平成27(ワ)12609 特許権侵害差止請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年6月22日 東京地方裁判所
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判決文本文23,333 文字)

平成28年6月22日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成27年(ワ)第12609特許権侵害差止請求事件口頭弁論終結日平成28年4月22日判決 原告メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション同訴訟代理人弁護士窪田英一郎同柿内瑞絵同乾裕介同今井優仁同中岡起代子同石原一樹同訴訟復代理人弁理士新谷紀子 被告ファイザー株式会社同訴訟代理人弁護士小笠原匡隆同三好豊同飯塚卓也 被告補助参加人マイラン製薬株式会社同代理人弁護士田中浩之同代理人弁理士大門良仁 主文 1原告の請求をいずれも棄却する。 2訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告の負担とする。 3この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1請求 1被告は,別紙被告製品目録記載の各製品を製造し,販売し又は販売の申出をしてはならない。 2被告は,前項の各製品を廃棄せよ。 第2事案の概要 1本件は,発明の名称を「5α-レダクターゼ阻害剤によるアンドロゲン脱毛症の治療方法」とする特許第3058351号の特許権(以下「本件特許」 被告は,前項の各製品を廃棄せよ。 第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「5α-レダクターゼ阻害剤によるアンドロゲン脱毛症の治療方法」とする特許第3058351号の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特許」という。)を有する原告が,被告に対し,別紙被告製品目録記載の各製品(以下,これらを併せて「被告各製品」といい,個別には,同目録の番号に対応して「被告製品1」などという。)は,本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲(以下,単に「特許請求の範囲」ということがある。)の請求項1記載の発明(以下「本件発明」といい,本件特許のうち本件発明に係るものを「本件発明についての特許」という。)の技術的範囲に属し,かつ,存続期間の延長登録を受けた本件特許権の効力は,被告による被告各製品の製造,販売及び販売の申出(以下「製造販売等」という。)に及ぶ旨主張して,特許法100条1項及び2項に基づき,被告各製品の製造販売等の差止め及び廃棄を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠等により容易に認められる事実)(1) 当事者原告は,医薬品の製造販売等を行う米国ニュー・ジャージー州法人である(弁論の全趣旨)。 被告は,医薬品の製造販売等を行う株式会社である。 (2) 本件特許権及び存続期間の延長登録ア原告は,次の内容の本件特許の特許権者である(甲1,2)。 特許番号特許第3058351号登録日平成12年4月21日出願番号特願平7-511986号出願日平成6年10月11日優先日平成5年10月15日(以下「本件優先日」という。)(優先権主張国: 出願番号特願平7-511986号出願日平成6年10月11日優先日平成5年10月15日(以下「本件優先日」という。)(優先権主張国:米国)優先日平成6年3月17日(優先権主張国:米国)発明の名称 5α-レダクターゼ阻害剤によるアンドロゲン脱毛症の治療方法特許請求の範囲別紙特許請求の範囲記載1のとおりイ原告は,別紙存続期間の延長登録の「出願番号」,「出願日」,「延長の期間」及び「延長登録日」欄記載のとおり,本件特許権の存続期間の延長登録の出願をし,その登録(以下,それぞれ,同別紙の番号に従い,「本件延長登録1」などという。)を受けた。本件特許の原簿に記録された本件延長登録1及び同2の理由となった各処分(以下,それぞれ,同別紙の番号に従い,「本件各処分1」などという。)は,同別紙の「特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容」欄記載のとおりである(甲1)。 (3) 本件特許に対する特許無効審判及び審決取消訴訟ア被告補助参加人が本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし同20に係る発明についての特許を無効とすることを求めて,特許無効審判(無効2013-800194号。以下「本件無効審判」という。)を請求したところ,平成26年5月13日付けで,審決の予告がされた。 テバファーマスーティカルインダストリーズリミティド(以下「テバ社」と いう。)は,本件無効審判に参加を申請し(同月23日受付),同年8月13日付けで,参加を許可する旨の決定がされた。 原告は,同月22日付けで,本件特許の特許請求の範囲を別紙特許請求の範囲記載2(同別紙記載2における下線は訂正箇所を示す。)のとおり訂正すること 月13日付けで,参加を許可する旨の決定がされた。 原告は,同月22日付けで,本件特許の特許請求の範囲を別紙特許請求の範囲記載2(同別紙記載2における下線は訂正箇所を示す。)のとおり訂正することを内容とする本件明細書の訂正(以下「本件訂正」といい,本件訂正のうち請求項1に係る部分を「本件訂正1」という。同訂正後の特許請求の範囲の請求項1記載の発明を「本件訂正発明」という。)を請求した。 特許庁は,①本件訂正は,訂正要件を満たす,②本件訂正発明は,別紙引用例記載の各刊行物(以下,同別紙の番号に対応して「引用例1」などという。)記載の発明(以下,引用例の番号に対応して「引用例1発明」などという。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた,などと認定判断して,同年10月15日,「請求のとおり訂正を認める。特許第3058351号の請求項1,2,4ないし16,18ないし20に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「本件無効審決」という。)をし,同月23日,その謄本が原告に送達された(これに伴い,本件無効審決のうち,請求項3及び同17を削除する旨の訂正〔本件訂正のうち,請求項3及び同17に係る部分〕を認めた部分は,確定した。)。なお,出訴期間として90日が附加された。 (以上につき,甲1,3,4,乙14)。 イ原告は,平成27年2月19日,被告補助参加人(本件無効審判の審判請求人)及びテバ社(本件無効審判の参加人)を相手方として,知的財産高等裁判所に本件無効審決の取消しを求める訴え(同裁判所平成27年(行ケ)第10033号)を提起したが,同裁判所は,平成28年4月20日,原告の主張に係る本件無効審決の取消事由はいずれも理由がないとして,原告の請求を棄却する旨の判決(以下「本件 裁判所平成27年(行ケ)第10033号)を提起したが,同裁判所は,平成28年4月20日,原告の主張に係る本件無効審決の取消事由はいずれも理由がないとして,原告の請求を棄却する旨の判決(以下「本件知財高裁判決」という。