令和7年12月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和6年(ワ)第14955号著作権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和7年11月6日判決原告 セキュアラミル株式会社 被告 A同訴訟代理人弁護士 神原 元 主文 1 本件訴えのうち、被告に対し別紙著作物目録記載の著作物の複製、自動公衆送信をしてはならないことを求める訴えを却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙投稿記事目録1記載の投稿を削除せよ。 2 被告は、別紙著作物目録記載の著作物の複製、自動公衆送信をしてはならない。 第2 事案の概要本件は、原告が、被告に対し、被告による別紙投稿記事目録1記載の投稿が、原告の著作権(複製権又は譲渡権)を侵害するものであるとして、著作権法112条に基づき、上記投稿の削除及び別紙著作物目録記載の画像(以下「本件元画 像」という。)の複製、自動公衆送信の差止めを求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実〔なお、特に記載する場合を除き枝番の記載は省略する。〕)⑴ 当事者等 原告は、情報通信システムの設計等を目的とする株式会社である。(甲1) 原告代表者は、SNS投稿サイトX(以下「X」という。)において、Bという表示名を使用していた者である。(甲27、弁論の全趣旨)被告は、Xにおいて、Cというユーザーネームで特定されるアカウントを保有する者である。(甲2、争いがない)⑵ 本件元画像 おいて、Bという表示名を使用していた者である。(甲27、弁論の全趣旨)被告は、Xにおいて、Cというユーザーネームで特定されるアカウントを保有する者である。(甲2、争いがない)⑵ 本件元画像 Xにおいて、Dという表示名及びユーザーネームで投稿を行っている人物は、令和6年4月27日、「がんばれ。」というコメントとともに本件元画像をXに投稿した。(甲3)本件元画像は、Dによって制作されたものである。(弁論の全趣旨)⑶ 被告による投稿 被告は、令和6年4月28日、Xに別紙投稿記事目録2記載の投稿(以下、後記⑸の画像削除の前後を問わず「本件投稿」という。)をした。本件投稿は、「こいつってまだこんなことやってるんだ…。リプライしてるゴミも含めて醜悪。敗訴は間違いないと思うけど、いわゆる『無敵の人』かな。」というコメントが記載され、別紙投稿記事目録2記載のとおり、本件元画像の一部分を切 り取るスクリーンショット画像(以下「本件画像」という。)が添付されたものである。(甲13の2)⑷ 本件元画像に係る著作権の譲渡原告は、遅くとも令和5年7月1日以降、Dとの間で、一定期間、Dから本件元画像を含む著作物に関する著作権の譲渡を受ける旨の著作権譲渡契約を 複数回締結し、令和6年12月3日付けの著作権譲渡契約をもって、令和7年12月31日を終期として本件元画像の著作権の譲渡を受けた。(甲4、5、16、17、19、20、22、弁論の全趣旨)⑸ 原告による本件元画像の削除要請等原告代表者は、令和6年5月24日、X.corpに対し、本件投稿につい て、米国デジタルミレニアム著作権法(DigitalMillenniu mCopyrightAct)に基づく著作権侵害の申立てをした。これを受けて、 rpに対し、本件投稿につい て、米国デジタルミレニアム著作権法(DigitalMillenniu mCopyrightAct)に基づく著作権侵害の申立てをした。これを受けて、X.corpは、本件投稿から本件画像を一時的に削除した。これに対し、被告は、異議申立てを行った。現時点における本件投稿の表示は、別紙投稿記事目録1記載のとおりである。(甲6、7ないし9、14、15、乙6、弁論の全趣旨) 2 争点及びこれに対する当事者の主張本件の主な争点は、本件投稿に係る引用の抗弁の成否である。 ⑴ 被告の主張本件元画像は、Eをモデルとし、Eを誹謗中傷する目的でEがビルから飛び降りようとする様子を表現した画像である。被告は、Dによる誹謗中傷行為を 批判する目的で、本件投稿に本件画像を添付した。 被告が、本件投稿において、批判対象を明確にするために本件画像を添付したことは引用の目的に合致するし、本件画像の内容に照らしても引用の目的上正当な範囲内である。また、本件投稿は引用元としてDの投稿のURLも記載しており、引用に当たっての公正な慣行にも合致している。 また、本件画像は、本件投稿の他の部分と明瞭に区別して認識することができるし、本件投稿の内容との関係で従たる関係にあることは明らかである。 