主文 1 第1事件の訴えのうち,被告に対し金員の支払を求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(第1事件)(1) 被告が,原告に対し,平成13年1月22日付けA議第2号の「公文書非公開決定通知書」でした「平成12年12月定例会第2日の原告議員の一般質問及び町長答弁の録音テープ」についての非公開決定を取り消す。 (2) 被告は,原告に対して,40万円を支払え。 (3) 訴訟費用は被告の負担とする。 (第2事件)(1) 被告が,原告に対し,平成14年1月8日付けA議第1号の「公文書非公開決定通知書」でした「平成12年第9回(12月)定例会(本人発言関連部分)議事録音テープの閲覧及び写しの交付」についての公文書非公開決定を取り消す。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告主文同旨第2 事案の概要本件第1事件は,原告がA町情報公開条例(平成10年3月27日A町条例第13号。以下「本件条例」という。)に基づき,被告に対し,平成13年1月9日,「平成12年12月定例会第2日の原告議員の一般質問及び町長答弁の録音テープ」についての情報公開請求をしたところ,被告が同請求を却下したことから,①原告が被告に対し,同処分の取消しを求めるとともに,②原告が被告に対し,同処分は不法行為に当たり,本訴提起に要した弁護士費用40万円の損害を被ったとして,不法行為に基づく損害賠償として40万円の支払を求める事案である。 本件第2事件は,原告が,本件条例に基づき,被告に対し,平成13年11月27日,「平成12年第9回(12月)定例会(本人発言関連部分)議事録音テープの閲覧及び写しの交付」を求める情報公開請求をしたところ,被告が同請 原告が,本件条例に基づき,被告に対し,平成13年11月27日,「平成12年第9回(12月)定例会(本人発言関連部分)議事録音テープの閲覧及び写しの交付」を求める情報公開請求をしたところ,被告が同請求を却下したことから,被告に対し,同処分の取消しを求める事案である。 1 本件条例本件条例には別紙の規定がある。 2 前提となる事実(証拠を掲げた事項以外は当事者間に争いがない。)(1)ア原告は,平成13年1月9日,本件条例に基づき,被告に対し,「平成12年12月定例会第2日の原告議員の一般質問及び町長答弁の録音テープ」についての情報公開請求をした。 イこれに対し,「度会郡A町議会議長B」名の,平成13年1月22日付けA議第2号の「公文書非公開決定通知書」をもって,上記請求に係る録音テープについて全部公開しない旨の決定がなされた(以下「本件非公開決定①」という。)。同通知書の「非公開の理由」欄には,「請求のあった録音テープにつきましては,会議録作成の補助手段として使うもので,会議の経過を公的に記録しているのは,会議録である。したがって,会議録の閲覧または写しの交付によって目的を達することができる。」との記載がある。 (2) A町議会平成12年第9回(12月)定例会の会議録は,平成13年11月27日よりも前に作成された。 (3)ア原告は,平成13年11月27日,本件条例に基づき,被告に対し,「平成12年第9回(12月)定例会(本人発言関連部分)議事録音テープの閲覧及び写しの交付」を求める情報公開請求をした。 イこれに対し,「度会郡A町議会議長C」名の,平成14年1月8日付けA議第1号の「公文書非公開決定通知書」をもって,上記請求に係る録音テープについて全部公開しない旨の決定がなされた(以下「本件非公開決定②」という。)。同通知書の「非公 名の,平成14年1月8日付けA議第1号の「公文書非公開決定通知書」をもって,上記請求に係る録音テープについて全部公開しない旨の決定がなされた(以下「本件非公開決定②」という。)。同通知書の「非公開の理由」欄には,「請求のあった録音テープにつきましては,会議録作成の補助手段として使うもので,会議の経過を公的に記録しているのは,会議録である。したがって,会議録の閲覧または写しの交付によって目的を達することができる。」との記載がある(第2事件甲1)(以下,上記ア記載の情報公開請求に係る録音テープ及び上記(1)ア記載の情報公開請求に係る録音テープのいずれについても「本件録音テープ」という。)。 