令和6(ラ)171 佐賀空港自衛隊駐屯地建設工事差止仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年3月31日 福岡高等裁判所 佐賀地方裁判所 令和5(ヨ)9
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判決文本文14,339 文字)

- 1 - 主文 1 本件各抗告をいずれも棄却する。 2 抗告人らの当審における追加申立てをいずれも却下する。 3 抗告費用は抗告人らの負担とする。 理由 第1 抗告の趣旨 1 原決定を取り消す。 2 相手方は、原決定別紙2物件目録記載1から32までの土地における別紙工事目録1から6までに記載の各工事を続行してはならない(同目録3から6までに記載の各工事については、当審における追加申立分である。)。 第2 事案の概要(以下、特に断らない限り、略語は原決定の例による。) 1 事案の要旨(1) 土地の売買契約、駐屯地新設工事(基本的前提事実・争いがない。)相手方は、佐賀県有明海漁業協同組合(有明海漁協)との間で、令和5年、原決定別紙2物件目録記載1から32までの土地(本件各土地)を買い受け るとの契約を締結した(本件売買)。本件各土地は、佐賀空港に隣接する。 相手方は、本件各土地において、オスプレイの配備を前提に、自衛隊駐屯地新設工事をしている。 (2) 原審における抗告人らの申立て抗告人らは、上記駐屯地新設工事である別紙工事目録1及び2の工事(本 件工事)につき、以下の被保全権利に基づく本件工事の差止請求権を選択的に被保全権利として、本件工事を仮に差し止める仮処分命令を申し立てた。 ア本件各土地の共有持分権に基づく妨害排除請求権又は妨害予防請求権イ人格権に基づく妨害排除請求権又は妨害予防請求権 2 原決定及び各抗告等 原審は、被保全権利の疎明があるとはいえないと判断して、抗告人らの申立 - 2 -てをいずれも却下した。 格権に基づく妨害排除請求権又は妨害予防請求権 2 原決定及び各抗告等 原審は、被保全権利の疎明があるとはいえないと判断して、抗告人らの申立 - 2 -てをいずれも却下した。 抗告人らは、これを不服として各抗告をした上、上記第1の2のとおり、上記駐屯地新設工事である別紙工事目録3から6までの工事(以下「本件追加工事」という。)についても、原審での申立てと同様に、上記各請求権を被保全権利として、同工事を仮に差し止める仮処分命令の追加申立てをした。 本件における主張疎明の相当数は、昭和63年売買により国造搦60ヘクタールの土地の所有権を譲り受けたのが、個々の漁業者であったのか、南川副漁協であったのか、という、事実認定に関するものである。 3 前提事実、主要な争点及び主要な争点に関する当事者の主張の要旨後記4のとおり当審における抗告人らの主張(抗告の理由)を付加するほか は、原決定の「第2 事案の概要等」の2から4までの記載を引用する。 前提事実の要旨は、以下のとおりであり、抗告人らの当審における主張の骨子は、「第3 当裁判所の判断」の該当箇所に記載するとおりである。 (1) 国造干拓造成事業相手方は、昭和30年から昭和47年頃にかけて、有明海の干拓を行い、 本件各土地を含む約240ヘクタールの土地を造成した。この干拓事業を「国造干拓」といい、国造干拓により造成された土地を「国造搦」〔こくぞうがらみ〕という。 佐賀県は、佐賀空港の建設用地とするため、相手方から国造搦を取得した。 本件各土地につき、いずれも昭和48年7月24日付で所有者を佐賀県とす る所有権保存登記がされた。佐賀空港の建設計画は、後に一旦とん挫した。 (2) 昭和56年覚書 から国造搦を取得した。 本件各土地につき、いずれも昭和48年7月24日付で所有者を佐賀県とす る所有権保存登記がされた。佐賀空港の建設計画は、後に一旦とん挫した。 (2) 昭和56年覚書佐賀県知事と南川副漁協組合長理事との間で、昭和56年6月9日、昭和56年覚書が締結された。ここには、「国造干拓建設事業に伴う漁業補償の締結に当たって南川副漁協の漁業権者の入植増反希望者に対して国造干拓の 農地60ヘクタールを配分することについて、」昭和38年申合せ「があつ - 3 -たことを確認する。」との記載がある。 (3) 昭和63年売買佐賀県と南川副漁協は、昭和63年2月10日、本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地につき、売主を佐賀県、買主を南川副漁協とする売買契約を締結した(佐賀県から所有権を承継取得する買主が南川副漁協である のか個々の漁業者であるのかには、争いがある。)。 (4) 本件協議会遅くとも平成元年5月頃までに、本件協議会が組織された。本件協議会は、各会員との間で、本件協定書を取り交わした。そこには、「土地は一括登記をし、会員に持分を配分する。」との記載がある。 また、「上記記名者に」本件協議会の規約(本件協定書)により「国造搦60ha内の持分面積の証として本券を交付する。」と記載された持分証券がある。 (5) 有明海漁協の成立南川副漁協を含む18の漁協は、平成19年4月2日、合併し、有明海漁 協が成立した。後に、相手方との上記1(1)記載の売買契約が締結された。 4 当審における抗告人らの主張(抗告の理由)(争点1〔抗告人らが本件各土地の共有持分権を有するか〕について)(1) 造成地の配分が生活再建措置 1(1)記載の売買契約が締結された。 4 当審における抗告人らの主張(抗告の理由)(争点1〔抗告人らが本件各土地の共有持分権を有するか〕について)(1) 造成地の配分が生活再建措置であることについて公有水面埋立法6条による漁業補償を受ける権利は、漁業協同組合に帰属 する。この漁業補償については、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37年6月閣議決定)が定める算定式に従って、具体的な補償額が算定される。上記要綱による補償は、財産的損害の補償にとどまり、同法による漁業補償等は、漁業者ら個人への補償はされないから(同法6条2項)、漁業協同組合に対する損失補償の配分のみでは、漁業者ら個人が従前の生活 を維持できない事態が想定される。そこで、上記要綱と併せて策定された - 4 -「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の施行について」(昭和37年6月29日閣議了解)では、上記要綱に基づき補償が適正に行われるならば、いわゆる「生活権補償」のような補償項目を別に設ける必要は認められないとしつつも、「公共の利益となる事業の施行に伴い生活の基礎を失うこととなる者がある場合には、必要により、生活再建のため土地又は建物の取得の あっせん及び職業の紹介又は指導の措置を講ずるよう努めるものとする」とされている。 本件では、漁業補償金が公有水面埋立法6条による漁業補償であり、昭和38年申合せに関する造成地の配分は、上記漁業補償とは別個の生活再建措置であり行政措置にすぎず、漁業協同組合ではなく漁業者個人に配分される。 このことは、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」6条において、損失の補償につき、「金銭とともに土地を提供」することは含まれていないこととも整合する。 (2) 分される。 このことは、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」6条において、損失の補償につき、「金銭とともに土地を提供」することは含まれていないこととも整合する。 (2) 配分後の残りの持分や税負担に関する議論等について次の事情によれば、昭和63年売買により南川副漁協が本件各土地を第一 次的に所有したのではなく、本件各土地の持分の配分資格者らがその取得者及び所有者となったことが、明らかである。 ア南川副漁協では、国造搦60ヘクタールの土地(600反)のうち593.5反を有資格者287名に配分した後、残りの6.5反を同漁協の所有とすることができるか否かにつき議論された。 イまた、国造干拓60町歩配分検討委員会では、上記土地について、昭和64年3月までに配分が終わらなければ、税金の問題が生じると指摘されていた。現に、昭和63年12月23日には、各漁協から県税事務所に対し、上記土地の不動産取得税について個人配分するまで待ってほしい旨の陳情がされた。 そして、上記土地の不動産取得税及び固定資産税の負担については、最 - 5 -終的には、配分対象者(配分資格者)の各持分面積で按分負担することで解決が図られた。 (3) 持分割合の表示等について次の事情によれば、個々の漁業者らに対し、物権としての共有持分権が配分されたと理解するのが合理的である。 ア本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の配分では、組合の加入年度、漁業規模及び分家か否か等が考慮され、経営体ごとに点数化がされ、それに基づく格差配分が実施された。その際、経営体ごとの点数をその総計で除した形で持分割合を標記するのではなく、あえて各経営体が保有することになる土地 か否か等が考慮され、経営体ごとに点数化がされ、それに基づく格差配分が実施された。その際、経営体ごとの点数をその総計で除した形で持分割合を標記するのではなく、あえて各経営体が保有することになる土地面積(反数)に換算して表記された。債権的 持分しかなかったのであれば、持分割合を土地面積に換算することは、その権利実体に整合しない。他方、物権的持分の場合、持分割合を土地面積で表示することは、その権利実体に整合的である。 イ上記土地の配分について、土地の位置により評価差があること等を考慮して位置配分を行うことは否定されたが、その代替策として持分を配分 する方針が示された。位置配分は、配分対象者に特定の所有権を認めるものであるから、これに代えて提案された持分の配分は、物権としての共有持分権の配分を指す。 (4) 農地法の許可等について本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地は、国造搦土地改良事業、 すなわち土地改良法に基づく土地改良事業により造成された土地であり、「農業生産基盤の整備を図るため農地を造成して安定した自作の維持および創設をはかりもって農業の振興に寄与すること」を目的として整備されたものであるから、生来的に「耕作の目的に供される土地」であり、農地法の適用を受ける農地である。 佐賀県は、昭和48年3月31日、相手方から国造搦60ヘクタールの土 - 6 -地の譲渡を受け、その後、農業大学校(農業研修学園)及び県営農場用地の土地利用計画に基づいて圃場整備をし、昭和53年4月3日までに工事を完了した。同土地は、遅くとも昭和60年頃までに圃場として整備され、農地として耕作の目的に供された。 農地法3条1項6号は、土地改良法上の交換分合による権利移転について 農 でに工事を完了した。同土地は、遅くとも昭和60年頃までに圃場として整備され、農地として耕作の目的に供された。 農地法3条1項6号は、土地改良法上の交換分合による権利移転について 農業委員会の許可を不要とする。昭和38年申合せは、国造搦60ヘクタールの土地(農地)について、土地改良法に基づく「配分」(同法94条の8)を実質的に実現するための手段として、土地改良法を「準用」して行われたから、交換分合に準じる抗告人ら個人への権利移転であり、上記条項に照らし、農地法上の許可も不要である。 他方、南川副漁協は、昭和63年当時の農地法によって農地の所有権を取得することが認められた農業生産法人には該当しない。昭和63年売買について、契約当事者が南川副漁協であった場合は、農地法3条の許可がされておらず、法律上の効力が生じない。 同売買では、南川副漁協は、登記名義面における管理の委託を受けたもの であり、実体上の所有権者となったのではない。同売買の実質的な当事者は、「南川副漁協の漁業権者の入植増反希望者」であった。 (争点2〔人格権に基づく差止請求の可否〕について)本件駐屯地が建設されれば、相手国にとって攻撃目標となり、抗告人らが主張している戦争に巻き込まれた場合の被害が生じる具体的危険がある。 平常時においても、オスプレイの欠陥については、相手方が事故原因を含めて明らかにしないから、欠陥があると推認すべきである。特に、令和5年11月29日には、オスプレイが墜落して乗員全員が死亡する事故が発生した。約3か月というごく短期間の飛行停止が実施されただけで、事故原因や再発防止策が住民に十分説明されたとはいえない。なお、オスプレイの重大事故の発生 率は、米空軍の全有人機の平均と比 が発生した。約3か月というごく短期間の飛行停止が実施されただけで、事故原因や再発防止策が住民に十分説明されたとはいえない。なお、オスプレイの重大事故の発生 率は、米空軍の全有人機の平均と比べて、著しく高い。 - 7 -第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、抗告人らの申立ては、追加申立てを含め、被保全権利の疎明があるとはいえないから、いずれも却下するのが相当であると判断する。その理由については、次のとおり補正し、後記2のとおり当審における抗告人らの主張(抗告の理由)に対する判断を付加するほかは、原決定の「第3 当裁判所 の判断」の記載を引用する。抗告人らの持分権取得に関しては、概要、昭和63年売買の契約書上の買主が南川副漁協であり、登記も南川副漁協所有とされたなど、昭和63年売買の買主が南川副漁協であることを基礎づける有力な事実があり、抗告人らの共有持分権取得を基礎付け得る事実が相当数あるものの、持分の譲渡や死亡時の移転先に制約があるなどのことから、漁業者ら個人が昭 和63年売買により共有持分権を取得したとの判断には至らない。 (1) 原決定16頁10行目の「合意内容の履行として」を「合意内容を踏まえて」に改める。 (2) 原決定16頁18行目から19行目にかけて及び18頁18行目から19行目にかけての「昭和38年申合せの履行として行われたという事実から、」 を「昭和38年申合せを踏まえたものであることを考慮しても、」に、それぞれ改める。 (3) 原決定16頁22行目の「昭和38年申合せに基づく」を「昭和38年申合せを踏まえた」に改める。 (4) 原決定21頁7行目の「債権者らが」を「相手方が」に改める。 2 当審における抗告人らの主張(抗告の理由)に対する判断(1) 造成地 和38年申合せを踏まえた」に改める。 (4) 原決定21頁7行目の「債権者らが」を「相手方が」に改める。 2 当審における抗告人らの主張(抗告の理由)に対する判断(1) 造成地の配分が生活再建措置であることについてア抗告人らの主張の骨子昭和38年申合せに関する造成地の配分は、南川副漁協に対する漁業補償とは別個の、行政措置としての生活再建措置であり、配分は、漁業者個 人に対して行われた。 - 8 -イ掲記の疎明資料及び審尋の全趣旨により一応認められる事実(ア) 昭和56年4月の佐賀県議会空港対策特別委員会において、次の旨の発言がされた。 a 当時の佐賀県農林部長の発言昭和38年頃の漁業補償の約束については、古いことで定かでない 面があるが、75ヘクタールについては、当時漁業補償をしたほかに、漁家の生活再建の面もあり、金額だけでは妥結できずに、干拓ができた場合の入植増反については、優先的に、75町歩について漁家に対し配慮するという約束がされていたと聞いている。(甲41)b 当時の佐賀県知事の発言 (a) 同知事は、昭和38年頃、佐賀県農林部長の立場にあり、そのころ、国造干拓に関し、農林水産省の農地局長から、漁業補償を適切にするよう通達を受けていた。(甲41)(b) 国造干拓に関し、8回の漁業補償に関する会議がされ、その結果、一定の漁業補償金の支払のほかに、南川副漁協に60町歩、早津江 漁協に15町歩をやるということになった。広江漁協及び大詫間漁協も、漁業補償金と同時に農地を配分することを約した。(甲41)(イ) 昭和56年7月7日の佐賀県総務委員会において、当時の佐賀県知事は、次の旨を答弁した。 なった。広江漁協及び大詫間漁協も、漁業補償金と同時に農地を配分することを約した。(甲41)(イ) 昭和56年7月7日の佐賀県総務委員会において、当時の佐賀県知事は、次の旨を答弁した。 国造干拓事業の漁業補償に関し、昭和36年頃から関係する4つの漁 協と折衝がされ、これらの漁協の補償金の申出額は、1億5000万円ぐらいであったが、農林水産省から了解を得ていた額は、6000万円にとどまっていた。そして、農林水産省からは、漁業補償金を減額するため造成農地を漁協に配分してよい旨の通知が来て、9000万円の漁業補償金と併せて上記配分をする話となった。(甲42) (ウ) 昭和60年12月の佐賀県議会(定例会)において、当時の佐賀県知 - 9 -事は、次の旨を答弁した。 南川副と早津江については、国造干拓造成当時から漁業補償をくれという話があった。空港用地として県が購入した後、干拓の漁業補償には金銭補償だけでなく、できた農地を漁業者にやるよう農地局長通達も来た。そのような中、空港をするために、南川副、早津江に75ヘクター ルを払い下げ、広江、大詫間からも強い要請があったので土地を配分するようにした。