令和1(行コ)117 土地の使用許可申請不許可処分取消等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和2年1月23日 大阪高等裁判所
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判決文本文11,261 文字)

令和2年1月23日判決言渡令和元年(行コ)第117号土地の使用許可申請不許可処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成29年(行ウ)第237号) 主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2(1) 控訴人が平成29年6月12日付けでした原判決別紙2物件目録第1記載の土地の使用許可申請及び同目録第2記載の住居の新築許可申請に対し,国土交通省近畿地方整備局長が同年7月27日付けでした不許可処分を取り消す。 (2) 控訴人が,次回の衆議院議員総選挙における選挙区選出議員の選挙及び比例区選出議員の選挙において,原判決別紙2物件目録第2記載の住居を生活の本拠とした状態を継続しながら投票をすることができる地位又は選挙人名簿に登録される地位にあることを確認する。 (3) 控訴人が,次回の日本国憲法の改正手続に関する法律に基づく国民投票において,原判決別紙2物件目録第2記載の住居を生活の本拠とした状態を継続しながら投票をすることができる地位又は投票人名簿に登録される地位にあることを確認する。 (4) 被控訴人国は,控訴人に対し,5000円及びこれに対する平成29年12月26日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 (5) 控訴人が,被控訴人国が管理・占有する土地につき,住居を有するための使用権を有することを確認する。 (6) 控訴人が,次回の衆議院議員総選挙における選挙区選出議員の選挙及び比 例区選出議員の選挙において,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法がいうホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら投票をすることができる地位又は選挙人名簿に登録される地位にあ 例区選出議員の選挙において,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法がいうホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら投票をすることができる地位又は選挙人名簿に登録される地位にあることを確認する。 (7) 控訴人が,次回の日本国憲法の改正手続に関する法律に基づく国民投票において,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法がいうホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら投票をすることができる地位又は投票人名簿に登録される地位にあることを確認する。 (8) 控訴人が,衆議院議員総選挙の選挙権行使のための選挙人名簿に登録されていないことは違法であることを確認する。 (9) 控訴人が,大阪市A区選挙管理委員会が調製保管する選挙人名簿に登録される地位にあることを確認する。 (10) 大阪市A区選挙管理委員会は,その調製保管する選挙人名簿に控訴人を登録せよ。 (以下,上記控訴の趣旨2項(1)に係る請求を「請求1」といい,(2)以下の請求についても同様に呼称する。)第2 事案の概要(略称は,特記しない限り,原判決の例による。) 1 本件は,B川の河川区域内の原判決別紙2物件目録第1記載の土地(本件土地)に「C」と称する同目録第2記載の工作物(本件工作物)を設置し,同工作物を居所として生活している控訴人が,被控訴人らに対し,以下の請求をした事案である。 (1) 国土交通省近畿地方整備局長(近畿地方整備局長)に対し,河川法24条に基づく本件土地の占用許可及び同法26条1項に基づく本件工作物の新築許可の各申請を行ったところ,いずれも平成29年7月27日付けで不許可処分(本件不許可処分)を受けたことから,被控訴人国に対し,本件不許可処分の取消し(請求1)及び被控訴人国が管理・占有する土地につき,住居 たところ,いずれも平成29年7月27日付けで不許可処分(本件不許可処分)を受けたことから,被控訴人国に対し,本件不許可処分の取消し(請求1)及び被控訴人国が管理・占有する土地につき,住居 を有するための使用権を有することの確認(請求5)(2) 本件不許可処分が取り消されると,控訴人について,本件工作物が生活の本拠として認められ,住民基本台帳に記録されることになるとして,被控訴人らに対し,そのような状態において次回の衆議院議員総選挙における選挙区選出議員の選挙及び比例区選出議員の選挙の投票をすることができる地位等にあることの確認(請求2)及び次回の日本国憲法の改正手続に関する法律(憲法改正手続法)に基づく国民投票における投票をすることができる地位等にあることの確認(請求3)(3) 本件不許可処分が取り消されない場合として,控訴人について,本件工作物が生活の本拠として認められず,住民基本台帳に記録されない状態が継続されるとしても,住所を有し,かつ,住民基本台帳に記録されている日本国民に限って選挙権を認めている公職選挙法21条1項は,憲法13条,14条1項,15条1項及び3項,44条ただし書,市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)25条に反し無効であり,また,住民基本台帳に記録されている日本国民に限って国民投票権を認めている憲法改正手続法22条1項は,憲法13条,14条1項及び憲法の基本原理に反し無効であるなどと主張して,いずれも被控訴人らに対し,以下のアからエまでの請求ア次回の衆議院議員総選挙における選挙区選出議員の選挙及び比例区選出議員の選挙の投票をすることができる地位等にあることの確認(請求6)並びに次回の憲法改正手続法に基づく国民投票における投票をすることができる地位等にあることの確認(請求7)イ 挙及び比例区選出議員の選挙の投票をすることができる地位等にあることの確認(請求6)並びに次回の憲法改正手続法に基づく国民投票における投票をすることができる地位等にあることの確認(請求7)イ控訴人が衆議院議員総選挙のための選挙人名簿に登録されていないことの違法確認(請求8。控訴人は抗告訴訟としての不作為の違法確認の訴え(行政事件訴訟法(行訴法)3条5項)として提起)ウ大阪市A区選挙管理委員会が調製保管する選挙人名簿に登録される地位にあることの確認(請求9。控訴人は無名抗告訴訟として提起) エ大阪市A区選挙管理委員会が控訴人を選挙人名簿に登録することの義務付け(請求10。控訴人は非申請型義務付け訴訟(行訴法6条1号)として提起)(4) 公職選挙法上の住所要件を満たさない者が選挙権を行使するために必要な立法措置を採ることを被控訴人国が怠り続けたことにより,控訴人の選挙権又はその行使が侵害され精神的苦痛を被ったと主張して,被控訴人国に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料5000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成29年12月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(請求4)。 原判決は,請求2,3,5につき確認の利益を欠く,請求6,7,9,10につき法律上の争訟性を欠く,請求8につき不作為の違法確認の訴訟要件を欠くとして,これらに係る訴えを不適法と判断して却下し,請求1及び請求4を棄却した。このため,これを不服とする控訴人が本件控訴を提起した。 2 関係法令の定め,前提事実,争点及び当事者の主張は,次の3において当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の2から4までに記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における控訴人の主張( び当事者の主張は,次の3において当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の2から4までに記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における控訴人の主張(1) 争点4(請求6に係る訴えの適法性)についてア公職選挙法では,選挙人名簿への被登録資格等は,「当該市町村の区域内に住所を有する年齢満十八年以上の日本国民(中略)で,その者に係る登録市町村等(中略)の住民票が作成された日から引き続き三箇月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者」(21条1項)と定められている。 最高裁平成20年10月3日判決・集民229号1頁(以下「平成20年10月3日最高裁判決」という。)を前提とすると,住所を有するためには,住居を私有してそれを生活の本拠とするか,又は家主等に対し家賃等 を支払った上でそれを生活の本拠とする必要がある。