平成12(受)1584 破産債権確定請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年9月24日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄自判 大阪高等裁判所 平成12(ネ)1797
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判決文本文3,926 文字)

主文 1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。 2 上告人が,破産者株式会社D衣料に対し,京都地方裁判所平成10年(フ)第1463号破産事件につき異議に係る350万円の破産債権を有することを確定する。 3 訴訟の総費用は,被上告人の負担とする。 理由 上告代理人露木脩二の上告受理申立て理由について 1 原審が適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1) 株式会社D衣料(以下「破産会社」という。)は,平成11年3月2日,京都地方裁判所において破産宣告を受け(京都地方裁判所平成10年(フ)第1463号破産事件),Bが破産管財人(被上告人)に選任された。 (2) 上告人は,破産会社に対して有する手形貸付金債権につき,平成11年4月16日,同裁判所に対し,破産宣告時における残元本7069万8658円(以下「本件破産債権」という。)及びこれに対する遅延損害金を破産債権として届け出た。 (3) 上告人は,甲外1名所有に係る第1審判決の事実及び理由第二記載の不動産(以下「本件不動産」という。)に,破産会社に対する一切の債権を被担保債権とする極度額5000万円の第5順位の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)を有していたところ,平成11年5月6日,本件不動産を平成10年4月に取得した乙から,本件根抵当権の放棄と引換えに,350万円の弁済を受けた。 (4) 被上告人は,平成11年8月30日の債権調査期日において,本件破産債権のうち350万円について異議を述べた。 - 1 - 2 本件は,上告人が,物上保証人から抵当不動産を取得した者から債権の一部の弁済を受けた場合にも,破産法(以下「法」という。)24条の準用ないし類推適用により,届出債権の全額について権利を行使することができる旨を主張し,被上 証人から抵当不動産を取得した者から債権の一部の弁済を受けた場合にも,破産法(以下「法」という。)24条の準用ないし類推適用により,届出債権の全額について権利を行使することができる旨を主張し,被上告人に対し,本件破産債権のうち異議に係る350万円が破産債権であることの確認を求める債権確定の訴えである。 原審は,前記事実関係の下において,物上保証人が一部の弁済をした場合について,法24条を準用ないし類推適用することは,文理上困難であり,また,物上保証人は,担保物件の限度でのみ責任を負うものであって全部義務者とは性格が異なるから,同条が物上保証人を含まないものとしたことに理由がないとはいえないなどと述べて,上告人の請求を棄却すべきものとした。 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 (1) 【要旨】債務者が破産宣告を受けた場合において,債権の全額を破産債権として届け出た債権者は,破産宣告後に物上保証人から届出債権の弁済を得ても,届出債権全部の満足を得ない限り,なお届出債権の全額について破産債権者としての権利を行使することができるものと解するのが相当である。 その理由は,次のとおりである。 ア債権の一部を弁済した物上保証人は,債務者に対して求償権を取得し,債権者の権利を弁済の割合に応じて代位行使することができるところ(民法502条),破産手続においては,債権の全額を届け出ている債権者に対しその届出債権を弁済した物上保証人は,全部の履行をする義務を負う者(以下「全部義務者」という。)がした届出債権の弁済についての規定の準用により,弁済の割合に応じ,破産債権- 2 -者の権利を取得することとされている(法26条2項,3項)。 イ弁済による代位は代位弁済者が債務者に対して取得する求 届出債権の弁済についての規定の準用により,弁済の割合に応じ,破産債権- 2 -者の権利を取得することとされている(法26条2項,3項)。 イ弁済による代位は代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するための制度であり,そのために債権者が不利益を被ることを予定するものではないから,債権の一部を弁済した物上保証人は,同債権を被担保債権とする抵当権の実行による競落代金の配当について債権者に劣後する(最高裁昭和56年(オ)第1175号同60年5月23日第一小法廷判決・民集39巻4号940頁参照)。 