主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実 第1 申立て 1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 2(1) 本案前の答弁前記1の取消部分にかかる本件訴えを却下する。 (2) 本案の答弁前記1の取消部分にかかる被控訴人らの請求を棄却する。 第2 主張 1 以下のとおり付加,訂正するほか,原判決事実摘示のうちの控訴人に関する部分のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決8頁9行目及び9頁3行目の各「公共」の次にいずれも「的」を加える。 (2) 原判決8頁9行目の「水利」の次に「権等」を加える。 (3) 原判決20頁1行目の「請求を棄却する」を「請求に理由がないと認める」に改める。 2 控訴人の当審における主張(1) 本案前の主張ア地方自治法242条の2第1項4号の非該当性について地方自治法242条の2第1項4号(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下,同様)の請求は財務会計上の行為又は事実についてのみ行うことができるものであるところ,岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区協議会に対し取扱要綱等に則り地元交付金を交付した状態は,財産の管理に当たらず,違法な財務会計上の行為又は事実に該当しない。 イ住民監査請求の前置の違反について被控訴人らは,本訴提起後に主張の変更が続き,当初違法としたことが変わってきており,住民監査請求の前置を満たしていない。 (2) 地元交付金の交付の有効性について岸和田市加守財産区管理者の岸和田市加守財産区協議会に対する地元交付金の交付は違法ではない。なぜならば,地元交付金の交付には公益上の必要性があり,地元交付金の交付は岸和田市加守財産区管理者の裁量権の範囲内の行為であり,岸和田市加守財産区協議会会長が地元交付金の交付を受ける は違法ではない。なぜならば,地元交付金の交付には公益上の必要性があり,地元交付金の交付は岸和田市加守財産区管理者の裁量権の範囲内の行為であり,岸和田市加守財産区協議会会長が地元交付金の交付を受けるために提出した公共事業計画書に沿った事業が計画されているからである。 まして,従前例と同様の手続を踏み,取扱要綱等に沿った経緯の下で交付されているから,重大かつ明白な違法があるということはできない。 (3) 控訴人に対する不当利得の不成立についてア法律上の原因の存在について控訴人は,α池を管理し,かつ水利権を有しており,水利権補償等の代償を受ける権利がある。そして,その水利権等補償が1000万円を下回ることはあり得ない。したがって,控訴人が岸和田市加守財産区協議会,加守耕作者組合,加守実行組合及び同水利部を介して,α池の売却代金の一部である地元交付金から1000万円を受領したことは,法律上の原因のない受益でない。 イ岸和田市加守財産区の損失の不存在について財産区の財産は,当該地区の基本財産としての性格が認められるから,その処分代金の7割は少なくとも地元に交付されるのである。したがって,岸和田市加守財産区には,損失は生じない。 ウ因果関係の不存在について控訴人は,岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区協議会に対し交付した地元交付金を,加守耕作者組合から加守実行組合及び同水利部という第三者を経て,受領したものである。しかも,岸和田市加守財産区協議会,加守耕作者組合及び加守実行組合においては,適法な透明性のある決議がされている。したがって,控訴人の利得と岸和田市加守財産区の損失との間には因果関係がない。 エ控訴人の悪意又は重過失の不存在について金銭が転々としている場合に,最終に金銭を受領した者に不当利得が成立するためには,受 ,控訴人の利得と岸和田市加守財産区の損失との間には因果関係がない。 エ控訴人の悪意又は重過失の不存在について金銭が転々としている場合に,最終に金銭を受領した者に不当利得が成立するためには,受領者に悪意又は重大な過失があることが必要となり,善意で受領したときは,その金銭の取得は不当利得にならない。ところで,控訴人は,1000万円を水利権等補償として受領することについて善意であり,何ら悪意も,重大な過失もない。したがって,不当利得は成立しない。 (4) 相殺について控訴人は,岸和田市加守財産区に対し,α池の売却により1000万円以上の水利権等補償請求権を有する。 よって,控訴人は,平成14年11月19日の当審における本件口頭弁論期日において,上記水利権等補償請求権をもって,岸和田市加守財産区の控訴人に対する本訴請求債権とその対当額において相殺するとの意思表示をした。 理由 1 以下のとおり付加するほか,原判決理由説示のうちの控訴人に関する部分のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決46頁8行目の「三項」,同頁9行目の「一一項」及び同行の「二九六条の五」の次にいずれも「(平成11年法律第87号による改正前のもの)」を加える。 (2) 原判決47頁9行目の「七」の次に「,9」を加える。 