なお,特許法179条ただし書は,特許無効審判の審決に対する訴えにおいては,その審判の「請求人又は被請求人を被告としなければならない」旨規定しているところ,本件審決は,特許を無効とするものであ るから,その取消しを求める訴えについては,本件無効審判の「請求人」のみが被告適格を有することになる。ここでいう「請求人」に同法148条1項の参加人〔審判請求人として参加した者〕が含まれるか否かについては議論があるが,本件知財高裁判決は,テバ社〔本件無効審判の参加人〕の被告適格を否定していない。)をした。 なお,本件知財高裁判決は,上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定めており,本件口頭弁論終結時において,同判決は確定しておらず,したがって,本件無効審決も,請求項3及び同17を削除する旨の訂正(本件訂正のうち,請求項3及び同17に係る部分)を認めた部分を除き,確定していない。 (以上につき,乙14)(4) 本件発明及び本件訂正発明の構成要件の分説本件発明及び本件訂正発明を構成要件に分説すると,それぞれ,次のとおりである(以下,分説に係る各構成要件を符号に対応して「構成要件A」などという。)。 ア本件発明A 単位用量として0.05~3mgの5α-レダクターゼ2阻害剤およびB 医薬的に許容可能なキャリヤーより成る,C ヒトにおけるアンドロゲン脱毛症治療用経口剤型医薬組成物。 イ本件訂正発明A’ 単位用量として0 レダクターゼ2阻害剤およびB 医薬的に許容可能なキャリヤーより成る,C ヒトにおけるアンドロゲン脱毛症治療用経口剤型医薬組成物。 イ本件訂正発明A’ 単位用量として0.05~1mgの5α-レダクターゼ2阻害剤およびB 医薬的に許容可能なキャリヤーより成る,C ヒトにおけるアンドロゲン脱毛症治療用経口剤型医薬組成物。 (5) 被告の行為ア被告各製品の製造販売等被告は,平成27年4月6日頃から,被告各製品を業として製造販売等している。 イ被告各製品の構成 被告各製品1の構成を本件発明又は本件訂正発明との対比に必要な限度で分説すると,次のとおりである(以下,分説に係る各構成を符号に対応して「構成a1」などという。)。 (ア) 被告製品1a1 0.2mgのフィナステリドおよびb 無水乳糖,アルファー化デンプン,ステアリン酸マグネシウム等の添加る,c 男性型脱毛症医療用の経口投与用錠剤(イ) 被告製品2a2 1mgのフィナステリドおよびb 無水乳糖,アルファー化デンプン,ステアリン酸マグネシウム等の添加る,c 男性型脱毛症医療用の経口投与用錠剤 3 争点(1) 被告各製品が本件発明の技術的範囲に属し,かつ,存続期間が延長された本件特許権の効力が被告による被告各製品の製造販売等に及ぶか(争点1)ア被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1ア)イ存続期間が延長された本件特許権の効力が被告による被告各製品の製造販売等に及ぶか(争点1イ)(2) 本件発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか(争点2)ア本件発明についての特許に引用例1に基づく新規 被告各製品の製造販売等に及ぶか(争点1イ)(2) 本件発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか(争点2)ア本件発明についての特許に引用例1に基づく新規性欠如の無効理由があるか(争点2ア)イ本件発明についての特許に引用例1又は引用例1ないし同5に基づく進歩性欠如の無効理由があるか(争点2イ)ウ本件発明についての特許に記載要件違反の無効理由があるか(争点2ウ) (3) 本件訂正1は訂正要件を満たし,同訂正により無効理由が解消し,被告各製品が本件訂正発明の技術的範囲に属し,かつ,同訂正後も存続期間が延長された本件特許権の効力が被告による被告各製品の製造販売等に及ぶか(争点3)ア本件訂正1は訂正要件を満たすか(争点3ア)イ本件訂正1により無効理由が解消するか(争点3イ)ウ被告各製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか(争点3ウ)エ本件訂正1後も存続期間が延長された本件特許権の効力が被告による被告各製品の製造販売等に及ぶか(争点3エ) 4 当事者の主張別紙争点に対する当事者の主張記載のとおり第3 当裁判所の判断 1 争点2イ(本件発明についての特許に引用例1又は引用例1ないし同5に基づく進歩性欠如の無効理由があるか)及び争点3イ(本件訂正1により無効理由が解消するか)について(1) 前記前提事実によれば,本件訂正発明は,本件発明における「単位用量として0.05~3mgの5α-レダクターゼ2阻害剤」を「単位用量として0.05~1mgの5α-レダクターゼ2阻害剤」と限定したものであることが認められるところ,前記前提事実,証拠(甲2ないし4,10ないし34,乙3ないし14)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の(2)ないし(8)において説 -レダクターゼ2阻害剤」と限定したものであることが認められるところ,前記前提事実,証拠(甲2ないし4,10ないし34,乙3ないし14)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の(2)ないし(8)において説示するとおり,本件訂正発明は,進歩性を欠くものと認められる(本件無効審決は,これと同旨の認定判断をしており,本件知財高裁判決は,同認定判断に誤りがある旨の原告の主張をすべて排斥している。)から,本件発明が少なくとも進歩性を欠き,本件訂正1によっても当該無効理由が解消しないことが明らかである。したがって,本件発明についての特許は,特許無効審判により無効とされるべきものと認められるから,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない(特許法104条の3)。 上記に反する原告の主張は,いずれも採用することができない。 (2) 引用例1(乙3)の記載によれば,同引用例には,引用例1発明として,「0.5mg/日にて経口投与するフィナステライド(判決注:フィナステリドと同義である。)およびリンゴのスライスより成る,禿げかかった成体雄 stumptailmacaque サルにおいて5頭のうち4頭が頭皮毛髪重量の増加を示し,1頭は非応答であり,当該サルにおける毛髪成長をミノキシジル単独によって誘導されるレベルまで刺激したことを示唆する,とされたもの。」(以下,この内容の発明を特に「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3) 前記前提事実及び上記(2)の認定事実に基づいて,引用発明と本件訂正発明とを対比すると,両者は,「5α-レダクターゼ2阻害剤及び医薬的に許容可能なキャリヤーより成るもの」である点において一致し,次の3点において相違するものと認められる。 