昭和24(上告)74 窃盗被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和24年7月20日 福岡高等裁判所 棄却
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。          理    由  被告人弁護人福地種徳上告趣意は、末尾添付の上告趣意書と題する書面記載のと おりである。  第一点に対する判断。  大正十

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判決文本文2,571 文字)

主文 本件上告を棄却する。 理由 被告人弁護人福地種徳上告趣意は、末尾添付の上告趣意書と題する書面記載のとおりである。 第一点に対する判断。 大正十一年法律第四十二号少年法(以下單に旧少年法と略称する)第八條の規定の適用上の関係において、少年であるかどうかを定むべき時期は裁判言渡の時を標準とすべきであつて、犯罪時又はその他の時を標準とすべきではない。被告人は昭和五年十月二十二日生れであつて、犯罪の時及び第一審判決言渡(昭和二十三年七月八日)当時においては、まだ満十八才に満たない少年であつたが、原審判決言渡(昭和二十四年一月十九日)当時においては既に満十八才を超えているので、原審裁判所が被告人に対して旧少年法第一條第八條を適用せず、定期刑の言渡をしたのは相当であつて、少しも法令に違背した点はない。論旨は右と異る見解を前提とするものであつて採用の限りでない。 第二点に対する判断大正十一年法律第七十五号刑事訴訟法(以下單に旧刑事訴訟法と略称する)第四百三條の規定は、被告人が控訴した事件及び被告人のために控訴した事件については、控訴判決において第一審判決の主文の刑と対照し、実質上これより重い刑を言渡すことができないとし、その限度において、被告人の利益の保持をはかつたもの、であると解すべきでおり、そして、刑法第十條の規定は、法定刑の軽重に関する規定であつて、宣告刑の軽重に関するものでなく、宣告刑の軽重を定める標準については何らの規定もないのであるが、宣告刑の軽重を定めるのに右規定の趣旨に準拠することを排除すべき理由は全くないのであるから、旧刑事訴訟法第四百三條の規定もまた、刑の軽重は原則としてまず刑法第十條の規定の趣旨に則つて定むべきことを、予定するものであると解するのが相当である。 <要旨 排除すべき理由は全くないのであるから、旧刑事訴訟法第四百三條の規定もまた、刑の軽重は原則としてまず刑法第十條の規定の趣旨に則つて定むべきことを、予定するものであると解するのが相当である。 <要旨>刑法第十條第二項は「同種の刑は、長期の長いもの又は多額の多いものをもつて重いとし、長期又は多額の同</要旨>じものはその短期の長いもの又は寡額の多いものをもつて重いとする」旨を規定しており懲役刑についていえば、いずれも長期及び短期の定ある刑に関する規定ではあるが、懲役一年六月という刑は、不定期懲役刑との刑の軽重を対照する限りにおいて、長期短期共に一年六月の懲役刑であると想定すること、あながち不当ではないのであるから、不定期懲役刑との刑の軽重を、前記規定の趣旨に照して対照することも不能ではない。従つて、一年六月の懲役刑と、一年以上三年以下の懲役刑との刑の軽重を、刑法第十條第二項の規定の趣旨に則つて対照するときは、まずその長期を対照し、長期の長いものをもつて重いとすべきであるから、長期の長い後者の刑をもつて重いとすべきであり、懲役一年六月の原判決の刑は、懲役一年以上三年以下の第一審判決の刑より重い刑であるとはいえない。 不定期懲役刑の言渡を受けた少年は、所定の條件が備わつた場合、旧少年法第十條により、その刑の短期の三分の一の期間を経過した後、仮出獄が許され得るのに反し、定期懲役刑に処せられた者は刑法第二十八條により改悛の情があるとき、その刑期の三分の一の期間を経過した後仮出獄を許され得ることとなるので、少年に対する一年以上三年以下の懲役刑と成年に対する一年六月の懲役刑とは、少くとも仮出獄の関係において、前者の刑が被告人に利益であるから、従つて控訴判決において、前者の刑を変更して、後者の刑を言渡すのは達法であるとする立論も一見是認されそうに見え 一年六月の懲役刑とは、少くとも仮出獄の関係において、前者の刑が被告人に利益であるから、従つて控訴判決において、前者の刑を変更して、後者の刑を言渡すのは達法であるとする立論も一見是認されそうに見えるが、この見解は次のような理由によつて、これを相当とすることができない、すなわち(一)少年に対する不定期懲役刑は、身心の成熟が未だ十分でない者に対する取扱いとして、刑事政策上特別の考慮に基く特殊の処遇であつて、その短期は必ずしも、被告人が成年である場合に相当である懲役刑の刑期を標準として、定められるものではない。第一審で少年として不定期懲役刑の言渡を受けた被告人が控訴中たまたま成年に達したからといつて、第一審の不定期懲役刑の短期以下で量刑されなければ、被告人の利益が害せられるとすべき実質的な理由は全くないというべきである。(二)仮出獄が許される場合の蓋然率と許されない場合の蓋然率とは、これを一般的に観察するときは、その間に差異を認めることが困難であつて、全く同率というのほかないのであるから、刑の軽重を比べるのに、仮出獄が許される場合の事情のみを捉へてその標準とするのは妥当でない。(三)不定期刑は、短刑と共に長期を定めた一個の刑であるから、刑の軽重を定めるに当つては、その短期と共に長期の関係も併せて総体的に考慮に入れて対照すべきであつて短期の方のみに着目し、その長期の関係を全く度外視するのは失当である。 (四)刑法第十條第二項の規定の趣旨によれば同種の刑について刑の軽重を定めるに当つては、まずその長期を対照して長期の長いものを重いとし長期の同じものについて始めてその短期を対照し、短期の長いものを重いとすべきであるのにかかわらず、一年六月の懲役刑が一年以上三年以下の懲役刑に比べて重いとするのは、長期の関係はこれを考慮の外において顧みることなく専ら短 て始めてその短期を対照し、短期の長いものを重いとすべきであるのにかかわらず、一年六月の懲役刑が一年以上三年以下の懲役刑に比べて重いとするのは、長期の関係はこれを考慮の外において顧みることなく専ら短期の関係のみを捉えて対照するものであり、刑法の右規定の趣旨を全く没却する見解であつて賛同し難い従つて、原判決には所論のような違法はないというべく、この点に関する論旨もまた理由がない。 以上の理由により、旧刑事訴訟法第四百四十六條に則り主文のとおり制決する。 (裁判長判事石橋鞆次郎判事筒井義彦判事柳原幸雄)

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