令和1(ワ)13477 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年6月24日 東京地方裁判所
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判決文本文45,670 文字)

令和4年6月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 令和元年(ワ)第13477号特許権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日令和4年4月22日 原告 X 同訴訟代理人弁護士 窪田英一郎 同訴訟復代理人弁護士 山田康太 同訴訟代理人弁護士 乾裕介 今井優仁 中岡起代子 本阿弥友子 鈴木佑一郎 堀内一成 同訴訟代理人弁理士 相原正 被告 株式会社SO-KEN 同訴訟代理人弁護士 森本純 中紀人 橋本芳則 安井祐一郎 小野隆大 藤田雄功 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙物件目録記載1の図柄表示媒体を製造し、販売し、販売の申出をし、又は販売のための展示をしてはならない。 2 被告は、別紙物件目録記載1の図柄表示媒体及びその半製品 求 1 被告は、別紙物件目録記載1の図柄表示媒体を製造し、販売し、販売の申出をし、又は販売のための展示をしてはならない。 2 被告は、別紙物件目録記載1の図柄表示媒体及びその半製品を廃棄せよ。 3 被告は、別紙物件目録記載2のメディアを製造し、販売し、販売の申出をし、又は販売のための展示をしてはならない。 4 被告は、別紙物件目録記載2のメディア及びその半製品を廃棄せよ。 5 被告は、原告に対し、192万3900円及びこれに対する令和元年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 仮執行宣言第2 事案の概要 本件は、発明の名称を「図柄表示媒体」とする特許(特許第6440319。 請求項の数3。以下、「本件特許」といい、本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。)の特許権者である原告が、被告が別紙物件目録記載1の図柄表示媒体(以下「被告製品1」という。)及び同記載2のメディア(以下「被告製品2」といい、被告製品1と併せて「被告各製品」という。)を使用することが本 件特許権の侵害に当たると主張して、被告に対し、被告各製品の製造等の差止め及びその廃棄を求めるとともに、不法行為に基づき、損害賠償金192万3900円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和元年6月8日(不法行為後の日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。)⑴ 当事者ア原告は、プロのマジシャンであり、様々なマジックの考案 び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。)⑴ 当事者ア原告は、プロのマジシャンであり、様々なマジックの考案や発明に従事し ている者である。 イ被告は、印刷物等の製造・販売等を業とする株式会社である。 ⑵ 本件特許ア原告は、以下の本件特許を有している(甲1。本件特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書等」という。)。 特許番号:特許第6440319号 発明の名称:図柄表示媒体出願日:平成27年12月17日登録日:平成30年11月30日イ本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載内容は、次のとおりである(以下、請求項1に記載された発明を「本件発明」という。)(甲2)。 「入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材と、前記再帰反射材の表面に印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層と、を備えることを特徴とする図柄表示媒体。」ウ構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると、次のとおりとなる(以下、分説した構 成要件をその符号に従い「構成要件A」ないし「構成要件C」という。)。 A 入射光をそのまま光源方向再帰反射する黒色の再帰反射材と、B 前記再帰反射材の表面に印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層と、C を備えることを特徴とする図柄表示媒体。 エ本件発明の実施品本件発明の実施品の一例は、次のとおりであり、通常光下においては【図A】のとおり視認されるのに対し、フラッシュ光下では【図B】のとおり、フルカラーで図柄が視認されるという効果が生じる(弁論 実施品本件発明の実施品の一例は、次のとおりであり、通常光下においては【図A】のとおり視認されるのに対し、フラッシュ光下では【図B】のとおり、フルカラーで図柄が視認されるという効果が生じる(弁論の全趣旨)。 【図A】 【図B】⑶ 被告の行為被告は、遅くとも平成30年4月19日から、被告製品1を製造し、販売し、販売の申出をし、販売のための展示をしている(なお、被告による被告製品2の製造・販売等の有無については、後述のとおり、当事者間に争いがある。)。 ⑷ 被告製品1の内容等(甲3~6、12)ア被告製品1は、黒色の再帰反射材の上に、①透光性の印刷層(以下「透光性印刷層」ということもある。)と②白色の非透光性の印刷層の上に透光性の印刷層を施したもの(以下「非透光性印刷層」ともいう。)がストライプ状に交互に配置された構成を有している。 なお、本件発明と被告製品1の構成を対比して図示すると、大要、次に掲げる図のようになる。 【本件発明】 【被告製品1】 印刷層(図柄) 透光性透光性透光性透光性透光性透光性 非透光(白)非透光(白)黒色再帰反射材 黒色再帰反射材透光性印刷層非透光性印刷層 イ上記構成により、被告製品1は、通常光下では、明度の高い非透光性印刷層が視認される一方で、透光性印刷層は完全に視認されないのに対し、再帰反射時には、再帰反射光により、透光性印刷層の方が非透光性印刷層よりも明度が高くなるため、透光性印刷層の図柄が視認されるのに対し、非透光性印刷層の図柄は視認されな い。そのため、被告製品1は、通常光下と再帰反射時とで異なる図 印刷層の方が非透光性印刷層よりも明度が高くなるため、透光性印刷層の図柄が視認されるのに対し、非透光性印刷層の図柄は視認されな い。