ア本件訂正発明は,「経口剤型医薬組成物」であるのに対し, レダクターゼ2阻害剤及び医薬的に許容可能なキャリヤーより成るもの」である点において一致し,次の3点において相違するものと認められる。 ア本件訂正発明は,「経口剤型医薬組成物」であるのに対し,引用発明は,経口投与されるものではあるものの,「経口剤型医薬組成物」について特定されていない点(以下「相違点1」という。)。 イ本件訂正発明においては,用途について,「ヒトにおけるアンドロゲン脱毛症治療用」と特定されているのに対し,引用発明においては,そのような特定がなく,禿げかかった成体雄 stumptailmacaque サルにおいて作用を確認している点(以下「相違点2」という。)。 ウ本件訂正発明においては,用量について,「単位用量として0.05~1mg」と特定されているのに対し,引用発明においては,「0.5mg/日」と特定されている点(以下「相違点3」という。)。 (4) 相違点1について検討するに,引用発明は,経口投与されるものであるところ,これを「経口剤型」の「組成物」とすることに,当業者が困難を要するものではない。そして,引用発明のフィナステライドは,周知の医薬であるので,これを含有する組成物は「医薬組成物」に他ならない。そうすると,引用発明を「経口剤型医薬組成物」とすることは,本件優先日当時,当業者が容易になし得たものとい える。 (5) 相違点2について検討するに,引用例1(乙3)には,同文献に記載の試験において用いられた stumptailmacaque が,「ヒト脱毛症の十分に確立したアンドロゲン-依存性モデル」である旨記載されている。引用例1記載の試験は,ヒト脱毛症の動物モデルによるものであり,該試験はヒトの治療薬を得ることを意図したものということができるところ,フィナステライドの経口投与に 存性モデル」である旨記載されている。引用例1記載の試験は,ヒト脱毛症の動物モデルによるものであり,該試験はヒトの治療薬を得ることを意図したものということができるところ,フィナステライドの経口投与により,5頭のstumptailmacaque のうちの4頭において頭皮の毛髪の重量を増加させたとの試験結果から,フィナステライドについてヒトの治療薬としての適性を認識し,ヒトにおけるアンドロゲン脱毛症治療用という用途を想起することは,本件優先日当時,当業者にとって何ら困難なことではなかったといえる。 (6) 相違点3について検討するに,本件訂正発明に係る技術分野において,治療効果の向上や副作用の低減等を目的として,安全且つ有効な医薬の投与量を検討してみることは当業者が適宜行うことにすぎないから,本件訂正発明において規定されるような単位用量を設定することは,本件優先日当時,当業者が容易になし得たものといえるし,少なくとも,引用例2ないし同5において示された1mg前後あるいはより少量の投与量を参考にしつつ,治療効果の向上や副作用の低減等を目的として,安全且つ有効な医薬の投与量を検討し,本件訂正発明1において規定される程度の単位用量を設定することは,当業者が容易になし得たものといえる。 (7) 本件訂正発明の効果について検討するに,本件明細書において実施例について記載された効果は,本件優先日当時,当業者の予測し得る程度のものと判断するのが相当であり,本件訂正発明において,当業者の予測を超えるような格別に顕著な効果が生じるものと解することはできない。 (8) したがって,本件訂正発明は,本件優先日当時,引用発明(少なくとも,引用発明及び引用例2発明ないし引用例5発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2 (8) したがって,本件訂正発明は,本件優先日当時,引用発明(少なくとも,引用発明及び引用例2発明ないし引用例5発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない(進歩性を欠く)というべきである。 2 結論よって,その余の争点について検討するまでもなく,原告の本件請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 鈴木千帆 裁判官 天野研司 (別紙)被告製品目録 1 フィナステリド錠0.2mg「ファイザー」 2 フィナステリド錠1mg「ファイザー」以上 (別紙)特許請求の範囲 1 設定登録時【請求項1】単位用量として0.05~3mgの5α-レダクターゼ2阻害剤および医薬的に許容可能なキャリヤーより成る,ヒトにおけるアンドロゲン脱毛症治療用経口剤型医薬組成物。 【請求項2】5α-レダクターゼ2阻害剤が17β-(N-t-ブチルカルバモイル)-4-アザ-5α-アンドロスト-1-エン-3-オンである請求項1に記載の医薬組成物。 【請求項3】単位用量が0.5~3mgである請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項4】単位用量が0.05~1mgである請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項5】単位用量 成物。 【請求項3】単位用量が0.5~3mgである請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項4】単位用量が0.05~1mgである請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項5】単位用量が1mgである請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項6】アンドロゲン脱毛症が男性型禿頭症である請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。 【請求項7】単位用量として0.5~3mgの17β-(N-t-ブチルカルバモイル)-4-アザ-5α-アンドロスト-1-エン-3-オンおよび医薬的に許容可能な錠剤化成分より成る,アンドロゲン脱毛症治療用錠剤。 【請求項8】単位用量が1mgである請求項7に記載の錠剤。 【請求項9】錠剤化成分がリン酸カルシウム,ラクトース,トウモロコシデンプンおよびステアリン酸マグネシウムから選択される請求項7に記載の錠剤。 【請求項10】結合剤,滑沢剤,崩壊剤および着色剤の1種または2種以上をさらに含有する請求項9に記載の錠剤。 【請求項11】結合剤がデンプン,ゼラチン,天然糖,ゴム,カルボキシメチルセ ルロース,ポリエチレングリコールおよびろうから選択される請求項10に記載の錠剤。 【請求項12】滑沢剤がオレイン酸ナトリウム,ステアリン酸ナトリウム,ステアリン酸マグネシウム,安息香酸ナトリウム,酢酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムから選択される請求項10記載の錠剤。 【請求項13】崩壊剤がデンプン,メチルセルロース,寒天,ベントナイトおよびキサンタンゴムから選択される請求項10に記載の錠剤。 【請求項14】アンドロゲン脱毛症が男性型禿頭症である請求項7~13のいずれか1項に記載の錠剤。 【請求項15】アンドロゲン脱毛症の治療に有用な経口投与に適した薬剤の製造のための5α-レダクターゼ2阻害剤の使用で ンドロゲン脱毛症が男性型禿頭症である請求項7~13のいずれか1項に記載の錠剤。 