- 1 -主文 被告は,原告Aに対し,金55万円及びこれに対する平成14年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,金22万円及びこれに対する平成14年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用はこれを6分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告Aに対し,金220万円及びこれに対する平成14年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,金220万円及びこれに対する平成14年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 本件は,(1)ア原告Aが,その夫である原告Bを刑事被告人とする刑事裁判の係属中に,検察官甲(以下「甲検事」という。)から検察庁に呼出しを受け,甲検事から,原告Bに対し起訴事実を認めて謝罪するよう伝言し説得することを強要されイ原告Bが,原告Aから,上記甲検事の発言を伝えられたことによって,原告らが,その人格権を侵害されたとして,被告に対して,国家賠償法1条1項に基づいて,(2)ア原告Aについては,220万円及び甲検事による(1)アの不法行為が行われた日の翌日である平成14年11月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,- 2 -イ原告Bについては,220万円及び原告Aが原告Bに甲検事の発言を伝えた日の翌日である平成14年11月8日から支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 争いのない事実等(証拠を付さない事実は,当事者間に争いがない。)(1)原告Bは,平成14年7月3日,乙(当 ら支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 争いのない事実等(証拠を付さない事実は,当事者間に争いがない。)(1)原告Bは,平成14年7月3日,乙(当時10歳)に対する強制わいせつの被疑事件(以下「本件被疑事件」という。)で逮捕され,引き続き本件被疑事件で勾留され,この際,刑事訴訟法第39条1項所定の者以外の者との接見等を禁ずる決定がなされた。 本件被疑事件の被疑事実の要旨は,原告Bが,平成14年4月12日,原告Bが卓球の指導をしていた生徒である乙にわいせつな行為に及んだというものである。 原告Bは,平成14年7月24日,高知地方裁判所に対し,強制わいせつ罪により起訴(公判請求)された(以下「本件被告事件」という。)。 原告Bは,捜査,公判を通じて上記犯行を否認した。 原告Bは,本件被告事件の第一審判決において,公訴事実の一部が認められて有罪(懲役8月,執行猶予3年)となったものの,平成16年6月15日,高松高等裁判所での控訴審判決において,無罪となり,その後同判決は確定した。 (2)甲検事は,平成14年7月当時,高知地方検察庁の検事であり,本件被疑事件の主任検察官として捜査を担当し,起訴後は本件被告事件の主任検察官として第一審の公判を担当した。 (3)同年11月5日,本件被告事件の第3回公判期日において,本件被疑事件及び本件被告事件の被害者である乙の両親の証人尋問が行われたことにより検察官立証が終了し,第4回公判期日においては,被告人質問が予定されていた。 - 3 -甲検事は,同年11月5日(第3回公判期日終了後),原告Aに電話をかけて,同月6日午前10時に高知地方検察庁に来庁されたい旨を原告Aに告げた(甲検事の同行為を以下「本件呼出し」という。)。 (4)そして,甲検事は,同月6日 第3回公判期日終了後),原告Aに電話をかけて,同月6日午前10時に高知地方検察庁に来庁されたい旨を原告Aに告げた(甲検事の同行為を以下「本件呼出し」という。)。 (4)そして,甲検事は,同月6日午前10時ころから約20分間,高知地方検察庁において,原告Aと面談を行った(以下「本件面談」という。)。 原告Aは,本件面談に際して,携帯したテープレコーダーで甲検事の発言(以下「本件発言行為」という。)を録音した。 (5)本件面談における,甲検事の発言内容は,おおむね別紙甲検事発言内容一覧表(以下「別表」という。)のとおりである(甲7,8,乙1)。 争点 (1)甲検事の本件発言行為が,国家賠償法上の違法行為となるか。 (2)損害額 争点についての原告らの主張(1)争点(1)についてア原告Aについて甲検事は,原告Bに自白をして謝罪するよう伝言し説得させる目的で原告Aを呼び出し,原告Bに自白して謝罪するよう伝言し説得するよう強要した。このことは下記のとおり,甲検事の別表記載1ないし8の各発言からも明らかである。 この点,被告は,後記5(1)ア(ア)において,甲検事が原告Aの証人尋問請求の必要性を判断するために,本件面談を行ったと主張する。しかし,別表記載1及び3の発言によれば,甲検事は,原告Bが有罪になることを確信していたといえるのであり,殊更に原告Aの証人尋問請求をする必要はなかったものである。