(乙30)(エ) 昭和63年2月の佐賀県議会(定例会)において、当時の佐賀県知事は、次の旨を答弁した(乙31)。 国造干拓の配分については、昭和37年から昭和38年にかけて、2 40ヘクタールを造成するために、有明海漁連と関係4漁協との間で、漁業補償の交渉がおよそ10回か11回行われた。その際、南川副漁協に60ヘクタール、早津江漁協に15ヘクタールを配分するということで話合いがされた。また、大詫間漁協、広江漁協からは、75ヘクタールと同様に、両漁協にも そ10回か11回行われた。その際、南川副漁協に60ヘクタール、早津江漁協に15ヘクタールを配分するということで話合いがされた。また、大詫間漁協、広江漁協からは、75ヘクタールと同様に、両漁協にも当初から配分すべきとの強い要求がされていた。 昭和44年に佐賀県が佐賀空港の建設を表明して以来、約19年が経過したが、この間一貫して、この土地配分の解決こそが先決であるという強い要求がされ、漁業関係者との交渉の最大のネックとなっていた。 佐賀県としては、漁業関係者との話合いを進めるには、この土地配分を空港(建設)以前の事案として解決する必要があると判断して、関係 4漁協と覚書又は協定書を締結した。 そして、昭和63年2月10日、関係4漁協とそれぞれ土地売買の仮契約を結び、議会に県有財産の処分議案を提出し、審議を求めた。 国造干拓地のうち4漁協に配分する場所の大部分は、農林水産省から購入した価格よりも配分する価格が10アール当たり5万円ほど安くな っているが、これは、漁業関係者と話し合い、干拓地への増反というこ - 10 -とを考慮して、土地改良法を準用して、農林水産省が増反者に払い下げる価格、10アール当たり25万円に圃場整備事業に対する負担金相当額、10アール当たり2万3000円を加えた価格で締結した。 (オ) 南川副漁協の昭和63年6月27日の理事会議事録に添付された「国造干拓60町歩配分に関する意識調査表」には、次の旨が記載されてい る。(甲104)南川副漁協に配分された国造干拓内60町歩は、代行国造干拓建設事業に伴う漁業補償(干拓内の区画漁業権、共同漁業権の消滅並びにその影響等)に充てられたものである。 (カ) 南川副漁協 南川副漁協に配分された国造干拓内60町歩は、代行国造干拓建設事業に伴う漁業補償(干拓内の区画漁業権、共同漁業権の消滅並びにその影響等)に充てられたものである。 (カ) 南川副漁協では、上記(オ)の理事会を含め、国造干拓内の同漁協に配 分された60ヘクタールの配分に関する検討が続けられ、昭和63年7月18日の理事会では、配分に格差を設け、経営体、漁業規模、漁業依存度、加入年月日の4項目で格差をつけることや、配分はするが持分を決めて共同登記とし、位置は決めない、等の意見が出た。(甲104~132) 平成元年5月2日の南川副漁協の臨時総会では、本件協議会(「国造搦60ha管理運営委員会」)の規約(案)及び本件協定書(案)について出席組合員全員の賛成により可決されたほか、国造搦60町歩の配分の件が議案とされ、同全員の賛成により原案どおり可決された。その臨時総会の議事録には、その配分案に関する資料が添付されていた。そ の中には、上記配分の基本事項について、平和搦40ヘクタール及び補償金6000万円の配分と国造干拓60ヘクタールの配分とは切り離して行うこと、配分は経営体単位とし正組合員であること、組合加入年、本家・分家に格差をつけること、漁業規模、経営体の実態、漁業依存度等も考慮すること、等が記載された書面があった。また、配分のための 評価基準表や具体的な評価点数の区分や具体的な配分についてまとめた - 11 -表も添付されていた。上記評価基準表には、本家や昭和27年度までに組合加入の経営体に、分家や昭和28年度以降に加入した経営体よりも高い点数を配分し、漁業規模に関し、海苔養殖枚数により6つに区分し、枚数が少ないほど評価点数を減じることなどが記されていた。また、この臨時総会では 体に、分家や昭和28年度以降に加入した経営体よりも高い点数を配分し、漁業規模に関し、海苔養殖枚数により6つに区分し、枚数が少ないほど評価点数を減じることなどが記されていた。また、この臨時総会では、原案どおりに配分する場合、6反5畝(6.5反)が 残存するが、これについては組合が管理し、利用について水産振興のために使うということについても、議案に諮られ、出席組合員全員の賛成により可決された。