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昭和39(ネ)1099 通路使用妨害禁止土地建物等明渡反訴請求控訴事件

裁判所

昭和44年7月17日 東京高等裁判所

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19,276 文字

主文 1 本件控訴を棄却する。2 控訴人は、被控訴人に対し、被控訴人が千葉県船橋市a1町b1丁目c1番地のd1(公簿上宅地一七六・七六坪、五八四・三三平方米)と同町b1丁目e1番地のf1(公簿上宅地一七六八・九七坪、五八四七・八二平方米)の北側を経て、その東方の公道に至るまでの土地(本判決添付別紙第一図面中の赤斜線の部分、実測約四二〇坪、一三八八・四二平方米)を被控訴人船橋工場の通路として使用することを妨害してはならない。3 控訴費用は、控訴人の負担とする。4 この判決は、第二項にかぎり、かりに執行することができる。事実 控訴代理人は、その控訴につき、「1原判決を取り消す。2被控訴人は、控訴人に対し、原判決添付別紙第一物件目録および本判決添付別紙物件目録記載の土地建物等を明渡し、かつ、金五五万四四九〇円および昭和三六年九月一〇日より右明渡ずみに至るまで一カ月金五五万四四九〇円の割合による金員を支払え。3訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決および右第二項について仮執行の宣言を求め、被控訴人の当審における請求につき、「1被控訴人の請求を棄却する。2訴訟費用は、被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴人の控訴につき、主文第一項同旨の判決を、当審における請求として主文第二、三項同旨の判決および仮執行の宣言を求めた。当事者双方の事実上の主張および証拠の関係は、つぎに記載するほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、その記載を引用する(ただし、原判決一一枚目裏九行目「乙第一一号証の一」を「乙第一一号証の二」と訂正する。)。被控訴人の主張一 (通行権の根拠)(一) 控訴人は、昭和三八年一二月三一日原判決添付別紙第一物件 (ただし、原判決一一枚目裏九行目「乙第一一号証の一」を「乙第一一号証の二」と訂正する。)。被控訴人の主張一 (通行権の根拠)(一) 控訴人は、昭和三八年一二月三一日原判決添付別紙第一物件目録記載の土地部分(以下「旧通路」という。 一一枚目裏九行目「乙第一一号証の一」を「乙第一一号証の二」と訂正する。)。被控訴人の主張一 (通行権の根拠)(一) 控訴人は、昭和三八年一二月三一日原判決添付別紙第一物件 (ただし、原判決一一枚目裏九行目「乙第一一号証の一」を「乙第一一号証の二」と訂正する。)。被控訴人の主張一 (通行権の根拠)(一) 控訴人は、昭和三八年一二月三一日原判決添付別紙第一物件目録記載の土地部分(以下「旧通路」という。)およびその隣接地を含む計二万三八二〇坪を訴外東京建物株式会社に売却し、昭和三九年一月二九日その所有権移転登記手続をし、同訴外会社は、同年五月一五日有刺鉄線を張つて右旧通路を閉鎖した。このため、被控訴人は旧通路を使用することが不可能となつた。(二) そこで、被控訴人代表者は、翌一六日右訴外会社に赴き事情を確かめたところ、右訴外会社では控訴人と被控訴人間の本件訴訟を知りながら右土地を譲受けたことおよび控訴人において右訴外会社に対し旧通路に替えて本判決主文第二項記載の土地(以下「新通路」という。)を被控訴人に使用させる旨言明していることが判明した。(三) そもそも控訴人、被控訴人間の本件契約成立に当つて、被控訴人の賃借土地が袋地になる関係上、その囲繞地たる控訴人の土地を通行するため使用することは、被控訴人にとつて絶対必要な条件であつた。契約書(乙第一号証)第三条において、被控訴人は控訴人より賃借した物件のほか、控訴人の構内通路をも使用することができる旨特約したのは、このためであり、被控訴人は、右特約により旧通路を使用してきたのである。右は特約による囲繞地通行権というべきものであつて、被控訴人が旧通路を使用することとしたのは、これが以前から通路として使用されており、これを通行することが囲繞地のため最も損害が少なかつたためにほかならない。したがつて、特約による旧道路の使用が不可能になつたとしても、被控訴人は法律上控訴人の囲繞地を通行する権利を有するわけである。(四) よつて、被控訴人は、当審にお なかつたためにほかならない。したがつて、特約による旧道路の使用が不可能になつたとしても、被控訴人は法律上控訴人の囲繞地を通行する権利を有するわけである。(四) よつて、被控訴人は、当審において、旧通路についての請求を取り下げ、これに替えて必要かつ控訴人にとつて損害の最も少い道路として本判決主文第二項の土地を選び、右通行の妨害排除を求める。 利を有するわけである。(四) よつて、被控訴人は、当審にお なかつたためにほかならない。したがつて、特約による旧道路の使用が不可能になつたとしても、被控訴人は法律上控訴人の囲繞地を通行する権利を有するわけである。(四) よつて、被控訴人は、当審において、旧通路についての請求を取り下げ、これに替えて必要かつ控訴人にとつて損害の最も少い道路として本判決主文第二項の土地を選び、右通行の妨害排除を求める。二 (控訴人の主張二に対する答弁および反論)(一) 同主張二、(一)中控訴人主張の各物件が工場財団組成物件であることおよびその抵当権者が控訴人主張のとおりの四名であつたことはいずれも認めるが、右抵当権者らが本件賃貸借に同意を与えるに際し賃貸借の期間を三年とすべき旨の条件を附したことは否認する。