- 1 -主文 本件控訴,本件附帯控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とし,附帯控訴費用は附帯控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 控訴人(控訴の趣旨)(1)原判決を取り消す。 (2)被控訴人は,控訴人に対し,6159万4186円及びこれに対する平成16年4月27日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (3)訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。 (4)仮執行宣言(附帯控訴に対する答弁)附帯控訴棄却申立て 被控訴人(控訴の趣旨に対する答弁)控訴棄却申立て(附帯控訴の趣旨)(1)原判決を取り消す。 (2)控訴人の請求を却下する。 (3)訴訟費用は,第1,2審を通じ,控訴人の負担とする。 第2事案の概要等 事案の概要本件は,原審における脱退被告であるモルガン・スタンレー・ジャパン・リミテッド(以下,同社も「被控訴人」という。)の従業員であった控訴人が,- 2 -同被控訴人に通知することなく日本公認会計士協会(以下「会計士協会」という。)に対して訴訟(以下「協会訴訟」という。)を提起し,同訴訟を取り下げるよう指示されたにもかかわらずこれを取り下げなかったこと,同訴訟について同被控訴人の顧客に喧伝したことなどを理由として同被控訴人から懲戒解雇された控訴人が,同被控訴人の義務を承継し,原審において引受承継を命じられた被控訴人に対し,被控訴人の設けている追加退職金制度に基づき,主位的に年金として,予備的に賃金(予備的1),賃金の後払い的性質(同2)又はSRP規定7条に基づく請求権(同3)として,未払の追加退職金合計6159万4186円及び懲戒解雇の日の翌日である平成16年4月27日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支 はSRP規定7条に基づく請求権(同3)として,未払の追加退職金合計6159万4186円及び懲戒解雇の日の翌日である平成16年4月27日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。なお,懲戒解雇については,控訴人が譴責処分無効確認請求事件を提起し,第1審は,控訴人の請求を一部認容したが,控訴審は,控訴人の請求を棄却し,その後同敗訴判決が確定した。 原審は,控訴人の請求を棄却した。そこで,控訴人がこれを不服として控訴し,被控訴人は,控訴人の請求を却下することを求めて,附帯控訴した。 争いのない事実は,原判決「事実及び理由」の第2の1記載のとおりであり,争点及び争点についての当事者の主張は,当審における当事者の主張の要旨を後記3項のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」の第2の2,3記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における当事者の主張の要旨(以下の当事者の主張について,相手方は,いずれも否認し争っている。)(控訴人の主張(控訴の理由)―争点②(不支給事由の存否)について)(1)原判決は,控訴人が英語版のSRP規定の文言に基づく主張をしたのに対して,「労働基準監督署に届け出られているのは日本語のSRPであり(この点は原告も争わない。),法的に被告と原告とを拘束するのは日本語のSRP規定であるから,原告の上記主張はSRPを年金と解することの根- 3 -拠とはならない」と判示したが,同判示は以下の点において重大な問題を含んでおり,誤りである。英語版のSRP規定を無視してはならない。 ア被控訴人は,そもそも外国法人であったし,その取締役や幹部は外国人が多く,日本語が満足に話せない者も多かった(本件懲戒解雇の当時の人事部長であるP1,控訴人の上司のP2もそうである。)。このようなこ 被控訴人は,そもそも外国法人であったし,その取締役や幹部は外国人が多く,日本語が満足に話せない者も多かった(本件懲戒解雇の当時の人事部長であるP1,控訴人の上司のP2もそうである。)。このようなこともあり,日本法に反したり,日本法に照らして何らかの問題がない限り,被控訴人の規程は,基本的には米国本社の規程をそのまま使っていた。 イ被控訴人には,日本語を満足に理解できない従業員もいたから,従業員に対する周知という意味でも英語版が必須であった。英語版の内容を信じた者が,日本語版との齟齬ゆえに保護されないことなど,被控訴人も想定していなかったはずである。 ウ被控訴人において,社内文書,メール,その他も原則英語でなされていたから,被控訴人の従業員は,皆,日本語の文書よりも英語の文書を重視していた。英語で記載された甲6の1,甲7ないし9を読んでも,英文の規程を参照しなければ,決してその意味を理解できない。 エ被控訴人は,SRP規定のように英語版ととともに日本語版を作成することもあったが,これは英語の能力が劣る一般社員に配慮する必要があった場合や,労働基準監督署等の官公庁に日本語版を提出する必要があった場合に,例外的に作成したにすぎない。SRP規定も,英語を正文とみる方が,むしろ被控訴人の実務に合致している。 オ労働基準監督署へ提出した書類の控えを保管し,これを証拠として提出することは極めて容易であるにもかかわらず,被控訴人が,このような書類を証拠として提出していないこと,日本語を理解できない従業員も珍しくないから,一般社員から意見聴取をしたというのは不思議であることなどから,日本語のSRPを被控訴人が労働基準監督署に提出しているとの被控訴人の主張は,疑わしい。労働基準監督署に届け出られているのは日- 4 -本語のSRPとの原審の認定は のは不思議であることなどから,日本語のSRPを被控訴人が労働基準監督署に提出しているとの被控訴人の主張は,疑わしい。労働基準監督署に届け出られているのは日- 4 -本語のSRPとの原審の認定は,不合理極まりない。 カ以下のような具体的事情に照らせば,日本語ではなく英語のSRP規定が正文とみるべきであり,当事者の意思にも合致する。 (ア)日本語版のSRP規定2条は,「加入資格者とは,会社に所属する正社員(日本円で給与を支払われる者)のうちアソシエイトかそれ以上の管理職で,各年度末まで会社に在籍している者をいう」と規定しているが,同条は英語版のSRP規定2条とは一致しない。 (イ)被控訴人は,SRPにつき,日本語の「追加退職金規定」(甲1の2)が正文であると主張するが,同規定で使用されている「管理職」「非管理職」「アソシエート」「年度末ボーナス」等のことばを定義する就業規則等の日本語の規程はない。就業規則上の従業員の区分は,一般社員とプロフェッショナル社員だけである。 (ウ)被控訴人は,英語版のSRP規定が原文で日本語版のSRP規定はこれを和訳して作成したことを認めている(原審の第5準備書面の1から2頁)。こうした作成過程に照らせば,日本語版よりも英語版の方が被控訴人の意図を正確に汲んでいるといえるし,規定の趣旨を理解するに当たり,英語版を参照することは必須といえる。SRPはアメリカの親会社の制度を模して制定されたから,もともと英語で設計された制度であり,日本の退職金制度とは全く異なる制度である。 (エ)就業規則と普通取引約款の説明を対比すれば明らかなとおり,両者は極めて似通っており,共通した特徴を有しているから,本件を判断するに当たり,普通取引約款の解釈準則と同様の解釈準則を採ることが合理的である。そして,約款を用いた契約に 比すれば明らかなとおり,両者は極めて似通っており,共通した特徴を有しているから,本件を判断するに当たり,普通取引約款の解釈準則と同様の解釈準則を採ることが合理的である。そして,約款を用いた契約において,当該契約当事者間で,約款中のある条項とは異なる合意(個別合意)をしておけば,個別合意が約款より優先する。 本件において,被控訴人が控訴人に対し,甲6の1(「1998年度- 5 -の年次総額報酬として,最低でも600,000米ドルが支払われることになる」)によって,労働条件を提示し,控訴人が被控訴人に対し,合意の意思表示をしたことにより,両者間に労働契約が成立したから,この「個別合意」(「1998年度の年次総額報酬として,最低でも600,000米ドルが支払われることになる」)が優先する。 (オ)約款文言につき複数の解釈可能性が残るために約款の解釈について疑いがある場合には,約款を作成または使用した当事者に不利に解釈されなければならないという準則がある。本件の場合,英語版のSRP規定が正文であるのか日本語版のSRP規定が正文であるのか明示した規定はなく,不一致がある。表現使用者には複数の解釈可能性を残すことのないように明確に表現する義務があったのに,その義務を果たさなかったから,自己に不利益な解釈可能性を負担しなければならず,SRP規定を作成または使用した被控訴人に不利に解釈されなければならない。 (2)被控訴人の賃金制度控訴人は,被控訴人における賃金制度の枠組みについて,被控訴人の担当者等からの説明等に照らし,超過勤務手当請求事件(東京地方裁判所平成16年(ワ)第23338号)において提出された被控訴人の人事部長であったP1の陳述書(甲42の1,2)及び同陳述書に基づく被控訴人の主張における賃金制度の説明が正しいと理解している。 