平成15(行ウ)12 処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年10月29日 さいたま地方裁判所 情報公開
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判決文本文18,126 文字)

- 1 -主文 被告が,原告に対し平成14年2月13日付けでした行政情報非公開決定処分を取り消す。 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求主文同旨第2事案の概要 事案の要旨,(「」。)さいたま市民である原告がさいたま市情報公開条例以下本件条例というに基づき,被告(さいたま市長)に対し「さいたま市α××-1ほかにおける開発,行為等の申請に添付された同意書(以下「本件同意書」という)の情報公開請求」。 (以下「本件公開請求」という)をしたところ,被告が,原告に対し「上記請求。 ,内容に対しては,行政情報の存否を答えるだけで,個人の同意の有無を公開することとなり,個人のプライバシーを侵害するため,本件条例10条の規定により請求を拒否する」との決定(以下「本件非公開処分」という)をしたため,原告が,被告に。 対し,本件非公開処分の取消しを求めた事案である。 本件の争点は(1)本件公開請求に対し,行政情報の存否を明らかにせずに本,件非公開処分をした点に,違法があるか(本件条例10条該当性(2)本件非),公開処分において,手続上の違法があるかである。 本件条例の定め本件処分時における本件条例の関連規定は,次のとおりである(甲1。 )「第7条(行政情報の公開義務)実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る行政情報に次の各号に掲げる情報(非公開情報)のいずれかが記録されている場合を除き,公開請求者に対し,当該行政情報を公開しなければならない。 (1)省略(2)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く)で。 あって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより特定 人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く)で。 あって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)又は特定の個人を識別すること。 はできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 ア法令等の規定又は慣行により公にされ,又は公にすることが予定されている情報イ人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報ウ当該個人が公務員である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分並びに当該公務員の氏名に係る部分であって公にしても当該公- 2 -務員の個人の権利利益を害するおそれがないと認められるもの(3)ないし(7)省略第8条(部分公開等)実施機関は,公開請求に係る行政情報の一部に非公開情報が記録されている場合において,非公開情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは,公開請求者に対し,当該部分を除いた部分につき公開しなければならない。ただし,当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは,この限りでない。 公開請求に係る行政情報に前条2号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る)が記録されている場合において,当該情報のうち,氏名,生年。 月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより,公にしても,個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は,同号の情報に含まれないものとみなして,前項 識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより,公にしても,個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は,同号の情報に含まれないものとみなして,前項の規定を適用する。 第9条(公益上の理由による裁量的公開)実施機関は,公開請求に係る行政情報に非公開情報が記録されている場合であっても,公益上特に必要があると認めるときは,公開請求者に対し,当該行政情報を公開することができる。 第10条(行政情報の存否に関する情報)公開請求に対し,当該公開請求に係る行政情報が存在しているか否かを答えるだけで,非公開情報を公開することとなるときは,実施機関は,当該行政情報の存否を明らかにしないで,当該公開請求を拒否することができる。 第12条(理由付記等)実施機関は,前条各項の規定により公開請求に係る行政情報の全部又は一部を公開しないときは,公開請求者に対し,前項各項に規定する書面によりその理由を示さなければならない」。 基本的事実関係(証拠等の摘示のない事実は,争いのない事実である)。 (1)当事者ア原告は,さいたま市内に住所を有するさいたま市の住民であり,被告は,本件条例2条1項所定の実施機関であるさいたま市長である。 イ原告は,居住するαにおいて,13階建てのマンション建設計画が進行したことから,その環境を守るためとして結成された,Aの代表者に就いている。 (2)本件非公開処分に至る経緯等ア原告は,被告市長であるBが,個人として上記マンション建設計画予定地を所有しており,さいたま市開発行為等指導要綱(以下「本件要綱」という。乙3)に基づく公共・公益施設整備計画の承認申請の過程において,土地権利者として,開発行為計画に同意する旨の署名押印をしたという情報を入手したことから(甲5ないし7,平成 (以下「本件要綱」という。乙3)に基づく公共・公益施設整備計画の承認申請の過程において,土地権利者として,開発行為計画に同意する旨の署名押印をしたという情報を入手したことから(甲5ないし7,平成14年1月31日,本件条例6条に基づき,被)告に対し「さいたま市α××-1ほかにおける開発行為等の申請に添付され,た同意書(本件同意書)の情報公開請求をした(本件公開請求。 」)- 3 -イ本件公開請求について,被告は,平成14年2月13日,原告に対し,本件公開請求に対し行政情報の存否を答えるだけで,個人の同意の有無を公開することとなり,個人のプライバシーを侵害するため,本件条例10条により本件,(。 )。 公開請求を拒否するとして情報非公開決定をした本件非公開処分甲2ウ原告は,本件非公開処分を不服として,平成14年2月18日,本件条例19条に基づき,被告に対し,異議を申し立てた。 被告は,同条1項に基づき,同月28日付けで,さいたま市情報公開・個人情報保護審査会に諮問したところ,同審査会は,同年10月31日付けで,本件公開請求の対象となる情報につき,本件条例10条により,その存否を明らかにしないで,本件公開請求を拒否した本件非公開処分は妥当である旨の答申をした(甲3。 )被告は,上記答申に従い,平成14年11月8日,上記異議申立てを棄却する旨の決定をした(甲3。 )エ原告は,平成15年2月7日,本件非公開処分の取消しを求める本訴を提起した。 (3)本件要綱についてアさいたま市は,同市の「21世紀をリードするみどりの広域交流・生活文化都市」を将来像とする豊かな市民生活を実現するため,開発行為等〔開発行為(都市計画法4条12項に規定する開発行為)及び建築行為(建築基準法6条の規定による建築確認を要する建築物を建築 交流・生活文化都市」を将来像とする豊かな市民生活を実現するため,開発行為等〔開発行為(都市計画法4条12項に規定する開発行為)及び建築行為(建築基準法6条の規定による建築確認を要する建築物を建築する行為又は都市計画法4条11項に規定する第1種特定工作物を建設する行為をいうに関し事業者開)。〕,(発行為等を行う者)の行うべき公共施設及び公益施設の整備等の基準並びに手続について,必要な事項を定めることにより,良好な都市環境の整備を図ることを目的として,本件要綱を制定している(本件要綱1条。 )本件要綱は,開発行為等に関し,事業者(開発行為等を行う者)の行うべき公共施設及び公益施設の整備等の基準並びに手続を規定した,さいたま市の行政指導の内部基準であり,法律・条例とは異なり,事実的な拘束力はあるものの,それ自体法的な拘束力を有するものではない(弁論の全趣旨。 )イ本件要綱は,原則として,開発行為等の区域面積が500㎡以上の規模である場合に適用されるところ(本件要綱3条,開発行為等の申請等の手続は,)本件要綱第3章(28条以下)に定められている。 事業者は,開発行為等の申請に当たり,都市計画法30条に規定する開発許可の申請,建築基準法6条に規定する建築確認申請又は同法18条に規定する計画通知を行う前に,市長に事前協議の申請をし(本件要綱29条参照,公)共・公益施設管理者と協議し(本件要綱30条,その後,市長に対し,公共)・公益施設整備計画の承認を申請し,その承認を受けることとされている(本件要綱31条1項。 )上記の公共・公益施設整備計画の承認申請には,概要図,委任状,公共施設管理者の協議書,設計説明書,全部事項証明書(土地,土地の権利者の同意)書,工作物の権利者の同意書,印鑑証明書等の書類及び図書の添付が必要と 公益施設整備計画の承認申請には,概要図,委任状,公共施設管理者の協議書,設計説明書,全部事項証明書(土地,土地の権利者の同意)書,工作物の権利者の同意書,印鑑証明書等の書類及び図書の添付が必要とさ- 4 -れている(本件要綱31条3項。 )ウ本件要綱31条に基づく公共・公益施設整備計画の承認申請に添付すべき土地の権利者の同意書の書式例として,さいたま市が用意している書面は,別紙(乙4)のとおりであり,冒頭に「・・・開発行為(開発行為等)の計画について異議がないので,土地の権利者として同意します」との記載があり,土。 ,,,,,,地の所在及び地番地目地積権利の種別同意年月日同意者の住所氏名印,摘要の各欄を記入する形式となっている。 (),,, なお被告は都市計画法29条以下に定める開発行為の許可手続において同法33条1項14号に定める土地権利者の同意書については,同意者の住所氏名,印欄を黒塗りにしてその余の部分を部分公開している(甲4。 ) 当事者の主張(1)本件条例10条該当性について(原告の主張)ア本件同意書は,土地の権利者が開発行為に同意したことを明らかにするものであるが,当該土地を所有していることについては,不動産登記によって公示されているのであり,同意者の氏名そのものがプライバシーとして保護の対象となるものではない。また,本件要綱に基づき開発行為等がなされることは,当該土地において,本件要綱に基づく開発行為等のお知らせ標識により明らかであるから,土地の権利者が,本件要綱にしたがって,同意書を提出したか否かも,上記標識の存在により,事実上明らかとなるはずである。 したがって,そもそも本件要綱に基づき,土地の権利者の同意書が提出されたか否かは,プライバシーとして保護すべき個人情 ,同意書を提出したか否かも,上記標識の存在により,事実上明らかとなるはずである。 したがって,そもそも本件要綱に基づき,土地の権利者の同意書が提出されたか否かは,プライバシーとして保護すべき個人情報には該当しないというべきである。 イ部分公開しないことの違法性被告は,都市計画法29条に基づく開発許可申請の添付書類である土地権利者の同意書については,同意者の住所氏名欄を黒塗りにしたうえ,公開決定しているところ(甲4,都市計画法に基づく上記同意書と本件要綱31条の公)共・公益施設整備計画の承認申請における同意書は,いずれも当該開発について,土地の権利者が同意していることを示す文書であり,以下のとおり,両同意書に差異はないのであるから,両同意書を同様に取り扱わない本件非公開処分は,平等原則違反であり,違法である。 (ア)土地権利者としては,都市計画法に基づく開発許可に同意するか,本件要綱に基づく開発行為の計画に同意するか,その違いを意識することはほとんどないのであり,両同意書においても,同意者の意識上差異はない。 (イ)都市計画法に基づく開発許可についても,全ての上地の権利者の同意を得ることを要求しているわけではなく「相当数の同意(3分の2以上),」を要求しているにすぎないのであり(都市計画法33条1項14号参照,)都市計画法に基づく開発許可がなされたとしても,土地の権利者の同意があったと推認できるわけではない。 (ウ)本件要綱においては,土地の権利者が同意したか否かにかかわらず,- 5 -開発行為等を自由に行うことができるのに対し,都市計画法においては,土地の権利者の3分の1以上が反対していれば,開発許可がなされないことからすれば,本件要綱上の開発行為等の同意の有無よりも,都市計画法上の開発許可の同意の有無の方が,その情 ,都市計画法においては,土地の権利者の3分の1以上が反対していれば,開発許可がなされないことからすれば,本件要綱上の開発行為等の同意の有無よりも,都市計画法上の開発許可の同意の有無の方が,その情報価値は高いというべきである。したがって,都市計画法上の土地権利者の同意の有無の方が,むしろプライバシー保護の要請も高いのであるから,都市計画法上の開発許可の同意について,上記のとおり部分公開がされている以上,本件同意書も同様に部分公開すべきである。 ウさらに,本件同意書は,本件条例7条2号ただし書イに該当し,本件条例7条2号の非公開事由に該当しないから,本件非公開処分は違法である。 すなわち,都市計画法33条の開発許可申請及び本件要綱31条の公共・公益施設整備計画の承認申請が,土地の権利者の同意を要求しているのは,開発対象となる地域の財産権侵害や生活公害を未然に回避することを目的としていると解されることからすれば,本件同意書は,本件条例7条2号ただし書イの「人の生活又は財産を保護するため公にすることが必要な情報」に該当するというべきである。 (被告の主張)ア原告は,開発行為等のお知らせ標識が設置されることにより,土地権利者の同意書が提出されたことが事実上明らかとなるから,土地権利者が同意書を提出したか否かは,上記標識により公知となっており,プライバシーとして保護するに値しない旨主張する。 しかし,開発行為等のお知らせ標識は,計画区域内の土地権利者の同意があったことを市が確認した後に設置されるものではなく,本件要綱29条の事前協議の前に,開発行為等を行おうとする者の独断で設置されるものにすぎないから,上記標識が設置されたからといって,土地権利者の同意があると推認することはできない。他の要綱に基づく標識についても,土地権利者の同意があった 等を行おうとする者の独断で設置されるものにすぎないから,上記標識が設置されたからといって,土地権利者の同意があると推認することはできない。他の要綱に基づく標識についても,土地権利者の同意があったことを条件として設置されるものはない。 そうすると,本件要綱に基づく標識が設置されていたとしても,土地権利者の同意があったということはできないのであり,土地権利者の同意の有無が公知となったということもできないのであるから,原告の主張は失当である。 イ部分公開すべきであるとの主張に対する反論(ア)部分公開は,本件条例8条に規定するものであるところ,住所氏名以外の部分が同条2項の「当該部分を除いた部分,すなわち,その他の特定の」個人を識別することができることとなる記述等を除いた部分に該当するかが問題となる。 本件同意書が別紙の書式(乙4)を使用している場合には,土地の所在及び地番欄,地積欄,権利の種別欄を公開すれば,土地登記と照合することにより,特定の個人を識別することが可能となる。摘要欄についても,共有の場合には,その旨を摘要欄に記載することとなっているから,摘要欄を公開,,。 