平成29(行ウ)247 遺族厚生年金不支給処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年7月12日 東京地方裁判所
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判決文本文26,859 文字)

【機密性2】- 1 - 令和元年7月12日判決言渡平成29年(行ウ)第247号遺族厚生年金不支給処分取消請求事件主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求処分行政庁が平成27年▲月▲日付けで原告に対してした遺族厚生年金を支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)を取り消す。 第2 事案の概要 本件は,老齢厚生年金の受給権者である夫が死亡したため,その当時A市議会議員を務めていた原告が,原告の夫に係る遺族厚生年金の裁定を請求したところ,処分行政庁から,原告が,上記の当時,厚生年金保険法施行令(以下「厚年令」という。)3条の10に規定する「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」に当たらないことから, 夫によって生計を維持していたものとは認められないとして,本件処分を受けたことから,原告は,夫が死亡した当時,平成31年▲月に予定されていたA市議会議員選挙(以下「次期選挙」という。)に立候補しないことを既に決めており,令和元年▲月▲日をもって議員の任期が満了すれば,原告の収入が同条にいう「厚生労働大臣の定める金額」未満となることが明らかであったとこ ろ,本件処分にはこれを看過した違法があるなどと主張して,本件処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め本件に関係する法令等の定めは,別紙「関係法令等の定め」記載のとおりである(同別紙において定義した略語等は,以下においても用いることとする。)。 2 前提事実(証拠等を掲記したもののほかは,当事者の間に争いがない事実で - 2 -ある。)(1) 当事者等ア(ア) 原告は,▲▲▲▲▲▲▲▲▲生まれの女性 ることとする。)。 2 前提事実(証拠等を掲記したもののほかは,当事者の間に争いがない事実で - 2 -ある。)(1) 当事者等ア(ア) 原告は,▲▲▲▲▲▲▲▲▲生まれの女性であり,平成▲年から▲期連続してA市議会議員を務め(▲期目の任期は,令和元年▲月▲日で満了した。),市民派を称し,基本的に特定の会派には所属していなか った。(弁論の全趣旨)(イ) 原告の平成▲年の収入(議員報酬に係る収入)は,866万1200円であり,給与所得は,659万5080円であった。(乙1・14枚目,弁論の全趣旨)イ Bは,原告の夫であった者であり,平成27年▲月▲日に死亡した。B は,死亡した当時(以下,Bが死亡した時を指して「本件基準時」ということがある。),原告と生計を同じくし,かつ,老齢厚生年金の受給権者であった。 (2) 本件処分原告は,平成27年▲月▲日,処分行政庁に対し,老齢厚生年金の受給権 者であるBが死亡したとして,遺族厚生年金の裁定を請求したところ,処分行政庁は,同年▲月▲日,原告が,本件基準時において,厚年令3条の10に規定する「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」に当たらないことから,Bによって生計を維持していたものとは認められないとして,本件処分をした。 (3) 原告による不服申立て原告は,平成27年▲月▲日,本件処分を不服として,C厚生局社会保険審査官に対し,審査請求をしたが,同審査官は,平成28年▲月▲日付けで,上記審査請求を棄却する旨の決定をした。原告は,同年▲月▲日,上記決定を不服として,社会保険審査会に対し再審査請求をしたが,社会保険審査会 は,同年▲月▲日付けで,上記再審査請求を棄却する旨の裁決をし,同 を棄却する旨の決定をした。原告は,同年▲月▲日,上記決定を不服として,社会保険審査会に対し再審査請求をしたが,社会保険審査会 は,同年▲月▲日付けで,上記再審査請求を棄却する旨の裁決をし,同裁決 - 3 -は,同年▲月▲日,上記再審査請求に係る当時の原告の代理人に送達された。 (4) 本件訴訟の提起原告は,平成29年6月1日,本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕著な事実) 3 争点 本件基準時において,原告が,厚年令3条の10に規定する「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」に当たるか否か 4 争点に関する当事者の主張の要旨(原告の主張) (1) 本件における判断枠組み等についてア配偶者等が厚年令3条の10に規定する「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」に当たるかの判断については,生計維持関係等認定基準4(1)①が認定の要件を定めている。本件基準時の前年の原告の収入及び所得は,形式的には生計維持関 係等認定基準4(1)①アないしウを満たさないため,本件基準時において,原告が,「定年退職等の事情により近い将来(おおむね5年以内)収入が年額850万円未満又は所得が年額655.5万円未満となると認められる」か否か(同エの該当性。以下,この要件を「本件収入要件」という。 また,収入につき年額850万円,所得につき年額655万5000円の 各金額を,それぞれ「基準額」という。)が問題となる。 イ(ア) 原告が,市議会議員の任期を満了する令和元年▲月▲日をもってその地位を喪失することは,本件基準時における客観的に明らかな事実であった。選挙における当選は,保証されているものではなく,本件基準時において原告が 議会議員の任期を満了する令和元年▲月▲日をもってその地位を喪失することは,本件基準時における客観的に明らかな事実であった。選挙における当選は,保証されているものではなく,本件基準時において原告が議員の地位にあったといっても,次期選挙に当選し, 引き続き議員報酬を得られることを意味するものではない。 - 4 -そうすると,原告は,その意思いかんにかかわらず,期限の到来により当然かつ確実に収入を得る地位を失うものといえるから,被告が,本件収入要件を満たす場合として挙げる,就業規則等に退職規定の定めがあり5年以内に定年退職となることが確認できる場合と同様であるといえる。 したがって,被告は,本件基準時において,原告が,次期選挙に立候補し,かつ,当選する蓋然性について,主張立証しなければならない。 (イ) 前記(ア)の点をおくとしても,本件収入要件が救済規定に位置付けられることに加え,生計維持関係等認定基準1(1)において,「ただし,これにより(生計維持関係等認定基準の規定により)生計維持関係の認 定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りでない。」として,規定を厳格に適用した場合の不都合性を回避しようとしていることも併せ考えると,本件のように,生計維持認定対象者が地方議会議員の場合には,任期満了により当然に失職することを踏まえ,当該生計維持認定対象者 の年齢,次期選挙への立候補の意思表明の有無に関する言動,選挙費用や後援会等の状況を総合的に考慮し,当該生計維持認定対象者が次期改選に係る選挙に立候補しない蓋然性が高いといえる場合には,特段の事情のない限り,本件収入要件を満たすというべきである。 (2) 本件基準時において,原告は,次期選挙に立候 生計維持認定対象者が次期改選に係る選挙に立候補しない蓋然性が高いといえる場合には,特段の事情のない限り,本件収入要件を満たすというべきである。 (2) 本件基準時において,原告は,次期選挙に立候補することが客観的に困難 な状況にあり,かつ,立候補しない旨を決めていたこと以下のとおり,本件基準時において,原告は,次期選挙に立候補することが客観的に困難な状況にあり,かつ,立候補しない旨を決めていた。 