方裁判所平成16年(ワ)第23338号)において提出された被控訴人の人事部長であったP1の陳述書(甲42の1,2)及び同陳述書に基づく被控訴人の主張における賃金制度の説明が正しいと理解している。被控訴人の賃金制度は,P1・モデルに沿って解釈すべきである。SRPに対する拠出金は,就業規則32条の裁量業績賞与の一部でしかないことは明らかといえる。裁量業績賞与とSRPとの関係は極めて明確であるにもかかわらず,原判決は,「裁量業績賞与とSRPの関係は今ひとつ明確ではない」と判示した。原判決の判示する被控訴人の賃金体系が失当であることは明らかである。 (3)両者の労働契約の内容ア甲6の1は,被控訴人が控訴人を採用するに当たり,控訴人の採用条件- 6 -を提示した正式の採用申入書であり,同申入に同意する場合には,同書の末尾に署名の上,被控訴人に送付すれば,控訴人と被控訴人との間で,同書に記載された条件の雇用契約が成立することとされていた。そして,控訴人は署名の上,同書を被控訴人に送付したから,両者間で同旨の労働契約が成立した。 イ甲6の1の3段目は,以下のとおり規定しており,「裁量業績賞与」なる観念は規定されていない。 YourTotalRewardwillconsistoffourcomponents:abasesalary(BaseI),ahousingsubsidy(BaseⅡ),ayearendbonusandanawardundertheFirm’sEquityIncentiveCompensationPlan(EICP). 被控訴人は,これを以下のとおり訳している。 「貴殿の年次総額報酬は,次の4つの部分によって構成されます:・年間基本給(基本給Ⅰ)・ハウジング・サブシデ mpensationPlan(EICP). 被控訴人は,これを以下のとおり訳している。 「貴殿の年次総額報酬は,次の4つの部分によって構成されます:・年間基本給(基本給Ⅰ)・ハウジング・サブシディー(基本給Ⅱ)・裁量業績賞与・当社の株式インセンティブ報酬制度(EICP)に基づく報酬」しかし,「ayearendbonus」との言葉からは,「年度末ボーナス」なる観念が出ることはあっても,「裁量業績賞与」なる観念が自動的に出てくる余地はない。同和訳は被控訴人が別件訴訟のために作成した単なる訳文にすぎず,甲6の1の解釈指針とはなりえないことを控訴人も争うつもりはないが,上記和訳の作成は,被控訴人の法務担当者が関与したのが自然であり,同担当者が訳したからこそ,このような記載のある証拠が裁判所に提出された。 - 7 -ウ甲6の1において,「SupplementalRetirementProgram」は,「Compensation」の内容としては一切論じておらず,「SupplementalRetirementProgram」については,「YouwillbeeligibletoparticipateintheTokyoSupplementalRetirementProgramwhenyoumeettheeligibilitycriteria」と記載している。甲6の1は,控訴人に参加資格があり,控訴人が希望すれば,SRPに参加できるとされていたにすぎないことがわかる。 エ被控訴人は,控訴人を採用するに当たり,オファー・モデルのimmediatelypaidpotion(即時支給分)のSRPの配分について,何も説明しておらず,SRPの適用を受けるかどうかは控訴人次第との態度をとっていたから,両 り,オファー・モデルのimmediatelypaidpotion(即時支給分)のSRPの配分について,何も説明しておらず,SRPの適用を受けるかどうかは控訴人次第との態度をとっていたから,両者の性質が著しく異なると解釈するのは失当である。 オSRPに対する拠出額は,「年間基本給」と比較しても高額となることが多いことから,「年次総額報酬」は控訴人に対して実際に支払われるか,これと同視できるような状況になければならない。 (4)SRPの法的性質ア「SupplementalRetirementProgram」の位置付け原判決は,「英文のSRP規定1条の『DefinedContributionRetirementPlan』は日本語のSRP規定では『退職金制度』と訳されている」ことをSRPが年金ではなく退職金であることの根拠としたり,「SRPは,これを規定するSRP規定の名称自体が『追加退職金規定』とされていることから,退職金と解するのが最も自然である」とか,英語版のSRP規定1条のどこにも「就業規則に- 8 -定める」と言った文言はないにもかかわらず,「SRP規定1条には,制度の趣旨として,就業規則に定められる退職金制度に『追加』されるものであることも明記されている」と判示して,SRPは年金との控訴人の主張を排斥したが,以下のとおり失当である。 甲1の1の1条の冒頭には,ThisSupplementalRetirementPlan(“thePlan”)isinadditiontotheDefinedContributionRetirementPlanforeligiblelocalemployeesofMorganStanleyJapan,Ltd.との条項があるから,「This ributionRetirementPlanforeligiblelocalemployeesofMorganStanleyJapan,Ltd.との条項があるから,「ThisSupplementalRetirementPlan(“thePlan”)」は,「theDefinedContributionRetirementPlan」に追加された(inadditionto)ものである。そして,definedcontributionretirementplanなる英語は,日本語の確定拠出年金を意味するから,「theDefinedContributionRetirementPlan」は,被控訴人において採用されていた特定の確定拠出年金制度,すなわち,「モルガン・スタンレー企業型年金規程」を指すとみるのが自然である。したがって,SRP規定は確定拠出年金制度である「モルガン・スタンレー企業型年金規程」を補完する制度である。 イSRPの性質論被控訴人の親会社の米国連邦証券取引法に基づく正式な有価証券報告書(10-K)の連結財務諸表において,SRPは「年金」(Pension)として処理されており,「米国外関係会社も実質的にすべての従業員に年金制度が適用されている」との記載もある(甲27の1,2)。また,- 9 -上記のとおり,SRP規定は確定拠出金年金制度である「モルガン・スタンレー企業型年金規程」を補完する制度である。これらの事情とSRP規定の内容を見れば,SRPの性質が確定拠出年金であることは明らかである。 ウSRP規定7条ただし書が無効であることSRPへの拠出金は,即時給付分と類似するものでなければならない。 被控訴人が行ったSRPの拠出は,被控訴人の内部のものであるが,実質的にみれば, ある。 ウSRP規定7条ただし書が無効であることSRPへの拠出金は,即時給付分と類似するものでなければならない。 被控訴人が行ったSRPの拠出は,被控訴人の内部のものであるが,実質的にみれば,被控訴人が控訴人に対してSRPの拠出額相当額を支給し,控訴人が同額を被控訴人における控訴人名義の口座に拠出したと同視できる。SRPは確定拠出年金であることは上記のとおりであり,控訴人と被控訴人とは,実質的にみれば,年金勘定の委託者と受託者あるいは受寄者との関係にあるということができる。ところが,SRP規定7条ただし書は,年金勘定の受託者あるいは受寄者にすぎない被控訴人が一方的に支払を拒絶できる内容であるから,年金制度の趣旨に反し,公序良俗に反して無効である。 エ裁量業績賞与の法的性質原判決は,「年次総額報酬のうち,裁量業績賞与は,使用者の裁量によって支給されるものであることが明らかであり,この部分については,任意的恩恵的給付と解されるから,労働の対償としての労基法上の『賃金』に当たらないと認めるのが相当である」と判示したが,以下のとおり失当である。 一般に,使用者が任意的・恩恵的に支払う給付については,原則として労働の対償たる賃金には当たらないが,その支給条件が予め明確に定められているものは,労基法上の賃金としての保護を及ぼすべきものと解されている。 そして,就業規則32条は,「裁量業績賞与は,通常,会社の裁量業績- 10 -賞与の対象となる会計年度末に当たる月の翌月に社員に通知され,その通知のさらに翌月に支払われる」と規定しているから,給付前であっても通知があった時点で,具体的な請求権に転化したといえる。被控訴人が,一定の金額を裁量業績賞与として支払うことを通知して約束したにもかかわらず,当該通知の翌月末日までに支払わないのであれば であっても通知があった時点で,具体的な請求権に転化したといえる。被控訴人が,一定の金額を裁量業績賞与として支払うことを通知して約束したにもかかわらず,当該通知の翌月末日までに支払わないのであれば,従業員が被控訴人に対し,通知どおりの裁量業績賞与を当然請求でき,当該請求権を,敢えて,労働基準法の保護の枠組みから除外する必要などない。 