すれば土地登記との照合により特定の個人を識別することが可能となる- 6 -仮に上記の欄を墨抹しても,当該同意者の有する土地の筆数は明らかとなる,,。 ところ土地の筆数により同意者を識別することが可能となる場合もあるしたがって,土地の所在及び地番欄,地積欄,権利の種別及び摘要欄は,その余白部分も含め「その他の特定の個人を識別することができることと,」,「」なる記述等の部分に当たり本件条例8条2項の当該部分を除いた部分には当たらないから,住所氏名以外の部分公開をしなかった本件処分は適法である。 (イ)原告は,都市計画法上の開発許可申請における同意書 なる記述等の部分に当たり本件条例8条2項の当該部分を除いた部分には当たらないから,住所氏名以外の部分公開をしなかった本件処分は適法である。 (イ)原告は,都市計画法上の開発許可申請における同意書と本件要綱上の公共・公益施設整備計画の承認申請における同意書は,差異はなく,本件同意書も,都市計画法上の開発許可申請における同意書と同様,土地権利者の同意がプライバシーとして保護の対象とはならない旨主張する。 しかしながら,都市計画法上の開発許可申請における同意と本件要綱上の公共・公益施設整備計画の承認申請における同意とでは,プライバシー保護の要請は異なる。すなわち,開発許可申請における同意書は,都市計画法施行規則17条1項4号により,申請書に添付することが義務付けられている書類であり,その添付がなければ,当該申請は不適法となり,開発許可も下りない。したがって,開発許可がなされていれば,土地権利者の同意書は必ず添付されているはずであり,土地権利者の同意が存在することも推認できる。土地権利者においても,将来開発許可がなされれば,自己が当該開発行為に同意したことが事実上明らかになることを知りながら,それを承知で同意したと解される。 他方,本件要綱上の公共・公益施設整備計画の承認申請における同意書については,それが添付されていなくても,申請は受け付けられ,その承認もなされ得る。したがって,公共・公益施設整備計画の承認がなされたとしても,土地権利者の同意書が必ず添付されているわけではなく,土地権利者の同意の有無が明らかとなるわけでもない。土地権利者においても,上記の事情に照らせば,将来公共・公益施設整備計画の承認がなされたとしても,自己が同意したことが事実上明らかになることを承知していたと評価することはできない。 以上によれば,本件要綱上の公共・公 ,上記の事情に照らせば,将来公共・公益施設整備計画の承認がなされたとしても,自己が同意したことが事実上明らかになることを承知していたと評価することはできない。 以上によれば,本件要綱上の公共・公益施設整備計画の承認申請における同意書の方が,都市計画法上の開発許可申請における同意書に比べ,土地権利者のプライバシー保護の必要性が大きいというべきである。 したがって,都市計画法上の開発許可申請における同意書と本件要綱上の公共・公益施設整備計画の承認申請における同意書とでは,プライバシー保護の要請の程度が異なるのであるから,都市計画法上の開発許可申請において添付された土地権利者の同意書の公開が請求された場合と,本件要綱上の公共・公益施設整備計画の承認申請において添付された土地権利者の同意書の公開が請求された場合とを区別して扱うことは合理的な理由があるのであり,原告の主張は失当である。 ウまた,本件同意書は,以下のとおり,本件条例7条2号ただし書イには該当- 7 -しない。 すなわち,マンション建築の結果,近隣住民の日照,通風,眺望などが悪化する可能性はあるが,これらの被害は,現にマンション建築されたことが原因であり,マンション建築前になされた,建築土地の所有者の開発行為に対する同意自体が,環境悪化を招くというわけではない。したがって,本件同意書の公開が「人の生活又は財産を保護」につながるというわけではない。 ,また,本件条例7条2号ただし書イ「公にすることが必要と認められる」かどうかの判断は,当該情報を公開することの利益とプライバシー侵害の程度とを比較衡量してなされるべきであるところ,上記のとおり,本件同意書を公開したとしても「人の生活又は財産を保護」することになるものではない。特,に,本件同意書の作成名義人が,本件同意書に係る土地を を比較衡量してなされるべきであるところ,上記のとおり,本件同意書を公開したとしても「人の生活又は財産を保護」することになるものではない。特,に,本件同意書の作成名義人が,本件同意書に係る土地を,情報公開請求時に既に売却していた場合には,情報を公開したとしても,当該作成名義人は当該土地の使用をコントロールできないのであるから,単にプライバシーを侵害する結果となるにすぎない。よって,本件同意書を「公にすることが必要と認められる」状況はない。 したがって,本件同意書は,本件条例7条2号ただし書イに該当しない。 (2)手続上の違法についてア理由付記の瑕疵(原告の主張)被告が主張する非公開処分の理由は,同意の有無を明らかにすることが個人のプライバシーを侵害するという点だけであるが,都市計画法上の開発許可申請における土地権利者の同意書については,これを部分公開しているのであるから,同意の有無がプライバシーの対象となるというのは非公開処分の理由としては不十分である。 (被告の主張)理由付記は,本件条例12条1項に基づくものであるが,その趣旨は,行政行為の慎重性,客観的合理性を担保し,行政の恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせ,事後の争訟提起に便宜を与えるためである。