平成15(行ウ)12 辞職承認処分取消及び損害賠償請求事件(通称 群馬町職員辞職承認処分取消)

裁判年月日・裁判所
平成16年11月26日 前橋地方裁判所
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判決文本文14,164 文字)

判決 主文 1 原告の被告群馬町長に対する訴えを却下する。 2 被告群馬町は,原告に対し,金100万円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告の被告群馬町に対するその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,原告に生じた費用の6分の5,被告群馬町長に生じた費用の全部及び被告群馬町に生じた費用の5分の4を原告の負担とし,原告に生じた費用の6分の1及び被告群馬町に生じた費用の5分の1を被告群馬町の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告群馬町長が平成14年6月6日付けで原告に対してした辞職承認処分を取り消す。 2 被告群馬町は,原告に対し,金500万円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件訴えのうち被告群馬町長に対するものは,被告群馬町長が被告群馬町の職員であった原告に対してした辞職承認行為が,原告の自発的意思に基づかずに提出をさせられた退職願に基づいてされた違法な行政処分であるとして,原告が,被告群馬町長に対し,その取消しを求めるものである。 本件訴えのうち被告群馬町に対するものは,上記退職願の提出に至る経過に関し,被告群馬町の職員が,原告がその父をして脱税をさせたと決めつけ,原告に対して侮辱的かつ強圧的態度で責め立ててその自白及び辞職を要求したもので,この行為は公権力の行使に当たる被告群馬町の職員がその職務を行うについてした不法行為であり,これにより精神的損害を受けたとして,原告が,被告群馬町に対し,国家賠償法1条に基づき,慰謝料500万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成14年6月6日(上記退職願を提出した日)からの民法所定の遅延損害金の支払を求めるものである。 2 前提事実(証拠原因を掲記しない事実は争 ,慰謝料500万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成14年6月6日(上記退職願を提出した日)からの民法所定の遅延損害金の支払を求めるものである。 2 前提事実(証拠原因を掲記しない事実は争いがない。ただし,(4)エの事実は当裁判所に顕著である。)(1) 当事者被告群馬町(以下「被告町」という。)は普通地方公共団体である。 原告は,昭和48年9月に被告町の職員として採用され,以後,平成元年4月1日から平成3年3月31日まで被告町の税務課課長補佐を,同年7月1日から平成5年3月31日まで及び平成10年4月1日から平成14年6月6日まで被告町の税務課課長をそれぞれ務めていた。 (2) 国民健康保険税の賦課漏れの発覚ア被告町の職員は,平成14年5月28日ころ,原告の父であり,被告町に居住するAに平成3年から平成13年までの間に賦課されるべき国民健康保険税(以下「国保税」という。)のうち,資産割部分(平成4年分から平成13年分の合計25万3100円)が賦課されていなかったこと(以下「本件賦課漏れ」という。)を発見した(賦課漏れの金額につき甲5の1・2,乙16の1・2)。本件賦課漏れがあったことは,同日ころ,被告町の助役B(なお,役職は当時のものであり,以下,他の職員についても同様である。)及び原告に伝えられた。 イ本件賦課漏れが生じた直接的な原因は次のとおりである。 すなわち,Aは,原告の指示により,Aの所有に係る不動産についての固定資産税の納税に関し,原告を納税管理人と定めていた(地方税法355条。ただし,この規定によると,本来は,被告町に居住するAが納税管理人を定めることはできない。)。他方,被告町が使用していたコンピューターによる課税額算出システム(以下「システム」という。)