そもそも工場抵当法上の抵当権者の同意は、賃貸借の有効要件ではなく、抵当権者に対する単なる対抗要件にすぎないと解すべきであるから、その同意のいかんにかかわらず、賃貸借は、当事者間においては有効に成立しうるものであり、かりにそうでないとしても、本件において各抵当権者は賃貸借の期間が更新されるべきことを前提としてこれに同意を与えているのであるから、本件賃貸借が三年の経過とともに当然失効するいわれはない。(二) のみならず、本件契約成立当時の抵当権者たる訴外株式会社千葉銀行はその債権を訴外鴨川工場株式会社に譲渡し、またその余の抵当権者は債務の弁済を受けて、いずれも現在抵当権者ではない。そしてこれら譲受または弁済の資金は全部訴外株式会社木下商店が醵出したものであり、同訴外会社は、控訴人および訴外鴨川工業の完全な親会社であるから、控訴人の抵当債務は事実上混同に等しい状態で消滅しているといえるのである。かような事情下において、控訴人が抵当権者の同意を理由に本件賃貸借の終了を主張するのは、信義則に反するといわなけ 社であるから、控訴人の抵当債務は事実上混同に等しい状態で消滅しているといえるのである。かような事情下において、控訴人が抵当権者の同意を理由に本件賃貸借の終了を主張するのは、信義則に反するといわなければならない。(三) 控訴人の主張二、(二)は争う。同二、(三)は認める。控訴人の主張一 (被控訴人の主張一に対する答弁)被控訴人主張の一(一)、(二)は認める。同一(三)中賃借土地が袋地であることおよび特約の趣旨は否認する。 抵当債務は事実上混同に等しい状態で消滅しているといえるのである。かような事情下において、控訴人が抵当権者の同意を理由に本件賃貸借の終了を主張するのは、信義則に反するといわなければならない。(三) 控訴人の主張二、(二)は争う。同二、(三)は認める。控訴人の主張一 (被控訴人の主張一に対する答弁)被控訴人主張の一(一)、(二)は認める。同一(三)中賃借土地が袋地であることおよび特約の趣旨は否認する。そして、被控訴人がその主張の土地(新通路)について現になお通行権を有することは争うが、かりに被控訴人においてなお本件賃借権を有するとするならば、新通路について通行権を有することになることを認める。二 (賃貸借の終了原因等)(一) 本判決添付別紙物件目録第一a、b、c、d、第二a、b、d、e、g、h、i、j、kの各物件は、いずれも工場抵当法による工場財団組成物件である。そして、同法一三条、一四条によれば、工場財団およびこれに属する物件を賃貸するには、抵当権者の同意を要するのであり、この同意を欠いた賃貸借はその効力を生じないものと解すべきである。本件工場財団の抵当権者は、訴外株式会社千葉銀行、同三菱商事株式会社、同国、および同隣化学工業株式会社であるところ、これらの抵当権者は、いずれも無条件の同意を与えたのではなく、千葉銀行は、昭和三三年七月一九日「期間満了の際には改めて当行の承認を得なければならない。」との、三菱商事は、同年九月一九日「賃貸期間三年の期間満了後はいつにても立退かせうること。」との、国の代理人たる関東財務局長は、同年一一月一一日「賃貸期間満了の際は、改めて当局の許可をうること。」との、隣化学工業は、同月二五日「三カ年の期間満了後はいつにても立退かせること。」との各条件を付して同意を与えたの 東財務局長は、同年一一月一一日「賃貸期間満了の際は、改めて当局の許可をうること。」との、隣化学工業は、同月二五日「三カ年の期間満了後はいつにても立退かせること。」との各条件を付して同意を与えたのであるから、控訴人、被控訴人間の本件工場財団組成物件についての賃貸借は、三年の期間経過とともに当然失効し、その後更新その他の問題が生起する余地がない。(二) かりに三年の期間経過とともに当然失効しないとしても、前項記載の諸事情は、本件賃貸借が一時使用のためのものである根拠の一となりうるものである。 学工業は、同月二五日「三カ年の期間満了後はいつにても立退かせること。」との各条件を付して同意を与えたのであるから、控訴人、被控訴人間の本件工場財団組成物件についての賃貸借は、三年の期間経過とともに当然失効し、その後更新その他の問題が生起する余地がない。(二) かりに三年の期間経過とともに当然失効しないとしても、前項記載の諸事情は、本件賃貸借が一時使用のためのものである根拠の一となりうるものである。(三) なお、原判決添付別紙第二物件目録記載第一の土地は、その一部について、その後の分筆により本判決添付別紙物件目録記載第一の土地のとおり表示が変更された。(四) 被控訴人の主張二、(二)の信義則違反の主張は争う。証拠の関係(省略) 理由 一後記(一)ないし(五)および(八)欄各記載の当事者間に争いのない事実、いずれも成立に争いのない甲第一号証の一ないし三、甲第四号証、甲第五号証の一、二、甲第一七、一八、二六、二七号証、甲第三三号証の一、乙第一号証、原審証人Bの証言、同証言によつて成立を認めうる甲第一九号証の一、二、原審および当審証人Aの証言(ただし、後記採用しない部分を除く。)、同証言により成立を認めうる乙第二号証の一ないし四、 原審証人Cの証言(ただし、後記採用しない部分を除く。)、同証言により成立を認めうる乙第一二号証、原審証人D、同E、同F(ただし、後記採用しない部分を除く。)同G、当審証人H、の各証言、原審および当審における被控訴会社代表者尋問の結果(ただし後記採用しない部分を除く。)を総合すれば、つぎの事実を認めることができる。(一) 控訴会社は、もと商号を鴨川化工株式会社と称していたが、昭和三 および当審における被控訴会社代表者尋問の結果(ただし後記採用しない部分を除く。)