したがって,付記すべき理由は,全部又は一部を非公開とした判断の過程を請求者において認識し得る程度に記載すれば足りるというべきである。そして,情報公開決定に対する非公開処分の判断過程は,当該行政情報の内容がどのようなものかを把握し,それを法規にあてはめて非公開情報に当たるかどうかを判断するというものとなるが,この過程を忠実に理由として記載すると,当該行政情報の内容がどのようなものかをも記載することになり,非公開処分をした意味,,,が失われてしまうことになる かどうかを判断するというものとなるが,この過程を忠実に理由として記載すると,当該行政情報の内容がどのようなものかをも記載することになり,非公開処分をした意味,,,が失われてしまうことになるから理由の記載としては非公開処分の性質上ある程度,抽象的,概括的,簡潔なものとならざるを得ない。さらに,本件条例11条2項の決定をするときは,本件条例施行規則3条2項により,同規則様式第4号の様式を用いるとされており,その様式における理由欄はそれほど大きなものではないから(乙1,詳細緻密な理由の記載が予定されていると)は言い難い。 - 8 -これを本件についてみるに,本件非公開処分の理由の記載からは,土地の権利者たる個人の同意がプライバシーとして保護されるべきものであり,したがって,本件条例7条2号ただし書アないしウに該当せず,同条2号の「個人に関する情報」に当たると判断したこと,本件同意書は,その存否を答えれば,「非公開情報を公開することになる」と判断したこと,本件条例10条の規定を適用すべきと判断したことを窺い知ることができ,これは本件非公開処分と,。 いう判断の過程を示しているから付記すべき理由として欠けるところはない原告は,付記すべき理由として,都市計画法上の開発許可申請における土地権利者の同意書と本件要綱上の公共・公益施設整備計画の承認申請における土地権利者の同意書との取扱いの差異について触れるべきであるにもかかわらず,本件非公開処分で触れなかったとして,本件非公開処分の理由は不十分であったと主張する。しかし,本件非公開処分をするためには,本件条例7条2号の非公開事由の該当性,本件条例10条該当性について判断すれば足りるのであって,上記の各同意書の差異を判断する必要性はない。特に,都市計画法上の開発許可申請の場合の土地権利者 には,本件条例7条2号の非公開事由の該当性,本件条例10条該当性について判断すれば足りるのであって,上記の各同意書の差異を判断する必要性はない。特に,都市計画法上の開発許可申請の場合の土地権利者の同意書との対比は,原告が異議申立てにおいて初めて主張したものにすぎず,上記のとおり,本件条例12条1項により求められる付記すべき理由は,全部又は一部を非公開とした判断の過程を請求者において認識し得る程度に記載すれば足りることからすれば,本件同意書の差異にまで言及する必要はない。 したがって,本件非公開処分の理由が不十分であるという原告の主張は失当である。 イ被告が,自己情報の情報公開請求について判断することの違法性(原告の主張)本件同意書について,該当する土地の権利者名は,登記簿上B(個人)となっていたのであり,新聞記事(甲6)に照らしても,本件同意書は,被告市長の個人名で提出されていると解される。 そうすると,被告市長は,自らがさいたま市に提出した文書に関する情報公開請求について,利害関係人であるにもかかわらず,自らその当否を判断した,,,ことになるが何人も自己が関わる問題についてその判断主体となることはその判断の客観性を担保するうえで許されるものではない。したがって,被告のした本件非公開処分は,手続的に重大明白な瑕疵があるといえ,本件非公開処分は取り消されるべきである。 (被告の主張),,,,原告は本件公開請求は被告市長の個人情報を対象とするから被告には特別利害関係があるため,被告が,本件非公開処分を行うことについては重大な瑕疵がある旨主張するが,地方自治法には,長が特別利害関係のある事務を処理することを禁止する規定はないことからすれば,原告の主張は,立法論としてはともかく,解釈論としては無理がある。 第3当裁判所 瑕疵がある旨主張するが,地方自治法には,長が特別利害関係のある事務を処理することを禁止する規定はないことからすれば,原告の主張は,立法論としてはともかく,解釈論としては無理がある。 第3当裁判所の判断 本件条例10条(公開請求に対し,行政情報の存否を明らかにしないで当該公開請- 9 -求を拒否し得る)の規定の趣旨等本件条例は,市の諸活動を市民に説明する責務を全うし,市民の市政への参加の促進を図り,公正で開かれた市政の発展に寄与することを目的としている(1条。そ)こで,公開請求がなされた場合,これを拒否する場合にも請求対象文書の存否を明らかにした上で拒否することが原則である。すなわち,文書が存在する場合は,非公開部分に該当しない部分は公開決定をし,該当する部分は理由を示した上で非公開決定をし,文書が存在しない場合は不存在の理由を示して拒否処分をすることになる。 しかしながら,公開請求に対し行政文書は存在するが非公開とする又は当該行政文書は存在しないと回答するだけで,非公開情報により保護される利益が害されることとなる場合がある(例えば,特定の個人の病歴の情報,情報交換の存在を明らかにしない約束で他国等の間で交換された機微な情報,犯罪の内偵捜査に関する情報等。 )また,公開請求が探索的になされた場合,その公開請求に含まれる情報と行政文書の存否に関する情報を結合することにより,非公開又は不存在と回答するだけで非公開情報の保護利益が害される場合がある(例えば,先端技術に関する特定企業の設備投資計画に関する情報,買い占めを招くなど国民生活に重大な影響を及ぼすおそれのあるような特定の物資に関する政策決定の検討状況の情報,特定分野に限定しての試験問題の出題予定に関する情報等。そこで,このような場合には,実施機関は,行政)文書の存否自体を明ら 響を及ぼすおそれのあるような特定の物資に関する政策決定の検討状況の情報,特定分野に限定しての試験問題の出題予定に関する情報等。そこで,このような場合には,実施機関は,行政)文書の存否自体を明らかにしないで公開請求を拒否することができるとしている(本件条例10条。 )しかし,先にも述べたように本件条例の下においては,公開の拒否は文書の存否を明らかにして非公開理由を示して行うのが原則であり,文書の存否自体も明らかにしない非公開処分は特別の例外をなすものである。そこで,本件において,本件条例10条に定める「当該公開請求に係る行政情報が存在しているか否かを答えるだけで,非公開情報を公開することとなる」場合に該当するかどうか以下検討する。 本件同意の非公開情報該当性(1)基本的事実関係のとおり,本件要綱31条に基づく公共・公益施設整備計画の承認申請に添付される土地の権利者の同意書は,土地の所在及び地番,地目,地積,権利の種別,同意年月日,同意者の住所氏名・印鑑(実印)等の個人情報が記載され「計画について異議がない」という個人の意思に関する情報も含ま,れていることからすれば,本件同意書は,本件条例7条2号本文の個人に関する情報に該当するというべきである。 (),,, 原告は本件同意書は個人に関する情報に該当するとしても本件同意書は本件要綱に基づく開発行為等の対象地域の財産権侵害や生活公害を未然に回避するために作成されるものであると解されるから,本件同意書は,本件条例7条2号ただし書イの「人の生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」に該当すると主張する。 しかし,本件要綱は「開発行為等に関し,事業者の行うべき公共施設及び公,益施設の整備等の基準並びに手続きについて,必要な事項を定めることによ とが必要であると認められる情報」に該当すると主張する。 しかし,本件要綱は「開発行為等に関し,事業者の行うべき公共施設及び公,益施設の整備等の基準並びに手続きについて,必要な事項を定めることにより,良好な都市環境の整備を図ることを目的」とし(1条「事業者は開発行為等),に関する公共・公益施設の整備等については,別表第1に定める協議事項を市長- 10 -又は関係機関と協議するとともに,本市の定める総合振興計画及び都市計画上の諸計画との整合を図るものとする(4条)とされている。そして「事業者は,」,開発行為等を行おうとする場合は,都市計画法第30条に規定する開発許可の申(),()請開発許可申請・・・を行う前に開発行為等事前協議申請書様式第2号により市長に事前協議の申請をするものとする(29条「事業者は,この告」),示による公共・公益施設管理者と協議した事項についての記録及び同意書を公共」(),・公益施設整備計画申請書又は開発許可申請書に添付するものとする30条「・・開発行為等の計画については,公共・公益施設整備計画申請書(様式第3号)により整備計画の承認を市長に申請し,その承認を受けるものとする(3」1条)とされ,本件同意書(土地の所有権等を有する者の同意書)は,公共・公益施設整備計画申請書を市長に提出する際に添付書類の一つとして掲げられているものである(同条3項。要綱別表第7。 )これをみると,本件同意書は,事業者において,開発行為等の行われる土地の関係権利者の開発行為等に対する事前の承諾により当該開発行為等が将来円滑・確実に遂行されることの一つの証として市長に提出されるものであり,開発行為等が行われる土地周辺の住民の生活公害防止等居住環境に関連した具体的権利ないし利益を直接保護することを目 発行為等が将来円滑・確実に遂行されることの一つの証として市長に提出されるものであり,開発行為等が行われる土地周辺の住民の生活公害防止等居住環境に関連した具体的権利ないし利益を直接保護することを目的としたものではないと解するのが相当である。 そうすると,本件同意書が本件条例7条2号ただし書イの「人の生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」に該当するとは認められず,この点の原告の主張は採用できない。 (「」。) 本件条例10条に基づく公開請求拒否決定以下存否応答拒否決定ともいうの相当性についてしかし,以下に述べる理由から,本件は,本件条例10条による当該公開請求に係る行政情報が存在しているか否かを答えるだけで本件条例7条2号本文の個人情報を公開することになる場合には該当しないというべきである。 すなわち,本件条例10条の規定のように行政情報の存否を明らかにしないで拒否処分をなし得るとすることは,米国の判例で発展したいわゆるグローマー拒否といわれる法理を明文化したことは公知の事実である(総務省行政管理局編・詳解情報公開法92頁等参照。