によると,被告町に所在する不動産を所有し は,被告町に居住するAが納税管理人を定めることはできない。)。他方,被告町が使用していたコンピューターによる課税額算出システム(以下「システム」という。)によると,被告町に所在する不動産を所有していても自らの名義で固定資産税を納付しない者には,国保税の資産割部分が賦課されないことになっていた。そのため,Aに賦課されるべき国保税の資産割部分のみが賦課されない結果となったものである。 ウ本件賦課漏れが発見された当時まで,被告町においては,Aの場合と同様に,被告町に所在する不動産を所有している者が,被告町に居住するにもかかわらず納税管理人を定め,そのためにその不動産所有者に賦課されるべき国保税の資産割部分のみが賦課されなかった事例が複数あったが,その当時まで,このような事例について是正措置がとられることはなかった。 (3) 退職願の提出と辞職承認行為原告は,平成14年6月6日,被告群馬町長(以下「被告町長」という。)に対し,同日付けの退職願(以下「本件退職願」という。)を提出した。 被告町長は,同日,本件退職願を受理し,原告に対し,その辞職を承認した(以下,この辞職を承認した行為を「本件辞職承認行為」という。)。原告は,同日,本件辞職承認行為がされたことを知った(甲9,弁論の全趣旨)。 (4) 本件訴え提起までの経過ア被告町には,公平委員会が設置されているところ,原告は,平成14年8月5日朝,被告町の公平委員会(以下「町公平委員会」という。)の委員長(以下,単に「委員長」という。)の自宅に赴き,委員長に対し,本件退職願を撤回し,自らの復職を要求する旨記載された「身の覚えの無い父の国保税資産割賦課漏れに係る退職強要(依願退職)に関し,次の様に復職措置を要求します。」で始まる書面(以下「復職要求書面」という。)を渡した(復職要求書面の を要求する旨記載された「身の覚えの無い父の国保税資産割賦課漏れに係る退職強要(依願退職)に関し,次の様に復職措置を要求します。」で始まる書面(以下「復職要求書面」という。)を渡した(復職要求書面の内容及び題名につき,甲9)。 イ委員長は,同日,被告町に対し,原告から復職要求書面を渡されたことを伝えた(乙15)。 ウ被告町の総務課課長補佐Cは,同日夕,原告に対し,原告が町公平委員会に対して不服申立てをすることはできない旨説明した。そのため,原告は,同月6日朝,委員長の自宅に赴き,委員長から,復職要求書面を回収した。(甲3,乙15,原告本人)エ原告は,平成15年2月25日,本件訴えを提起した。 3 本件訴えのうち被告町長に対するもの(以下「請求1に係る訴え」という。)についての本案前の主張(1) 被告町長の主張ア原告が被告町長に対し退職願を提出し,被告町長が原告に対しその辞職を承認したことは,民法上の雇用契約の合意解約と評価できるに過ぎない。したがって,本件辞職承認行為には行政処分性がなく,請求1に係る訴えは不適法である。 イ請求1に係る訴えは,町公平委員会に対する不服申立て(地方公務員法49条の2)についての裁決又は決定を経ずに提起されたものであるから,不服申立前置主義(同法51条の2)に反し,不適法である。 ウ請求1に係る訴えは,出訴期間を経過した後に提起されたものであるから,不適法である。 (2) 原告の主張ア公務員の労働関係は任用関係であって雇用契約関係ではない。本件辞職承認行為には行政処分性がある。 イ原告は,本件辞職承認行為がされた日の翌日(平成14年6月7日)から起算して60日目に当たる平成14年8月5日,町公平委員会に対して不服申立てをした。ところが,Cは,原告に対し,原告が町公平委員会に不服申立てをす 承認行為がされた日の翌日(平成14年6月7日)から起算して60日目に当たる平成14年8月5日,町公平委員会に対して不服申立てをした。ところが,Cは,原告に対し,原告が町公平委員会に不服申立てをすることはできないとの誤った説明をした。原告は,この説明を信じて,町公平委員会に対し,不服申立てを取り下げる旨を口頭で伝えた。 