したがって,上記要件は,国籍及び年齢の要件のほか,①一定の市町村の区域内に継続して3か月以上居住していることを証明できること,②一定の市町村の区域内に継続して3か月以上居住する際には,住居を私有するか,又は家主等に対し家賃等を支払うことという要件に分けられる。 上記②の要件を課すことは違憲無効であるから,②の要件を除いた要件が満たされれば,国政選挙権の行使が認められなければならない。そして,その旨の判決を得ることにより,控訴人が②以外の要件を満たすことは認められたことになるから,公職選挙法21条1項に基づいて投票することができる地位が導き出される(最高裁平成20年6月4日大法廷判決・民集62巻6号1367頁(平成20年最高裁判決)参照)。 イ最高裁平成7年2月28日判決・民集49巻2号639頁(以下「平成7年最高裁判決」という。)は,定住外国人が選挙人名簿不登録 法廷判決・民集62巻6号1367頁(平成20年最高裁判決)参照)。 イ最高裁平成7年2月28日判決・民集49巻2号639頁(以下「平成7年最高裁判決」という。)は,定住外国人が選挙人名簿不登録処分に対する異議申出却下処分の取消しを求めた訴えの争訟性を認めている。 ウしたがって,請求6に係る訴えは法律上の争訟性を有し,適法である。 (2) 争点5(請求7に係る訴えの適法性)について憲法改正手続法では,投票人名簿への被登録資格等は,「国民投票の期日現在で年齢満十八年以上の日本国民で,次のいずれかに該当するもの(中略)」「一国民投票の期日前五十日に当たる日(中略)において,当該市町村の住民基本台帳に記録されている者」「二登録基準日の翌日から十四日以内に当該市町村の住民基本台帳に記録された者であって,登録基準日においていずれの市町村の住民基本台帳にも記録されていないもの(後略)」(22条1項)と定められている。 平成20年10月3日最高裁判決を前提とすると,住所を有するためには,住居を私有するか,又は家主等に対し家賃等を支払う必要がある上,住基ネットが稼働し,二重登録が防止できる今日では,上記要件は,国籍及び年齢 の要件のほか,①投票日の50日前から35日前までの15日間,最初に居住した市町村に自らの身分を明らかにした上で居住を開始した旨の届出をすること,②投票日の50日前から35日前までの15日間中,同届出をする際には,住居を私有するか,又は家主等に対し家賃等を支払うことという要件に分けられる。 上記②の要件を課すことは違憲無効であるから,②の要件を除いた要件が満たされれば足り,その旨の判決を得ることにより,控訴人が②以外の要件を満たすことは認められたことになるから,憲法改正手続法22条1項に基づいて投票すること 憲無効であるから,②の要件を除いた要件が満たされれば足り,その旨の判決を得ることにより,控訴人が②以外の要件を満たすことは認められたことになるから,憲法改正手続法22条1項に基づいて投票することができる地位が導き出される(平成20年最高裁判決参照)。 したがって,請求7に係る訴えは法律上の争訟性を有し,適法である。 (3) 争点9(本件不許可処分の適法性)について住居を有するための土地使用権は,憲法13条,22条1項に内在された侵されることのない権利である。住居を有するための土地を貸与して不労所得を得ることは,憲法27条1項,29条2項により禁止されている。住居を有するための土地使用権を認めないことは,控訴人に歩きながら眠ること又は風雨に打たれながら眠ることを強要することとなるから,憲法18条,31条にも違反することとなる。 (4) 争点12(公職選挙法21条1項の憲法適合性及び条約適合性)について(1)アで挙げた公職選挙法21条1項から導かれる要件のうち,②一定の市町村の区域内に継続して3か月以上居住する際には,住居を私有するか,又は家主等に対し家賃等を支払うことという要件は,最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁(平成17年最高裁判決)が適用した厳格な違憲審査基準に従えば,憲法44条ただし書,14条1項に違反し違憲と判断され,B規約25条,規約人権委員会の一般的意見25にも違反する。 (5) 争点13(憲法改正手続法22条1項の憲法適合性)について(2)で挙げた憲法改正手続法22条1 項から導かれる要件のうち,②投票日の50日前から35日前までの15日間中,市町村に居住を開始した旨の届出をする際には,住居を私有するか,又は家主等に対し家賃等を支払うことという要件についての判断には, 導かれる要件のうち,②投票日の50日前から35日前までの15日間中,市町村に居住を開始した旨の届出をする際には,住居を私有するか,又は家主等に対し家賃等を支払うことという要件についての判断には,憲法96条は,44条と違って国民投票をする資格を定めることを国会に委任していないから,平成17年最高裁判決が適用した厳格な違憲審査基準以上の最大限に厳格な違憲審査基準が適用されるべきである。