ア原告が,遅くともBの死亡の前に,▲期目の選挙(次期選挙)に立候補しない旨決心していたこと (ア) 以下の各事情から,原告は,平成▲年の秋頃に▲期目の立候補を決 - 5 -めた際には,▲期目の選挙(次期選挙)には立候補しないことを決めていた。 aBの体調悪化に伴い経済的支援等が期待できなくなったこと(a) 原告は,政党の支持基盤がない無所属・市民派(以下「市民派」という。)を称し,その政治信条から,個人や団体からの政治資金 の援助を受けてこなかったため,1回当たり約800万円を要する選挙費用を,全て自前で調達する必要があった。 ▲期目の選挙に係る選挙費用は,原告がD銀行(E支店)から借り入れたものの,▲期目の選挙に際しては,選挙には当落があり確実な返済を受けることができるか分からないとの理由により,同銀 行から借り入れることができなかった。そこで,▲期目の選挙に係る選挙費用は,Bが金融機関から借り入れ,▲期目の選挙に係る選挙費用は,Bが経営していた株式会社F(以下「F」という。)の資金繰りの中から調達した。 また,Bは,原告が初めてA市議会議員選挙に立候補した当時か ら,原告の後援会を束ねる立場であった。 (b) ところが,Bが,原告が▲期目を務めていたさなかである平成24年▲月,骨髄異 。 また,Bは,原告が初めてA市議会議員選挙に立候補した当時か ら,原告の後援会を束ねる立場であった。 (b) ところが,Bが,原告が▲期目を務めていたさなかである平成24年▲月,骨髄異形成症候群を患い,以後,徐々に体調を悪化させたため,原告は,Bが今後原告の議員活動を支えることは難しくなるだろうと考え,▲期目で引退することを考えた。▲期目の後半か らは,Bからの経済的支援が受けられなくなったため,慶弔費を最低限にとどめるなど,議員活動を低調にせざるを得なくなった。 原告は,Bから,Fの対外的な信用を維持し,経営を維持するために,▲期目も立候補してほしい旨伝えられたことなどから,▲期目を議員活動の締めくくりとして立候補するものの,▲期目は立候 補しないことをBとの間で確認した。 - 6 -(c) なお,▲期目の選挙に係る選挙費用は,予算を縮小し,原告自身の預貯金200万円と親族から借り入れた350万円との総額550万円となった。 b 市民派における多選を嫌う考え方等市民派を称する議員と支援者の間では,既存政党と異なり,一個人 が住民の課題を引き受け,精力的に取り組んで解決することが理想とされ,議員の活動期間は,▲,▲期を目途として,後継者に活動のチャンスを譲るという考え方が共有されている。 c 原告自身の体力的限界原告は,▲期目の立候補を決めた頃には,市民派として充実した議 員活動を行うについての体力の自信を失いつつあったほか,とりわけ,Bの体調悪化に伴って,精神的な拠り所を失う不安感を得ていた。 (イ) 前記(ア)の決心は,以下の事実から裏付けられている。 a 原告は,▲期目の立候補に先立ち,原告の後援会の役員を含むごく親しい者に対して,▲期目の選挙が最後の選挙であり,▲期目の選挙 た。 (イ) 前記(ア)の決心は,以下の事実から裏付けられている。 a 原告は,▲期目の立候補に先立ち,原告の後援会の役員を含むごく親しい者に対して,▲期目の選挙が最後の選挙であり,▲期目の選挙 (次期選挙)には立候補しない旨を伝えていた。 b 原告は,平成28年▲月,個人事務所を撤去した。 c 原告は,平成29年▲月以降,A市議会議員であるGと共に「H」を立ち上げ,後継者の発掘に努め(なお,原告は,Hを立ち上げる以前も,後継者を探していた。),次期選挙までの間に後継者が決定し た。 d 原告は,平成29年▲月又は▲月頃,使用していた選挙運動用品をHの参加者に譲渡した。 e 次期選挙まで残り四,五か月となった時点からは,原告は,周囲の者から今後の去就を尋ねられた際に,引退する旨を明確に述べるよう になった。原告が,それまでの間,次期選挙に立候補しない旨の決心 - 7 -を広く対外的に表明してこなかったのは,引退を公にしてしまうと相手にされなくなってしまうため,議員活動に支障を来さないよう,表明を控えざるを得なかったためである。 次期選挙まで残り3か月を切った頃からは,地域誌において,原告の引退表明等が報道されている。 イ本件基準時において,原告が,次期選挙に立候補しない旨の決心を覆し,立候補することが客観的に困難な状況にあったこと以下のとおり,本件基準時において,原告は,前記アの次期選挙に立候補しない旨の決心を覆し,これに立候補することは客観的に困難な状況にあった。そして,その状況は,将来的に解消される可能性はなかった。 (ア) 選挙費用を確保できる見通しがなく,仮に,次期選挙に立候補したとしても,当選する見込みがなかったことa 前記ア(ア)aに述べたとおり,市民派を称する原告は れる可能性はなかった。 (ア) 選挙費用を確保できる見通しがなく,仮に,次期選挙に立候補したとしても,当選する見込みがなかったことa 前記ア(ア)aに述べたとおり,市民派を称する原告は,選挙費用を全て自ら工面しなければならなかったところ,原告自身に蓄えはなく,多額の債務を抱え,銀行からの借入れは不可能であった。▲期目の選 挙に係る選挙費用の借入先である原告の親族は,年金生活者であり,経済的余裕はなく,そこから更に借入れができる見込みもなかった(原告は,本件訴えの提起後,本件訴訟に供するという目的の下で,当該親族に選挙費用の借入れを打診したが,全員から断られた。)。 また,Bが死亡したことにより家計の状況が大きく変わり,原告に 貯蓄ができるだけの経済的余裕はなく,次期選挙までの間に好転する可能性もなかった。原告は,現在に至るまで,親族からの上記借入金の返済をすることができていない。 以上のとおり,本件基準時において,原告に選挙費用を確保できる見通しはなかった。 b そして,原告の▲期目から▲期目までの各選挙に要した選挙費用の - 8 -とおり,A市議会議員選挙は,約800万円,少なくとも600万円の選挙費用を準備することを要するものであったから,原告は,次期選挙への立候補を断念せざるを得ない状況にあり,仮に,立候補したとしても,当選する見込みはなかった。 (イ) 原告の後援会が解散し,仮に,次期選挙に立候補したとしても,当選 する見込みがなかったことa 原告の後援会は,▲期目の選挙が終わった以降,一切活動しておらず,事実上の解散状態にあった。 原告の後援会の役員は,原告が初当選した時には平均年齢70歳前後であったが,原告の▲期目の任期満了時には平均年齢80代半ばと なり,現在で ,一切活動しておらず,事実上の解散状態にあった。 原告の後援会の役員は,原告が初当選した時には平均年齢70歳前後であったが,原告の▲期目の任期満了時には平均年齢80代半ばと なり,現在では死亡により欠員も生じている。また,原告は,▲期目の選挙に際し,後援会の役員らに対して,これが最後の選挙である旨伝えて支援を依頼したものであり,この前言を翻せば,同人らの信頼を損ねることになる。さらに,後援会のメンバーの一部には,原告の▲期目の立候補について,夫であるBが病に倒れているにもかかわら ず,原告のわがままで立候補したという誤解を抱き,原告に対し不信感や反感を持っている者もいた。このような事情から,仮に,原告が次期選挙の立候補を望んだとしても,原告のために後援会が再度立ち上がる見込みはなかった。 b 当選に資するだけの十分な選挙活動を展開するためには,後援会の 支援が不可欠であり,後援会がなければ当選の見込みはない。 (ウ) 市民派における考え方に照らし,支援者から支援を受けられる見込みがなく,仮に,次期選挙に立候補したとしても,当選する見込みがなかったこと本件基準時において,原告が次期選挙の立候補を望んだとしても,前 記ア(ア)bに述べた市民派を称する議員と支援者の間に共有されている - 9 -考え方に照らし,当該議員の支援者らから支援を受けられる見込みはなかった。 市民派を称する議員を支援する者を支持基盤とする原告にとって,その支援者から支援を受けることができなければ,当選の見込みはない。 (エ) 原告の体力及び意欲の低下 選挙活動及びその後の議員活動においては,相応の体力及び気力が必要不可欠であるところ,原告は,▲期目の立候補を決め,選挙活動を行った過程において,体力の著しい低下を感じ, 体力及び意欲の低下 選挙活動及びその後の議員活動においては,相応の体力及び気力が必要不可欠であるところ,原告は,▲期目の立候補を決め,選挙活動を行った過程において,体力の著しい低下を感じ,それに伴い,議員活動への意欲も低下した。これらは,原告が,▲期目の議員活動において,▲期目までの活動では欠かすことのなかった支援者の葬儀等も欠席するな どしていることからも裏付けられている。 体力の低下は,加齢による不可逆的なものであり,必ずしも意欲でカバーできるものとはいえず,これらを被告が主張するように主観的な問題と割り切ることはできない。 (3) 原告の実質的な所得は基準額を超えていたとはいえないこと ア原告の収入は,ほぼ議員報酬であったところ,社会保険料やB名義での選挙費用に係る借入金の返済等のほか,日々の議員活動に費消されており,原告の生活費は,FからBが得た収入によって賄われていた。ところが,Bは,平成25年▲月頃から長期又は短期の入院を繰り返すようになり,Fの経営状態は,Bが亡くなるおよそ半年ないし1年前から思わしくなく なった。 このような状況の中,原告は,本件基準時頃,議員報酬のうち月額10万円程度で生活していた。 なお,Fは,平成28年に破産手続開始決定を受け(また,BからFの経営を引き継いだ原告とBの間の長男(以下「長男」という。)も,同時 に破産手続開始決定を受けた。),平成29年に破産手続が終結した。 - 10 -イ前記アのような事情からすれば,本件基準時頃,原告の家計は,極めて厳しい状況にあったというべきであり,原告の実質的な所得は,基準額を超えるとはいえない。 (4) 生計維持関係等認定基準の規定により生計維持関係の認定を行うことが「実態と著しく懸け離れたものとなり, しい状況にあったというべきであり,原告の実質的な所得は,基準額を超えるとはいえない。 (4) 生計維持関係等認定基準の規定により生計維持関係の認定を行うことが「実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこと となる場合」に当たること仮に,原告が,規定上は本件収入要件を満たしていないとされたとしても,前記(2)及び(3)に述べた原告に関する特別な事情からすれば,本件において生計維持関係等認定基準の規定により生計維持関係の認定を行うことは,「実体と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととな る場合」となるから,例外として生計維持関係があるものと認定すべきである。 (5) 被告の主張についてア被告は,原告が,4期16年,A市議会議員を務め,過去▲回の選挙において,いずれも相当上位での当選を果たしていることから,原告は,知 名度や信頼度,選挙に関するノウハウを有しているはずであり,仮に,選挙費用等に関する原告の主張を前提としたとしても,十分に選挙の準備はできるはずであるなどと主張する。 しかし,過去▲回の選挙は,いずれも,後援会の支援を受け,選挙費用も,▲期目の選挙に係るものは550万円であるが,それ以外は800万 円から850万円を費やし,十分な選挙活動を行うことができた結果,当選を果たしたものである。後援会の支援がなく,選挙費用もなければ,効果的な選挙活動を行うことはできず,原告が,被告が主張するところの知名度等を有していたとしても,それらのみで当選する蓋然性はない。 この点,被告は,原告の▲期目の選挙運動費用収支報告書(甲22)に 記載された支出が約117万円であることを指摘するが,選挙運動費用収 - 11 -支報告書には,選挙カーの記載がないこ この点,被告は,原告の▲期目の選挙運動費用収支報告書(甲22)に 記載された支出が約117万円であることを指摘するが,選挙運動費用収 - 11 -支報告書には,選挙カーの記載がないことから明らかなとおり,実際の支出のほとんどは,記載されていない。これは,公職選挙法により支出項目に規制があるため,原告は,万が一にも違反に問われることがないよう,支出の一部しか記載をしなかったものであるから,選挙運動費用収支報告書の上記記載は,原告が,過去,上記に主張したとおり選挙費用を支出し たことに反するものではない。 したがって,被告の上記主張には理由がない。 イ(ア) 被告は,本件基準時において原告が次期選挙に立候補する意思を一定程度有していたことの根拠として,原告が,本人尋問において,本件訴訟係属中に,選挙のための借入れができないか,親族に対して申し入 れた旨述べた点を指摘する。 しかし,原告の本人尋問における供述を子細に検討すれば,原告は,本件訴訟のために親族へ借入れを申し入れた旨述べ,▲期目の立候補の時点で,▲期目の立候補の意思はなかった旨を明確に述べているから,被告の上記主張には理由がない。 (イ) 被告は,前記(ア)に加え,原告が,本人尋問において,被告指定代理人から「立候補への意欲についてなんですけれども,ご主人が亡くなったときと今と比べて,だんだん立候補の意欲というのは,あの当時よりも今の方が下がってきているんでしょうか。」との質問に対し,「はい,そう思います。」と答えるなどした点を指摘し,原告が,最終的に, 上記の供述について,被告指定代理人らの質問が,立候補の意思ではなく,議員としての活動意欲を尋ねるものであったと誤解したために述べたものである旨供述したことについて,その供述の変遷理由 に, 上記の供述について,被告指定代理人らの質問が,立候補の意思ではなく,議員としての活動意欲を尋ねるものであったと誤解したために述べたものである旨供述したことについて,その供述の変遷理由は不自然であり信用できない旨主張する。 しかし,原告の本人尋問における供述を子細に検討すれば,原告の供 述態度は真摯なものであり,供述の変遷は,質問の趣旨を理解できなか - 12 -ったことによることが明らかであるから,被告の上記主張には理由がない。 (被告の主張)(1) 本件における本件収入要件に関する判断枠組み等についてア厚年法59条1項本文が,「遺族厚生年金を受けることができる遺族は, (中略)であって,被保険者等の死亡の当時(中略)その者によって生計を維持したものとする。」と規定していること等からすれば,生計維持関係の有無は,原則として,被保険者等の死亡当時における遺族の収入によって判断すべきであるところ,本件収入要件が,収入が基準額未満となる時期を「近い将来(おおむね5年以内)」としているのは,死亡当時の収 入は高いが,死亡時点において,近い将来にその収入が基準額を下回ることが確実に予見される場合にも,死亡当時の収入によって生計維持関係の有無を認定することは,その者の生活実態と著しく懸け離れた結果となり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなるためである。遺族厚生年金の趣旨が被保険者等の死亡の際の所得保障にあり,上記のとおり,生計維持関 係の有無は原則として被保険者等の死亡当時における遺族の収入によって判断すべきである以上,本件収入要件については,死亡時における事実に基づき,近い将来に収入及び所得が基準額未満となることが客観的に予見し得る場合に限り,例外的に,生計維持関係を認めるべきである。 判断すべきである以上,本件収入要件については,死亡時における事実に基づき,近い将来に収入及び所得が基準額未満となることが客観的に予見し得る場合に限り,例外的に,生計維持関係を認めるべきである。 そして,上記にいう死亡時における事実に基づき,近い将来に収入及び 所得が基準額未満となることが客観的に予見し得る場合とは,被保険者等の死亡時において,遺族年金を受給しようとする者の近い将来,請求者自身の意思に左右されず,当然かつ確実に,その到来等が何人にも予見できる場合をいうものであって,就業規則等に退職規定の定めがあり,受給権発生時から5年以内に定年退職となることが確認できる場合等がこれに 当たる。 - 13 -イ遺族厚生年金の給付が,いわゆる受益処分であることのほか,前記アに述べたとおり,本件収入要件が,被保険者等の死亡時点においては生計を維持されていたとはいい難いにもかかわらず,例外的に給付を受ける場合であることも考慮すると,本件収入要件の立証責任は,原告にあるというべきである。 (2) 本件基準時において原告が本件収入要件を満たさないこと前記(1)に述べた判断枠組みによれば,本件における実質的な争点は,本件基準時における原告の状況が,▲期目でA市議会議員を引退し,▲期目の議員報酬を得る可能性がないことが,当然かつ確実であると,何人にも客観的に予見できたか否かになるところ,以下のとおり,原告が主張する事情は, いずれも,原告が立候補を検討する段階における主観的な消極材料となり得るにすぎず,上記にいう客観的な予見可能性を基礎付けるものではない。 ア後援会からの支援を受けられないこと及び選挙費用が不足していることに関する原告の主張について(ア) 原告は,次期選挙に立候補しない理由として,後援会が自 予見可能性を基礎付けるものではない。 ア後援会からの支援を受けられないこと及び選挙費用が不足していることに関する原告の主張について(ア) 原告は,次期選挙に立候補しない理由として,後援会が自然消滅し ており,後援会から支援を受けられないこと,及び,Bの経済的援助がなくなったことなどから,選挙費用を確保できる見通しがないことを挙げる。 (イ)a しかし,原告は,4期16年もの間,A市議会議員を務めていたのであるから,当然ながら,知名度,信頼度等は相応のものがあるは ずである。原告の過去▲回の選挙の得票順位及び得票数をみても,相当上位での当選を果たしており,当選回数を重ねる度に,選挙に関する様々なノウハウも身に付けているはずである。 また,本件基準時において,原告の▲期目の任期は始まったばかりであり,次期選挙を見据えて,選挙費用をどう工面するかを検討する 時間は十分にあったといえる。さらに,原告は,金融機関からの借入 - 14 -れは困難である旨主張しているものの,その主張を裏付ける客観的証拠は何ら提出されていない。 そうすると,たとえ,過去▲回の選挙と同じ後援会の支援が受けられない,又は,Bからの経済的援助がないとの事情があったとしても,資金調達の方法や,選挙費用自体を抑えることなどを検討することに より,十分に選挙の準備はできたはずであり,実際に,▲期目の選挙の際には,過去▲回の選挙の際と比べて300万円もの選挙費用の削減を実施していたのである。 b 原告は,過去▲回の選挙と同程度の550万円ないし850万円もの選挙費用がないと立候補を断念せざるを得ない旨主張し,▲期目の 選挙運動費用収支報告書(甲22)に,支出が約117万円と記載されていることについて,これは支出の一部しか記載しなかっ 0万円もの選挙費用がないと立候補を断念せざるを得ない旨主張し,▲期目の 選挙運動費用収支報告書(甲22)に,支出が約117万円と記載されていることについて,これは支出の一部しか記載しなかったものであって,実際の支出についてはほとんど記載されていない旨も主張する。 しかし,公職選挙法が,選挙運動費用収支報告書について,「選挙 運動に関するすべての支出」を記載することを要求し(185条1項3号,189条1項),虚偽の記載をした場合について罰則も定める(246条)ことにより,正確な記載を要求していることからすれば,選挙運動費用収支報告書の記載に反する原告の上記主張は信用できず,翻って,550万円ないし850万円の選挙費用を要する旨の原 告の上記主張も,真実,これほどの金銭が必要なのか疑問がある。 c 前記a及びbの点をおくとしても,原告の主張するところは,以前と同様の選挙活動を行うことができない可能性があるというにとどまり,後援会から支援を受けることができないこと及び選挙費用がないことが,原告が次期選挙に立候補しないことの理由とはならない。 イ市民派を称する議員と支援者の間で共有されている考え方に関する原告 - 15 -の主張について(ア) 原告は,次期選挙に立候補しない理由として,市民派を称する議員と支援者の間では,議員の活動期間は▲,▲期を目途として,後継者に活動のチャンスを譲るという考え方が共有されている旨を挙げる。 (イ) しかし,原告が主張するところの「市民派を称する議員と支援者の 間で共有されている考え方」が,特に形に残るものとして存在していないことからすると,市民派を称する議員が,支援者に向けて努力目標や活動姿勢を示したものにすぎないと考えられ,少なくとも,ルールと呼べるような されている考え方」が,特に形に残るものとして存在していないことからすると,市民派を称する議員が,支援者に向けて努力目標や活動姿勢を示したものにすぎないと考えられ,少なくとも,ルールと呼べるような規定や規則などとしては存在していないことから,これによって原告が拘束されることはないといえる。 そして,原告の本人尋問が実施された平成30年▲月▲日時点においても,原告の後継者は見つかっていない状況であったところ,原告は,本人尋問において,市民派を称する議員は,一個人が住民の課題を引き受けて活動するものであり,いまだたくさんの課題があるが,後継者は自分自身の新しい課題に取り組むこととなる旨述べており,一個人であ る原告自身,次期選挙に出てでも残された課題に取り組みたいと考えるのが自然な心情であることに照らせば,原告が次期選挙に立候補する可能性は否定されない状況であったというべきである。 以上のとおり,原告のいう「市民派を称する議員と支援者の間で共有されている考え方」は,その存在自体に加えて議員及び支援者に対する 拘束力を有するものか疑わしい上に,原告が次期選挙に立候補する可能性が否定されないことなどにも鑑みれば,原告が▲期目で引退し,▲期目の議員報酬を得る可能性がないことが当然かつ確実であるとの客観的な予見可能性を基礎付けるものとはいえない。 ウ原告自身の体力等に関する原告の主張について 原告は,▲期目の立候補を決め,選挙活動を行った過程において,体力 - 16 -の著しい低下を感じ,それに伴い議員活動への意欲も低下したなどと主張するが,原告の体力及び意欲の限界をうかがわせる客観的事実は確認できず,これらは原告の主観的な事情にすぎないから,原告が▲期目で引退し,▲期目の議員報酬を得る可能性がないことが当 低下したなどと主張するが,原告の体力及び意欲の限界をうかがわせる客観的事実は確認できず,これらは原告の主観的な事情にすぎないから,原告が▲期目で引退し,▲期目の議員報酬を得る可能性がないことが当然かつ確実であるとの客観的な予見可能性を基礎付けるものとはいえない。 エ原告が,次期選挙に立候補しないことを最近まで公に表明していなかったのみならず,立候補の意思をうかがわせる行動を取っていたこと(ア) 原告は,次期選挙に立候補しない意思は,▲期目の立候補を決めた際からの一貫したものであり,次期選挙まで残り四,五か月となった時点からは,周囲の者から今後の去就を尋ねられれば,引退する旨明確に 述べるようになったが,それまでの間,次期選挙に立候補しない旨の決心を広く対外的に表明してこなかったのは,引退を公にしてしまうと相手にされなくなってしまうため,議員活動に支障を来さないよう,表明を控えざるを得なかったためであるなどと主張する。 (イ)a しかし,▲期目の任期が始まった当初から既に次期選挙に立候補 しない意思が固まっており,翻意などあり得ない状況であったというのであれば,むしろ,支援者に対し,その意思が固いことを示した上で,▲期目の任期中は議員活動をしっかり務めること,その後は後継者にバトンタッチしていくことについて説明を尽くすことで,支援者から十分に理解を得て議員活動を行うことも可能であったと考えられ る。それにもかかわらず,原告が,次期選挙まで残り四,五か月という時期になるまで,立候補しない意思を公にしなかったことは,本件基準時において立候補の意思が存在していたことをうかがわせる事情である。