令和7 年7 月10 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和6 年(ワ)第70463 号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和7 年5 月15 日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告に対し、100 万円を支払え。 2 被告は、ボールバルブ埋め込み水栓柱の製造及び販売をしてはならない。 第2 事案の概要等 1 本件は、原告が、被告に対し、被告との共有特許権(以下「本件特許権」といい、その特許を「本件特許」と、特許に係る発明を「本件特許発明」という。)に係る原告と被告との間の共同出願契約(以下「本件契約」という。)に基づく 実施料の支払又はその債務不履行もしくは不法行為に基づく実施料相当額の損害賠償請求(以下「請求1-①」という。)として、また、ボールバルブ埋め込み水栓柱に係る発明(以下「本件出願発明」といい、この発明に係る特許出願を「本件特許出願」という。)に関する被告の行為について、実施料の支払又は被告の債務不履行もしくは不法行為に基づく実施料相当額の損害賠償請求(以 下「請求1-②)という。)として、被告に対し、合計100 億円のうち100 万円の支払を求めると共に、本件特許権及び本件出願発明に伴う権利に基づき、ボールバルブ埋め込み水栓柱の製造及び販売の差止めを求める(以下「請求2」という。)事案である。 2 前提事実(争いのない事実、後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めら れる事実)(1) 当事者被告は、窯業・土石製品その他無機化学製品の製造、販売、金属工業製品の製造、販売、合成樹脂製品その他有機化学製品の製造、販売等 び弁論の全趣旨により容易に認めら れる事実)(1) 当事者被告は、窯業・土石製品その他無機化学製品の製造、販売、金属工業製品の製造、販売、合成樹脂製品その他有機化学製品の製造、販売等を目的とする株式会社である。なお、被告は、平成19 年5 月15 日、その商号を「東陶 機器株式会社」から現商号に変更した。 (2) 本件特許本件特許の内容は、以下のとおりである。(乙1)特許番号第2678727 号出願日平成6 年2 月2 日 出願番号特願平6-29130 号優先権主張番号実願平5-71726 号優先日平成5 年11 月30 日登録日平成9 年8 月1 日特許権者原告、被告 発明の名称水栓エルボ連結固定具特許請求の範囲(請求項の数6。以下に、請求項1 のみ記載する。)【請求項1】合成樹脂で形成され、前面に湯水混合水栓を接続する2 個の水栓エルボを嵌合する凹部を一定間隔をおいて有する後部固定部と、後面に2 個 の水栓エルボを嵌合する凹部を一定間隔をおいて有し、各凹部上部に水栓エルボの一端部と嵌合する保持穴を有する前部固定部とを有することを特徴とする水栓エルボ連結固定具。 なお、本件特許権は、被告が平成18 年8 月1 日までに平成19 年度分の特許料を納付せず、追納可能期間内に追納もしなかったことから、平成18 年8 月1 日をもって消滅したものとみなされることとなった。(乙3)(3) 本件契約の締結等被告と宮内設備株式会社(以下「訴外会社」という。なお、本件契約に係る平成6 年11 月30 日付け契約書(乙12)において、原告は訴外会社の代表取締役として記名捺印している。)は、平成6 年11 月30 日、本件特許発明等 「訴外会社」という。なお、本件契約に係る平成6 年11 月30 日付け契約書(乙12)において、原告は訴外会社の代表取締役として記名捺印している。)は、平成6 年11 月30 日、本件特許発明等の共同出願に当たり、特許を受ける権利の持分を各2 分の1 の共有とす ること(1 条)、被告が本件特許発明等の特許出願の手続、登録までの諸手続及び登録された場合の権利の維持保全に関する手続を行うこと(2 条1 項)、本件特許発明等に基づいて得られる特許権の実施のうち製造は原則として被告のみが行い、被告が製造販売する場合は、被告が訴外会社に対して実施料を支払うこと(3 条及び別表番号1)、本件契約の有効期限は、契約締結日か ら本件特許発明等の権利の全てが期間満了又は無効の確定等により消滅するまでとすること(8 条)などを内容とする契約(本件契約)を締結した。 