主文 本件控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中300日を原判決の刑に算入する。 理由 本件控訴の趣意は,弁護人田中伸作成の控訴趣意書に記載されているとおりであるから,これを引用する。論旨は,要するに,事実の誤認を主張するものである。すなわち,原判決は,被告人が,自己が経営する有限会社Aの従業員B(当時46歳,以下「B」若しくは「被害者」という。)が,日ごろから自己に対して反抗的な態度をとることなどから,同人に対して憤まんを募らせていたところ,使用していた車両をBに無断で売却されて,同人に対して憤まんを募らせていたC(以下「C」という。)と共謀の上,Bを殺害し,その死体を遺棄することを企て,平成13年4月12日正午ころ,広島県庄原市所在の被告人管理に係る造成地(以下「本件現場」という。)において,Bに対し,殺意をもって,数回にわたり,こもごも,所携の刃物でその腹部及び背部等を突き刺すなどし,よって,そのころ同所において,同人を失血により死亡させて殺害した上,上記日時場所において,Bの死体を土中に埋め,もって死体を遺棄した旨殺人及び死体遺棄の事実を認定したが,被害者の遺体等の客観的物証は未だ発見されておらず,被告人が主張するアリバイも完全に否定されていないこと等にかんがみれば,被告人が犯行に関与したとの点については,合理的な疑いを容れない程度に証明されたとはいえないから,上記の事実を認定した原判決には,明らかに判決に影響を及ぼす事実の誤認がある,というのである。 そこで,検討すると,関係証拠によれば,原判決認定の「罪となるべき事実」及び「事実認定の補足説明」の項における説示は,証人C及び被告人の供述の信用性等に関する判断を含めて,当裁判所も概ね正当 る。 そこで,検討すると,関係証拠によれば,原判決認定の「罪となるべき事実」及び「事実認定の補足説明」の項における説示は,証人C及び被告人の供述の信用性等に関する判断を含めて,当裁判所も概ね正当なものとして是認することができるから,原判決には所論のいう事実の誤認はない。以下,所論にかんがみ,付言する。 1 所論は,被害者の殺害及びその死体の遺棄を証明する被害者の遺体,凶器等の客観的物証が発見されておらず,遺体が埋め替えられたことをうかがわせる証拠もない上,殺害されたとされる時期以降も被害者が生存していたとの証拠も存在するのであるから,被害者の死亡ということ自体に合理的疑いが残る,というのである。 しかしながら,後述するとおり,Cの被害者の殺害状況等に関する供述及びこれに符合する被告人の捜査官に対する自白は十分に信用することができるのであり,しかも,被害者は,平成13年4月12日朝,被告人が経営するAの事務所に出勤し,被告人の指示に従って,本件現場において故障したブルドーザーを埋める作業にとりかかるべく,被告人とともに出発した後,その姿を消してしまったこと,被害者の妻は,同年3月末ころ,夫婦喧嘩をして,故国のフィリピンに戻っていたが,同年5月3日に帰宅した際には,被害者が運転免許証,預金通帳等を残したまま行方不明となっており,その後も,被害者と接触することができず,被害者の母親との連絡も絶たれていることが判明したこと,被害者方の電話記録によると,同年4月11日午後9時49分ころの発信を最後に,被害者の妻の帰宅まで使用された形跡がないこと等を総合すると,被害者は,同月12日以降,突然姿を消しており,当時の被害者の生活状況等からして,突如姿を消さなければならないような事情も全くうかがわれないこと等を考慮すると,被害者が殺害されたこと を総合すると,被害者は,同月12日以降,突然姿を消しており,当時の被害者の生活状況等からして,突如姿を消さなければならないような事情も全くうかがわれないこと等を考慮すると,被害者が殺害されたことの証明は十分であるといわなければならない。 Cは,土木機械を使用して,本件現場に穴を掘った上,被害者の遺体及び凶器をその穴の中に埋めた旨捜査,公判を通じて一貫して供述しており,被告人も,捜査官に同旨の自白をしていたのであるが,平成14年2月27日から同年3月1日の3日間及び同年3月19日に実施された本件現場における検証の際,C及び被告人の指示説明に従って,本件現場を掘削して捜索が行われたにもかかわらず,被害者の遺体や凶器等の物証が発見されなかったことは,所論が指摘するとおりである。 