原告が提出した地域誌(甲44,45)をみると,早い時期から今期限りの引退を決意し,後継者選びをしていた議員や,後継者 ,本件基準時において立候補の意思が存在していたことをうかがわせる事情である。原告が提出した地域誌(甲44,45)をみると,早い時期から今期限りの引退を決意し,後継者選びをしていた議員や,後継者 選びが難航したことから引退を撤回した議員に関する記載があり,引 - 17 -退の表明を控えざるを得なかった旨の原告の主張に理由がないことが明らかである。 b 原告は,本人尋問において,本件訴訟係属中に選挙のための借入れができないか親族に対して申し入れた旨述べ,借入れができた場合にどうするつもりであったかを尋ねる被告指定代理人の質問に対し,立 候補の意思について明言を避け曖昧な供述を繰り返したことからすれば,借入れが可能であれば,それを次期選挙のための資金として用いようとする意思が存在したことがうかがわれる。そして,原告は,本人尋問において,▲期目の立候補の理由の1つに,Bから,Fの社会的信用を維持するため,立候補を依頼されたこともあった旨述べてい るところ,本件基準時においても,長男はFの経営を継続しており,この点に変化はなかったはずであることなども併せ考慮すると,原告が次期選挙について相当の立候補意思を有していたことは,当時の原告が置かれていた状況にも符合し,自然な心情といえる。 c 前記bの点については,原告が,本人尋問において,被告指定代理 人から「立候補への意欲についてなんですけれども,ご主人が亡くなったときと今と比べて,だんだん立候補の意欲というのは,あの当時よりも今の方が下がってきているんでしょうか。」との質問に対し,「はい,そう思います。」と答えるなどしており,本件基準時において一定の立候補意思が存在していたことがうかがわせる供述をしてい ることからも認められる。 原告は,本人尋問におい 質問に対し,「はい,そう思います。」と答えるなどしており,本件基準時において一定の立候補意思が存在していたことがうかがわせる供述をしてい ることからも認められる。 原告は,本人尋問において,最終的に,上記の供述について,被告指定代理人らの質問が立候補意思ではなく,議員としての活動意欲を尋ねるものであったと誤解したために述べたものであり,①親族の借入申込みについては,選挙のためではなく,本件訴訟において親族か らの借入れが不可能である旨の自己の主張に根拠があることを明らか - 18 -にするためであった,②立候補の意欲については,本件基準時と現在で変わりはなく,いずれも一切なかった旨供述するに至っているが,供述の経過に照らすと,原告が述べる供述の変遷理由は不自然極まりなく,原告が最終的に供述を変遷させたのは,従前の回答が自己に不利になることに気付き,真実を離れて自己の利益のためにしたものと 考えざるを得ない。 d 以上のとおり,原告は,本件基準時において,次期選挙への立候補意思を一定程度有していたものと考えられ,原告が次期選挙まで残り四,五か月という時期になるまで,立候補しない意思を公にしなかったことにも照らせば,次期選挙に立候補しない意思は▲期目の立候補 を決めた際からの一貫したものである旨述べる原告の前記(ア)の主張には,理由がない。 オ小括以上によれば,選挙における当選は保証されたものではないものの,原告が次期選挙に立候補するのであれば当選する可能性が十分あることが 明らかであり,その上で立候補しないことは,原告の意思によるものというほかない。 すなわち,原告が主張する各事情は,立候補を検討する段階における主観的な消極材料となり得るにすぎず,また,解消される可能性も相当程度あった 候補しないことは,原告の意思によるものというほかない。 すなわち,原告が主張する各事情は,立候補を検討する段階における主観的な消極材料となり得るにすぎず,また,解消される可能性も相当程度あったものといわざるを得ない。 そうすると,これらは,原告の意思にかかわらず原告が▲期目の選挙に立候補又は当選できず,A市議会議員としての報酬を得ることができないことが当然かつ確実であり,何人にも客観的に予見できることを基礎付ける事情に当たらない。 したがって,本件基準時において原告は本件収入要件を満たさない。 - 19 -(3) その他の原告の主張についてア原告は,本件基準時頃の家計が極めて厳しい状況にあったことから,原告の実質的な所得は基準額を超えるとはいえない旨主張する。 しかし,収入の使途に関する原告の主張を前提としたとしても,生計維持関係等認定基準における所得は,収入から必要経費(給与所得について は給与所得控除額)を控除した額をいうものとされており,控除対象以外の使途については考慮の対象とされていない。 したがって,仮に,原告の支出が多かったとしても,収入要件の認定には影響がなく,本件基準時において原告の所得が基準額を超えていたことには変わりがないのであるから,原告の上記主張は失当である。 イ原告は,本件収入要件を満たしていないとされたとしても,本件において生計維持関係等認定基準の規定により生計維持関係の認定を行うことは,「実体と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合」となるから,例外として本件収入要件を満たしていると解すべきである旨主張する。 しかし,前記アと同様,収入の使途に関する原告の主張を前提としたとしても,その支出は,社会保険料や選挙費用に 」となるから,例外として本件収入要件を満たしていると解すべきである旨主張する。 しかし,前記アと同様,収入の使途に関する原告の主張を前提としたとしても,その支出は,社会保険料や選挙費用に係る借入金の返済等のほか,日々の議員活動に関するものといった,全て自身のための費用であって,特別なものは何らなかったのであるから,これらの支出を本件収入要件の認定に当たってしんしゃくしないことが,実態と著しく懸け離れたものと なり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなるとは認められない。 したがって,原告の上記主張には理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 本件の判断枠組み(1) 遺族厚生年金の受給権者に係る生計維持の関係の判断枠組み 厚年令3条の10は,厚年法59条1項に規定する被保険者等の死亡の当 - 20 -時その者によって生計を維持していた配偶者等は,当該被保険者等の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であって厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものその他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者とする旨を定め,上記の「厚生労働大臣の定める金額」は,年額850万円とされている(別紙「関係法令等 の定め」第2)。 これらの厚年令の規定等は,被保険者等の死亡の当時,被保険者等と生計を同じくし,かつ,自活の可能な一定金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者について,その時点において,自らの将来の収入の状況を見越して被保険者等の収入に依拠する関係にあるといえることか ら,厚年法59条1項に規定する被保険者等の死亡の当時その者によって生計を維持していた者に該当するという考慮に基づくものであると解され,その内容は,厚年法の趣旨に沿い,合理性があるも ことか ら,厚年法59条1項に規定する被保険者等の死亡の当時その者によって生計を維持していた者に該当するという考慮に基づくものであると解され,その内容は,厚年法の趣旨に沿い,合理性があるものと認められる。