これに伴い、原告は、その頃、被告に対し、本件特許発明に係る特許を受ける権利の一部を譲渡した。(乙8~11)(4) 本件特許出願 原告は、自己を本件出願発明の発明者とし、A等の出願代理人として、以下のとおりの特許出願(本件特許出願)をした。(乙2)出願番号特願2018-202846 号出願日平成30 年10 月29 日特許出願公開番号特開2020-70555 号 公開日令和2 年5 月7 日発明の名称給水管固定構造特許請求の範囲(請求項の数2。以下に、請求項1 のみ記載する。なお、「/」は改行部分を示す。)【請求項1】 床から立上る給水管を前記床に固定する給水管固定構造であって、/給水管部と、/前記給水管部の外周面に配置され、床又は床面より上に配置され、前記床面に面し、前記床に固定されている支持板の下面に接する第 から立上る給水管を前記床に固定する給水管固定構造であって、/給水管部と、/前記給水管部の外周面に配置され、床又は床面より上に配置され、前記床面に面し、前記床に固定されている支持板の下面に接する第1 固定部と、/前記給水管部の前記外周面に配置され、前記床又は前記支持板の上面に接する第2 固定部と、を備え、/前記第1 固定部と前記第2 固定部とが、前記床又は前記支持板を挟んだ状態で固定され ることで、前記給水管部を床に固定する給水管固定構造。 なお、本件特許出願については、令和5 年2 月14 日、拒絶査定がされた。 (乙18)(5) 本件訴訟に至る経緯原告は、令和元年、被告に対し、本件特許発明の実施品を被告が製造販売 したとして、本件契約に基づき、平成9 年7 月1 日~平成29 年6 月30 日の間の実施料額の一部である100 万円の支払いを求めて訴訟を提起した(当庁令和元年(ワ)第24290 号損害賠償及び特許権使用の実施料の支払い請求事件。以下「先行訴訟」という。)。しかし、当庁は、本件特許発明においては水栓エルボ連結固定具が合成樹脂で形成されているものとして特定されてい るのに対し、被疑侵害品とされる被告の製品(ただし、具体的に被告のいかなる製品を指すのは明らかでないとされている。)の材質はSGCC(溶融亜鉛めっき鋼板)であって、合成樹脂ではないなどとして、被告が本件特許発明を実施しているとはいえないことを理由に、原告の請求を棄却した。(乙3)これに対し、原告は、控訴を提起した上(知的財産高等裁判所令和2 年(ネ) 第10008 号損害賠償及び特許権使用の実施料の支払い請求控訴事件)、控訴審において、実施料の一部である2000 万円の支払を求めて請求の拡張をした。しかし、知的財産高等裁判所は、 (ネ) 第10008 号損害賠償及び特許権使用の実施料の支払い請求控訴事件)、控訴審において、実施料の一部である2000 万円の支払を求めて請求の拡張をした。しかし、知的財産高等裁判所は、令和2 年6 月11 日に口頭弁論を終結した上、同年7 月9 日、原告の控訴を棄却すると共に控訴審における拡張請求を棄却する旨の判決をした。(乙4) 原告は、これに対して上告したが(知的財産高等裁判所令和2 年(ネオ)第10008 号)、知的財産高等裁判所は、同年10 月2 日、上告は不適法でその不備を補正することができないことは明らかであるとして、これを却下した。 (乙5) 3 当事者の主張(1) 原告の主張 原告の主張は、別紙訴状、訴状訂正申立書、回答書(令和6 年11 月9 日付け)、回答書(2)及び回答書(令和7 年2 月20 日付け)に各記載のとおりである。その主張内容にはやや判然としないところもあるが、要するに、以下のとおり主張するものと理解される。 ア本件契約に基づく実施料支払請求又はその債務不履行もしくは不法行為 に基づく損害賠償請求及び差止請求(請求1-①、2)被告は、原告と締結した本件契約に基づき、本件特許発明等を実施して製造販売した製品について、被告に対する実施料支払義務を負う。しかるに、被告は、この実施料の支払を全く行っていない。