オSRPの退職一時金の法的性質SRP規定の退職一時金の支給前に「その支給条件が明確に定められて」いるし,「その支払が使用者に義務づけられている」から(原判決は「不支給事由が存在しない場合に原告が支払を求め得る額が6159万4186円であることは上記のとおり争いがなく」と判示しているし,その支払時期についても,SRP8条により明確といえる。),労働基準法上の賃金といえるし,労働契約上の賃金といえる。 (5)SRP規定の不支給事由に該当しないことア万一,SRPの法的性質が,年金,賃金のいずれでもないとしても,SRP規定7条の「Cause」「理由」という要件に該当しない。 被控訴人は,「Cause」につき,就業規則の懲戒解雇の要件よりも緩い要件であると主張するが,失当である。SRPの不支給事由は,懲戒解雇が認められた本件において,当然に認められるといった関係にはない。 「anyotheractoromissionwhichismateriallyinjurioustotheinterestorbusinessreputationofMS」は,被控訴人の利益または名声を意味するのではなく,「モルガン・スタンレー・グループ全体の利益または名声に極めて重大な損害を与えるいかなる行為や怠慢」を意味すると解釈するのが合理的である。 - 11 -SRP規定7条の規定の体裁に鑑み,「Caus 「モルガン・スタンレー・グループ全体の利益または名声に極めて重大な損害を与えるいかなる行為や怠慢」を意味すると解釈するのが合理的である。 - 11 -SRP規定7条の規定の体裁に鑑み,「Cause」「理由」の存在についての主張立証責任を負うのが被控訴人であることは明らかであるところ,被控訴人は,モルガン・スタンレー・グループ全体との関係で控訴人の所為を論じていないから,SRP規定7条ただし書の「Cause」「理由」があったとの認定はできない。 仮に,控訴人の所為が,「モルガン・スタンレー・グループ全体の利益または名声に極めて重大な損害を与え」たのであれば,被控訴人の親会社の連結財務諸表に,控訴人の所為の影響があるはずであるところ,被控訴人の親会社は,そのような取り扱いをしていないから,そのような事実がないことを被控訴人の親会社も認めているといえる。 イ原判決が前提とした非違行為はいずれもSRP規定の不支給事由とならない。 (ア)非違行為①について万一,控訴人が,P3の指示に反したとしても,このような事情が第三者に公表されたことはないから,同事実によりモルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガン・スタンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 (イ)非違行為②について万一,P3の指示に反したとしても,このような事情が第三者に公表されたことはないから,同事実によりモルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガン・スタンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 P3は,平成15年9月27日号の週刊「○○」(以下「○○」という。)における記事の控訴人の意見は被控訴人の意見とは異なることや ンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 P3は,平成15年9月27日号の週刊「○○」(以下「○○」という。)における記事の控訴人の意見は被控訴人の意見とは異なることや- 12 -被控訴人自体は無関係であることを明確にするために,控訴人をして,既存の顧客に対して,○○を送付させたわけではなく,むしろ,被控訴人の従業員である控訴人の記事が既存の顧客の参考になると考えたからこそ,○○を送らせたはずである。その上,顧客に対して,秘密保持義務を課したり,秘密にするよう依頼したこともないから,控訴人が被控訴人の従業員であることを隠そうとしていたとは考えられず,この意味からも,非違行為②が被控訴人の名声を毀損したとはいえない。 (ウ)非違行為③について控訴人が,書簡を添えて○○を送付したのは,在日米国商工会議所1か所にすぎないから,同事実によりモルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガン・スタンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 (エ)非違行為④,⑤について控訴人が内容証明郵便を送付したのは,公の批判にさらされてしかるべき公的機関といえる大手監査法人と会計士協会にすぎない。同内容証明郵便には,控訴人が被控訴人の従業員であることは記載されていないから,これら大手監査法人も会計士協会も,控訴人が被控訴人の従業員であると認識したとは思えず,モルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガン・スタンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 (オ)非違行為⑥,⑧について原判決は,本件留意点の公表によって,「原告の営業活動は著しく阻害され,もって,上記金融商品についての営業 ・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 (オ)非違行為⑥,⑧について原判決は,本件留意点の公表によって,「原告の営業活動は著しく阻害され,もって,上記金融商品についての営業成績は上がらず,かかる見地から,賃金,昇進等の点で不利な扱いを甘んじなければならない状況となった」との控訴人の表現を「本件留意点の公表によって原告が賃- 13 -金,昇進などについて不利益な扱いを受け」と言い換えている。少なくとも,控訴人は,被控訴人が控訴人に対して,今後の賃金,昇進等の点で不利な扱いをしても,控訴人の営業成績が上がらなかったことに照らし,甘んじなければならない状況にあるということを表現するつもりで上記のとおりの表現をしたが,この点に誤りがあるとは思えない。被控訴人には,控訴人が所属していた為替本部は既になく,その部員の多くが退職しているが,同部の営業成績が上がっていたら,このような結果とはならなかったはずである。 内容証明郵便には,控訴人が被控訴人の従業員であることは記載されていないから,モルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガン・スタンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられないことは,上記(エ)と同じである。 原判決は,許可がなかったとか報告していないことも問題にしているようであるが,このような事情が第三者に公表されたことはないから,同事実によりモルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガン・スタンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 (カ)非違行為⑦について社外事業届を提出していなかったからといって,モルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されること ープや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 (カ)非違行為⑦について社外事業届を提出していなかったからといって,モルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガン・スタンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 (キ)非違行為⑨について事前報告をしなかったからといって,モルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガ- 14 -ン・スタンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 (ク)非違行為⑩について新潮社と日本経済新聞社に送付したが結局記事にはならなかったから,モルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガン・スタンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 (ケ)非違行為⑪についてメールの名宛人は,控訴人が個人の立場で,訴訟を提起したことを明確に認識しているし,これによる被控訴人に対する直接の悪影響は認められないから,モルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガン・スタンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 (コ)非違行為⑫について内容証明郵便には,控訴人が被控訴人の従業員であることは記載されていないから,これら大手監査法人も会計士協会も,控訴人が被控訴人の従業員であると認識したとは思えず,モルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガン・スタンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 (サ)非違行為⑮,⑯について青山商事は,P4弁護士について一切知 控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガン・スタンレー・グループや被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられない。 (サ)非違行為⑮,⑯について青山商事は,P4弁護士について一切知らず,控訴人が内容証明郵便の起案をしていると認識していた。青山商事は,控訴人に対しても被控訴人に対しても,この点に関して苦情を述べたことすらないのであって,モルガン・スタンレー・グループの名声も被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,モルガン・スタンレー・グループや被控訴人の- 15 -名声を重大に毀損したとも考えられない。 (シ)訴えの取下げをしなかったこと被控訴人は,控訴人が訴えの取下げ要求を拒絶するや,直ちに控訴人を懲戒解雇としたわけであり,解雇前に,控訴人が取下げを拒絶したことを対外的に公表したことはない。解雇時において,被控訴人が控訴人に対して取下げを要求したことすら第三者は知らなかったし,ましてや,控訴人が取下げを拒絶したことを第三者は知らなかったから,取下げの拒絶によって「被控訴人の対外的信用が毀損された」ことなどない。 (6)被控訴人の取り扱いは均衡を保ったものでなければならないことSRP規定は,全額支給か不支給かの2者選択という態度ではなく,被控訴人は,「理由」の程度に沿った柔軟な対応をとることを前提にしている。 したがって,被控訴人が不支給とするためには,控訴人の「理由」が過去の功労を失わせるほどの重大な背信行為があり,同「理由」による被控訴人における損害が不支給とする金額を上回るものでなければならないが,本件において,そのような事情はない。被控訴人は,控訴人が被控訴人の命令に従って協会訴訟を取り下げなかったことを重視するが,民事訴訟の提起自体,憲法上認められた権利の行使であり,何人も取下げを強制できない。少 て,そのような事情はない。被控訴人は,控訴人が被控訴人の命令に従って協会訴訟を取り下げなかったことを重視するが,民事訴訟の提起自体,憲法上認められた権利の行使であり,何人も取下げを強制できない。少なくとも,訴えの提起自体が犯罪を構成したり,行政処分の対象とされたりすることはない。 これに対し,作為的相場形成を行うことが違法であり,そのような行為が発覚すれば,被控訴人が営業停止処分を受けるなど重大な処分を受け,もって,金融機関として極めて深刻な事態となることは容易に予見できたはずである。上記事件の担当者の相場形成が意図的でなかったということは信用できず,このような担当者としても強い人格的非難を与えられても当然と考えたはずである。 被控訴人は,このような担当者に対してSRP規定に基づき満額の支払を- 16 -する一方で,控訴人に対してSRP全額を不支給としたのは,明らかに均衡を失している。 (被控訴人の主張(附帯控訴の理由)―争点①(本件訴訟の提起が訴権の濫用に当たるか。)について)(1)訴訟上の禁反言(矛盾挙動の禁止)は,訴訟上の信義則の発現形態の一つとされ,最高裁判所を含めて,多くの裁判例がこれを認めており,確たる判例となっている。したがって,前訴における裁判所の判断の重要な前提事実とされた主張と矛盾する主張を後訴においてすることが,信義則に反して許されないことは,明らかである。 ところが,原判決は,「本件訴訟を却下することには躊躇を覚えざるを得ない。」と判示した。しかし,以下のとおり,原判決が却下を「躊躇」する理由としてあげる点は,信義則違反を理由とする訴えの却下を否定する理由にはなり得ない。 (2)ア原判決は,「欺いて得たとされる判決は結果的に一時的なものにとどまった」という。しかし,高裁判決が懲戒解雇を有効であるとした理 義則違反を理由とする訴えの却下を否定する理由にはなり得ない。 (2)ア原判決は,「欺いて得たとされる判決は結果的に一時的なものにとどまった」という。しかし,高裁判決が懲戒解雇を有効であるとした理由は,「それ(懲戒解雇)が退職金の不支給という効果をもたらすものであることを考慮に入れても,(中略)これをもって懲戒権の濫用ということはできない」というものであり,あくまで,「懲戒解雇が有効であるならば退職金は支給されない」ということが前提とされている。つまり,控訴人の主張に「欺かれている」ということにおいて,高等裁判所も何ら変わるところがなく,控訴人の主張は上告受理の申立てにおいても維持されているから,最高裁判所も,控訴人の主張に「欺かれていた」ことになる。以上から,「欺いて得たとされる判決は結果的に一時的なものにとどまった」という原審の判断は,控訴人が一貫して裁判所を「欺いていた」ことを無視するもので,妥当でないことは明らかである。 - 17 -イ前訴では,双方の当事者が,それぞれの「利害得失」を考慮したうえで,裁判所に対して,「懲戒解雇が有効とされた場合には,退職金が一切支給されないこと」を前提に懲戒解雇の有効性の判断を求めたのである。したがって,これを前提に裁判所の判断が下された以上,敗訴したからといって,この前提そのものを覆すことが許されるはずはない。そのことは,退職金と懲戒処分との関係についていかなる立場に立とうと同じことであって,原判決のこの点に関する論旨は,全く根拠がない。 解雇事件では,控訴人は,「懲戒解雇が有効であれば,退職金等が不支給になること」を「権利濫用の評価根拠事実」として主張し,被控訴人もこれを前提として,解雇が権利濫用にあたらないと主張した。裁判所もこれを前提に,解雇が権利濫用にあたるか否かを判断し,一 金等が不支給になること」を「権利濫用の評価根拠事実」として主張し,被控訴人もこれを前提として,解雇が権利濫用にあたらないと主張した。裁判所もこれを前提に,解雇が権利濫用にあたるか否かを判断し,一審は権利濫用にあたるとし,控訴審はあたらないとした。 ウ原審裁判官は,「本件訴訟を却下することには躊躇を覚えざるを得ない。」と判示したが,「躊躇を覚ざるを得ない」との判示は,原審裁判官が,前訴における代理人の主張を一種の「弁護過誤」と考えたのではないかと思われる(乙135,控訴人本人尋問調書16頁)。P4弁護士は,原審においては,代理人に選任されなかった。控訴人本人は,本人尋問において,あたかも,前記の主張はP4弁護士が勝手にしたもので,控訴人には責任がないかのごとく述べた。そして,原審裁判官は,これをもとに,「本件訴訟を却下することには躊躇を覚えざるを得ない。」とした。しかし,控訴審において,P4弁護士は控訴人の代理人に選任され,控訴人は,代理人の主張の効果が自己に及ぶことを否定できなくなったから,本訴請求を却下することに「躊躇を覚える」必要は全くなくなった。 第3当裁判所の判断 当裁判所は,控訴人の被控訴人に対する請求は理由がないから,控訴を棄却- 18 -すべきものと判断し,被控訴人の附帯控訴は理由がないから,附帯控訴を棄却すべきものと判断する。その理由は,後記2項に当審における当事者の主張の要旨に対する判断を付加するほか,原判決「事実及び理由」の「第3当裁判所の判断」欄記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決を次のとおり補正する。 (1)同20頁10行目の「判断した」の次に「(甲4の45頁3行目から4行目まで)」を加える。 (2)同頁24行目の「本件は」から同21頁1行目までを次のとおり改める。 「さら とおり補正する。 (1)同20頁10行目の「判断した」の次に「(甲4の45頁3行目から4行目まで)」を加える。 (2)同頁24行目の「本件は」から同21頁1行目までを次のとおり改める。 「さらに,SRP規定7条ただし書は,不支給事由を規定し,それらにより退職となった場合には,同制度に積み立てられた金額の一部または全部は支給されない旨を規定しており(引用にかかる原判決の争いのない事実(7)),不支給事由に該当し,退職となった場合に,SRPの全部が支給されないか,一部が支給されないかは,不支給事由に該当する行為の性質,態様,行為後の事情などを斟酌して総合して判断されるべきもので(証人P5,同P6),その点については最終的に司法審査に服する。そして,前訴において,控訴人に対し,SRPの全部が支給されないか,一部が支給されないかという点は争点とはなっておらず,その当時,その点に関する結論は未だ確定していなかった。 ところで,前訴において当事者が主要な争点として争い,かつ,裁判所がこれを審理し,その争点について判断を下した場合には,同一の争点を主要な先決問題とした別訴の審理において,その判断に反する主張立証を許さないという考えは,一般論としては,あり得ないものではないが,控訴人に対し,SRPの全部が支給されないか,一部が支給されないかという点は,前訴において主要な争点とはなっていなかったと認められるから,上記一般論を適用する前提を欠く。また,本訴が実質的に前訴の蒸し返しであるとも認められない。」- 19 -(3)同21頁6行目から7行目にかけての「控えることとする。」を「相当ではない。」と改める。 (4)同頁22行目の「退職時には」を「退職または死亡した場合には」と改める。 (5)同22頁2,4行目の「Retiremen」を「Re ての「控えることとする。」