2 控訴人の当審における主張に対する判断(1) 本案前の主張についてア地方自治法242条の2第1項4号の該当性の有無について前記1で認定したとおり,被控訴人らの控訴人に対する本訴請求は,岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区協議会に対し地元交付金を一括交付した行為が無効であることを前提に,控訴人が岸和田市加守財産区協議会から加守耕作者組合を経由して交付を受けた金員が不当利得金に当たることを理由に,その全部を岸和 産区協議会に対し地元交付金を一括交付した行為が無効であることを前提に,控訴人が岸和田市加守財産区協議会から加守耕作者組合を経由して交付を受けた金員が不当利得金に当たることを理由に,その全部を岸和田市加守財産区に返還するよう求めているものである(被控訴人らが本訴請求をこのように主張していることは明らかであって,被控訴人らの主張をこのように理解することが弁論主義に違反するものではない。)。したがって,被控訴人らの控訴人に対する本訴請求が,地方自治法242条の2第1項4号の請求に該当することは明らかである。 控訴人の主張は,被控訴人らの控訴人に対する本訴請求を正しく理解せずに,これが前記法条に該当しないと主張するものであって,失当である。 イ住民監査請求の前置の違反の有無について前記1で認定したとおり,被控訴人らは,本訴提起前の住民監査請求において,岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区協議会に対し地元交付金を一括交付した行為が違法,不当であり,岸和田市加守財産区管理者が地元交付金を回収した上,改めて妥当な交付を行うことを求めていたものである。この住民監査請求の内容と,前記アで判示した被控訴人らの控訴人に対する本訴請求の内容とを対比すれば,本訴請求が住民監査請求を経ていることは明らかである。 (2) 地元交付金の交付の有効性について前記1で認定したとおり,岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区協議会に対し地元交付金を一括交付した行為は,形式的には地方自治法232条の2所定の「補助」の体裁が採られているものの,同条所定の「補助」に名を借りた法的根拠に基づかない違法な公金の支出に当たるというべきである。そして,岸和田市加守財産区管理者は,そのような事情を承知した上で地元交付金の交付を行っているから,その違法は重大かつ明白なも を借りた法的根拠に基づかない違法な公金の支出に当たるというべきである。そして,岸和田市加守財産区管理者は,そのような事情を承知した上で地元交付金の交付を行っているから,その違法は重大かつ明白なものであるといわざるを得ない。したがって,岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区協議会に対し地元交付金を一括交付した行為は無効である。 控訴人は,地元交付金の交付には公益上の必要性があるなどの理由を挙げて,これが違法ではないと主張する。しかしながら,地元交付金の交付は,地方自治法232条の2所定の「補助」に名を借りた法的根拠に基づかない違法な公金の支出であるから,同条の「公益上必要がある場合」に当たるか否か,岸和田市加守財産区管理者の裁量権の範囲に含まれるか否かなどについて検討するまでもなく,違法な支出である。仮に地元交付金の交付が同条の「補助」に当たるとしても,地元交付金の交付が同条所定の「公益上必要がある場合」に当たるというためには,地元交付金を交付する相手方及びその使途等が地元交付金を交付するにふさわしいものでなければならない。ところが,岸和田市加守財産区協議会がその目的,権限及び構成に照らして,地元交付金を交付する相手方としてふさわしいというには疑問がある。また,その使途とされる事業内容は,交付当時,具体的に確定していたものではなかった。したがって,地元交付金の交付が「公益上必要がある場合」に当たる,又は岸和田市加守財産区管理者の裁量権の範囲内であるなどと到底認めることはできない。 また,控訴人は,地元交付金の交付が,従前例と同様の手続を踏み,取扱要綱等に沿った経緯の下で交付されているから,重大かつ明白な違法があるということはできないと主張する。しかしながら,上記の違法の内容及び程度,岸和田市加守財産区管理者が上記の違法を承知 を踏み,取扱要綱等に沿った経緯の下で交付されているから,重大かつ明白な違法があるということはできないと主張する。しかしながら,上記の違法の内容及び程度,岸和田市加守財産区管理者が上記の違法を承知の上で地元交付金の交付を行っていたことなどの事情を勘案すれば,控訴人が指摘する事情を考慮しても,上記の違法は重大かつ明白なものであるといわざるを得ない。 (3) 控訴人に対する不当利得の成否についてア法律上の原因の存否について前記1のとおり,控訴人が地元交付金の中から受領した1000万円が,水利権の補償としてであると認めることはできない。したがって,仮に控訴人がα池に関し水利権を有しており,その一部の売却によって水利権の補償を受けることができるとしても,これを理由に上記1000万円の受領を正当化できるものではない。 また,仮に控訴人が上記1000万円を水利権の補償として受領したものであるとしても,後記ウ及びエで判示のとおり,岸和田市加守財産区管理者の岸和田市加守財産区協議会に対する地元交付金21億6020万円の交付が無効であるところ,社会通念上岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区協議会に交付した地元交付金21億6020万円と控訴人が受領した1000万円との間に連結があり,控訴人には悪意又は重大な過失があるから,控訴人は,岸和田市加守財産区に対し,上記1000万円について不当利得返還義務を負うものと解するのが相当である。 