そのため、被告製品1は、通常光下と再帰反射時とで異なる図柄が視認されるというギミックを生み出すこと ができる。 ⑸ 先行文献本件特許出願の出願日(平成27年12月17日)より前に、以下の公刊物が存在した。 ア平成19年11月頃から平成20年5月頃までの間にFLEXcon社 により製造・頒布されていた、「REFLECTAmark」という名称の製品についてのカタログ(乙A4。以下、当該文献を「乙A4文献」といい、乙A4文献に記載された発明を「乙A4発明」という。)イ発明の名称を「光再帰性反射シート」とする公開特許公報(特開2000-321414、公開日平成12年11月24日。乙A8。以下「乙A8公 報」といい、同公報に記載された発明を「乙A8発明」という。)ウ発明の名称を「ホログラフィーおよび再帰反射特性を備えた物品」とする公表特許公報(特表2000-506623、公表日平成12年5月30日。 乙A9。以下「乙A9公報」といい、同公報に記載された発明を「乙A9発明」という。) エ発明の名称を「警告用吹流し及びその製造方法」とする公開特許公報(特 開2012-242608、公開日平成24年12月10日。乙A21。以下「乙A21公報」といい、同公報に記載された発明を「乙A21発明」という。)⑹ 無効審判(甲23、顕著な事実)ア被告は、令和元年9月24日、本件発明について特許無効審判(無効20 19-800072。以下「別件無効審判」という。)を請求した。 イ特許庁は、別件無効審判につき、株式会社 ア被告は、令和元年9月24日、本件発明について特許無効審判(無効20 19-800072。以下「別件無効審判」という。)を請求した。 イ特許庁は、別件無効審判につき、株式会社広仁社(以下「広仁社」という。)の代表取締役であるW(以下「W」という。)の証人尋問を経た上で、令和3年5月27日、別件無効審判について、本件発明に無効理由は認められないとして、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「別件審 決」という。)をした。 2 争点⑴ 被告は、被告製品2を製造・販売等しているか(争点1)⑵ 被告製品1は「透光性の印刷層」(構成要件B)を有するか(争点2)⑶ 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点 3)ア公然実施による新規性の欠如(争点3-1)イ乙A4発明に基づく進歩性の欠如(争点3-2)⑷ 原告の損害額(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告は、被告製品2を製造・販売等しているか)について(原告の主張)被告は、遅くとも平成30年4月19日から現在に至るまで、被告製品2のメディアにつき、製造、販売、販売の申出及び販売のための展示(以下、併せて「製造・販売等」という。)をしている(甲4、9)。 (被告の主張) メディアとは、フラッシュプリントを行うための印刷媒体を意味する用語であるところ、被告は、その製造・販売等は行っていない。 2 争点2(被告製品1は「透光性の印刷層」(構成要件B)を有するか。)(原告の主張)⑴ 被告製品1は、「透光性を有し、かつ、再帰反射材の直上に印刷により形成 された印刷層」を備えるものであるから、「透光性の印刷層」 の印刷層」(構成要件B)を有するか。)(原告の主張)⑴ 被告製品1は、「透光性を有し、かつ、再帰反射材の直上に印刷により形成 された印刷層」を備えるものであるから、「透光性の印刷層」(構成要件B)を有する。 ⑵ 「透光性の印刷層」は通常光下で視認できないものである必要はないことこれに対し、被告は、「透光性の印刷層」につき、「通常光下では視認できないもの」である必要があると主張するが、そのような限定解釈は、次のとお り、理由がない。 ア本件明細書等によれば、本件発明に係る図柄表示媒体は、「通常の照明下では再帰反射光が極少量である」(段落【0024】)という性質と、「黒色の再帰反射シートであれば、印刷層の図柄は見難い」(段落【0040】)という性質とを利用し、透光性の印刷層を設けることにより、「例えば、照 明の暗い室内で図柄表示媒体を用いる場合には、減光シートが無くても印刷層の図柄はほとんど見えない」(段落【0040】)のに対し、「相対的に強力な光源で照らすと共に光源と略同じ方向から観察すると、印刷層12の図柄を視認することができる」(段落【0013】)という効果を実現するものである。以上のような本件明細書等の記載を前提としても、「透光性の 印刷層」が通常光下では視認できないものである必要性はない。 むしろ、本件明細書等は、透光性の印刷層を透過する光量を減らし、図柄をより視認し難いようにする減光シートを設ける構成も開示しているが、このような構成は、明るい照明の下では、透光性の印刷層に設けられた図柄が視認できることを前提とするものである。 イ 「透光性の印刷層」につき限定解釈すべきであるとの被告の主張は、クレ ームの文言に基づくものでもなければ、本件明細書等 られた図柄が視認できることを前提とするものである。 イ 「透光性の印刷層」につき限定解釈すべきであるとの被告の主張は、クレ ームの文言に基づくものでもなければ、本件明細書等の【発明を実施するための形態】における記載に基づくものでもなく、何ら理由がない。 非透光性の印刷層の存在は、構成要件Bの充足性を妨げないことまた、被告は、被告製品が透光性の印刷層に加え、非透光性の印刷層を有しており、本件発明とは作用効果が異なるため、本件発明の技術的範囲に属さず、 「透光性の印刷層」(構成要件B)を備えない旨主張する。 しかしながら、本件発明は、「入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材」(構成要件A)と「前記再帰反射材の表面に印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層」(構成要件B)とを備えた図柄表示媒体であるところ、黒色の再帰反射材の表面上に透光性の印刷層が存在する限り、構 成要件A及びBは充足するのであって、黒色の再帰反射材の全面にわたって透光性の印刷層が存在している必要はない。 そして、被告製品1には、非透光性の印刷層という構成が追加されてはいるものの、構成要件A及びBをいずれも備えており、かつ、本件発明の作用効果も備えている以上、本件発明の技術的範囲に属するものといわざるを得ない。 (被告の主張)以下のとおり、被告製品1は、「透光性の印刷層」(構成要件B)を備えておらず、本件発明の技術的範囲に属さない。 ⑴ 「透光性の印刷層」は通常光下では視認できないものである必要があることア本件明細書等の記載によれば、本件発明は、黒色の再帰反射材上に透光性 の印刷層を備えるという構成を採用することにより、通常の照明下では図柄を視認することがで ないものである必要があることア本件明細書等の記載によれば、本件発明は、黒色の再帰反射材上に透光性 の印刷層を備えるという構成を採用することにより、通常の照明下では図柄を視認することができないが、フラッシュ光など相対的に強い光を照射すると、光源方向から図柄を視認することが可能となるという点に技術的意義が認められるものである(段落【0006】、【0007】、【0008】、【0012】、【0013】、【0024】、【0025】、【0027】、 【0040】)。 上記のような本件発明の技術的意義に照らせば、構成要件Bにいう「透光性の印刷層」とは、「通常光下では視認できない透光性の印刷層」と限定解釈するのが相当である。 なお、本件明細書等には、「図柄表示媒体1においては、通常の照明下では再帰反射光が極少量であるため、図柄表示媒体1を表側から見た観者は、 印刷層12の図柄をほとんど視認することができない。」との記載(段落【0024】)や、「見難い」、「ほとんど見えない」という記載(段落【0040】)が存在するところ、これらの記載からは、通常光下でわずかに図柄が視認できるものも、本件特許発明1の技術的範囲に含まれるかのようにも読める。しかしながら、「通常光下で図柄が視認できない」ことにこそ、本 件発明の技術的意義があることに鑑みれば、これらの記載は「僅かには図柄が視認できる」という趣旨ではなく、「人間の知覚では実質的に視認することができない」との趣旨と解するのが相当である。 そして、被告製品1においては、通常光下でも透光性の印刷層による図柄を視認することができるから、「透光性の印刷層」(構成要件B)を有する ものではない。 イこれに対し、原告は、本件明細書等の段 告製品1においては、通常光下でも透光性の印刷層による図柄を視認することができるから、「透光性の印刷層」(構成要件B)を有する ものではない。 イこれに対し、原告は、本件明細書等の段落【0024】や【0040】の記載を根拠として、「通常の照明下では視認し難い」図柄であれば足り、「視通常光下では視認できない」図柄である必要はない旨主張するが、本件発明が「普段は視認できない図柄等を所定の条件下において視認することのでき る図柄表示媒体」(段落【0002】)であることに鑑みれば、視認し難くとも、通常光下で視認できてしまうのであれば課題解決にはならない以上、そのような構成を本件発明が含むことなどあり得ない。 また、本件明細書等においては、「視認し難くなる」(段落【0023】)と「ほとんど視認することができない」(段落【0024】)等の記載を除 き、全て「視認できない」という表現が用いられており、「視認できない」 と「視認し難い」は有意に使い分けられてはいない。 ⑵ 被告製品1は、非透光性の印刷層を備えており、作用効果が異なることまた、被告製品1は、①透光性の印刷層と、②白色の非透光性インクを印刷した層の上に重ねて透光性の図柄を印刷した層(非透光性印刷層)とを有し、①及び②を交互にストライプ状に配置した構成を採用したものである。 そして、被告製品1は、上記構成を備えることにより、通常光下では明度の高い非透光性印刷層が視認されるものの、透光性印刷層は完全に視認されないという効果が得られるのに対し、再帰反射時には、再帰反射光により、透光性印刷層(上記①)の方の明度が相対的に高くなるため、その図柄が視認される反面、非透光性印刷層(上記②)の図柄は視認されなくなるという効果(ギミ に対し、再帰反射時には、再帰反射光により、透光性印刷層(上記①)の方の明度が相対的に高くなるため、その図柄が視認される反面、非透光性印刷層(上記②)の図柄は視認されなくなるという効果(ギミ ック)を生み出すものである。そのため、被告製品1は、①通常光下で視認性のある黒色再帰反射材の上に印刷された透光性印刷層と、非透光性印刷層の双方を備えること、②これらを交互にストライプ状に配する構成を備えることを必須の構成としたものであって、これらの特徴的な構成は、一体不可分のものとして捉えるのが相当である。 以上によれば、被告製品1は、本件発明とは構成・作用機序を全く異にするものであるから、本件発明の技術的範囲に属するものではない。 3 争点3(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について⑴ 争点3-1(公然実施による新規性の欠如) (被告の主張)ア危機管理産業展2009における公然実施(以下「公然実施事実1」という。)について 以下のとおり、広仁社は、平成21年10月21日から23日まで東京ビッグサイトで開催された危機管理産業展2009において、「ブラックレフピカドッグタグキーホルダー」という商品(軍隊で用いられる兵士の識別票であるドッグタグに図柄1を印刷したもの。以下、「広 仁社商品1」という。)及び「ブラックレフピカドッグタグボールチェーンネックレス」という商品(ドッグタグに図柄2を印刷したもの。以下、「広仁社商品2」という。なお、広仁社商品1はキーホルダーであるのに対し、広仁社商品2はネックレスであるものの、本体部分であ るドッグタグ部分の構成は同一である。)を出品し、もって、譲渡のための展示をした。 そして、広仁社商品1 1はキーホルダーであるのに対し、広仁社商品2はネックレスであるものの、本体部分であ るドッグタグ部分の構成は同一である。)を出品し、もって、譲渡のための展示をした。 そして、広仁社商品1及び2は、いずれも、黒色の再帰反射材の上に、透光性の印刷層により、それぞれ、図柄1又は2を設けたものであり、本件発明と同一の構成を備え たものであるから、本件特許は、特許法29条1項2号により無効である。 広仁社商品1の構成以下のとおり、広仁社商品1は、「入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材と、前記再帰反射材の表面に印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層と、を備えることを特徴とする図柄表示媒 体」という、本件発明と同一の構成を備えたものである。 a 広仁社においては、広仁社商品2が現存しているところ、同商品は、明度の低い図柄の背後に黒色が配色されているため、通常光下においては、全体的に黒っぽく見え、図柄を視認することが困難であるが、光を照射すると、通常光下で黒く見えていた部分が白色に変化するため、図 柄を視認することが可能となる。