【DRY-RUN】○ 主文 一 原告の請求を棄却する。 二 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 原告は、「昭和五二年五月八日施行の鎌倉市議会議員一般選挙の効力に関する原告 の審査申立につき被告が同年一〇月八日付でし
○ 主文一原告の請求を棄却する。 二訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実原告は、「昭和五二年五月八日施行の鎌倉市議会議員一般選挙の効力に関する原告の審査申立につき被告が同年一〇月八日付でした審査申立棄却の裁決を取消す。右選挙を無効とする。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告は主文同旨の判決を求めた。 原告は請求原因として次のとおり述べた。 (請求原因)一原告は昭和五二年五月八日施行の鎌倉市議会議員一般選挙(以下単に本件選挙という)に立候補したものであり、本件選挙における立候補者は原告を含め三五名であつた。鎌倉市選挙管理委員会(以下単に市選管という)は翌九日開票を行い、その結果別表(4)欄のとおり各候補者が有効投票を得たとして同表(2)欄のとおり上位者三〇名を当選人と決定し、翌一〇日その旨を告示し、原告は同表のとおり、最下位当選人と一票差をもつて次点者とされた。 原告は同月一九日市選管に対し本件選挙の無効を主張して異議申出をしたが、市選管は同年七月二九日これを棄却する決定をし、原告はこれを不服として同年八月五日被告に対し審査申立をしたが、被告は同年一〇月八日付で右審査申立棄却の裁決をし、同月一二日にその裁決書を原告に交付した。 二しかし、本件選挙は次の事由により無効である。 1 本件選挙の開票は、その開票事務を選挙会の事務に合わせて同年五月九日行われるのであるが、本件選挙において投票された票数が七六、一七五票であるのに同日開票された票数は七五、二五二票に過ぎなかつた。すなわち、本件開票管理者は杜撰な開票管理をし、投票済の九二三票を所在不明にしたのである。しかるに、本件選挙会は右九二三票を持帰り票(選挙人が投票用紙を投票箱に投函せずして持帰つたもの)として処理し、同日前記のとおり三〇名の当選人を決定した。 2 市選管 二三票を所在不明にしたのである。しかるに、本件選挙会は右九二三票を持帰り票(選挙人が投票用紙を投票箱に投函せずして持帰つたもの)として処理し、同日前記のとおり三〇名の当選人を決定した。 2 市選管は、本件選挙に対する原告の前記の異議及びその他の異議の申出を審理するため同年六月七日前記七五、二五二票の投票の再調査を行つたのであるが、市選管は、同日、前記のように持帰り票として処理した九二三票につき、実はこれは紛失したもので、同日偶然に発見された旨発表し、その頃右九二三票につき法に従つた開票手続を経ないままこれの紛失中に不正行為が加えられたことは一切なかつたとして、この紛失票の全部を一方的に有効票と認定した上、この九二三票を加えて計算しても本件選挙の結果に異動がない旨判定した。 3 しかし、右九二三票もの大量の票を所在不明にし、法定の開票手続を行わなかつたこと自体、選挙の公正を害し、選挙人の自由意思の表明を妨げたもので、違法である。しかも、このことについては本件選挙関係者が右の票を故意に隠匿した疑が濃い。仮に、市選管が過失により右の票を紛失したとしても、このことは市選管の開票管理の杜撰さを示すもので紛失自体前記のとおり違法である。なお、市選管の開票事務等の杜撰であることは、開票の際参観人が開票所内の投票点検台まで立入り、開票所外の者とメモを交換するのを制止せず、選挙事務従事者が勝手に中間得票を発表するのを黙認したりしたこと等にも現われている。 仮に被告主張のように、右九二三票を市選管が紛失し、これを後日偶然発見したとしても右の票は適法な開票手続を経ない無効なものであつて、帰属不明のものとすべきであり、これを有効投票として計算することはできない。しかも、右九二三票には紛失期間中に不正行為が加えられた危険性は高く、選挙の結巣に影響を及ぼすおそれは 無効なものであつて、帰属不明のものとすべきであり、これを有効投票として計算することはできない。しかも、右九二三票には紛失期間中に不正行為が加えられた危険性は高く、選挙の結巣に影響を及ぼすおそれは大である。すなわち、(一)右九二三票は本件開票日たる同年五月九日から同年六月七日までの長期にわたり放置されていた。(二)市選管は、同年六月七日、本件調査会場で発見された右九二三票を秘密裡に右調査会場から持出し、その内容を勝手に調査した。