を総合すれば、つぎの事実を認めることができる。(一) 控訴会社は、もと商号を鴨川化工株式会社と称していたが、昭和三七年四月一日これを現在の商号鴨川化成工業株式会社に変更したものであるところ、戦後船橋市a1町b1丁目所在の工場でカーバイトの生産をなし、その後フエロニツケルの製造を始めた。控訴会社は、さらに、右工場敷地内の一隅である原判決添付別紙第二物件目録第一記載の土地(ただし、現在は分筆により本判決添付別紙物件目録第一記載のとおり表示が変更されていることは、当事者間に争いがない。)部分を用い、訴外帝国酸素株式会社から資金をえて、同所に建物、ガス発生器、タンク等を設け、帝国酸素がこれらに機械器具等の施設をなし、控訴会社と帝国酸素が相提携して、控訴会社が製造する前記カーバイトを原料として、溶解アセチレンガスを製造していた。 る原判決添付別紙第二物件目録第一記載の土地(ただし、現在は分筆により本判決添付別紙物件目録第一記載のとおり表示が変更されていることは、当事者間に争いがない。)部分を用い、訴外帝国酸素株式会社から資金をえて、同所に建物、ガス発生器、タンク等を設け、帝国酸素がこれらに機械器具等の施設をなし、控訴会社と帝国酸素が相提携して、控訴会社が製造する前記カーバイトを原料として、溶解アセチレンガスを製造していた。しかし、昭和三二年一〇月ごろ控訴会社が資金繰りに失敗し、経営不振におちいつたので、その製造を中止し、帝国酸素は、そのころその施設した機械器具等のほとんど全部を撤去して同所より引き揚げた。(二) 控訴会社は、同年末倒産状態におちいり、ついに東京地方裁判所から整理開始の命令を受けるのやむなきに至り、昭和三三年三月二八日Aが管理人に選任され就任した(整理開始命令および管理人就任については、当事者間に争いがない。)。当時控訴会社は少なからざる負債を負つていたが、これに見合うだけの資産を有するものとして、結論的には再建可能と見込まれていたが、整理再建の資金が極度に枯渇し、不用資産の売却もしくは賃貸により資金を捻出する必要にせまられていた。(三) たまたま右帝国酸素の引き揚げた跡には、控訴会社の主力工場たる電炉工場使用上共通する通路、鉄道側線そ が極度に枯渇し、不用資産の売却もしくは賃貸により資金を捻出する必要にせまられていた。(三) たまたま右帝国酸素の引き揚げた跡には、控訴会社の主力工場たる電炉工場使用上共通する通路、鉄道側線その他の物件がないわけではなかつたが、それらを除けば一応独立して使用が可能であり、一方、I等が新会社を設立し帝国酸素と提携して溶解アセチレンガス製造販売の事業を営むことを計画しており、その工場として帝国酸素がさきに引き揚げた跡を賃借したい希望を有していたので、控訴会社は、これに右引き揚げた跡を賃貸することにした。当時控訴会社の再建計画はまだ具体化していなかつたので、右溶解アセチレンガス製造事業は、さし当つては右新会社の独立事業とせざるをえなかつたが、将来は控訴会社と右新会社の提携事業とすることが構想されており、また、右新会社の従業員は控訴会社のそれを優先採用することによつて控訴会社再建の一助とすることが当事者間で諒承されていた。かくして、新会社発起人総代Iと控訴会社管理人Aは、同年六月一〇日1.控訴会社は新会社発起人総代Iに対し、溶解アセチレンガス製造のために原判決添付別紙第二物件目録記載の土地建物等(本判決添付別紙物件目録記載の土地建物等と同じ、以下「本件物件」という。 事業とすることが構想されており、また、右新会社の従業員は控訴会社のそれを優先採用することによつて控訴会社再建の一助とすることが当事者間で諒承されていた。かくして、新会社発起人総代Iと控訴会社管理人Aは、同年六月一〇日1.控訴会社は新会社発起人総代Iに対し、溶解アセチレンガス製造のために原判決添付別紙第二物件目録記載の土地建物等(本判決添付別紙物件目録記載の土地建物等と同じ、以下「本件物件」という。)を賃貸すること、2.賃借人はガス製造上右の外控訴会社所有の構内通路の部分や用水等を使用することができること、3.賃借人は契約の保証金として会社設立登記完了のとき金五〇万円、出荷開始のとき金五〇万を各支払うこと、4.期間は契約成立の日から満三年として、期間満了の際に賃貸人または賃借人からなんらの申出がない場合にはさらに三年延長するも、賃貸人または賃借人において期間満了により賃貸借を終了せしめる場合には、期間満了の六カ月以前にその旨を書面をもつて相手方に申出ること、5.賃料は月額 らなんらの申出がない場合にはさらに三年延長するも、賃貸人または賃借人において期間満了により賃貸借を終了せしめる場合には、期間満了の六カ月以前にその旨を書面をもつて相手方に申出ること、5.賃料は月額最低金一〇万円、アセチレンガス製造量が月額一〇トンを超えた場合は一〇トンを超えた数量につき一トン当り金一万円の割合をもつて加算した金額とすること等を定めた賃貸借契約を締結した(右A、I間において本件物件につき賃貸借契約を締結し、その資料が右のとおり定められたことは、当事者間に争いがない。)。そして、合わせて、1.新会社たる被控訴会社が設立されれば右契約は被控訴会社が承継すること、および2.当時控訴会社は東京地方裁判所から整理に伴う会社財産保全処分がなされていて、本件会社財産の賃貸には裁判所の許可を必要としたので、右賃貸借契約は裁判所の許可を条件とすることが約定された。(四) 被控訴会社は、同月二一日その目的を「溶解アセチレンガスの製造販売」として設立登記をし(この事実は、当事者間に争いがない。)その代表者にIが就任した。(五) 一方、控訴会社は同年七月一日東京地方裁判所に右賃貸借の許可申請をしたところ、本件物件中第一a、b、c、d、第二a、b、d、e、g、h、j、kの各物件はいずれも工場抵当法による工場財団組成物件(以下「本件財団物件」という。 