以上のとおり,原告は,町公平委員会に対する不服申立てを適法に行い(地方公務員法49条の3),書面による取下げをしておらず(行政不服審査法39条2項参照),本件訴えは町公平委員会の裁決又は決定がされないまま上記不服申立て後3か月を経過した後に提起されたのであるから,町公平委員会の裁決又は決定を経ていなくても,請求1に係る訴えは,不服申立前置主義に反しない(行政事件訴訟法8条2項1号)。 仮に,町公平委員会に対する不服申立ての取下げの効力があるとしても,取下げをした原因は,被告町の職員から誤った説明をされたことにあるから,被告町長が不服申立前置の欠如を主張することは,信義則に反し,著しく正義に反するから,許されない。また,町公平委員会の裁決又は決定を経ないことにつき正当な理由があったというべきであり,請求1に係る訴えは,不服申立前置主義に反しない(行政事件訴訟法8条2項3号)。 ウ上記イのとおり,原告は,町公平委員会に対する不服申立てを適法に行い,書面による取下げをしておらず,本件訴えは町公平委員会の裁決又は決定がされないまま提起されたのであるから,請求1に係る訴えが,出訴期間を徒過しているということはない。 4 請求1に係る訴えについての本案の主張(1) 原告の主張本件退職願は,原告の自発的意思に基づいて提出されたものではない。したがって,本件辞職承認行為は違法であって,取り消されるべきである。 (2) 被告 る訴えについての本案の主張(1) 原告の主張本件退職願は,原告の自発的意思に基づいて提出されたものではない。したがって,本件辞職承認行為は違法であって,取り消されるべきである。 (2) 被告町長の主張原告は,任意に本件退職願を提出したのであって,本件退職願の提出が原告の真意に反するということはないから,本件辞職承認行為は違法ではない。 5 本件訴えのうち,被告町に対するもの(以下「請求2」という。)についての主張(1) 原告の主張ア被告町の職員による不法行為本件賦課漏れは,Aが,その所有に係る不動産についての固定資産税を原告に負担させるため,被告町の職員からの教示を受けた原告の指示により,その納税に関し原告を納税管理人と定めたために生じたものである。したがって,本件賦課漏れは,原告が意図して生じさせたのではなかった。 ところが,B,被告町の収入役D,総務課長E及びC(以下,まとめて「幹部職員」という。)等は,平成14年5月30日以降,原告に対し,連日にわたって侮辱的かつ強圧的態度で原告が脱税をしたと責め立て,犯罪者扱いをして,脱税をしたことの自白を要求した。また,E及びCは,同年6月5日,実際には原告に懲戒免職事由がないにもかかわらず,原告に対し,原告に対する処分は原則として懲戒免職処分であるが,原告が依願退職をすれば懲戒免職処分にはしないと告げて,依願退職をすることを要求し,故意に本件賦課漏れを生じさせたことを認めて謝罪すれば降格,減給及び配置転換で済む可能性もあると告げて,自白を要求した。幹部職員等が行ったこれらの行為は,被告町の職務を行うについてした不法行為であるといえる。 イ損害原告は,幹部職員等の上記不法行為により,急性胃炎に罹患し,虚偽の自白をせずに懲戒免職を免れるには退職願を提出するしかないと は,被告町の職務を行うについてした不法行為であるといえる。 イ損害原告は,幹部職員等の上記不法行為により,急性胃炎に罹患し,虚偽の自白をせずに懲戒免職を免れるには退職願を提出するしかないと考え,被告町長に対して本件退職願を提出することになってしまった。原告は,本件辞職承認行為がされた後は,労働する喜びと働きながら人間として向上する利益を奪われ,失意と不安の中での生活を余儀なくされている。 このような原告の精神的損害を慰謝するためには,少なくとも500万円を要する。 (2) 被告町の主張本件賦課漏れが,被告町の職員等の過失により生じたものか,原告が脱税の故意により部下に命ずるなどして生じさせたものかは,確定的な証拠もなく,断定できない。 被告町の町長F及び幹部職員は,平成14年6月4日午後3時から午後4時25分まで,原告からの事情聴取を行った。原告からの事情聴取はこの1回だけしか行われていないし,この事情聴取において,幹部職員等が,原告に対し,侮辱的かつ強圧的態度で責め立てたということはない。 