平成12(行コ)25 怠る事実確認等請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成14年4月15日 名古屋高等裁判所 金沢支部
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判決文本文11,531 文字)

主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人ら(控訴の趣旨)(1) 原判決を取り消す。 (2) 本件を福井地方裁判所に差し戻す。 2 被控訴人ら主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,福井県において,県職員の架空出張による旅費の不正支出(以下「本件旅費支出」という。)が発覚し,その財源の一部が,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「補助金等適正化法」という。)に基づく国からの補助金であったことから,福井県は国(各省庁の長)からの命令を受け,5億4555万0930円を国庫に返還した(以下,この返還金を「本件国庫精算返還金」という。)ところ,福井県の住民である控訴人(原審原告)らがこの国庫への返還によって県に損害が生じたと主張して,被控訴人である福井県知事及び知事個人を被告とし,下記のような請求をして提起した住民訴訟である。 (1) 被控訴人福井県知事に対する請求本件旅費支出の専決権者である原判決別紙「氏名」欄各記載の者(以下「旅費支出専決権者」という。)に対し,原判決別紙「返還額」欄各記載の金額の損害賠償請求権(以下「本件損害賠償請求権」という。)を行使しないことが違法であることの確認を求めた。 (2) 被控訴人Aに対する請求同被控訴人が福井県知事として本件損害賠償請求権を行使しなかったことにより県に5億4555万0930円の損害が生じているとして,福井県に代位し,同金額の損害賠償を求めた。 2 原審は,概ね次のように判示して,控訴人らの訴えを却下した。 (1) 控訴人らが本件にお り県に5億4555万0930円の損害が生じているとして,福井県に代位し,同金額の損害賠償を求めた。 2 原審は,概ね次のように判示して,控訴人らの訴えを却下した。 (1) 控訴人らが本件において,被控訴人知事が行使を怠っていると主張する本件損害賠償請求権は,本件旅費支出が違法又は無効であることに基づいて発生したものである。 (2) 住民の監査請求が,普通地方公共団体の長その他の職員の特定の財務会計上の行為が違法無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって,違法に財産の管理を怠る事実と構成している場合には,この監査請求期間は,その怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日から起算すべきである。 (3) 本件旅費支出はその最も後のものでも平成9年9月にされたものであるのに対し,本件監査請求がされたのは平成11年8月24日であるから,本件監査請求は,地方自治法242条2項本文に定める1年間の監査請求期間を徒過しており,その期間を徒過したことにつき正当な理由は認められない。 (4) 被控訴人Aに対する損害賠償請求についてされた本件監査請求も,同様に監査請求期間を徒過した不適法なものである。 (5) よって,被控訴人らに対する本件訴えは,いずれも監査請求前置の要件を充足しない不適法なものである。 3 そこで,これを不服とする控訴人らが本件控訴に及んだが,本件の前提となる事実は,原判決の「第二事案の概要」の一記載のとおりであるから,これを引用する。 4 本件の争点及びこれに対する当事者双方の主張は,次のとおり控訴人らの当審における補充主張を付加するほかは,原判決の「第二事案の概要」の二記載のとおりであるからこれを引用する。 (控訴人らの当審における補充主張)ア控訴人らが本件監査請求で とおり控訴人らの当審における補充主張を付加するほかは,原判決の「第二事案の概要」の二記載のとおりであるからこれを引用する。 (控訴人らの当審における補充主張)ア控訴人らが本件監査請求で対象とした怠る事実について(ア) 福井県の平成6年度ないし8年度及び平成9年の4月から12月までにおける旅費の不正支出(本件旅費支出)は,合計21億6203万0384円であるところ,国(各省庁の長)からの返還命令に基づき,被控訴人知事が平成11年7月14日の県議会の補正予算の議決を経た上で,国庫に返還した本件国庫精算返還金の総額は5億4555万0930円であり,その内訳は,原判決別紙「返還額」欄記載のとおりである。