この点,厚年令3条の10の定める要件は,被保険者等の死亡の当時における生計維持の有無に関する要件であるところ,被保険者等の死亡の時点から離れた遠 い将来における収入の状況をもって,被保険者等の死亡の当時において被保険者等の収入に依拠する関係にあるか否かを判断することは適当ではないから,同条の規定にいう「将来」とは,比較的近い将来を意味するものと解される。 そうすると,生計維持関係等認定基準が,実態と著しく懸け離れたものと なり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,その定めによらず生計維持の有無を判断する余地を残した上で,厚年令3条の10に規定する受給権者の収入面に関する認定要件として,被保険者等の死亡の前年の収入又は所得が基準額未満である者や,これには該当しないが,「定年退職等の事情により近い将来(おおむね5年以内)」に収入又は所得が基準額未満 となると認められる者(本件収入要件を満たす者),すなわち,おおむね5 - 21 -年以内に収入又は所得が基準額未満となると客観的な根拠をもって判断することができる者が,厚年令3条の10に規定する「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」に該当する旨を定めている点は,いずれも厚年法及び厚年令の趣旨に沿い,相応の合理性があるものと認められる。 そして,処分行政庁による遺族厚生年金の裁定に当たっての生計維持の関係の認定が,生計維持関係等認定基準に従って行われていることが認められる(弁論の全趣旨)ことに鑑み があるものと認められる。 そして,処分行政庁による遺族厚生年金の裁定に当たっての生計維持の関係の認定が,生計維持関係等認定基準に従って行われていることが認められる(弁論の全趣旨)ことに鑑みると,多数の裁定請求者相互の間での判断基準の平等及び公平という観点も無視し得ない。 したがって,遺族厚生年金の受給権者に係る生計維持の関係の判断のうち, 少なくとも,上記に説示した厚年令3条の10に規定する「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」の該当性の判断については,その定めによらず生計維持の有無を判断する余地を残した部分を含む,上記の生計維持関係等認定基準の定めにより行うのが相当であると解される。 (2) 本件基準時における原告が厚年令3条の10に規定する「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」に当たるか否かに係る判断枠組み前提事実(1)ア(イ)のとおり,本件基準時の前年における原告の収入又は所得は,いずれも基準額以上であったから,おおむね5年以内に収入又は所得 が基準額未満となると客観的な根拠をもって判断することができる者(本件収入要件を満たす者)に該当すると認められない限り,厚年令3条の10に規定する「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」に当たるとはいえない。 2 原告の主張の検討 (1) 原告が令和元年▲月▲日をもってA市議会議員の任期を満了することは, - 22 -本件基準時における客観的に明らかな事実であった旨の原告の主張についてア原告は,原告が市議会議員の任期を満了する令和元年▲月▲日をもってその地位を喪失することは,本件基準時における客観的に明らか 本件基準時における客観的に明らかな事実であった旨の原告の主張についてア原告は,原告が市議会議員の任期を満了する令和元年▲月▲日をもってその地位を喪失することは,本件基準時における客観的に明らかな事実であったところ,選挙における当選は,保証されているものではなく,原告は,その意思いかんにかかわらず,期限の到来により当然かつ確実に収入 を得る地位を失うのであるから,本件収入要件を満たす者に該当する旨主張する。 イ証拠(甲36,41)によれば,原告は,①平成15年▲月▲日に行われたA市議会議員選挙において,▲票の得票数を得て当選し(得票順位▲位),同選挙における最下位での当選者(同▲位)の得票数は▲票 であったこと,②平成19年▲月▲日に行われた同市議会議員選挙において,▲票の得票数を得て当選し(同▲位),同選挙における最下位での当選者(同▲位)の得票数は▲票であったこと,③平成23年▲月▲日に行われた同市議会議員選挙において,▲票の得票数を得て当選し(同▲位),同選挙における最下位での当選者(同▲位)の得票数は▲ 票であったこと,④平成27年▲月▲日に行われた同市議会議員選挙において,▲票の得票数を得て当選し(同▲位),同選挙における最下位での当選者(同▲位)の得票数は▲票であったことが認められる。 原告は,上記のとおり,A市議会議員選挙において,連続▲期にわたり,毎回おおむね▲票から▲票を得て当選し,かつ,最下位での当選者 との得票数の差も,毎回▲から▲票程度存していたのであるから,事情の変化がない限りは,原告が次期選挙に立候補した場合には,当選する相当程度の蓋然性があったものと認められる。そして,現職の議員は,①他職への転身,高齢,疾病等の特段の事情のない限り,改選に係る選挙に立候補して再選を図るの が次期選挙に立候補した場合には,当選する相当程度の蓋然性があったものと認められる。そして,現職の議員は,①他職への転身,高齢,疾病等の特段の事情のない限り,改選に係る選挙に立候補して再選を図るのが通常である,②特定の支持層を有するこ とが多いほか,議員活動を通じ知名度を高める機会も多いこと等により - 23 -再選を果たす例が多く,かつ,再選を重ねるにつれてその傾向が強まるという一般的な経験則があることは,いずれも当裁判所に顕著な事実である。 したがって,原告が,本件基準時において有するA市議会議員の地位を,任期を満了する令和元年▲月▲日をもって当然に喪失するものであ るという事情のみによっては,直ちに,原告が,おおむね5年以内に収入又は所得が基準額未満となると客観的な根拠をもって判断することができる者(本件収入要件を満たす者)に該当することになるとは認め難く,原告が,本件収入要件を満たす者に該当するためには,他に,原告が次期選挙に立候補しないこと,又は,仮に原告が次期選挙に立候補し たとしても当選することができなかったことなどの事情が客観的な根拠をもって認められることを要するというべきである。 (2) 本件基準時当時,原告が次期選挙に立候補しない旨を決心し,仮に立候補したとしても当選することができなかった旨の原告の主張についてア A市議会議員選挙や原告を巡る客観的な情勢に係る原告の主張について (ア) 原告は,①一般的に,A市議会議員選挙は,約800万円,少なくとも600万円の選挙費用を準備することを要し,当該費用を準備することができなければ,立候補を断念せざるを得ず,仮に,立候補したとしても,当選の見込みはない,②当選に資する十分な選挙活動を展開するためには,後援会の支援が不可欠であり,後援会 ,当該費用を準備することができなければ,立候補を断念せざるを得ず,仮に,立候補したとしても,当選の見込みはない,②当選に資する十分な選挙活動を展開するためには,後援会の支援が不可欠であり,後援会が存在しなければ, 当選する見込みはないなどと,A市議会議員選挙に係る一般的な事情を指摘した上で,③原告自身に蓄えはなく,多額の債務を抱え,銀行から借り入れることも不可能であった上に,▲期目の選挙に係る選挙費用の借入先である原告の親族は,年金生活者であって経済的余裕はなく,そこから更に借入れをすることができる見込みはなかったから,次期選挙 に係る選挙費用を確保する見通しがなかった,④原告の後援会は,▲期 - 24 -目の選挙が終わった後は一切活動しておらず,事実上の解散状態にあり,仮に,原告が次期選挙の立候補を望んだとしても,役員の高齢化等の事情から,原告のために後援会が再度立ち上がる見込みはなかった旨主張する。 (イ)a 前記(ア)①の点については,選挙費用の多寡と得票数の多寡との 間に,客観的かつ明らかな相関関係があるとの一般的な経験則はない上に,A市議会議員選挙において,原告が主張するような多額の選挙費用を費やさない限り,当選することができないことを認めるに足りる的確な証拠も見当たらない。