F及び幹部職員は,同年6月5日,本件賦課漏れについての原告に対する処分を検討し,上記原告からの事情聴取及び被告町の関係職員らの事情聴取等によっても原告に脱税の意図があったか否かの確定はできなかったが,原告の関与がなかったとは考えられないこと,原告の職務からして,システム上の不備を知るべき立場にあったこと,Aを納税義務者とする固定資産税の納税に関して原告を納税管理人と定めるに当たり提出されるべき納税管理人申告書が未提出であったこと等の事情をもとに,原告を2階級降格とし,原告の給与を6か月間10分の1減じ,原告に対する配置換えを行うことを内容とする処分案を被告町の行政処分審査委員会に対して諮問することにした。E及びCは,同年6 の事情をもとに,原告を2階級降格とし,原告の給与を6か月間10分の1減じ,原告に対する配置換えを行うことを内容とする処分案を被告町の行政処分審査委員会に対して諮問することにした。E及びCは,同年6月5日,原告に対し,上記の処分案の内容を口頭で告げたが,これに対し,原告は,1階級降格に留めてほしいとの要望をした。そのため,E及びCは,同月6日に原告とFとが話し合う機会を設けるように調整したが,同日,原告は本件退職願を提出した。 以上のとおりであって,幹部職員等が行った行為に不法行為に当たるものはない。 第3 当裁判所の判断 1 請求1に係る訴えの適法性について(1) 本件辞職承認行為の行政処分性の有無について任命権者が公務員の辞職申出に対してこれを承認する行為は,結局のところ,任命権者が辞職申出を要件として公務員を免職する行為であって,行政処分であると解される。そうすると,本件辞職承認行為が,行政処分性を有し,取消訴訟の対象となることは明らかである(以下,本件辞職承認行為を「本件処分」という。)。この点に関する被告町長の主張は,独自の見解であって,これを採用することができない。 (2) 請求1に係る訴えが不服申立前置主義に反し不適法であるか否かについてア本件処分について,原告は,その要件となる辞職申出(本件退職願の提出)が自発的意思に基づいたものでないと主張しているのであるから,本件処分は,職員の意思に反する不利益な処分(地方公務員法49条1項)であると解するのが相当である。したがって,本件処分は,原告が公平委員会に対して不服申立てをすることができるものであり(同法49条の2第1項),本件処分の取消しの訴えは,その不服申立てに対する公平委員会の裁決又は決定を経た後でなければ,原則として提起することができない(同法51条の2) をすることができるものであり(同法49条の2第1項),本件処分の取消しの訴えは,その不服申立てに対する公平委員会の裁決又は決定を経た後でなければ,原則として提起することができない(同法51条の2)というべきである。 イ前提事実によれば,原告は,本件処分について町公平委員会への不服申立てを未だ行っていないといえるし,他に原告が本件処分について町公平委員会への不服申立てを行ったと認めるに足りる証拠はない。この点に関し,原告は,原告が委員長に対して復職要求書面を渡した事実により,町公平委員会への不服申立てがされたものと解するようであり,原告本人も同旨の供述をするが,原告が,本件処分についての不服を述べる書面を委員長に渡し,その書面が委員長の自宅に留まったままの段階で,その書面を回収したという前提事実のとおりの経過からすると,原告は,本件処分について町公平委員会へ不服申立てをする前の段階で,これを断念したものと解さざるを得ない。 したがって,請求1に係る訴えは,本件処分についての不服申立てに対する公平委員会の裁決又は決定を経ずに提起されたものであるといえる。 しかしながら,前提事実によれば,原告が,復職要求書面を回収し,本件処分について町公平委員会への不服申立てを行わなかったのは,被告町の総務課課長補佐の職にあるCから,原告が町公平委員会に対して不服申立てをすることはできない旨説明されたことが理由であった。上記アを併せると,Cによる上記説明は誤りであったといえるが,このように被告町の幹部職員から誤った説明を受けた場合にも,原告に,町公平委員会への不服申立てをし,その裁決又は決定を経た上で,本件処分の取消しの訴えを提起することを要求するのは酷というべきである。 