(三)被告は鑑定結果(乙第二〇号証)を援用し、右九二三票につき不正行為がなかつた旨主張するが、右鑑定結果によつて前記紛失後における票の偽造等不正行為の有無の判定は不可能である。 4 本件選挙の各候補者の有効得票数は、結局別表(4)、(5)欄(同(5)欄は、市選管が本件選挙に関する異議申出につき審査した結果、投票の効力決定の誤りを訂正したもの)のとおりであり、特に原告と最下位当選者との票差は結局同表(4)、(5)欄のとおり二票であつたのであるから、市選管の前記違法行為に基因して右九二三票は有効な得票数に加えることができなくなり、その帰属は不明となつたことにより、これらの票に現実に不正行為が加えられたかどうかにかかわりなく、本件選挙の結果に異動を及ぼす虞が生じたことは明らかである。 三よつて、本訴に及ぶ。 被告は、答弁及び被告の主張として次のとおり述べた。 (答弁)本件請求原因一の事実は認める、同二の1の事実のうち、本件開票管理者が杜撰な開票管理をし、投票済の九二三票を所在不明にしたとの点については、右九二三票が昭和五二年五月九日から同年六月七日まで一時紛失状態になつたという限度で認めるがその他は否認する、その余の同二の1の事実は認める、同二の2の事実は認める、同二の3の事実については、原告主張の九二三票が同年五月九 月九日から同年六月七日まで一時紛失状態になつたという限度で認めるがその他は否認する、その余の同二の1の事実は認める、同二の2の事実は認める、同二の3の事実については、原告主張の九二三票が同年五月九日から同年六月七日まで紛失状態になつていたこと、右九二三票につき開票手続がなされなかつたことは認めるが、その余は争う。同二の4の事実については、原告を含め本件選挙の各候補者の有効得票数が別表(4)、(5)欄のとおりであることは認めるが、その余は争う。 (被告の主張)一原告主張の九二三票は、本件選挙において適法、有効に投票され、投票箱に投函済のものであるが、同年五月九日の本件開票日の開票作業中に何人も気付かずに誤つて投票整理籠のうちの一個中に残されたまま開票事務従事者によつて右籠とともに開票場の片隅に取片付けられてしまい、その探索のため右開票場が総点検された際も見落され、これらは同日持帰り票として処理された。 二右九二三票は、同日何人にも気付かれずに、右のとおり投票整理籠の底に残されたまま、選挙事務従事者によつて右籠とともに本件開票所から鎌倉市役所庁舎内の市選管倉庫に搬入され、関係者の認識の外にあつたが、同年六月六日まで施錠された同倉庫内に右籠とともに何人にも手を触れられることなく安全に保管され、同日前同様何人にも気付かれずに市選管係員によつて右籠とともに同倉庫から同庁舎内の本件再調査場である二階講堂に搬入されたが、同講堂は翌日まで施錠され、翌七日同所でこれが発見されるまでの間、関係者らの認識するところではなく、同所においても右籠とともに安全に保管されていた。 三本件選挙に対する異議申出の審理のため市選管が同年六月七日午前一〇時から右再調査場において本件選挙の投票を再調査することになつていたので、選挙事務従事者がその準備をし、積み重ねられ されていた。 三本件選挙に対する異議申出の審理のため市選管が同年六月七日午前一〇時から右再調査場において本件選挙の投票を再調査することになつていたので、選挙事務従事者がその準備をし、積み重ねられた投票整理籠を一つ一つ机の上に並べていたところ、同日午前九時五分前頃右籠のうちの一個中に右九二三票があるのを発見した。そこで、市選管は、右票の安全確保のためとりあえずこれを同庁舎内の市長特別応接室に搬入して、同室を施錠し、午前九時三〇分頃同所で市選管委員四名全員が立会つて右票につき一応その枚数計算を行つた。前記再調査が終了した同日午後四時頃市選管は右再調査会場において関係者らに右九二三票が発見されたことを発表するとともに、同所に右九二三票を搬入して開票当日と同一の選挙立会人全員の立会のもとで再度、これにつき一応の点検、調査を行い、得票計算の結果を明らかにし、その後同年七月二九日に右九二三票につき正式に得票計算を行い、投票の効力決定を行つた。その結果は別表(6)、(7)、(8)欄のとおりである。 四以上の結果からすると、右九二三票が一時的に紛失状態になつた事実は本件選挙の結果に異動を及ぼす虞のないものであることが明らかである。 原告は、右九二三票に不正行為が加えられたか否かにかかわりなく右票は帰属不明になつたものであるから、本件選挙の結果に異動を及ぼす虞が生じたことは明らかであると主張する。 