また,甲検事の手持ち証拠には,原告Aの平成14年7月8日付けの警察官調書があったのであり,これを読めば原告Aが原告Bの無実を確信しており,検察官に対する敵性証人となることは明らか- 4 -である。これらの事情からすれば,甲検事において,本件呼出し当時,原告Aの証人尋問請求の必要性を判断する必要はそもそもなかったといえる。 (ア)別表 官に対する敵性証人となることは明らか- 4 -である。これらの事情からすれば,甲検事において,本件呼出し当時,原告Aの証人尋問請求の必要性を判断する必要はそもそもなかったといえる。 (ア)別表記載8の発言は,甲検事が,原告Aに対して,公訴事実について自白し謝罪をするように原告Bに伝え,説得するように直接的に指示をした発言である。 別表記載1ないし7の各発言は,その内容によって以下のとおり,4グループに分類ができ,これらの発言は,原告Aに対し,公訴事実について自白し謝罪をするように原告Bに伝え,説得させるという甲検事の目的を実現させるための発言である。 Aグループ:否認を続ければ有罪となり実刑を免れないが,自白して謝罪すれば実刑を免れるという趣旨の発言。別表記載1,2,5及び7がこれに該当する。 Bグループ:原告Bが無実なわけがないという趣旨の発言。別表記載3及び6がこれに該当する。 Cグループ:自白,謝罪させるべきであると甲検事が考える理由を述べた発言。別表記載5(ただし,出所後原告Bが乙を逆恨みするかもしれないとの部分)がこれに該当する。 Dグループ:自白させるという目的とは関係がないが,違法な発言。 別表記載4がこれに該当する。 (イ)Aグループの発言について別表記載1及び5(ただし,否認したまま判決がでても刑務所に入るだけなので,全く構わないとの部分)の各発言は,判決内容が有罪との認定をし実刑になることが決まっているように述べたものであり,甲検事は原告Aに対して虚偽を述べたといえる。 また,原告Aは,法律的知識を有しない者であるところ,かかる者に夫が実刑判決を受けることを告げることは,原告Aに脅威を与え,- 5 -伝言,説得を強要するものである。 別表記載2及び7の各発言は,原告Bが公訴事実を自白して謝罪すれば実刑を免れる ,かかる者に夫が実刑判決を受けることを告げることは,原告Aに脅威を与え,- 5 -伝言,説得を強要するものである。 別表記載2及び7の各発言は,原告Bが公訴事実を自白して謝罪すれば実刑を免れるとの趣旨を告げるものであり,原告Aに対し,原告Bに伝言し説得することを強要するものである。 このように別表記載1,2,5及び7の各発言は,「原告Bが否認を続ければ有罪となり実刑を免れないが,自白して謝罪すれば実刑を免れる。」という趣旨を告げているものであり,原告Aに対し,否認を撤回して自白し謝罪するよう原告Bを説得せよと強要するものである。 (ウ)Bグループの発言について別表記載3及び6の各発言は,原告Bが無実であるとの原告Aの信念を変えさせ,原告Aをして原告Bに伝言,説得させる目的での発言である。 (エ)Cグループの発言について別表記載5の発言(ただし,原告Bが出所後,乙を逆恨みするかもしれないとの部分。)は,原告Bに自白及び謝罪をさせるべきであると甲検事が考える理由を述べた発言であるが,原告Aをして原告Bに伝言及び説得をさせる目的でなされた発言である。 (オ)Dグループの発言について別表記載4の発言は,原告Bに自白,謝罪させるという甲検事の目的とは関係のない発言である。 しかし,原告Aから「乙側は原告Aの帰高と関係なく事件として届け出た。それは,乙の父親である丙との電話を録音したテープによって分かる。」旨の指摘を受けたのであるから,甲検事は,原告Aの言い分を傾聴し,「テープの内容は覚えていないので,何とも言えない。 既に公判手続に入っているので,テープが無実の証拠と考えるのであれば,弁護人にすぐ話して証拠申請する等の適切な方法を講じてもら- 6 -うようにせよ。」等の助言をすべきであった。しかるに甲検事はかかる助言を行うことなく ので,テープが無実の証拠と考えるのであれば,弁護人にすぐ話して証拠申請する等の適切な方法を講じてもら- 6 -うようにせよ。」等の助言をすべきであった。しかるに甲検事はかかる助言を行うことなく,原告Aの指摘をやみくもに否定した。このような発言には,検察官としてあるべき姿からほど遠い甲検事の姿勢が表れている。 イ原告Bについて甲検事は,原告Aを介して,原告Bに本件被告事件について否認を撤回し,自白の上謝罪するように強要した。すなわち原告Bは,平成14年11月7日,原告Aから,甲検事が「否認しているとここから出られない」,「謝らなければここから出られない」,「認めれば保釈もあるが,認めなければここから出られない」旨述べていると聞かされた。原告Bはこれを聞いて,憤りを覚えるとともに,このままでは有罪で実刑になるのではないかとの不安を抱いた。 ウ甲検事は,上記ア,イのとおり,公判継続中に,原告Bに対して否認を撤回して自白するよう伝えさせ説得させる目的で,原告Aを呼び出して,原告Bに対し否認を撤回して自白するよう伝え説得することを強要した。また,甲検事は,原告Bに対し,原告Aを通じて,否認を撤回して自白することを迫った。 甲検事のかかる行為は,検察官としての客観義務及び公正義務に反するものであり,かつ刑事訴訟法上の大原則である「公判中心主義」にも違反する行為であって,国家賠償法上の違法行為となる。 (2)争点(2)(損害額)について原告Aは,甲検事の本件呼出し及び発言の一連の行為によって,原告Bは,甲検事の原告Aを通じての自白強制行為によって,それぞれ精神的苦痛を被ったものであり,慰謝されるべき額は,それぞれについて200万円が相当である。 そして,本訴にかかる弁護士費用としては,原告らそれぞれにつき上記- 7 -200万円の1 て,それぞれ精神的苦痛を被ったものであり,慰謝されるべき額は,それぞれについて200万円が相当である。 そして,本訴にかかる弁護士費用としては,原告らそれぞれにつき上記- 7 -200万円の1割に当たる20万円が相当である。 争点についての被告の主張(1)争点(1)ア原告Aについて(ア)甲検事の本件呼出し及び本件面談は,検察側による原告Aの証人尋問請求の必要性を判断するためになされたものであり,甲検事には,原告Bに否認を撤回して公判廷で自白するように原告Aに伝言させ説得させる目的はなかった。 すなわち,甲検事は,原告Bの行動に大きな影響を与えていると思われる原告Aの人間性を知りたくて,原告Aと面談をすることを希望していたが,甲検事は原告Aを取り調べたことも,話したこともなかった。甲検事は,原告Aの人間性に触れるとともに証人尋問の必要性を判断すべく,面談をしたいと思った。 ところで,甲検事は,乙及びその家族が,本件被告事件の後難を心配し,不安を感じていたことから,乙及びその家族を保護したいと思い,原告Bが服役後乙及びその家族を逆恨みしたり,原告らが,乙及びその家族について嘘つきである等の吹聴行為をすることを防ぎたいと考えていた。 別表記載1,3,5及び8の各発言は,甲検事の上記心情からなされたものであり,原告Bに自白を強要する目的でなされた発言ではない。 (イ)別表1,5及び7において,甲検事は,判決内容が有罪認定の上実刑となる可能性を指摘するものの,これ以外の可能性を否定したわけではない。別表記載2の発言は,原告Bが,捜査段階で被疑事実を自白さえしていれば起訴されなかったという趣旨の発言ではないし,別表記載2及び7の発言は,原告Bが捜査段階又はそれ以前の段階で仮に容疑を認めていた場合の仮定の話に過ぎない。 - 8 階で被疑事実を自白さえしていれば起訴されなかったという趣旨の発言ではないし,別表記載2及び7の発言は,原告Bが捜査段階又はそれ以前の段階で仮に容疑を認めていた場合の仮定の話に過ぎない。 - 8 -(ウ)別表記載3及び6の発言をもって,甲検事が,原告Aに対して原告Bに自白をするよう伝言,指示する目的の発言であるとはいえないし,原告Bが無実であるとの原告Aの信念を変えさせようとする発言であるとはいえない。 (エ)別表記載5の発言がなされていたとしても,甲検事が原告Aを侮辱したものではない。 国家賠償法上の違法の根拠は当該行為時における通常の公務員の行為規範に照らした職務上の注意義務違反にある。そして,一般に犯罪の加害者が服役後に被害者を逆恨みすることはしばしば見られることである。したがって,原告Bの有罪を信じている甲検事の別表記載5の発言が,その発言時の注意義務に照らして違法とはいえない。 (オ)別表記載4の発言について甲検事が原告Aに対して,「被害届を出したなどという内容はテープに入っていない。」との発言は,「今日被害届を出したということは反訳書に記載されていない。」という趣旨である。 (カ)別紙記載8の発言がなされていたとしても,甲検事が,原告Aに対して,公訴事実について自白し謝罪をするように原告Bに伝え,説得するように指示をしたものではない。 別表記載2の発言は,原告Bが,被疑事実を自白さえすれば裁判にならなかったという趣旨ではない。 (キ)甲検事の本件発言行為は,いずれも原告Aに虚偽を申し向けたものでも侮辱したものでも威迫したものでもなく,これをもって,原告Aに原告Bに自白をするよう伝えて説得させようとしたものでもない。 イ原告Bについて原告Aが,本件発言内容を原告Bに伝えたとしても,そもそも,甲検事が,原告Aに対 ものでもなく,これをもって,原告Aに原告Bに自白をするよう伝えて説得させようとしたものでもない。 イ原告Bについて原告Aが,本件発言内容を原告Bに伝えたとしても,そもそも,甲検事が,原告Aに対して原告Bに自白をするよう伝えて説得するよう指示した- 9 -のではない以上,甲検事の本件発言行為には,原告Bに対する何らの違法もない。 ウ以上のとおり,甲検事の本件発言行為は,原告Aに対しても,原告Bに対しても,何らの違法行為を構成しない。 仮に甲検事に客観義務及び公正義務が存在したとしても,これらの義務は,甲検事をして,原告らに対する関係で個別具体的な職務上の法的義務を負担させるものではないから,その義務違反が原告らに対する違法行為となることはない。 また,原告らの主張する公判中心主義は,公判を刑事訴訟の中枢とするというものであって,本件とは関係がない。仮に,甲検事に同主義違反があったとしても,同主義は制度上の原則であるから,甲検事が,原告らに対する関係で,個別具体的な職務上の法的義務を負担することはないから,同主義違反をもってしても,何らの違法行為を構成することはない。 (2)争点(2)(損害額)について争う。 