ところで,平成13年7月10日,Aの従業員が本件現場の整地作業をした際,ブルドーザーの排土板の一部が地面から突き出ているのに気付き,ブルドーザーが地表付近において排土板を上にした状態で埋められているのを確認したのであるが,平成14年2月27日から同年3月1日まで実施された上記検証の際には,深さ約2.3メートルないし約4.1メートルの地点に上下逆となった状態のブルドーザーが埋められているのが発見されており,上記平成13年7月10日の状態と対比すると,埋められた深さが違っているばかりか,埋められた地点も異なっていたのであり,このような事情に照らすと,何者かが本件現場の埋め直し作業を行ったと考えざるを得ない。しかも,本件現場は被告人が管理していた上,上記のとおり,平成13年7月10日にブルドーザーが埋められているのが発見された際には,被告人は,血相を変えて,「ブルは出なかったか。」などと従業員に聞き回っていたことが認められる。また,Cは,発覚した覚せい剤取締法違 年7月10日にブルドーザーが埋められているのが発見された際には,被告人は,血相を変えて,「ブルは出なかったか。」などと従業員に聞き回っていたことが認められる。また,Cは,発覚した覚せい剤取締法違反事件を逃れるため,平成13年5月4日から同年10月8日の逮捕に至るまで身を隠していたのであるが,その間も被告人と接触を保っていたところ,会うたびに,被害者を殺害したことを誰にも言うなと被告人から厳しく口止めされていただけではなく,逮捕された後も,面会に来た被告人から,余計なことは言うなと念を押されていた旨供述している。 このような諸事実にかんがみると,本件犯行後,本件現場が掘削されて,被害者の遺体等が他の場所に移動された可能性が高く,所論が指摘するような物証が本件現場から発見されなかったことを理由に,被害者の死亡の事実や被告人らによる被害者の殺害並びに死体遺棄の事実が否定されるものではない。 なお,平成13年5月18日に被害者の妻が警察に提出した家出人捜索願受理票には,同年5月1日,妻の友人がラーメン屋から出てきた被害者を見た旨の記載があるが,その供述をしたという人物自体を特定することができない上,その供述内容も不確実極まりないこと等を考慮すると,とるに足りないものといわざるを得ない。 所論は理由がない。 2 次に,所論は,被告人と共に本件犯行に及んだ旨のCの供述は信用性に欠けるから,これを信用できるとした原判決には事実の誤認がある,という。 そこで,検討すると,Cの供述の要旨は,平成13年4月8日朝,自宅付近の路地において,被告人から被害者の殺害を持ちかけられた際,平素から可愛がってくれる被告人との関係もあって,これを承諾すると,さらに,被告人から,同月11日に,被害者を本件現場に誘い出すので,その場で被害者を殺害して,死体も 害者の殺害を持ちかけられた際,平素から可愛がってくれる被告人との関係もあって,これを承諾すると,さらに,被告人から,同月11日に,被害者を本件現場に誘い出すので,その場で被害者を殺害して,死体も埋めるとの計画を聞かされた上,包丁を持参して本件現場に来るようにとの指示を受け,これを了承し,同月11日と12日の両日,当時の勤務先から休暇を取ったところ,同月10日夕刻に至って,殺害計画の実行日を同月12日に変更するので,同日昼ころ本件現場に来るようにという被告人からの電話を受けた,そこで,同月12日,出刃包丁と筋引を積み込んだ自動車を運転して,正午前に現場に到着し,土木機械を操作する被害者と共に被告人がいたため,被告人のもとに赴いた,その後,被害者が弁当を食べ始めたので,被害者を油断させるため,被告人に対して,未払い賃金の支払いを声高に要求し,これに応じた被告人がけんか腰の受け答えをしたことから,被害者がこれを仲裁するような態度に出た,そこで,被害者の注意をひく目的で,被害者に貸した自動車の行方を問うたところ,被害者がこれを他に売却したと返答したことから,被害者と口論を始めて,被害者の注意が自分に向いた隙に,被害者の後方に位置していた被告人が,その前方に回り込んで,被害者の背中に左手を回して抱きつくような中腰の姿勢で,被害者の身体を2回突き刺したのを見て,自動車に戻って凶器を取り出し,左手に筋引,右手に出刃包丁を握り,被害者に近づくと,被告人が,左手から筋引を奪い取った上,手で上半身を支えながら座り込んだ姿勢の被害者の腹部付近を2回突き刺したのを見た,そこで,右手に持った包丁で被害者の背中を2,3回突き刺すと,被害者がその場に倒れ込んだ,そして,現場にあったビニールシートを被害者に掛け,土木機械を操作して,その上から土を掛けた後,左手親 