なお,この記載の金額の合計は5億4555万0930円に満たないが,これは,控訴人らにおいて,把握できない返還金額があったためである。 (イ) そこで,控訴人らは,平成11年8月24日,福井県監査委員に対し,本件監査請求を行ったが,控訴人らが本件監査請求において対象とした財務会計行為は,本件旅費支出そのものではなく,本件国庫精算返還金を国庫に返還した行為である。したがって,控訴人らがした本件監査請求は,本件旅費支出が違法無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって,違法に財産の管理を怠る事実として構成しているのではない。本件訴訟においても,控訴人らは,被控訴人知事に対し,本件国庫精算返還金を国庫に返還(支出)したことを原因として県に発生した,旅費支出専決権者に対する損害賠償請求権(本件損害賠償請求権)の不行使をもって,怠る事実と構成し,そのことの違法確認を求めているものである。原判決は,こうした控訴人らの法的構成を無視したもので,不当である。 イ本件監査請求の期間遵守について控訴人らが本 もって,怠る事実と構成し,そのことの違法確認を求めているものである。原判決は,こうした控訴人らの法的構成を無視したもので,不当である。 イ本件監査請求の期間遵守について控訴人らが本件監査請求をしたのは平成11年8月24日であるのに対し,福井県議会が本件国庫精算金の返還に関する補正予算を可決したのは同年7月14日であり,実際に国庫に返還されたのは同年7月から9月にかけてであるから,本件監査請求が地方自治法242条2項本文の期間内に行われたことは明らかである。 ウ本件国庫精算返還金の支出による福井県の損害について原判決は,本件損害賠償請求権は本件旅費支出により直ちに発生し,本件国庫精算金の返還によって生じたものではないと判示するが,それは,以下に述べるとおり,誤りである。 (ア) 補助金等適正化法は,その17条1項において「各省各庁の長は,補助事業者等が,補助金等の他の用途への使用をし……たときは,補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。」と定め,また,18条1項において「各省各庁の長は,補助金等の交付の決定を取り消した場合において,補助事業等の当該取消に係る部分に関し,すでに補助金等が交付されているときは,期限を定めて,その返還を命じなければならない。」と定めている。 これらの規定からすれば,補助金の使用につき,被交付団体に条件違反があったとしても,各省各庁の長による補助金交付決定の取消と返還命令を待たない限り,補助金返還義務は発生しないこととなっている。そして,補助金交付決定を取り消すかどうかは,各省各庁の長の合理的裁量の範囲内において,補助金交付決定とは別の考慮に基づいて新たになされる行政行為に委ねられているのであるから,当該条件違反行為があった時点において,補助金の交付決定の取消処 ,各省各庁の長の合理的裁量の範囲内において,補助金交付決定とは別の考慮に基づいて新たになされる行政行為に委ねられているのであるから,当該条件違反行為があった時点において,補助金の交付決定の取消処分が将来確実に行われると予見することはできない。 (イ) したがって,本件国庫精算返還金の支出に係る損害は,本件旅費支出が違法であることによって,当然に発生するものではないし,損害の額も,各省各庁の長の取消の範囲(一部取消がある。)によって定まるものであって,本件旅費支出にかかる金額により定まるというものではない。 さらに,本件国庫精算返還金5億4555万0930円の中には,交付された補助金の外に,補助金等適正化法(19条1項),交付金交付要綱,委託契約書,委託事務に係る取扱要綱又は民法の規定により加算金及び法定利息(以下「加算金等」という。)が1億3699万5040円も含まれており,この加算金等の1億3699万5040円は,本件旅費支出が補填されても回復できない性質のものであるから,少なくとも,この加算金等に相当するものは,本件国庫精算返還金の支出によって福井県に新たに生じた損害というべきである。 エ本件国庫精算返還金の支出の違法性について本件国庫精算返還金の返還命令が発せられたのは,本件旅費支出が違法であったからにほかならない。したがって,本件国庫精算返還金の支出は,それに先立つ本件旅費支出の違法性を承継し,それ自体が違法な支出行為というべきである。 