2 争点(1) 第1事件の訴えのうち被告に対し金員の支払を求める部分は適法か(本案前の争点)。 (2) 本件非公開決定①,②が議長名でなされたことは適法か。 (3) 本件非公開決定①,②は理由付記の要件を欠いているか。 (4) 本件録音テープが本件条例に基づく公開の対象となる「公文書」に当たるか。 (5) 録音テープを公開の対象としない規定や運用は,憲法14条に違反するか。 3 争点に関する当事者の主張(原告の主張)(1) 争点(1)(第1事件の訴えのうち被告に対し金員の支払を求める部分は適法か)についてアメリカ情報自由法は,「裁判所は,原告が実質的に勝訴した本条に基づく訴訟の,合理的な弁護士費用及び合理的に生じたその他の訴訟費用を合衆国に負担させることができる」と規定している。違法な非公開決定は不法行為に当たるのだから,このような規定のない三重県の情報公開条例においても,違法な非公開決定により提訴を余儀なくされた者は,訴訟提起に必要となった合理的な訴訟費用や弁護士費用を被告に訴求できると解すべきである。 原告は,本件訴訟遂行を弁護士に委任し,弁 開条例においても,違法な非公開決定により提訴を余儀なくされた者は,訴訟提起に必要となった合理的な訴訟費用や弁護士費用を被告に訴求できると解すべきである。 原告は,本件訴訟遂行を弁護士に委任し,弁護士費用40万円の支払を約したのだから,被告に対し,不法行為による損害賠償として40万円の支払を求めることができる。 (2) 争点(2)(本件非公開決定①,②が議長名でなされたことは適法か)について本件非公開決定①,②は,実施機関ではない「A町議会議長」名でなされているから違法である。 (3) 争点(3)(本件非公開決定①,②は理由付記の要件を欠いているか)について本件条例に基づく公開請求に対して非公開決定をするには,本件条例に規定されている非公開事由に基づいて非公開の決定をしなければならず,本件条例に規定されていない理由をもって非公開決定をするのは違法である。また,情報公開条例における行政処分の違法性の判断は,非公開決定に記載された非公開理由だけを審査の対象として判断がなされなければならず,処分庁による非公開理由の追加主張は認められないものと解すべきである。 これを本件についてみるに,本件非公開決定①,②に記載された非公開の理由は「請求のあった録音テープにつきましては,会議録作成の補助手段として使うもので,会議の経過を公的に記録しているのは,会議録である。したがって,会議録の閲覧または写しの交付によって目的を達することができる。」というものだけであり,被告は他の非公開理由を主張することはできない。 そして,上記理由は本件条例には存在しないから,本件非公開決定①,②は,本件条例に存在しない理由をもってなされた違法な決定であるということになる。 また,本件非公開決定①,②は,理由中に本件条例の条項を引用していない点でもその記載に著しい ら,本件非公開決定①,②は,本件条例に存在しない理由をもってなされた違法な決定であるということになる。 また,本件非公開決定①,②は,理由中に本件条例の条項を引用していない点でもその記載に著しい不備があるから違法である。 (4) 争点(4)(本件録音テープが本件条例に基づく公開の対象となる「公文書」に当たるか)についてア本件条例2条2項に「決裁又は供覧の手続が終了し」とあるのは,通常の公文書の取扱いにおいて,「決裁供覧を経ることが予定されている公文書については,決裁供覧手続を終了した後に公開の時期が到来する」と解釈すべきである。そして,録音テープのように,そもそも決裁供覧手続がないものについては,決裁供覧手続がなされていないことを理由として公開対象公文書には当たらないとする解釈は,情報公開制度の趣旨に照らし,本末転倒の解釈であるといわざるを得ない。上記解釈では,本件条例において,スライド(磁気ディスク及び磁気テープ並びにマイクロフィルムを含む。)も公開対象の公文書に含まれる旨規定されている趣旨が全くなくなってしまう。また,決裁供覧の手続が予定されている公文書についても,決裁供覧を終えた後に公開の対象文書性がはじめて生じるという解釈ではなく,最初から対象文書性はあるが,決裁供覧が予定されている公文書は,未成熟性の故に決裁供覧の手続を終えるまでは,公開の時期が到来していないと解釈すべきであり,単なる公開の時期の問題として解釈すべきである。 