令和元年10月30日宣告令和元486号過失運転致死傷被告事件判決 主文 被告人を禁錮3年6か月に処する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成▲年▲月▲日午後2時02分頃,大型乗合自動車(路線バス)を運転し,神戸市a 区b 町c 丁目d 番先の歩行者用信号機が設置された横断歩道北側付近道路において,同所先の停留所から自車を発進させて時速約8キロメートルで進行中,対面信号機の赤色灯火表示に従い自車を停止させるに当たり,ブレーキを的確に操作して安全に停止すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り,制動措置を講じようとして,ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み続けた過失により,自車を右前方に進行させ,これに狼狽して,更にアクセルペダルを強く踏み込んだことから,自車を同方向に暴走させ,折から同横断歩道上を青色信号に従い横断中のA(当時23歳),B(当時20歳),C,D,E及びFに自車前部を衝突させるなどし,よって,別紙被害者一覧表1記載のとおり,前記Aほか1名をそれぞれ死亡させ,別紙被害者一覧表2記載のとおり,前記Cほか3名にそれぞれ傷害を負わせた。 (証拠)省略(法令の適用)罰条被害者ごとにいずれも自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条本文科刑上一罪の処理刑法54条1項前段,10条(犯情の最も重い過失運転致死罪の刑で処断(なお,死亡被害者2名に対する各過失運 転致死罪の犯情の軽重は決することができない。))刑種の選択禁錮刑を選択(量刑の理由)本件は,路線バスの運転手である被告人が業務として路線バスを運転中,対面赤色信号に従って横断歩道手前で停止させるためにブレーキペ ない。))刑種の選択禁錮刑を選択(量刑の理由)本件は,路線バスの運転手である被告人が業務として路線バスを運転中,対面赤色信号に従って横断歩道手前で停止させるためにブレーキペダルを踏むべきところを,誤ってアクセルペダルを踏み続けた結果,路線バスを横断歩道に進入させ,青色信号に従って横断中の歩行者らに次々とバスを衝突させるなどして,2名を死亡させるとともに,4名に傷害を負わせたという事案である。 被告人は,赤色信号に従い,横断歩道手前で自車を停止させるに当たり,ブレーキを的確に操作して安全に停止すべきといった自動車運転手にとって最も基本的かつ重要な注意義務に反したものである。まして,被告人は,多くの人命を預かる路線バスの運転手という職業運転手であり,かつ,ひとたび事故が起これば大きな被害が生じる可能性のある大型バスを運転していたこと,しかも,本件事故現場付近は,交通機関が集中した市街地で,神戸の中でも特に交通量が多く,本件横断歩道も相当の人通りがある上,発進した停留所から横断歩道手前の停止線までは5メートル程度,横断歩道まででも近いところで10メートル程度しか離れておらず,ひとつのミスが大きな事故に直結する場所であって,特に注意深く運転をすることが求められている場所であったことなどからすれば,被告人の過失の程度は相当に重大であって,厳しい非難は免れない。 交通事故は誰もが起こす可能性があるとはいえ,職業運転手である被告人が業務中に起こした事故における過失の程度を一般人のそれと同列に論じることはできない。 これに対し,いずれの被害者も青色信号に従って横断歩道を横断していたところに,横断歩道手前の停留所からいきなりバスが発進進入してきたものであって,避ける術すらなかったことなどからすれば,何らの落ち度も認められ ,いずれの被害者も青色信号に従って横断歩道を横断していたところに,横断歩道手前の停留所からいきなりバスが発進進入してきたものであって,避ける術すらなかったことなどからすれば,何らの落ち度も認められない。 被告人の運転行為により2名の尊い命が失われているところ, 亡くなった2名の 被害者はいずれも,将来に様々な夢や希望を持っていたであろう20歳,23歳という年齢で,大切な家族や友人らを残して突如命を奪われ,その将来を断たれたものであり,その無念の程は察するに余りある。また,このような形で突然大切な家族を失った遺族らの悲しみの深さは筆舌に尽くし難く,遺族らの処罰感情が厳しいのも当然である。 