平成20(む)762

裁判年月日・裁判所
平成20年8月6日 東京地方裁判所 その他
ファイル
hanrei-pdf-38685.txt

判決文本文5,206 文字)

平成20年8月6日決定平成20年(む)第762号 主文 検察官に対し,A警察官が,Bの取調べについてその供述内容等を記録し,捜査機関において保管中の大学ノートのうち,Bの取調べに関する記載部分を平成20年8月22日までに開示することを命じる。 理由 本件証拠開示請求の趣旨及び理由は,弁護人作成の平成20年4月16日付け証拠開示命令請求書及び同年5月2日付け意見書に記載されたとおりであるから,これを引用する。 その要旨は,①類型証拠開示請求については,Bの取調べに係る警察官(検察官がA警察官である旨釈明している。)作成の取調べ小票,取調べメモ,手控え等備忘録(犯罪捜査規範に基づくメモか否かを問わない。以下「本件取調べメモ」という。)は,刑訴法(以下「法」という。)316条の15第1項1号及び6号の類型証拠に該当し,Bの供述経過を踏まえるとBの検察官に対する供述調書(甲第30号証)の証明力を判断するに当たり,供述調書に記載されていないやり取りや記載されている供述の真し性を検討するためには,本件取調べメモの開示が被告人の防御のため重要である上,Bについては証人尋問が予定されており,証言義務が課されていることからすれば,本件取調べメモを開示することによる弊害は少なく,開示が相当であるからその開示を命ずる旨の決定を求めるというのであり,②主張関連証拠開示請求については,被告人がBに対し本件への関与を認めた言動をしたことはないという弁護人の主張に関連する上,類型証拠開示請求と同様,本件取調べメモの開示が被告人の防御のため必要であるからその開示を命ずる旨の決定を求める,というのである。 これに対する検察官の意見は,平成20年4月28日付け意見書記載のとおりであり,その要旨は,証拠開示の対象となるのは取調べメモすべてではな らその開示を命ずる旨の決定を求める,というのである。 これに対する検察官の意見は,平成20年4月28日付け意見書記載のとおりであり,その要旨は,証拠開示の対象となるのは取調べメモすべてではなく,飽くまで犯罪捜査規範13条に基づき作成されたものに限定されるから,警察から犯罪捜査規範13条に基づいて作成された取調べメモは存在しないとの回答があった本件においては,証拠開示の対象となるべき証拠は存在しないし,本件取調べメモは,法316条の15第1項1号及び6号の類型証拠に該当しない,また,法316条の20に基づく開示請求においては,その前提として必要となる法316条の17第1項に定める主張の明示がなされておらず,関連性や相当性も認められないから,弁護人の請求は理由がない,というものである。 当裁判所の判断(1)法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠は,当該事件の捜査の過程で作成され,又は入手した書面等であって,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものを含み,公務員がその職務の過程で作成するメモのうち,専ら自己が使用するために作成したもので,他に見せたり提出することを全く想定していないものは,その対象とならないが,取調べ警察官が,犯罪捜査規範13条に基づき,取調べの経過その他参考となるべき事項を記録し,捜査機関において保管されている書面は,単なる個人的メモに止まらず,捜査関係の公文書であって,これに該当する取調べメモについては,当該事件の公判審理において,当該取調べ状況に関する証拠調べが行われる場合には,証拠開示の対象になると解するのが相当である。 そして,警察官が捜査の過程で作成し,保管する取調べメモが証拠開示命令の対象となるか否か,すなわち,それが犯罪捜査規範13条に基づく取調べメモに には,証拠開示の対象になると解するのが相当である。 そして,警察官が捜査の過程で作成し,保管する取調べメモが証拠開示命令の対象となるか否か,すなわち,それが犯罪捜査規範13条に基づく取調べメモに当たるか否かは,裁判所が行うべきものである。 そして,本件取調べメモは,A警察官が,Bを取り調べた際,Bが回答した内容を記載したものと認められ,当該事件の捜査の過程で作成された書面であって,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものである。また,検察官から提示された本件取調べメモを含む大学ノートは,供述内容等を供述調書や報告書としてまとめたものではないが,その前提となるものであって,専ら自己が使用するために作成したもので,他に見せたり提出することを全く想定していないとまでは認められないから,本件取調べメモは,証拠開示命令の対象となる犯罪捜査規範13条の基づく取調べメモに該当する。 (2)類型証拠開示請求についてア法316条の15第1項1号の「証拠物」とは,法306条にいう「証拠物」と同義であり,その存在又は状態が事実認定の資料となる証拠方法をいうところ,取調べメモは,取調べの経過その他参考となるべき事項が記録されているものではあるけれども,その存在又は状態が事実認定上の資料となるものではない。そして,本件における弁護人の主張や提示された本件取調べメモの存在又は状態に照らしても,これを別異に解すべき理由はない。 この点,弁護人は,メモの記載事実そのものから認定し得る事実がある以上,証拠物としての性質がないとはいえないなどと主張するが,記載事実そのものから認定し得る事実があるかどうかは,「証拠物」に該当するか否かの区別とは別問題であるから,採用できない。 したがって,本件取調べメモは,「証拠物」に該当しない。 イ法3 張するが,記載事実そのものから認定し得る事実があるかどうかは,「証拠物」に該当するか否かの区別とは別問題であるから,採用できない。 したがって,本件取調べメモは,「証拠物」に該当しない。 イ法316条の15第1項6号の「供述録取書等」とは,「供述書,供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であって供述を記録したもの」(法316条の14第2号)をいうところ,本件取調べメモは,実質的には,Bの供述を録取した書面であって,同人の確認を経ておらず,その署名,押印を欠くから,Bの「供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの」に該当しない。 