したがって,本件録音テープのように,いったん録音すれば,変更の余地のないものについては,当該議会で発言訂正があった場合を除いて,議会終了後に録音ミスがないかのチェックを終えた時点で対象文書性をもつこととなり,公開の時期も到来していると解釈すべきである。なお,公開の時期につき,録音テープの決裁ではな 正があった場合を除いて,議会終了後に録音ミスがないかのチェックを終えた時点で対象文書性をもつこととなり,公開の時期も到来していると解釈すべきである。なお,公開の時期につき,録音テープの決裁ではない会議録の署名捺印終了後をもって録音テープの決裁手続完了と解することは,いたずらに公開の時期を遅らせるものであって,正当な解釈ではない。 イ議会の議事内容を録音したテープ(以下「議事録音テープ」という。)は,公開の議会における議員等の発言を記録したものであり,秘密性は一切ないものである。D町議会や三重県議会においても,議事録音テープは公開されている。 議員は,本件条例に基づかなくとも,議員としての当然の権利として,いつでも自由に何度でも議事録音テープを聴取することができるはずであり,本件条例に基づく公開請求においても,当然,その趣旨は貫徹されなければならない。特に,議会会議録に議員の発言が正確に再現されていない場合においては,当該議員は,自己情報の訂正権によっても,会議録の訂正を求める手段として,議事録音テープの情報公開を求める権利がある。 また,本件条例7条は,本人情報について,「当該公文書の本人に係る情報を公開しなければならない」と定めており,公開請求者の発言を記録した録音テープは公開しなければならないはずである。 議員である原告が本人情報である自らの発言とこれに対する町長の答弁を記録した本件録音テープの公開を請求したのに対して,これを拒否した本件非公開決定①,②は,原告の議員としての権利や自己情報訂正権を侵害するものであり,本件条例7条の解釈も誤っており,違法である。 ウ被告は,本件条例解釈運用基準(第1事件乙2)に基づき,本件録音テープが公文書でない旨主張しているが,上記解釈運用基準は,町長の所轄している公文書についての解釈運用基 も誤っており,違法である。 ウ被告は,本件条例解釈運用基準(第1事件乙2)に基づき,本件録音テープが公文書でない旨主張しているが,上記解釈運用基準は,町長の所轄している公文書についての解釈運用基準であり,他の実施機関である被告の所轄している公文書についての解釈運用基準ではない。また,そもそも上記解釈運用基準は,本件条例に根拠をもつものでもない。 また,本件条例が,磁気テープ等の磁気媒体を対象文書に掲示しているのは,当該磁気媒体そのものを情報公開の対象としたものと解すべきである。被告の主張するように紙媒体に転記したものだけが対象文書になるというのであれば,本件条例第2条に磁気テープなどを掲記する必要はない。よって,上記解釈運用基準はその内容においても不当である。 エ国の情報公開法41条は,「地方公共団体は,この法律の趣旨にのっとり,その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し,及びこれを実施するよう努めなければならない。」と定めており,この趣旨は,地方公共団体の情報公開条例の運用を上記法律に近づける法的努力義務を課したものと解される。 そうだとすると,本件条例の解釈運用においても,公開の対象となる公文書の範囲をできるだけ広範囲になるように解釈運用すべきであるから,本件録音テープは,本件条例の解釈運用上,公開対象となる公文書に当たるものといえる。 (5) 争点(5)(録音テープを公開の対象としない規定や運用は,憲法14条に違反するか)について情報公開制度における対象公文書を紙媒体に限定している規定や,かかる限定規定がなくても紙媒体に限定している運用は,視力障害者に対するいわれなき差別的取扱いであり,政治的参加の前提である情報公開による行政情報へのアクセスを封じる重大な人権侵害である。行政情報の公開における公平とは,紙媒体のみの閲 ている運用は,視力障害者に対するいわれなき差別的取扱いであり,政治的参加の前提である情報公開による行政情報へのアクセスを封じる重大な人権侵害である。