベルが鳴り,通常の電話機と同様の操作でインターネット電話をかけることができ,ユーザがコンピュータを意識することなく,インターネット電話を使用することができるようにするという,同一の作用効果を奏するものであるから,本件発明における構成を被告アダプタの構成に置き換えたとしても,本件発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものである。 イ被告は,被告アダプタにおいては,パーソナルコンピュータとアダプタとの間でインターネットを介した通話を行うために必要な信号・データをやり取りしていないこと及び被告アダプタにおいてダイヤルされる番号はIPアドレスを構成するものとは何ら関連性がない番号であることから,本件発明の構成要件1B(c)及び2B(c)並びに構成要件1D及び2Dの構成を被告アダプタのものに置き換えた場合には,インターネット電話としての利用が不能となると主張する。 しかしながら,被告アダプタにおいて現実にインターネット電話が可能である以上,被告の主張は事実に反するものであって,失当である。 (4) 第3要件(置き換えることに当該発明の属する技術分野の当業者が対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであること) についてアアダプタとコンピュータとイン 3要件(置き換えることに当該発明の属する技術分野の当業者が対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであること) についてアアダプタとコンピュータとインターネットとの相互の接続関係や,電話機においてダイヤルする番号をどのようなものとするかについては,発明の非本質的部分にかかる相違であり,被告アダプタの製造等の時点で当業者が適宜選択することが可能であるから,構成要件1B(c)及び2B(c)並びに構成要件1D及び2Dの構成を被告アダプタのものに置き換えることは容易であるといえる。 イ構成要件1B(c)及び2B(c)の「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」について,仮に,被告が主張するように,①接続の順序は「インターネット→コンピュータ→アダプタ→電話機」の順を意味すると解し,また,②「通信手段」はコンピュータとアダプタとの間で「通話を行うための」信号等のやり取りをする機能を有していなければならないと解して,これらの点を本件発明と被告アダプタとの間の相違点であるとみたとしても,上記①については,接続の順序を「インターネット→コンピュータ→アダプタ→電話機」とするか,それとも例えば「インターネット→アダプタ→コンピュータ→電話機」とするかという点は,機器間が相互に接続され,結果として全体の機器間で通信が可能である以上は,全体のシステムの機能に影響しない,機器の並べ方だけの問題であり,当業者が適宜選択可能な設計事項にすぎないというべきである。 なお,被告アダプタの構成が,アダプタに電話機とパーソナルコンピュータを並列的に接続するものであったとしても,いずれにせよ,機器間が相互に接続され,結果として全体の機器間で通信が可能である以上は,機器の並べ方だけの問題であり,当業者が適宜選 とパーソナルコンピュータを並列的に接続するものであったとしても,いずれにせよ,機器間が相互に接続され,結果として全体の機器間で通信が可能である以上は,機器の並べ方だけの問題であり,当業者が適宜選択可能な設計事項にすぎないことに変わりはない。 ウ構成要件1D及び2Dの「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」について,仮に,被告が主張するように,「.」(ドット)の代わ りに「#」や「*」を用いた,例えば「192#168#1#2#」といった番号を指すと解して,この点を本件発明と被告アダプタとの相違点とみたとしても,「192.168.1.2」という番号を何かほかの番号に置き換えるルールは,当業者においていかようにも設定可能なのであり,当業者が適宜選択可能な設計事項にすぎないものというべきである。 エよって,仮に本件発明と被告アダプタとの間に上記のような相違点があると解する前提に立ったとしても,被告がADSLサービスを開始し,被告アダプタの譲渡等を開始した平成13年9月1日当時において,上記相違部分を被告アダプタのものに置き換えることは容易であったといえるから,均等論の第3要件は充足される。 (5) 第4要件(対象製品等が特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではないこと)についてア本件発明は,特許庁における審査を経て新規性,進歩性を有するものとして特許査定がなされているところ,被告アダプタは,かかる本件発明の構成のうち,発明の非本質的部分である上記相違点に係る部分を置き換えたにすぎないものであるから,被告アダプタを本件発明の出願時における公知技術と同一であるとか,当業者がこれから容易に想到することができたということはできない。 イ被告は,本 部分を置き換えたにすぎないものであるから,被告アダプタを本件発明の出願時における公知技術と同一であるとか,当業者がこれから容易に想到することができたということはできない。 イ被告は,本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平11-275070号公報(以下「乙1公報」という。)に記載された発明(以下「乙1発明」という。)における「ルータ3」と「接続装置2」を合わせたものを被告アダプタに相当するものと評価することが可能であると主張する。 しかし,後記6〔原告の主張〕のとおり,本件発明の進歩性を否定することはできないところ,被告アダプタは,本件発明の構成のうち,発明の非本質的部分にかかる相違を置き換えたものにすぎないのであるから,被 告アダプタを乙1発明から容易に想到することができたとはいえない。 (6) 第5要件(対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情のないこと)について本件発明の特許請求の範囲から上記相違点に係る構成が意識的に除外されたものに当たると解すべき特段の事情は認められない。 〔被告の主張〕(1) 第1要件についてア原告は,構成要件1B(c)及び2B(c)と,構成要件1D及び2Dについて,被告アダプタと本件発明との間に仮に相違点があるとしても,その相違点は本質的部分の相違点ではないと主張する。 そもそも本件特許権は無効理由を有する特許権であるが,仮に(本件特許権の登録時における判断として)本件発明の本質的部分といい得る部分が存在するとすれば,少なくとも本件発明1の構成要件1Dは,本件発明の本質的部分に含まれるはずである。 すなわち,本件発明1の特許請求の範囲には,出願当初,構成要件1Dが記載され る部分が存在するとすれば,少なくとも本件発明1の構成要件1Dは,本件発明の本質的部分に含まれるはずである。 すなわち,本件発明1の特許請求の範囲には,出願当初,構成要件1Dが記載されていなかったが,同出願に対し,特許庁により特許法29条2項を理由に拒絶理由通知が出されたことから,原告は,かかる拒絶理由を回避することを目的として,新たに構成要件1Dを追加し,また,課題を解決するための手段につき「相手方のIPアドレスを変換した番号をダイヤルすることで発呼することを可能とする」という記載(段落【0007】)を追加する補正を行い,かかる補正の結果,本件発明1は特許査定を受けるに至ったのである。 このように,本件発明1は,構成要件1Dを含むがゆえに特許性を認める判断がなされたのであるから,少なくとも構成要件1Dは,課題解決のための手段を基礎づける技術的思想の中核的・特徴的部分に含まれるはず である。 イ原告は,第1要件の主張において,本件発明の「課題を解決するための手段を特徴づける技術的原理」として,「②発呼する場合には,公衆回線用電話機において相手方のIPアドレスを変換した番号をダイヤルすることで発呼することができる」ことを挙げ,被告アダプタが,「②発呼する場合には,公衆回線用電話機において『相手方のIPアドレスを変換した番号』であるところの『050』で始まる番号をダイヤルすることで発呼することができ」ることから,被告アダプタと本件発明は「課題解決手段を基礎づける技術的原理において同じ」であると主張する。 しかし,原告は,均等論の前提として,「相手方のIPアドレスを変換した番号」と「『050』で始まる電話番号」が相違することを相違点として挙げているのであるから,被告アダプタについて,「②・・・『相手方 し,原告は,均等論の前提として,「相手方のIPアドレスを変換した番号」と「『050』で始まる電話番号」が相違することを相違点として挙げているのであるから,被告アダプタについて,「②・・・『相手方のIPアドレスを変換した番号』であるところの『050』で始まる番号を・・・」と主張することは,論理矛盾である。 また,原告自身が,「公衆回線用電話機において相手方のIPアドレスを変換した番号をダイヤルすることで発呼することができる」ことを,本件発明の「課題を解決するための手段を特徴づける技術的原理」と認めているのであるから,その「IPアドレスを変換した番号」には当たらない番号(050電話番号)をダイヤルする被告アダプタとの相違は,本質的部分の相違であることを自認しているといえる。 (2) 第2要件についてア構成要件1B(c)及び2B(c)に係る相違部分インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データを「コンピュータ」及び「アダプタ」との間でやり取りするという意味での「通信」を行う機能を少なくとも有する「通信手段」であるという構成要件1B(c)及び2B(c)の構成を,かかる機能を有しない「通信手段」に置き換えた場 合,かかる構成のみでは,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データがやり取りされなくなるのであるから,ユーザがインターネット電話をすること自体が不可能となるはずである。 したがって,そのような構成では本件発明の目的を達することができず,同一の作用効果を奏しないのであって,均等論の第2要件を満たさない。 イ構成要件1D及び2Dに係る相違部分被告アダプタにおいてダイヤルされるのは相手方の電話番号そのものであり,これはIPアドレスを構成する番号(「192#168#1#2#」等)とは何ら ない。 イ構成要件1D及び2Dに係る相違部分被告アダプタにおいてダイヤルされるのは相手方の電話番号そのものであり,これはIPアドレスを構成する番号(「192#168#1#2#」等)とは何ら関連性のない番号である。さらに,被告アダプタにおいては,相手方の電話機を特定するために,その電話機に対応する「VoIP呼制御用識別番号」という,IPアドレスを構成する番号とは何ら関連性のない番号が用いられている。 したがって,本件発明において,ダイヤルされるIPアドレスを構成する番号を,被告アダプタでダイヤルされる電話番号そのものに単に置き換えただけでは,ダイヤルされた電話番号から相手方の電話機を特定することができず,発呼すること自体が不可能となる。したがって,この点においても,置換可能性の要件を満たさない。 (3) 第3要件についてア構成要件1B(c)及び2B(c)に係る相違部分原告は,「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」について,その接続の順序を「インターネット→コンピュータ→アダプタ→電話機」とするか,それとも例えば「インターネット→アダプタ→コンピュータ→電話機」とするかという点は,当業者が適宜選択可能な設計事項にすぎないと主張するが,被告アダプタにおいては,被告アダプタに電話機とパーソナルコンピュータとが並列的に接続されるのであり,「インターネット→アダプタ→コンピュータ→電話機」などという接続にはなって いないから,原告の上記主張は,そもそも主張自体失当である。また,「当業者が適宜選択可能な設計事項にすぎない」とする理由についても,「全体の機器間で通信が可能」及び「全体のシステムの機能に影響しない」とのごとく,極めて抽象的かつ漠然としたものであり,理由となっていない。 なお,上 能な設計事項にすぎない」とする理由についても,「全体の機器間で通信が可能」及び「全体のシステムの機能に影響しない」とのごとく,極めて抽象的かつ漠然としたものであり,理由となっていない。 なお,上記(2)アのとおり,そもそも,構成要件1B(c)及び2B(c)の相違点については,置換容易性の前提となる置換可能性すらない。 イ構成要件1D及び2Dに係る相違部分原告は,構成要件1D及び2Dの「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」について,これを本件発明と被告アダプタとの相違点とみたとしても,「192.168.1.2」という番号を何かほかの番号に置き換えるルールは当業者においていかようにも設定可能なのであり,当業者が適宜選択可能な設計事項にすぎないと主張するが,第3要件の充足が認められるためには,上記相違点を被告アダプタにおける構成に置き換えることが容易であると認められる必要があるところ,原告は,上記のとおり,当業者においていかようにも設定可能であると主張するのみで,上記相違点を,被告アダプタにおける構成に置き換えることについて,何ら具体的な主張をしていないから,原告の主張は,均等論の第3要件の主張の体をなしておらず,主張自体失当である。 