見た,そこで,右手に持った包丁で被害者の背中を2,3回突き刺すと,被害者がその場に倒れ込んだ,そして,現場にあったビニールシートを被害者に掛け,土木機械を操作して,その上から土を掛けた後,左手親指を負傷していたため,右手人差し指を負傷した被告人に連れられて,50メートルくらい斜面を降りたところにある水路ようの場所で手を洗ったものの,被告人の出血が止まらなかったことから,被告人が運転する自動車で,広島県三次市内の薬局に出かけ,下車した自分が,薬や包帯等を購入してから,再び本件現場に戻り,土木機械を操作して,掘った穴の中に被害者を投げ込んで,上から土を掛け,付近の地ならしをした,というものである。 Cの上記供述は,共謀の状況,犯行状況等について,具体的かつ詳細に供述するものであって,体験した者でなければ供述できないような臨場感,迫真性に富む上,原審公判廷において,被告人の面前で,厳しい反対尋問を受けても,動揺することなく一貫した明確な供述を維持していること,原判決が適切に説示するとおり,Cと被告人の手の指には上記供述に対応する傷跡が存在しており,上記供述にある薬局で上記供述にある日時にそのような薬等を購入した客が現に存在していること,Cは,本件当時はAを既に退職しており,当時のAの内部事情を知る機会があったとは思われないのであるから,被害者が同月11日に休暇を取ったことを察知することは考えられないばかりか,被害者が同月12日に本件現場で作業を行うことは,A従業員さえ当日朝になってようやく知ったというのであるから,これらの事情を承知するには,被告人からの連絡があって知ったと考えるほかはないこと,しかも,Cは,情交関係にあったD(以下「D」という。)に対して,被害者の殺害を計画しており,被告人との間で,被害者を現場に赴かせる相談をしてい 告人からの連絡があって知ったと考えるほかはないこと,しかも,Cは,情交関係にあったD(以下「D」という。)に対して,被害者の殺害を計画しており,被告人との間で,被害者を現場に赴かせる相談をしている旨話したり,同月13日には,被告人と共に被害者を刺して殺害し,遺体を土の中に埋めた旨告げていたほか,犯行のあったとされるころから数週間経過した時期に,Aの従業員に対しても,被害者が7メートル下の土中に埋まっているから,もう出てくることはない旨吹聴していたこと,被告人と被害者の当時の関係等をみると,同年3月に実施された従業員旅行の積立金を巡って,被害者が他の従業員の面前で被告人を罵倒し,これに対して,被告人が反論するなどしており,厳しい対立関係にあったこと等,その信用性を裏付ける諸事実も存在しており,その信用性は優に肯認することができる。 所論は,覚せい剤の濫用によって精神障害が存在した可能性があるCが,Aを解雇されたことに不満を抱き,自己の刑責の軽減を図る目的で,被告人を共犯者に仕立て上げた可能性があるから,Cの供述は信用性を欠く,という。 しかしながら,Cは,解雇されて2か月くらい経過した時期に,被告人から新しい職場で真面目に勤務するようにと声を掛けられ,それまでのわだかまりが相当程度とけていた上,平成13年3月ころには,もう少し辛抱すれば,再びAで雇用するなどと言われていたという事情を述べるほか,前刑で被告人との共犯となったことに恩義を感じた被告人から,小遣い銭を受け取ったり,解雇後も金銭の援助を受けていたこと等を供述しており,また,Cが覚せい剤濫用によって,精神障害に陥っていたことをうかがわせる的確な証拠は認められないことをも併せると,Cが,被告人に恨みを抱くなどして,殊更虚偽の供述をしてまで,被告人を陥れなければならない事情が せい剤濫用によって,精神障害に陥っていたことをうかがわせる的確な証拠は認められないことをも併せると,Cが,被告人に恨みを抱くなどして,殊更虚偽の供述をしてまで,被告人を陥れなければならない事情が存在したとはいえず,所論は失当である。 