行政情報の公開における公平とは,紙媒体のみの閲覧・開示とするのではなく,音声による情報の公開が可能なものについては,音声による情報の公開,すなわち,録音テープの公開までも保障したものでなければならない。 被告は,本件条例解釈運用基準(第1事件乙2)の「磁気的記録それ自体は対象に含まれないものであり,出力又は採取され紙媒体に印刷された情報」だけが本件条例の対象となる「公文書」である旨主張するが,かかる解釈運用は,憲法14条に違反する。 よって,上記解釈運用基準によってなされた本件非公開決定①,②は違憲,違法である。 (被告の主張)(1) 争点(1)(第1事件の訴えのうち被告に対し金員の支払を求める部分は適法か)について被告は実体法上の権利能力を有しないから,本件訴えのうち被告に対し金員の支払を求める部分は不適法であり,却下されるべきである。 (2) 争点(2)(本件非公開決定①,②が議長名でなされたことは適法か)について本件非公開決定①,②は,議会の代表者としての議長が,会議録やその作成の補助手段である本件録音テープに対する一般的管理権限に基づいてなしたものであり,何ら違法ではない。 (3) 争点(3)(本件非公開決定①,②は理由付記の要件を欠いているか)について後述のとおり本件録音テープは本件条例2条2項に規定する「公文書」に該当しないものであるから,非公開の理由としては,「請求のあった録音テープにつきましては,会議録作成の補助手段として使うもので,会議の経過を公的に記録しているのは,会議録である。したがって,会議録の閲覧または写しの交付によって目的を達することができる。」 った録音テープにつきましては,会議録作成の補助手段として使うもので,会議の経過を公的に記録しているのは,会議録である。したがって,会議録の閲覧または写しの交付によって目的を達することができる。」というもののみでも明確であり,必要かつ十分であるから,上記理由は正当である。 (4) 争点(4)(本件録音テープが本件条例に基づく公開の対象となる「公文書」に当たるか)についてア本件条例では,公開対象公文書であるためには「決裁又は供覧の手続」がなされた文書であることが要件として明示されており(本件条例2条2項),「決裁又は供覧の手続」が予定されていない文書は,公開対象公文書ではない。そして,本件録音テープについては「決裁又は供覧の手続」が予定されていない。よって,本件録音テープは,本件条例2条2項の公開対象文書たる「公文書」には該当しない。 なお,原告は,「録音テープのように,そもそも決裁供覧手続がないものについては,決裁供覧手続がなされていないことを理由として公開対象公文書には当たらないとする解釈は,情報公開制度の趣旨に照らし,本末転倒の解釈であるといわざるを得ない。」旨主張するが,録音テープであっても,決裁権者がこれを再生聴取して決裁し(録音テープに決裁のための署名押印をするなど),これを供覧に付することは可能であるから,録音テープにはおよそ決裁供覧手続が考えられないということを前提とする上記主張は失当である。 イ A町議会においては,A町議会会議規則第14章に規定があるとおり,会議の経過を公的に記録する文書は会議録である。同規則120条は,「会議録に署名すべき議員は,2人とし,議長が会議において指名する。」としており,会議録は議員2名が署名することによって公文書として完成することを規定し,「決裁又は供覧の手続」を規定している。 こ 会議録に署名すべき議員は,2人とし,議長が会議において指名する。」としており,会議録は議員2名が署名することによって公文書として完成することを規定し,「決裁又は供覧の手続」を規定している。 これに対し,議事録音テープは,公文書であるA町議会の会議録とは異なり,あくまでも会議録作成のための補助的手段として便宜上用いられているものにすぎず,公文書としての文書取扱規程もないし,その保存や破棄についても何ら規定が設けられていない。よって,議事録音テープは,会議録作成の補助的手段としての単なる「メモ」と変わりがないものであり,公文書ではない。 また,A町議会会議規則119条は,「会議録には,秘密会の議事並びに議長が取消しを命じた発言及び64条(発言の取消し又は訂正)の規定により取り消した発言は,掲載しない。」と規定しているところ,仮に,議事録音テープが公開の対象となるとすると,公文書である会議録に含まれていない部分まで公開され,会議録が唯一の公的記録であることの意味が失われることになるから,議事録音テープを公開対象であると解することは不当である。 