を「相当ではない。」と改める。 (4)同頁22行目の「退職時には」を「退職または死亡した場合には」と改める。 (5)同22頁2,4行目の「Retiremen」を「Retirement」と,同頁4行目から同頁5行目にかけての「日本語のSRP規定では「退職金制度」と訳されていることは上記のとおりである。」を「日本語のSRP規定では「退職金制度」と訳されており,一般に英文において「年金」に対応するのは「PensionPlan」であり,「退職金」に対応するのは「RetirementPlan」であるところ,被控訴人においても,そのように使用している(乙154,155)から,そのように訳するのが相当である。」と各改める。 (6)同23頁6行目の「P6の証言)」を「P6の証言,控訴人本人)及び弁論の全趣旨」と改め,同頁12行目の「就業規則」の次に「(乙126)」を加える。 (7)同頁16行目の「SRPは,」の次に「管理職レベルのうち第二段階については,」を加える。 (8)同24頁6行目の「甲2の1,2」の次に「,甲7,8」を加え,同頁7行目の「600万米ドル」を「60万米ドル」と改める。 (9)同25頁11行目の「,8条」を削除する。 (10)同頁26行目から同26頁1行目にかけての「,行為規範1,2頁」を削除する。 (11)同26頁7行目の「背信行為」の前に「広く投資家全体に対する」を加える。 (12)同27頁6行目から7行までの「非違行為⑥及び⑧も就業規則7条に違反する。」を「非違行為⑥は就業規則7,8条に,同⑧は同7条に,それ- 20 -ぞれ違反する。」と改める。 (13)同頁18行目の「17ないし18頁」を「乙6の17,18頁(以下,行為規範の頁数は,乙6の頁数をいう。)」を加える。 (14) 同⑧は同7条に,それ- 20 -ぞれ違反する。」と改める。 (13)同頁18行目の「17ないし18頁」を「乙6の17,18頁(以下,行為規範の頁数は,乙6の頁数をいう。)」を加える。 (14)同頁25行目の「コミュニケーションポリシー」の次に「(乙8)」を加える。 (15)同29頁13行目から14行目にかけての「同月23日までに協会訴訟を取り下げるよう命じた」を「同文書末尾の署名欄に署名の上同月23日午後5時までに提出すること,遅くとも同月27日午後5時までに協会訴訟を取下げること,取下げのために必要な措置を確認することなどを命じた。」と改める。 (16)同30頁6行目の「被告の指示に従うべきであり,」の次に「控訴人が,被控訴人への入社に際し,被控訴人から,就業規則及び行為規範の内容を知る機会が与えられたと認められる(乙150,証人P5,弁論の全趣旨)本件において,」を加え,同行の「その結果」を削除する。 (17)同頁17行目の「背信行為」の前に「広く投資家全体に対する」を加える。 (18)同頁23行目の「そして」から26行目の「純粋な私的行為とはみられず,」までを「そして,非違行為③においては,書簡に被控訴人会社のエグゼクティブ・ディレクターの肩書の入った控訴人の名刺を同封し(乙9),控訴人が被控訴人の従業員であることを明らかにしている。その余の行為については,いずれも控訴人が被控訴人の従業員であることを明らかにして行っているわけではないが,金融機関でデリバティブ業務に従事する者であることを明記しており,純粋な私的行為とはみられず,控訴人の名前,控訴人がモンタナ州公認会計士という資格を有すること,控訴人がある金融会社で外国為替取引の販売を担当していることなどを,本件で非違行為として問題となった文書などで明らかにしており ず,控訴人の名前,控訴人がモンタナ州公認会計士という資格を有すること,控訴人がある金融会社で外国為替取引の販売を担当していることなどを,本件で非違行為として問題となった文書などで明らかにしており(乙9,15,16の1ないし5,乙- 21 -129,131),為替デリバティブ取引に関わる者の中で,控訴人は,ある程度以上名前が知られた存在であると認められる(甲30ないし32,乙12,13,25,143,145,控訴人本人,弁論の全趣旨)から,」と改める。 当審における当事者の主張の要旨に対する判断(1)控訴人の主張(控訴の理由)―争点②(不支給事由の存否)についてア控訴人は,同(1)において,原判決は,控訴人が英語版のSRP規定の文言に基づく主張をしたのに対して,「労働基準監督署に届け出られているのは日本語のSRPであり(この点は原告も争わない。),法的に被告と原告とを拘束するのは日本語のSRP規定であるから,原告の上記主張はSRPを年金と解することの根拠とはならない」と判示したが,同判示は重大な問題を含んでおり,誤りである,英語版のSRP規定を無視してはならないと主張する。 しかしながら,SRP規定では,有資格者のため,同制度に年度末ボーナスの額を基に計算された額を積み立てるものとし(3条),有資格者が退職又は死亡した場合に,積み立てた合計額を一時金として支給するが,一定の不支給事由により退職した場合には,積み立てられた金額の全部又は一部が支給されない(7条)と定めており,その他に通貨の選択(4条),会社による追加積み立て(5条),積立日(6条),支払時期(8条),附則(9条)が規定されているが,これらの定めについては日本語の規定であれ,英文の規定であれ内容に差はない。そして,この定められている内容からすればSRPが退職 ,積立日(6条),支払時期(8条),附則(9条)が規定されているが,これらの定めについては日本語の規定であれ,英文の規定であれ内容に差はない。そして,この定められている内容からすればSRPが退職金であって年金ではないことは明らかであるから,控訴人の同主張は,その根拠として主張すること(同(1)アないしカ)について個別的に判断するまでもなく,理由がない。なお,英文のSRP規定1条の「DefinedContributionRetirementPlan」は日本語のSRP規定では「退職金制- 22 -度」と訳されおり,そのように訳するのが相当であることは上記のとおりである。 イ控訴人は,同(2)において,被控訴人の賃金制度は,P1の陳述書(甲42の1,2)及び同陳述書に基づく被控訴人の主張における賃金制度の説明が正しいと理解しており,被控訴人の賃金制度は,P1・モデルに沿って解釈すべきであるなどと主張する。 証拠(甲42の1,2)によれば,P1は,超過勤務手当請求事件(東京地方裁判所平成16年(ワ)第23338号)において陳述書を提出し,その陳述書において,被控訴人はプロフェッショナル社員に対し,年末に各自の年次総額報酬を決定し,この総額から既に支払済みの年間基本給を差し引いた残額が裁量業績賞与(ボーナス)の総額となること,裁量業績賞与の支給について就業規則31,32条を括弧書きで引用したこと,ボーナスは現金ボーナスとEICPに基づいてアメリカ親会社株式及びストックオプションによって支給される分に分けられ,前者は,即時給付分とSRPに組み込まれる分に別れることなどを記載したことが認められる。 就業規則32条の内容は,原判決(同32頁13行目から18行目まで)記載のとおりである。 ところで,本件は,控訴人の行った行為が不支給事由(SR 込まれる分に別れることなどを記載したことが認められる。 就業規則32条の内容は,原判決(同32頁13行目から18行目まで)記載のとおりである。 ところで,本件は,控訴人の行った行為が不支給事由(SRP規定7条ただし書)に該当するかどうかという点が争点であり,上記のようなP1の陳述内容が正しいか否かは,同争点の判断,結論に影響を及ぼすものではない。 以上から,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の同主張は理由がない。 ウ控訴人は,同(3)において,両者の労働契約の内容について主張するので,以下判断する。 (ア)証拠(甲6の1,2,控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,控- 23 -訴人は,被控訴人に入社するに際し,被控訴人から平成10年3月2日頃甲6の1の文書(オファーレター)を受け取ったこと,そこには,「YourTotalRewardwillconsistoffourcomponents:abasesalary(BaseⅠ),ahousingsubsidy(BaseⅡ),ayearendbonusandanawardundertheFirm’sEquityIncentiveCompensationPlan(EICP).」と記載されていたこと,同文書の同部分にはSRPに関する記載がないが,同文書中には,「YouwillbeeligibletoparticipateintheTokyoSupplementalRetirementProgramwhenyoumeettheeligibilitycriteria,detailsofwhichwillbesuppliedtoyoubytheTokyoOfficeofDevelo ettheeligibilitycriteria,detailsofwhichwillbesuppliedtoyoubytheTokyoOfficeofDevelopment.」と記載されていたこと,控訴人は,上記文書に同年3月27日に署名し同年4月被控訴人に入社したことが認められる。 