このような変化からすれば、これらが【図柄1】【図柄2】 黒色の再帰反射材の上に、透光性のインクで図柄を印刷したものであることは明らかである。 また、被告において、広仁社商品2の側面部分をデジタル顕微鏡で観察したところ、赤色で着色された背景部分でもガラスビーズを確認することができたが、同部分が非透光性印刷によるものであれば、ガラスビ ーズは視認されないことなどからすれば、広仁社商品2が、黒色再帰反射材に透光性の図柄を印刷したものであることは明らかである(乙A41)。 b 広仁社は、平成20年4月23日、「レフピカドッグタグ は視認されないことなどからすれば、広仁社商品2が、黒色再帰反射材に透光性の図柄を印刷したものであることは明らかである(乙A41)。 b 広仁社は、平成20年4月23日、「レフピカドッグタグ-黒」というファイル名の出力用データを作成しているところ(乙A17〔資料2 0〕)、「レフピカ」という登録商標は、再帰反射材に文字を印刷した広告表示媒体を指すものであるから、「レフピカドッグタグ-黒」というファイル名からは、「黒色の再帰反射材(レフピカ)を使用したドッグタグの出力用データ」であることが合理的に理解できる。 そして、同データには、次に掲げる図のとおり、図柄2とともに、図 柄1のデータが含まれていることからすれば(乙A17〔資料19〕)、広仁社商品2と同じ時期に、同じ方法で、広仁社商品1も制作されていたと考えるのが合理的である。 【図】 c 広仁社は、株式会社エフケイワークス(以下「エフケイワークス」という。)から依頼を受け、広仁社商品1の図柄を図柄1から図柄1’に変更したサンプル品(以下「広仁社商品1’」という。)を作成した。そして、現存する広仁社商品1’をフラッシュ照射すると、「since 1948」の部分は黒色であるのに対し、 白い背景に浮かび上がった図柄部分は黒色ではなく、黄色であることからすれば、広仁社商品1’には、非透光性の印刷層ではなく、透光性の印刷層が設けられていることは明らかである。 そして、広仁社商品1と広仁社商品1’は、近接 した時期に、いずれも黒色のキーホルダーとして制作されており、図柄についても、鷲柄と文字部分から構成されているという点において共通していることからすれば、広仁社商品1が実在し、かつ、黒色の再帰反射材上に透光性インクで図 色のキーホルダーとして制作されており、図柄についても、鷲柄と文字部分から構成されているという点において共通していることからすれば、広仁社商品1が実在し、かつ、黒色の再帰反射材上に透光性インクで図柄を印刷した構成を有するものであったことが推認できる。 d 被告において図柄1のデータを色分析したところ、①背景部分はシアン100%、イエロー50%、②鷲の図柄の外周部分はイエロー20%、ブラック15%、③鷲の図柄の内部はイエロー100%、ブラック85%からなるフルカラーの図柄であることが明らかとなったが(乙A24)、このようなフルカラーは、透光性の印刷層の重ね合わせによる減 法混色により表現されるものである(乙A18~20)。 特許出願前に公然実施されていること広仁社の代表取締役であるW作成に係る報告書等(乙A1の2、乙A17。以下「W報告書」という。)には、広仁社が広仁社商品1及び2を危機管理産業展2009に出品・展示した旨記載されているが、同記載内容 は、以下のとおり、客観的な事実や証拠により裏付けられている。 【図柄1’】 また、Wは、無効審判事件の尋問においても、公然実施の事実について証言しているが、ブラックレフピカの開発経緯や危機管理産業展2009への出展等、自らが経験した事実についての証言として具体性があるから、高い信用性が認められる。 a 広仁社が危機管理産業展2009に出店したブースを撮影した写真 (乙A1-2〔資料4及び5〕、乙A1-3。以下「ブースの写真」という。)には、通常光下では視認できないものの、フラッシュ光下では図柄1が視認できる鷲柄の商品が写っているところ、広仁社商品1が出品されていたことは明らかである。(乙A1-2〔資料1、2、4及び という。)には、通常光下では視認できないものの、フラッシュ光下では図柄1が視認できる鷲柄の商品が写っているところ、広仁社商品1が出品されていたことは明らかである。(乙A1-2〔資料1、2、4及び5〕、乙A1-3)。 そして、ブースの写真には写っていないものの、前記bのとおり、同時期に同じ方法で制作された広仁社商品2についても、同時に同産業展に出品されていたと考えるのが合理的である。広仁社は、来場者に対してサンプル品を配布していたところ、写真撮影時に、たまたま広仁社商品2が展示されていなかったにすぎない。 b 広仁社は、平成16年10月15日、紀和化学工業株式会社(以下「紀和化学」という。)から、黒色の再帰反射材である「キワライトフリートマーキング ♯17093 ブラック」の納品を受けたほか、平成20年4月22日、東高金商株式会社から、ドッグタグの材料である「ドッグタグプレート」の納品を受けている。 (乙A1-2回答書の資料3、 9及び10)これらの事実は、広仁社が、平成20年頃、広仁社商品1及び2の製造に必要な全ての材料を入手していたことを示すものであり、上記aの事実を裏付けるものである。なお、納入された黒色再帰反射材は、全幅1.24m×全長45.7mという大きさであることからすれば、購入 から約3年半後に全部使用していなかったとしても、何ら不自然ではな い。 c 財団法人東京消防協会が作成・頒布した「ファイヤーグッズ総合カタログ2009~2010」(乙A3。以下「消防協会カタログ」という。)には、片面が広仁社商品と同一の図柄の商品が掲載されている。同商品は、白色の再帰反射材の上に透光性の印刷層を施したものであり、黒色 の再帰反射材を用いたものではな 「消防協会カタログ」という。)には、片面が広仁社商品と同一の図柄の商品が掲載されている。同商品は、白色の再帰反射材の上に透光性の印刷層を施したものであり、黒色 の再帰反射材を用いたものではないものの、広仁社商品1及び2が存在し、出品・販売されていた事実を裏付けるものである。 d 広仁社商品1及び2は、通常光下とフラッシュ光下とで見え方が異なる点に訴求力がある以上、広仁社は、危機管理産業展2009の来場者に対し、その見え方の違いを積極的に示していた。その点について明示 的に言及した案内文や看板、パンフレットが存在しないという原告の主張は、形式論にすぎない。 また、危機管理産業展2009では、再帰反射材のメーカーや卸売業者が来場していたところ、これらの来場者は、逐一説明しなくとも、黒色の再帰反射材に透光性印刷を施すという広仁社商品1のシンプルな 構成を容易に理解することができる。