- 1 -主文本件各上告を棄却する。 理由 検察官の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。弁護人渡邉靖子の上告趣意のうち,憲法違反をいう点は,原審で何ら主張,判断を経ていない事項に関する違憲の主張であり,その余は,事実誤認,単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお,検察官の所論にかんがみ,本件の量刑について職権で判断する。 本件は,被告人が,深夜,アパートの自室において,当時70歳の女性に対し,両腕を押さえ付けるなどの暴行を加え,陰部に器具を押し当ててもてあそび,殺意をもって,けい部を手で締め付けるなどして同女を急性窒息死させて殺害したという,強制わいせつ致死,殺人の事案である。上記犯行の動機や経緯に酌量の余地は全くないところ,犯行態様は冷酷かつ残忍であり,結果の重大性はいうまでもない。被害者と被告人とは,被告人の少年時代から面識があり,被害者は日ごろから被告人に目を掛けていたものであるが,こともあろうに可愛がっていた被告人から,かかる凶行を受けたものであって,その無念は察するに余りある。良き妻,良き母であった被害者を奪われた家族らが,被告人に対する厳罰を望むのは極めて当然であるが,被告人は遺族に対し見るべき慰謝の措置を講じていない。加えて,被告人は,①昭和54年3月には強姦致傷罪により懲役2年6月に,②昭和57年1月には殺人,強姦致死罪により懲役12年に,③平成9年12月には強姦致傷罪により懲役6年に各処せられた前科3犯があるところ,これらと本件の犯行態様等に- 2 -は顕著な類似性も認められ,被告人がこの種の犯行に及ぶことには,常習性も看取し得る。 以上によれば,被告人の罪責は誠に重大であるから,本件は,被告人に対して死刑を らと本件の犯行態様等に- 2 -は顕著な類似性も認められ,被告人がこの種の犯行に及ぶことには,常習性も看取し得る。 以上によれば,被告人の罪責は誠に重大であるから,本件は,被告人に対して死刑を選択することも十分考慮に値する事案というべきである。 しかしながら,他方において,被告人は,飲酒の影響により犯行状況につき記憶がないなどとしながらも,捜査段階では事実を認め,公判でも積極的には事実を争わず,被害者に対する謝罪の気持ちを表明していること,本件は,被告人が,被害者に対するわいせつ行為に及ぶうちに殺意を生じて殺害に及んだものであって,同女の殺害に計画性は認め難いことなどの事情も考慮すると,被告人を無期懲役に処した第1審判決を維持した原判決について,その量刑がこれを破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認めることができない。 よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官堀籠幸男裁判官藤田宙靖裁判官那須弘平裁判官田原睦夫裁判官近藤崇晴)
▼ クリックして全文を表示