イ岸和田市加守財産区の損失の存否について岸和田市加守財産区管理者の岸和田市加守財産区協議会に対する地元交付金の交付が無効である以上,岸和田市加守財産区は,地元交付金相当額の損害を被ったと認めるのが相当である。 控訴人は,岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区の地元に地元交付金相当額を交付しなければならな 無効である以上,岸和田市加守財産区は,地元交付金相当額の損害を被ったと認めるのが相当である。 控訴人は,岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区の地元に地元交付金相当額を交付しなければならないことから,岸和田市加守財産区に損失はないと主張する。しかしながら,岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区の地元に対し地元交付金相当額を交付しなければならないとしても,岸和田市加守財産区協議会に対し交付しなければならないものではないのであるから,岸和田市加守財産区は,岸和田市加守財産区協議会に対し交付した地元交付金相当額の損失を被ったというべきである。 ウ因果関係の存否について前記1で認定のとおり,控訴人が受領した1000万円は,岸和田市加守財産区協議会が岸和田市加守財産区管理者から受領した地元交付金21億6020万円のうち加守耕作者組合に交付した13億6666万2150円の中から交付されたものであるから,社会通念上岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区協議会に交付した地元交付金21億6020万円と控訴人が受領した1000万円との間に連結があるというべきである。したがって,岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区協議会に交付したことによって被った損失21億6020万円と控訴人が受領した利得1000万円との間には,岸和田市加守財産区協議会及び加守耕作者組合等の第三者が介在しているものの,それにもかかわらず,なお,因果関係があると認めることができる。岸和田区加守財産区協議会及び加守耕作者組合等が適法な決議に基づき地元交付金の分配及び交付を行っていることは上記認定の妨げとなるものではない。 エ控訴人の悪意又は重過失の存否について前記1で認定のとおり,控訴人には悪意又は重大な過失があったと認めるのが相当である。 なお,控訴 付を行っていることは上記認定の妨げとなるものではない。 エ控訴人の悪意又は重過失の存否について前記1で認定のとおり,控訴人には悪意又は重大な過失があったと認めるのが相当である。 なお,控訴人は,悪意又は重大な過失はなかったと主張する。しかし,甲第12号証,第18号証の1,乙第36号証の3ないし5,第38号証の1及び2によれば,控訴人は,平成4年2月23日開催された加守財産区有財産α池係耕作者総会において議長を務め,岸和田市加守財産区協議会議員(副会長)を務め,α池係耕作者(加守耕作者組合)結成のための代表世話人を務め,岸和田市加守財産区協議会における加守耕作者組合と各加守町会との間の地元交付金の配分割合を定めるに当たっても,主導的に議論を進めていたことが認められる。これらの事情を勘案すれば,控訴人は,岸和田市加守財産区管理者が岸和田市加守財産区協議会に地元交付金21億6020万円を交付するに至った経緯及び岸和田市加守財産区協議会から加守実行組合を介して控訴人が1000万円を受領するに至った経緯等を十分に認識していたと考えられるから,控訴人には悪意又は重大な過失があったと認めるのが相当である。 (4) 相殺について控訴人が岸和田市加守財産区に対し水利権の補償請求権を有すると認めるに足る証拠はない。 控訴人がα池について水利権を有するとしても,岸和田市加守財産区管理者はα池の一部を売却したにすぎず,これによって直ちに控訴人に水利権の補償をしなければならないとまで解することはできず,その補償を要することを認めるに足る証拠もない。 控訴人は,当審において成立した和解において原審相被告らに水利権の補償をが認められているとして,これを根拠に控訴人にも水利権の補償が認められるべきであると主張する。しかしながら,上記和解等において原審相 人は,当審において成立した和解において原審相被告らに水利権の補償をが認められているとして,これを根拠に控訴人にも水利権の補償が認められるべきであると主張する。しかしながら,上記和解等において原審相被告らが水利権の補償を認められたか否かは明らかではない上,仮にこれが認められているとしても,原審相被告らとは異なる当事者である控訴人についても当然に水利権の補償が認められると解することはできない。 なお,付言すると,控訴人は,1000万円を受領する際に法律上の原因がないことについて悪意又は重大な過失があったのであるから,民法509条の趣旨により,相殺をもって対抗することは許されないというべきである。 3 よって,被控訴人らの本訴請求を認容した原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第5民事部裁判長裁判官太田幸夫裁判官川谷道郎裁判官牧賢二
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