なお,上記(2)イのとおり,そもそも上記相違点については,置換容易性の前提となる置換可能性すらない。 (4) 第4要件についてア被告アダプタは,本件発明の特許出願時における公知技術から当業者が同出願時に容易に推考できたものである。 すなわち,乙1公報には,「ルータ3」を介して「インターネット4」に接続される「パーソナルコンピュータ5a~5c」,並びに,「接続装置2」及び「ルータ3」を介して「インターネット4」に接続される「電 話機1」が記載されている。 て「インターネット4」に接続される「パーソナルコンピュータ5a~5c」,並びに,「接続装置2」及び「ルータ3」を介して「インターネット4」に接続される「電 話機1」が記載されている。 当該記載において,「ルータ3」及び「接続装置2」を併せたものがまさに被告アダプタに相当するものであると評価することもできるのであり,これらを併せることは当業者が容易に想到できたといえるから,当該記載に基づいて,被告アダプタに,インターネットに直接接続されないパーソナルコンピュータとの通信手段を設けることは,当業者が容易に想到できたものである。 さらに,乙1公報には,「接続装置2」が「通話相手の電話番号」をダイヤルすることで発呼することを可能にすることが記載されており,当該記載に基づいて,被告アダプタにおいて,「『050』で始まる電話番号をダイヤルすることでインターネット電話を実現する」ことも,当業者が容易に想到できたものである。 以上から,被告アダプタは,本件発明の特許出願時における公知技術から当業者が同出願時に容易に推考できたものであることは明らかであり,第4要件を満たさない。 イこの点に関して原告は,第4要件についての主張の前提として,本件発明が,特許庁における審査を経て新規性,進歩性を有するものとして特許査定がなされていることを挙げて,被告アダプタを本件特許出願時における公知技術と同一であるとか,当業者がこれらから容易に想到することができたとはいえないと主張する。 しかし,後述するように,本件発明は,乙1発明及び特許出願前に頒布された刊行物である特開平11-220549号公報(以下「乙2公報」という。)に記載された発明(以下「乙2発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,原告の に頒布された刊行物である特開平11-220549号公報(以下「乙2公報」という。)に記載された発明(以下「乙2発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,原告の上記主張は,そもそもその前提が誤っており失当である。 6 争点(2)(本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものか否か)につ いて〔被告の主張〕(1) 本件発明は,その特許出願前に頒布された刊行物に記載された乙1発明と乙2発明とに基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,本件特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,特許無効審判により無効にされるべきものである。 (2) 本件発明と乙1発明との対比ア構成要件1A及び2A乙1発明には,「電話機1」をインターネットに接続して,「通常の電話機と同様の操作によって通話相手と会話を行う」ための「接続装置2」が開示されている(段落【0011】,【0063】,【0067】及び【図1】ないし【図3】)。ここで,「電話機1は,通常の電話機であり」(段落【0011】),「通常の電話機」が公衆回線を利用することは明らかであるから,「電話機1」は「公衆回線用電話機」に相当する。 よって,乙1発明は,構成要件1A及び2Aの「公衆回線用電話機を用いてインターネットを介した通話を行うためのアダプタ」を開示している。 イ構成要件1B(a)及び2B(a)乙1公報の段落【0034】及び【図2】によれば,「接続装置2」が「CPU(CentralProcessingUnit)などによって構成されており,装置の各部を制御する」「制御部20a」を備えることが示されており,この「制御部20a」は,構成要件1B(a)及び2B(a) entralProcessingUnit)などによって構成されており,装置の各部を制御する」「制御部20a」を備えることが示されており,この「制御部20a」は,構成要件1B(a)及び2B(a)の「中央演算装置」に相当するから,乙1発明には,構成要件1B(a)及び2B(a)が開示されている。 ウ構成要件1B(b)及び2B(b)乙1公報の段落【0036】及び【図2】に照らせば,「接続装置2」の「呼び出し信号発生回路」は,「呼び出し信号(±75V/16Hzの 信号)を発生する」から,構成要件1B(b)及び2B(b)の「呼出信号発生部」に相当する。 したがって,乙1発明には,構成要件1B(b)及び2B(b)が開示されている。 エ構成要件1B(c)及び2B(c)乙1公報の【図1】ないし【図3】には,「ルータ3」が「インターネット4」に接続されていることが示されている。また,乙1公報の段落【0017】及び【0043】の記載のとおり,このようなルーティング処理を行う「ルータ3」が制御・演算装置(CPU),記憶装置(RAMやROM等)及び入出力装置(インタフェース)を備えることは当業者にとって明らかであるから,「インターネット4」に接続された「ルータ3」は,構成要件1B(c)及び構成要件2B(c)の「インターネットに接続されたコンピュータ」に相当する。 そして,乙1公報の【図1】ないし【図3】には,「接続装置2」が,「ルータ3」と接続されていることが示されており,また,段落【0021】及び【0028】などには,「接続装置2」が,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データを「ルータ3」を介して送受信することが記載されているから,乙1発明には,「接続装置2」が,「ルータ3」との通信手段を備 ,「接続装置2」が,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データを「ルータ3」を介して送受信することが記載されているから,乙1発明には,「接続装置2」が,「ルータ3」との通信手段を備えることが開示されている。 以上より,乙1発明には,「接続装置2」が「インターネットに接続されたコンピュータ」に相当する「ルータ3」との通信手段を備えることが開示されているから,構成要件1B(c)及び2B(c)が開示されている。 オ構成要件1B(d)及び2B(d)乙1公報の【図1】ないし【図3】には,「接続装置2」が「電話機1」に接続されていることが示されており,乙1公報には,「接続装置2」が,「電話機1」との接続手段を備えることが開示されている。ここで,「電 話機1」が「公衆回線用電話機」に相当することは,前述のとおりである。 したがって,乙1発明には,構成要件1B(d)及び2B(d)の「公衆回線用電話機との接続手段」が開示されている。 カ構成要件1B(e)及び2B(e)乙1公報の【図2】及び段落【0036】の記載に照らせば,「接続装置2」の「オフフック検出回路」は,「電話機1の受話器がオフフックされたことを検出する」から,構成要件1B(e)及び2B(e)の「オフフック検出部」に相当する。 したがって,乙1発明には,構成要件1B(e)及び2B(e)が開示されている。 キ構成要件1B(f)及び2B(f)乙1公報の【図2】及び段落【0038】の記載に照らせば,「接続装置2」の「PB信号デコード部20g」は,DTMF信号を検出しており,構成要件1B(f)及び2B(f)の「DTMF信号検出部」に相当する。 したがって,乙1発明には,構成要件1B(f)及び2B(f)が開示されている。 ド部20g」は,DTMF信号を検出しており,構成要件1B(f)及び2B(f)の「DTMF信号検出部」に相当する。 したがって,乙1発明には,構成要件1B(f)及び2B(f)が開示されている。 ク構成要件1B(g)及び2B(g)乙1公報の【図2】,段落【0036】及び【0046】の記載に照らせば,「接続装置2」の「発信音/呼び出し音発生回路」は,「電話機1に対してダイアルトーン信号を出力する」から,構成要件1B(g)及び2B(g)の「トーン発生部」に相当する。 したがって,乙1発明には,構成要件1B(g)及び2B(g)が開示されている。 ケ構成要件1C及び2C乙1公報には,「電話機1」からインターネットを介して「電話機8」に通話呼出をする際の一連の処理が記載されているところ,その段落【0 013】,【0035】,【0044】及び【0050】の各記載に照らせば,「接続装置2」は,インターネットを介した呼出しがなされた場合,「呼び出し信号発回路」において呼出信号を発生し,当該呼出信号を「電話機1」に出力することが開示されている。ここで,前述のとおり,「電話機1」は「公衆回線用電話機」に相当し,「呼び出し信号発生回路」は「呼出信号発生部」に相当する。 したがって,乙1発明には,構成要件1C及び2Cの「インターネットを介した通話呼出がなされた場合に,前記呼出信号発生部において呼出信号を発生し,該呼出信号を公衆回線用電話機に対して出力」する構成が開示されている。 コ構成要件1D及び2D構成要件1D及び2Dは,「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号をダイヤルすることで発呼することを可能とする」である。 乙1公報の段落【0018】,【0046】ないし【0055】及び【図 要件1D及び2Dは,「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号をダイヤルすることで発呼することを可能とする」である。 乙1公報の段落【0018】,【0046】ないし【0055】及び【図4】には,「電話機1」で通話相手の電話番号が入力されると,「接続装置2」が当該電話番号を「サーバ10」に送信し,「サーバ10」が当該電話番号に対応する通話相手のIPアドレスを検索して「接続装置2」に返送し,「接続装置2」が取得したIPアドレスに呼出音発生用制御コードを送信することで,通話相手に発呼することが記載されている。 すなわち,乙1発明には,「接続装置2」が「通話相手の電話番号」をダイヤルすることで発呼することを可能にすることが開示されている。 上記開示事項と構成要件1D及び2Dとを比較するに,乙1発明においては発呼するためにダイヤルする番号が「通話相手の電話番号」であるのに対し,構成要件1D及び2Dにおいては「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」である点で相違し,その余はすべて一致する。 したがって,乙1発明には,同相違点を除き,構成要件1D及び2Dが 開示されている。 サ構成要件1E及び2E前述のとおり,乙1公報には,「電話機1」をインターネットに接続して,「通常の電話機と同様の操作によって通話相手と会話を行う」ための「接続装置2」が記載されており,「接続装置2」は,構成要件1E及び2Eの「インターネット電話用アダプタ」に相当する。 したがって,乙1発明には,構成要件1E及び2Eが開示されている。 シ小括以上のとおり,乙1発明には,本件発明1の構成要件1A,1B(a)ないし(g),1C,1E及び本件発明2の構成要件2A,2B(a)ないし(g),2C,2Eの全てが開示されてい シ小括以上のとおり,乙1発明には,本件発明1の構成要件1A,1B(a)ないし(g),1C,1E及び本件発明2の構成要件2A,2B(a)ないし(g),2C,2Eの全てが開示されている。もっとも,構成要件1D及び2Dについては,「通話相手の電話番号」と「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」(構成要件1D,2D)との相違点が認められる。 しかしながら,同相違点に係る構成については,次に詳細を述べるように,乙1発明及び乙2発明に基づいて,当業者が容易に想到できるものである。 (3) 相違点に係る構成は当業者が容易に想到できるものであることア乙2公報には,「電話機2」をインターネット及び公衆回線のいずれかに選択的に接続し,「一般電話と同じ使用感覚でインタネット電話による通話をする」ための「網切替装置3」が記載されている(段落【0009】,【0034】及び【図1】,【図2】,【図4】)。そして,乙2公報の段落【0025】には,「電話機2」をインターネットに接続して発呼する際にダイヤルする番号として,「IPアドレスの区切りのドット『.』を『#』または『*』に置き換え」たものを用いることが記載されている。 本件明細書等の段落【0028】記載のとおり,この「IPアドレスの区切りのドット『.』を『#』または『*』に置き換え」たものは,本件発 明の構成要件1D及び2Dの「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」にほかならないから,乙2公報には,相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号をダイヤルすることで発呼することを可能にすることが開示されている。 