広仁社のブースには、「フルカラー再帰反射と蓄光の専門(株)広仁社」と大きく表示されているところ(乙A1の2〔資料4〕)、同表示を見ることによっても、来場者は広仁社商品1の構成を十分に理解できるはずである。 したがって、特許出願前に公然実施されたということができる。 イ広仁社の販売による公然実施(以下「公然実施事実2」という。)について次のような事実を総合すれば、広仁社が平成23年10月19日から21日までの間に、エフケイワークスに対し、「ブラックレフピカドッグタグキーホルダー」及び「ブラックレフピカドッグタグボールチェーンネッ クレス」(ドッグタグの表面に、図柄3のうちのいずれかの図柄を印刷した もの。以下、併せて「広仁社商品3」という。)を販売したことや、広仁社商品3は、本件発 グボールチェーンネッ クレス」(ドッグタグの表面に、図柄3のうちのいずれかの図柄を印刷した もの。以下、併せて「広仁社商品3」という。)を販売したことや、広仁社商品3は、本件発明と同一の構成であることは明らかである。 【図柄3】 広仁社商品3の構成以下のとおり、広仁社商品3も、広仁社商品1及び2と同様に、本件発 明と同一の構成を備えたものである。 a 広仁社は、平成23年7月11日、ファイル名が「110702FKWドッグタグ_ブラックレフピカ出力.ai」であり、「変更日」が「2011年7月11日月曜日18:14」である、図柄3の出力用データを作成していた(乙A17の資料23、24)。 前記のとおり、本件発明と同一の構成であることが現物により確認されている広仁社商品2に印刷された図柄2と同様のファイル名が付されていることからすれば、広仁社商品3についても、黒色の再帰反射材に溶剤カラーインクで透光性印刷を施した商品であると考えるのが自然である。 b 広仁社が、平成16年10月15日に紀和化学から、黒色再帰反射材である「キワライトフリートマーキング♯17093ブラック」を購入していることや(乙A1の2〔資料9及び10〕、乙A5)、エフケイワークスが平成23年10月21日に、図柄3の表示があるドッグタグを実際に展示・販売していたことも(乙A17〔資料25・26〕)、 上記aの事実を裏付けるものである。 c 広仁社商品3は、平成23年7月28日に名城大学で開催された発光 システム研究会においても展示されていた。そして、展示されていた状態の広仁社商品3につき、通常光下で撮影した写真(乙A29)とフラッシュ光下で撮影した写真(乙A3 城大学で開催された発光 システム研究会においても展示されていた。そして、展示されていた状態の広仁社商品3につき、通常光下で撮影した写真(乙A29)とフラッシュ光下で撮影した写真(乙A30)とを比較すると、図柄の見え方が異なることが確認できることからすれば、広仁社商品3は本件発明と同一の構成であると考えられる。 特許出願前に公然実施されていることa 広仁社は、「キーホルダー、ボールチェーンネックレスのいずれも、エフケイワークスに販売した」旨回答しているところ(乙A1-2)、その内容は、以下のとおり、客観的な事実や証拠により裏付けられている。 なお、原告は、本件特許が無効になれば広仁社が本件発明に係る図柄表示媒体を使用できることになるという点において、本件特許の有効性に利害関係を有しているから、広仁社の報告書は信用できない旨主張するが、その程度の抽象的な利害関係の存在をもって証言の信用性が否定されるのであれば、およそ公然実施を理由とする新規性欠如の立証は不 可能となってしまう。 b 納品書や請求書の記載からも、広仁社が、①平成23年10月19日から21日までの間に、エフケイワークスに対し、「ブラックレフピカドッグタグキーホルダー」及び「ブラックレフピカドッグタグボールチェーンネックレス」を納入したこと、②同年11月30日に、同 社に対し、その代金を請求したこと、③同年12月28日に、同社から代金を受領したことが明らかである。そして、納品書の件名には、「2011年10月19日~21日危機管理産業展ドッグタグ販売分」と記載されている(乙A1-2〔資料6〕)。 c 危機管理産業展2011におけるエフケイワークスのブースを撮影 した写真には(乙A 10月19日~21日危機管理産業展ドッグタグ販売分」と記載されている(乙A1-2〔資料6〕)。 c 危機管理産業展2011におけるエフケイワークスのブースを撮影 した写真には(乙A17〔資料25・26〕)、広仁社商品3が展示さ れている様子が写っている。なお、同写真それ自体からは、ブースが危機管理産業展2011のものであることを直接確認することはできないものの、撮影年月日は平成23年10月21日であり、危機管理産業展2011の開催時期と一致する。 d 図柄3に係るデータは、プロパティ上、作成日が平成22年2月22 日、変更日が平成23年7月11日とされており、危機管理産業展2011(平成23年10月19日から同月21日まで開催)に近接した時点で作成されていたことが確認できる(乙A17〔資料23、24〕)。 (原告の主張)被告の主張する公然実施事実は、いずれも認められない。 ア公然実施事実1について 広仁社商品1の構成以下のとおり、広仁社商品1は、そもそも本件発明の実施品には当たらない。 a 広仁社商品1は、通常光下で黒色に見える面をフラッシュで照射する と白い背景に黒い模様が浮かび上がって見えるものである。仮に広仁社商品1に再帰反射材が用いられているとすると、フラッシュ光下で白色に見える部分は、再帰反射した光がそのまま出射されて視認されていると考えられるから、そもそも印刷層は形成されていない。他方で、フラッシュ光下で黒色に見える部分については、黒色の非透光性の印刷層が 施されたものである。 すなわち、広仁社商品1は、再帰反射材の上に黒色の非透光性の印刷層を設けた構成を有するものであり、少なくとも「透光性の印刷層」を有してい 非透光性の印刷層が 施されたものである。 すなわち、広仁社商品1は、再帰反射材の上に黒色の非透光性の印刷層を設けた構成を有するものであり、少なくとも「透光性の印刷層」を有していない点において、本件発明とは相違する。 これに対し、被告は、図柄部分は黄色又は金色である旨主張するが、 実際に図柄を確認する限り、黄色であるなどということは到底できない。 「since 1946」の部分と色合いが異なるのは、単に、黒色の濃さが異なるためにすぎない。 b 仮に、広仁社商品1の印刷層の図柄が透光性であったならば、当該印刷層は「視認し難い」ものとなるはずであるのに対し、実際には、「全く視認できない」状態となっている。