【請求項15】アンドロゲン脱毛症の治療に有用な経口投与に適した薬剤の製造のための5α-レダクターゼ2阻害剤の使用であって,用量が0.05~3mgである前記使用。 【請求項16】5α-レダクターゼ2阻害剤が17β-(N-t-ブチルカルバモイル)-4-アザ-5α-アンドロスト-1-エン-3-オンである請求項15に記載の使用。 【請求項17】用量が0.5~3mgである請求項15または16に記載の使用。 【請求項18】用量が0.05~1mgである請求項15または16に記載の使用。 【請求項19】用量が1mgである請求項15または16に記載の使用。 【請求項20】アンドロゲン脱毛症が男性型禿頭症である請求項15~19のいずれか1項に記載の使用。 2 本件訂正後【請求項1】単位用量として0.05~1mgの5α-レダクターゼ2阻害剤および医薬的に許容可能なキャリヤーより成る,ヒトにおけるアンドロゲン脱毛症治療用経口剤型医薬組成物。 【請求項2】5α-レダクターゼ2阻害剤が17β-(N-t-ブチルカルバモイ ル)-4-アザ-5α-アンドロスト-1-エン-3-オンである請求項1に記載の医薬組成物。 【請求項3】(削除)【請求項4】単位用量が0.2mgである請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項5】単位用量が1mgである請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項6】アンドロゲン脱毛症が男性型禿頭症である請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。 【請求項7】単位用量として0.5~1mgの17β-(N-t-ブチルカルバモイル)-4-アザ-5α-アンドロスト-1-エン-3-オンおよび医薬的に許容可能な錠剤化成分より成る,アンドロゲン 成物。 【請求項7】単位用量として0.5~1mgの17β-(N-t-ブチルカルバモイル)-4-アザ-5α-アンドロスト-1-エン-3-オンおよび医薬的に許容可能な錠剤化成分より成る,アンドロゲン脱毛症治療用錠剤。 【請求項8】単位用量が1mgである請求項7に記載の錠剤。 【請求項9】錠剤化成分がリン酸カルシウム,ラクトース,トウモロコシデンプンおよびステアリン酸マグネシウムから選択される請求項7に記載の錠剤。 【請求項10】結合剤,滑沢剤,崩壊剤および着色剤の1種または2種以上をさらに含有する請求項9に記載の錠剤。 【請求項11】結合剤がデンプン,ゼラチン,天然糖,ゴム,カルボキシメチルセルロース,ポリエチレングリコールおよびろうから選択される請求項10に記載の錠剤。 【請求項12】滑沢剤がオレイン酸ナトリウム,ステアリン酸ナトリウム,ステアリン酸マグネシウム,安息香酸ナトリウム,酢酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムから選択される請求項10記載の錠剤。 【請求項13】崩壊剤がデンプン,メチルセルロース,寒天,ベントナイトおよびキサンタンゴムから選択される請求項10に記載の錠剤。 【請求項14】アンドロゲン脱毛症が男性型禿頭症である請求項7~13のいずれか1項に記載の錠剤。 【請求項15】アンドロゲン脱毛症の治療に有用な経口投与に適した薬剤の製造の ための5α-レダクターゼ2阻害剤の使用であって,用量が0.05~1mgである前記使用。 【請求項16】5α-レダクターゼ2阻害剤が17β-(N-t-ブチルカルバモイル)-4-アザ-5α-アンドロスト-1-エン-3-オンである請求項15に記載の使用。 【請求項17】(削除)【請求項18】用量が0.2mgである請求項15または16に記載の使用。 【請求項19】用量が1mg 5α-アンドロスト-1-エン-3-オンである請求項15に記載の使用。 【請求項17】(削除)【請求項18】用量が0.2mgである請求項15または16に記載の使用。 【請求項19】用量が1mgである請求項15または16に記載の使用。 【請求項20】アンドロゲン脱毛症が男性型禿頭症である請求項15~19のいずれか1項に記載の使用。 以上 (別紙)引用例 1 引用例1(乙3)ArthurR. Dianietal., “HairGrowthEffectsofOralAdministrationofFinasteride, aSteroid 5α-ReductaseInhibitor, AloneandinCombinationwithTopicalMinoxidilintheBaldingStumptailMacaque”(「禿げかかったStumptailMacaque における,ステロイド5α-レダクターゼ阻害剤であるフィナステリド単独,又は局所用ミノキシジルと組み合わせたフィナステリドの経口投与の毛髪成長効果」), JournalofClinicalEndocrinologyandMetabolism, 1992, Vol.74, No.2, pp.345-350 (平成4年) 2 引用例2(乙4)GlennJ.Gormleyetal., “EffectsofFinasteride(MK-906), a 5α-ReductaseInhibitor, onCirculatingAndrogensinMaleVolunteers”(「5αレダクターゼ阻害薬フィナステリド(MK-906)の男性ボランティアにおける Inhibitor, onCirculatingAndrogensinMaleVolunteers”(「5αレダクターゼ阻害薬フィナステリド(MK-906)の男性ボランティアにおける循環アンドロゲンへの効果」), JournalofClinicalEndocrinologyandMetabolism, 1990, Vol.70, No.4, pp.1136-1141 (平成2年) 3 引用例3(乙5)JohnD. Mcconnelletal., “Finasteride, anInhibitorof 5α-Reductase,SuppressesProstaticDihydrotestosteroneinMenwithBenignProstaticHyperplasia” (「5αレダクターゼの阻害薬フィナステリドは,良性前立腺肥大症の男性において前立腺ジヒドロテストステロンを抑制する」), JournalofClinicalEndocrinologyandMetabolism, 1992, Vol.74, No3,pp.505-508 (平成4年) 4 引用例4(乙6)A. Vermeulenetal., “HormonalEffectsofanOrallyActive 4-AzasteroidInhibitorof 5α-ReductaseinHumans” (「ヒトにおける5αレダクターゼの経口活性4-アザステロイド阻害剤のホルモン効果」), TheProstate, 1989, Vol.l4, Issue 1, pp.45-53 (平成元年) 5 引用例5(乙7)M.OHTAWAetal., “Pharmaco 果」), TheProstate, 1989, Vol.l4, Issue 