したがって,乙2発明には,構成要件1D及び2Dが開示されている。 イここで,乙1公報(段落【0005】ないし【0007】)及び乙2 することで発呼することを可能にすることが開示されている。 したがって,乙2発明には,構成要件1D及び2Dが開示されている。 イここで,乙1公報(段落【0005】ないし【0007】)及び乙2公報(段落【0004】及び【0006】)の各記載によれば,乙1発明と乙2発明は,いずれも,マイクやスピーカをパーソナルコンピュータに接続して通話を行うインターネット電話では操作性が悪いことに鑑みてなされ,そして,電話機をインターネットに接続して操作性を向上させるための装置に関するものである点で互いに共通する。 したがって,乙1発明に対して,乙2発明の上記構成を適用し,「通話相手の電話番号」をダイヤルして発呼することに代えて,「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」をダイヤルして発呼するようにすることは,当業者であれば容易になし得たものである。 以上より,乙1発明と本件発明との間に,「通話相手の電話番号」と「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」(構成要件1D,2D)との相違点があったとしても,当業者であれば乙1発明及び乙2発明とに基づいて,本件発明を容易に想到し得たことは明らかである。 (4) 原告の主張に対する反論ア乙1公報の引例適格性について(ア) プロトコルの方式原告は,乙1発明には,インターネット電話においては用いられることのないプロトコルであるTCP/IPが用いられており,乙1発明を実施したとしてもインターネット電話を実現することは不可能であるから,乙1公報には引例としての適格性がないと主張している。 しかし,原告の上記主張は,インターネットで用いられるプロトコル群の総称である「TCP/IP」と,当該「TCP/IP」に含まれる「TCP」という個別のプロトコルとを混同する いる。 しかし,原告の上記主張は,インターネットで用いられるプロトコル群の総称である「TCP/IP」と,当該「TCP/IP」に含まれる「TCP」という個別のプロトコルとを混同するものである。すなわち,「TCP/IP」とは,「インターネットで使われている多数のプロトコルの総称」であり,「TCP」及び「UDP」を含むものである。 そして,乙1公報の請求項1や段落【0016】等は,音声信号の処理を「TCP/IP」に準拠して行うことを記載しているのであって,音声信号の処理を「TCP」と「UDP」のいずれで行うのかについて限定しているものではない。 なお付言するに,「TCP/IP」は,1980年代初頭に仕様が決定された周知のプロトコルであり,「通信特性により,TCPとUDPはIPプロトコルの上で使い分けられ」ることは,当業者にとって一般的な技術常識であるから,乙1公報において,音声信号の処理に「UDP」を用いることが明記されていないことをもって,乙1公報の引例適格性が否定されることはない。 (イ) バッファリング処理原告は,乙1発明はインターネット電話に必須のバッファリング処理を行っておらず,インターネット電話として成り立ち得ないものであるとして,乙1公報に引例としての適格性がないと主張する。 しかし,当業者にとって,インターネット電話においてバッファリング処理を行うことは一般的な技術常識にすぎず,たとえ乙1公報にバッファリング処理についての記載がなかったとしても,乙1公報に記載のインターネット電話の実施が否定されることはない。 しかも,乙1公報の段落【0034】及び【0035】には,「バッファリング処理」及び「タイマ」に相当する機能を有する「メモリ20b」,「タイマ20c」つい 話の実施が否定されることはない。 しかも,乙1公報の段落【0034】及び【0035】には,「バッファリング処理」及び「タイマ」に相当する機能を有する「メモリ20b」,「タイマ20c」ついて記載されているから,この点からも原告 の上記主張は失当である。 なお付言するに,本件明細書等には,「バッファリング処理」及び「タイマ」についての記載が一切ない。したがって,バッファリング処理についての記載がないことや,バッファリング処理を行うに当たって回線速度を計測するためのタイマの記載がないことをもって,インターネット電話として成り立ち得ないものであるとする原告の主張が仮に認められるのであれば,本件明細書等の発明の詳細な説明は,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく,本件特許は,特許法36条4項1号の規定に基づく無効理由を有することになる。 イ乙1発明による構成要件1B(c)及び2B(c)の開示について(ア) 原告は,本件発明にいう「コンピュータ」とは,画面やキーボート等を備え,ユーザによる操作の対象となるものであって,パーソナルコンピュータを意味すると主張する。 しかし,本件発明には,「コンピュータ」に関し,文言上,「インターネットに接続された」との限定があるものの,原告の上記主張のような限定は一切存在しない。そして,本件発明の属する技術分野において,インターネットに接続されるコンピュータとして,「パーソナルコンピュータ」以外にも,ルータやサーバ等が使用されていることは本件特許出願時において当業者の一般的な技術常識であり,言い換えれば,インターネットに接続されるコンピュータとして,「パーソナルコンピュータ」以外の態様が観念できない(使用されない)などということもない。 また 当業者の一般的な技術常識であり,言い換えれば,インターネットに接続されるコンピュータとして,「パーソナルコンピュータ」以外の態様が観念できない(使用されない)などということもない。 また,本件明細書等の実施の形態(段落【0018】ないし【0034】並びに【図1】及び【図2】)には,本件発明の「コンピュータ」の唯一の実施例として,「コンピュータ2」が記載されているが,この「コンピュータ2」に係る記載(段落【0020】ないし【0022】及び【0029】)の中には,それが,「画面やキーボード等を備え, ユーザによる操作の対象となるパーソナルコンピュータ」であることは一切記載されていない。 そして,原告が引用する本件明細書等の段落【0003】,【0004】,【0009】,【0010】及び【0013】の各記載にしても,本件発明のインターネットに接続されたコンピュータが,「画面やキーボード等を備え,ユーザによる操作の対象となるパーソナルコンピュータ」以外の形態であることを排除するものでもない。 以上より,本件発明の構成要件1B(c)及び2B(c)の「コンピュータ」を,「画面やキーボード等を備え,ユーザによる操作の対象となるパーソナルコンピュータ」に限定して解釈すべきとの原告の上記主張は失当である。 (イ) また,仮に,構成要件1B(c)及び2B(c)の「コンピュータ」が「パーソナルコンピュータ」に限定して解釈されるとしても,本件特許出願時において,機器をインターネットに接続する手段として,パーソナルコンピュータ,ルータ,サーバ等をネットワークの規模等に応じて適宜選択して用いることは当業者にとって一般的な技術常識であるから,乙1公報に記載の「ルータ3」に替えて,「パーソナルコンピュータ」を用いることは, ,ルータ,サーバ等をネットワークの規模等に応じて適宜選択して用いることは当業者にとって一般的な技術常識であるから,乙1公報に記載の「ルータ3」に替えて,「パーソナルコンピュータ」を用いることは,当業者であれば適宜なし得る設計変更にすぎない。 したがって,仮に,本件発明の1B(c)及び2B(c)の「コンピュータ」が「パーソナルコンピュータ」に限定して解釈されたとしても,当業者であれば,乙1発明に基づいて,本件発明を容易に想到し得たことは明らかである。 (ウ) 原告は,乙1公報について,「パーソナルコンピュータ5a」等と「電話機1」がLANを形成している旨の記載があることを認めつつも,LANを形成して端末相互間において通信がなされている旨の記載はないと主張するが,LANを形成した端末相互間において通信が可能なこと は当業者にとって自明である。また,乙1公報の段落【0022】及び【0064】の,「接続装置2」とデータの送受信を行う「サーバ10」の機能を「パーソナルコンピュータ5a~5c」に代替してもよいとの記載からも,乙1公報において,LANを形成する「接続装置2」と「パーソナルコンピュータ5a~5c」との間で通信が可能であることは明らかであるから,「接続装置2」と「パーソナルコンピュータ5a~5c」との間で通信がなされることは,乙1公報に記載されている。 したがって,原告が主張するところの「コンピュータ」の解釈に従えば,乙1発明には,本件発明の構成要件1B(c)及び2B(c)の「通信手段」が開示されていることになる。しかも,原告は,構成要件1B(c)及び2B(c)について,パーソナルコンピュータがアダプタを介してインターネットに接続される形態を排除するものではないと主張しているのであるから,かかる主張も前提とす も,原告は,構成要件1B(c)及び2B(c)について,パーソナルコンピュータがアダプタを介してインターネットに接続される形態を排除するものではないと主張しているのであるから,かかる主張も前提とすれば,乙1発明には「インターネットに接続されたコンピュータ」も開示されていることになり,結局,構成要件1B(c)及び構成要件2B(c)の全ての構成が開示されていることになる。 ウ乙2発明による構成要件1D及び2Dの開示について原告は,本件発明の「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号をダイヤル」(構成要件1D及び2D)が,IPアドレスのドット「.」の部分を「#」や「*」に置き換えた電話番号に限定されるものではなく,「050」ではじまる電話番号などIPアドレスに対して割り振られる電話番号を広く含むものであるから,乙2発明によっても同構成要件が開示されていないと主張する。 しかし,本件発明の構成要件1D及び2Dの「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」が,本件明細書等の実施例に記載された「IPアドレスのドット部分を『#』に変換したもの」を包含することは明ら かである(段落【0028】)ところ,乙2公報には,「電話機2」をインターネットに接続して発呼する際にダイヤルする番号として,「IPアドレスの区切りのドット『.』を『#』または『*』に置き換え」たものを用いることが記載されているから,乙2公報には,構成要件1D及び2Dの「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」に含まれる「IPアドレスのドット部分を『#』に変換したもの」と全く同一の態様が記載されているのである。したがって,「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」が上記の態様以外の態様を広く含むか否かにかかわらず,乙2発明には構成要件 』に変換したもの」と全く同一の態様が記載されているのである。したがって,「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」が上記の態様以外の態様を広く含むか否かにかかわらず,乙2発明には構成要件1D及び2Dが開示されていることには変わりないのであって,原告の上記主張は失当といわざるを得ない。 また,乙2公報には,「第3実施形態」として,「電話機2」をインターネットに接続して発呼する際にダイヤルする番号として,予めIPアドレスと対応付けられている電話番号を使用できることが記載されていること(段落【0028】及び【0029】)からしても,原告の上記主張は誤りである。 なお付言するに,仮に,「本件発明1及び2においては,・・・IPアドレスのドット『.』の部分を『#』や『*』に置き換えた電話番号に限定されるものではなく,『050』ではじまる電話番号などIPアドレスに対して割り振られる電話番号を広く含むものである。」との原告の主張が認められるとすれば,乙1発明には,「接続装置2」が「通話相手の電話番号」をダイヤルすることで発呼することを可能にすることが開示されているから,乙1発明には,構成要件1D及び2Dが全て開示されていることになり,本件特許は,特許法29条1項3号の規定に基づく無効理由を有することになる。 〔原告の主張〕(1) 乙1公報が引例適格性を有しないこと ア乙1発明がTCP/IPを採用していることインターネットにおいては,OSI参照モデルの第4層トランスポート層におけるプロトコルとしてTCP/IP方式とUDP方式の二種類が存在するが,このうち,TCP/IP方式はパケットの送受信を確実に行うものであり伝送の信頼性は高いが転送速度が低いという特徴がある。他方,UDP方式は,パケット CP/IP方式とUDP方式の二種類が存在するが,このうち,TCP/IP方式はパケットの送受信を確実に行うものであり伝送の信頼性は高いが転送速度が低いという特徴がある。他方,UDP方式は,パケット送受信に不確実性があり伝送の信頼性は低いが,転送速度は高いという特徴がある。一般に,動画や音声など,大容量のデータを転送にはTCP/IP方式は不向きでありUDP方式が用いられる。 