上記認定事実に基づくと,控訴人は,被控訴人への入社に際し,一定の適格要件を満たした場合には,「SupplementalRetirementProgram」の参加資格を取得することができるとの内容の文書を受け取ったが,その時点では,それ以上の詳細な説明は受けなかったことが認められる。そして,同制度の詳細な内容はSRP規定に規定されていることは上記認定(引用にかかる原判決の争いのない事実(6),(7))のとおりであり,証拠(控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,被控訴人への入社後,被控訴人に照会してSRP規定を入手したと認められ,SRPについて異議を述べるこ- 24 -ともなかったのであるから,SRP規定は,控訴人と被控訴人との間の労働契約の内容をなしているものといえる。 控訴人は,同(3)アないしオのとおり主張するが,本件の争点に対する上記判断に影響を及ぼすものではない。 エ控訴人は,同(4)において,SRPの法的性質について上記のとおり主張するので,以下判断する。 (ア)同(4)ア,イについて控訴人は,「theDefinedContributionRetirementPlan」は,「モルガン・スタンレー企業型年金規程」を指すとみるべきこと,被控訴人の親会社の有価証券報告書では,SRPは「年金」(Pension)として処理されていること,及びSRP規定の内容から,SRPの性質が確定拠出年金であるこ 業型年金規程」を指すとみるべきこと,被控訴人の親会社の有価証券報告書では,SRPは「年金」(Pension)として処理されていること,及びSRP規定の内容から,SRPの性質が確定拠出年金であることは明らかであると主張する。 しかし,証拠(甲46,乙154,156)によれば,被控訴人において,「モルガン・スタンレー企業型年金規約」による企業型確定拠出年金制度は,「theCorporateTypeDefinedContributionPensionPlan」という表現が使用されていることが認められるから,「theDefinedContributionRetirementPlan」が年金とは異なるものであることは明らかである。 控訴人は,甲27の1を根拠として,被控訴人の親会社の米国連邦証券取引法に基づく正式な有価証券報告書(10-K)の連結財務諸表において,SRPは「年金」(Pension)として処理されていると主張する。しかし,甲27の1は,日本の法人である被控訴人の制度に関する説明がされたものとは認められないから,控訴人の同主張は理由がない。 - 25 -控訴人は,SRP規定の内容(3ないし7条,9条)からSRPが年金であると主張するが,SRP規定の内容からすればSRPが退職金であって,年金であると認められないことは上記のとおりである。 以上のとおり,控訴人の上記主張は理由がない。 (イ)同(4)ウについて控訴人は,SRPは確定拠出年金であり,控訴人と被控訴人とは,実質的にみれば,年金勘定の委託者と受託者あるいは受寄者との関係にあるということができることを前提として,SRP規定7条ただし書は,年金制度の趣旨に反し,公序良俗に反して無効であると主張するが,SRPは確定拠出年金であるといえないことは上記のとおりで との関係にあるということができることを前提として,SRP規定7条ただし書は,年金制度の趣旨に反し,公序良俗に反して無効であると主張するが,SRPは確定拠出年金であるといえないことは上記のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の同主張は理由がない。 (ウ)同(4)エについて控訴人は,就業規則32条(「裁量業績賞与は,通常,会社の裁量業績賞与の対象となる会計年度末に当たる月の翌月に社員に通知され,その通知のさらに翌月に支払われる」)を根拠に,給付前であっても通知があった時点で,具体的な請求権に転化したといえると主張する。 しかし,SRPは年度末ボーナスの金額の通知を受けた日の属する月の末日が積立日となり(SRP規定6条),支払事由は,退職または死亡した場合であることは上記のとおりであるのに対し,就業規則32条の規定する裁量業績賞与は,上記通知の翌月に支払われることとなっており,就業規則32条がSRPに適用されないことは明らかであるから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の同主張は理由がない。 (エ)同(4)オについて控訴人は,SRP規定の退職一時金の支給前に「その支給条件が明確に定められて」いるし,「その支払が使用者に義務づけられている」と主張する。 - 26 -しかし,年次総額報酬のうち,裁量業績賞与は,使用者の裁量によって支給されるものであることが明らかであり,この部分については,任意的恩恵的給付と解されるから,労働の対償としての「賃金」(労基法上の「賃金」)に当らないと認めるのが相当であること,SRPの積立額が裁量業績賞与の額を基準として定められること(SRP規定3条)に照らすと,SRPもまた任意的恩恵的給付であることが明らかであり,「賃金」には当らないことが明白であることは,上記認定(引 Pの積立額が裁量業績賞与の額を基準として定められること(SRP規定3条)に照らすと,SRPもまた任意的恩恵的給付であることが明らかであり,「賃金」には当らないことが明白であることは,上記認定(引用にかかる原判決)のとおりである。 以上から,「その支払が使用者に義務づけられている」との控訴人の同主張は理由がない。 オ控訴人は,同(5)において,SRP規定の不支給事由に該当しないことを主張するので,以下判断する。 (ア)控訴人は,被控訴人は,SRP規定7条ただし書の不支給事由(英文では「Cause」,日本文では「理由」)につき,就業規則の懲戒解雇の要件よりも緩い要件であると主張するが,失当であると主張する。 しかし,本判決(補正の上原判決を引用)は,SRP規定の不支給事由の存否について判断するもので,就業規則の懲戒解雇の要件との比較は不要であるから,控訴人の同主張に対する判断は不要である。 次に,控訴人は,「anyotheractoromissionwhichismateriallyinjurioustotheinterestorbusinessreputationofMS」は,被控訴人の利益または名声を意味するのではなく,「モルガン・スタンレー・グループ全体の利益または名声に極めて重大な損害を与えるいかなる行為や怠慢」を意味すると解釈するのが合理的であると主張する。 SRP規定7条ただし書において,不支給事由(英文では「Caus- 27 -e」,日本文では「理由」)として( )から()までを規定しているが,iiiiそこでは被控訴人に限定せず,広く「MorganStanley(“MS”)」の利益,名声などが問題とされている。 そして,控訴人の非違行為①ないし⑫,⑮,⑯は,上記認定(補正の上原判 iiiiそこでは被控訴人に限定せず,広く「MorganStanley(“MS”)」の利益,名声などが問題とされている。 そして,控訴人の非違行為①ないし⑫,⑮,⑯は,上記認定(補正の上原判決を引用)のとおり,被控訴人の就業規則,行為規範に違反する行為であると同時に,同非違行為の性質,態様,行為後の事情などを総合考慮すると,被控訴人の利益,名声はもちろん,モルガン・スタンレーの利益,名声を害するものであり,SRP規定7条ただし書の不支給事由にも該当すると解するのが相当である。 以上から,被控訴人は,モルガン・スタンレー・グループ全体との関係で控訴人の所為を論じていないから,SRP規定7条ただし書の「Cause」「理由」があったとの認定はできないとの控訴人の主張は理由がない。 次に,控訴人は,同人の所為が,「モルガン・スタンレー・グループ全体の利益または名声に極めて重大な損害を与え」たのであれば,被控訴人の親会社の連結財務諸表に,控訴人の所為の影響があるはずであるところ,被控訴人の親会社は,そのような取扱いをしていないから,そのような事実がないことを被控訴人の親会社も認めているといえると,主張する。 しかし,SRP規定7条ただし書の「Cause」「理由」に該当する行為ならば,被控訴人の親会社の連結財務諸表に顕らかになるはずであるという控訴人の主張の前提自体,理由がない。なぜならば,SRP規定7条ただし書の「Cause」「理由」には,「anyotheractoromissionwhichismateriallyinjurioustotheinterestorbusinessreputationofMS」などを- 28 -規定しており,それは広くモルガン・スタンレーの利益又は営業上の名声に対し実質的 oustotheinterestorbusinessreputationofMS」などを- 28 -規定しており,それは広くモルガン・スタンレーの利益又は営業上の名声に対し実質的に有害な行為又は怠慢を問題とするところ,それらの行為又は怠慢の性質上,該当する行為があった場合には,必ず被控訴人の親会社の連結財務諸表に顕らかになるものとは言えないからである。 以上から,控訴人の同主張は理由がない。 (イ)次に,原判決が前提とした非違行為はいずれもSRP規定の不支給事由とならないとの控訴人の主張について判断する。 