そうすると,本件処分について,町公平委員会の裁決又は決定を経なかったことに 不服申立てをし,その裁決又は決定を経た上で,本件処分の取消しの訴えを提起することを要求するのは酷というべきである。 そうすると,本件処分について,町公平委員会の裁決又は決定を経なかったことには正当な理由がある(行政事件訴訟法8条2項3号)から,不服申立前置主義に反することを理由として,請求1に係る訴えが不適法であるとはいえないというべきである。 (3) 請求1に係る訴えが出訴期間を経過した後に提起されたか否かについて上記(2)のとおり,請求1に係る訴えは,町公平委員会の裁決又は決定を経なかったことにつき正当な理由があって,その裁決又は決定を経ずに,かつ,本件処分について町公平委員会への不服申立ても行われずに提起されたものである。 この場合の出訴期間は,本件処分がされたことを原告が知った日から3か月以内であるというべきである(行政事件訴訟法14条1項)。 これを本件についてみると,前提事実のとおり,原告は平成14年6月6日に本件処分がされたことを知ったのであるから,請求1に係る訴えは,同日から3か月以内に提起しなければならないものであったといえる。ところが,前提事実のとおり,本件訴えが提起されたのは平成15年2月25日であるから,請求1に係る訴えが出訴期間を経過した後にされたものであることが明らかである。 そうすると,請求1に係る訴えは不適法であって,他にこれを適法とみるべき事情も見当たらない。 (4) 以上のとおりであるから,請求1に係る訴えは,本案の主張について判断するまでもなく,これを却下すべきである。 2 請求2について(この項の日付は平成14年である。)(1) 前記前提事実に証拠(甲2,3,5の1・2,甲6の1・2,甲9,乙1,2,15,16の1・2,乙17の1・2,証人B,同E,同C,原告本人)及び弁論の全趣旨を併 項の日付は平成14年である。)(1) 前記前提事実に証拠(甲2,3,5の1・2,甲6の1・2,甲9,乙1,2,15,16の1・2,乙17の1・2,証人B,同E,同C,原告本人)及び弁論の全趣旨を併せると,次の事実が認められる。 ア本件賦課漏れについての原告による調査等原告は,本件賦課漏れがあったことを知った後,6月3日までの間,本件賦課漏れが生じた原因について調査をし,システムに問題があったために本件賦課漏れが生じた可能性があることや,本件賦課漏れと同様に固定資産税の納税に関して納税管理人が定められたために国保税の資産割部分が賦課されていない事例が複数あることを知った。 また,原告は,6月4日午後1時ころ,群馬県総務部地方課(以下「地方課」という。)に赴き,同課の職員に対し,本件賦課漏れが生じた原因について質問するなどした。 イ本件賦課漏れ発覚後,原告からの事情聴取までの幹部職員の行動及び認識Bは,5月30日ころ,原告に対し,本件賦課漏れが生じたことについて厳しく叱責した。 Bは,同月31日,Eに対し,本件賦課漏れが生じたことについて被告町としてどのように対応するか,原告に対する処分をどうするか等を群馬県に問い合わせるように指示した。そのため,Eは,6月4日午前,Cらとともに地方課に赴き,同課の職員に対して上記の事柄について相談したところ,本件賦課漏れが生じたことに関する事実関係について確認をすること,本件賦課漏れが原告の意図したものであった場合,直ちに処分するのが適切であり,懲戒免職処分をすることもあり得ること,本件賦課漏れについての原告の意図が立証できない場合には,懲戒免職処分をすることは難しいこと等の回答を得た。 その直後,Eは,Bに対し,このときに得た回答を伝えた。この回答により,幹部職員は,同日午後3時 課漏れについての原告の意図が立証できない場合には,懲戒免職処分をすることは難しいこと等の回答を得た。 その直後,Eは,Bに対し,このときに得た回答を伝えた。この回答により,幹部職員は,同日午後3時から原告に対し,同日午後4時30分から本件賦課漏れが生じ始めた平成3年当時及び現職の被告町の税務課職員らに対し,それぞれ事情聴取を行うことを決めた。 