1, pp.45-53 (平成元年) 5 引用例5(乙7)M.OHTAWAetal., “PharmacokineticsandbiochemicalefficacyaftersingleandmultipleoraladministrationofN-(2-methyl-2-propyl)-3-oxo-4-aza-5α-androst-1-ene-17β-carboxamide, anewtypeofspecificcompetitiveinhibitoroftestosterone 5α-reductase, involunteers”(「テストステロン5α-レダクターゼの新型特異的競合的阻害剤,N-(2-メチル-2-プロピル)-3-オキソ-4-アザ-5α-アンドロスト-1-エン-17β-カルボキサミドの単回及び複数回経口投与後のボランティアにおける薬物動態及び生化学的効果」) EuropeanJournalOfDrugMetabolismAndPharmacokinetics,1991, Vol.16, No.l, pp.15-21 (平成3年) 以上 (別紙)争点に対する当事者の主張 (1) 争点1(被告各製品が本件発明の技術的範囲に属し,かつ,存続期間が延長された本件特許権の効力が被告による被告各製品の製造販売等に及ぶか)について【原告の主張】ア争点1ア(被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について(ア) 被告製品1は,「0.2mgを1日1回経口投与する」とされているように,単位用量が0.2mgであり,被告 告の主張】ア争点1ア(被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について(ア) 被告製品1は,「0.2mgを1日1回経口投与する」とされているように,単位用量が0.2mgであり,被告製品2は,「1日1mgを上限とする」とされているように,単位用量が1mgであるところ(甲7),フィナステリドは,「5α-還元酵素Ⅱ型阻害剤」(甲5),すなわち,5α-レダクターゼ2阻害剤である。したがって,被告製品1の構成a1及び被告製品2の構成a2は,いずれも本件発明の構成要件A「単位用量として0.05~3mgの5α-レダクターゼ2阻害剤および」を充足する(なお,本件訂正発明の構成要件A’「単位用量として0. 05~1mgの5α-レダクターゼ2阻害剤および」についても同様である。)。 (イ) 無水乳糖,アルファー化デンプン,ステアリン酸マグネシウム等の添加物は,医薬的に許容可能なキャリヤーである。したがって,被告各製品の構成bは,本件発明の構成要件B「医薬的に許容可能なキャリヤーより成る,」を充足する。 (ウ) 男性型脱毛症は,アンドロゲン脱毛症の一種であるから,男性型脱毛症医療用の経口投与用錠剤は,ヒトにおけるアンドロゲン脱毛症治療用経口剤型医薬組成物に該当する。したがって,被告各製品の構成cは,本件発明の構成要件C「ヒトにおけるアンドロゲン脱毛症治療用経口剤型医薬組成物。」を充足する。 (エ) 以上より,被告各製品は,本件発明の構成要件を全て充足するから,本件発明の技術的範囲に属する。 イ争点1イ(存続期間が延長された本件特許権の効力が被告による被告各製品の製造販売等に及ぶか)について 本件処分1及び同2の対象となった物は,「一般的名称フィナステリド(finasteride)」であり,用量は,「0.2mg」(本 被告による被告各製品の製造販売等に及ぶか)について 本件処分1及び同2の対象となった物は,「一般的名称フィナステリド(finasteride)」であり,用量は,「0.2mg」(本件処分2)又は「1.0mg」(本件処分1),用途は,「男性における男性型脱毛症の進行遅延」である(なお,これらは,本件発明の技術的範囲に属するのみでなく,本件訂正発明の技術的範囲にも属する。)ところ,被告各製品は,フィナステリドを有効成分とし,用量が0.2mg(被告製品1)又は1.0mg(被告製品2)であり,男性における男性型脱毛症の進行遅延を用途とするものであるから,存続期間が延長された本件特許権の効力は,被告による被告各製品の製造販売等に及ぶといえる。 【被告の主張】原告の主張は,いずれも,否認し又は争う。 (2) 本件発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか(争点2)【被告の主張】本件発明についての特許は,以下のいずれか理由により,特許無効審判により無効とされるべきものと認められるから,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない。 ア争点2ア(本件発明についての特許に引用例1に基づく新規性欠如の無効理由があるか)について(ア) 本件発明は,以下のとおり,本件優先日前に頒布された引用例1発明と実質的に同一であり,新規性を欠く。したがって,本件発明についての特許は,特許法29条1項3号(ただし,平成11年法律第41号による改正前の規定)に違反してされたものである。 (イ) 引用例1には,「単位用量として1.8~3mg程度の5α-レダクターゼ2阻害剤及び医薬的に許容可能なキャリヤーより成るアンドロゲン脱毛症治療用経口剤型医薬」に係る発明が実質的に記載されている。なぜな 引用例1には,「単位用量として1.8~3mg程度の5α-レダクターゼ2阻害剤及び医薬的に許容可能なキャリヤーより成るアンドロゲン脱毛症治療用経口剤型医薬」に係る発明が実質的に記載されている。なぜなら,引用例1における禿げかかった成体雄 stumptailmacaque (以下,単に「サル」ということがあ る。)は,男性脱毛症のアンドロゲン依存性モデルとして確立しており,これに対するフィナステライド(5α-レダクターゼ2阻害剤に該当する。)の投与量をヒトに対する投与量に換算すると,「単位用量として1.8~3mg程度」となり,また,同引用例における「リンゴのスライス」は,医薬的に許容可能なキャリヤーに該当するからである。 (ウ) 上記(イ)を前提に,本件発明と引用例1発明とを対比すると,①本件発明が全体として「組成物」であるのに対し,引用例1発明については「組成物」であることが明示されていない点,及び②本件発明が「ヒトにおける」医薬であるのに対し,引用例1発明についてはサルを用いて作用効果を確認している点において,両発明は,一応,相違するが,これらの点は,実質的な相違ではない。 まず,上記①の点については,微少量の薬物を過不足なく適切に経口投与するために,医薬的に許容可能なキャリヤーを配合して,「組成物」態様の製剤とすることは,医薬分野における常識であり,このことは,投与対象がヒトであるか,ヒト以外であるかによって変わるところがないから,引用例1発明において,フィナステライドが適宜のキャリヤーとともに「組成物」の態様で経口投与されたことは,当業者にとって自明であるといえる。 また,上記②の点については,動物モデルによる効果確認試験は,ヒトの治療薬を意図した試験であり,当業者は,当該試験によって得られた優位の結果から,ヒ たことは,当業者にとって自明であるといえる。 