もっとも,本件取調べメモは,A警察官が記載した報告書として,A警察官の「供述書」と解して,「供述録取書等」に該当すると考える余地もないではない。しかしながら,法316条の15第1項6号による開示の対象となる証拠は,「検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」でなければならず,「事実の有無に関する供述」とは,その事実の有無についての原供述を意味するから,仮に本件取調べメモがA警察官の「供述書」であると考えると,本件において,検察官が特定の検察官請求証拠であるBの供述調書により直接証明しようとする事実である被告人の言動の有無について供述するのは,原供述者であるBであり,本件取調べメモの供述者であるA警察官の供述は,その原供述を聴取したものということになり,本件取調べメモは前記事実の有無に関する供述を内容とするものとはいえず,結局,「検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とする」「供述録取書等」には該当しない。 したがって,いずれにしても,本 る供述を内容とするものとはいえず,結局,「検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とする」「供述録取書等」には該当しない。 したがって,いずれにしても,本件取調べメモは,類型証拠開示の対象とならない。 (3)主張関連証拠開示請求についてア本件が公判前整理手続に付され,争点及び証拠の整理が行われていたところ,住居侵入,強盗致傷被告事件における被告人の犯人性が本件の争点であり,平成20年2月13日の第6回公判前整理手続期日において,いったん公判前整理手続が終結した。ところが,同年3月3日,検察官が,Bがこれまでの取調べで秘匿していた事実が明らかになったとして,新たにBの供述調書(甲第30号証)等の証拠調べの請求をし,さらに,同月10日付けの証明予定事実記載書面3において,被告人がBに対し,本件への関与を認める言動をしていたことを主張したところ,弁護人は,同月5日付け意見書において,検察官の上記証拠請求には,法316条の32の「やむを得ない事由」が存在しないと主張した。当裁判所は,検察官からこの点に関する疎明を受け,当事者双方に対して「やむを得ない事由」が存在するとの見解を示した上,改めて本件を公判前整理手続に付し,同手続を再開したところ,弁護人は,検察官の主張に対して,同月21日付け予定主張記載書面(2)において,被告人がBに対して本件への関与を認めた言動をしたことはない旨主張し,さらに,検察官がB証人の立証趣旨として,被告人が犯行を自認するのを聞いたこと等を追加して請求したところ,弁護人は,「やむを得ない事由」が存在しないとして異議を述べたが,裁判所は,それがあるとしてこれを許可した。 検察官は,弁護人が主張関連証拠開示請求の根拠としている主張は,被告人がBに対して本件への関与を自認 やむを得ない事由」が存在しないとして異議を述べたが,裁判所は,それがあるとしてこれを許可した。 検察官は,弁護人が主張関連証拠開示請求の根拠としている主張は,被告人がBに対して本件への関与を自認する言動をした事実等の存在を否定し,その供述の信用性を争うということに尽きており,同供述の信用性を否定する間接事実等の主張は全くなされておらず,法316条の17で要求されている主張明示がなされていないと主張する。確かに,弁護人の被告人がBに対し本件への関与を認めた言動をしたことはないとの主張は,要するに,B供述が虚偽であり,信用できないということであって,供述の信用性を否定する具体的事情は明らかにされてはいない。 しかし,被告人が自ら認識していない第三者の事情やその取調べの具体的状況を弁護人に述べるということは想定できず,また,弁護人が第三者と接触し,事情を聴取するなどして,供述の信用性を否定する具体的な事情を調査することまで求めるのは困難であって,事案の内容,開示された第三者の供述調書,審理の経過等に応じてできる限り具体的に主張がされていれば,関連性判断の前提となる主張明示としては足りているというべきである。 本件において,弁護人がBと接触し,供述の変遷の理由やその他の事情につき調査することは困難な状況にあることに加え,審理経過に照らし,Bの供述に変遷があることは明らかであり,弁護人が法316条の32のやむを得ない事由がないことを主張していたことからすれば,弁護人は,Bの供述に変遷があることを主要な根拠にB供述の信用性を争っているものと認められるから,弁護人の前記主張が主張明示義務に反しているとまではいえない。 イそこで,関連性について検討するに,本件取調べメモには,取調べの過程におけるBの供述内容等が記載されているから,Bの供述が信用 から,弁護人の前記主張が主張明示義務に反しているとまではいえない。 イそこで,関連性について検討するに,本件取調べメモには,取調べの過程におけるBの供述内容等が記載されているから,Bの供述が信用できない旨主張する弁護人の主張に関連する。 また,開示の相当性については,供述の信用性を検討するに当たって,開示済みの当該供述者の他の供述調書の内容と比較対照してその供述経過を検討すれば足りるとは一概にいえず,本件においては,その審理経過に照らし,Bの供述の変遷が具体的に現れているという事情があることに加え,本件取調べメモの記載内容を踏まえると,Bの供述の信用性,特にBの供述の変遷の経過やその理由を判断する上で,本件取調べメモを開示する必要性は高いということができる。 さらに,本件取調べメモを開示することによる弊害については,検察官からその点に関して何ら具体的な主張がなく,本件取調べメモの記載内容を見ても,それを開示することによって重大な弊害が生じるような記載は見当たらない。 以上によれば,弁護人の本件証拠開示命令請求のうち,主張関連証拠開示請求に基づく請求には理由があるから,法316条の26第1項により,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官・河田泰常,裁判官・髙橋正幸,裁判官・賀嶋敦)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る