特にインターネット電話においては,通話者間の会話を成り立たせるためには,音声データをリアルタイムに伝達することが必要であり,伝送の確実性よりも伝送のスピードが重視される。 そのため,インターネット電話においてはTCP/IP方式ではなく,UDP方式が用いられる。この場合,UDP方式によると,一部のパケットが欠落したり遅延したりすることがあり得るが,バッファリング処理(複数の機器やソフトウェアの間でデータをやり取りするときに,処理速度や転送速度の差を補うためにデータを専用に設けられた記憶領域に一時的に保存しておくこと)を行うことにより,通話者にとって不都合のない程度にスムーズに音声の送受信を行うことが可能となる。 この点,乙1公報の記載によれば,乙1発明における音声信号の処理には,インターネット電話においては用いられることのないプロトコルであるTCP/IP方式が用いられていることが明らかであるから,乙1発明を実施したとしても,インターネット電話を実現することは不可能である。 イ乙1公報にタイマやバッファリング処理の記載がないこと乙1公報にはバッファリング処理についての記載が一切なく,またバッファリング処理を行うにあたって回線速度を計測するためのタイマの記載も全くない。 したがって,乙1発明はインターネット電話(を含めリアル 理についての記載が一切なく,またバッファリング処理を行うにあたって回線速度を計測するためのタイマの記載も全くない。 したがって,乙1発明はインターネット電話(を含めリアルタイムの音声伝達)に必須のバッファリング処理を行っていないことになる。この点においても乙1発明はインターネット電話として成り立ち得ないものである。 ウ以上のとおり,乙1発明はインターネット電話に不適なTCP/IP方式を用いており,またバッファリング処理やこれに必要なタイマも備えていないものであるから,およそインターネット電話として機能し得ないものである。 したがって,乙1発明は,そもそも,インターネット電話の発明である本件発明に対する進歩性の引例としての適格性を有していないのであり,乙1発明を基礎として本件発明の進歩性を否定することはできないというべきである。 エ被告の主張に対する反論(ア) 被告は,乙1発明の「TCP/IP」は,TCPやUDPなどを含むインターネットで用いられるプロトコルの総称であり,「TCP/IP」にはUDPも含まれているから,乙1公報にUDPとの明記がないことをもって,乙1発明の引例適格性が否定されることはないと主張する。 確かに,OSI基本参照モデルの第4層トランスポート層のプロトコルとしてTCPを採用し,この下位の第3層ネットワーク層におけるプロトコルとしてIPを採用したプロトコルを「TCP/IP」と称し(以下「狭義のTCP/IP」という。),トランスポート層のプロトコルとしてUDPを採用し,ネットワーク層におけるプロトコルとしてIPを採用したプロトコルを「UDP/IP」と称することがあり,他方,狭義のTCP/IPがインターネットにおける代表的なプロトコルであるところから,狭義のTCP/IPやUDP おけるプロトコルとしてIPを採用したプロトコルを「UDP/IP」と称することがあり,他方,狭義のTCP/IPがインターネットにおける代表的なプロトコルであるところから,狭義のTCP/IPやUDP/IPを含めたプロトコル群を「TCP/IP suite」又は「TCP/IP」と称することがある (以下「広義のTCP/IP」という。)。 そこで,乙1発明にいう「TCP/IP」が狭義と広義のいずれを意味するかが問題となるが,乙1公報の段落【0016】(「TCP/IP(・・・)に応じたデータ列(IPパケット)」という用語を用いていること)及び段落【0053】(「また,電話機8から伝送されてきたデータ列は,TCP/IPインタフェース部20kによって受信され,音声信号処理部20jによって伸張処理が施される。」)の各記載からは,乙1発明における「TCP/IP」は,狭義のTCP/IPを意味するものと解される。 また,乙1発明とほぼ同時期に,乙1発明と密接に関連する技術の発明について,乙1発明の特許出願人が行った特許出願の公開特許公報(特開平11-308373号公報。以下「甲14公報」といい,同公報に記載された発明を「甲14発明」という。)には,通話中に会話が途切れたり,欠落したり,急激に著しく歪んだりするといった問題点及び通話が不可能になるような場合は事前に報知され,会話を控える,重要な会話を行わない等の対策を講じる必要性があるといった問題点が記載されているが,これらの問題点はいずれも狭義のTCP/IPに特有のものであって,高速処理が可能であるUDP/IPにおいては,通常生じないものである。したがって,甲14公報における「TCP/IP」は狭義のTCP/IPを意味すると考えられる。このように,乙1発明とほぼ同時期に出願さ 処理が可能であるUDP/IPにおいては,通常生じないものである。したがって,甲14公報における「TCP/IP」は狭義のTCP/IPを意味すると考えられる。このように,乙1発明とほぼ同時期に出願され,かつ,乙1発明と密接に関連する技術について,同出願人が「TCP/IP」という用語を,狭義のTCP/IPの意味で用いていることからしても,乙1発明の「TCP/IP」は,狭義のTCP/IPを意味するものと考えられる。 (イ) 被告は(証拠略)を提出して,本件特許出願以前にインターネット電話におけるバッファリング処理は技術常識であったと主張する。 しかし,上記のとおり,乙1発明においては,インターネット電話としては実用に耐えないプロトコルであるTCP/IPが用いられているのであり,乙1発明を実施したとしても,インターネット電話を実現することは不可能である。したがって,本件特許出願以前にインターネット電話におけるバッファリング処理が技術常識であったか否かにかかわりなく,乙1発明を基礎として本件発明の進歩性を否定することはできないというべきである。 (2) 本件発明と乙1発明との対比についてア被告は,乙1発明には,本件発明のうち,構成要件1D及び2D以外の全ての構成要件が開示されていると主張する。 しかし,乙1発明は,構成要件1B(c)及び2B(c)の「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」を開示していない。この点,被告は,乙1公報中の「ルータ3」が本件発明1及び2にいう「コンピュータ」に該当するとして,「ルータ3」は「インターネット」に接続されているから,乙1発明は「インターネットに接続されたコンピュータ」を開示していると主張するが,乙1発明の「ルータ3」は本件発明1及び2にいう「コンピュー ,「ルータ3」は「インターネット」に接続されているから,乙1発明は「インターネットに接続されたコンピュータ」を開示していると主張するが,乙1発明の「ルータ3」は本件発明1及び2にいう「コンピュータ」とはいえない。 すなわち,本件明細書等の段落【0003】,【0004】,【0009】,【0010】及び【0013】の各記載からすると,本件発明にいう「コンピュータ」とは,画面やキーボード等を備え,ユーザによる操作の対象となるものであるから,要するにパーソナルコンピュータを意味するものといえる。他方,乙1公報の段落【0042】ないし【0044】の各記載からすると,乙1発明の「ルータ3」は,LANを構成する複数の端末(電話機やパーソナルコンピュータ)をインターネット回線に接続するために必要な処理を行う装置であるにすぎず,ハブ(集線装置)により代用することも可能なものであるから,パーソナルコンピュータでない ことは明らかである。 したがって,乙1発明の「ルータ3」は本件発明にいう「コンピュータ」ではないので,乙1発明によって「インターネットに接続されたコンピュータ」(構成要件1B(c)及び2B(c))が開示されているとはいえない。 イまた,乙1発明の「ルータ3」が本件発明にいう「コンピュータ」に当たらないとしても,乙1発明の「パーソナルコンピュータ5a」等が本件発明の「コンピュータ」に該当するとして,結局,乙1発明により「インターネットに接続されたコンピュータ」が開示されていることになるとの再反論があり得る。 しかし,乙1公報によると,「パーソナルコンピュータ5a」等は「ルータ3」に接続されており,「電話機1」は「接続装置2」を介して「ルータ3」に接続され,「パーソナルコンピュータ5a」等と「電話機1」がLANを 公報によると,「パーソナルコンピュータ5a」等は「ルータ3」に接続されており,「電話機1」は「接続装置2」を介して「ルータ3」に接続され,「パーソナルコンピュータ5a」等と「電話機1」がLANを形成している旨の記載があるが(段落【0042】及び【図3】),LANを形成して端末相互間において通信がなされている旨の記載はないから,乙1発明における「パーソナルコンピュータ5a」等を本件発明にいう「コンピュータ」に当たるものと解したとしても,乙1発明には「パーソナルコンピュータ5a」等と,本件発明にいう「アダプタ」であるところの「接続装置2」との間の「通信手段」(構成要件1B(c)及び2B(c))が開示されていないことになる。 ウ以上のとおり,乙1発明は,本件発明1及び2の構成要件1D及び2Dのみならず,構成要件1B(c)及び2B(c)の「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」も開示していない。 エ被告の主張に対する反論(ア) 被告は,乙1発明に開示されている「ルータ3」を本件発明の構成要件1B(c)及び2B(c)の「コンピュータ」に置き換えることは当業者であれば適宜なし得る設計変更にすぎないと主張する。 しかし,ルータとは,データを中継する機器であり,受信したデータをどの経路に転送すべきかを判断する経路選択機能を有する機器であるところ,パーソナルコンピュータは,データの中継やデータ転送経路の選択をさせることを目的とした機器ではなく,当然にはデータ中継機能やデータ転送経路の選択機能を持つものではない。すなわち,パーソナルコンピュータはそれ自体としてはルータの代替となる機能を有する機器ではない。したがって,乙1発明において,「ルータ3」を「パーソナルコンピュータ」に置き換えることが当業者で い。すなわち,パーソナルコンピュータはそれ自体としてはルータの代替となる機能を有する機器ではない。したがって,乙1発明において,「ルータ3」を「パーソナルコンピュータ」に置き換えることが当業者であれば適宜なし得る設計変更にすぎないとはいえない。 (イ) 被告は,乙1発明において,「接続装置2」と「パーソナルコンピュータ5a~5c」との間の通信が可能であることは明らかであると主張する。 しかし,乙1発明は,「接続装置2」を介して通常の「電話機1」をインターネットに接続することにより,パーソナルコンピュータに相手方のIPアドレスを入力する操作ではなく,通常の電話機の操作によって,従来の電話と同等のサービスを提供することを可能とすることを目的とする発明である(段落【0006】及び【0007】)から,乙1発明においては,「電話機1」を操作して,「接続装置2」や「ルータ3」を介して,「パーソナルコンピュータ5a~5c」に何らかの動作や処理をさせたり,あるいは逆に,「パーソナルコンピュータ5a~5c」を操作して,「ルータ3」及び「接続装置2」を介して,「電話機1」に何らかの動作や処理をさせることは,一切想定されていない。 そうである以上,乙1発明に「パーソナルコンピュータ5a~5c」と「電話機1」がLANを形成しているとの記載(段落【0042】)があったとしても,「接続装置2」と「パーソナルコンピュータ5a~5c」との間で通信を行う機能があるとはいえない。 (3) 乙2発明について乙2発明は,乙2公報の【要約】欄にもあるとおり,インターネット電話と公衆回線電話との網切替を行う技術であり,IPアドレスのドット「.」の部分を「♯」や「*」に置き換えた電話番号を用いて網切替制御装置が「#」や「*」の入 要約】欄にもあるとおり,インターネット電話と公衆回線電話との網切替を行う技術であり,IPアドレスのドット「.」の部分を「♯」や「*」に置き換えた電話番号を用いて網切替制御装置が「#」や「*」の入力を認識することによって行う網切替が行われる発明である。 したがって,乙2発明はIPアドレスのドット「.」の部分を「♯」や「*」に置き換えた電話番号に限定される。 これに対し,本件発明においては,「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」であって,これは,IPアドレスのドット「.」の部分を「♯」や「*」に置き換えた電話番号に限定されるものではなく,「050」で始まる電話番号などIPアドレスに対して割り振られる電話番号を広く含むものである。 したがって,乙2発明によっても「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号をダイヤル」(構成要件1D及び2D)は開示されていないものというべきである。 (4) 小括以上のとおり,乙1発明は,およそインターネット電話として成立し得ないものであって引例としての適格性を有せず,かつ,構成要件1D及び2Dのほか,構成要件1B(c)及び2B(c)の「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」を開示しておらず,また,乙2発明によっても構成要件1D及び2Dが開示されているということはできない。 