傷害を負った4名の被害者についても,長期のリハビリが必要となるような重篤な傷害を負った者もおり,それぞれに肉体的苦痛が大きいのはもとより,自ら傷害を負うとともに,一緒にいた友人を目の前で失ったり,バスを見ると恐怖を覚えたりするようになるなど精神的苦痛も相当なものというべきである。 以上のとおり,本件の結果は誠に重大である。 これらの事情に加え,安全運転を期待され,また,信頼もされている公共交通機関である市営の路線バスが,白昼多くの人々が行き交う横断歩道に突っ込むといった本件事故が社会に与えた衝撃は大きい上,過失運転致死傷罪等の交通事犯に対する近時の我が国における国民の厳しい刑罰感情に照らしても,被告人の刑事責任は相当に重いといわざるを得ない。 他方で,本件の過失は,無免許,酒気帯び,速度超過といったいわゆる交通三悪や,居眠りや携帯電話の使用などといった違反行為等を伴うものではないことに加え,被告人がバスを停止させようとして誤ってアクセルペダルを踏み込んでから最初の衝突までごくわずかな時間しかなく,また,被告人は,車両が止まらないため, どといった違反行為等を伴うものではないことに加え,被告人がバスを停止させようとして誤ってアクセルペダルを踏み込んでから最初の衝突までごくわずかな時間しかなく,また,被告人は,車両が止まらないため,何とか車両を止めようとしてサイドブレーキのレバーを操作するなど,被告人なりに衝突を避けるための行動をとろうとしていたことがうかがわれ,被告人が,結果の回避が容易であるのに,それを怠って漫然と長い間誤った運転操作を続けたものと評価することはできない。 以上の事情に照らすと,被告人の過失は,重大ではあるものの,特に悪質なものということはできない。 さらに,被告人は,本件バスが中央のガードレールに衝突して停止するや,直ち にバスから降りて被害者らの方に駆け寄り,119番通報するなどしており,本件事故後の事情について,被告人を特に強く非難すべき点は見当たらない。 なお,検察官は,被告人の交通違反歴や神戸市交通局内での処分歴等から被告人の交通法規に対する意識の低さを指摘し,この点で被告人はより厳しい非難を免れない旨主張するところ,確かに,より慎重な運転を考える機会があったとの非難は免れないとしても,処分歴等の具体的な時期,内容等にも照らすと,本件事故が,被告人の交通法規遵守の意識の乏しさが招いたものとみることはできないのであって,それらのことをもって被告人に対する非難の程度を殊更加重するものではない。 そこで,これらの事情を総合して検討するに,前記のとおり,職業運転手である被告人の過失の程度は重大であり,また,生じた結果も大きいことなどからすれば,被告人の刑事責任は相当に重いのであって,本件は,刑の執行を猶予すべきような情状の事案ではなく,実刑はやむを得ない。他方で,本件の過失の内容が特に悪質なものとまではいえないこと,犯行後の事情 れば,被告人の刑事責任は相当に重いのであって,本件は,刑の執行を猶予すべきような情状の事案ではなく,実刑はやむを得ない。他方で,本件の過失の内容が特に悪質なものとまではいえないこと,犯行後の事情も含め,非難の程度を殊更加重すべき事情までは見当たらないことなどの前記諸事情に加え,被告人が本件を認め,公判廷で反省と謝罪の弁を述べていること,自動車保険等により適切な賠償が見込まれること,罰金前科以外に前科が見当たらないこと,被告人が本件によって免許取消の処分を受け,被告人自身も二度と車を運転することはないと述べていることなどの事情を刑期の点で考慮することとし,主文のとおりの刑が相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑・禁錮5年)令和元年10月30日神戸地方裁判所第4刑事部裁判長裁判官川上宏 裁判官市原志都 裁判官宮村開人 被害者一覧表1 番号氏名死因死亡年月日死亡場所 A大動脈峡部裂傷等に起因する急性失血死平成▲年▲月▲日午後 2 時2 分頃神戸市a 区b 町c 丁目d 番付近道路 B胸腹膜腔出血等に起因する急性失血及び急性呼吸障害同日午後4 時3 分頃神戸市内の病院 被害者一覧表2番号氏名傷病名加療期間 C左股関節打撲傷加療約8 日間 D左下腿開放骨折等加療約1 年3か月間 E右上腕・腰部打撲等加療約1 週間 F両膝部打撲等加療約16日間 開放骨折等加療約1年3か月間 E右上腕・腰部打撲等加療約1週間 F両膝部打撲等加療約16日間
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