a非違行為①について控訴人は,万一,控訴人が,P3の指示に反したとしても,このような事情が第三者に公表されたことはないから,同事実により被控訴人の名声は毀損されることはないし,その他,被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられないと主張する。 しかし,○○の記事を執筆するに際し,上司であるP3本部長から法務部及び広報部の承認を得ておくよう指示されたにもかかわらず,控訴人がこれらの承認を得なかったことが就業規則7条に反するとの評価を免れないことは,上記認定(補正の上原判決を引用)のとおりであり,このような事情を第三者に公表したかどうかは無関係である。 そして,非違行為①を含む控訴人の非違行為の全体は,極めて悪質であるといわざるを得ず,SRP規定7条ただし書に該当することが明らかであることは上記認定(補正の上原判決を引用)のとおりである(非違行為②以下において,この点に関する記載を省略することがある。)。 b非違行為②についてP3本部長が承認したのは,既存の顧客に限るという前提であったことが認められるから,既存の顧客以外に送付することについて承認を与えた事実を認めることはできないこと,同送付事実は上司の指示- てP3本部長が承認したのは,既存の顧客に限るという前提であったことが認められるから,既存の顧客以外に送付することについて承認を与えた事実を認めることはできないこと,同送付事実は上司の指示- 29 -に反するものとして就業規則7条違反の評価を免れないことは,上記認定(原判決を引用)のとおりであり,このような事情が第三者に公表されたかどうかは無関係である。 さらに,控訴人は,顧客に対して,秘密保持義務を課したり,秘密にするよう依頼したこともないから,控訴人が被控訴人の従業員であることを隠そうとしていたとは考えられず,この意味からも,非違行為②が被控訴人の名声を毀損したとはいえないと主張するが,上司から承諾を得た以外の会社に○○を送付したこと自体がSRP規定7条ただし書に該当すると判断するから,控訴人の同主張は理由がない。 c非違行為③について控訴人が在日米国商工会議所に送付した際添付した書簡(乙9)には,本件留意点について,「「専門家」と称される幾名かの会計士が犯した極めて初歩的な論理上のミスに基づくもの」,会計士協会や主要会計士事務所の監査能力を「お粗末」と表現するなど挑発的な表現が含まれていたもので,就業規則7条,8条に違反するものであることは,上記認定(補正の上原判決を引用)のとおりであり,送付先が在日米国商工会議所という被控訴人が営む業務との関係で重要な機関であると認められる(乙142)から,同書簡を添えて送付したのが1か所にすぎないからといって,同事実により被控訴人の名声も毀損されることがないとの控訴人の主張は理由がない。 d非違行為④,⑤について非違行為④で,会計士協会に送付した書簡(乙131)は,本件留意点を「珍奇」と表現するなど会計士協会を一方的に非難するものであり,5つの監査法人に送付した書簡(乙16の1な 非違行為④,⑤について非違行為④で,会計士協会に送付した書簡(乙131)は,本件留意点を「珍奇」と表現するなど会計士協会を一方的に非難するものであり,5つの監査法人に送付した書簡(乙16の1ないし5)は,本件留意点を盲信して監査業務を行うことは広く投資家全体に対する背信行為であり,国益を害するなどとの表現で監査法人を非難するもの- 30 -であり,その表現はいずれも激越であり,同行為が就業規則7条,8条に違反するとの評価を免れないこと,控訴人は,非違行為⑤について,同本部長の机上に写しを置いたものの,送付することについて格別諾否を求めたものではないことが認められ,送付することについて事前に上司の承認を得たと認めることはできないから,就業規則7条違反の評価を免れないことは,上記認定(補正の上原判決を引用)のとおりである。 送付先が大手監査法人と会計士協会であることは,控訴人に有利に判断する理由とはならない。なぜならば,表現が激越である書簡を大手監査法人に対し送付したことは,それだけ多くの公認会計士などの専門家の目に触れる可能性が高いことを意味し,よりモルガン・スタンレーの利益又は営業上の名声に実質的に有害な損害を与えることとなりかねないことを意味するからであり,本件留意点を発表した会計士協会自体に対し,本件留意点を「珍奇」と表現するなど会計士協会を一方的に非難する激越な文書を送付したことは,「モルガン・スタンレーの利益又は営業上の名声に実質的に有害な損害を与える」こととなりかねないことを意味するからである。 同内容証明郵便には,控訴人が被控訴人の従業員であることは記載されていないから,これら大手監査法人も会計士協会も,控訴人が被控訴人の従業員であると認識したとは思えないと控訴人は主張するが,それらの文書において,控訴人は自己 が被控訴人の従業員であることは記載されていないから,これら大手監査法人も会計士協会も,控訴人が被控訴人の従業員であると認識したとは思えないと控訴人は主張するが,それらの文書において,控訴人は自己の名前,控訴人がある金融会社で外国為替取引の販売を担当していることなどを明らかにしていたこと,我が国で為替デリバティブ取引に関わる者の中で,控訴人は,ある程度以上名前が知られた存在であると認められること,会計士協会は,控訴人が既に○○に本件留意点に関する記事を発表したことを当然認識していたはずであることなどから,同主張は理由がない。 - 31 -e非違行為⑥,⑧について控訴人は,被控訴人が控訴人に対して,今後の賃金,昇進等の点で不利な扱いをしても,控訴人の営業成績が上がらなかったことに照らし,甘んじなければならない状況にあるということを表現するつもりで,本件留意点の公表によって,「原告の営業活動は著しく阻害され,もって,上記金融商品についての営業成績は上がらず,かかる見地から,賃金,昇進等の点で不利な扱いを甘んじなければならない状況となった」と表現したとして,虚偽の記載をしたとの評価を免れないと判示した原判決を批判する。 しかし,控訴人が弁護士照会の申出書に記載した内容は,今後の賃金,昇進等の点で不利な扱いを受けるおそれ,または,可能性があるという内容ではなく(乙10,134の2),控訴人の同主張は理由がない。 次に,内容証明郵便には,控訴人が被控訴人の従業員であることは記載されていないから,被控訴人の名声も毀損されることはないし,被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられないという控訴人の主張に理由がないことは上記d記載のとおりである。 さらに,控訴人は,原判決は,許可がなかったとか報告していないことも問題にしているようであるが,こ 名声を重大に毀損したとも考えられないという控訴人の主張に理由がないことは上記d記載のとおりである。 さらに,控訴人は,原判決は,許可がなかったとか報告していないことも問題にしているようであるが,このような事情が第三者に公表されたことはないから,同事実により被控訴人の名声も毀損されることはないと主張するが,上記判断において,このような事情が第三者に公表されたかどうかは無関係であるから,控訴人の同主張は理由がない。 f非違行為⑦について控訴人が,P7弁護士及びP5室長と面談した際社外事業届を出すよう指示されたこと,それに違反した控訴人の行為は就業規則7条に- 32 -違反することは,上記認定(原判決を引用)のとおりであり,社外事業届を提出していなかったからといって,被控訴人の名声が毀損されることはないという控訴人の同主張は理由がない。 g非違行為⑨について控訴人は事前に上司及び法務部に対し報告せずに協会訴訟を提起したのであるから,就業規則7条,8条,行為規範に違反することは,上記認定(原判決を引用)のとおりであり,事前報告をしなかったからといって,被控訴人の名声も毀損されることはないという控訴人の同主張は理由がない。 h非違行為⑩について非違行為⑩に係る行為が被控訴人のコミュニケーションポリシーに違反し,就業規則7条に違反することが明らかであることは,上記認定(補正の上原判決を引用)のとおりである。 新潮社,日本経済新聞社が結局記事にしなかったものの,被控訴人の広報部,法務部,上司などの承認を得ることなく,控訴人が訴訟提起に関する声明などの資料を新潮社の編集者及び日本経済新聞社の記者に送付したこと自体が,「モルガン・スタンレーの利益又は営業上の名声に実質的に有害な損害を与える行為」に該当するものであるから,控訴人の同主張は 明などの資料を新潮社の編集者及び日本経済新聞社の記者に送付したこと自体が,「モルガン・スタンレーの利益又は営業上の名声に実質的に有害な損害を与える行為」に該当するものであるから,控訴人の同主張は理由がない。 i非違行為⑪について非違行為⑪に係る行為は,就業規則7条,8条,行為規範(会社を困惑させる行為,不適切に見える行為を避ける義務)に違反するとの評価を免れないことは,上記認定(原判決を引用)のとおりである。 控訴人は,メールの名宛人は,控訴人が個人の立場で,訴訟を提起したことを明確に認識しているし,これによる被控訴人に対する直接の悪影響は認められないから,被控訴人の名声も毀損されることはな- 33 -いし,その他,被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられないと主張する。 