したがって,乙1発明と乙2発明を組み合わせても本件発明を容易想到であるということはできないから,本件特許は特許無効審判によって無効にされるべきものとはいえない。 7 争点(3)(損害の発生及びその額)について〔原告の主張〕 (1) 被告アダプタは本件発明1及び2の技術的範囲に属するものであるから,被告が業として被告アダプタを有償で譲渡し若しくは貸与し,又はその申し出を行う行為 いて〔原告の主張〕 (1) 被告アダプタは本件発明1及び2の技術的範囲に属するものであるから,被告が業として被告アダプタを有償で譲渡し若しくは貸与し,又はその申し出を行う行為は,本件特許権の侵害行為である。 よって,原告は被告に対し,本件特許権の侵害に基づく損害賠償請求権を有する。 (2) 特許法102条3項による損害額ア被告の得た利益被告は,被告のADSLサービスの利用者に対し,被告アダプタを貸与している(なお,被告は,被告アダプタの譲渡も行っているが,その数はごくわずかであると推測される。)ところ,本件特許登録の日である平成21年10月30日から本件訴えの提起直前の平成22年12月31日までの間の被告ADSLサービスの契約者数は,376万9000件を下回るものではないと考えられる。 また,被告ADSLサービスにおける月額のモデムレンタル料はサービスタイプによって1354円,1039円,934円及び724円であるところ,その相加平均は1013円(1円に満たない端数を切上げ)である。 よって,本件特許登録の日である平成21年10月30日の翌々日である同年11月1日から平成22年12月31日までの間に被告が得たレンタル料収入は,534億5195万8000円(1013円×376万9000件×14か月)を下回るものではない。 イ原告が受けるべき金銭の額原告が本件発明1及び2の実施により受けるべき金銭の額は,被告が得た上記レンタル料収入534億5195万8000円に対して5%の割合を乗じた26億7259万7900円を下回らない。 よって,原告は,被告に対し,26億7259万7900円を,原告が 受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。(特許法102条3項) 9万7900円を下回らない。 よって,原告は,被告に対し,26億7259万7900円を,原告が 受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。(特許法102条3項)(3) 弁護士費用被告による本件特許権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用の損害は,5000万円を下回らない。 (4) 小括以上により,原告は,被告に対し,本件特許権の侵害による損害賠償金として,計27億2259万7900円を請求することができる。 よって,原告は,被告に対し,民法709条及び特許法102条3項に基づき,本件特許権の侵害による損害賠償金27億2259万7900円の一部である金1億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 〔被告の主張〕被告が,被告のADSLサービスの利用者に対し,被告アダプタを貸与し,又は譲渡を行っていることは認めるが,その余は全て否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の意義本件特許に係る特許請求の範囲請求項1及び2の各記載並びに本件明細書等の段落【0003】,【0004】,【0006】及び【0034】の各記載によれば,本件発明は,インターネットを介して音声通話を行うインターネット電話が,従来,あくまでパーソナルコンピュータの一つの機能として捉えられており,従来の電話とは,概念も取扱いも異なるため,コンピュータの取扱いに不慣れな者にとっては,とりつきにくいものであったことから,かかる課題を解決するために,従来の電話機をそのまま使用して,従来の電話機と同様の感覚でなし得るインターネット電話を実現し得るアダプタを用いることによって,一般の電話と同様に,着信時には電話機自身のベルが鳴 題を解決するために,従来の電話機をそのまま使用して,従来の電話機と同様の感覚でなし得るインターネット電話を実現し得るアダプタを用いることによって,一般の電話と同様に,着信時には電話機自身のベルが鳴り,また,発呼 においても,ユーザが,通常の電話機と同様の操作のみで,インターネット電話をかけることができるようにするために,インターネット電話用アダプタについて,特許請求の範囲請求項1又は2に記載された構成とした発明である,と認められる。 2 争点(1)ア(構成要件1B(c)及び2B(c)の充足性)について(1) 「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」の意義ア上記1のとおり,本件発明は,インターネット電話を実現するためのアダプタに関する発明であると認められるところ,本件発明においては,上記1に記載した課題を解決するための構成として,構成要件1A及び2Aで,それぞれ「公衆回線用電話機を用いてインターネットを介した通話を行うためのアダプタであって,」と規定した上,それに続いて,構成要件1B(a)ないし(g)及び構成要件2B(a)ないし(g)において,「中央演算装置と,」「呼出信号発生部と,」「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段と,」「公衆回線用電話機との接続手段と,」「オフフック検出部と,」「DTMF信号検出部と,」「トーン発生部と,を備え,」と,同アダプタが備えるべき構成を規定していることからすれば,構成要件1B(c)及び2B(c)の「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」は,文言解釈上,公衆回線用電話機を用いてインターネットを介した通話を行うための必須の構成として規定されたものと認められる。 そうすると,構成要件1B(c)及び2B(c)の「通信手段」は, は,文言解釈上,公衆回線用電話機を用いてインターネットを介した通話を行うための必須の構成として規定されたものと認められる。 そうすると,構成要件1B(c)及び2B(c)の「通信手段」は,公衆回線用電話機を用いたインターネット電話を行うための機能を担っているものであって,「インターネットに接続されたコンピュータ」との間において,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データの通信を行うことを当然の前提とした通信手段を意味するものと解するのが相当である。 そして,上記解釈は本件明細書等の記載を考慮することによっても裏付 けられる。すなわち,本件明細書等には,アダプタとコンピュータとの接続ないし通信について,「本発明のアダプタは,通常家庭等で用いられている公衆回線(一般回線)用の電話機を用い,この電話機とコンピュータの間に接続されるものである。すなわち,コンピュータと本発明のアダプタはたとえばシリアル通信等の通信手段により接続され,・・・」(段落【0008】),「コンピュータ2上で動作する制御ソフトウェア60が,インターネットからの呼出を検出すると(S201),同ソフトウェアは,シリアルポート11に信号を出力,アダプタ1はこれを受信する」(段落【0022】),「アダプタ1は,コンピュータ2(制御ソフトウェア60)に対し,当該番号を送信する」(段落【0029】)などと記載されており,これらの記載は,本件発明においては,インターネットに接続されたコンピュータが,アダプタとの間で,公衆回線用電話機を用いてインターネットを介した通話を行うために必要な信号・データの通信について重要な役割を担うことが前提とされていると認められる。 イこの点に関して原告は,この「通信手段」は,コンピュー を用いてインターネットを介した通話を行うために必要な信号・データの通信について重要な役割を担うことが前提とされていると認められる。 イこの点に関して原告は,この「通信手段」は,コンピュータとアダプタとの間で通信を行うための「手段」が設けられていることをもって足り,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データをやり取りするという意味での「通信手段」に限定されないと主張する。 しかし,本件発明は,本件発明に係るアダプタが「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」を備えることを要件としている(構成要件1B(c)及び2B(c))ところ,原告が主張するように,この「通信手段」が,公衆回線用電話機を用いてインターネットを介した通話を行うとの本件発明の目的の達成に不必要なものであるとすれば,そもそも,これを本件発明の構成要件とする必要はないはずである。本件発明に,あえて「コンピュータとの通信手段」と規定されている以上,その構成要件は,本件発明の目的を達するために設けられたものと解すべきであるから,原 告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,特許請求の範囲請求項1及び2の文言は,「通信手段」と規定されているにすぎず,被告が指摘する本件明細書等の記載も,単なる実施例の記載にすぎないから,これを限定して解釈すべきではないと主張する。 しかし,特許請求の範囲に記載された用語の意義は,明細書の記載及び図面を考慮して解釈すべきものである(特許法70条2項)から,特許請求の範囲の用語の意義を解釈するに当たって明細書の記載及び図面を考慮することは当然に許されるところ,上記アのとおり,本件発明における「通信手段」を,公衆回線用電話機を用いたインターネット電話を行うための機能を担っているもの するに当たって明細書の記載及び図面を考慮することは当然に許されるところ,上記アのとおり,本件発明における「通信手段」を,公衆回線用電話機を用いたインターネット電話を行うための機能を担っているものであって,「インターネットに接続されたコンピュータ」との間において,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データの通信を行うことを当然の前提とした通信手段と解すべきことは,特許請求の範囲請求項1及び2に記載された文言の構成上明らかであって,本件明細書等の段落【0008】,【0022】及び【0029】の上記各記載はその解釈を裏付ける記載であるにすぎず,上記解釈は本件発明の技術的範囲を本件明細書等に記載された実施例に限定するものではない。 かえって,本件明細書等を子細に検討しても,本件発明のアダプタが有するコンピュータとの通信手段が,インターネットを介した通話を行うために必要な信号・データの通信を行うものではないことをうかがわせる記載は見いだせないから,原告の主張する解釈は,特許請求の範囲に記載された文言に反して特許発明の技術的範囲を明細書及び図面にも記載されていない範囲に不当に拡張するものであるといわざるを得ない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (2) 被告アダプタの構成要件充足性 ア前記第2,2(6)によれば,被告アダプタは,パーソナルコンピュータと接続可能なLANポートを有していることが認められ(別紙被告アダプタ説明書1ないし3参照),また,証拠(略)によれば,同LANポートを介して被告アダプタに接続されたパーソナルコンピュータは,インターネットを利用したデータ通信を行うことができることが認められる。 しかし,証拠(略)によれば,被告アダプタは,上記LANポートにパーソナルコンピ ダプタに接続されたパーソナルコンピュータは,インターネットを利用したデータ通信を行うことができることが認められる。 しかし,証拠(略)によれば,被告アダプタは,上記LANポートにパーソナルコンピュータを接続しない状態でも,被告アダプタに接続された電話機を用いて,インターネット電話を利用することができることが認められ,また,上記LANポートにパーソナルコンピュータを接続した場合でも,被告アダプタとパーソナルコンピュータとの間では,インターネット電話用の信号の送受信は行われないことが認められる。 そうすると,被告アダプタのLANポートは,インターネットに接続されたコンピュータとの間で通信するための手段ではあるものの,そこで用いられる「通信手段」は,インターネット電話用の通信手段ではなく,同LANポート自体は,公衆回線用電話機を用いたインターネット電話を行うための機能を何ら担っていないことになるから,同LANポートは,本件発明における「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」には当たらないというべきである。 イよって,被告アダプタは,本件発明の構成要件1B(c)及び2B(c)を充足しない。 そうすると,その余の構成要件の充足性を判断するまでもなく,被告アダプタは,文言上,本件発明の技術的範囲に属しないものと認められる。 3 争点(1)オ(均等侵害の成否)について(1) 均等論原告は,仮に,被告アダプタと本件発明との間に相違点があり,被告アダプタが,本件発明1の構成要件1B(c)及び1D,本件発明2の2B(c)及び 2Dを,それぞれ文言上充足しないとしても,被告アダプタと本件発明は均等であり,被告アダプタは本件発明の技術的範囲に属すると主張する。 