そこで、原告は、被告に対し、本件契約に基づく実施料の支払又はその実施料支払義務の不履 行もしくは不法行為に基づく損害賠償を求めると共に、本件特許権に基づき、被告による本件特許発明を実施した製品の製造販売の差止めを求める。 イ本件出願発明に係る権利に基づく実施料支払請求又はその債務不履行もしくは不法行為に基づく損害賠償請求及び差止請求(請求1-②、2) よる本件特許発明を実施した製品の製造販売の差止めを求める。 イ本件出願発明に係る権利に基づく実施料支払請求又はその債務不履行もしくは不法行為に基づく損害賠償請求及び差止請求(請求1-②、2)本件出願発明に基づき、原告は、被告に対し、被告が製造販売する製品 についての実施料支払請求権を有する。しかるに、被告は、この実施料の支払を全く行っていない。そこで、原告は、本件出願発明に係る権利に基づき、被告に対し、実施料の支払又はその実施料支払義務の不履行もしくは不法行為に基づく損害賠償を求めると共に、被告による本件出願発明を実施した製品の製造販売の差止めを求める。 ウ損害額上記実施料又は損害賠償の額は100 億円程度とみられるところ、本件においては、このうち100 万円の支払を求める。 (2) 被告の主張原告の請求のうち、本件契約に基づく実施料支払請求については、先行訴訟の既判力に抵触する。また、本件契約に基づく実施料支払請求権の存在を 前提とした債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求については、被告は、本件特許発明を実施していないことから、原告の主張する支払請求権はいずれも存在しない。さらに、被告は、本件特許発明につき共有特許権者であり、本件契約において被告による実施を禁じる別段の定めもないことから、本件特許発明を自由に実施し得る。したがって、原告の被告に対する本件特 許権に基づく差止請求権は存在しない。 本件出願発明に係る権利については、被告は、本件特許出願の共同出願人でもなければ、その出願に関与してもいない。また、本件特許出願につき、被告が原告に対して何らかの金銭を支払う旨の契約等はなく、被告が原告の何らかの利益ないし権利を侵害したこともない。したがって、原告の被告に 対する本件出願発 いない。また、本件特許出願につき、被告が原告に対して何らかの金銭を支払う旨の契約等はなく、被告が原告の何らかの利益ないし権利を侵害したこともない。したがって、原告の被告に 対する本件出願発明に係る権利に基づく請求については、原告の主張に係る請求権はいずれも存在しない。 第3 当裁判所の判断 1 請求1-①について(1) 原告の本件契約に基づく請求において、被告が実施しているとされる本件 特許発明(請求項の記載)、これを実施して被告が製造販売した製品、請求に係る実施料等の対象期間は、いずれも具体的に特定されていない。もっとも、原告の主張を善解すると、原告は、被告が本件特許に係る請求項全てのうちのいずれかの発明を実施して製造販売した被告の製品全てについての実施料等の支払を請求する趣旨と理解できなくもない。そこで、以下、この理解 を前提として検討する。 (2) 前提事実(5)を踏まえると、原告の被告に対する本件契約に基づく実施料支払請求のうち、少なくとも先行訴訟の控訴審の口頭弁論終結の日(令和2 年 6 月11 日)までの分に相当する部分は、本件と先行訴訟とで訴訟物を同じくするとみられる。したがって、本件におけるこの部分の請求は、先行訴訟の判決の既判力に抵触するものといえる。 また、本件における原告の請求が本件契約の債務不履行に基づく損害賠償請求であるとしても、この請求は本件契約に基づく実施料支払請求と実質的に同一のものといえることから、同様に先行訴訟の判決の既判力に抵触するものというべきである。 (3) 前記先行訴訟の口頭弁論終結の日より後の時期の分に係る請求について 本件特許権は、平成18 年8 月1 日をもって消滅したものとみなされる(前提事実(2))。 また、本件契約が対象とする発明は、本 訴訟の口頭弁論終結の日より後の時期の分に係る請求について 本件特許権は、平成18 年8 月1 日をもって消滅したものとみなされる(前提事実(2))。 