とが約定された。(四) 被控訴会社は、同月二一日その目的を「溶解アセチレンガスの製造販売」として設立登記をし(この事実は、当事者間に争いがない。)その代表者にIが就任した。(五) 一方、控訴会社は同年七月一日東京地方裁判所に右賃貸借の許可申請をしたところ、本件物件中第一a、b、c、d、第二a、b、d、e、g、h、j、kの各物件はいずれも工場抵当法による工場財団組成物件(以下「本件財団物件」という。)であり、財団抵当権者として訴外株式会社千葉銀行、同三菱商事株式会社、同国、同燐化学工業株式会社が存した(財団物件および財団抵当権者については、当事者間に争いがない。)ので、同裁判所から右抵当権者の同意書を提出するよう求められ、また、もとより右賃貸借について一般債権者の意向を無視することもできないので、控訴会社は、右賃貸借契約の内容、その必要性を具申して一般債権者、抵当権者にその同意を求めた。を提出するよう求められ、また、もとより右賃貸借について一般債権者の意向を無視することもできないので、控訴会社は、右賃貸借契約の内容、その必要性を具申して一般債権者、抵当権者にその同意を求めた。(六) これに対し、一般債権者は、右賃貸借の必要性とその利点を認め、当時その同意を与えた。また、抵当権者については、当初燐化学がこれに消極的であつたが、先順位でもあり、債権額もより多い他の抵当権者らからの説得をうけ、結局他の抵当権者らと同じ考え、すなわち、本件賃貸借の必要性とその利点は認めるが、さりとてこれが長期にわたつてその存在が将来の抵当権実行の障害になることを懸念し、三年の期間満了の際にはもう一度抵当権者の同意を要することにすればよいとの考えに到達した。かくして、千葉銀行は同月一九日、三菱商事は同年九月一九日、国(関東財務局長)は同年一一月一一日、燐化学は同月二五日右の趣旨の留保を附して右賃貸借に同意を与えた。(七) 同裁判所は、同年一一月二四日整理会社たる控訴会社に対する財産保全処分の解除として、前記賃貸借契約に許可を与えた。(八) かくして、控訴会社管理人A、被控訴会社代表者Iは、同月二五日改めて前記賃貸借契約と同一内容の契約を締結し、その効力が被控訴会社成立の日にさかのぼる旨を相互に約定した(同日本件物件についての賃貸借契約が締結され、それに遡及効を与える旨約定されたことは、当事者間に争いがない。 (七) 同裁判所は、同年一一月二四日整理会社たる控訴会社に対する財産保全処分の解除として、前記賃貸借契約に許可を与えた。(八) かくして、控訴会社管理人A、被控訴会社代表者Iは、同月二五日改めて前記賃貸借契約と同一内容の契約を締結し、その効力が被控訴会社成立の日にさかのぼる旨を相互に約定した(同日本件物件についての賃貸借契約が締結され、それに遡及効を与える旨約定されたことは、当事者間に争いがない。)。なお、それまでに、前記約定に伴う保証金合計金一〇〇万円の授受も行われた。(九) 被控訴会社は、右裁判所の許可をうる前から溶解アセチレンガスの製造準備にかかり、同年七月二三日千葉県知事に製造許可の申請をし、同年十月三〇日その許可をえ、製造を始めた。しかし、溶解アセチレンガス製造施設において、建物は重要な構成要素をなすものである ンガスの製造準備にかかり、同年七月二三日千葉県知事に製造許可の申請をし、同年十月三〇日その許可をえ、製造を始めた。しかし、溶解アセチレンガス製造施設において、建物は重要な構成要素をなすものであるのみならず、本件物件中の土地建物は、以前にこれらにより溶解アセチレンガスの製造がなされ、土地は相当の面積を有し、用水の便をそなえ、建物ももともと溶解アセチレンガス製造の事業のために建築され、当時補修の必要があり、補修さえすれば一応該事業を営むことのできる建物ではあつたが、しかし前記のとおり必要な機械器具等の施設はほとんど全部撤去されていたため、本件物件中、ガス製造に直接関係する物件は本判決添付別紙物件目録第二j、kのガス発生器とタンク各一器にすぎず、しかも該ガス発生器は据付工事を要し、建物は空屋同然で、わずかな補修をもつてはとうていただちに溶解アセチレンガス製造事業を開始できるような状況になかつた。したがつて、少くとも被控訴会社がかねて帝国酸素と交渉していたところに従い、必要な機械器具等の施設の大部分を同会社から借受けてこれを設置し、ガス発生器も一台を借受けて設置し合計二台とし、また、ポンプ等一部の施設は被控訴会社においてこれを設備し、かつ、I個人が銀行から金一五〇〇万円の融資を受けて、販売のため溶解アセチレンガスを充填するボンベを買いととのえ、ようやく、被控訴会社が溶解アセチレンガスの製造を開始することができた。(一〇) その製造実績は、当初こそ月産一〇トンに満たなかつたが、次第に業績が上り、昭和三六年には少い月で一六トン余、多い月で三〇トン近くの生産が行われるようになつた。 ポンプ等一部の施設は被控訴会社においてこれを設備し、かつ、I個人が銀行から金一五〇〇万円の融資を受けて、販売のため溶解アセチレンガスを充填するボンベを買いととのえ、ようやく、被控訴会社が溶解アセチレンガスの製造を開始することができた。(一〇) その製造実績は、当初こそ月産一〇トンに満たなかつたが、次第に業績が上り、昭和三六年には少い月で一六トン余、多い月で三〇トン近くの生産が行われるようになつた。以上の事実を認めることができ、前掲証人A、同F、前掲被控訴会社代表者の供述中右認定にそわない部分は、右認定の資料に供した各証拠と対比して採用できない。もつと の生産が行われるようになつた。以上の事実を認めることができ、前掲証人A、同F、前掲被控訴会社代表者の供述中右認定にそわない部分は、右認定の資料に供した各証拠と対比して採用できない。