しかし、本件においては、右九二三票が一時的に紛失状態になつたのであるが、右のとおりこれは無事発見回収され、これの点検、調査が可能なのであるから、右の選挙結果の異動の虞の有無は形式的、抽象的にこれを論ずべきではなく、具体的、実質的にこれを考察すべきである。 本件においては前記のとおり右九二三票の一時的紛失は何人かの故意によるものでは全くなく、開票事務従事者の単 虞の有無は形式的、抽象的にこれを論ずべきではなく、具体的、実質的にこれを考察すべきである。 本件においては前記のとおり右九二三票の一時的紛失は何人かの故意によるものでは全くなく、開票事務従事者の単なる過失に基くものであり、これらの票が発見されるまでの間に、これらに不正行為が加えられる余地がなかつたことはその保管状態から明らかであるとともに、市選管の依頼によりなされた右の九二三票についての鑑定の結果(乙第一九、第二〇号証)及び未使用投票用紙の紛失がなかつたことからみても右投票済用紙につき、さし替え又は改ざん等がなされていないことは明白である。 また、右九二三票につき開票手続がなされていないことは事実であるが、このことは右票が本件開票において有効、無効が決定されなかつた未点検投票であることを意味するにすぎない。従つて右票が無事回収された暁に争訟審理機関たる市選管が選挙の争訟を審理するに当り、右票の一時的紛失により本件選挙の結果に異動を及ぼす虞が生じたか否かを判定するため、右九二三票を点検調査してこれの効力決定を行い、これらをすべて有効と認めて一応各候補者に帰属させ、改めて得票計算を行い、右異動の虞の有無の判定を行うことは当然のことであつて、このことにつき何らの違法はなく、その間になんらかの不正が介入する余地もなかつた。 また、市選管が、同年六月七日右九二三票を発見した際、市長特別応接室又は本件再調査会場で右票につき一応の点検、調査、枚数計算を行つたことについても、これは争訟審理機関たる市選管が争訟審理の一環として右票の点検、調査を行つたものにすぎず、これについても何らの違法はなく、その間になんらかの不正が介入する余地もなかつた。 以上のとおり、右九二三票の一時的紛失によつて、本件選挙の結果に異動を及ぼす虞が生じたといえないことは明らかであり 、これについても何らの違法はなく、その間になんらかの不正が介入する余地もなかつた。 以上のとおり、右九二三票の一時的紛失によつて、本件選挙の結果に異動を及ぼす虞が生じたといえないことは明らかであり、原告の本件請求は失当である。 (証拠関係)(省略)○ 理由一本件請求原因一、二の1、2の事実は、(但し、同二の1のうち、本件開票管理者が杜撰な開票管理をし、投票済の九二三票を所在不明にしたとの点については、右九二三票が昭和五二年五月九日から同年六月七日まで紛失状態になつたという限度において)当事者間に争がなく、また原告主張の九二三票につき開票手続がとられなかつたことも当事者間に争がない。右の事実によれば、本件選挙においては、その管理執行につき公職選挙法第六六条等に定める選挙に関する規定違反があつたものというべきである。 二そこで右九二三票が紛失状態になつた経緯等につきさらに検討する。 成立に争のない乙第一ないし第五、第一七ないし第二〇号証、第二三号証の一ないし三、証人A、B、Cの各証言、当裁判所の検証の結果によると、被告主張の一の事実が認められ、これに反する証拠はない。 また、右各証拠を総合すると、本件選挙の開票手続は、開票管理者兼選挙長D管理の下に、本件選挙会の事務と合わせて、同年五月九日午前八時から同日午後六時四二分まで開票所に当てられた鎌倉市立御成小学校一階講堂において行われたところ、右開票事務がほぼ終了に近づいた同日午後二時半頃右開票管理者、開票事務従事者らは、投票された票数に較べて開票された票数が九二三票足りないことに気付き、投票数、開票数等の再計算、投票箱等の使用器具の点検、右講堂内の探索を行つたが、右の原因をつきとめることができず、結局選挙会においてこれを前記のように九二三票の持帰り票として処理したこと、しかし実際は、右九二 票数等の再計算、投票箱等の使用器具の点検、右講堂内の探索を行つたが、右の原因をつきとめることができず、結局選挙会においてこれを前記のように九二三票の持帰り票として処理したこと、しかし実際は、右九二三票は本件開票作業の一環たる大分類の作業(開披された投票をビニール製角型の投票整理籠一〇ないし一五個を用いてア行、カ行、サ行、タナハ行、マヤラワ行の五つに分類する作業、これを経て更に候補者別の分類作業が行われる)中、開票事務従事者の過誤により右籠の一つの底に残されたままその上に別の右籠が重ねられ、これらの籠とともに右講堂の片隅に取片付けられてしまつていたこと、そのため右票は別表(6)欄のとおり三票を除いてすべて力行の候補者の票であつたこと、前記の講堂内の探索の際、開票事務従事者らは右投票整理籠にまで気がまわらず、これを点検しなかつたため発見されるに至らなかつたこと、当日開票事務従事者以外の者が参観者席の仕切りをこえて、みだりに開票場内に立入る等開票所の秩序に異常があつた形跡はないこと(右に反する趣旨の証人Eの証言は前掲証拠に照し採用しない。)