ウ本件条例解釈運用基準(第1事件乙2)は,本件条例2条(定義)に関し,公開対象となる公文書のうち電気的記録の範囲について,「電子的・磁気的方式,そのほか人の知覚によって認識することができない方式で作られた記録をいい,磁気テープ,録音テープ,スライド,マイクロフィルム等をいうが,それ自体は対象に含まれないものであり,出力又は採録された紙媒体に印刷された情報をいう。」と規定している。磁気的記録である録音テープは,それ自体公文書の対象に含まれないものであり,出力又は採録され紙媒体に印刷されてはじめて公文書として公開の対象となるのである。つまり,議事録音テープは,会議録として紙媒体に印刷されることによっ は,それ自体公文書の対象に含まれないものであり,出力又は採録され紙媒体に印刷されてはじめて公文書として公開の対象となるのである。つまり,議事録音テープは,会議録として紙媒体に印刷されることによってはじめて公文書となる。なお,この解釈運用基準は,町長の所轄している公文書だけではなく,議会の所轄している公文書の解釈運用基準とすることも予定されて作成されたものである。 エなお,議事録音テープを公開するかどうかは,各市町村議会の自主的判断に委ねられた事項であるのだから,これを公開している市町村議会があるからといって,当然に被告も公開しなければならないということにはならない。 (5) 争点(5)(録音テープを公開の対象としない規定や運用は,憲法14条に違反するか)について被告は,恣意的に録音テープを公開対象文書でないという規定を設けたり,運用をしているのではなく,本件条例にしたがって運用しているにすぎない。各自治体がその実状に即した情報公開条例を制定することは,何ら憲法や法律が禁止するところではなく,憲法14条に違反するものではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(第1事件の訴えのうち被告に対し金員の支払を求める部分は適法か)について被告は実体法上の権利能力を有しないから,本件訴えのうち被告に対し金員の支払を求める部分は不適法であり,却下されるべきである。 2 争点(2)(本件非公開決定①,②が議長名でなされたことは適法か)について弁論の全趣旨によれば,「度会郡A町議会議長B」名でなされた本件非公開決定①及び「度会郡A町議会議長C」名でなされた本件非公開決定②は,いずれも被告がなしたものと認められ(これを被告がなしたものではないとすれば,同各決定の取消しを被告に対して求める本件訴えは被告を誤った不適法な訴えということになる。) なされた本件非公開決定②は,いずれも被告がなしたものと認められ(これを被告がなしたものではないとすれば,同各決定の取消しを被告に対して求める本件訴えは被告を誤った不適法な訴えということになる。),上記記載も「度会郡A町議会代表者議長B」,「度会郡A町議会代表者議長C」の趣旨の記載とみることもできるから,本件非公開決定①,②がそれぞれ「度会郡A町議会議長B」名,「度会郡A町議会代表者議長C」名でなされたことは適法である。 3 争点(3)(本件非公開決定①,②は理由付記の要件を欠いているか)について(1) 本件条例が公文書の非公開決定通知書にその理由を付記すべきものとしている(本件条例9条4項)のは,非開示事由の有無について実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに,非開示の理由を開示請求者に知らせることによって,その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものである。 これを本件非公開決定①,②についてみるに,同決定通知書の「非公開の理由」欄の記載のうち,各第2文(「したがって,会議録の閲覧または写しの交付によって目的を達することができる。」)については,本件条例14条(他の制度との調整)に当たることが非公開の理由であるかのようにもみえるが,上記記載は,本件録音テープそれ自体が他の制度により公開されることを理由とする内容ではないから,少なくとも形式的には同条に定める場合には合致しない。