このときまでに,幹部職員において,地方税法上,Aの所有に係る不動産についての固定資産税の納税に関し,原告を納税管理人と定めることができないこと,にもかかわらず,原告が納税管理人として定められていたこと,本来は永久保存されるべき原告に係る納税管理人選任届が保存されていないことが判明していた。そして,幹部職員は,本件賦課漏れが生じた原因が,Aにおいて,原告を納税管理人として定めたことにあると考えていた。 ウ原告からの事情聴取6月4日午後3時から午後4時25分ころまで,原告からの事情聴取(以下「本件事情聴取」という。)が行われた。この席には,原告のほか,F及び幹部職員が出席した。 本件事情聴取において,幹部職員は,主として,地方税法上,Aにおいて,原告を納税管理人として定めることができないにもかかわらず,原告が,納税管理人選任届を提出するという正式な手続を踏むことなしに,自らを納税管理人として定めさせたのではないか,という点を追及した。その際,幹部職員は,原告に係る納税管理人選任届が保存されていないことに言及した。 他方,原告は,システムに問題があったために本件賦課漏れが生じた可能性があることや,本件賦課漏れと同様に固定資産税の納税に関して納税管理人が定められたために国保税の資産割部分が賦課されていない事例が複数あることを説明したが,幹部職員は,これらのことは本件賦課漏れについての原 や,本件賦課漏れと同様に固定資産税の納税に関して納税管理人が定められたために国保税の資産割部分が賦課されていない事例が複数あることを説明したが,幹部職員は,これらのことは本件賦課漏れについての原告の責任問題とは関係のないことである旨述べて,まともに取り合おうとしなかった。 なお,本件事情聴取において,Fからの発言はなかった。 エ税務課職員らからの事情聴取6月4日午後4時30分から午後5時20分まで,平成3年当時及び現職の被告町の税務課職員らからの事情聴取が行われた。この席には,他にF及び幹部職員が出席した。 平成3年当時の税務課職員ら(現職も税務課職員であった者を除く。)からは,Aにおいて原告を納税管理人と定めた当時のことについて記憶に基づいた供述が得られることはなかった。平成3年当時も現職も税務課職員であった者からは,問題があった記憶があるという程度の供述がされたのみであった。 他方,幹部職員は,システムの問題や,納税管理人を定められる場合と定められない場合について,平成3年当時における税務課職員らの知識の有無・程度がどうであったかを詳細に聴取することをしなかった。 また,この事情聴取では,幹部職員を含む出席者らは,本件事情聴取の際のものを含む本件賦課漏れ発覚前後の原告の態度について,感想や批判的な意見を述べ合った。 オ幹部職員等による原告の処遇についての検討及び原告に対する通告等F及び幹部職員は,6月5日午前,原告の処遇について話し合った。 E及びCは,同日午後,原告に対し,上記話合いの結果を踏まえ,①Bは原告を懲戒免職処分にしたいと言っている,②Fは原告に対する処分を行う前に自ら辞職すればよいと考えているようである,③被告町としての希望は原告が自ら辞職することである,④本件賦課漏れを原告が意図して生じ を懲戒免職処分にしたいと言っている,②Fは原告に対する処分を行う前に自ら辞職すればよいと考えているようである,③被告町としての希望は原告が自ら辞職することである,④本件賦課漏れを原告が意図して生じさせたことをBやFに対し認めて謝罪した上,2階級降格及び半年程度の減給の処分を受け,配置換えがされることを承諾するのであれば,原告は職員として留まることができる,⑤本件賦課漏れを原告が意図して生じさせたことを否認するのであれば,原告に対して懲戒免職処分をすることになると述べた(以下「本件処遇通告」という。)。これに対し,原告は,このときには,今後の方針について決することができなかった。 原告は,同日,心窩部痛により医院を受診し,急性胃炎と診断されて,治療及び投薬を受けた。 (2) 上記(1)オの認定について被告町は,F及び幹部職員が6月5日に検討した原告に対する処分案,及び,EとCが同日に原告に対して告げた処分案が,いずれも,原告を2階級降格とし,原告の給与を6か月間10分の1減じ,原告に対する配置換えを行うことを内容とするものであったと主張し,B,E及びCはこれに沿う陳述及び証言をする。