令和7(わ)45 傷害被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年5月14日 佐賀地方裁判所
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判決文本文1,621 文字)

令和7年5月14日宣告令和7年(わ)第45号傷害被告事件主文被告人を懲役3年に処する。 この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 【罪となるべき事実】被告人は、令和7年1月5日、佐賀県鳥栖市(住所省略)被告人方において、実子であるA(当時生後2か月)に対し、その頭部をキッチンカウンターの壁面に3回打ち付ける暴行を加え、よって、同人に視野狭窄、四肢麻痺等の後遺症が残存する見込みの入院加療約2か月間を要する右頭頂骨骨折、右側頭部急性硬膜下血腫等の傷害を負わせた。 【法令の適用】罰条刑法204条刑種の選択懲役刑選択刑の執行猶予刑法25条1項訴訟費用の負担刑事訴訟法181条1項本文【量刑の理由】本件暴行の態様は、両手で抱っこしていた被害者の頭部を、キッチンカウンターの石膏ボード部分に3回連続して打ち付ける、というもので、生後2か月で首の座っていない乳児に対する暴行としてみると、相当程度強度なものである。そのような暴行によって、被害者は、入院加療約2か月間を要する頭部の骨折や急性硬膜下血腫という重い傷害を負わされた上、左方の視野狭窄、四肢の麻痺や運動機能の低下のほか、高次脳機能障害、IQの低下、性格の変化といった後遺症が生ずる可能性があり、かつ、後遺症が出ることはほぼ確実である、というのであるから、生じ た結果は取り返しのつかない重大なものというほかない。 被告人は、当時の妻(被害者の母。以下、単に「妻」という。)の希望もあって育児休暇を取るなどして被害者の養育に当たっていたところ、自宅ではたばこが吸えなかったり、被害者がミルクを吐き戻すことが多くその都度着替えさせる必要があったり、育児の 「妻」という。)の希望もあって育児休暇を取るなどして被害者の養育に当たっていたところ、自宅ではたばこが吸えなかったり、被害者がミルクを吐き戻すことが多くその都度着替えさせる必要があったり、育児の仕方について妻から小言を言われたりしたことでストレスを感じ、被害者の体をつまんだり叩いたりすることでストレスを解消するようになり、本件に至った旨述べるが、抵抗できない乳児に対する暴行を何ら正当化するような動機ではなく、厳しい責任非難は避けられない。もっとも、被告人は、普段は愛情を持って被害者と接しており、本件を含めた被害者に対する有形力の行使は、決して被害者に傷害を負わせることを目的としたものではないことがうかがわれるから、実子に対する虐待事案の中で殊更に悪質なものとまでは評価できない。 そうすると、本件の犯情評価としては、原則的には懲役刑の実刑を選択するのが相当な事案ではあるものの、他の情状事実次第では執行猶予を付すことが社会的に許され得る事案というべきである。 そして、被告人は、本件に関し捜査機関の取調べを受けるようになって以降、一貫して自らの暴行によって被害者が受傷したことを認めて反省の態度を示し、妻からの離婚の申し出を承諾し、今後の養育費や被害者に後遺症が生じた場合の治療費等を支払う旨約束する内容で妻と合意書を交わし、妻は、被告人を許し、刑事処罰を求めていない。また、被告人には、前科前歴がないこと、現在同居している弟が当公判廷に出廷し、今後の監督を約束したこと、その他有利に斟酌できる事情も存する。 以上によれば、被告人に対しては、本件犯行の重大性に相応する懲役3年の刑を科した上で、今回に限り、その刑の執行を5年間猶予し、社会内での贖罪と自力更生に期待することが相当である。 (検察官の求刑:懲役3年の実刑)令和7年5月14 犯行の重大性に相応する懲役3年の刑を科した上で、今回に限り、その刑の執行を5年間猶予し、社会内での贖罪と自力更生に期待することが相当である。 (検察官の求刑:懲役3年の実刑)令和7年5月14日 佐賀地方裁判所刑事部 裁判官山田直之

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