現に,原告自身の選挙については,原告の主張によれば,最初の選挙から▲期目の選挙までの選挙費用は, いずれも約800万円であり,▲期目の選挙の選挙費用が約550万円であったところ,▲期目の選挙の得票数及び得票順位は,▲期目及び▲期目の各選挙のそれらよりも上昇していたものである(なお,証拠(甲40)によれば,▲期目の選挙の投票総数は,▲期目及び▲期目の各選挙の各投票総数よりも少なかったことが認められる。)。 したが 目の各選挙のそれらよりも上昇していたものである(なお,証拠(甲40)によれば,▲期目の選挙の投票総数は,▲期目及び▲期目の各選挙の各投票総数よりも少なかったことが認められる。)。 したがって,原告が主張するような多額の選挙費用を費やさない限り,当選する見込みがないとまでは直ちに認め難いから,前記(ア)①の主張を採用することはできない。 b 前記(ア)②ないし④の点については,前記aに判示したところに加え,(a)A市議会議員選挙に当選するために後援会の存在及び支援が重 要であることを超えて,それが必要不可欠であるとまで認めるに足りる的確な証拠が見当たらないこと,(b)原告が,本件基準時当時,既に▲期にわたりA市議会議員を務め,▲期目の当選も果たした現職の女性の議員であって,議員としての相応の実績及びA市内における相応の知名度を有していたとうかがわれること,(c)証拠(甲36,45) によれば,原告が,平成30年▲月及び平成31年▲月の段階におい - 25 -ても,一定の根強い支持層を有しているとの選挙情勢分析があることが認められる。そして,⒟本件基準時におけるA市議会議員選挙においては,一定の範囲の選挙活動(自動車の使用,ポスターの作成及び同一施設ごとに1回の個人演説会に係る施設使用)に要する費用について無料とされ(公職選挙法141条8項,143条15項,164 条,A市議会の議員及びA市長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例2条,9条),一定の範囲では,インターネットを利用した選挙活動を行うことも可能であった(公職選挙法142条の3,142条の4(平成30年法律第75号による改正前のもの))ことにも照らすと,A市議会議員選挙に当選するために後援会の存在及び支 援が重要であると認められ, であった(公職選挙法142条の3,142条の4(平成30年法律第75号による改正前のもの))ことにも照らすと,A市議会議員選挙に当選するために後援会の存在及び支 援が重要であると認められ,かつ,原告が前記(ア)③及び④において主張する事情を前提としたとしても,本件基準時において,原告が次期選挙に立候補しないことが明らかであるとか,仮に原告が次期選挙に立候補したとしても当選することができなかったことが明らかであったとまでは認め難い。 なお,証拠(甲36,45)には,原告の従前の支持組織が次期選挙においては原告を支持しないとされる旨の選挙情勢分析が記載されていることが認められるものの,他方で,原告が,自身の後継者とされる者について,別の団体に組織的な支持を要請しているとされる旨の記載もあり(甲45),かつ,上記の従前の支持組織が従前の選挙 における原告の得票数に及ぼした影響等が必ずしも明らかではないことにも照らすと,上記のような次期選挙に係る選挙情勢分析の記載をもってしても,上記の判断を覆すには足りないというべきである。 イ本件基準時当時,原告が次期選挙に立候補しない旨を決心し,仮に立候補したとしても当選することができなかった旨をいうその他の原告の主張 - 26 -について(ア) 原告は,①市民派を称する議員を支援する者を支持基盤とする原告にとって,その支援者から支援を受けることができなければ,当選の見込みはなかったところ,原告が▲期目の立候補を望んだとしても,活動期間は▲,▲期を目途として,後継者に活動のチャンスを譲 るなどの市民派を称する議員と支援者の間で共有されている考え方に照らし,上記の支援者から支援を受けられる見込みはなかった,②原告は,▲期目の立候補を決め,選挙活動を行った過程 動のチャンスを譲 るなどの市民派を称する議員と支援者の間で共有されている考え方に照らし,上記の支援者から支援を受けられる見込みはなかった,②原告は,▲期目の立候補を決め,選挙活動を行った過程において,体力の著しい低下を感じ,それに伴い議員活動への意欲も低下した,③原告は,▲期目の立候補に先立ち,原告の後援会の役員を含むごく親し い者に対して,▲期目が最後の選挙であり,次期選挙に立候補しない旨を伝えていた旨主張し,上記③については,これに沿う証拠(甲12,23)もある。 (イ)a 前記(ア)①の点については,原告が主張するところの市民派を称する議員と支援者の間で共有されている考え方については,これ に沿う旨を述べる原告の供述等の他に,これを的確に裏付ける証拠はなく,この点をおくとしても,上記の「考え方」に反する形で原告が次期選挙に立候補した場合に,それが原告の得票数等にどれほどの影響を及ぼすかは,本件全証拠によっても明らかではない(むしろ,前記ア(イ)において説示したとおり,原告は,上記の考え方 に反する形での立候補であったところの▲期目の選挙であっても,▲期目及び▲期目の各選挙から得票数等を伸ばしている上に,平成30年▲月及び平成31年▲月の段階においても,一定の根強い支持層を有しているとの選挙情勢分析もあるところである。)。 b 前記(ア)②の点については,本件全証拠によっても,本件基準時 において原告が重篤な疾病にり患していた等の事情は見当たらない - 27 -こと(原告も,本人尋問の際,体力の低下の原因として,そのような事情は供述していない。)に加え,本件基準時当時の原告の年齢▲▲▲▲にも照らすと,本件基準時において,原告が次期選挙に立候補しないことや,仮に原告が次期選挙に立候補したとし の原因として,そのような事情は供述していない。)に加え,本件基準時当時の原告の年齢▲▲▲▲にも照らすと,本件基準時において,原告が次期選挙に立候補しないことや,仮に原告が次期選挙に立候補したとしても当選することができなかったことなどを基礎付ける客観的な根拠となる ものとまでは認め難い。 c 前記(ア)③の点については,証拠(甲36,43,45ないし47,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,①原告が,本件基準時までの間に,次期選挙に立候補しない旨の決心を伝えていたのは,原告の後援会の役員,親族及び知人にとどまり,議員活動への支障 を考えて,上記決心を公にしていなかったこと,②平成30年▲月の段階においても,進退が微妙であるとの留保を付けつつも原告が次期選挙に立候補することを前提とした選挙情勢分析がされていたこと,③本件基準時において,原告は,自身の後継者となるべき者を具体的に見つけることができておらず,平成31年▲月頃に至る まで,複数の候補者に断られるなどして,後継者となるべき者を具体的に見つけることができていない状態にあったこと,④原告と同様に市民派を称していたA市議会議員であったGは,平成27年▲月に行われたA市議会議員選挙においては,後継者を見つけて引退する意思を有しているとされていたにもかかわらず,後継者を見つ けることができなかったために,自ら同選挙に立候補して当選したことの各事実が認められる。 これらのとおり,本件基準時において,原告は,次期選挙に立候補しない決心を公にしておらず,かつ,自身の後継者を具体的に見いだすこともできていない状況にあったのであり,このような客観 的な状況からすれば,原告が,次期選挙までの間に,次期選挙に立 - 28 -候補しない旨の従前の決心を覆し,次期 を具体的に見いだすこともできていない状況にあったのであり,このような客観 的な状況からすれば,原告が,次期選挙までの間に,次期選挙に立 - 28 -候補しない旨の従前の決心を覆し,次期選挙に立候補したとしても,本件基準時における原告としての行動として,何ら合理性を欠くものとはいえず,これまでに説示してきたところも踏まえると,前記(ア)③の点をもって直ちに,本件基準時において,原告が次期選挙に立候補しないことなどを基礎付ける客観的な根拠となるもの とまでは認め難い。 