もつとも、前記(六)項記載の抵当権者の同意について、前掲乙第二号証の二ないし四、同第一二号証によれば、千葉銀行の同意書には、「期間満了の際には改めて当行の承認を得なければならない」との、三菱商事の同意書には「賃貸期間三ケ年の期間満了後は何時にても立退かせうること」との国(関東財務局長)の同意書には、「賃貸期間満了の際には、改めて当局の許可を得ること」との、燐化学の同意書には、「賃貸期間三ケ年の期間満了後はいつにても立退かせ得ること」との各条件が付加されていることを認めることができる。右各条件は、これを要約するに、千葉銀行と国の条件は、「賃貸期間満了の際に賃貸を継続するには改めて同意を受けること」ということができるのに対し、三菱商事、燐化学のそれは、「賃貸期間満了後はいつにても立退かせうること」ということができる。両者間には不一致があり、後者は、あたかも賃貸期間を三年に限定し、これに対する更新は一切認めない趣旨にとれないこともない文言になつており、前掲証人Cの証言中にも同趣旨の供述があるが、さりとて右文言には更新を一切認めないことが明示されている訳ではない。ことに本件において、右同意の時点において賃貸期間(三年)経過後の明渡の必要性が具体化していたことを認めるに足りる証拠なく、むしろ、控訴会社の再建のために、本件賃貸借の継続の必要なことが予定されていたのであり、そのためにこそ、その契約には更新条項が付加されていたといいうるのである。燐化学その他の抵当権者が当時抵当権の実行に着手したことも、着手しようとしていたこともこれを認めるに足る証拠がないから、具 とに本件において、右同意の時点において賃貸期間(三年)経過後の明渡の必要性が具体化していたことを認めるに足りる証拠なく、むしろ、控訴会社の再建のために、本件賃貸借の継続の必要なことが予定されていたのであり、そのためにこそ、その契約には更新条項が付加されていたといいうるのである。燐化学その他の抵当権者が当時抵当権の実行に着手したことも、着手しようとしていたこともこれを認めるに足る証拠がないから、具 、そのためにこそ、その契約には更新条項が付加されていたといいうるのである。燐化学その他の抵当権者が当時抵当権の実行に着手したことも、着手しようとしていたこともこれを認めるに足る証拠がないから、具体的な明渡の必要があつたとは認めがたく、右文言は、ひつきよう、将来の抵当権実行に対する障碍の予防以上のものとは認めがたい。再建整理の可能性が見込まれていた当時においてはむしろ抵当権実行の見込は少かつたといえるのであり、その他前掲各証拠、前認定の諸事実に対比するときは、右文言の趣旨は、更新の際にはあらためて同意を要するというにあると認められるのであつて、前掲証人Cの証言中右認定にそわない部分はにわかに採用しがたいというべきである。そして、他に前記認定を左右するに足る証拠はない。してみれば本件各抵当権者の同意にはその趣旨において格別の差があるとは認められないのである。二本件賃貸借の性質についてみるに、前掲甲第一号証の二、乙第一号証によれば、本件賃貸借に当り本件物件を溶解アセチレンガス製造施設と称したことが認められ、前認定の事実に徴すれば、本件物件は溶解アセチレンガス製造に適する条件をそなえてはいるが、本件賃貸借の主要部分は建物であつて、土地の使用といえどもその他の物件の使用に附随するにすぎないといえるから、その限度において本件賃貸借は、溶解アセチレンガス製造を目的としてなされた建物の賃貸借に外ならず、ガス発生器およびタンク各一基の賃貸はこれに附随的に附加されたものであると認めるのが相当であつて、賃料が前記のとおり一部スライド制をとつていることは、必ずしも右の判断に抵触するものではない。三控訴人は、「控訴会社管理人Aは、昭和三五年九月八日付書面をもつて被控訴会社に対し契約更新拒絶の意思表示をしたから、本件賃貸借は三年の期間満了により昭和 ずしも右の判断に抵触するものではない。三控訴人は、「控訴会社管理人Aは、昭和三五年九月八日付書面をもつて被控訴会社に対し契約更新拒絶の意思表示をしたから、本件賃貸借は三年の期間満了により昭和三六年六月九日終了した。 右の判断に抵触するものではない。三控訴人は、「控訴会社管理人Aは、昭和三五年九月八日付書面をもつて被控訴会社に対し契約更新拒絶の意思表示をしたから、本件賃貸借は三年の期間満了により昭和 ずしも右の判断に抵触するものではない。三控訴人は、「控訴会社管理人Aは、昭和三五年九月八日付書面をもつて被控訴会社に対し契約更新拒絶の意思表示をしたから、本件賃貸借は三年の期間満了により昭和三六年六月九日終了した。」と主張するので、この点についてみると、右意思表示のなされたことは当事者間に争いがない。そして、右賃貸借の期間は契約成立の日から満三年として、期間満了の際に賃貸人または賃借人からなんら申立がない場合にはさらに三年延長するものとし、期間満了により賃貸借を終了せしめる場合には、賃貸人または賃借人は期間満了の六カ月以前に書面をもつてその旨を相手方に申出ることを要すると約定されていたことは、前認定のとおりであるから、右約定文言に従うと、前記更新拒絶の意思表示により本件賃貸借が三年の期間満了とともに終了したと解しうるかのようである。