第3当裁判所の判断 事実関係争いのない事実等に証拠(甲1,2,5ないし13,乙1,2,原告A本人,原告B本人,甲証人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 (1)当事者等当事者及び本件被疑事件及び本件被告事件の発生及び結果は,第2・2(1)(2)のとおりである。 (2)本件呼出しに至る経緯とその後の事情平成14年11月5日,本件被告事件の第3回公判期日において,本件被疑事件及び本件被告事件の被害者である乙の両親の証人尋問が行われた- 10 -ことにより検察官立証が終了し,第4回公判期日におい 平成14年11月5日,本件被告事件の第3回公判期日において,本件被疑事件及び本件被告事件の被害者である乙の両親の証人尋問が行われた- 10 -ことにより検察官立証が終了し,第4回公判期日においては,被告人質問が予定されていた。 また,高知地方裁判所は,原告Bについて,起訴後から第2回公判期日直後までの3度にわたり,次回公判期日終了時を終期とする接見等禁止決定をしていたが,第3回公判期日終了後,新たに接見等禁止決定をなすことはせず,接見等が禁止される状況は解消された。 原告Aは,同日の第3回公判期日を傍聴した後,自宅に戻っていた。 甲検事は,原告Aの携帯電話に電話をかけて,同月6日午前10時に高知地方検察庁に来庁されたい旨告げた。原告Aが,甲検事から電話があった旨を,原告Bが卓球の指導をしていたチームの父兄らに伝えると,同父兄らは,「それはちょっとおかしい。分からんから,ちゃんと話を聞いてきいや。後で聞かせて。」と言い,原告Aは,本件面談の後,同父兄らに,本件面談の顛末を報告することとなった。 原告Aは,同月7日,高知地方検察庁に訪れる前に,原告Bが勾留されている高知刑務所を訪れ,原告Bに対し,甲検事から本件呼出しを受けたこと,原告Aは,本件呼出しについて,第3回公判期日における乙の両親の証人尋問を受けて,甲検事が原告Bの無罪の心証を得たのではないかと考えていることを話した。原告Bは,かかる原告Aの憶測を受けて,「何を言われるかわからないから気をつけるように。」と注意をし,翌日に本件面談の結果について報告を受けることとした。 (3)本件面談についてア原告Aは,同月6日午前10時ころに高知地方検察庁を訪問し,甲検事と本件面談を行った。 甲検事は,本件面談の開始段階において,原告Aに対し,原告Bに対する接見禁止処分が解除されているこ についてア原告Aは,同月6日午前10時ころに高知地方検察庁を訪問し,甲検事と本件面談を行った。 甲検事は,本件面談の開始段階において,原告Aに対し,原告Bに対する接見禁止処分が解除されていることを伝え,原告Bに面会に行ったのか否かを尋ね,次いで本題に入ろうとした。 - 11 -原告Aは,甲検事の発言内容を上記父兄に伝える必要があったことから,甲検事の発言をメモに残すべく筆記用具を取り出した。これに対し,甲検事は,「メモをとるほどのことではないですから。」と言って,原告Aがメモを取ることを制した。原告Aは,メモを取ることを断念し,これに代えて,鞄の中の筆入れに収納していたテープレコーダーに,甲検事の発言を録音することとした。 イ(ア)甲検事は,「次に話す時は最後の機会だということです。」と述べたが,原告Aが,その意味を理解できず説明を求めたところ,甲検事は,「法廷で話をするのが,最後で法廷でというかね,きちんと話をするのが最後の機会ということ。」,「裁判官とね,公的な話をするのが最後なんですね。話ができるのが最後の機会なんだということです。」,「事件についてきちんと話ができるのが最後の機会なんだということなんです。」と繰り返し説明した。 そして,甲検事は,これらの説明の後に続けて,原告Aに対し,「意味分かんないですかね。」と投げかけた。 そして,甲検事は,「僕は,はっきり言って,本人が否定したままでいっても,全く構わないです。そうしたら刑務所入るだけなんで。」,「刑務所入って出てきても,これからのことが心配なんですよ。」と発言した。 原告Aが,これに対し,「主人のことを心配して下さっているんですか。」と問うと,甲検事は,「旦那のことを心配しているんじゃないの。乙ちゃんの心配。心配しているの乙ちゃんのことを。」と返答した。 甲検 告Aが,これに対し,「主人のことを心配して下さっているんですか。」と問うと,甲検事は,「旦那のことを心配しているんじゃないの。乙ちゃんの心配。心配しているの乙ちゃんのことを。」と返答した。 甲検事の発言を聞いた原告Aは,乙が何気なく言ったことが発端となって,本件被疑事件及び本件被告事件に発展し,乙と乙の両親が騒動を起こしたとの自己の理解を前提に,自分も乙の心配をしていると- 12 -いう趣旨の発言をしようとしたところ,甲検事は,「心配って,何を心配なんですか。」,「騒動を大きくしてとはどういう意味ですか。」と述べて原告Aの発言を制止した。そして,甲検事は,乙の法廷における供述を指して,「法廷であんなことを子どもが話すわけがないじゃないですか,常識的に考えたら。そのぐらい分からないですかね。」と言って,乙の法廷における供述が信用できるものであると強調した。 (イ)そして,甲検事は,「奥さんとかのそういう態度が,僕,はたから見てるとね,そういう態度が,本人に,本人とはB本人,を苦しめているんだと思いますよ。」と言って,原告Aが原告Bを信じることで,原告Bを苦しめているとの発言をした。 