これに従えば,上記要件は,憲法44条ただし書,14条1項に違反し違憲と判断される。 (6) 争点14(公職選挙法上の住所要件を満たさない者の選挙権行使のための立法不作為についての違法性)についてア公職選挙法21条1項は,憲法15条が日本国民に保障する選挙権につき選挙の公正を維持しながらその行使を可能とするために立法された授権的・創設的規定である。これに対し,再婚禁止期間を6か月と定めた民法733条1項(平成28年法律第71号による改正前のもの)は,憲法24条が保障する婚姻の権利の行使を可能とするために立法された法律ではなく,これを制限するために立法された法律であって,事案が異なる。 したがって,公職選挙法21条1項についての立法不作為が国家賠償法上違法と評価されるか否かは,再婚禁止期間に係る判例である最高裁平成27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁(平成27年最高裁判決)ではなく,平成17年最高裁判決の基準に依るべきである。 イ国会議員らは,平成19年3月の時点で,参議院厚生労働委員会の質疑から,家賃等支払困難国民の住所に係る立法措置の必要性を明確に認識していた。 ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(ホームレス自立支援特別措置法)は,平成14年8月7日に10年の時限立法として制定され, 平成24年6月27日には 要性を明確に認識していた。 ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(ホームレス自立支援特別措置法)は,平成14年8月7日に10年の時限立法として制定され, 平成24年6月27日にはその効力が5年延長された(平成29年6月21日には更に10年延長された。)。国会議員らは,平成24年の時点では,生活保護法やホームレス自立支援特別措置法の効果によっては家賃等支払困難国民に係る問題について相当期間解決できないことを明確に認識していた。 平成17年最高裁判決の言渡しにより,国会議員らは,家賃等支払困難国民に対する国政選挙権行使機会の剥奪につき,選挙の公正を確保するための止むを得ない事由の有無を調査しなければならず,調査すれば,止むを得ない事由が存しないことを確認できた。 国会議員らは,平成19年の時点では,厚生労働省の調査,新聞報道により,ネットカフェ難民の存在を認識しており,平成20年のリーマンショックで,不景気になれば非正規労働者は直ちに住居及び住所を失うことを認識した。 これらによれば,国会議員らは,遅くとも平成24年の時点では,家賃等支払困難国民が住所要件を満たすことができないため選挙権を行使することができず,これを救済する立法をすべきであることを認識したといえる。したがって,その立法不作為は国家賠償法上違法の評価を免れない。 平成27年に生活困窮者自立支援法(自立支援法)が施行されたことは,立法不作為の違法性を何ら軽減しない。 (7) 控訴人は,公職選挙法21条1項の憲法適合性についての司法判断を求めたにもかかわらず,その判断を示さないことは憲法32条に違反する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,請求2,3,5から10までに係る訴えは不適法であり,請求1及び請求4は理由がないと判断するところ,その理由は その判断を示さないことは憲法32条に違反する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,請求2,3,5から10までに係る訴えは不適法であり,請求1及び請求4は理由がないと判断するところ,その理由は,次の2において当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第3の1から9までに記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 争点4(請求6に係る訴えの適法性)についてア控訴人は,公職選挙法21条1項が定める選挙人名簿への被登録資格等は,国籍及び年齢の要件のほか,平成20年10月3日最高裁判決を前提とすると,①一定の市町村の区域内に継続して3か月以上居住していることを証明できること,②一定の市町村の区域内に継続して3か月以上居住する際には,住居を私有するか,又は家主等に対し家賃等を支払うことという要件に分けられると主張する。 