しかしながら、前認定の事実によれば、本件賃貸借は建物の賃貸借とみるべきものであり、これがなされたのは、当事控訴会社の再建が可能と見込まれていたがその資金が不足していてその捻出の必要性があり、同時に控訴会社の従業員を被控訴会社において雇用することによつて右再建の一助とするためであり一方控訴会社としてはここに少なからざる投資を行うことが予定され、現に施設を備える等の投資を行い、ことに、将来は、本件事業は控訴会社と被控訴会社の提携事業となることが当事者間において望まれていたのであつて、期間を三年とはするが、その更新が排除されていた訳ではなく、むしろ、当時まだ再建の具体案が確立していなかつたし、また、本件において、三年のごとき短期間で被控訴会社の事業が軌道にのり、その間に利益を挙げ、投下資本を完全に回収しうる見込があつたわけでないから、その更新は双方にとつて必要と予測されていたといえるのであり、しかも前認定に のごとき短期間で被控訴会社の事業が軌道にのり、その間に利益を挙げ、投下資本を完全に回収しうる見込があつたわけでないから、その更新は双方にとつて必要と予測されていたといえるのであり、しかも前認定によれば更新後の期間も三年と特に定められていたのである。したがつて、右契約は、単に約定期間の満了によつて当然に終了するいわゆる一時の賃貸借ではなく、右の如き特約によつて更新の予定された賃貸借であつて、かかる特約は、賃借人にとつて格別不利なものといえないから、当事者はこの特約によつて賃貸借を更新すべく、賃貸人は、期間満了の際になんらの理由なくその更新を拒絶しうるのではなく、抵当権者による抵当権実行の必要ある場合のほか自己使用の必要がある等正当の理由がある場合でなければこれを拒絶しえない趣旨と解するのを相当とする。 るいわゆる一時の賃貸借ではなく、右の如き特約によつて更新の予定された賃貸借であつて、かかる特約は、賃借人にとつて格別不利なものといえないから、当事者はこの特約によつて賃貸借を更新すべく、賃貸人は、期間満了の際になんらの理由なくその更新を拒絶しうるのではなく、抵当権者による抵当権実行の必要ある場合のほか自己使用の必要がある等正当の理由がある場合でなければこれを拒絶しえない趣旨と解するのを相当とする。これに対し、控訴人は、「被控訴会社のために本件賃貸借締結の交渉にあたつたJは、控訴人に対し、三年の期間満了後必ず賃借物件を返還することを約束した。」と主張するが、これを認めるに足る証拠なく、かりに交渉の過程において右のような発言があつたとしても、終局的に合意された契約条項は前認定のとおりであるから、右発言があつたからといつて本件賃貸借が三年の期間満了とともに当然消滅するとすべきではない。また、控訴人は、「本件賃貸借契約自体控訴会社の債権者が右賃貸借に対してする承諾の条件に従うことと定められていたところ、右債権者らの承諾条件は、三年の期間満了後は無条件で明渡すことというのである。」というが、前認定のとおり、一般債権者は前記賃貸借につきそのまま承諾を与えたのであり、抵当権者らの承諾の条件も前認定のとおりであつて、控訴人の右主張のような内容であることを認めるに足る証拠はない。かえつて、一般債権者は前記賃貸借を無条件で承諾し、抵当権者は更新の際は 与えたのであり、抵当権者らの承諾の条件も前認定のとおりであつて、控訴人の右主張のような内容であることを認めるに足る証拠はない。かえつて、一般債権者は前記賃貸借を無条件で承諾し、抵当権者は更新の際はあらためて同意をうることを条件として承諾したものと認めるべきこと前認定のとおりであるから、いずれも賃貸借契約の内容と実質的に異なるものとはいえず、したがつて、かりに右賃貸借は債権者らの承諾の内容条件に従うとの約定がなされていたとしても、前説示の判断を左右するものではないというべきである。さらに、控訴人は、「右抵当権者の同意は、工場抵当法上賃貸借の要件とされているから、この事情も前記更新拒絶の意思表示により本件賃貸借が終了するものであることを示す。」というが、右同意の内容が右に述べたとおりであつてみれば、その同意が工場抵当法上どのような地位を有するにせよ、これをもつて賃貸人においてなんら正当の理由もなく更新拒絶の根拠となしえないことはいうまでもない。 るものではないというべきである。さらに、控訴人は、「右抵当権者の同意は、工場抵当法上賃貸借の要件とされているから、この事情も前記更新拒絶の意思表示により本件賃貸借が終了するものであることを示す。」というが、右同意の内容が右に述べたとおりであつてみれば、その同意が工場抵当法上どのような地位を有するにせよ、これをもつて賃貸人においてなんら正当の理由もなく更新拒絶の根拠となしえないことはいうまでもない。しかるに、控訴人において、前記更新拒絶につき右に説示したような正当の理由があることをなんら主張立証しない。したがつて約定の期間の満了または更新の拒絶により本件賃貸借が終了したとする控訴人の主張は採用することができない。四なお、控訴人は、「整理会社における管理人は、民法第六〇二条にいう処分の能力または権限を有しない者に該当するから、本件賃貸借は、三年の経過をもつて終了した。」と主張するが、商法第三九八条第二項によれば、整理会社において管理人が選任されたときは、会社財産の管理および処分の権利は管理人に専属し、なんらの制限もうけていないことが明らかであるから、右主張は採用できない。<要旨>五控訴人は、「工場財団組成物件について賃貸借をするには工場抵当権者の同意を要するのであつて、この</要旨 属し、なんらの制限もうけていないことが明らかであるから、右主張は採用できない。<要旨>五控訴人は、「工場財団組成物件について賃貸借をするには工場抵当権者の同意を要するのであつて、この</要旨>同意を欠く賃貸借は無効と解すべきであるところ、本件賃貸借においては期間三年についてのみの同意があるだけで更新された賃貸借につき同意がないから、右は三年の経過により当然消滅した。」と主張し、これに対し被控訴人は、「右同意は抵当権者に対する対抗要件にすぎないから、これを欠く賃貸借も当事者間については有効と解すべきであるのみならず、本件において抵当権者は更新を前提とした同意を与えているから、三年で当然消滅するいわれがない。」