この点,特許発明に係る特許請求の範囲 及び 2Dを,それぞれ文言上充足しないとしても,被告アダプタと本件発明は均等であり,被告アダプタは本件発明の技術的範囲に属すると主張する。 この点,特許発明に係る特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等する製品(以下「対象製品」という。)と異なる部分が存する場合であっても,①当該部分が特許発明の本質的部分ではなく,②当該部分を対象製品におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,③そのように置き換えることに,当業者が,対象製品の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,④対象製品が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれからその出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,⑤対象製品が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたなどの特段の事情もないときは,その対象製品は,同特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・平成6年(オ)第1083号,民集52巻1号113頁参照)。 (2) 第4要件についてア事案に鑑み,まず,上記(1)の④の要件(以下「第4要件」という。)について検討する。 本件発明の出願前である平成11年10月8日に公開された乙1公報には,以下の記載がある。 ・「本発明は・・・,通常の電話機をインターネットに接続し,従来の電話と同等のサービスを提供することが可能な接続装置を提供することを目的とする。」(段落【0007】)・「電話機1は,通常の電話機であり,通話相手の電話番号が入力されるプッシュボタンまたはダイアル,・・・などから構成されている」(段落【0011 供することを目的とする。」(段落【0007】)・「電話機1は,通常の電話機であり,通話相手の電話番号が入力されるプッシュボタンまたはダイアル,・・・などから構成されている」(段落【0011】) ・「電話機制御手段2aは,電話機1から出力される制御信号(例えば,加入者線交換機を呼び出すための発呼信号や通話相手を選択するための選択信号等)に応じた処理を行うとともに,電話機1に対して所定の制御信号(例えば,通話相手から呼び出しがなされたことを示す呼び出し信号やオフフックされたことを示す発信音等)を送って電話機1を制御する。」(段落【0013】)・「・・・ルータ3は,接続装置2をインターネット4に対して接続し,これらの間でデータの授受が可能となるようにする。・・・」(段落【0017】)・「制御部20aは,CPU(CentralProcessingUnit)などによって構成されており,装置の各部を制御する。」(段落【0034】)・「電話機制御部20dは,電話機1の受話器がオフフックされたことを検出するオフフック検出回路,呼び出し信号(±75V/16Hzの信号)を発生する呼び出し信号発生回路,および,発信音や呼び出し音などを発生する発信音/呼び出し音発生回路などによって構成されており,電話機1から供給される制御信号を入力して所定の処理を実行するとともに,電話機1に対して制御信号を供給して所定の処理を実行させる。」(段落【0036】)・「スイッチ20eは,電話機1がプッシュボタン式の場合(または,電話機1から出力される信号がPB信号である場合)にはその接続を右側とし,・・・」(段落【0037】)・「PB信号デコード部20gは,スイッチ20eを介して電話機1から供給されたPB信号を入力して,対応す ら出力される信号がPB信号である場合)にはその接続を右側とし,・・・」(段落【0037】)・「PB信号デコード部20gは,スイッチ20eを介して電話機1から供給されたPB信号を入力して,対応するコードに変換する。」(段落【0038】)・「この図において,パーソナルコンピュータ5a~5cは,ルータ3を介してインターネット4に接続されている。電話機1は,接続装置2お よびルータ3を介してインターネット4に接続されている。なお,コンピュータ5a~5cおよび電話機1はLAN(LocalAreaNetwork)を形成している。」(段落【0042】)・「ルータ3は,パーソナルコンピュータ5a~5cおよび電話機1によって構成されるLANと,パーソナルコンピュータ9a~9cおよび電話機8によって構成されるLANとを相互に接続するために必要な処理を行う。」(段落【0043】)・「ルータ3,6の代わりに,ハブ(集線装置)を用いるようにしてもよい。」(段落【0044】)・「電話機制御部20dは,電話機1に対してダイアルトーン信号を出力する。・・・DP信号デコード部20fまたはPB信号デコード部20gは,電話機1から出力された電話番号(通話相手の電話番号)を入力する。」(段落【0046】・「通話相手が図3に示す電話機8である場合には,この電話機8に対して呼び出し音発生用制御コードが送信される。その結果,電話機8側の接続装置7では,TCP/IPインタフェース部がこのデータを受信し,制御部がこの制御コードに応じて電話機制御部を制御することにより,電話機8が呼び出し音を発生することになる。」(段落【0050】)イ上記アの各記載によれば,乙1発明は,通常の電話機をインターネットに接続し,従来の電話と同等のサービスを提供す することにより,電話機8が呼び出し音を発生することになる。」(段落【0050】)イ上記アの各記載によれば,乙1発明は,通常の電話機をインターネットに接続し,従来の電話と同等のサービスを提供することが可能な接続装置に関する発明であるところ(段落【0007】),その接続装置は,CPUなどで構成されていて装置の各部を制御する制御部20a(段落【0034】)と,オフフックされたことを検出するオフフック検出回路や呼出信号を発生する呼出信号発生回路からなり,電話機に対してダイアルトーン信号を出力する電話機制御部20d(段落【0036】及び【0046】)と,プッシュボタン式の電話機から出力されるPB信号を入力して,対応 するコードに変換するPB信号デコード部20g(段落【0037】及び【0038】)をそれぞれ備えており,通話相手から呼出しがなされた場合,電話機に対して,呼出しがなされたことを示す呼出信号を送って電話機を制御すること(段落【0013】,【0036】及び【0050】)が,それぞれ認められる。また,乙1公報の【図1】ないし【図3】によれば,乙1発明に係る接続装置が,電話機との接続手段を有していることが明らかである。さらに,乙1発明においては,電話機で,通話相手の電話番号を入力することで,通話が可能になる(段落【0011】及び【0046】並びに【図4】)。 また,乙1公報の段落【0017】及び【0044】並びに【図1】及び【図2】には,接続装置が,ルータ又はハブを介して,インターネットに接続されることが開示されている。 ウ前記第2,2(6)のとおり,被告アダプタが,本件発明の構成要件のうち,構成要件1A,1B(a),(b),(d)ないし(g),1C及び構成要件2A ,2B(a),(b),(d)ないし(g),2C ウ前記第2,2(6)のとおり,被告アダプタが,本件発明の構成要件のうち,構成要件1A,1B(a),(b),(d)ないし(g),1C及び構成要件2A ,2B(a),(b),(d)ないし(g),2Cに相当する構成,すなわち,公衆回線用電話機を用いてインターネットを介した通話を行うためのアダプタであって(構成要件1A,2A),中央演算装置と(同1B(a),2B(a)),呼出信号発生部と(同1B(b),2B(b)),公衆回線用電話機との接続手段と(同1B(d),2B(d)),オフフック検出部と(同1B(e),2B(e)),DTMF信号検出部と(同1B(f),2B(f)),トーン発生部とを備え(同1B(g),2B(g)),インターネットを介した通話呼出がなされた場合に,前記呼出信号発生部において呼出信号を発生し,該呼出信号を公衆回線用電話機に対して出力する(同1C,2C)との構成を有していることは,当事者間に争いがない。 また,本件発明の構成要件1D,2Dに対応する構成に関して,前記第2,2(6)のとおり,被告アダプタは,「050」で始まる相手方の電話番 号をダイヤルすることで発呼を可能にするものである。 さらに,弁論の全趣旨によれば,被告アダプタが,上記各特徴を有するインターネット電話用のアダプタであること(構成要件1E,2E)が認められる。 そして,前記第2,2(6)によれば,被告アダプタは直接インターネットに接続する手段を備えていることが認められる(別紙被告アダプタ説明書1ないし3参照)。 エ本件発明の構成との関係で把握される上記ウの被告アダプタの構成を,上記イの乙1公報に記載された事項と対比すると,被告アダプタは,乙1公報に記載された接続装置及びルータ又はハブと全く同一の構成を有するものと認められる。 把握される上記ウの被告アダプタの構成を,上記イの乙1公報に記載された事項と対比すると,被告アダプタは,乙1公報に記載された接続装置及びルータ又はハブと全く同一の構成を有するものと認められる。 そうすると,被告アダプタは,乙1公報に開示された公知技術と同一のものということができる。 オこの点に関して原告は,本件発明が新規性,進歩性を有するものとして特許査定を受けており,かつ,被告アダプタが本件発明の非本質的部分を置き換えたものにすぎないのであるから,被告アダプタが公知技術と同一であるとはいえないと主張する。 しかし,上記のとおり,被告アダプタが乙1発明と同一の構成を有するものであることは明らかであって,これに反する原告の主張は採用することができない。また,後記4のとおり,本件発明は進歩性を欠くと認められることから,原告の上記主張はその前提を欠くものである。 (3) 小括以上のとおり,被告アダプタは均等の第4要件を充足しないから,その余の要件について判断するまでもなく,均等論によっても,被告アダプタが本件発明の技術的範囲に属するものとは認められない。 4 争点(2)(本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものか否か)につ いて(1) 乙1発明の引例適格性についてア被告は,乙1発明を主引用例として,本件発明が進歩性を欠くと主張するところ,原告は,乙1発明が,インターネット電話に不適なTCP/IPを用いていること及びインターネット電話に必須のバッファリング処理を行っていないことからインターネット電話として機能し得ないものであり,実施不能であるから,引用例としての適格を有しないと反論する。 しかし,証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,「TCP/IP」とは,広義には,インターネット 話として機能し得ないものであり,実施不能であるから,引用例としての適格を有しないと反論する。 しかし,証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,「TCP/IP」とは,広義には,インターネットで使われる多数のプロトコルの総称であり,基本となるTCPとIPという二つのプロトコルにちなんでそのように呼ばれるが,具体的には,TCPとIPだけでなく,UDP,ICMP,HTTPなどのプロトコルを含むものであること,もっとも,「TCP/IP」は,特にTCPを用いたIPプロトコルという狭義の意味で用いられることがあり,この場合は,そこに,UDPを用いたIPプロトコルであるUDP/IPは含まれないこと,広義のTCP/IPの中で,トランスポート層の機能を果たす代表的なプロトコルがTCPとUDPであり,TCPは信頼性が高いが転送速度が低いため,音声データなどの通信には適しておらず,音声通信のメカニズムとして採用される見込みはなく,一方,UDPは信頼性が低いが転送速度が高く,音声などの通信に適しており,その通信の際には,処理速度や転送速度の差を補うためのバッファリング処理が行われることが,それぞれ認められる。 そして,確かに,乙1公報には,乙1発明に係る接続装置が「TCP/IP」の方式を用いることが記載されているが(【請求項1】,段落【0016】及び【0017】等),上記のとおり,「TCP/IP」の用語が,狭義には,UDPではなくTCPを用いた方式を意味する一方で,広義には,UDPやTCPを含む多数のプロトコルの総称として用いられて いること及びTCPは音声データなどの通信には適していないことに加えて,従来の電話と同等の音声通話サービスを提供することを可能にするための接続装置についての発明である乙1発明が,あえてその実施が不能 いること及びTCPは音声データなどの通信には適していないことに加えて,従来の電話と同等の音声通話サービスを提供することを可能にするための接続装置についての発明である乙1発明が,あえてその実施が不能となるような方式を用いていると理解するのは相当でないことからすれば,乙1公報に記載された「TCP/IP」は,広義のTCP/IPを意味すると解すべきである。 また,乙1発明は,その公報の記載から明らかなとおり,そもそもバッファリング処理に関する発明ではなく,しかも,証拠(略)によれば,インターネット電話において,受信した音声データをバッファリング処理することは,乙1発明の特許出願当時の技術常識であったと認められる。