これは、非透光性の黒色の印刷層 が形成されているからにほかならない。 c 被告の主張する配色割合に基づき、画像作成ソフトを使用して図柄1を再現し、黒色の再帰反射材の上に印刷してみたところ、乙A1の2〔資料5〕の写真に写った商品とは見え方が異なることが確認された(甲15)。 広仁社商品2の構成について以下のとおり、広仁社商品2も本件発明の実施品には当たらない。 a 広仁社商品2の断面写真(乙A2)には、「溶剤カラーインク:赤色」、「ガラスビーズ」、「接着剤」及び「アルミプレート」といった記載が存在するだけであり、それらについての分析結果等は何ら記載されてい ないことからすれば、乙A2は、広仁社商品2が「再帰反射税の表面に印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層」を備えていることを証明するものではない。 b 被告は、「レフピカドッグタグ-黒」というファイル名の出力用データに図柄2が保存されていることを根拠に、黒色の再帰反射材 からなる透光性の印刷層」を備えていることを証明するものではない。 b 被告は、「レフピカドッグタグ-黒」というファイル名の出力用データに図柄2が保存されていることを根拠に、黒色の再帰反射材を使用し たドッグタグの出力用データであることが理解できる旨主張するが、上記のようなデータ名からは、再帰反射材が「黒」であることまでは読み取れない。まして、黒色の再帰反射材の上に、透光性の図柄2が印刷された商品が製造されていたことを何ら裏付けるものではない。 特許出願前に公然実施されていたとはいえないこと 以下のとおり、広仁社商品2が危機管理産業展2009に出品されてい た事実は認められない。 a 被告が証拠として提出するブースの写真(乙A1の2〔資料4、5〕)によっても、「通常光下で黒色に見える面をフラッシュ照射すると、赤色の背景に白色の犬の写真が浮かび上がるという製品」を確認することはできない。したがって、広仁社商品2が本件特許出願日前に公然に実 施されたという被告の主張は、客観的な裏付けを欠くものである。 また、ブースの写真を拡大しても、「通常光下では視認できないが、フラッシュ光下では視認できる図柄2を表示した商品」が存在していたことも確認できない。したがって、広仁社商品1についても、公然実施されていたとは認められない。 【資料4拡大図】 【資料5拡大図】b 被告は、平成20年4月23日付けで作成されたデータに、図柄1及び2の双方が保存されていることを根拠として、現存する広仁社商品2と同じ頃、同じ方法で広仁社商品1が制作されていたことが裏付けられる旨主張するが、プロパティの「作成日」や「変更日」は事後的に変更 可能である以上、被 ることを根拠として、現存する広仁社商品2と同じ頃、同じ方法で広仁社商品1が制作されていたことが裏付けられる旨主張するが、プロパティの「作成日」や「変更日」は事後的に変更 可能である以上、被告の指摘するファイルが本件特許の出願日前に存在していたことは、客観的に明らかであるとはいえない。また、仮にデータが平成20年当時に作成されていたとしても、それを印刷して製品が 製造されたのが平成20年であるとは推認できない。 さらに、「レフピカドッグタグ-黒」というファイル名からは、何が黒であるかは明らかではなく、同ファイル名を根拠として、黒色の再帰反射材に印刷するための図柄であるということはできない。しかも、「レフピカ」という商標は、危機管理産業展2009よりも6年後の平成2 7年2月16日に出願されたものである。 そもそも、広仁社商品2が本件特許出願前に公然実施されていた事実自体、立証されていないから、被告の前記主張は、前提を欠くものである。 c 被告が広仁社商品1の材料として購入した旨主張する黒色の再帰反 射材及びドッグタグプレートは、それぞれ全く別の時期に購入されたものである上、いずれも、他の製品にも使用可能な部材であることからすれば、両者が本件特許の実施品の製造のために用いられたことの根拠にはならない。 d ブースの写真(乙A1の2〔資料4、5〕)を検討しても、本展示会 の参加者に対し、広仁社商品につき、通常光下とフラッシュ光下では見え方が異なることを説明するような態様での展示や、広仁社商品の構造の詳細や断面図等を説明するようなパンフレット等が提示されていたものではない以上、参加者において、広仁社商品の構造を理解することはできなかったと考えらえる。そのため、被告の主張 や、広仁社商品の構造の詳細や断面図等を説明するようなパンフレット等が提示されていたものではない以上、参加者において、広仁社商品の構造を理解することはできなかったと考えらえる。そのため、被告の主張する公然実施の事 実をもって、本件発明が公然知られる状態で実施されたものとはいえない。 イ公然実施事実2について 広仁社商品3の構成についてa 被告は、図柄3のデータが保存されたファイルの名称が「11070 2FKWドッグタグ_ブラックレフピカ.ai」というものであり、図 柄2のデータが保存されたファイルと同様のファイル名であることを根拠として、広仁社商品3が広仁社商品2と同様の構成を有するものである旨主張するが、ファイル名やプロパティ上の作成時期から製品の構成を推測することができないことは、前記のとおりである。 なお、同ファイルの保管場所には、「広仁社のクライアント」、「ブ ラック反射の裁判関連」との記載が存在するところ、本件訴訟が提起されたのは、令和元年5月27日である。 b 黒色の再帰反射材は他の製品にも使用可能な材料であるため、黒色の再帰反射材を仕入れていたからといって、公然実施品の材料を仕入れていたということにはならない。 c 平成23年7月28日に名城大学において展示されていた商品の構成は不明であるから、広仁社商品3が本件発明の実施品であることの裏付けとはならない。 特許出願前に公然実施されていたとはいえないことa 広仁社が平成23年10月21日にエフケイワークスに販売した製 品が広仁社商品3であることを裏付ける証拠は、広仁社の回答書(乙A1の2)以外には存在しない。そして、広仁社は「レフピカ」という商標で白色の再帰反射材に文字を印 エフケイワークスに販売した製 品が広仁社商品3であることを裏付ける証拠は、広仁社の回答書(乙A1の2)以外には存在しない。そして、広仁社は「レフピカ」という商標で白色の再帰反射材に文字を印刷した看板やポスター等を製造・販売している企業であるところ、仮に本件特許が無効になれば、本件発明に係る図柄表示媒体を「レフピカ」製品のラインナップの一つとして製造・ 販売することができるようになるという点において、本件特許の有効性に利害関係を有するということができるから、広仁社による回答書の記載内容には信用性がない。 