そして,被控訴人栗田に対する請求についてみれば,同被控訴人が不正な旅費支出がないように職員を監督するとともに,国庫補助金の管理を適切に行い,国庫補助金について不正使用の疑いがあるときは直ちに調査を行って,速やかに中央省庁との協議を経て本件国庫精算返還金を返還し 旅費支出がないように職員を監督するとともに,国庫補助金の管理を適切に行い,国庫補助金について不正使用の疑いがあるときは直ちに調査を行って,速やかに中央省庁との協議を経て本件国庫精算返還金を返還しているならば,加算金等の支出はもっと少なくて済んだはずである。要するに,被控訴人栗田の管理が至らなかったために,加算金等の支出が1億3699万5040円にまで膨らんだのである。 以上によれば,本件国庫精算返還金の支出,殊に加算金等の支出は違法であるから,控訴人らは,本件国庫精算返還金の支出を住民監査請求の対象とすることができるというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 被控訴人知事に対する請求について(一) 本件監査請求の適法性について(1) 争点1(一)(本件監査請求と被控訴人知事に対する請求の対象事項の同一性)について争点1(一)(本件監査請求と被控訴人知事に対する請求の対象事項の同一性)について,当裁判所は,本件訴えに係る被控訴人知事の怠る事実の確認は,本件監査請求においてもその対象になっていたものと解することができ,したがって,本件監査請求の対象事項と本件の被控訴人知事に対する請求との間には同一性を認めることができると判断するが,その理由は,原判決の「第三争点に対する判断」の一の1記載のとおりであるから,これを引用する。 (2) 争点1(二)(監査請求期間の経過の有無)についてア控訴人らは,原判決が被控訴人らの主張を容れ,本件監査請求及び本件訴訟において控訴人らがその対象としている怠る事実は,本件旅費支出の違法無効に基づく実体法上の請求権の不行使をもって,違法に財産の管理を怠る事実と構成していると判断したことを非難し,控訴人らが本件監査請求及び本件訴訟で主張している怠る事実は,本 は,本件旅費支出の違法無効に基づく実体法上の請求権の不行使をもって,違法に財産の管理を怠る事実と構成していると判断したことを非難し,控訴人らが本件監査請求及び本件訴訟で主張している怠る事実は,本件国庫精算返還金の支出に伴う旅費支出専決権者に対する本件損害賠償請求権の不行使であると主張する。 住民監査請求及びこれに引き続き提起される住民訴訟において,その対象となる財務会計上の行為又は怠る事実は,当該住民が定めるべきものであるから,監査請求書及びその添付書類並びに訴状などを総合的に判断し,当該住民の主張が監査請求書などに記載された事実に反する場合には,もとよりその主張を認めることはできないが,そうでなければ,その法律構成が監査請求期間を潜脱するためのものであるなどの許容できない特段の事情のない限り,判断の対象となる財務会計上の行為又は怠る事実は,当該住民の主張に拘束されるというべきである。 イそこで,控訴人らの上記主張の当否について検討する。 (ア) 証拠(甲第1,第2号証)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人らは,平成11年8月24日,福井県監査委員に対し,福井県職員措置請求書(甲第1号証)及び事実証明書(甲第2号証)を提出して,本件監査請求を行ったが,同請求書には,福井県が本件旅費支出に係る国庫返還精算金を国に返還するために一般会計補正予算を組み,福井県議会でこれを可決したことに関して,①国庫精算返還金の支出を差し止めること,②既に支出された分については,福井県が被った損害を填補するための必要な措置を採ること,③国庫精算返還金の支出に見合う収入を県知事及び県管理職から追徴すべきこと等を求める旨の記載のあることが認められる。 (イ) もっとも,事実証明書(甲第2号証)には,本件国庫精算返還金の内訳明細として, 金の支出に見合う収入を県知事及び県管理職から追徴すべきこと等を求める旨の記載のあることが認められる。 (イ) もっとも,事実証明書(甲第2号証)には,本件国庫精算返還金の内訳明細として,<イ>平成11年7月30日返還分合計1419万8419円,<ロ>平成11年8月13日返還分合計2億7458万4013円,並びに<ハ>平成11年8月20日返還分合計4383万1953円(上記の金額はいずれも加算金等を含んだ金額)のみが明示されているが,福井県職員措置請求書(甲第1号証)によれば,「福井県議会は,カラ出張に係る国庫精算返還金5億5000万円を支出する旨の平成11年度福井県一般会計補正予算を議決し」との記載がある他,控訴人らは国庫精算返還金の将来的な支出の差し止めも求めており,上記の事実証明書(甲第2号証)にも,「県は総務庁以下9庁に対し,215百万円(内加算金54百万円加算金の返還金に占める割合は25.12%)の返還を予定しており」との記述があることも併せて勘案すると,控訴人らは,上記<イ>,<ロ>,<ハ>の国庫精算返還金の支出のみならず,その後に支出されたものも含めた本件国庫精算返還金合計5億4555万0930円の全体について,監査請求を行ったものと認めるのが相当である。 (ウ) そして,本件訴訟の被控訴人知事に対する請求の趣旨は,「被控訴人知事が平成6年度ないし平成9年度の間の事務処理上不適切な旅費支出によって生じた損害金5億4555万0930円について,別紙『氏名』欄各記載の旅費支出専決権者に対して,別紙『返還額』欄各記載の金額の損害賠償請求をしないことが違法であるを確認する。」というものであり,その請求原因でも,福井県が本件国庫精算返還金の支出によって損害を受けたと主張しているのであるから,控訴人 還額』欄各記載の金額の損害賠償請求をしないことが違法であるを確認する。」というものであり,その請求原因でも,福井県が本件国庫精算返還金の支出によって損害を受けたと主張しているのであるから,控訴人らが本件監査請求において求めたのは,本件国庫精算返還金の支出によって福井県に生じた損害の回復・是正であり,また,本件訴訟においては,その回復・是正をしないことの違法確認であると認められる。 (エ) 以上のことからすると,控訴人らが本訴において求めているのは,本件国庫精算返還金の支出に基づいて発生したと主張する本件損害賠償請求権を被控訴人知事が行使しないことの違法確認であり,本件監査請求も,同旨の趣旨を含むものと認めるのが相当であり,これを敢えて,本件旅費支出が違法無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって,怠る事実と構成しているとみなす合理的根拠はない。 (オ) そうすると,引用した原判決の前提事実記載のとおり,本件国庫精算返還金の国庫に対する返還に関する補正予算の県議会の議決がなされたのは,平成11年7月14日であり,これを受けて被控訴人知事が本件国庫精算返還金を国庫に返還したのは,同年7月30日から同年9月30日までであるのに対し,控訴人らの本件監査請求が福井県監査委員になされたのは,同年8月24日であるから,本件監査請求は,地方自治法242条2項本文に定める期間(1年間)内になされたものと認められる。 (3) 争点1(四)(本件監査請求はその対象が特定されているか。)について被控訴人らは,本件監査請求において,控訴人らが福井県監査委員に提出した「福井県職員措置請求書」と題する監査請求書及びこれに添付された事実証明書では,本件旅費支出が個別的,具体的に摘示されていないから,本件監査請求は,請求の特定を欠 控訴人らが福井県監査委員に提出した「福井県職員措置請求書」と題する監査請求書及びこれに添付された事実証明書では,本件旅費支出が個別的,具体的に摘示されていないから,本件監査請求は,請求の特定を欠き,不適法であると主張する。 しかしながら,被控訴人らのこの主張は,控訴人らの被控訴人知事に対する本訴請求が,本件旅費支出が違法無効であることに基づく実体法上の請求権の不行使をもって,怠る事実と構成していることを前提とするものであり,失当というべきである。 そして,前記(2)イ(イ)で認定したように,控訴人らは,本件監査請求において,本件国庫精算返還金5億4555万0930円の全体につき監査請求をしたものであって,その特定性に欠けるところはないと認められる。 (4) 本件監査請求の適法性の結論以上認定したところによれば,控訴人らのした本件監査請求は,適法であったと認められる。 (二) 控訴人らが主張する本件損害賠償請求権の成否についてそこで,本件国庫精算返還金の返還によって本件損害賠償請求権が実体法上成立したかどうかを判断する。 (1) 引用した原判決の前提事実,乙第2,第3号証の各1,2,乙第4号証の1ないし4及び弁論の全趣旨によれば,①福井県においては,平成6年度ないし平成8年度及び平成9年度の4月から12月までの期間において,公務出張の事実がないのにこれがあるように仮装して支出(本件旅費支出)された公費が21億6203万0384円あることが発覚したこと,②この不正に支出された公費の中には,国から交付された補助金が含まれていたことから,国(各省庁の長)は,福井県に対して,補助金等適正化法に基づき,当該補助金の交付決定を取り消し,加算金等を付加して,その返還を命じたこと,③その額は,合計5億4555 補助金が含まれていたことから,国(各省庁の長)は,福井県に対して,補助金等適正化法に基づき,当該補助金の交付決定を取り消し,加算金等を付加して,その返還を命じたこと,③その額は,合計5億4555万0930円にのぼるが,その中の加算金等の額は,1億3699万5040円であったこと,④被控訴人知事は,これを受けて,補助金等を返還することを含む平成11年度福井県一般会計補正予算を県議会に提出し,県議会は,同年7月14日これを可決したこと,⑤被控訴人知事は,同年7月から同年9月までの間に,総額5億4555万0930円の本件国庫精算返還金を国庫に返還したこと,が認められる。 (2) 以上の事実によれば,本件国庫精算返還金の返還は,法律の定めるところに従い,義務の履行として適法になされたものと認められる。 控訴人らは,本件旅費支出が違法なものであった以上,本件国庫精算返還金の返還行為にも違法性が承継され,これもまた違法である旨主張する。しかし,行政行為における違法性の承継は,先行処分が違法であるにもかかわらず,これが適法であることを前提に後行処分がなされた場合に議論する余地があるものであり,本件のように,先行処分(本件旅費支出)が違法であることを前提として,これを是正する後行処分(本件国庫精算返還金の返還命令と返還行為)について,違法性の承継を認める余地はなく,控訴人らの主張は失当である。そして,他に本件国庫精算返還金の返還が違法であることを窺わせる事情は認められない。 そうすると,本件国庫精算返還金の返還は,義務の履行として適法になされたものであるから,これによって,福井県に法律上の損害が発生したと認めることはできず,本件損害賠償請求権が成立するということはできない。もっとも,本件国庫精算返還金の返還によって,福井県に経済的損失 たものであるから,これによって,福井県に法律上の損害が発生したと認めることはできず,本件損害賠償請求権が成立するということはできない。もっとも,本件国庫精算返還金の返還によって,福井県に経済的損失が生じたのは事実であるが,それは,違法な本件旅費支出がその原因となっているのであって,これが不法行為を構成する違法行為であり,福井県の法律上の損害の発生原因事実もまさにこの点にあるというべきである。したがって,控訴人らの主張する本件損害賠償請求権は,実体法上は,本件国庫精算返還金の返還ではなく,本件旅費支出によって成立するものである。 (3) ところで,控訴人らは,本件国庫精算返還金のうち加算金等は,国庫への返還によって生じた,本件旅費支出による損害とは別個の損害であると主張する。 ア確かに,加算金等は,遅延損害金あるいは制裁金とも評すべきものであり,返還命令によって生じたものであるから,本件国庫精算返還金の返還によって新たに生じた損害と認められる。しかし,そうであるとしても,この加算金等も法律の定める義務の履行として国庫に納入されているのであるから,加算金等相当額の損害の発生の故に,本件国庫精算返還金の返還によって損害賠償請求権が成立するということはできない。むしろ,法的にいえば,この加算金等の納付による損害も,違法な本件旅費支出と相当因果関係にある損害と認めるべきものである。 イ控訴人らは,加算金等の納入義務は返還命令によってはじめて発生するのであるから,当該返還命令以前に,住民が監査請求において,加算金等の損害の回復措置を求めることは,事実上不可能であると主張する。 控訴人らのこの主張は,なるほどもっともな点があり,住民監査制度の趣旨に照らせば,加算金等の納付による福井県の損害について,監査請求の機会が確保されるべきである。そこで 上不可能であると主張する。 控訴人らのこの主張は,なるほどもっともな点があり,住民監査制度の趣旨に照らせば,加算金等の納付による福井県の損害について,監査請求の機会が確保されるべきである。そこで,その方法を按ずるのに,住民は,加算金等の損害の回復措置が採られない場合には,加算金等の納付の日から1年以内に,違法な本件旅費支出に基づいて発生した加算金等相当額の損害賠償請求権の不行使に関し,監査請求することができると解すべきである。即ち,最高裁の判例(平成9年1月28日第3小法廷判決・民集51巻1号287頁)によれば,「財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする住民監査請求において,右請求権が右財務会計上の行為のされた時点においてはいまだ発生しておらず,又はこれを行使できない場合には,右実体法上の請求権が発生し,これを行使することができることになった日を基準として同項(地方自治法242条2項)の規定を適用すべきものと解するのが相当である。」