また、本件契約が対象とする発明は、本件特許発明のほか、「発明の名称「湯水混合栓用水栓エルボの固定構造及び取付脚の接続構造」(特願平6- 号)の発明」とされているところ、後者の発明は、発明の名称しか特定されてお らず、仮に実際に平成6 年に出願され、その後特許査定を得て特許権が成立したとしても、平成26 年にその存続期間を満了した可能性が高いとみられるし、これが平成30 年10 月29 日出願の本件出願発明を指すものと理解すべき事情も見当たらないことから、不明というほかない。 そうすると、令和2 年6 月11 日より後の時点において、本件特許発明等 の権利の全てが期間満了又は無効の確定等により消滅する時期をもって有効期間の終期とする本件契約(前提事実(3))がなお存続していたものとみるべき事情は見当たらない。 そうである以上、令和2 年6 月11 日より後の時期の分について、原告の本件契約に基づく実施料支払請求権又はその債務不履行に基づく損害賠償請 求権については、その発生根拠を欠くことになる。 (4) 不法行為に基づく損害賠償請求については、実質的には本件契約に基づく実施料支払請求と同一の請求とみられること、他に被告が本件契約との関連で原告に対して何らかの違法行為を行ったとみるべき事情が見当たらないことを踏まえると、上記(2)及び(3)と同様の理由から、被告の原告に対する不法行為の存在を認めることができない。 (5) 小括以上のとおり、請求1-①については、原告は、被告に対し、本件契約に基づく実施料支払請求権又はその債務不履行もしくは不法行為に に対する不法行為の存在を認めることができない。 (5) 小括以上のとおり、請求1-①については、原告は、被告に対し、本件契約に基づく実施料支払請求権又はその債務不履行もしくは不法行為に基づく損害賠償請求権のいずれも有しない。この点に関する原告の主張は採用できない。 2 請求1-②について 原告は、本件出願発明に係る権利に基づき、実施料支払請求又はその債務不履行もしくは不法行為に基づく損害賠償請求を行うものと一応理解し得る。 しかし、本件特許出願は拒絶査定を受け(前提事実(4))、その後、本件出願発明につき何らかの権利が設定されたことをうかがわせる具体的な事情もない。 前記のとおり、本件契約の対象に本件出願発明が含まれるとみることもできな い。また、本件特許出願又は本件出願発明の実施に対する被告の何らかの関与をうかがわせる具体的な事情は見当たらないことから、その出願過程及び発明の実施に関して、被告の原告に対する何らかの不法行為があったとみることもできない。 したがって、原告は、被告に対し、本件出願発明に係る実施料支払請求権又 はその債務不履行もしくは不法行為に基づく損害賠償請求権のいずれも有しない。この点に関する原告の主張は採用できない。 3 請求2 について本件特許権は既に消滅している。また、前記のとおり、本件特許出願は拒絶査定を受け、その後本件出願発明につき何らかの権利が設定されたことをうか がわせる具体的な事情もない。さらに、これらの事情にもかかわらず、なお原告が被告に対し本件特許権又は本件出願発明に係る何らかの権利に基づき差止請求権を有することを基礎付ける本件契約の規定その他の原告と被告との合意の存在等をうかがわせる具体的な事情も見当たらない。 したがって、原告は、被告に対し、本件特 発明に係る何らかの権利に基づき差止請求権を有することを基礎付ける本件契約の規定その他の原告と被告との合意の存在等をうかがわせる具体的な事情も見当たらない。したがって、原告は、被告に対し、本件特許権に基づく差止請求権及び本件出願発明に係る権利に基づく差止請求権のいずれも有しない。この点に関する原告の主張は採用できない。 主文 よって、原告の請求は、いずれも理由がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官 杉浦正樹 裁判官 池田幸子 裁判官 松尾恵梨佳 別紙当事者目録 原告X 被告TOTO株式会社 同訴訟代理人弁護士吉田和彦小林正和 (以下別紙省略)
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