しかしながら,同日のE及びCと原告との会話内容を録音したテープとその反訳書(甲6の1・2)によれば,原告に告げた処分案の内容について,被告町の主張を採用することができないのは明らかである。 また,上記証拠(甲6の1・2)によれば,Cが,原告に対し,上記(1)オの④に関し,「『うん』と言ってですよ,『うん』と。」と,原告が職員として留まるためには,ある事実を認める必要がある旨の発言をしたと認められ,上記(1)オの⑤に関し,「全部,否定したらば免職ですよ。」と,原告がある事実を否認すれば,原告に対して懲戒免職処分をすることになる旨の発言をしたと認めら を認める必要がある旨の発言をしたと認められ,上記(1)オの⑤に関し,「全部,否定したらば免職ですよ。」と,原告がある事実を否認すれば,原告に対して懲戒免職処分をすることになる旨の発言をしたと認められる。これらの発言のみからは,認め,又は否認する対象となる事実が必ずしもはっきりとしないが,全体の会話の状況からして,その対象は,本件賦課漏れを原告が意図して生じさせたとの事実であると認められる。 (3) 不法行為の成否について前記前提事実と上記(1)の認定事実(以下,併せて「前提事実等」という。)をもとに,幹部職員等の原告に対する不法行為の成否について検討する。 ア本件事情聴取前の段階における幹部職員の認識について前提事実等のとおり,幹部職員が,①地方課から,本件賦課漏れが原告の意図したものであった場合に,懲戒免職処分をすることもあり得るとの回答を得たこと,②本件賦課漏れが生じた原因が,Aにおいて,原告を納税管理人として定めたことにあると考えていたこと,③本件事情聴取において,幹部職員が,主として,地方税法上,Aにおいて,原告を納税管理人として定めることができないにもかかわらず,原告が,納税管理人選任届を提出するという正式な手続を踏むことなしに,自らを納税管理人として定めさせたのではないか,という点を追及したことからすると,幹部職員は,本件事情聴取が行われる前の段階において,原告が,自らを納税管理人として定めることができないことを知りながら,あえて定めさせたと認められる場合には,本件賦課漏れを原告が意図して生じさせたものであったということになり,原告に対し懲戒免職処分をすることができると考えていたと認められる。 しかしながら,前提事実等のとおり,本件賦課漏れが生じたのは,Aが原告を納税管理人と定めていたことだけでなく,被告町に になり,原告に対し懲戒免職処分をすることができると考えていたと認められる。 しかしながら,前提事実等のとおり,本件賦課漏れが生じたのは,Aが原告を納税管理人と定めていたことだけでなく,被告町に所在する不動産を所有していても自らの名義で固定資産税を納付しない者には国保税の資産割部分が賦課されないことになっていたシステムの設定も原因であったのであるから,本件賦課漏れを原告が意図して生じさせたものであるといえるためには,原告が,自らを納税管理人として定めることができないことを知りながら,あえて定めさせただけでなく,上記のシステムの設定の問題を認識していたことも認められなければならなかった。 したがって,上記のような幹部職員の認識は,少なくとも結果的には誤りであったことになる。 イ本件事情聴取について前提事実等のとおり,原告は,本件事情聴取において,幹部職員に対し,①システムに問題があったために本件賦課漏れが生じた可能性があること,②本件賦課漏れと同様に固定資産税の納税に関して納税管理人が定められたために国保税の資産割部分が賦課されていない事例が複数あることを説明した。①の説明は,上記アのとおりの幹部職員の認識の誤りを修正させるに足りるものであったし,②の説明は,原告を含めた歴代の被告町の税務課職員において,納税管理人を定められる場合と定められない場合についての知識が十分でなかった可能性を示すもので,原告が,必ずしも,自らをAに係る納税管理人として定めることができないことを知っていたとはいえないことを窺わせる事情をいうものであったといえるのであって,いずれも重要な説明であったといえる。 にもかかわらず,前提事実等のとおり,幹部職員は,上記のような原告の説明の重要度を看過し,これに対してまともに取り合おうとしなかったのであっ えるのであって,いずれも重要な説明であったといえる。 