平成26(わ)123 殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
平成27年2月27日 函館地方裁判所
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判決文本文2,124 文字)

主文 被告人を懲役4年に処する。 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。 理由 【罪となるべき事実】被告人は,平成23年11月頃から,夫のA及び長男のBとともに北海道函館市a町b番c号所在の実父C方で生活していたが,かねてより,Aの被告人に対する行状に耐えかね,Aと離婚したいと考えていた。平成25年3月頃,AがC方を出て行き,被告人は,Aと別居することとなり,その頃,Aに対して離婚調停を申し立てた。しかし,Aが離婚に応じなかったので,離婚調停の手続は思うように進まなかった。そればかりか,被告人は,Aから次々と申し立てられた家事事件の対応を迫られたり,Aが児童相談所や警察署に虐待通報をしたことで調査を受けたりした。また,被告人は,Aから送信された大量の電子メール等を読んで,Aが自分のことを徹底的に追い詰めようとしているのではないかという強い恐怖を感じ,Aから逃げられないものと感じて心身が疲弊し,精神的に追い詰められていった。 被告人は,平成26年4月4日,Bが普段と異なって周囲によそよそしい態度をとるなどしたのをみて,自分自身の精神的な不安定さがBにうつったと感じて絶望感に襲われるとともに,前記のような精神的に圧迫された状況から逃げたいなどと考え,Bを道連れに無理心中することを決意した。被告人は,同日午後1時30分頃から同日午後2時30分頃までの間,C方2階居間において,B(当時3歳)に対し,殺意をもって,その頸部を手で強く絞め付け,その意識を消失させた。被告人は,Bが意識を失ったのを見て死亡したものと思い込み,Bを抱えてC方2階浴室に移動し,その頃,同浴室内において,包丁で自らの首を切るなどの自傷行為に及ん だ上,Bを抱きかかえたまま水を張った浴槽内に入水し,その結果,Bを溺水により窒息死 み,Bを抱えてC方2階浴室に移動し,その頃,同浴室内において,包丁で自らの首を切るなどの自傷行為に及ん だ上,Bを抱きかかえたまま水を張った浴槽内に入水し,その結果,Bを溺水により窒息死させて殺害した。 【法令の適用】罰条刑法199条刑種の選択有期懲役刑を選択酌量減軽刑法66条,71条,68条3号未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書【量刑の理由】 1 本件は,被告人が判示のような経緯から精神的に追い詰められ,幼い被害者とともに夫から逃れるために,無理心中を図った事案である。 (1) 確かに,そのような理由で被害者の殺害を決意することは,身勝手なものとして非難されるべきである。 しかし,そのような決意に至るまでの間,被告人は,夫による数々の圧迫行為によって精神的にかなり追い詰められ,適応障害等の精神疾患の影響も重なって,周囲の助力を適切に得ることができず,かつ,適切な判断ができないまま,本件犯行に至ったものと認められる。本件当時,被告人は自殺を決意し,現に自らも瀕死の状態に至るような自傷行為に及ぶほど追い詰められていたのであり,その経緯については,被告人に同情すべき事情があると認められる。 そうすると,本件においては,被告人が被害者の殺害を決意したことのみを評価するのではなく,そのような決意に至る経緯をも含めて被告人に対する責任非難の程度を考えるべきである。検察官は,被告人が夫から精神的に追い詰められたことは本件における被告人の責任を考える上で無関係であると主張するが,そのように考えることはできない。 したがって,本件は,検察官が主張するような短絡的な犯行であると いうことは到底 たことは本件における被告人の責任を考える上で無関係であると主張するが,そのように考えることはできない。 したがって,本件は,検察官が主張するような短絡的な犯行であると いうことは到底できず,被告人を強く非難することはできないというべきである。 (2) また,被害者の意識を消失させるまで素手で頸部を絞め続けた行為は危険なものではあるが,その行為態様が,殺人罪で想定される殺害行為の中で殊更に悪質とまではいえない。 (3) これらの事情に照らすと,本件は,殺人罪の法定刑の下限を下回る量刑をも視野に入れて被告人の責任を検討すべき事案である。 2 以上に加え,被告人は,これまで愛情を持って適切に被害者を監護養育し,真面目に健全な社会生活を送ってきたこと,前記精神疾患を治療する予定があることなどの被告人に有利な事情も併せて考慮すれば,犯罪の情状に酌量すべきものがあるといえる。 3 もっとも,本件事案の罪質や内容を踏まえると,被告人に有利に考慮すべき事情を最大限に考慮しても,刑の執行を猶予するほどの事情までは認められない。 4 以上によれば,本件については酌量減軽を施した上で,被告人に対し,殺人罪の法定刑の下限をやや下回る懲役4年の実刑に処するのが相当であると判断した。 (検察官荒井徹伊及び同寺田佳澄並びに国選弁護人平井喜一〔主任〕及び同渡會知弘各出席)平成27年2月27日函館地方裁判所刑事部 裁判長裁判官佐藤卓生 裁判官大倉靖広 裁判官宍戸崇 裁判官宍戸崇

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