ウ法26条2項にいう「其ノ弁済ノ割合ニ応シテ債権者ノ権利ヲ取得ス」の意味は,複数の全部義務者による一部ずつの弁済により,債権者に届出債権全部を満足させてなお配当金に余剰が生じた場合に,その余剰部分について,その全部義務者が各自の弁済額の割合に応じて債権者の権利を取得する旨を定めたものであって,債権の一部を弁済したにすぎない全部義務者において直ちに届出債権額に対する弁済額の割合に応じて債権者の権利を取得する旨を定めたものではない(最高裁昭和60年(オ)第589号同62年6月2日第三小法廷判決・民集41巻4号769頁,同昭和60年(オ)第1124号同62年7月2日第一小法廷判決〔編注:金融法務事情1178号37頁に登載〕,同平成3年(オ)第491号同7年1月20日第二小法廷判決・民集49巻1号1頁参照)。 そして,物上保証人は,全部義務者と異なり,担保に供した特定財産の価額の限度において責任を負うにすぎないが,物上保証人も連帯保証人等の全部義務者も,債権者が債務者から債権の完全な弁済を受けられない場合に備えて,有限又は無限の責任を負担するものであって,責任の集積により債権の効力の強化を図るという点においては異なるものではないから,法26 も,債権者が債務者から債権の完全な弁済を受けられない場合に備えて,有限又は無限の責任を負担するものであって,責任の集積により債権の効力の強化を図るという点においては異なるものではないから,法26条3項において同条2項を準用する場合についても,上記と別異に解する理由はない。 - 3 -エまた,法24条は,その文言上,複数の全部義務者に対する各破産手続において,債権者が各破産宣告時における債権額をそれぞれ行使することを認めたものであるが,その趣旨は,債務者は債務の履行につきその一般財産を引当てにして無限責任を負担すべきところ,有限の破産財団からの平等配当を目的とする破産手続においては債権全額の弁済が期待できないことから,全部義務者から債権の一部の弁済を受けても,全部義務者の責任を集積した目的に照らし,届出債権全部の満足を得るまでは債権者が破産宣告時における債権額を行使することを認めたものと解することができる。 オ物上保証人が届出に係る破産債権の一部を弁済することにより債権者の有する破産債権の額は減少し,物上保証人は,本来,弁済した価額に応じて債権者と共にその権利を行使することができるものであるが,以上のとおりの弁済による代位制度の趣旨,法26条2項,3項の解釈,物上保証の性質を考え合わせれば,物上保証人は,届出債権の一部を弁済して求償権を取得しても,債権者が届出債権全部の満足を受ける前に,債権者に一部代位して破産財団からの配当により求償権の満足を受けるいわれはないから,届出債権の一部を弁済した物上保証人は,法26条3項において準用する同条2項の規定により,債権者が届出債権全部の満足を受けた後の配当の余剰部分について債権者の権利を取得するにすぎず,債権者は,届出債権全部の満足を受けるまでは,届出債権の全額について破産債権者として 同条2項の規定により,債権者が届出債権全部の満足を受けた後の配当の余剰部分について債権者の権利を取得するにすぎず,債権者は,届出債権全部の満足を受けるまでは,届出債権の全額について破産債権者としての権利を行使することができるというべきである。また,既に説示した法24条の趣旨に照らしても,有限の破産財団からの平等配当を目的とする破産手続においては,届出債権の全額の満足を得るまで債権者が破産宣告時における債権額を行使し得るとすることは,物上保証の目的に沿うものというべきである。 (2) 以上説示したことは,物上保証人から抵当不動産を取得した者が,破産宣告時における債権の全額を破産債権として届け出た破産債権者に対し,その一部を- 4 -弁済する場合であっても,同様というべきである。 (3) これを本件についてみると,前記事実関係によれば,上告人は,債務者である破産会社の破産宣告時において本件債権全額を届け出た後に,物上保証に供された本件不動産を取得した乙から,本件根抵当権を放棄するのと引換えに350万円の弁済を受けたというのであり,いまだ届出債権の全額の弁済を得ていないから,その全額について破産債権者としての権利を行使することができる。被上告人の異議は理由がない。 これと異なる見解に基づき,上告人の本件請求を理由がないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上告人の本件請求は理由があることが明らかであるから,本件請求を棄却した第1審判決を取り消し,これを認容すべきである。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官上田豊三裁判官金谷利廣裁判官奥田昌道裁判官濱田邦夫)- 5 - である。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 裁判長裁判官上田豊三 裁判官金谷利廣 裁判官奥田昌道 裁判官濱田邦夫

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