そして,その適用がされる典型的な例としては,特定の個人の病)歴に関する情報,特定企業の設備投資計画に関する情報,犯罪の内偵捜査に関する情報,試験問題の範囲に関する情報等があげられるが,特定の者又は特定の事項を名指しして情報の公開請求をした場合は,理論的にはすべての非公開情報について存否応答拒否が必要な場合があり得る。そこで,本件条例10条は存否応答拒否が可能な非公開情報を限定していない。 しかし,本件の場合はこのような特定の個人を名指しした行政情報の公開請求ではない。また,本件は,犯罪の内偵捜査や,警察の特定個人や団体に対する情報収集活動に関する情報のように,当該 限定していない。 しかし,本件の場合はこのような特定の個人を名指しした行政情報の公開請求ではない。また,本件は,犯罪の内偵捜査や,警察の特定個人や団体に対する情報収集活動に関する情報のように,当該情報の性質からして当該行政情報が存在する又は存在しないと回答するだけで非公開情報の保護利益が害されることが容易に推測されるという事案ではない。 - 11 -もっとも,被告は,仮に同意書を全部非公開とした場合でも,その存在を明らかにすることは同意書の枚数などから同意者を識別することが可能となるから,本件は,行政情報の存否を明らかにするだけで非公開情報の保護利益を害することになるかのような主張をする。しかし,開発行為等の対象土地の範囲は広狭様々で同意書の枚数等から同意者を識別できるのが常態であるとは到底いえないから,被告の上記主張は採用できない。 そうすると,本件において被告において本件条例10条による存否応答拒否決定をしたことは,その要件を欠くというべきであり,取消しを免れない。 なお,本件における当事者双方の主張と事案に鑑み,本件同意書の部分公開の是非について補足的に検討しておく。 (1)甲4及び弁論の全趣旨によれば,被告は,都市計画法33条1項14号に定める開発行為をしようとする土地の権利者の同意書については,同意者の住所氏名に関する記載部分を黒塗りし,その余の部分を部分公開していることが認められる。 ところで,都市計画法は,都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため都市計画を定め,都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域とに区分して秩序ある市街地の形成を図ることとし,その実効性を担保するため,市街化区域及び市街化調整区域においては開発行為(主として建築物の建築等の目的で行う土地の区画形質の変更)を都道府県知事や指定都市等の長の許可に係ら 地の形成を図ることとし,その実効性を担保するため,市街化区域及び市街化調整区域においては開発行為(主として建築物の建築等の目的で行う土地の区画形質の変更)を都道府県知事や指定都市等の長の許可に係らしめ(法29条,)右許可の基準を法33条1項で定めている。同項の趣旨は,良好な市街地の形成,,,を図るという公益目的の達成のため開発行為が都市計画に適合するよう道路排・給水施設,公共・公益施設,防災施設,樹木,緩衝帯等の諸点でその備えるべき基準を定めたものであり,右基準のうち同項14号に定める開発行為関係権利者の相当数の同意は,開発許可の申請者の資力(同項12号)及び開発行為に関する工事施行者の能力(同項13号)に関する規定と相まって,相当数の関係権利者の開発行為に対する事前の同意があることにより開発行為が将来円滑かつ確実に遂行されることを示すための一つの資料であるということができる。 ,「,,そして都市計画法32条は開発許可を申請しようとする者はあらかじめ開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し,その同意を得なければならない(1項。開発行為を申請しようとする者は,あらかじめ,開発行為または開)発行為に関する工事により設置される公共施設を管理することとなる者その他政令で定める者と協議しなければならない(2項」と定めているところ,本件)。 要綱は上記都市計画法の規定に関連して,市の行政指導の形で,開発行為等の事,(),業者に対し行うべき公共施設及び公益施設の整備等の基準を定め要綱1条()都市計画法30条による開発許可申請の前に事前協議を行うことや要綱29条や公共・公益施設整備計画承認手続を履践すること(同31条)を求めたものと理解し得る。 以上によれば,都市計画法上の開発許可制度も,本件要綱に基づく開発行為等 申請の前に事前協議を行うことや要綱29条や公共・公益施設整備計画承認手続を履践すること(同31条)を求めたものと理解し得る。 以上によれば,都市計画法上の開発許可制度も,本件要綱に基づく開発行為等事前協議制度や公共・公益施設整備計画の申請・承認制度も,良好な都市環境の整備を図るということで共通の目的を持つものであり,たしかに,一方は法律,- 12 -一方は行政指導基準としての要綱という違いはあるが,実務的には両者は良好な都市環境の整備を図るための行政上の規制として事実上連続的・一体的に運用されていることが推定される(むしろ,本件要綱は,都市計画法上の開発許可等の申請があった場合に十分な時間と適切かつスムーズな審査を行うべく,行政指導の形で,事業者に対し,都市計画法による開発許可申請等を行う前に要綱で定めた事前協議制度等を履践することを求めたものと解される。そこで,都市計。)