また,所論は,Cの供述について,①被害者の殺害を謀議した場所が,一般人が通行し,近隣の者に聞かれる危険性が高い場所であって,謀議の場所としては不自然である,②Cは,犯行日とされる以前に,被告人と共に,本件場所に行ったことがあるのに,これを否定するのは虚偽である,③被害者が食べ始めていた弁当の行方が不明であるとする供述は不自然である,④被告人が凶器を手にした経緯や,被告人の移動状況等に関して供述していないのは不自然である,⑤本件現場付近には電動ポンプ式の蛇口が設けられた炭焼き小屋があるのに,被害者を殺害した後,手を洗うために,わざわざ急勾配の斜面を上り下りしたというのは不自然である,⑥遺体にビニールシートを掛けただけで,本件現場を離れて,小1時間を要する薬局まで赴いたというのは不自然である,⑦平成13年5月上旬ころ,被告人とともに,本件現場に赴いて,被告人から,義理の娘であるDの子供を死なせたことで,叱責されたというが,再び本件現場に赴く理由としては考えられないことであって,不自然であるなどと主張する。 しかしながら,①上記謀議は,周囲の様子をうかがいながら行われたことは当然であって,謀議の場所として不自然で考えられないとまではいえない,②Cが,本件犯行前に,本件現場に赴いたことをうかがわせるような信用できる証拠は見当たらず,虚偽の供述をしているとは認め難い,③被害者が食べ始めた弁当の行方について言及がないからといって,それがCの供述全体の信用性を損なうものではない,④被告人が最初に突き刺す以前は, 証拠 は見当たらず,虚偽の供述をしているとは認め難い,③被害者が食べ始めた弁当の行方について言及がないからといって,それがCの供述全体の信用性を損なうものではない,④被告人が最初に突き刺す以前は,被害者の気をひくことに注意を払っていたというのであるから,被告人の行動の全てを目にしていなかったとしても,特に不自然とはいえない,また,⑥の点については,本件現場の状況に照らすと,無関係の一般人等が出入りする可能性は乏しいことに加えて,捜査の結果,問題の薬局と本件現場を自動車で移動した場合には,片道15分程度の時間を要するにすぎないことに照らしても,不自然な行動とはいえないし,⑤,⑦の点も,格別不自然とはいえないから,所論はいずれも受け入れることができない。 その他,弁護人の所論を種々検討してみても,Cの供述の信用性を否定したり,減殺するような事情は認められない。 さらに,所論は,Dの供述によると,Cは,既に,平成12年12月の時点で,被害者を憎悪してその殺害を企図していたこと,周到な計画,準備を遂げた上,被害者の殺害について,主体的,積極的に関与していることが明らかであり,被告人から被害者殺害の共犯になってもよいとの話があったことを奇貨として,被告人が主犯であって,自身は従属的役割を果たしたにすぎいないと虚偽の供述をした可能性が高く,Cの供述は,この面からも,信用性が否定される,という。 しかしながら,D供述は,いわゆる男女間の寝物語として行われた際の会話の内容を述べるものであって,Cの性格等からして,虚勢を示したり,誇張等が加わることは当然考えられるところであり,その内容の全てが信用できるというものでないことは多言を要しないところである。かえって,D供述は,Cが被告人と共に被害者の殺害に関与したこと,最初に被告人が刺した後,C は当然考えられるところであり,その内容の全てが信用できるというものでないことは多言を要しないところである。かえって,D供述は,Cが被告人と共に被害者の殺害に関与したこと,最初に被告人が刺した後,Cがとどめを刺したこと,被害者の遺体を土中に埋めたこと等,C供述とは主要な部分で合致しており,C供述を裏付けるものと評価することができ,これがC供述の信用性を減殺するものとはいえないから,所論に賛同することができない。 3 そして,所論は,原判決が被告人の捜査官に対する自白の信用性を肯定したが,莫大な負債の返済に苦慮していた被告人が,刑務所に行けば,その苦しみから逃れられると自暴自棄となって,Cから聞かされた本件犯行の概要をもとに,虚偽の自白をしたという事情があったほか,その自白内容についても,最初に刺した包丁について,事前に本件現場のコンクリートパネルの隙間に隠しておき,Cと被害者の口げんかの機会に,これを取り出して,自分の自動車の運転席付近に置き,時機を見計らって手にしたというのであるが,被害者に気付かれる可能性が高いことから,不自然であるし,また,被害者を刺した場所についても,被告人の自白では運転席付近であるのに,C供述では助手席付近となっており,重大な食い違いがあること等に照らしても,被告人の自白が信用性に欠けることは明らかである,というのである。 