b 納品書や請求書(乙A1-2〔資料6ないし8〕)の記載内容自体は争わないが、これらの記載からは、せいぜい危機管理産業展2011に おいてドッグタグが販売された事実が推認されるにすぎず、当該ドッグ タグの図柄が図柄3であることや、本件発明と同じ構成であることまでは、推認されるものではない。 c 乙A17〔資料25・26〕の写真が危機管理産業展2011におけるエフケイワークスの展示を撮影したものであるかどうかは明らかではない。 また、エフケイワークスが平成23年10月21日に展示・販売していたとされるドッグタグの構成が本件発明と同じであるとはいえない。 なお、乙A17の資料23ないし25に関しては、少なくとも、背景が白色・絵柄が黒色の図柄(資料23の右側8列に記載された図柄群)については、当該黒色の図柄部分は黒色の非透光性の印刷層を設けたも のにすぎず、透光性の印刷層を有しない以上、本件発明の実施品とはなり得ない。 d 原告は、危機管理産業展2011は平成23年10月19日から21日まで開催されたところ、図柄3のデータを保存したファイルが平成23年7月11日という近 発明の実施品とはなり得ない。 d 原告は、危機管理産業展2011は平成23年10月19日から21日まで開催されたところ、図柄3のデータを保存したファイルが平成23年7月11日という近接した時点で作成されている旨主張するが、そ もそも当該ファイルが本件特許出願時に存在していたかどうかは明らかではない。 争点3-2(乙A4発明に基づく進歩性欠如)について(被告の主張)仮に本件発明が新規性を有するとしても、本件発明は、乙A4発明及び文 献に示されるような周知技術に基づいて、出願時に当業者にとって容易に想到し得たことであるから、本件発明は進歩性を欠き、特許無効審判により無効にされるべきものである。 ア乙A4発明(引用発明) 乙A4カタログには、「溶剤インクジェット印刷に対応した黒色の再 帰反射フィルム」が紹介されているところ、「溶剤インクジェット印 刷」とは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの透光性のインクを微滴化して塗り重ねることによりフルカラーを表現する印刷手法のことをいう。そのため、乙A4カタログには、「溶剤インクジェット印刷を施すことにより透光性の印刷層を形成することができる黒色の再帰反射フィルム」という発明が開示されているということができる。 これに対し、原告は、乙A4発明は、「Reflective」であり、「反射性の」という意味であるため、再帰反射材であることが表示されているとはいえない旨主張するが、「反射性」は「再帰反射性」を包含する概念であるから、「再帰反射性」と訳すことも可能である。 そして、乙A4カタログその他のカタログ(乙A5、6)は、いずれ も商品見本が添付されているところ、これら 射性」を包含する概念であるから、「再帰反射性」と訳すことも可能である。 そして、乙A4カタログその他のカタログ(乙A5、6)は、いずれ も商品見本が添付されているところ、これらが再帰反射材であることは、フラッシュ照射を行えば当業者において自ずと理解可能である。 また、原告は、乙A4カタログには、図柄を視認できるようにするという技術思想については全く示唆されていない旨主張するが、各種広告が文字のみで構成されている例の方が少ないのであって、図柄と文字を 区別することは不合理である。 さらに、当業者は、「溶剤インクジェット印刷に対応」という記載を「透光性の印刷層を設ける」と当然に理解する。 原告は、溶剤インクジェット印刷では、黒、白、シルバー及びゴールド等の印刷も可能であるところ、これらの色は非透光性である旨主張す るが、仮に非透光性の特殊なインクが一部に存在したとしても、「溶剤インクジェット印刷に対応」という記載に触れた当業者の理解を左右するものではない。 そして、各色の再帰反射材が製造・販売されている中で、黒色の再帰反射材に透光性の印刷層を設けると、印刷層の明度が低下して図柄が視 認し難くなる一方で、再帰反射時には印刷層がフルカラーで現れるとい う作用効果は、物理上当然のものである。 イ一致点そうすると、本件発明と乙A4発明は、入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材を備えており、同再帰反射材は、その表面に、印刷により透光性の印刷層を形成することができる点において一致し ている。 ウ相違点本件発明と乙A4発明とは、本件発明は、表示媒体に実際に図柄の印刷が施されているものであるのに対し、乙A4発明は、 とができる点において一致し ている。 ウ相違点本件発明と乙A4発明とは、本件発明は、表示媒体に実際に図柄の印刷が施されているものであるのに対し、乙A4発明は、表示媒体に透光性の印刷層を形成することができる旨を示したものにすぎず、表示媒体に実際 に図柄の印刷が施されているものではないという点において相違する。 エ相違点についての容易想到性上記の相違点は、本件特許出願時の技術常識に照らし、当業者が容易に想到し得たものである。 再帰反射材に図柄を印刷することにより課題を解決する技術の存在 a 乙A8公報の記載乙A8公報には、「本発明の課題は、したがって、上記したような従来の光再帰性反射シートの問題点を解決して、所定の文字やデザイン等が組み込まれているにもかかわらず、通常の拡散光条件下にはこれらの文字等を視認できないが、光再帰性反射観察条件下でのみこれ らの文字等を認識可能な光再帰性反射シートを提供することにある。」(段落【0007】)、「上方に透明な第1着色層を有するかもしくは有しない光再帰性反射要素を含む光再帰性反射シートにおいて、第1着色層の上方もしくは下方に所定の色を有する第2着色層が部分的に施されておりかつ、その際、前記第2着色層の色の色相、明 度及び彩度が、それぞれ、前記光再帰性反射要素の色のものもしくは 前記第1着色層の色のものに同じであるかほぼ同じであるように構成する。」(【解決手段】)との記載が存在する。 上記記載によれば、乙A8公報には、再帰反射材上に、再帰反射材の色相、明度及び彩度と同じかほぼ同じである印刷層を備えることにより、通常光下(拡散光条件下)では当該印刷層が周辺 在する。 上記記載によれば、乙A8公報には、再帰反射材上に、再帰反射材の色相、明度及び彩度と同じかほぼ同じである印刷層を備えることにより、通常光下(拡散光条件下)では当該印刷層が周辺色と同化して視認でき ないが、再帰反射時(光再帰性反射観察条件下)には、再帰反射材部分と膜厚のある印刷層との透光性の違いにより明度差が生まれ、着色層(印刷層)が視認できるようになるという技術が開示されているということができる。 