また,根拠条文も示されていないから,必ずしも本件条例14条に当たるとの趣旨の記載ともいえない(被告自身,この記載が本件条例14条に当たるとの趣旨である旨の主張はしていない。)。結局,非公開の理由としての上記記載の趣旨は明確でない。 しかし,本件非公開決定①,②の理由欄の記載内容のうち,各第1文(「請求のあった録音テープにつきましては 趣旨である旨の主張はしていない。)。結局,非公開の理由としての上記記載の趣旨は明確でない。 しかし,本件非公開決定①,②の理由欄の記載内容のうち,各第1文(「請求のあった録音テープにつきましては,会議録作成の補助手段として使うもので,会議の経過を公的に記録しているのは,会議録である。」)からは,本件録音テープは補助手段として用いられるものにすぎず,公的記録ではないから,そもそも本件条例2条2項の「公文書」には当たらないという趣旨が分かる。 そうすると,上記「非公開の理由」欄の記載は,実施機関の判断の恣意抑制と開示請求者の不服申立てに対する便宜を与えるという理由付記の趣旨に合致しないとまではいうことができず,本件非公開決定①,②は本件条例9条4項の要求する理由付記の要件を欠くものとはいえない。 (2) なお,原告は,「情報公開条例における行政処分の違法性の判断は,非公開決定に記載された非公開理由だけを審査の対象として判断がなされなければならず,処分庁による非公開理由の追加主張は認められないものと解すべきである。」旨主張するが,本件条例がかかる趣旨で規定されたものとは認められないから,同原告の主張は採用できない。 4 争点(4)(本件録音テープが本件条例に基づく公開の対象となる「公文書」に当たるか)について(1) 証拠(第1事件乙4,証人E)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告においては,定例会や臨時会が開かれると,会議録を作成している。そして,昭和50年ころからは,会議の内容は常にテープレコーダーにより録音されている。なお,使用するテープレコーダーは,議会の費用で購入されたものであり,録音に使用するテープも議会の費用で購入されたものである。 イ上記録音は,会議録を正確に起案作成するために任意に行われているものであ お,使用するテープレコーダーは,議会の費用で購入されたものであり,録音に使用するテープも議会の費用で購入されたものである。 イ上記録音は,会議録を正確に起案作成するために任意に行われているものであり,地方自治法やA町議会会議規則等に特別の根拠規定があるわけではない。 ウ上記録音は,少なくとも最近は,議会事務局長がテープレコーダーを操作することにより行われており,同事務局長は,会議録起案作成の補助手段として,上記録音テープとメモを使用している。そして,会議録は,上記録音テープを再生・聴取したところを逐語訳するという形で起案作成されている。 エ上記録音テープそのものは決裁又は供覧手続に付されていない。 オ上記録音テープについては,少なくとも,平成11年7月に議会事務局長の職にEが就いた後は,会議録が作られた後,約1年間保管しておき,爪が折られていないものについては再使用し,爪が折られているものについては破棄するというような運用状況にあるが,特に保存についての特別の根拠規定があるわけではない。 カ本件録音テープは,A町議会平成12年第9回(12月)定例会の議事を録音したものの(以下「本件録音テープ全体」という。)うちの一部であるところ,本件録音テープ全体も,会議録を正確に起案作成するための補助手段とするために,議会事務局長Eにより任意に作成(録音)されたものであり,これを再生・聴取して同定例会の会議録の起案が作成され,平成13年4月以降に会議録が完成したのであるが,本件録音テープ全体は決裁・供覧手続に付されていない。 キなお,A町議会会議規則120条は,「会議録に署名すべき議員は,2人とし,議長が会議において指名する。」と規定している(第1事件乙1)。 (2) 上記前提となる事実及び上記認定事実に基づき検討するに,本件条例における公文書 20条は,「会議録に署名すべき議員は,2人とし,議長が会議において指名する。」と規定している(第1事件乙1)。 (2) 上記前提となる事実及び上記認定事実に基づき検討するに,本件条例における公文書とは,「実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画,写真及びスライド(磁気ディスク及び磁気テープ並びにマイクロフィルムを含む。)