しかし,会社のメールを利用して,被控訴人の顧客や同業他社,マスコミ関係者などに対し,協会訴訟の提起を伝えるメール67通を送付した行為は,その手段,メールの相手方と被控訴人との関係,そのメールの内容などから,「モルガン・スタンレーの利益又は営業上の名声に実質的に有害な損害を与える行為」に該当することは明らかであるから,同主張は理由がない。 j非違行為⑫について非違行為⑫が就業規則7条,8条,行為規範(会社を困惑させる行為,不適切に見える行為を避ける義務)に違反するとの評価を免れないことは,上記認定(原判決を引用)のとおりである。 控訴人は,内容証明郵便には,控訴人が被控訴人の従業員であることは記載されていないから,これら大手監査法人も会計士協会も,控訴人が被控訴人の従業員であると認識したとは思えず,被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられないと主張する。 ところで,非違行為⑫において問題とされた控訴人の行為 の従業員であると認識したとは思えず,被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられないと主張する。 ところで,非違行為⑫において問題とされた控訴人の行為は,公認会計士・監査審査会への内容証明郵便の発送であるところ,公認会計士・監査審査会は,控訴人が被控訴人の従業員であると認識したとは思えないという点については上記d,eで判断したところと同様であるから,控訴人の同主張は理由がない。 k非違行為⑮,⑯について非違行為⑮に係る行為は行為規範13頁(法律上,税務上の助言の禁止)に違反すること,非違行為⑯に係る行為は行為規範14頁(当社にかわり社外弁護士や法律事務所を選任するには事前に法務部の許- 34 -可を得なければならない。)に違反することは,上記認定(原判決を引用)のとおりである。 控訴人は,青山商事は,P4弁護士について一切知らず,控訴人が内容証明郵便の起案をしていると認識していた,青山商事は,控訴人に対しても被控訴人に対しても,この点に関して苦情を述べたことすらないのであって,被控訴人の名声も毀損されることはないし,その他,被控訴人の名声を重大に毀損したとも考えられないと主張する。 しかし,上記行為規範13頁は,被控訴人の従業員が顧客に対し,法律上,税務上の助言をすること自体を禁止しているもので,「質問書」の起案を行ったのが控訴人本人であったか,それとも,同人から依頼を受けた弁護士であったかは,上記判断に影響を及ぼすものではない。仮に,顧客である青山商事が,この点に関して苦情を述べたことがなかったとしても,上記判断に影響を及ぼすものではない。以上から,控訴人の同主張は理由がない。 l訴えの取下げをしなかったことについて控訴人は,被控訴人は,控訴人が訴えの取下げ要求を拒絶するや, なかったとしても,上記判断に影響を及ぼすものではない。以上から,控訴人の同主張は理由がない。 l訴えの取下げをしなかったことについて控訴人は,被控訴人は,控訴人が訴えの取下げ要求を拒絶するや,直ちに控訴人を懲戒解雇としたわけであり,解雇前に,控訴人が取下げを拒絶したことを対外的に公表したことはない,解雇時において,被控訴人が控訴人に対して取下げを要求したことすら第三者は知らなかったし,ましてや,控訴人が取下げを拒絶したことを第三者は知らなかったから,取下げの拒絶によって「被控訴人の対外的信用が毀損された」ことなどないと主張する。 しかし,被控訴人が控訴人を本件懲戒解雇にするまでの間,控訴人に対し,譴責処分にしたこと,就業規則及び行為規範に従うように,要請,説得,命令を繰り返したこと,被控訴人は控訴人に対し,協会訴訟の取下げを命じたが,控訴人はこれを拒否したことは,上記認定- 35 -(原判決を引用)のとおりである。 解雇前に,控訴人が取下げを拒絶したことを対外的に公表したことはないこと,解雇時において,被控訴人が控訴人に対して取下げを要求したことを第三者は知らなかったこと,控訴人が取下げを拒絶したことを第三者は知らなかったことなどは,上記判断に影響を及ぼすものではない。 以上から,控訴人の同主張は理由はない。 カ控訴人は,同(6)において,被控訴人の取扱いは均衡を保ったものでなければならないとして,本件懲戒処分が均衡を失していると主張する。 しかし,非違行為③に係る書簡(乙9)に,本件留意点について,「「専門家」と称される幾名かの会計士が犯した極めて初歩的な論理上のミスに基づくもの」,会計士協会や主要会計士事務所の監査能力を「お粗末」と表現するなど挑発的な表現が含まれていること,非違行為④に係る会計士協会に送付した書簡(乙13 が犯した極めて初歩的な論理上のミスに基づくもの」,会計士協会や主要会計士事務所の監査能力を「お粗末」と表現するなど挑発的な表現が含まれていること,非違行為④に係る会計士協会に送付した書簡(乙131)は,本件留意点を「珍奇」と表現するなど会計士協会を一方的に非難するものであり,5つの監査法人に送付した書簡(乙16の1ないし5)は,本件留意点を盲信して監査業務を行なうことは広く投資家全体に対する背信行為であり,国益を害するなどとの表現で監査法人を非難するものであり,その表現がいずれも激越であり,これらを内容証明郵便で送りつけた行為が,信用を害する行為であることは明らかであること,非違行為⑧に係る行為は虚偽の事実を前提に弁護士照会をしたのであり,協会訴訟の提起も虚偽の事実を主張して自己の利益を図ろうとしたと評価されてもやむを得ないものであるから,これもまた信用を害する行為であること,非違行為③においては,被控訴人の肩書の入った名刺を同封することにより控訴人が被控訴人の従業員であることを明らかにしており,その余の行為はいずれも控訴人が被控訴人の従業員であることを明記して行なっているわけではないが,純粋な私的行為と- 36 -はみられず,これらの行為によって最終的にはモルガン・スタンレーの営業上の名声が害されたことも明らかであること,控訴人は,上記非違行為にみられるとおり被控訴人に対して終始反抗的態度をとり続けたばかりでなく,本件訴訟における主張立証をみてもこれらに対する反省の態度は全くみられないことは,上記認定(補正の上原判決を引用)のとおりである。 控訴人は,作為的相場形成を行ったことにより営業停止処分を受けた際の担当者が,普通解雇という処分を受けたにすぎず,SRPも全額支給を受けたこととの不均衡を主張する。 しかし,被控訴人が,平成 ある。 控訴人は,作為的相場形成を行ったことにより営業停止処分を受けた際の担当者が,普通解雇という処分を受けたにすぎず,SRPも全額支給を受けたこととの不均衡を主張する。 しかし,被控訴人が,平成14年2月,作為的相場形成を行ったことにより営業停止処分を受けたこと,その際の担当者を普通解雇したにとどめ,SRPも全額支給したこと,確かに,営業停止処分は金融機関にとって深刻な事態であることは控訴人の主張するとおりであるが,同担当者の行為が意図的ではなかったこと,同担当者が被控訴人の社内調査及び金融庁に対する説明に真摯に協力したことは上記認定(原判決を引用)のとおりである。これに対し,控訴人の非違行為の内容,回数,態様,控訴人の被控訴人に対する態度,控訴人の反省の有無などは上記認定のとおりであり,両者を比較すると,控訴人に対してSRPを全く支給しなかったことが,上記担当者との間で処分の均衡を欠くとはいえない。 (2)被控訴人の主張(附帯控訴の理由)―争点①(本件訴訟の提起が訴権の濫用に当たるか。)について同争点に対する判断は,上記認定(上記1(1),(2)で補正のうえ原判決を引用)のとおりである。 被控訴人は,上記のとおり主張するので,必要な限度で以下判断する。 まず,被控訴人は,原判決が,「本件訴訟を却下することには躊躇を覚えざるを得ない。」と判示したことに関して,原審裁判官は,前訴における代理人の主張を一種の「弁護過誤」と考えたとの推測を主張するが,当裁判所- 37 -は,原判決の同部分を引用していないから,同主張に対する判断は不要である。 次に,被控訴人は,原判決が,「欺いて得たとされる判決は結果的に一時的なものにとどまった」と判示したことを批判する。 しかし,前訴において当事者が主要な争点として争い,かつ,裁判所がこれを審理し, 次に,被控訴人は,原判決が,「欺いて得たとされる判決は結果的に一時的なものにとどまった」と判示したことを批判する。 しかし,前訴において当事者が主要な争点として争い,かつ,裁判所がこれを審理し,その争点について判断を下した場合には,同一の争点を主要な先決問題とした別訴の審理において,その判断に反する主張立証を許さないという考えは,一般論として,あり得ないものではないが,控訴人に対し,SRPの全部が支給されないか,一部が支給されないかという点は,前訴において主要な争点とはなっていなかったと認められるから,上記一般論を適用する前提を欠くこと,本訴が実質的に前訴の蒸し返しであるとも認められないことは上記のとおりであるから,被控訴人の上記主張は採用できない。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第14民事部裁判長裁判官房村精一裁判官中野信也裁判官窪木稔
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