とされているところであるが,この判示の趣旨からすれば,本件旅費支出の日から1年を経過しても,加算金等の納付の日から1年以内であれば,本件旅費支出に基づく損害賠償請求権(ただし,加算金等相当額の損害に限る。)の不行使の是正を求める監査請求は可能と解される。 ウかかる点からすれば,原判決が,本件監査請求及び被控訴人知事に対する本件訴訟において控訴人らが行使を怠っていると主張する本件損害賠償請求権は本件旅費支出の違法,無効に基づいて発生するものであると判断しながら,本件国庫精算返還金のうち加算金等に関する損害賠償請求についても,その監査請求期間を本件旅費支出の日から起算すべきものとしたのは,当を得ないものである。 しかしながら, のであると判断しながら,本件国庫精算返還金のうち加算金等に関する損害賠償請求についても,その監査請求期間を本件旅費支出の日から起算すべきものとしたのは,当を得ないものである。 しかしながら,乙第1号証,第4号証の1ないし4及び弁論の全趣旨によれば,本件旅費支出の不正が発覚した後,福井県では副知事等の特別職や管理職手当を受給している福井県一般職員等が会員となって,福井県旅費返還会が設立され,同会が平成11年9月9日,本件国庫精算返還金のうち加算金等に相当する1億3699万5040円をその返還分として福井県に支払ったことが認められる。 したがって,加算金等の納付によって福井県に生じた損害は,福井県旅費返還会によって全額補填されているのであるから,仮に控訴人らが本件の怠る事実を本件旅費支出の違法,無効に基づいて発生した損害賠償請求権の不行使と構成し,当該加算金等に関する監査請求が適法であったとしても,既に当該部分に関する損害賠償請求権は消滅していることが明らかである。 (4) 以上説示したとおりであって,控訴人らが主張する本件損害賠償請求権は,本件国庫精算返還金の返還によって成立するものとは認められないから,被控訴人知事につき,上記損害賠償請求権の不行使が違法であることの確認を求める本訴請求は,理由がない。 2 被控訴人Aに対する請求について(一) 監査請求について本件訴訟の被控訴人Aに対する請求は,同被控訴人が福井県知事として,本件損害賠償請求権を行使しないことにより,同額(5億4555万0930円)の損害が福井県に生じていると主張し,福井県に代位して,同額の損害賠償を求めるものであるところ,甲第1,第2号証によれば,本件監査請求において,控訴人らは,被控訴人Aに対する損害賠償請求をその対象にしていたとは認められ ていると主張し,福井県に代位して,同額の損害賠償を求めるものであるところ,甲第1,第2号証によれば,本件監査請求において,控訴人らは,被控訴人Aに対する損害賠償請求をその対象にしていたとは認められないが,本件監査請求において被控訴人知事が本件損害賠償請求権を行使しないことについての是正措置を求めている以上,その知事の職にある被控訴人Aに対する本件損害賠償請求権を行使しなかったことを理由とする損害賠償の請求については,本件監査請求によって,監査請求前置の要件は具備されていると認めるのが相当である。 そして,本件監査請求が適法と認めるべきものであることは,前記1(一)で説示したとおりである。 (二) 被控訴人Aに対する損害賠償請求の当否について控訴人らにおいて,被控訴人Aが福井県知事として行使を怠ったという本件損害賠償請求権が,本件国庫精算返還金の返還によって実体法上成立するものではないことは,前記1(二)で説示したとおりである。 そうすると,被控訴人Aが本件損害賠償請求権を行使しなかったことが違法ということはできず,結局,控訴人らの被控訴人Aに対する本訴請求も理由がない。 3 結論以上によれば,控訴人らの被控訴人らに対する本訴請求は,監査請求前置の要件を充たした適法なものではあるが,いずれも理由がないから,これを棄却すべきである。これに対し,原判決は,本件訴えを不適法として却下しており,この判断は是認することができないが,不利益変更禁止の原則(民事訴訟法304条)により,原判決を取り消して控訴人らの請求を棄却する判決をすることは許されないから,控訴人らの本件控訴をいずれも棄却するにとどめることとする。 よって,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部裁判長裁判官川崎和夫 れないから,控訴人らの本件控訴をいずれも棄却するにとどめることとする。 よって,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部裁判長裁判官川崎和夫裁判官源孝治裁判官榊原信次

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