であって,決裁又は供覧の手続が終了し,実施機関が管理しているもの」である(本件条例2条2項)ところ,本件録音テープ全体は,決済文書である会議録の起案の準備のためのいわばメモの代わりにすぎず,「実施機関の職員が職務上作成し」た文書であるにしても,「決裁又は供覧の手続が終了し」たものとはいえない。 また,本件録音テープ全体は,特別の規程等に基づき保管されているものではなく,単に事実上保管されているにすぎないものであるが,一般に,単に事実上保管されているにすぎないような文書については実施機関において責任を負い得ないものであって,そのような文書は「実施機関が管理している」文書とはいえず,本件録音テープ全体も「実施機関が管理しているもの」といえない。 そうとすれば,本件録音テープは,本件条例における公文書には該当しない。 原告はこの点に関しるる主張するが,本件条例2条2項は,その文言からも,「決裁又は供覧の手続が終了し」たもののほかに,「決裁又は供覧手続の対象とならない又はこれらの手続を要しないもの」をも公開の対象とする趣旨とは解されないし,「議会の議事を録音したテープ」についてはこれを公開の対象とする趣旨とも解されない。また,定義規定である本件条例2条2項の公文書に該当しない以上,本件条例7条の公文書にも当たらないことは明らかである。 5 争点(5)(録音テープを公開の対象としない規定や運用は,憲法14条に違反す また,定義規定である本件条例2条2項の公文書に該当しない以上,本件条例7条の公文書にも当たらないことは明らかである。 5 争点(5)(録音テープを公開の対象としない規定や運用は,憲法14条に違反するか)について本件条例解釈運用基準(第1事件乙2)は,本件条例2条(定義)に関し,公開対象となる公文書のうち電気的記録の範囲について,「電子的・磁気的方式,そのほか人の知覚によって認識することができない方式で作られた記録をいい,磁気テープ,録音テープ,スライド,マイクロフィルム等をいうが,それ自体は対象に含まれないものであり,出力又は採録された紙媒体に印刷された情報をいう。」と規定しているが,本件条例2条2項の文言からして,「磁気テープ,録音テープ,スライド,マイクロフィルム等自体は対象に含まれない。」とは到底解されず,かかる解釈運用基準が本件条例の趣旨にのっとったものであるかどうかについては疑問がある。 しかしながら,本件録音テープは,上記4のとおり,本件解釈運用基準の内容に関わりなく,本件条例にいう公文書には該当しないから,本件非公開決定①,②の取消事由とはならない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。 6 結論以上のとおりであり,第1事件の訴えのうち,被告に対して金員の支払を求める部分は不適法であるからこれを却下することとし,原告のその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 津地方裁判所民事部裁判長裁判官内田計一裁判官後藤隆裁判官大竹貴(別紙)A町情報公開条例 (平成10年3月27日条例第13号。改正・平成12年3月31日条例第18号)(目的)第1条この条例は,町民の公文書の公開を請求する権利を明らかにするとともに,情報公開の総合的な推進に関し必要な事項 10年3月27日条例第13号。改正・平成12年3月31日条例第18号)(目的)第1条この条例は,町民の公文書の公開を請求する権利を明らかにするとともに,情報公開の総合的な推進に関し必要な事項を定めることにより,町民の町政参加を推進し,町政に対する町民の理解と信頼を深め,開かれた町政を一層推進することを目的とする。 (定義)第2条この条例において「実施機関」とは,町長,議会,・・(略)・・をいう。 2 この条例において「公文書」とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画,写真及びスライド(磁気ディスク及び磁気テープ並びにマイクロフィルムを含む。)であって,決裁又は供覧の手続が終了し,実施機関が管理しているものをいう。 