原告Aが,何故自分が原告Bを苦しめていることとなるのかを甲検事に尋ねたところ,甲検事は,「だから,やっていないと言ってね,あなたははなから信じて。だって子どもがそういう嘘をつくわけがないじゃないですか,普通に考えたら。」と返答し,原告Aが原告Bを信じていることで,原告Bを苦しめているという趣旨の発言をした。 そして,甲検事は,その根拠として,原告Bは,逮捕当初,本件被疑事実を認めていたのにもかかわらず,原告Aが,大阪から高知へ帰ってくるや否や,その供述態度を翻したと発言した。原告Aは,原告Bは逮捕当初から本件被疑事実を否認していたと考え,そのことは, ,本件被疑事実を認めていたのにもかかわらず,原告Aが,大阪から高知へ帰ってくるや否や,その供述態度を翻したと発言した。原告Aは,原告Bは逮捕当初から本件被疑事実を否認していたと考え,そのことは,原告Aと丙との電話での会話を録音したテープによって証明できると考えた。そこで,原告Aは,甲検事に対し,同テープの存在と内容を主張した。 しかしながら,甲検事は,同テープの存在と内容について真剣に取り合うことはなかった。 (ウ)甲検事は,同テープの存在と内容についての話題を打ち切ると,- 13 -「さっきも言ったように,」と切り出し,「別に裁判否認して,判決出ても全然構わないんですけれどもね,むしろその方が刑務所に入るだけなんで,いいんですけれども。乙ちゃんのこととかがね,これから先のことがすごく心配なんで一言言いたくってね。」と続けて,再び話題を元に戻した。 原告Aが,「私たちも心配してました。後で乙ちゃん,ここまでやったら,学校にも行けなくなるじゃないか。」というと,甲検事は,「そんなことの心配じゃないですよ,今言ってるのは。」,「そんなことの心配じゃなくて,要するに逆恨みされたりするってこと。」と言った。 (エ)さらに甲検事は,乙の供述の信用性を説明するため,乙以外にも,丁という名の女児その他の子どもにも被害申告があると言った。なお,甲検事は,本件被告事件において,丁の供述調書を証拠調べ請求したものの,被告人である原告Bによる同意が得られず,その後,丁の人証請求は行っていない。 甲検事は,丁の証人調べがなされていないことについて,「裁判所が必要ないと判断しているからでしょう。今の証拠でも十分有罪になるからと判断しているからなんですよ,それは,そういうことなんです。」と原告Aに説明し,原告Aが,「裁判所は有罪になるから必要ないと が必要ないと判断しているからでしょう。今の証拠でも十分有罪になるからと判断しているからなんですよ,それは,そういうことなんです。」と原告Aに説明し,原告Aが,「裁判所は有罪になるから必要ないと。」と確認しようとしたのに対して,「当たり前じゃないですか,そんなの。そんなことも弁護士は言わないの。」と返答した。 さらに,甲検事は,原告Aに対し,「起訴した事実に疑いがあれば,裁判所はそれだけ調べる必要があると判断して,他の,他の証人調べたりしますよ。」,「必要ないと判断している」,「今のままで有罪にできるから,十分。」と言い,「そんなことも弁護士言ってくれないの。」と述べた。 - 14 -その上で,甲検事は,「誰が聞いたってね。今まで話聞いたらそれが嘘ついているってね。思わないですよ。普通は常識的な判断すれば。 だから裁判所はそういう判断しているわけ。まあ,それは勝手ですよ。 信じているのは。だけどそういうことがね,本人を苦しめているじゃなかいと思われるって,僕は個人的な意見をいっているだけなんですよ。」と述べ,常識的な判断をすれば,乙が虚偽の供述をしているとは考えられず,裁判所もそのような判断をしており,それにも関わらず原告Aが無実を信じているのは本人を苦しめている旨,原告Aに伝えた。 (オ)そしてさらに,甲検事は,再び「このまま,まず間違いなく刑務所に入る。刑務所に入るというのはね,構わないけどね。本人の意思で入るのは,それはね。」と話題を元に戻し,続けて,「刑務所だってそんな長い,一生は入っているわけでない,ある程度したら出てくるわけでね,そしたら,その後のことが心配だって言うことを僕は言ってるんですよ。このままだったらね。そういうことを少し考えてもらいたいなあと思って話をしてるんですけれども。」と言った。また,甲検事は,「そ ね,そしたら,その後のことが心配だって言うことを僕は言ってるんですよ。このままだったらね。そういうことを少し考えてもらいたいなあと思って話をしてるんですけれども。」と言った。また,甲検事は,「それを話せる最後の機会が,次のね,裁判だということをね,知ってもらいたかったんですね。」とも言った。 これらの甲検事の発言を受けて,原告Aは,自分が原告Bに何かを伝えるように言われていると察知し,甲検事に対し,「私が主人にどういうふうに言えばいいんです。」と問いかけた。 これに対し,甲検事は,「だから,僕にそういうふうに言われたって言えばいいんじゃないですか。」と回答した。さらに甲検事は,「だからね,話をできるのは,裁判の判決が出る前に話をできるのは最後の機会だということ。意味分かんないですかね。このままだったらね,刑務所に入ることになるんですよ。」,「その前に話ができる- 15 -のは最後の機会だということ。」と発言した。 (カ)原告Aが,原告Bに伝えるべき甲検事の発言の内容を確認すべく,「私が主人を信じたばっかりに主人を苦しめているっていうふうに,甲さんがおっしゃいました。で,えっと。」と復唱すると,甲検事は,「本人がやったということは,自分が一番よく分かってるはずじゃないですか。」,「普通に考えたら,もしそういうあらぬ疑いをかけられてさあ,自分のことでないと,そういうごたごたしているときがあったらさあ,奥さんに言うじゃないの,普通は。」,「そういうことがあるけど俺はやってないと。しかし。そんなあらぬ疑いをかけられているんだというじゃない,普通は。」と言って,原告Bが,本件被告事件の犯罪を行ったのは間違いないと力説し,さらに,「しかし,奥さんが出てきて,帰ってきてね,まあ,そういうことになってね,もうこれは面と向かって言えないってこと は。」と言って,原告Bが,本件被告事件の犯罪を行ったのは間違いないと力説し,さらに,「しかし,奥さんが出てきて,帰ってきてね,まあ,そういうことになってね,もうこれは面と向かって言えないってことじゃないの,結局。普通はそう思うの。」と言って,原告Aが,高知に戻って来たことが原因となって,原告Bが本件被告事件の犯罪事実を否認するようになったと断じた。 原告Aは,再び,原告Aと丙との電話による会話について言及し,原告Bが当初から,犯罪事実を否認していたと主張しようとしたが,甲検事は,「別に関係ないでしょう。何が関係するんですか。」と言って,取り合うことはなかった。 (キ)そして,甲検事は,「結局これ,被害届を仮に出したとしてもね,こんなに,こう,あの,何て言うんだろう,こんなに裁判が長く続くこともないしね,通常の,本人が認めてればね,そういうことを言ってるんですよ。」,「正直言って刑務所に入ることもないし,保釈もあったかもしれない。」,「そういうところのことを言っているの。」と言った。 - 16 -原告Aは,この甲検事の発言を聞いて,甲検事が,原告Bに,犯罪事実を認めることを要求しているのだと理解し,「じゃ,早く認めて,あの保釈してもらうように。」と確認した。 これに対し,甲検事は,「いや,そういうことを言ってるわけじゃなくて,」と否定したものの,「まあ結果だけを見ればそうかもしれんけれども。」と続け,さらに「このまま否定してね,これ,これどうせさ,今のまま,だってさ,否認してたらさ,ま,有罪判決が出たって高裁行って争ったりするんじゃないかと思うけどもね,それでもまあ結局,最終的な刑が確定したとして,服役したとしてね,それはそれでいいんだけれども,その後出てきてから,そんなことしてね,出てきてから,乙ちゃんとか,すごい心配に思う かと思うけどもね,それでもまあ結局,最終的な刑が確定したとして,服役したとしてね,それはそれでいいんだけれども,その後出てきてから,そんなことしてね,出てきてから,乙ちゃんとか,すごい心配に思うから,そういうふうに言ってるんですよ,僕は。」と言って,原告Bによる乙に対する逆恨みの危険を説いた。 原告Aは,「あの,主人に認めるように。」と甲検事の意図を問いかけたが,甲検事は,「認めろとは言ってないですよ。認めろとは言ってないけれども,話す機会は最後だと言ってるの。」と言葉を濁した。 原告Aは,甲検事の真意を確認すべく,再び「え,面会に行って,主人に認めるように説得しなさいというように。」と尋ねたが,甲検事は,「説得しろと,そういうことは言ってるわけじゃないですよ,僕は。それは僕としては認める認めないよりも,きちんと謝罪してほしいなと思いますよ,それは。」と述べた。しかし,原告Aに「認めなければ謝罪にはならないでしょ。」と問われた甲検事は,「そう,そうかもしれないですね,前提としてね。」と答え,これに続けて,「僕は言ってるのは,乙ちゃんのことが心配だから,本人が認める認めないじゃなくて,乙ちゃんのことが心配だから,きちんとしゃべら- 17 -せてほしいと。謝罪するためには,当然のことです,認めなくてはならないかもしれないけれども。」と言った。 そして,甲検事は,「まあ僕の言いたいことは言ったんで,もういいです。」と言って,本件面談を終了し,原告Aを退庁させた。 (4)本件面談後の事情原告Aは,平成14年11月7日,高知刑務所に原告Bを訪ね,前日の本件面談の顛末について報告し,甲検事に,次回の公判期日において起訴事実を認めて謝罪するように言われたことを伝えた。 原告Bは,これを聞いて,憤りをおぼえ,原告Aに対し,「やってないことを ,前日の本件面談の顛末について報告し,甲検事に,次回の公判期日において起訴事実を認めて謝罪するように言われたことを伝えた。 原告Bは,これを聞いて,憤りをおぼえ,原告Aに対し,「やってないことを認めるわけにはいかない。裏取引をするわけにはいかない。甲検事に言われたことは,弁護士に相談するように。」という趣旨の返答をした。 原告Aは,原告Bに対し,「こんなことで負けてはいかんで頑張りよ。 私も頑張るから。」と言った。 争点についての判断(1)争点(1)(甲検事の本件発言行為が,国家賠償法上の違法行為となるか。)について。 ア(ア)上記1(3)において認定した事実によれば,甲検事は,本件面談において,次回の第4回公判期日が裁判所に話せる最後の機会であること,また,このまま起訴事実について否認を続けていると有罪となって刑務所に入ることを原告Aに繰り返し伝え,その上で,原告Bが刑務所から出所後,乙を逆恨みすることが心配であり,公判期日で乙に謝罪して欲しいと述べたことが認められる。