また,上記②の点については,動物モデルによる効果確認試験は,ヒトの治療薬を意図した試験であり,当業者は,当該試験によって得られた優位の結果から,ヒトの治療薬としての適性を認識するものであることからすれば,引用例1にも,ヒトの脱毛症に対する治療薬の研究を目的とする意図が示されている。したがって,引用例1に示されたヒト男性型脱毛症の動物モデルとして周知のサルによる脱毛症治療の有意な結果は,ヒトにおけるアンドロゲン(男性型)脱毛症の治療薬としての適応を実質的に開示したに等しい。 イ争点2イ(本件発明についての特許に引用例1又は引用例1ないし同5に基づく進歩性欠如の無効理由があるか)について(ア) 仮に,本件発明と引用例1発明とが実質的に同一であるとまではいえないと しても,以下のとおり,本件発明は,引用例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか,あるいは,引用例1発明ないし引用例5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,進歩性を欠く。したがって,本件発明についての特許は,特許法29条2項に違反してされたものである。 (イ) 本件発明と引用例1発明との相違点として,次の3点を認めるべきであるとしても,両発明は,その余の点において一致しており,この3点に係る本件発明の構成は,いずれも当業者が容易に想到することができたものであって,本件発明は,引用例1発明に基づいて,あるいは,引用例1発明ないし引用例5発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたというべきであるからである。 本件発明は,「経口剤型医薬組成物」であるのに対し,引用例1発明は,経口投与されるものではあるものの,「経口剤型医薬組成物」について特定されていな 明をすることができたというべきであるからである。 本件発明は,「経口剤型医薬組成物」であるのに対し,引用例1発明は,経口投与されるものではあるものの,「経口剤型医薬組成物」について特定されていない点(以下「相違点①」という。)。 本件発明においては,用途について,「ヒトにおけるアンドロゲン脱毛症治療用」と特定されているのに対し,引用例1発明においては,そのような特定がなく,禿げかかった成体雄 stumptailmacaque (サル)において作用を確認している点(以下「相違点②」という。)。 本件発明においては,用量について,「単位用量として0.05~3mg」と特定されているのに対し,引用例1発明においては,「0.5mg/日」と特定されている点(以下「相違点③」という。)。 (ウ) 相違点①について検討するに,引用例1発明は経口投与されるものであり,これを「経口剤型」の「組成物」とすることに当業者が困難を要するものではないし,フィナステライドは周知の医薬であり,これを含有する組成物は「医薬組成物」にほかならないから,引用例1発明を「経口剤型医薬組成物」とすることは,当業者が容易に想到し得たといえる。 (エ) 相違点②について検討するに,サルは,男性脱毛症のアンドロゲン依存性モ デルとして確立しているところ,引用例1における試験は,ヒトの治療薬を得ることを意図したものであるから,5匹のサルのうちの4匹において頭皮の毛髪の重量を増加させたとの結果により,「ヒトにおけるアンドロゲン脱毛症治療用」との用途は,実質的に開示されたか,少なくとも当業者が容易に想到し得たといえる。 (オ) 相違点③について検討するに,本件優先日当時,フィナステライドの投与には副作用が発現するおそれがあったから(乙11,12),当業者は,で たか,少なくとも当業者が容易に想到し得たといえる。 (オ) 相違点③について検討するに,本件優先日当時,フィナステライドの投与には副作用が発現するおそれがあったから(乙11,12),当業者は,できるだけ低い投与量で男性型脱毛症に用いたいと考えたはずであり,単位用量を抑えるという動機付けがあった。現に,引用例1でも,血清DHT生成阻害効果に大きな差がないことを確認した後,少ない投与量(0.5mg/日)が選択されている。さらに,引用例1において,フィナステライドの経口投与による血清DHTの抑制により,禿頭症を逆行させ,アンドロゲン性脱毛症もしくは予防する効果が得られることが示唆されているところ,引用例2ないし同5には,1日当たり0.04mgから1mgの投与量であっても,血中のDHTが大幅に減少することが記載されていることからすれば,当業者は,投与量を引用例2ないし同5に記載された程度に少量にしても,ヒトの毛髪成長効果が得られるであることに容易に想到することができたといえる。 ウ争点2ウ(本件発明についての特許に記載要件違反の無効理由があるか)について(ア) 実施可能性要件違反本件発明の「アンドロゲン脱毛症治療用経口剤型医薬組成物」としての医薬効果を実証するために必須の薬理試験結果が,本件明細書の発明の詳細な説明において示されていない。また,本件発明に係る「0.05~3mg」の単位投与量のうち,発明の詳細な説明において具体的説明が試みられているのは,実施例4及び同5における「0.2mg」,「1.0mg」及び「5mg」のみであり,0.05mgという低用量において所期の効果が奏されることの説明はない。それゆえ,当業者といえども,発明の詳細な説明に基づいて,本件発明を容易に実施することができ ない。このように,本件明 .05mgという低用量において所期の効果が奏されることの説明はない。それゆえ,当業者といえども,発明の詳細な説明に基づいて,本件発明を容易に実施することができ ない。このように,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件発明を容易に実施することができる程度に記載されていないから,特許法36条4項(ただし,平成6年法律第116号による改正前の規定)に適合していないというべきであり,本件発明についての特許は,同項に違反してされたものである。 (イ) サポート要件違反上記(ア)で主張したところによれば,本件発明は,実質的にみて,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。したがって,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1は,特許法36条5項1号(ただし,平成6年法律第116号による改正前の規定)に適合していないというべきであり,本件発明についての特許は,同号に違反してされたものである。 (ウ) 発明の構成に欠くことができない事項の記載がないこと本件明細書の特許請求の範囲の請求項1における「単位用量として0.05~3mg」との記載だけでは,有効投与量が特定されたとはいえない。患者に対する投与量を特定するには,その単位用量がいかなる時間単位の用量であるかが記載されている必要がある。したがって,請求項1は,発明の構成に欠くことができない事項が記載されておらず,特許法36条5項2号(ただし,平成6年法律第116号による改正前の規定)に適合していないというべきであり,本件発明についての特許は,同号に違反してされたものである。 【原告の主張】被告の主張に係る無効理由は,いずれも認められず,本件発明についての特許が特許無効審判により無効とされるべきものとはいえない。 