したがって,仮に,乙1公報にバッファリング処理に関する記載がないとしても,それを根拠として,乙1発明の接続装置が当然にバッファリング処理を伴わないものであって,それゆえにインターネット電話として機能し得ないものであるということはできない。この点,被告も指摘するとおり,本件明細書等にも「バッファリング処理」に関する記載があるとは認められないから,原告の論法によれば,本件発明に係るアダプタもインターネット電話用アダプタとして機能し得ないことになってしまうのであって,この点においても,原告の上記主張は採用することができない。 イこの点に関して原告は,乙1公報の段落【0016】及び【0053】の各記載から,乙1公報記載の「TCP/IP」が狭義のTCP/IPを意味すると理解できると主張する。 しかし,上記段落【0016】には,「TCP/IP変換手段2dは,アナログ/ディジタル変換手段2cから供給されたディジタル信号を,TCP/IP(TransmissionTransferProtocol/Internet 】には,「TCP/IP変換手段2dは,アナログ/ディジタル変換手段2cから供給されたディジタル信号を,TCP/IP(TransmissionTransferProtocol/InternetProtocol)に応じたデータ列(IPパケット)に変換してルータ3に出力する。」との記載があるところ,上記「TCP/IP・・・に応じたデータ列」の「TC P/IP」が,広義のTCP/IPではなく,狭義のTCP/IPに限定したものと解さなければならない根拠は見いだせない。また,上記段落【0053】に「また,電話機8から伝送されてきたデータ列は,TCP/IPインタフェース部20kによって受信され,音声信号処理部20jによって伸長処理が施される。」と記載されており,これに関して,UDPを用いた場合に生じるパケットが欠落した際の処理が記載されていないとしても,それゆえに,上記記載中の「TCP/IP」が,UDPを含むものではなく,狭義のTCP/IPを意味すると解さなければならないわけではない。 さらに,原告は,乙1発明と同時期に,乙1発明の出願人によって出願された甲14発明については,同出願人が,甲14公報で,「TCP/IP」の用語を狭義のTCP/IPの意味で用いているから,乙1公報の「TCP/IP」も狭義のTCP/IPを意味すると主張する。 しかし,乙1発明と甲14発明とが,関連する技術について,同時期に,同一出願人によって出願されたものであるとしても,そのことから,それぞれの出願に用いられた「TCP/IP」の用語が同義であると解さなければならない理由はない。また,甲14発明は,インターネット電話のような,ネットワークを介して通常の電話のような音声による通信を行う情報通信装置についての発明であるところ(段落【0 であると解さなければならない理由はない。また,甲14発明は,インターネット電話のような,ネットワークを介して通常の電話のような音声による通信を行う情報通信装置についての発明であるところ(段落【0001】),そもそも,上記アのとおり,インターネット電話には,TCP(狭義のTCP/IP)が採用される見込みはないのであるから(原告自身,TCPを用いたインターネット電話は実現不可能と主張している。),甲14発明が狭義のTCP/IPを用いていると考えること自体が相当とはいえない。加えて,原告は,甲14公報に記載された,通話中の会話の途切れや欠落,歪みなどの問題点(段落【0004】,【0005】,【0038】及び【0044】)が狭義のTCP/IPに特有のものであって,UDP/IPにお いては通常生じないものであると主張するが,このような原告主張の事実を裏付けるに足りる証拠はなく,しかも,かかる原告の主張は,UDP方式を用いたインターネット電話でも,パケットの欠落や遅延を補うためにバッファリング処理が必要であるとの原告自身の主張と相容れないものというべきである。 ウ以上によれば,乙1発明がインターネット電話に不適な狭義のTCP/IPを用いており,インターネット電話に必須のバッファリング処理を行っていないから,実施不能であって,引例適格性を有しないとの原告の主張は採用することができない。 (2) 乙1発明と本件発明との対比ア前記3(2)ア及びイ記載の事実によれば,乙1発明は,本件発明の構成要件1A,1B(a),(b),(d)ないし(g),1C及び1E並びに構成要件2A ,2B(a),(b),(d)ないし(g),2C及び2Eのそれぞれに相当する構成を開示していると認められる。 イまた,乙1公報には,「 ,(d)ないし(g),1C及び1E並びに構成要件2A ,2B(a),(b),(d)ないし(g),2C及び2Eのそれぞれに相当する構成を開示していると認められる。 イまた,乙1公報には,「サーバ10は,接続装置2から供給されたデータ列を取得して,この中から前述の電話番号を抽出する。そして,抽出した電話番号に対応するIPアドレス(電話機8のIPアドレス)を検索し,得られたデータをインターネット4及びルータ3を介して接続装置2に返送する。」(段落【0022】),「この図において,パーソナルコンピュータ5a~5cは,ルータ3を介してインターネット4に接続されている。電話機1は,接続装置2およびルータ3を介してインターネット4に接続されている。なお,コンピュータ5a~5cおよび電話機1はLAN(LocalAreaNetwork)を形成している。」(段落【0042】),「ルータ3は,パーソナルコンピュータ5a~5cおよび電話機1によって構成されるLANと,パーソナルコンピュータ9a~9cおよび電話機8によって構成されるLANとを相互に接続するために必要な処理を行う。」 (段落【0043】),「また,以上の実施の形態においては,電話番号とIPアドレスの対応表を,サーバ10に記憶させるようにしたが,例えば,接続装置2やパーソナルコンピュータ5a~5cにこのような対応表を記憶させるようにしてもよい。」(段落【0064】)との記載がある。 上記各記載及び乙1公報の【図3】及び【図4】によれば,乙1発明には,「接続装置2」が,「ルータ3」を介してインターネットに接続された「パーソナルコンピュータ5a~5c」と繋がり,「パーソナルコンピュータ5a~5c」との間で,インターネット電話の通話を行うためのデータを送受信するた 「ルータ3」を介してインターネットに接続された「パーソナルコンピュータ5a~5c」と繋がり,「パーソナルコンピュータ5a~5c」との間で,インターネット電話の通話を行うためのデータを送受信するための通信手段を備える構成が開示されていると認められる。 ところで,乙1発明の「パーソナルコンピュータ5a~5c」は,上記のとおり,直接インターネットに接続されているのではなく,「ルータ3」を介してインターネットに接続されている。しかし,本件発明については,特許請求の範囲において,「コンピュータ」が「インターネットに接続され」ていること(構成要件1B(c)及び2B(c))が規定されているにすぎず,本件明細書等においても,段落【0008】,【0009】,【0011】,【0029】及び【0030】に,本件発明におけるアダプタがコンピュータと電話機との間に接続されて,電話の受信・発呼時の処理を行っていることが記載されているにすぎないこと,また,仮に,このコンピュータが,直接インターネットに接続されておらず,例えば,他の付加的な機器を介してインターネットに接続されているような場合であったとしても,公衆回線用電話機を用いてインターネットを介した通話を行うとの本件発明の作用効果が得られなくなるものでもないことからすると,原告が前記第3,1〔原告の主張〕(3)アで主張するとおり,本件発明における「インターネットに接続されたコンピュータ」は,直接インターネットに接続されたものに限定されるものではないと解される。 よって,乙1発明の上記構成は,本件発明の構成要件1B(c)及び2B(c)の「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」に相当する。 ウこれに対して,原告は,乙1公報には,「パーソナルコンピュータ5a~5c ,本件発明の構成要件1B(c)及び2B(c)の「インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段」に相当する。 ウこれに対して,原告は,乙1公報には,「パーソナルコンピュータ5a~5c」と「接続装置2」の端末相互間で通信がなされている旨の記載がないから,端末相互間の「通信手段」(構成要件1B(c),2B(c))が開示されていないと主張する。 しかし,乙1公報の段落【0043】及び【図3】には,「パーソナルコンピュータ5a~5c」,「ルータ3」,「接続装置2」及び「電話機1」が順に接続されており,その「パーソナルコンピュータ5a~5c」から「電話機1」までがLANを形成していることが記載されており,また,段落【0022】及び【0064】には,「パーソナルコンピュータ5a~5c」が,「サーバ10」の代わりに,電話番号とIPアドレスとの対応表を記憶しておき,「接続装置2」から供給されたデータ列を取得して,そこから抽出した電話番号に対応するIPアドレスを検索し,そのデータを「接続装置2」に返送することが記載されているから,乙1公報には,「パーソナルコンピュータ5a~5c」と「接続装置2」との間で,相互に,インターネット電話を利用した通話を行うためのデータを送受信する構成が記載されていると認められる。 したがって,乙1発明は,構成要件1B(c)及び2B(c)のアダプタとコンピュータとの間の「通信手段」を開示しているといえるから,原告の上記主張は採用することができない。 エ以上のとおり,乙1発明は,本件発明の構成要件1D及び2Dを除き,その他の構成要件を全て開示していると認められる。 したがって,本件発明と乙1発明を対比すると,次のとおりとなる。 (一致点)「公衆回線用電話機を用いてインターネット 及び2Dを除き,その他の構成要件を全て開示していると認められる。 したがって,本件発明と乙1発明を対比すると,次のとおりとなる。 (一致点)「公衆回線用電話機を用いてインターネットを介した通話を行うためのア ダプタであって,中央演算装置と,呼出信号発生部と,インターネットに接続されたコンピュータとの通信手段と,公衆回線用電話機との接続手段と,オフフック検出部と,DTMF信号検出部と,トーン発生部と,を備え,インターネットを介した通話呼出がなされた場合に,前記呼出信号発生部において呼出信号を発生し,該呼出信号を公衆回線用電話機に対して出力する,ことを特徴とするインターネット電話用アダプタ。」(相違点)本件発明は「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号をダイヤルすることで発呼することを可能とする」ものであるのに対し,乙1発明は「発呼するためにダイヤルする番号が『通話相手の電話番号』」である点(3) 相違点についてア本件発明の出願以前に公開された乙2公報には,以下の記載がある。 ・「本発明は,上述の課題を解決し,公衆回線およびインタネットの双方に接続可能な,操作性の高い電話装置およびそのための網制御装置を提供することを目的とする。」(段落【0006】)・「本発明は,電話機とインタネットとの接続を制御するためのインタネット制御手段と,電話機との接続を前記インタネット制御手段および公衆回線のいずれかに切り替えるためのスイッチ手段と,前記スイッチ手段の切替を制御する網切替制御手段とを具備した点に特徴がある。」(段 落【0007】)・「網切替装置3は公衆回線(PSTN)10およびLAN20のいずれかに選択的に電 ッチ手段の切替を制御する網切替制御手段とを具備した点に特徴がある。」(段 落【0007】)・「網切替装置3は公衆回線(PSTN)10およびLAN20のいずれかに選択的に電話機2を接続できるようにするためのスイッチ部4を有している。」(段落【0009】)・「インタネット電話として使用する場合は,ユーザは電話機2から直接IPアドレスをダイヤルすればよい。」(段落【0014】)・「IPアドレスは『129.249.136.231』のように数字とピリオドからなる。」(段落【0022】)・「したがってインタネット電話として使用する場合は,ユーザがIPアドレスの区切りを,電話機2のボタンのうち数字ボタン以外のもの,つまり『#』または『*』に置き換えて入力する。例えば『129#249#136#231』という具合である。」(段落【0023】)・「このように,ユーザはインタネット電話を使用するときは単に,IPアドレスの区切りのドット「.」を「#」または「*」に置き換えるだけで,スイッチ部4の切替を意識することなくインタネット電話で通話をすることができる。」(段落【0025】)・「IPアドレスは電話番号よりも桁数が多いためユーザが正確に覚えていない場合もある。そこで,第3実施形態では,相手先がIPアドレスと電話番号の両方を持つ場合,電話番号からIPアドレスを検索できるようにしてユーザの便宜を図った。」(段落【0028】)・「網切替装置3はIPアドレス・電話番号管理部17を有している。IPアドレス・電話番号管理部17は,IPアドレス判定部15で電話機2から入力されるダイヤル中に,IPアドレスか否かを示す「#」または「*」がない場合,つまり電話番号が入力された場合に,対応するI IPアドレス・電話番号管理部17は,IPアドレス判定部15で電話機2から入力されるダイヤル中に,IPアドレスか否かを示す「#」または「*」がない場合,つまり電話番号が入力された場合に,対応するIPアドレスの有無を判断する機能を有する。