3 この条例において「公文書の公開」とは,実施機関がこの条例の定めるところにより,公文書を閲覧に供し,又は公文書の写しを交付することをいう。 (実施機関の責務)第3条実施機関は,公文書を原則として公開するものとし,第1条の目的が十分に達成されるようこの条例を解釈し,かつ運用するものとする。 2 (略)(利用者の責務)第4条 (略)(公文書の公開を請求できるもの)第5条次に掲げるものは,実施機関に対して,公文書の公開(第4号に掲げるものにあっては,そのものの有する利害関係に係る公文書の公開に限る。)を請求することができる。 1 町内に住所を有する者 2 町内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体 3 町内に存する事務所又は事業所に勤務する者 4 前各号に掲げるもののほか,実施機関の行う事務事業に利害関係を有するもの(公開しないことができる公文書)第6条実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については,当該公文書の公開をしないことができる。 1ないし9号 ( 利害関係を有するもの(公開しないことができる公文書)第6条実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については,当該公文書の公開をしないことができる。 1ないし9号 (略) 2 (略)(公文書の本人公開)第7条実施機関は,第6条の規定にかかわらず,同条第2号本文に該当する情報が記録されている公文書について,本人(第5条各号に掲げるもの(法人その他の団体を除く。)を言う。)から公開の請求があった場合は,当該公文書の本人に係る部分を公開しなければならない。ただし,当該部分が次の各号のいずれかに該当するときは,当該該当する部分を公開しないことができる。 1,2号 (略) 2 (略)(公文書の公開の請求手続き)第8条 (略)(公文書の公開の請求に対する決定等)第9条実施機関は,前条に規定する請求書を収受したときは,当該請求書を収受した日の翌日から起算して15日以内に,請求に係る公文書の公開をするかどうかの決定をしなければならない。 2 実施機関は,前項の決定をしたときは,速やかに書面により当該決定の内容を前条に規定する請求書を提出したもの(以下「請求者」という。)に通知しなければならない。ただし,・・(略)・・ 3 (略) 4 第2項の場合において,実施機関は,公文書の全部又は一部の公開をしない旨の決定をしたときは,同項の書面に,当該決定の理由(当該決定の理由がなくなる期日をあらかじめ明示することができるときは,当該決定の理由及び当該期日)を付記しなければならない。 5 (略)(公文書の公開の実施)第10条 (略),(費用の負担)第11条 (略)(不服申立て)第12条実施機関は,第9条第1項の決定について,行政不服審査法(昭和37年法律第160号)の規定に基づく不服申立てがあったときは,当該不服申立てが (費用の負担)第11条 (略)(不服申立て)第12条実施機関は,第9条第1項の決定について,行政不服審査法(昭和37年法律第160号)の規定に基づく不服申立てがあったときは,当該不服申立てが不適法であるときを除き,遅滞なく,A町公文書公開審査会の審査を経て,当該不服申立てについての決定をしなければならない。 (紀勢町公文書公開審査会)第13条 (略)(他の制度との調整)第14条この条例は,法令等の規定に基づき,公文書を閲覧し,若しくは縦覧し,又は公文書の謄本,抄本その他の写しの交付を受けることができる場合においては,適用しない。 2 この条例は,公民館その他これに類する施設において,町民の利用に供することを目的として管理されている公文書については,適用しない。 (公文書の任意公開)第15条実施機関は,第5条各号に掲げるもの以外のものから公文書の公開の申出があったときは,当該公文書の公開をするよう努めるものとする。 2 (略)(公文書の目録等の作成)第16条 (略)(情報提供の充実)第17条実施機関は,町民が必要とする情報を的確に把握し,町政に関する情報を迅速かつ容易に得られるよう情報提供に関する施策の推進に努めなければならない。 (委任)第18条 (略)附則 (略)
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