しかし,平成20年10月3日最高裁判決は,都市公園内に不法に設置されたテントを起居の場所としている者につき,当該事案における事実関係の下では同テントの所在地が客観的に生活の本拠としての実体を具備しているものとみることができないとしたものであるにすぎず,住所についての要件を一般的に判示したものではない。上記最高裁判決を前提としたとしても,公職選挙法21条1項の居住要件を控訴人が主張する①及び②に分けることができることとなるわけではない。 そうであれば,②の要件を除くと公職選挙法21条1項に基づいて投票することができる地位が導き出されるとの控訴人の主張は,前提において採用することができない。 イ控訴人は,平成7年最高裁判決において,定住外国人が選挙人名簿不登録処分に対する異議申出却下処分の取消しを求めた訴えの争訟性が認めら るとの控訴人の主張は,前提において採用することができない。 イ控訴人は,平成7年最高裁判決において,定住外国人が選挙人名簿不登録処分に対する異議申出却下処分の取消しを求めた訴えの争訟性が認められていると主張する。 しかし,平成7年最高裁判決の事案は,在留外国人が選挙管理委員会に対して選挙人名簿への登録を求める異議の申出をし(公職選挙法24条1項),これが却下されたため(同条2項),却下決定の取消しを求めて提訴した(同法25条1項),いわゆる名簿訴訟である。名簿訴訟は,客観訴訟として本来的には法律上の争訟性を有しないが,特に公職選挙法が訴訟手 続を定めたものであるから,その手続に則って提訴する限り本案判決に至り得るものである。 他方,請求6に係る訴えは,このような訴訟類型を認める特別の定めがないから,公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,法律上の争訟性を有することが必要となる。平成7年最高裁判決は請求6と事案が異なり,その趣旨を請求6に係る訴えの判断に及ぼすことはできない。 ウ請求6に係る訴えが法律上の争訟性を有するとの控訴人の主張は採用することができない。 (2) 争点5(請求7に係る訴えの適法性)について控訴人は,憲法改正手続法22条1項が定める投票人名簿への被登録資格等は,国籍及び年齢の要件のほか,平成20年10月3日最高裁判決を前提とするなどすると,①投票日の50日前から35日前までの15日間,最初に居住した市町村に自らの身分を明らかにした上で居住を開始した旨の届出をすること,②投票日の50日前から35日前までの15日間中,同届出をする際には,住居を私有するか,又は家主等に対し家賃等を支払うことという要件に分けられると主張する。 しかし,(1)アのとおり,平成20年10月3日最高裁判決は,住所につ までの15日間中,同届出をする際には,住居を私有するか,又は家主等に対し家賃等を支払うことという要件に分けられると主張する。 しかし,(1)アのとおり,平成20年10月3日最高裁判決は,住所についての要件を一般的に判示したものではなく,これを前提としたとしても,憲法改正手続法22条1項の居住要件を控訴人が主張する①及び②に分けることができることとなるわけではない。 争点5に関する控訴人の主張も,前提において採用することができない。 (3) 争点9(本件不許可処分の適法性)について控訴人は,住居を有するための土地使用権は憲法13条,22条1項に内在された侵されることのない権利であると主張する。 確かに,財産権は憲法29条1項及び2項により保障されているものではある。しかし,住居を有するためであるからといって,当然に具体的な土地 に対する使用権が憲法13条及び22条1項により保障されることとなるものではない。 控訴人の上記主張は採用することができない。 (4) 争点12(公職選挙法21条1項の憲法適合性及び条約適合性)について請求6及び8から10までに係る訴えは不適法であるから,争点12は判断の必要がない。 (5) 争点13(憲法改正手続法22条1項の憲法適合性)について請求7に係る訴えは不適法であるから,争点13は判断の必要がない。 (6) 争点14(公職選挙法上の住所要件を満たさない者の選挙権行使のための立法不作為についての違法性)についてア控訴人は,公職選挙法21条1項と再婚禁止期間を6か月と定めた民法の規定とでは法律の性格を異にするから,公職選挙法21条1項についての立法不作為が国家賠償法上違法と評価されるか否かは,再婚禁止期間に係る判例である平成27年最高裁判決ではなく,選挙権に係る平成17年最 とでは法律の性格を異にするから,公職選挙法21条1項についての立法不作為が国家賠償法上違法と評価されるか否かは,再婚禁止期間に係る判例である平成27年最高裁判決ではなく,選挙権に係る平成17年最高裁判決の基準に依るべきであると主張する。 