そして,対応するIPアドレスがある場合は,予めIPアドレス・電話番号管理部17に保持され ているIPアドレスを前記インタネット30に送出する。」(段落【0029】・「本発明によれば,電話機を使用して,公衆回線を通じた一般電話として通話できるほか,一般電話と同じ使用感覚でインタネット電話による通話をすることもできる。」(段落【0034】)イ上記の段落【0006】,【0007】及び【0034】によれば,乙2発明は,電話機で公衆回線及びインターネットの双方に接続可能とするための網切替制御手段等と,電話機とインターネットとの接続を制御するインターネット制御手段等を備える電話装置及び網切替制御装置に関する発明であって,同発明によって,電話機2を使用して一般電話として通話できるほか,一般電話と同じ使用感覚でインターネット電話による通話もすることができるようになるものと認められる。 そして,上記段落【0023】,【0025】及び【図4】によれば,網切替装置3は,同装置に接続された電話機2をインターネット電話として使用する場合に,ユーザが,IPアドレスの区切り,すなわち「.」(ドット)を,「#」や「*」に置き換えて入力することで発呼し,インターネット電話で通話をすることができることが認められる。 このように,インターネット電話を使用する際,電話機で,相手方のIPアドレスを,「.」(ドット)を「#」に置き換えて入力することは,本件発明の構成要件1D及び2Dの「相手方のIPアドレスを れる。 このように,インターネット電話を使用する際,電話機で,相手方のIPアドレスを,「.」(ドット)を「#」に置き換えて入力することは,本件発明の構成要件1D及び2Dの「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号」の例示として,本件明細書等の段落【0028】に記載されている,「ユーザは,ダイヤルトーンを聞いて,相手方の番号をダイヤルする(S306)。このとき,相手方の番号は,IPアドレスのドット部分を『#』に変換したものを用いる。たとえば,相手方のIPアドレスが,『192.168.1.2』であるとすれば,相手方の番号は,『192#168#1#2#』となる。」との実施態様そのものである。そし て,本件明細書等には,「相手方のIPアドレスを変換した番号」及び「相手方のIPアドレスを意味する番号」の例示として,これ以外の記載がないことからすると,本件発明における「相手方のIPアドレスを変換した番号」及び「相手方のIPアドレスを意味する番号」は,このような例示にかかるもの(IPアドレスの「.」を「#」に置き換えたもの)あるいはその上位概念を指していると解するほかない。 そうすると,乙2発明には,本件発明の「相手方のIPアドレスを変換した(意味する)番号をダイヤルすることで発呼することを可能とする」との構成が開示されているということができる。 そして,乙1発明と乙2発明は,いずれも通常の電話機を用いてインターネット電話を行うための技術であり,その際,その電話機で,相手方のIPアドレスに対応する番号等を入力することで発呼することを可能とする作用機能を有する点で共通しており,しかも,乙2公報の段落【0028】及び【0029】には,「相手方のIPアドレスの『.』を『#』や『*』で置き換えた番号」を用いることのほかに,相手方の 可能とする作用機能を有する点で共通しており,しかも,乙2公報の段落【0028】及び【0029】には,「相手方のIPアドレスの『.』を『#』や『*』で置き換えた番号」を用いることのほかに,相手方のIPアドレスに対応した電話番号を用いることも記載されているのであるから,乙1発明の,IPアドレスに代えてIPアドレスに対応する「電話番号」を入力して発呼する構成を,乙2発明に,同構成と並べて記載されている「相手方のIPアドレスの『.』を『#』や『*』で置き換えた番号」を入力して発呼する構成に置き換えることは,当業者であれば容易になし得たものと認められる。 したがって,本件発明は,乙1発明に乙2発明を適用することによって当業者が容易に発明することができたものであるというべきである。 ウこの点に関して原告は,乙2発明はIPアドレスの「.」の部分を「#」や「*」に置き換えた番号を用いることに限定されるのに対して,本件発明の構成要件1D及び2Dの「IPアドレスを変換した(意味する)番号」 には,上記のような置き換えた番号だけでなく,IPアドレスに対して割り振られた電話番号などを広く含むものであるから,乙2発明によっても,構成要件1D及び2Dは開示されていないと主張する。 しかし,本件明細書等には,「IPアドレスを変換した(意味する)番号」の具体例として,IPアドレスの「.」を『#』に置き換えたものしか開示されておらず,乙2発明がそれと同じ態様を開示している以上,乙2発明には,「IPアドレスを変換した(意味する)番号」が開示されていると解し得ることは上記のとおりである。 また,仮に,原告が主張するように,本件発明の「IPアドレスを変換した(意味する)番号」に,IPアドレスに対して割り振られる電話番号が含まれると解し と解し得ることは上記のとおりである。 また,仮に,原告が主張するように,本件発明の「IPアドレスを変換した(意味する)番号」に,IPアドレスに対して割り振られる電話番号が含まれると解したとしても,乙2公報の段落【0028】及び【0029】には,「相手方のIPアドレスの『.』を『#』や『*』で置き換えた番号」以外に,相手方のIPアドレスに対応した電話番号を用いることも記載されていることからすれば,結局,IPアドレスを変換した(意味する)番号を用いる実施例は,乙2発明に開示されていることになる(なお,乙1公報の段落【0018】にも,同様に,IPアドレスに対応する電話番号を用いる態様が開示されている。)。 したがって,いずれにせよ,本件発明の構成要件1D及び2Dが乙2発明に開示されていないとの原告の上記主張は採用することができない。 エよって,本件発明は進歩性を欠き,本件特許は,無効審判請求によって無効にされるべきものと認められるから,その権利を行使することができない(特許法104条の3第1項)。 5 結論以上のとおり,被告アダプタは,文言上,又は均等論によっても,本件発明の技術的範囲に属するものとは認められず,また,本件特許は,進歩性欠如を理由に,無効審判請求によって無効にされるべきものと認められる。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官東海林保 裁判官寺田利彦 裁判官足立拓人 (別紙)物件目録以下の機種名を有するインターネット電話用アダプタ 1 BB 裁判官寺田利彦 裁判官足立拓人 (別紙)物件目録以下の機種名を有するインターネット電話用アダプタ 1 BBModem 4-Gトリオモデム 3-Gトリオモデム 3-GPlusトリオモデム 26Mトリオモデム 12Mコンボモデム 12Mコンボモデム 8M 2 ADSLモデム+BBフォン・ターミナルアダプタ 3 リーチDSLモデム+BBフォン・ターミナルアダプタ (別紙)被告アダプタ説明書1 1.被告アダプタ1・BBModem 4-G・トリオモデム 3-G・トリオモデム 3-GPlus・トリオモデム 26M・トリオモデム 12M・コンボモデム 12M・コンボモデム 8M 2.被告アダプタ1の概要ブロック図上記1記載の機種名を有する被告アダプタ1は,以下のブロック図に示すように,下記の(1)ないし(5)の構成要素からなる構造を有している。 (1)制御部被告アダプタ1の種々の動作を制御する中央演算装置である。 (2)LANポート被告アダプタ1をLAN接続するためのポートである。被告アダプタ1は,LANポートを介してパーソナルコンピュータ(PC)と接続可能である。 (3)電話機ポート被告アダプタ1を電話機に接続するためのポートである。 (4)LINEポート被告アダプタ1を公衆網(公衆電話回線及びADSL回線)に接続するためのポートである。 (5)音声機能部呼出信号発生部,オフフック検出部,DP/DTMF信号検出部,トーン発生部,音声処理部等からなる。音声通話に関連する処理を行う。 被告被告被告被告アダプタアダプタ )音声機能部呼出信号発生部,オフフック検出部,DP/DTMF信号検出部,トーン発生部,音声処理部等からなる。音声通話に関連する処理を行う。 被告被告被告被告アダプタアダプタアダプタアダプタ1のブロックブロックブロックブロック図音声機能部オフフック検出部音声処理部(4)LINEポートスプリッタ(音声/ADSL分離)無線LAN機能部DTMF信号検出部呼出信号発生部トーン発生部制御部(中央演算処理装置)音声機能部オフフック検出部音声処理部スプリッタ(音声/ADSL分離)無線LAN機能部DTMF信号検出部呼出信号発生部トーン発生部制御部(中央演算処理装置)音声機能部オフフック検出部音声処理部スプリッタ(音声/ADSL分離)無線LAN機能部DTMF信号検出部呼出信号発生部トーン発生部制御部(中央演算処理装置)音声機能部オフフック検出部音声処理部スプリッタ(音声/ADSL分離)無線LAN機能部DTMF信号検出部呼出信号発生部トーン発生部制御部(中央演算処理装置)音声機能部オフフック検出部音声処理部スプリッタ(音声/ADSL分離)Ethernet機能部DTMF信号検出部呼出信号発生部トーン発生部(1)制御部(中央演算装置)(5)音声機能部オフフック検出部(3)電話機ポート音声処理部スプリッタ(電話/ADSL分離)ADSL 機能部(2)LAN ポートDP/ DTMF信号検出部呼出信号発生部トーン発生部 (別紙)被告アダプタ説明書2 1.被告アダプタ2ADSLモデム L 機能部(2)LAN ポートDP/ DTMF信号検出部呼出信号発生部トーン発生部 (別紙)被告アダプタ説明書2 1.被告アダプタ2ADSLモデム+BBフォン・ターミナルアダプタ 2.被告アダプタ2の概要ブロック図上記1記載の被告アダプタ2(ADSLモデムとBBフォン・ターミナルアダプタとを組合せたもの)は,以下のブロック図に示すように,下記の(1)ないし(5)の構成要素からなる構造を有している。 (1)制御部被告アダプタ2の種々の動作を制御する中央演算装置である。 (2)LANポート被告アダプタ2をLAN接続するためのポートである。被告アダプタ2は,LANポートを介してパーソナルコンピュータ(PC)と接続可能である。 (3)電話機ポート被告アダプタ2を電話機に接続するためのポートである。 (4)LINEポート被告アダプタ2を公衆網(公衆電話回線及びADSL回線)に接続するためのポートである。 (5)音声機能部呼出信号発生部,オフフック検出部,DP/DTMF信号検出部,トーン発生部,音声処理部等からなる。音声通話に関連する処理を行う。 被告被告被告被告アダプタアダプタアダプタアダプタ2のブロックブロックブロックブロック図Ethernet機能部(1)制御部(中央演算処理装置)ADSL機能部(4)LINEポートLANポートBBフォン・ターミナルアダプタ(5)音声機能部オフフック検出部音声処理部DP/DTMF信号検出部呼出信号発生部トーン発生部(4)LINEポートWANポート(2)LANポート(3)電話機ポート電話機へPCへス 機能部オフフック検出部音声処理部DP/DTMF信号検出部呼出信号発生部トーン発生部(4)LINEポートWANポート(2)LANポート(3)電話機ポート電話機へPCへスプリッタ公衆網へ(1)制御部ADSLモデム (別紙)被告アダプタ説明書3 1.被告アダプタ3リーチDSLモデム+BBフォン・ターミナルアダプタ 2.被告アダプタ3の概要ブロック図上記1記載の被告アダプタ3(リーチDSLモデムとBBフォン・ターミナルアダプタとを組合せたもの)は,以下のブロック図に示すように,下記の(1)ないし(5)の構成要素からなる構造を有している。 (1)制御部被告アダプタ3の種々の動作を制御する中央演算装置である。 (2)LANポート被告アダプタ3をLAN接続するためのポートである。被告アダプタ3は,LANポートを介してパーソナルコンピュータ(PC)と接続可能である。 (3)電話機ポート被告アダプタ3を電話機に接続するためのポートである。 (4)LINEポート被告アダプタ3を公衆網(公衆電話回線及びADSL回線)に接続するためのポートである。 (5)音声機能部呼出信号発生部,オフフック検出部,DP/DTMF信号検出部,トーン発生部,音声処理部等からなる。音声通話に関連する処理を行う。 BBフォン・ターミナルアダプタ被告被告被告被告アダプタアダプタアダプタアダプタ3のブロックブロックブロックブロック図Ethernet機能部(1)制御部(中央演算処理装置)xDSL機能部(4)LINEポート電話機ポートLANポート公衆網へ(5)音声機能部オフフック検出部 Ethernet機能部(1)制御部(中央演算処理装置)xDSL機能部(4)LINEポート電話機ポートLANポート公衆網へ(5)音声機能部オフフック検出部音声処理部DP/DTMF信号検出部呼出信号発生部トーン発生部LINEポートWANポート(2)LANポート(3)電話機ポート電話機へPCへスプリッタ(1)制御部リーチDSLモデム
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