【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 控訴代理人は、「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却 する
主 文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 控訴代理人は、「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却 する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控 訴代理人は、主文第一項同旨の判決を求めた。 当事者双方の主張は、その各代理人において、左記のとおり陳述したほか、原判 決事実欄の記載と同一であるから、ここにこれを引用する。 一、 控訴代理人の陳述 被控訴人は、昭和三四年一〇月ころほしいままに控訴会社の名義を使用して訴外 Aから金一五万円を借り受けた。そして控訴会社は、右Aから請求を受けたので、 やむを得ず被控訴人のために立て替えて右金員をAに返済した。仮に然らずとして も、被控訴人は、Aから右金員を控訴会社のために借用しながら、これを勝手に自 分の用途に費消し、その不法行為によつて控訴会社に右金額の損害を加えた。 次に控訴会社は、同年一〇月か一一月ころ被控訴人に金三万五〇〇〇円を貸し付 けた。 控訴会社は、上記のように被控訴人に対し合計金一八万五〇〇〇円の債権を有す るので、仮に被控訴人に対しその主張の本件退職金債務を負担しているとしても、 ここにその双方を対等額において相殺する意思表示をする。 二、 被控訴代理人の陳述 控訴人主張の右抗弁事実はすべて否認する。 そして仮に被控訴人が控訴人主張の債務を負担しているとしても、次の理由によ り相殺は許されない。すなわち、退職金とは、労働者が退職の時に通常の賃金以外 に使用者から支払を受けるものであつて、解雇予告手当以外のものをいう。わが国 において、沿革的には、退職金は「のれん分」の変形的な功労報償的性格と賃金後 払的性質と社会保償的機能とを有していた。しかしながら、現在では、一方におい て各種 て、解雇予告手当以外のものをいう。わが国 において、沿革的には、退職金は「のれん分」の変形的な功労報償的性格と賃金後 払的性質と社会保償的機能とを有していた。しかしながら、現在では、一方におい て各種の社会保障制度が発達すると共に、他方において退職金の金額が一般に勤続 年数に比例して決定されるようになり、しかも各企業において毎事業年度毎に一定 の金額を退職金の積立として積み立てるようになり、この積立金は固定資産の減価 消却と同じく経常費によつて支弁することが一般に承認されている。したがつて退 職金は賃金の後払的性格を有する。そのうち、少くとも労働協約、就業規則等によ つて使用者に支払義務のあることが明確化している退職金は労働基準法上の賃金と して同法第二四条の適用を受け労働者に直接その全額の支払をしなければならな い。したがつて労働者の退職金債権は使用者の労働者に対する債権をもつて一方的 に相殺することの許されないものである。 証拠の提出援用および書証の認否は、控訴代理人において、乙第二号証を提出 し、当審証人Bおよび同Cの各証言を援用し、被控訴代理人において、乙第二号証 に対し不知と述べたほか、原判決事実欄の記載と同一である。 理 由 本件に対する当裁判所の見解は、左記を附加するのほか、すべて原判決理由欄の 記載と同一であるから、ここにこれを引用する。 当審証人Bの証言のうち本件退職金協定が通謀虚偽の協定であるという控訴人の 主張に副う部分ならびに当審証人Cの証言のうち昭和三四年七月一四日以前に就職 した退職金の勤続年数の起算日を同月一五日とする約旨のもとに甲第一号証協定書 を作成したというような趣旨の部分は、いずれもにわかに信用することができな い。 次に甲第一号証によれば、本件退職金協定について控訴会社およびその労働組合 双方代表者の記 約旨のもとに甲第一号証協定書 を作成したというような趣旨の部分は、いずれもにわかに信用することができな い。 次に甲第一号証によれば、本件退職金協定について控訴会社およびその労働組合 双方代表者の記名押印した<要旨>書面が作成されたことを肯認し得るから、その協 定は、いうまでもなく、有効な労働協約である。そして本件</要旨>のように労働協 約等によつて明確化された支給条件にもとづき使用者が退職労働者に対して支払義 務を負担する退職金(または退職手当)は労働基準法所定の賃金にあたると解する のが相当である。したがつて同法第二四条第一項本文により、使用者はその貸金債 権、立替金債権、不法行為にもとづく損害賠償債権等を自働債権とする相殺をもつ て右の退職金債権者に対抗することができないといわなければならない。しかのみ ならず、控訴人主張の各債権の発生原因事実については、乙第二号証ならびに当審 証人Cおよび同Bの各証言のうち控訴人の主張に副う部分はにわかに措信し難く、 右の主張事実は証明なきに帰する。故に控訴人の相殺の抗弁は理由がない。 以上のとおりであるから、被控訴人の本訴請求は原判決の認容した範囲において 正当として認容し、その余は不当として棄却すべく、これと結論を同じくする原判 決は相当であつて、本件控訴は理由がない。それで控訴費用の負担につき民事訴訟 法第九五条第八九条を適用し、主文のとおり判決をする。 (裁判長裁判官 石谷三郎 裁判官 山口正夫 裁判官 吉田彰)
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