(甲123)(キ) 平成元年12月16日、本件協議会の臨時総会が開催された。そこでは、国造搦60町歩の登記につき組合登記のままとすること(本件協定 書で配分資格者に持分を配分するが、個人登記はしないとされていること等を理由とするもの。)、組合登記とした場合は不動産取得税及び固定資産税は持分面積で按分して配分資格者が負担すること、持分証券発行を承認することが、いずれも出席会員全員の賛成により可決された。 (甲132) (ク) 平成元年頃以降に本件協議会(会長)と各配分資格者の間で作成された本件協定書では、「土地は一括登記をし、会員に持分を配分する。」とされていたほか、「国造搦60haの有効活用のため個人使用(耕作等)は行わず、その管理運営については管理運営協議会が当たる。」、「配分を受けた者は、必ず協議会に加入するものとする。」、「土地の 耕作は、南川副干拓共同営農組合に賃貸委託、或いは協議会で行う。」、「収益は、配分面積に応じて分配する。」、「土地の相続は会員内(親族に限る。)とし、また譲渡は協議会及び協議会会員に限り行い、事前に協議会、役員会もしくは小委員会の承認を得るものとする。」、などとされている。(甲11) ウ検討 - 12 -上記イを踏まえると、昭和63年売 に限り行い、事前に協議会、役員会もしくは小委員会の承認を得るものとする。」、などとされている。(甲11) ウ検討 - 12 -上記イを踏まえると、昭和63年売買について、佐賀県は、契約の相手方(買主)は、売買契約書(甲8)のとおり南川副漁協であると認識していたことが一応認められる。他方、上記イ(オ)によれば、南川副漁協においても、その契約当事者(買主)は同漁協であるとの認識であったことが一応認められる。 また、昭和63年6月以降の上記イ(オ)から(ク)までの経過に照らすと、それよりも前にされた昭和63年売買の時点で、国造搦60ヘクタールの土地について、各配分資格者の「配分」が定まっていなかったことが認められる。 上記イ(ク)のとおり、本件協定書をみても、個々の組合員(配分資格者) には本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地につき直接耕作等の使用の権原はなく、その登記名義は漁協名義とされ、その使用方法についても、営農組合に賃貸委託あるいは本件協議会が行うとされ、配分資格者に直接使用方法を定める権限は認められていない。さらに、同資格者には配分された「持分」の譲渡や死亡時の承継についても取得できる 者等に制約があり(民法上、物権の内容は、法定されており、物権としての共有持分権には上記のような制約はない。)、基本的には上記土地からの収益を受領する権利が認められているにとどまる。 このようにみると、個々の組合員(配分資格者)が得たものは、南川副漁協に対して共有持分権者に準じた使用収益を主張する債権的権利とは いえても、本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の物権としての共有持分権であるとは認められない。 そして、上記イ(ア)から 有持分権者に準じた使用収益を主張する債権的権利とは いえても、本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の物権としての共有持分権であるとは認められない。 そして、上記イ(ア)から(オ)までによれば、佐賀県及び南川副漁協のいずれにおいても、昭和63年売買に関する国造搦60ヘクタールの土地の同漁協への配分は、基本的には国造干拓地内の区画漁業権、共同漁業権 の消滅に対する補償の性質を有し、漁業補償金の支払に加えて、同補償 - 13 -金を減額するために実施されたものであり、このことを双方が認識していたことが推認される。なお、上記イ(ア)によれば、上記配分に関し、漁家の生活再建の要素が考慮された可能性があるが、そうであったとしても、上記補償の基本的性質を左右するものとは解されない。 また、上記イ(カ)のとおり、国造搦60ヘクタールの土地についての各 配分資格者への具体的な収益の配分は、組合加入年、本家・分家の別、漁業規模、経営体の実態、漁業依存度等を考慮の上、格差をつけて配分されることとなった。