ウ小括以上によれば,原告が主張するところをもって,原告が次期選挙に立候補しないこと,又は,仮に原告が次期選挙に立候補したとしても当選することができなかったことなどの事情が客観的な根拠をもって認めら れるものとはいい難い。そして,仮に,原告が,平成▲年の秋頃に▲期目の選挙に立候補することを決めた際,次期選挙には立候補しない旨を自己の内心において決めており,本件基準時に至るまでのその決心に変わりがなかったとしても,それが,原告の主観的な事情にとどまるものである以上,上記の判断を覆すには足りない。 なお,前記ア及びイに挙げたもののほかに原告が主張する事情は,本件基準時の後の事情であるなど,いずれもその内容等に照らし,上記にいう客観的な根拠となるものとは認め難い。 (3) まとめ以上のとおり,原告が次期選挙に立候補しないこと,又は,仮に原告が 次期選挙に立候補したとしても当選することができなかったことなどの事情を客観的な根拠をもって認めることはできないから,原告が,本件基準時において有するA市議会議員の地位を,任期を満了する令和元年▲月▲日をもって当然に喪失するものであったとしても,原告は,おおむね5年以内に収入又は所得が基準額 ことはできないから,原告が,本件基準時において有するA市議会議員の地位を,任期を満了する令和元年▲月▲日をもって当然に喪失するものであったとしても,原告は,おおむね5年以内に収入又は所得が基準額未満となると客観的な根拠をもって判断する ことができる者(本件収入要件を満たす者)に該当するとはいえない。 - 29 -その他,原告は,①本件基準時頃,原告の家計が極めて厳しい状況にあり,原告の実質的な所得は,基準額を超えるとはいえない,②上記①を始めとする原告に関する特別な事情からすれば,本件において生計維持関係等認定基準の規定により生計維持関係の認定を行うことは,「実体と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場 合」となるから,例外として本件収入要件を満たしていると解すべき旨も主張する。しかし,上記①の主張は,所得の概念に係る独自の見解に立つものというほかなく,これを採用することはできない。また,上記②の主張にしても,これまでに説示したところからすれば,原告が,本件基準時において,厚年令3条の10に規定する「厚生労働大臣の定める金額以上 の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」に該当すると認めるに足りない結果,厚年法59条1項に規定する「被保険者等の死亡の当時(中略)その者によって生計を維持したもの」に当たらない旨の判断が,実体と著しく懸け離れたものとはいえないことは明らかであるから,これを採用することはできない。 したがって,本件基準時において,原告は,厚年令3条の10に規定する「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」に当たるとはいえず,本件処分は適法である。 3 結論よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却す 規定する「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」に当たるとはいえず,本件処分は適法である。 3 結論よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとお り判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官 鎌野真敬 - 30 - 裁判官 福渡裕貴 裁判官 獅子野 裕 介(別紙指定代理人目録省略) - 31 -(別紙)関係法令等の定め第1 厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)の定め 1 厚年法58条1項(平成24年法律第62号による改正前のもの)の定め厚年法58条1項(上記改正前のもの)本文は,遺族厚生年金は,被保険者 又は被保険者であった者(以下「被保険者等」という。)が同項各号のいずれかに該当する場合に,その者の遺族に支給する旨を定め,同項4号は,老齢厚生年金の受給権者が死亡したときを掲げている。 2 厚年法59条の定め(1) 厚年法59条1項本文は,遺族厚生年金を受けることができる遺族は,被 保険者等の配偶者,子,父母,孫又は祖父母(以下「配偶者等」という。)であって,被保険者等の死亡の当時その者によって生計を維持したものとする旨を定めている。 (2) 厚年法59条4項は,同条1項の規定の適用上,被保険者等によって生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は,政令で定める旨を定めてい る。 第2 厚年令の定め等 1 厚年令3条の10は,厚年法59条1項に規定する被保険者等の死亡の当時その者によって生計を維持していた配偶者等は,当該被保険者等の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であって厚生労働大臣の定める金額 令3条の10は,厚年法59条1項に規定する被保険者等の死亡の当時その者によって生計を維持していた配偶者等は,当該被保険者等の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であって厚生労働大臣の定める金額以 上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものその他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者とする旨を定めている。 2 前記1にいう「厚生労働大臣の定める金額」は,年額850万円とされている(乙6)。 第3 生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて(平成23年年発03 23第1号。乙6。以下「生計維持関係等認定基準」という。)の定め - 32 -「1 総論(1) 生計維持認定対象者次に掲げる者(以下「生計維持認定対象者」という。)に係る生計維持関係の認定については,2の生計維持関係等の認定日において,3の生計同一要件及び4の収入要件を満たす場合(中略)に(中略)死亡し た被保険者若しくは被保険者であった者と生計維持関係があるものと認定するものとする。 ただし,これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りでない。 (中略)⑧ 遺族厚生年金(中略)の受給権者(以下略)」「4 収入に関する認定要件(1) 認定の要件 ① 生計維持認定対象者(中略)に係る収入に関する認定に当たっては,次のいずれかに該当する者は,厚生労働大臣の定める金額(年額850万円)以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者に該当するものとする。 ア前年の収入(中略)が年額850万円未満であること。 イ前年の所得(中略)が年額655.5万円未満であること。 ウ一時的な所得があるとき められる者以外の者に該当するものとする。 ア前年の収入(中略)が年額850万円未満であること。 イ前年の所得(中略)が年額655.5万円未満であること。 ウ一時的な所得があるときは,これを除いた後,前記ア又はイに該当すること。 エ前記のア,イ又はウに該当しないが,定年退職等の事情により近い将来(おおむね5年以内)収入が年額850万円未満又は所得が 年額655.5万円未満となると認められること。 - 33 -(以下略)」以上

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