と主張するので、この点について検討する。思うに、企業経営のための土地、建物、機械器具その他の物的設備、工業所有権等は経済上たがいに有機的な結合をなし、全体としてみた場合特別の経済的価値を有するものであるから、これらを一括して一個の財団を組成し、これに担保権を設定する方途を開いたのが工場抵当法である。 らず、本件において抵当権者は更新を前提とした同意を与えているから、三年で当然消滅するいわれがない。」と主張するので、この点について検討する。思うに、企業経営のための土地、建物、機械器具その他の物的設備、工業所有権等は経済上たがいに有機的な結合をなし、全体としてみた場合特別の経済的価値を有するものであるから、これらを一括して一個の財団を組成し、これに担保権を設定する方途を開いたのが工場抵当法である。組成された財団は一個の不動産とみなされるのであるが(同法第一四条第一項)このように一個の不動産とみなしても、物理的には各独立したものであることに変りはなく、ことに動産は独立して流通におかれる可能性が少くないから、法は第一三条第二項本文において、「工場財団ニ属スルモノハ之ヲ譲渡シ又ハ所有権以外ノ権利、差押、仮差押若ハ仮処分ノ目的ト為スコトヲ得ス」と規定し、財団組成物件の個々的な処分を法律上禁止し、財団の単一体としての価値を維持し、抵当権の保護を図つているのである。その趣旨および右条項の文理からすれば、同項に違反してなされた譲渡その他の処分は、その効力を生じないものと解するのが相当である。この理は、工場財団よりもその有機的結合の度合いが を図つているのである。その趣旨および右条項の文理からすれば、同項に違反してなされた譲渡その他の処分は、その効力を生じないものと解するのが相当である。この理は、工場財団よりもその有機的結合の度合いが弱いといえる同法第二条以下のいわゆる狭義の工場抵当について、法は、その目的物件に対する個々的な差押等を禁止する(同法第七条第二項参照)だけで、とくにその処分を禁止せず、ただ第三者に引渡されても即時取得の成立しないかぎり抵当権が追及しうる(同法第五条参照)としているにすぎないのに対し、工場財団の組成物件については、前記明文をもうけて抵当権の実行による処分以外の処分を禁止していることからも、理解しうるところである。そして、右法条の但書は、「但シ抵当権者ノ同意ヲ得テ賃貸ヲ為スハ此ノ限リニ在ラズ」と規定する。その趣旨を考えるに、工場財団抵当を設定した場合、財団の使用は当然設定者に認められるべきこと一般の抵当の場合と異るところがない。したがつて財団について第三者のために賃借権を設定し、これに使用を委ねたとしても、そのこと自体は、抵当権者に不利益をもたらすわけではないけれども、財団組成物件が抵当権設定者の現実支配を離れ、第三者の支配下に入るときは、往々にしてその有機的結合の弛緩を招き、ひいては財団の交換価値の低下を来すことなきを保し難い。 設定した場合、財団の使用は当然設定者に認められるべきこと一般の抵当の場合と異るところがない。したがつて財団について第三者のために賃借権を設定し、これに使用を委ねたとしても、そのこと自体は、抵当権者に不利益をもたらすわけではないけれども、財団組成物件が抵当権設定者の現実支配を離れ、第三者の支配下に入るときは、往々にしてその有機的結合の弛緩を招き、ひいては財団の交換価値の低下を来すことなきを保し難い。したがつて、工場財団に属する物件については、賃貸借といえどもこれをみだりに認めるわけにいかないのである。さりとて、財団組成物件の利用は、抵当権設定者自身によるよりも、第三者によつた方がより経済的に効率的な場合なしとしない。もしそういう場合があるならば、それは抵当権設定者にとつても抵当権者にとつても好ましいことといわなければならない。この二つの要請における妥協として認められたのが抵当権者の同意であるから、それはこの場合賃 ういう場合があるならば、それは抵当権設定者にとつても抵当権者にとつても好ましいことといわなければならない。この二つの要請における妥協として認められたのが抵当権者の同意であるから、それはこの場合賃貸借の有効要件であつて、単なる対抗要件というべきではない。被控訴人の主張は採用しない。しからば、本件の場合、抵当権者らは賃借権設定の時に同意を与えたのみで、更新について同意を与えていないから、更新の効力なく、賃貸借が期間の満了によつて終了したというべきか否かを考えてみるに、右抵当権者らは、本件賃貸借について三年の期間満了の際にはあらためて同意をえなければならない旨の条件を附加してこれに同意を与えたものと解すべきことは、いずれも前認定のとおりである。したがつて、右抵当権者の同意が少くとも期間三年の賃貸借に対する同意であることはいうまでもない。ところが右同意には、三年の期間満了の際には改めて同意をえなければならない旨の条件が附加されているので、その意味を考えてみるに、工場財団抵当においても抵当権者はその価値のみを把握しているものにすぎないことは、一般の抵当権の場合と異なるところがないから、その同意のもとに一旦賃借人に許容された利用が抵当権を害するに至つたとかあるいは抵当権実行の必要がある等特段の事情のないかぎり、抵当権者としてその利用を排除しなければならない必要は全くなく、ことに本件においては、前記のとおり、会社の再建が見込まれており、その再建のために必要なものとして賃貸借が締結され、賃貸人、賃借人間においてその更新を必要なものとしていたのであつて、抵当権者らは右賃貸借の必要性と利点を諒承したが、さりとてこれが長期にわたつてその存在が将来の抵当権実行の障害になることを懸念し、期間満了の際にはあらためて同意を得ることを条件として本件同意を与えた