そのような格差のある配分において、上記の各要素が考慮されたことは、上記土地の南川副漁協への配分が消滅する(共同)漁業権に対する補償の性質を有することと整合する。 以上によれば、上記土地の配分が南川副漁協に対する漁業補償金の支払による漁業権等の補償とは別個の性質を有し個人に対する生活再建措置(行政措置)として行われた、などと認めることはできない。「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(甲95)6条が、金銭補償と併せて金銭以外の方法での給付による補償を禁じる趣旨とも解されない。 したがって、抗告人らの上記主張は採用することができない。 (2) 配分後の残部分や税負担に関す が、金銭補償と併せて金銭以外の方法での給付による補償を禁じる趣旨とも解されない。 したがって、抗告人らの上記主張は採用することができない。 (2) 配分後の残部分や税負担に関する議論等についてア抗告人らの主張の骨子南川副漁協では、国造搦60ヘクタールの土地(600反)のうち、有資格者に配分した後の残りの6.5反を同漁協の所有とすることができ るか否かが議事とされたほか、同土地の取得税等につき配分資格者らの按分負担とされた。これらのことは、同土地の配分資格者らがその取得者及び所有者となったから生じた。 イ検討確かに、上記(1)イ(カ)のとおり、平成元年5月2日の南川副漁協の臨時 総会において、国造干拓60ヘクタールの土地(600反)につき、原 - 14 -案どおり個々の配分資格者に配分した後に残存する6.5反を、同漁協が管理し、利用について水産振興のために使うということについても、議案に諮られ、出席組合員全員の賛成により可決された。しかし、これは、本件協定書により配分資格者らが配分面積に応じて収益の分配を受ける権利を有する(上記(1)イ(ク))のに対し、同漁協の臨時総会におい て、その例外的な処理をすることを定めたものとみることができる。 また、疎明資料(甲113)によれば、南川副漁協では、昭和63年12月頃、上記土地に関する取得税につき、県税事務所に対し、個人配分が終わるまで支払の猶予を求めたことが一応認められる。平成元年12月16日、本件協議会の臨時総会が開催され、国造搦60町歩の登記に つき組合登記のままとするが、不動産取得税及び固定資産税は持分面積で按分して配分資格者らが負担することが、いずれも出席会員全員の賛成により可決 会の臨時総会が開催され、国造搦60町歩の登記に つき組合登記のままとするが、不動産取得税及び固定資産税は持分面積で按分して配分資格者らが負担することが、いずれも出席会員全員の賛成により可決された(上記(1)イ(キ))。しかし、これは、本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地を南川副漁協の所有としつつも、配分資格者らが同土地に関する収益の分配を受ける権利を得ることとの関係 で、上記両税の負担を配分資格者らが持分面積(収益を受ける権利の割合)で按分することに応じたとみることができる。 このように、上記の残余の6.5反の扱いや税の負担に関する事情は、必ずしも南川副漁協が昭和63年売買により上記土地を取得して所有者となったことと矛盾するものではなく、上記各事情を根拠に配分資格者 らが同土地の取得者及び所有者となったと認めることは、相当でない。 (3) 持分割合の表示等についてア抗告人らの主張の骨子国造搦60ヘクタールの土地について、配分資格者らに対し、格差配分が実施された上、同人らの持分割合は土地面積に換算して表記されたこと などから、同人らには物権としての共有持分権が配分されたといえる。 - 15 -イ検討しかし、上記(1)のとおり、国造搦60ヘクタールの土地については、個々の配分資格者には直接の使用の権原はなく、その登記名義は漁協名義とされ、使用方法についても配分資格者に直接使用方法を定める権限は認められず、「持分」の処分についても制約があり、上記土地からの 収益を受領する権利があるにとどまることに照らすと、配分資格者らが上記土地の物権としての共有持分権を取得したと認めることはできない。 同(1)のとおり、各配分資格者への具体的な収益の配分は、組合加入年、 益を受領する権利があるにとどまることに照らすと、配分資格者らが上記土地の物権としての共有持分権を取得したと認めることはできない。 