、以上が認められ、これを覆えすに足りる証拠はない。 三進んで、右九二三票のその後の所在、保管状況、これの発見の経緯等につき検討する。 成立に争のない乙第三、第四、第八ないし第一〇、第一二、第一三、第一五ないし第一七、第一九、第二〇、第二三の一ないし三、第二四号証、証人A、B、F、E、Cの各証言、当裁判所の検証の結果によると、被告主張の二、三の事実を認定することができ、これに反する証拠はない。 また、右各証拠を総合すると、右九二三票は、前記投票整理籠の底に残され、その上に別の籠が重ねられているため、何人にも気付かれずに、同日夕刻本件開票所出口において、これらの籠及び他の選挙資器材とともにトラツクに積込まれ、 すると、右九二三票は、前記投票整理籠の底に残され、その上に別の籠が重ねられているため、何人にも気付かれずに、同日夕刻本件開票所出口において、これらの籠及び他の選挙資器材とともにトラツクに積込まれ、同トラツクに数名の選挙事務従事者が添乗して同所から約五〇〇メートル離れた鎌倉市役所まで運搬され、同市役所庁舎一階の市選管専用倉庫に搬入され、そのまま重ねられた前記籠とともに同倉庫内の奥まつたところに格納されたこと、同倉庫は常に施錠され、その鍵はC選管事務局長が保管し予備鍵は守衛室に保管されていたが、同倉庫が市選管職員以外の者により開けられたことはなく、その後同年六月六日午後八時三〇分頃までの間同倉庫に出入した者は、同年五月一〇日から同月一七日までの間に本件九二三票の不足の原因を調査する目的で選挙人名簿、入場券等を点検するため入つた市選管職員と応援の市職員等及び同年六月一日収納してあるビニールマツトを洗浄する目的で搬出した業者の従業員三名(その際は市選管職員が立会つた。)だけであつて、右の期間中本件九二三票の入つた籠には何人も手を触れることがなかつたこと、右六月六日午後八時三〇分頃、市選管係員が翌七日午前一〇時から開始が予定されていた本件選挙の異議申出の審理として市選管による投票再調査に使用するため前記開票時に大分類に使用した籠等二十数個を、数個づつ重ねたまま同倉庫から再調査会場に当てられた同庁舎二階の同市役所講堂まで運んだのであるが、この際右九二三票の入つた籠も他の籠の間に重ねられたまま、何人にも気付かれずに同講堂に搬入され、そのまま机上に置かれたこと、その直後同講堂の扉は右係員によつて施錠され、翌七日の朝右再調査の準備のため選挙事務従事者が右扉を開けるまでは何人も同講堂に立入らなかつたこと、同日午前九時五分前頃同所で会場準備に当つていた選 と、その直後同講堂の扉は右係員によつて施錠され、翌七日の朝右再調査の準備のため選挙事務従事者が右扉を開けるまでは何人も同講堂に立入らなかつたこと、同日午前九時五分前頃同所で会場準備に当つていた選挙事務従事者により前記のとおり前記籠の一個の中から右九二三票が発見され、直ちに市選管事務局長にその旨報告されたので、同事務局長は市選管委員長に計り、これを安全な場所に移すべく、右籠の上下に他の籠を重ね、同庁舎内の市長特別応接室に搬入したこと、右特別応接室は、一般通路とは中廊下をもつて隔てられ、一般通路からのドアと右室のドアと二重に閉じられているものであり、右搬入後右の各ドアは施錠されたこと、前記講堂における再調査のための事情聴取が終つた午前九時三〇分頃市選管委員全員が同室に参集し、立会のうえ市選管職員が発見票を数えたところ九二三枚であつたこと、同日午後四時頃前記再調査会場において市選管委員長が右九二三票が発見された旨を発表したところ、調査立会人らから直ちにその内容を発表せよとの要望が強かつたため、市選管委員及び当日の参考人(開票日の立会人)九人が立会のうえ、同票の点検を行つたところ、その結果は別表(6)欄記載のとおりであつたこと、以上の状況の推移の下にあつたので、前記開票場から搬出された以後これが発見され、市選管により点検された時まで、右の九二三票に不正行為が加えられる余地がなかつたこと、さらに、本件選挙のために作成され、使用されなかつた一般投票用紙は紛失することなく、全て市選管に保管されており、市選管が神奈川県警察本部鑑識課及び右用紙を印刷した株式会社三光堂印刷所のGに依頼した鑑定の結果によれば、右の発見にかかる九二三票については用紙のすりかえ、文字の抹消、加筆、同一候補者につき同一筆跡のなかつたこと、以上が認められ、これを覆えすに足りる証 会社三光堂印刷所のGに依頼した鑑定の結果によれば、右の発見にかかる九二三票については用紙のすりかえ、文字の抹消、加筆、同一候補者につき同一筆跡のなかつたこと、以上が認められ、これを覆えすに足りる証拠はない。 