らない必要は全くなく、ことに本件においては、前記のとおり、会社の再建が見込まれており、その再建のために必要なものとして賃貸借が締結され、賃貸人、賃借人間においてその更新を必要なものとしていたのであつて、抵当権者らは右賃貸借の必要性と利点を諒承したが、さりとてこれが長期にわたつてその存在が将来の抵当権実行の障害になることを懸念し、期間満了の際にはあらためて同意を得ることを条件として本件同意を与えた 当権者らは右賃貸借の必要性と利点を諒承したが、さりとてこれが長期にわたつてその存在が将来の抵当権実行の障害になることを懸念し、期間満了の際にはあらためて同意を得ることを条件として本件同意を与えたのであり、右のような条件を付したのは、むしろ、抵当権者として更新を前提としたうえで更新の際に右のような点について再度考慮する機会を留保したにすぎないといえるから、右条件は、期間満了の際に抵当権者にとつてなんの必要性もない場合においても更新に対し同意を与えずにその時点で賃貸借を終了させる権限を留保する趣旨と解すべきではなく、右賃貸借の存在が抵当権を害するに至つたとかあるいは抵当権実行の必要がある等正当の理由のある場合でなければ更新に同意を与えないで賃貸借を終了させることができない趣旨と解するのが相当である。ただし、右のような正当の理由がない場合には、本件賃貸借の存在は、むしろ再建の一助となつて抵当権設定者たる会社の利益となるのみならず、債権の満足を期待する抵当権者にとつても利益にこそなれ、なんら不利益になるものではないからである。そして、本件において、抵当権者に右のような正当の理由があつて、更新を拒絶したことについてはこれを認めるに足るなんらの証拠がないから、本件賃貸借が三年の期間経過とともに当然終了したということはできない。六そうであつてみれば、本件賃貸借は、三年の期間満了の都度当事者間において約定された前記更新条項に従つて三年の賃貸借期間をもつて有効に更新されているというべきである。したがつて、本件賃貸借はなお当事者間に存続するものというべく、控訴人の賃貸借終了の主張は採用できない。七そこで被控訴人の通路妨害排除の請求(本訴)についてみるに、控訴人が、被控訴人の本件物件の賃借権が終了したことを理由として被控訴人が主文第一項記載 く、控訴人の賃貸借終了の主張は採用できない。七そこで被控訴人の通路妨害排除の請求(本訴)についてみるに、控訴人が、被控訴人の本件物件の賃借権が終了したことを理由として被控訴人が主文第一項記載の通路を通行する権利を有することを争つていることが明らかであるが、控訴人は、被控訴人が右賃借権を有するとすれば被控訴人が右通路を通行する権利を有することになることを認めており、本件において被控訴人が右賃借権を有すること前叙のとおりであるから、被控訴人の右本訴請求は理由があり、これを認容すべきである。 ついてみるに、控訴人が、被控訴人の本件物件の賃借権が終了したことを理由として被控訴人が主文第一項記載の通路を通行する権利を有することを争つていることが明らかであるが、控訴人は、被控訴人が右賃借権を有するとすれば被控訴人が右通路を通行する権利を有することになることを認めており、本件において被控訴人が右賃借権を有すること前叙のとおりであるから、被控訴人の右本訴請求は理由があり、これを認容すべきである。これに反し、本件賃貸借が終了したことを理由として本件物件の明渡等を求める控訴人の反訴請求はその余の判断をするまでもなく、理由がないことになるから失当として棄却を免れない。八以上の次第で、本件控訴は理由がないから、これを棄却し、被控訴人が当審においてした請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九五条、第八九条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用して、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官小川善吉裁判官松永信和裁判官川口冨男)(別紙)物件目録第一土地船橋市a1町b1丁目ag1番のh1  宅地六一一三・〇三坪(二〇五九・六〇平方米)bi1番のj1  宅地六七五・四三坪(二二三二・八二平方米)ck1番のl1  宅地五四・九三坪(一八一・五八平方米)dm1番のn1  宅地四六・六二坪(一五四・一一平方米)e 用水溝一一・四〇坪(三七・六八平方米)f 用水溝九坪(二九・七五平方米)go1番のp1  宅地一一二坪(三七〇・二四平方米)(以上の配置は、本判決添付別紙第二図面のとおり)第二建物等右第一記載の土地上にあるa 木造亜 溝九坪(二九・七五平方米)go1番のp1  宅地一一二坪(三七〇・二四平方米)(以上の配置は、本判決添付別紙第二図面のとおり)第二建物等右第一記載の土地上にあるa 木造亜鉛葺平家建事務所一棟建坪一〇坪(三三・〇五平方米)b 木造亜鉛葺平家建倉庫一棟建坪七・五坪(二四・七九平方米)c ブリツク造亜鉛葺平家建倉庫一棟建坪七五坪(二四七・九三平方米)d 一部鉄筋コンクリート造亜鉛葺平家建製造室一棟建坪一〇七・二五坪(三五四・五四平方米)e 木造亜鉛葺平家建発生器室一棟建坪二二坪(七二・七二平方米)f 木造亜鉛葺平家建工員控室一棟建坪三坪(九・九一平方米)g 木造亜鉛葺平家建ポンプ室一棟建坪一・五坪(四・九五平方米)h 木造スレート葺平家建ポンプ室一棟建坪一・五坪(四・九五平方米)i 木造スレート葺平家建ポンプ室一棟建坪一・五坪(四・九五平方米)j ガス発生器容量一五〇〇立帝国酸素式一基k ガスタンク二〇立方米一基別紙第一図<記載内容は末尾1添付>第二図面<記載内容は末尾2添付>

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