画法33条1項14号の同意書も,本件要綱31条に基づく同意書も,基本的には開発区域に係る相当数の権利者の同意を事前に得ておくことにより将来の工事が円滑・確実に実行されることの一つの資料としての意義を有するものであり,ほとんどその趣旨,性質は同一のものと考えられ,開発区域内の土地の権利者において都市計画法上の開発行為の同意はするが,要綱上の開発行為等に対する同意は行わないという事態はほとんど考えられない。そうすると,被告において,都市計画法上の開発許可申請における同意書については部分公開するとしながら,本件要綱に基づく同意書については仮に存在するとした場合にも部分公開できないというのは統一性に欠けるというほかはない。 (2)被告は「都市計画法上の開発許可申請における同意と本件要綱上の公共・,公益施設整備計画の承認申請における同意とでは,プライバシー保護の要請 きないというのは統一性に欠けるというほかはない。 (2)被告は「都市計画法上の開発許可申請における同意と本件要綱上の公共・,公益施設整備計画の承認申請における同意とでは,プライバシー保護の要請は異なる。すなわち,開発許可申請における同意書は,都市計画法施行規則17条1項4号により,申請書に添付することが義務付けられている書類であり,その添付がなければ,当該申請は不適法となり,開発許可も下りない。これに対し,本件要綱上の公共・公益施設整備計画の承認申請における同意書については,それが添付されていなくても,申請は受け付けられ,その承認もなされ得る。したがって,公共・公益施設整備計画の承認がなされたとしても,土地権利者の同意書が必ず添付されているわけではなく,土地権利者の同意の有無が明らかとなるわけでもない。そこで,都市計画法上の開発許可申請において添付された土地権利者の同意書の公開が請求された場合と,本件要綱上の公共・公益施設整備計画の承認申請において添付された土地権利者の同意書の公開が請求された場合とを区別して扱うことは合理的な理由がある」と主張する。 。 しかし,都市計画法に基づく開発許可についても,全ての土地の権利者の同意を得ることを要求しているわけではなく「相当数の同意(甲9によれば,関,」係権利者の概ね3分の2以上の同意を基準としていることが認められる)を要。 求しているに過ぎない(都市計画法33条1項14号。また,都市計画法33)条1項14号に基づく同意書と本件要綱に基づく同意書との間でそのプライバシー性の程度に仮に何らかの差があるとしても,一方は住所氏名欄を黒塗りした部分公開の対象となり,他方は当該文書の存否すら明らかにできないほどの強度のプライバシー保護の必要があるとするほどの極端な差があるとの合理的根拠は見出 差があるとしても,一方は住所氏名欄を黒塗りした部分公開の対象となり,他方は当該文書の存否すら明らかにできないほどの強度のプライバシー保護の必要があるとするほどの極端な差があるとの合理的根拠は見出し難い。 (3)なお,被告は,本件同意書が別紙の書式(乙4)を使用している場合には,土地の所在及び地番欄,地積欄,権利の種別欄を公開すれば,土地登記と照合することにより,特定の個人を識別することが可能となり,仮に上記の欄を墨抹し- 13 -ても当該同意者の有する土地の筆数などから同意者を識別することが可能となるから,本件同意書の住所,氏名以外の部分の部分公開もできないと主張する。 しかし,乙4のような書式の同意書の部分公開が必ず個人識別につながるとは即断できない。また,被告が前記都市計画法上の同意書については住所,氏名欄を黒塗りした部分公開に応ずるとしていることは,土地の権利者の開発行為に関する同意書は条例7条2号の個人識別情報には当たるが,住所氏名欄を除けば同号の情報に含まれないとみなすとの意思(条例8条2項)を表明したものというべきである(そもそも土地の権利は不動産登記簿により公示されており,そのプライバシー性は稀薄である。そして,土地所有者等の同意が得られないまま開発許可を得たとしても,当該開発者は開発許可の許可を受けたからといって,当該土地について何らの私法上の権限を取得するものではないから,当該土地について権利者の同意を得なければ工事を行うことができないのはいうまでもない。そこで,権利者の土地上に開発行為が施行されたということは,開発許可の同意をしたことにつながるものであり,その意味で開発行為の同意自体個人識別情報といってもそのプライバシー性の程度はそれほど高いものではないというべきである。そして,上記趣旨は,本件要綱に基づく同 同意をしたことにつながるものであり,その意味で開発行為の同意自体個人識別情報といってもそのプライバシー性の程度はそれほど高いものではないというべきである。そして,上記趣旨は,本件要綱に基づく同意書の場合にも推及されるべ。)きである。 (4)そうすると,本件公開請求について「行政情報の存否を答えるだけで,個,人の同意の有無を公開することとなり,個人のプライバシーを侵害するため本件条例10条により請求を拒否する」とした本件非公開処分は,本件同意書は仮に存在すれば甲4のような体裁が適切かどうかはともかく,部分公開も十分考えられる行政情報であるのに,これを全部非公開相当とすることを前提にしている点においても再検討の余地がある。 結論 よって,原告の請求は理由があるので,主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第4民事部裁判長裁判官豊田建夫裁判官都築民枝裁判官菱山泰男

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