同(1)のとおり、各配分資格者への具体的な収益の配分は、組合加入年、本家・分家の別、漁業規模、経営体の実態、漁業依存度等を考慮の上、格差をつけて配分されたが、これらの要素が考慮されたことは、上記土 地の配分が、消滅する(共同)漁業権に対する補償の性質を有することに合致するものであり、むしろ上記土地を上記補償として南川副漁協が取得したことを裏付けるものといえる。持分割合が土地面積で表示されていること(原決定第2の2(7)イ)についても、これが個別の土地についての面積を表示するのでないことは位置配分を否定している抗告人ら も争っていないと解され、これは、収益分配の計算に関し、60ヘクタールに対する分配割合について地積の形で表示したにすぎないといえる。 このように、上記の持分割合等についての事情を根拠に配分資格者らが国造搦60ヘクタールの土地の物権としての共有持分権を取得したと認めることは、相当でない。 (4) 農地法の許可等についてア抗告人らの主張の骨子国造搦60ヘクタールの土地は農地法の適用を受ける農地であるが、抗告人らは、土地改良法94条に準じた本件各土地の分配を受けたから、農地法3条1項6号に準じ、農地法上の許可を要しない。契約当事者が南川 副漁協であれば、農地法上の許可がなく、南川副漁協は、所有権を取得し - 16 -得ない。この点からも、昭和63年売買の買主は、漁業者ら個人である。 イ検討仮に、昭和63年売買の買主が漁業者ら個人であったとしても、同人らが農地法3条所定の許可を受けたとの主張立証はない。そうであれば、本件各土地の 買の買主は、漁業者ら個人である。 イ検討仮に、昭和63年売買の買主が漁業者ら個人であったとしても、同人らが農地法3条所定の許可を受けたとの主張立証はない。そうであれば、本件各土地の所有権は昭和63年売買により佐賀県から漁業者ら個人に移転 せず、抗告人らは、本件各土地の共有持分権を有効に取得していないこととなるから、共有持分権に基づく差止請求権も取得しない。農地法3条1項6号に関する抗告人らの主張は、昭和63年売買は土地改良法94条の8による分配とは認め得ず、これまで説示した以上には、昭和38年申合せの「配分」の厳密な内容を一応も認め得る資料はないから、農地法3条 1項6号の適用も準用も認める根拠がなく、採用できない。 農地性に関する抗告人らの主張は、昭和63年売買の買主が個人であることも被保全権利も基礎づけない。 (5) 争点2(人格権に基づく差止請求の可否)について引用した原決定第3の2のとおりである。 日本国と諸外国との間で戦争が勃発し、あるいはオスプレイが墜落等して、抗告人らの生命・身体が侵害される具体的危険性は、疎明されているとはいえない。確かに、疎明資料(甲85~87、100、134、135、疎乙32、33)によれば、令和5年11月29日に、米軍が保有するオスプレイが、プロップローターギアボックス(PRGB)の不具合により墜落し、 乗員8名が全員死亡する、という事故が発生したこと、令和6年3月以後オスプレイの使用が再開されたことが、一応認められる。しかし、その後特段の事故が発生したとの資料はない。現段階の疎明資料による限り、上記具体的危険性は、認められない。 3 結語 以上によれば、本件の主張及び疎明資料を前提とする限り、漁業者ら個人が 段の事故が発生したとの資料はない。現段階の疎明資料による限り、上記具体的危険性は、認められない。 3 結語 以上によれば、本件の主張及び疎明資料を前提とする限り、漁業者ら個人が - 17 -昭和63年売買により本件各土地の共有持分権を取得したこと及び抗告人らに生命身体への具体的危険があることを一応も認めることができず、被保全権利の疎明があるとはいえない。抗告人らは他にも種々主張するが、これらは、これまでの説示に照らし、本件の結論を左右しない。 よって、原決定は相当であり、本件各抗告及び抗告人らの当審における追加 申立てをそれぞれ棄却及び却下することとして、主文のとおり決定する。 令和7年3月31日福岡高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官久留島群一 裁判官秋本昌彦 裁判官山下隼人

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