したがって、本件投稿は、著作権法32条1項に基づき適法に本件元画像を引用したものであるから違法とはいえず、著作権(複製権)侵害には当たらない。 ⑵ 原告の主張否認ないし争う。 本件元画像は、Eをモデルとしたものではない。また、本件元画像は、インターネット上で拡散されている画像(甲28)に着想を得た攻防をテーマとするミーム画像であり、人物がビルから飛び降りようとする様子を表現したもの でもな たものではない。また、本件元画像は、インターネット上で拡散されている画像(甲28)に着想を得た攻防をテーマとするミーム画像であり、人物がビルから飛び降りようとする様子を表現したもの でもない。 被告は、従前から原告代表者をXで誹謗中傷しており、本件投稿は、原告がDから本件元画像の著作権の譲渡を受けたことを受けて、原告代表者個人を攻撃、挑発する目的で投稿されたものである。Dの創作行為を批判するのであれば、文章で記述すれば足り、本件元画像を転載する必要はない。本件投稿は、短いコメントに対し、視覚的にインパクトの強い本件画像がその大部分を占め ており、本件画像との関係でコメントは従たる関係にある。したがって、引用の要件を満たすものではない。 第3 当裁判所の判断 1 請求原因事実について⑴ 本件元画像に係る著作権の帰属についてみると、前記前提事実に加え、証拠 (甲3、6、13の2、18、28)及び弁論の全趣旨によれば、本件元画像は、Dによって制作された画像であるところ、独自のキャラクターが用いられ、ビルの形状も上向きに開いた台形にするなど、制作者の個性が十分現れており、その構図においてもインターネット上の画像(甲28)に着想を得てキャラクターや建物の配置に独自性を持たせたものであり、その個性が発揮されている といえるから、著作物性を認めるのが相当である。そして、前記前提事実によれば、原告は、Dから、本件元動画の著作権を譲渡されていることが認められることからすると、本件元動画の著作権を保有するものといえる。 ⑵ 被告による本件投稿についてみると、前記前提事実のとおり、被告は、本件投稿において本件画像を使用しているところ、本件画像は、本件元画像に係る 創作的表現の一部分をそのまま切り取ったものであ ⑵ 被告による本件投稿についてみると、前記前提事実のとおり、被告は、本件投稿において本件画像を使用しているところ、本件画像は、本件元画像に係る 創作的表現の一部分をそのまま切り取ったものであり、本件元画像の上記一部分を有形的に再製したものといえるから、被告による本件投稿は、原告の本件元画像に関する著作権(複製権)を侵害するものと認められる。 なお、原告は、譲渡権侵害も主張するものの、被告が本件元画像を複製した有体物を第三者に譲渡したものとは認めるに足りず、上記の主張は、採用の限 りではない。 ⑶ 侵害するおそれについてみると、前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば、本件投稿の本件画像部分は、現在削除されているものの、プロバイダによる一時的なものであること、これに対しては被告が異議を申し立てていること、以上の事実が認められる。そうすると、本件投稿の本件画像部分は、今後投稿されるおそれがあるものと認めるのが相当である。 ⑷ 以上によれば、請求原因事実を認めるのが相当である。 2 争点(引用の抗弁の成否)について⑴ 本件投稿の目的前記前提事実⑶に加え、証拠(甲13)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件投稿後も、DがEを誹謗中傷する画像を作成して投稿する趣旨の投稿のほ か、第三者が上記のような画像をリツイートする行為を批判する趣旨の投稿を、複数回行っているという事実が認められる。上記認定事実に加え、本件投稿のコメントの内容を踏まえると、被告は、DがEを誹謗中傷する目的で本件元画像を作成、投稿したという認識を前提として、このようなDによる行為を批判する目的で、本件画像を添付して本件投稿を行ったものと認めるのが相当であ る。 これに対し、原告は、本件元画像はEをモデルにしたものではなく、人物が 前提として、このようなDによる行為を批判する目的で、本件画像を添付して本件投稿を行ったものと認めるのが相当であ る。 これに対し、原告は、本件元画像はEをモデルにしたものではなく、人物がビルから飛び降りようとする様子を表現した画像でもない旨主張する。しかしながら、証拠(乙1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば、少なくとも本件元画像は、Eをモデルとしたものであり、Eを揶揄する目的で作成された画像で あると認めるのが相当である。仮に上記のような被告による本件元画像についての認識に誤りがあったとしても、そのことをもって直ちに引用の成立が否定されるべきものとはいえない。 ⑵ 引用の成否著作権法32条1項は、公表された著作物は、公正な慣行に合致し、かつ、 報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で、引用して利用するこ とができる旨規定するところ、公正な慣行に合致し、かつ、引用の目的上正当な範囲内であるかどうかは、社会通念に照らし、他人の著作物を利用する目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の程度などを総合考慮して判断されるべきである。 これを本件についてみると、前記前提事実⑶及び上記⑴で認定した本件投稿 の目的によれば、被告は、Dが本件元画像を作成、投稿した行為そのものを批判しているところ、本件画像は、本件投稿による批判の直接的な対象であることからすると、これを添付する必要性が極めて高いこと、被告が添付した本件画像は、被告の主張(Eがビルから飛び降りようとする様子を表したものであるというもの)を示すのに必要な範囲、分量の限度で本件元画像の一部を切り 取ったものであり、添付の範囲も相当なものといえること、少なくとも現時点の本件投稿には、本件画像 る様子を表したものであるというもの)を示すのに必要な範囲、分量の限度で本件元画像の一部を切り 取ったものであり、添付の範囲も相当なものといえること、少なくとも現時点の本件投稿には、本件画像の「引用元」としてDによる投稿のURLが記載されており、このような引用方法はインターネット上の投稿においては一般的に行われる手法であること、以上の事実が認められる。 これらの事実関係を総合すれば、本件投稿に本件画像を引用して利用するこ とは、公正な慣行に合致するものであり、引用の目的上正当な範囲内であるといえる。 したがって、本件投稿は、引用の要件を満たすものであり、違法性が阻却されるものと認めるのが相当である。 ⑶ 原告の反論について 原告は、Dの創作行為を批判するのであれば、文章で記述すれば足り、本件画像を添付する必要はないところ、本件投稿は、短いコメントに対し、視覚的にインパクトの強い本件画像がその大部分を占めており、本件画像との関係でコメントは従たる関係にある旨主張する。しかしながら、本件元画像が、直接的な批判の対象である以上、本件元画像の一部を引用する必要性及び相当性は 高いものといえるから、本件画像の分量等をいう原告の主張は、引用の目的等 に照らし、前記認定を左右するものとはいえない。 また、原告は、本件投稿は原告代表者個人への攻撃、挑発を目的とするものであり、被告主張の目的は後付けの弁解であると主張し、その根拠として被告がEを貶めるような投稿(「タキシードぱんだ」という卑猥な投稿をしているXのアカウントが、Eのサブアカウントであると認めるような投稿をいう。甲 36、37)をしていたことを指摘する。しかしながら、本件投稿のコメントの内容を見ても、原告代表者個人への攻撃、挑発を目的としているとは が、Eのサブアカウントであると認めるような投稿をいう。甲 36、37)をしていたことを指摘する。しかしながら、本件投稿のコメントの内容を見ても、原告代表者個人への攻撃、挑発を目的としているとはうかがわれず、被告が過去にEに不利益な内容の投稿をしていることをもって、前記⑴認定に係る投稿目的が直ちに否定されるものではない。 したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。 3 予防的差止請求について原告は、被告に対し、本件元画像の複製及び自動公衆送信の差止めを請求している。しかしながら、上記の請求は、差止めの対象となる行為が具体的には一切特定されておらず、特定の著作物の複製及び自動公衆送信について一般的抽象的な差止めを求めるものにほかならない。このような請求は、執行機関において当 該行為の違法性を判断することを前提とするものでもあり、訴えとして不適法であるといわざるを得ない。したがって、上記請求に係る訴えは、却下されるべきである。 第4 結論よって、本件訴えのうち、本件元画像の複製及び自動公衆送信の差止めを求め る訴え(前記第1の2)は、不適法であるからこれを却下することとし、その余の請求については理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 中島基至 裁判官 武富可南 裁判官 坂本達也 (別紙)著作物目録 (別紙)投稿記 可南 裁判官 坂本達也 (別紙)著作物目録 (別紙)投稿記事目録1 (別紙)投稿記事目録2 いずれも省略
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