にもかかわらず,前提事実等のとおり,幹部職員は,上記のような原告の説明の重要度を看過し,これに対してまともに取り合おうとしなかったのであって,この点において,幹部職員が行った本件事情聴取は,不適切又は不十分なものであったといわざるを得ない。 ウ税務課職員らからの事情聴取について上記イのとおり,幹部職員は,本件事情聴取における原告の説明の重要度を看過していた。そのため,前提事実等のとおり,幹部職員は,その直後に行われた税務課職員らからの事情聴取において,システムの設定の問題や,納税管理人を定められる場合と定められない場合について,原告が納税管理人と定められた時期における税務課職員らの知識の有無・程度がどうであったかを詳細に聴取することをしなかった。 このように,幹部職員が行った税務課職員らからの事情聴取も,十分なものでなかったといえる。 エ本件処遇通告について上記イ,ウのとおり,本件事情聴取及び税務課職員らからの事情聴取は,いずれも,本件賦課漏れを原告が意図して生じさせたか否かという点について事実確認をするには不十分なものであって,その結果,被告町も自認するとおり,本件賦課漏れを原告が意図して生じさせたとは認められず,原告に対し懲戒免職処分をするだけの理由があるとはいえなかった。 にもかかわらず,前提事実等のとおり,E及びCは,原告に対し,本件処遇通告をした。なお,本件処遇通告は,F及び幹部職員によって行われた話合いの結果を踏まえてされたものであるから,少なくとも,上記(1)オの③,④,⑤の発言を原告に対してすることは,幹部職員の総意であったといえる。 以上によれば,E及びCは,原告に対し,懲戒免職処分にできない事案であるか,懲戒免職処分相当かどうかの調査 記(1)オの③,④,⑤の発言を原告に対してすることは,幹部職員の総意であったといえる。 以上によれば,E及びCは,原告に対し,懲戒免職処分にできない事案であるか,懲戒免職処分相当かどうかの調査が尽くされていない事案であるにもかかわらず,懲戒免職処分をすることができるかのように述べた上,それを前提として,自白して降格,減給及び配置換えを甘受するか,自ら辞職するかの選択を迫ったといえる。 そうすると,E及びCによる本件処遇通告は,幹部職員の総意のもと,社会的に許容される限度を超えてされた自白及び辞職の要求行為であったといわざるを得ず,被告町の公権力の行使に当たる公務員が,その職務を行うについてした不法行為であるというべきである。 (4) 損害について前提事実等のとおり,原告は,その処遇についての通告を受けた日(6月5日)に,医師から急性胃炎と診断されたのであり,E及びCの上記不法行為によって精神的に追い込まれていたことが窺われる。そして,原告は,翌日(6月6日),本件退職願を提出し,本件処分を受けたのであって,E及びCの上記不法行為を契機として,長年勤めた被告町の職員の地位をも失うこととなったといえる。他方,前提事実等に弁論の全趣旨を併せると,本件賦課漏れを生じさせたこと及びそれを継続させたことについて,原告に落ち度はあること,結局のところ原告が懲戒処分を受けることはなかったことが認められる。 これらの事実を総合的に斟酌すれば,E及びCの上記不法行為によって原告が被った精神的損害を慰謝するに足りる額は100万円とするのが相当である。 3 以上の次第で,請求1に係る訴えは不適法であるから却下することとし,請求2は,原告が,被告町に対し,国家賠償法1条に基づき,慰謝料100万円及びこれに対するE及びCの不法行為の日の後である平成 3 以上の次第で,請求1に係る訴えは不適法であるから却下することとし,請求2は,原告が,被告町に対し,国家賠償法1条に基づき,慰謝料100万円及びこれに対するE及びCの不法行為の日の後である平成14年6月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 前橋地方裁判所民事第2部裁判長裁判官東條宏裁判官櫛橋直幸裁判官大竹敬人

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