四以上に認定、説示した事実よりすれば、右九二三票が何人かによつて故意に隠されたり、これに不正行為が加えられたりした形跡のないことが認められるけれども、本件開票管理者Dは、開票事務従事者の過失により右九二三票を紛失し、これらの票につき開票手続をしなかつたものであり、このことは右の事情にかかわりなく選挙の管理執行の手続に関する公職選挙法の規定に違反するものであることは前記のとおり明らかである。 五そこで、本件において、右の選挙規定の違反により本件選挙の結果に異動を及ぼす虞が生じたか否かについて判断する。 右九二三票は前記のとおり開票手続を経ていないものであるから、これを各候補者の有効得票とすることはできない。 しかし、本件において、右の選挙の結果に異動を及ぼす虞の有無の判断については、右九二三票は前記のとおり偶然にではあるが、投票されたままの状態で後日全部発見回収され、これの点検、調査が可能なのであるから、これらの票に基づき、これに正しく表示されている本件選挙における選挙人の意思を把握し、右の各票が正規の開票手続を経て、各候補者の有効得票とすることができたならば本件選挙の結果は既に決定された結果とは異るものとなつた可能性があるか否かにつき具体的に検討するのが相当である。けだし、本件の場合、前記選挙に関する規定の違反は稀にみる重大な失態というべきであるが、右九二三票に不正行為の加えられた形跡のないことは前記のとおりであるから、これらの票を開票手続を経ていないことの一事により当然に帰属不明のものとせず、これらにつき有効票と認められるものを きであるが、右九二三票に不正行為の加えられた形跡のないことは前記のとおりであるから、これらの票を開票手続を経ていないことの一事により当然に帰属不明のものとせず、これらにつき有効票と認められるものを一応各候補者の有効得票に加算し、右の結果が本件選挙の結果に異動を生ぜしめる虞のあるものであるか否かを考察するのが、投票の結果に表明された選挙人の意思を尊重するゆえんであり、これが選挙の公正を損う結果を招くものでもないと思料されるからである。 したがつて、右九二三票を帰属不明のものとすべきであるとする原告の主張は採用できない。 而して、市選管は、その発見にかかる右九二三票につき同年六月七日の再調査会場において、これを点検調査し、その結果が別表(6)のとおりであつたことは前記のとおりであり、前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、同年七月二九日に開催された市選挙管理委員会において、さらに右九二三票が点検、調査され、その結果は、無効投票と認められるものはなく、別表(6)欄記載のとおりであつたことが認められる。なお、右の点検、調査は開票手続ではないから、それが開票手続と同一の手続によることなく行われたとしても、その効力を論ずる必要はない。 以上の事実によれば、本件九二三票の内容はその投票当初から別表(6)欄に記載されたとおりであつたと認めることができるので、これを前記のとおり、各候補者の有効得票に加算すると同(7)、(8)欄記載のとおりとなり、その結果は、計数上同(9)欄記載のとおりとなる。したがつて、右の結果は本件選挙の候補者の当落に異動を来たさないものであることが明らかであり、他にこの判断を左右すべき資料はない。よつて、本件選挙は、右九二三票の開票手続を実施しなかつたことにおいてその管理執行につき選挙の規定に違反したものであるが、右の違反は本件選挙の結 が明らかであり、他にこの判断を左右すべき資料はない。よつて、本件選挙は、右九二三票の開票手続を実施しなかつたことにおいてその管理執行につき選挙の規定に違反したものであるが、右の違反は本件選挙の結果には異動を及ぼす虞のあるものではなかつたというべきである。 六以上のとおりであるから、原告の本訴請求は右の点で理由がなく棄却を免れないものである。 よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条に従い主文のとおり判決する。 (裁判官外山四郎海老塚和衛鬼頭季郎)
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