ア争点2ア(本件発明についての特許に ある。 【原告の主張】被告の主張に係る無効理由は,いずれも認められず,本件発明についての特許が特許無効審判により無効とされるべきものとはいえない。 ア争点2ア(本件発明についての特許に引用例1に基づく新規性欠如の無効理由があるか)について(ア) 本件発明と引用例1発明とは,少なくとも次の5点において相違する(本件訂正発明についても,少なくとも次の5点において引用例1発明と相違する。)から,両発明が実質的に同一であるとの被告主張は,誤りである。 (イ) 第1に,引用例1には,「アンドロゲン脱毛症治療用」経口剤型医薬が開示されていない。すなわち,同引用例は,フィナステライドの経口投与が5頭のサルのうち4頭において頭皮の毛髪の重量を増加させたことを示したが,一方で,非応答体を含む5頭全体のデータを解析すると,フィナステライドの単独処理群の毛髪重量の増加は対照群と比べて統計学的に有意ではないことを示した。そのため,当業者は,同引用例の試験結果から,フィナステライドが,サルにおける毛髪成長をミノキシジル単独によって誘導されるレベルまで刺激したことを示唆するとは理解しないと考えられる。したがって,同引用例には,フィナステライドがサルにおける毛髪成長をミノキシジル単独によって誘導されるレベルまで刺激したことの開示・示唆はなく,「アンドロゲン脱毛症治療用」経口剤医薬は記載されていない。 (ウ) 第2に,引用例1には,「5α―レダクターゼ2阻害剤」が開示されていない。すなわち,同引用例には,「5α-レダクターゼ阻害剤であるフィナステライド」についての開示はあるが,フィナステライドが「5α-レダクターゼ2阻害剤」として作用していることについての開示はない。 (ウ) 第3に,引用例1には,「経口剤型医薬組成物」の開示がな ステライド」についての開示はあるが,フィナステライドが「5α-レダクターゼ2阻害剤」として作用していることについての開示はない。 (ウ) 第3に,引用例1には,「経口剤型医薬組成物」の開示がない。すなわち,同引用例には,フィナステライドを臨床的に使用する際,アンドロゲンの全身性の変化を回避するため,経口投与ではなく,皮膚に塗布する方法で使用することが記載されており,「経口剤型の医薬組成物」の開示はない。 (エ) 第4に,引用例1には,「ヒト」におけるアンドロゲン脱毛症治療用医薬組成物の開示がない。すなわち,サルとヒトは異なり,同引用例からヒトのアンドロゲン脱毛症の治療薬としての適性を判断することはできない。 (オ) 第5に,引用例1には,「単位用量として0.05~3mg」の5α-レダクターゼ阻害剤は開示されていない。同引用例におけるサルの実験結果をヒトに適用することはできない。また,同引用例の試験において,体重15.4kgのサルに0.5mgのフィナステライドを投与したとみるべき根拠はない(なお,仮に,同引用例における stumptailmacaque に投与された単位用量をヒトに適用した場 合に導かれる体重60kgのヒトに投与される単位用量が1.8~3.0mgであるとの被告の立論によったとしても,本件訂正発明の「単位用量として0.05~1mg」と重複する範囲とはならない。)。 イ争点2イ(本件発明についての特許に引用例1又は引用例1ないし同5に基づく進歩性欠如の無効理由があるか)について(ア) 被告は,本件発明が引用例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか,あるいは,引用例1発明ないし引用例5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。 しかし,本件発明と引 引用例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか,あるいは,引用例1発明ないし引用例5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。 しかし,本件発明と引用例1発明とは,少なくとも上記アで指摘した5点において,相違する。 また,被告の主張に係る相違点①ないし③について検討すると,以下のとおり,当業者が各相違点に係る本件発明の構成に想到することは,困難であったというべきであるし,本件発明には,本件優先日当時の技術水準から予測される範囲を超える顕著な効果が認められる。 (イ) 相違点①について検討するに,本件優先日当時の技術水準からすると,アンドロゲン脱毛症の治療にフィナステライドを用いることには阻害要因が存在したといえるし,上記技術水準及び引用例1の記載事項からすれば,仮に,同引用例に接した当業者がフィナステライドをアンドロゲン脱毛症の治療に用いることを試みたとしても,アンドロゲンの全身性の変化を回避するため,局所適用を選択したはずであって,経口投与を選択することには阻害要因があった。したがって,引用例1発明を「経口剤型医薬組成物」とすることが容易であったとはいえない。 (ウ) 相違点②について検討するに,本件優先日当時の技術水準に照らせば,当業者は,引用例1の記載から,フィナステライドが禿頭症のサルに有意な増毛作用を持つことを認識できなかったし,上記技術水準からすれば,そもそも,5α-レダクターゼに関し,サルでのデータから単純にヒトでの効果を予測することはできない旨認識されていたというべきであるから,フィナステライドをヒトのアンドロゲ ン脱毛症の治療に用いる動機付けはなかった。したがって,当業者が引用例1発明に基づいてフィナステライドをヒトのアンドロゲン脱毛症治療用に使用する るから,フィナステライドをヒトのアンドロゲ ン脱毛症の治療に用いる動機付けはなかった。したがって,当業者が引用例1発明に基づいてフィナステライドをヒトのアンドロゲン脱毛症治療用に使用するという用途を想起することは,困難であったといえる。 (エ) 相違点③について検討するに,本件優先日当時の技術水準からすれば,前記のとおり,フィナステライドをアンドロゲン脱毛症の治療に用いようとする場合,当業者であれば,安全性の面から,経口剤ではなく,局所製剤を選択したというべきであるから,フィナステライドの経口投与量を検討する動機付けは,存在しなかったというべきであるし,仮に,フィナステライドの経口投与量を検討するとしても,フィナステライドを1mg以下の用量で用いることは,治療効果の面から阻害されたものと解される。また,引用例2ないし同5に示される1mg以下の用量をアンドロゲン脱毛症の治療に用いる投与量として採用する動機付けはなく,引用例1発明とこれらを組み合わせることは困難であったというべきである。 (オ) 本件明細書の発明の詳細な説明における実施例4及び同5の記載等によれば,本件発明(特に,本件訂正発明)は,本件優先日当時の技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果を奏するものであり,進歩性を有するものというべきである。 