また,甲検事が,原告Bの謝罪の前提として,起訴事実を認めることが必要であると認識していたことは本件面談の状況から明らかである。 とするならば,甲検事は,本件面談全体を通じて,原告Bが次回の公判期日において,起訴事実を認めた上で,乙に謝罪することを望ん- 18 -でおり,これを原告Aに伝えることで,原告Aに原告Bを説得するよう強く示唆していたということができる。 ところで,甲検事は,本件面談において原告Bの出所後の逆恨みが心配であることを何度も述べており,また当法廷においても逆恨みについて乙の両親が心配していることを伝えることが本件面談の目的であったと供述している。しかし,①被告人の無実を信じている妻に対し,しかも公判が係属している段階で上記のような懸念を告知 いても逆恨みについて乙の両親が心配していることを伝えることが本件面談の目的であったと供述している。しかし,①被告人の無実を信じている妻に対し,しかも公判が係属している段階で上記のような懸念を告知すべき必要性があるとは考え難く,何よりも逆恨みの防止方策としては迂遠で,有効であるとはいえない。また,②甲検事は,これに関連して裁判所に対して話せる最後の機会が次回公判期日であることを強調しているが,逆恨みの防止と裁判所に対する被告人の供述とは基本的に無関係であることはいうまでもなく,公判期日において原告Bが謝罪するならば実刑を免れることができる可能性が大きくはなるだろうが,だからといって原告Bからの逆恨みに対する有力な対策となるものではない。③仮に,逆恨みの防止を目的としているのであれば,甲検事において,ただその点を原告Aに伝えれば良いのであって,殊更に前記認定のような裁判所が有罪の心証を抱いているとか,原告Bが実刑判決を受けるといった不正確な事実を原告Aに提示する必要もない。 そして,④甲検事において,原告Aに対し,第4回公判期日が原告Bが裁判所に発言できる最後の機会であると述べた後,引き続き「意味分かんないですかね。」との含みをもたせた言動がなされている上に,⑤最終的な場面では,原告Aに,「きちんとしゃべらせてほしいと。 謝罪するためには,当然のことです,認めなくてはならないかもしれませんけど。」と言い,これを言い終わると,「僕の言いたいことは言った」として,本件面談を終了させているのである。 以上の事情からすれば,甲検事の本件面談における意図は,逆恨み- 19 -の防止ではなく,量刑の軽減を図るためには起訴事実を認めて謝罪するように,原告Bを説得することを,原告Aに求めるものであったといわざるを得ない。 (イ)また,甲検事は,第 は,逆恨み- 19 -の防止ではなく,量刑の軽減を図るためには起訴事実を認めて謝罪するように,原告Bを説得することを,原告Aに求めるものであったといわざるを得ない。 (イ)また,甲検事は,第4回公判期日が最後の機会であると話すに際して,再三にわたり,原告Bがこのまま起訴事実について否認を続けていると,有罪となって実刑判決を受けるとの言動を繰り返している。 しかし,本件被告事件について裁判所がいかなる心証を抱くかどうかは,裁判所にしか知り得ない事項であり,有罪となるか否かは,甲検事には知り得ない事項である。また,仮に有罪となったとしても,原告Bが実刑判決を受けるか,執行猶予付判決を受けるかどうかも,甲検事には知り得ない事項である。 それにもかかわらず,甲検事は,原告Bが有罪となって実刑判決を受けるとの言動を繰り返しているのであり,原告Aが,法律の専門家ではなく法律及び刑事裁判の仕組みについて明るくないであろうことからすれば,かかる言動は,原告Aに少なくとも不正確な事実を摘示することで,原告Aに,原告Bが否認を貫くことが原告Bにとって不利益であると誤信させるものであるといえる。 さらに,上記1(3)において認定した事実によれば,甲検事は,裁判所は,本件被告事件について有罪であるとの心証を抱いていることから,丁の証人尋問がなされないとの事実を告知している。 しかしながら,甲検事は,本件被告事件において,丁の供述調書についての証拠調べ請求をしたものの,これが不同意とされたのにもかかわらず,丁の証人調べ請求を行った形跡はないから,丁の証人尋問がなされないのは,専ら訴追側の判断によると考えられる。そうであれば,甲検事が,丁の証人尋問がなされないのは裁判所の判断によると述べたのは,少なからぬ誤りを含むものであるといわざるを得ない。 - 20 されないのは,専ら訴追側の判断によると考えられる。そうであれば,甲検事が,丁の証人尋問がなされないのは裁判所の判断によると述べたのは,少なからぬ誤りを含むものであるといわざるを得ない。 - 20 -そして,かような発言がなされることによって,原告Aは,裁判所が,原告Bについて,有罪の心証を抱いていると考えることになりかねず,かかる言動は,原告Aをして,原告Bが否認を貫くことが無駄であり,かえって不利益なものであると誤信させ,ひいては原告Bが起訴事実を認めるかどうかに関しても影響を与えることになり,その判断を誤らせるものになりかねないといえる。 (ウ)さらに,上記1(3)において認定した事実及び証拠(甲8)によれば,甲検事は,本件面談を通じて,しきりに,「普通」,「常識」といった言葉を多用していること,証拠(甲7ないし9)によれば,原告Aの話を強く遮り,甲検事の主張のみを言うことが多いこと,原告Aの言い分に対しても,軽くあしらう態度を見せたことが認められる。 これらの事実からすれば,本件面会において,原告Aは,自己の考えや,依拠する立場が,通常人のものとかけ離れているとか,常識的ではないと指摘されていると思い,不安感を抱くであろうし,原告Aの言い分は甲検事に通じないことや,まともに取り合ってもらえないことを認識し,多大な圧迫感を感じるであろうことを認めることができる。 (エ)以上(ア)ないし(ウ)において検討した事実を総合すれば,本件面談は,原告Aをして,原告Bに起訴事実を自白して乙に謝罪するよう説得させる目的で,少なくとも不正確な事実を提示しながら,しかも,原告Aにおいて,不安感や圧迫感を与えられた状態でなされたものであり,甲検事の本件面談における本件発言行為は,原告Aの人格権を侵害して,原告Bに起訴事実を自白して謝罪するよう 提示しながら,しかも,原告Aにおいて,不安感や圧迫感を与えられた状態でなされたものであり,甲検事の本件面談における本件発言行為は,原告Aの人格権を侵害して,原告Bに起訴事実を自白して謝罪するよう説得するよう要求するものであるといえる。 また,前記認定のとおり,甲検事は原告Aに対し,「だから,僕にそういうふうに言われたって言えばいいんじゃないですか。」と述べ- 21 -ているところ,原告Aは,本件面談の翌日,原告Bに,本件面談の内容と,甲検事の意思を伝えたのであり,この時点において,原告Bは間接的ではあるが違法な方法で自白することを求められたといえる。 したがって,甲検事の本件発言行為は,原告らの人格権を侵害したものと認めることができる。 イこれに対して,被告は,甲検事が本件面会を行った目的として,①原告Aの性格や人物像を把握する,②原告Aの証人尋問請求の必要性を検討する,③第4回公判期日に予定されている原告Bの被告人質問における質問材料を検討する,④逆恨みをされるのではないかという乙の両親の不安を原告らに伝えるといった目的を掲げ,甲検事も当法廷においてこれに沿う供述をする。 しかしながら,まず④の逆恨みをされるのではないかという不安を原告らに伝えるという目的があったとは認め難いことは既に説示したとおりである。 次にその余の①ないし③の点をみるに,本件被告事件のような全面的な否認事件で,敵性証人である原告Aを検察側が証人申請することは考えにくいことであるし,原告Aの性格や人物像を把握して,原告Bの被告人質問における質問材料を検討するには,原告Aの話を十分に聞く必要があると考えられるところ,既に判示したとおり,本件面談においては,甲検事は,自らが言いたいことを話すことに終始し,原告Aの話を真摯に聞くという姿勢には乏しい。しかも,会 原告Aの話を十分に聞く必要があると考えられるところ,既に判示したとおり,本件面談においては,甲検事は,自らが言いたいことを話すことに終始し,原告Aの話を真摯に聞くという姿勢には乏しい。しかも,会話の内容は,次回公判期日に起訴事実を認めて乙側に謝罪することが主眼であったと理解でき,被告が掲げる本件面談の目的のうち上記①ないし③は,その目的に向けた行動がなされていないといわざるを得ない。 したがって,上記被告の主張及び甲検事の供述は,いずれも不合理であって採用することができない。 - 22 -(2)争点(2)(損害額)について。 甲検事の本件発言行為によって,原告Aは,原告Bに起訴事実を認めて謝罪するよう説得することを強要されたのであり,その精神的損害を慰謝するには,50万円が相当である。そして,原告Aが,本件訴訟を提起するに当たり要した弁護士費用は,損害の1割である5万円と算定するのが相当である。 一方,原告Bは,原告Aが甲検事によって,上記説得を強要されたものの,上記1(4)記載のとおり,原告Aは,原告Bに対し,自白をするように説得することはなく,原告Bにおいても起訴事実について否認を撤回し,自白をすることは考えなかったことからすれば,原告Bが,甲検事の本件発言行為に憤りを覚えたとしても,原告Bの精神的損害を慰謝するには20万円が相当である。そして,原告Bが,本件訴訟を提起するに当たり要した弁護士費用は,損害の1割である2万円と算定するのが相当である。 結論 よって,原告らの各請求は,主文第1,2項の限度で理由があるから,これを認容し,その余の請求は理由がないから,いずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文,65条1項本文をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 なお,仮執行宣言は,相当でない ,その余の請求は理由がないから,いずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文,65条1項本文をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 なお,仮執行宣言は,相当でないから付さないこととする。 大阪地方裁判所第24民事部裁判長裁判官森宏司- 23 -裁判官宮本博文裁判官玉野勝則
▼ クリックして全文を表示