しかし,平成27年最高裁判決は,最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁(昭和60年最高裁判決),平成17年最高裁判決等を踏まえ,国会議員の職務行為である立法的対応がどのような場合に国家賠償法上違法となるかについての全体的な判断の枠組みを示したものというべきである。これに対すれば,昭和60年最高裁判決及び平成17年最高裁判決は,当該事案に即して具体的に個々的な基準を示していたもので,平成27年最高裁判決と同旨を述べるものとみることができる。 控訴人の主張は,平成17年最高裁判決が平成27年最高裁判決と異なる趣旨を述べるものと捉え,平成17年最高裁判決の枠組みを採用すべきであるという趣旨と解される。その主張には前提に誤りがあるといわざる を得ず,採用することができない。 イ控訴人は,国会議員らがホームレス自立支援特別措置法の効力を延長した平成24年には,家賃等支払困難国民が住所要件を満たすことができないため選挙権を行使することができず,これを救済する立法をすべきであることを認識したと主張する。 しかし,時限立法であったホームレス自立支援特別措置法の効力を延長したからといって,そのことが,住所要件を満たすことができず選挙権を行使することができない者を救済する立法をすべきであることの認識と結び付くものではない。 乙6によれば,生活保護受給者は平成27年4月当時でも約216万人であり,高齢者世帯と稼働年齢層の世帯が増加傾向にあるなど,生活困窮者の自立を実現さ べきであることの認識と結び付くものではない。 乙6によれば,生活保護受給者は平成27年4月当時でも約216万人であり,高齢者世帯と稼働年齢層の世帯が増加傾向にあるなど,生活困窮者の自立を実現させることが容易ではないことが認められる。他方,自立支援法3条3項に基づく住宅確保給付金は,平成27年の新規支給決定件数が6613件,平成28年が5095件であるところ,当初の支給期間3か月間に再就職した者は約7割にのぼることが認められる。したがって,上記給付金は,再就職に向けた効果的・効率的な給付であるといい得る。 また,ホームレスは,平成15年度当時約2万5000人であったが,平成29年度には約5500人にまで減少したとの統計もあり,一時生活支援制度の利用者は,平成28年度に累計1万7339人に達していることが認められる。そうであれば,住居の確保,安定を始めとして就労,健康面も含めた一定の改善があったといい得る。 そうすると,貧困等を理由に定住することが困難な国民に対し,生活保護法,ホームレス自立支援特別措置法及び自立支援法の定める各種施策や給付により,生活を安定させて定住し得るように導くこと,ひいては選挙権を安んじて行使し得る状態に至るようにすることを,公職選挙法の住所要件の緩和よりも優先させることが,国会の立法措置として合理性を欠く ものとはいえない。 控訴人の上記主張は採用することができない。 (7) 控訴人は,公職選挙法21条1項の憲法適合性についての司法判断を求めたにもかかわらず,その判断を示さないことは憲法32条に違反すると主張する。 しかし,引用に係る原判決(「事実及び理由」第3の8及び9)のとおり,請求1及び請求4については,本案の判断がされており,特に請求4は,公職選挙法21条1項について控訴人が主張するよ 主張する。 しかし,引用に係る原判決(「事実及び理由」第3の8及び9)のとおり,請求1及び請求4については,本案の判断がされており,特に請求4は,公職選挙法21条1項について控訴人が主張するような違憲事由があることを前提とした立法不作為の違法性について判断されている。したがって,少なくともその限度では,公職選挙法21条1項の憲法適合性について司法判断は示されている。 その余の請求に係る訴えについては,不適法なものとして却下されたため,本案の判断はされていない。司法権の範囲に収まらない不適法な訴えについて本案の判断が示されないことは憲法上当然のことであり,そのことが憲法32条に反することとなるものではない。 控訴人の上記主張は採用することができない。 第4 結論以上のとおりであるから,請求2,3,5から10までに係る訴えは不適法であり,請求1及び請求4は理由がない。これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴はいずれも理由がないから,これをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官江口とし子 裁判官大藪和男 裁判官森鍵一(別紙省略)

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