しかしながら,被告人は,捜査官に対して,当初から一貫して,本件犯行を全面的に認めていたばかりか,原審第1回公判期日の罪状認否の際にも,公訴事実は全部間違いない旨陳述していたのであって,殺人罪の前科を有しており,平成11年2月2日に懲役15年の刑を受け終わった被告人が,本件犯行を自白すれば,有罪となって,厳しく処罰されることを熟知していたことが明らかであるから,所論が指摘するような事情のも を有しており,平成11年2月2日に懲役15年の刑を受け終わった被告人が,本件犯行を自白すれば,有罪となって,厳しく処罰されることを熟知していたことが明らかであるから,所論が指摘するような事情のもとに虚偽の自白をしたなどという弁解を採用することは到底できない上,その自白内容は,殺害の動機,Cとの謀議の経緯,犯行準備状況,犯行状況等に関して,Cら関係者の供述とも大筋において合致しており,Cに告げることなく,凶器の包丁を購入して準備しておいたり,昼食用の弁当を購入していたこと等,Cが知り得ない内容も含まれており,大綱において優に信用することができる。 所論が指摘する不自然とされる点を検討してみても,口げんか等に気を取られていた被害者の隙を狙って,包丁を手にするに至った経緯について,格別不自然とすべきものは見当たらないし,また,被害者を刺した場所に関して,被告人の自白とC供述には食い違いがあることは指摘のとおりであるが,犯行時の供述が細部についてまで全て合致していなければ,供述の信用性が根底から否定されたり,大幅に減殺されるというものではなく,しかも,これらの供述はいずれも犯行時から相当に時間が経過した後の供述であること等を考慮すると,所論が指摘するような点が被告人の自白の信用性を否定するようなものとはいえない。 その他,弁護人が指摘する諸点を検討してみても,被告人の自白の信用性を是認した原判決は相当である。 4 所論は,原判決は被告人のアリバイ供述は信用することができないとしているが,被告人のアリバイは完全には否定されていないのであって,被告人が本件に関与したとの点については,合理的な疑いが残る,というのである。 被告人は,原審及び当審公判において,平成13年4月12日は,被害者を本件現場に送って行った後,元請けのE組の朝礼に出て 人が本件に関与したとの点については,合理的な疑いが残る,というのである。 被告人は,原審及び当審公判において,平成13年4月12日は,被害者を本件現場に送って行った後,元請けのE組の朝礼に出て,喫茶店でE組の従業員Fから借金を申し込まれ,その後,金を借りてFに金を貸し,E組の事務所で出来高の計算をするなどした旨供述するところ,E組の代表取締役のGは,被告人は平成13年2月終わりから3月初めころまでE組の朝礼に参加していたが,そのころ被告人が出来高以上の報酬を受け取っていたことが発覚したため朝礼への参加を禁止したので,それ以降はE組の朝礼には参加していなかった旨供述し,Fは,出来高の計算は,締め切り日である25日の直前にしており,12日に計算をすることはないし,喫茶店で被告人に借金の依頼をしてその日のうちにE組の事務所で金を借りたことはない旨供述しており,当審で取り調べた証拠を検討しても,被告人のアリバイ主張を裏付けるに足りる証拠はないというべきである。 そのほか,弁護人がいろいろと主張する点を全て検討しても,被告人に対し,Cとの共同正犯による殺人,死体遺棄の事実を認定した原判決の判断は相当であり,論旨は理由がない。 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,刑法21条を適用して当審における未決勾留日数中300日を原判決の刑に算入し,当審における訴訟費用については,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととして,主文のとおり判決する。 平成17年1月18日広島高等裁判所第一部裁判長裁判官大渕敏和裁判官芦高源裁判官島田一 判長 裁判官 大渕敏和 裁判官 芦高源 裁判官 島田一
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