ウ争点2ウ(本件発明についての特許に記載要件違反の無効理由があるか)について(ア) 実施可能性要件違反の主張について本件優先日当時の周知技術等(①男性部分禿頭症を含むアンドロゲン脱毛症がアンドロゲン過剰作用の結果であること,5α-レダクターゼの作用によりTから変換されるDHTがこのアンドロゲン活性の主要メディエーターであること,それゆえ,5α-レダクターゼの作用を阻害してDHTの生成を抑制することに の結果であること,5α-レダクターゼの作用によりTから変換されるDHTがこのアンドロゲン活性の主要メディエーターであること,それゆえ,5α-レダクターゼの作用を阻害してDHTの生成を抑制することによりアンドロゲン過剰作用を緩和させることができること,②DHT濃度が5α-レダクターゼの作用を阻害する5α-レダクターゼ阻害剤の活性を測定するためのパラメータとして広く用いられていたこと〔引用例1ないし同5でも,5α-レダクターゼ阻害剤の活性を測定するためにDHTの濃度が測定されている。〕,③フィナステ ライドは,DHT濃度を減少させることによりアンドロゲン過剰症状の一つである良性前立腺過形成治療に有効であることが知られており,米国等では,良性前立腺過形成の治療薬として既に市販されていたこと)に照らせば,実施例5は,「数値データと同視すべき程度の客観的な記載」であるといえるし,実施例4及び同5を含む本件明細書の発明の詳細な説明は,5α-レダクターゼ2阻害剤0.05mg/日を投与した場合の具体的な試験結果を記載していなくても,0.05mg/日などの低用量についても,当業者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果が記載されているといえる。 以上より,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件発明を容易に実施することができる程度に記載したものというべきであって,本件発明についての特許は,特許法36条4項(ただし,平成6年法律第116号による改正前の規定)に違反してされたものではない。 (イ) サポート要件違反の主張について上記(ア)で述べたとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明の効果を実証するに足りる薬理試験結果が示されている。 また,本件発明の課題は,女性及び男性部分禿頭症を含む の主張について上記(ア)で述べたとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明の効果を実証するに足りる薬理試験結果が示されている。 また,本件発明の課題は,女性及び男性部分禿頭症を含むアンドロゲン脱毛症や他のアンドロゲン過剰症状の治療において,患者にできるだけ最低量の医薬化合物を投与して治療効力を維持することにある。そして,上記(ア)のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明では,5α-レダクターゼ2阻害剤0.05mg/日の用量は,5α-レダクターゼ2阻害剤0.2mg/日の用量と同じように作用し,同等の効果が得られるものとして認識されており,5α-レダクターゼ2阻害剤0.2mg/日がアンドロゲン脱毛症の主要メディエーターである頭皮組織におけるDHT含量を大幅に低下させるという実施例5記載の試験結果から,当業者であれば,5α-レダクターゼ2阻害剤0.05mg/日も同様に頭皮組織におけるDHT含量を大幅に低下させることができることを予測することができる。したがって,当業者は,発明の詳細な説明の記載から,5α-レダクターゼ2阻害剤0.05mg /日を投与することにより,できる限り少ない用量でアンドロゲン脱毛症の治療効力を維持するという本件発明の課題が解決できると認識することができる。 以上より,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明について,その課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとして記載されているから,本件発明は,発明の詳細な説明に記載されているというべきであり,本件発明についての特許は,特許法36条5項1号(ただし,平成6年法律第116号による改正前の規定)に違反してされたものではない。 (ウ) 発明の構成に欠くことができない事項の記載がないとの主張について本件明細書の発明の詳細な説明では,すべ だし,平成6年法律第116号による改正前の規定)に違反してされたものではない。 (ウ) 発明の構成に欠くことができない事項の記載がないとの主張について本件明細書の発明の詳細な説明では,すべての投与量について「mg/日」の単位が付されていることから,これらの記載と併せて読めば,特許請求の範囲の請求項1における「単位用量」が,1日当たり1回の投与量であることは明らかである。 したがって,本件発明についての特許は,特許法36条5項2号(ただし,平成6年法律第116号による改正前の規定)に違反してされたものではない。 (3) 争点3(本件訂正1は訂正要件を満たし,同訂正により無効理由が解消し,被告各製品が本件訂正発明の技術的範囲に属し,かつ,同訂正後も存続期間が延長された本件特許権の効力が被告による被告各製品の製造販売等に及ぶか)について【原告の主張】ア争点3ア(本件訂正1は訂正要件を満たすか)について本件訂正1は,本件特許の特許請求の範囲の請求項1に「単位用量として0.05~3mgの5α-レダクターゼ2阻害剤」とあるのを,「単位用量として0.05~1mgの5α-レダクターゼ2阻害剤」と訂正することを内容とするものであって,同訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とし,同訂正前の本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明に記載した事項の範囲内においてするものであり,他方,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないから,訂正要件を満たしている。 イ争点3イ(本件訂正1により無効理由が解消するか)について 前記(2)の【原告の主張】において述べたところによれば,仮に,本件発明についての特許について進歩性欠如の無効理由があるとしても,本件訂正1により解消したものといえる。 ウ争点3 前記(2)の【原告の主張】において述べたところによれば,仮に,本件発明についての特許について進歩性欠如の無効理由があるとしても,本件訂正1により解消したものといえる。 ウ争点3ウ(被告各製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか)について前記(1)の【原告の主張】のアにおいて述べたところによれば,被告各製品は,本件訂正発明の技術的範囲に属するといえる。 エ争点3エ(本件訂正1後も存続期間が延長された本件特許権の効力が被告による被告各製品の製造販売等に及ぶか)について前記(1)の【原告の主張】のイにおいて述べたところによれば,本件訂正後も,存続期間が延長された本件特許権の効力が被告による被告各製品の製造販売等に及ぶといえる。 【被告の主張】原告の主張は,否認し又は争う。 本件訂正1によっても,被告の主張に係る本件発明についての特許の無効理由が解消するものではない。 以上

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