b 乙A21公報の記載 乙A21公報には、印刷インクで装飾した光透過性を有する装飾層を設ける構成が明示されており(段落【0014】)、黒色の再帰反射材を排除していない。 c 乙A9公報の記載以下のとおり、乙A9公報には、本件発明の課題である「所定の照 明下において図柄等を視認できる図柄表示媒体であって、簡素な装置により使用可能な図柄表示媒体を提供すること」を、黒色再帰反射材に透光性印刷層を設けることにより解決することを示唆している。 (a) 乙A9公報には、「【発明の詳細な説明】ホログラフィーおよび再帰反射特性を備えた物品発明の分野本発明は、通常ライティ ング状態で可視の、装飾または確実性を示すためのホログラフィー特性と再帰反射ライティング状態で可視の再帰反射特性との両方を備えた物品に関する。発明の背景(中略)・・・そこには、通常の拡散ライティングと再帰反射ライティングの両方の状態で可視である一次の特徴と、再帰反射視覚状態でのみ可視である「再帰特徴」が示 されている。このように、一次の特徴によれば、特別な装置がなく ても、通常の拡散ライティング状態で第1レベルの遮蔽または確認ができる。再帰の特徴によれば、再帰 ある「再帰特徴」が示 されている。このように、一次の特徴によれば、特別な装置がなく ても、通常の拡散ライティング状態で第1レベルの遮蔽または確認ができる。再帰の特徴によれば、再帰反射ライティング状態で第2レベルの確認が行われ、全体として物品の高度な安全対策がなされる。」との記載が存在する。 上記記載によれば、乙A9公報には、通常光下(拡散ライティン グ状態)では最上面に印刷されたホログラフィーが視認できるものの、再帰反射時(再帰反射ライティング状態)には、再帰反射光量が大きいために、再帰反射材自体又は再帰反射材とホログラフィーとの間に含まれる図柄(証印パターン)が強く視認されるようになり、相対的にホログラフィーが視認できなくなるという技術が開示 されているということができる。すなわち、乙A9発明は、再帰反射材の特性を利用することにより、再帰反射材とホログラフィーとの間に含まれる図柄(証印パターン)について、「普段は図柄等が視認できないが、所定の条件下で図柄が視認できる」ようにしたものである。 (b) また、乙A9公報には、「再帰反射層50は、・・・(中略)・・・任意でビードボンド層90を与えてもよい。・・・(中略)・・・ビードボンド層は、通常光において、再帰反射材料に着色された外観、そして再帰反射光において銀のような異なる色の外観を与える着色された顔料(黒色顔料を含む)を含有していてもよい。」(8頁下から 5行目以下)、「証印パターンまたはロゴは、好ましくは、着色インク、真珠光沢のインク、紫外線下で目視できるインクでプリントされたり、トナーあるいは染料を用いてパターン中で画像形成される。これらの着色された証印は、図2で示した、着色されたビードボンドのある再 ンク、真珠光沢のインク、紫外線下で目視できるインクでプリントされたり、トナーあるいは染料を用いてパターン中で画像形成される。これらの着色された証印は、図2で示した、着色されたビードボンドのある再帰反射層の前面より上の何れかの位置でプリントす るときは特に有用である。通常光において、着色された(好ましく は黒色)ビードボンドは、着色された証印を隠し、通常、ホログラムのみが可視である。しかしながら、再帰反射ライティング状態では、着色された証印は、好ましくは銀色である背景に対して鮮明に目視され、ホログラムはもう目視されない。」(12頁1行目以下)との記載が存在する。 上記記載は、着色された再帰反射層、それも黒色の再帰反射層であれば、着色インクで印刷された図柄(証印パターン又はロゴ)を隠蔽し、通常光下で、ホログラムのみが視認可能であることを開示したものである。 したがって、乙A9公報は、本件発明と同一の構成の上面にホログ ラフィー層を設けることにより、通常光下ではホログラフィーが視認されるのに対し、再帰反射時には図柄が視認されるという発明を開示したものであり、いわば、本件発明を当然の前提技術として、これを利用した発明ということができる。 (c) 原告の主張に対する反論 原告は、黒色の再帰反射材につき開示がない旨主張するが、乙A9公報には、「任意でビードボンド層90を与えてもよい」との記載に続き、ビードボンド層について、「通常光において、再帰反射材に着色された外観、そして再帰反射光において銀のような異なる色の外観を与える着色された顔料(黒色顔料を含む。)を含有していてもよい」 とされているところ、これはまさに黒色の再帰反射材が再帰反射時に光って見え 、そして再帰反射光において銀のような異なる色の外観を与える着色された顔料(黒色顔料を含む。)を含有していてもよい」 とされているところ、これはまさに黒色の再帰反射材が再帰反射時に光って見える様子を表すものである。 また、原告は、透光性の印刷層を設けることが開示されていない旨主張するが、乙A9公報には、「再帰ライティング状態では、着色された証印は、好ましくは銀色である背景に対して鮮明に目視され」と の記載があり、非透光性の印刷層の場合の見え方である「シルエット 調」とは明らかに異なる表現が用いられている。 さらに、乙A9発明に係るPCT出願資料の原文(乙A23)を確認すると、証印パターンの再帰反射ライティング状態の見え方について、「brightlyvisible」と表現されており、視認可能であることが示唆されている。これは、開示されている構成が、 非透光性の印刷層ではなく、透光性の印刷層であることを裏付けるものということができる。 黒色基材に再帰反射塗料を実際に印刷したものの存在a 平成27年9月29日に開催されたパリコレクションにおいて、ファッションデザイナーである森永邦彦は、黒色の布地の上に再帰 反射インク(再帰反射性のあるガラスビーズと透光性インクを混合したものであり、登録商標名は「ニンジャインク」である。)を印刷することで、通常光下では視認できない図柄が再帰反射時には視認できるようになるという衣服を発表した。 上記にいう再帰反射インクは、「再帰反射性を有するガラスビー ズ」と「透光性インク」から構成されるものであるから、同衣服は、「黒色の基材」の上に「再帰反射性を有するガラスビーズ」及び「透光性インク」 う再帰反射インクは、「再帰反射性を有するガラスビー ズ」と「透光性インク」から構成されるものであるから、同衣服は、「黒色の基材」の上に「再帰反射性を有するガラスビーズ」及び「透光性インク」を配したものである。他方で、本件発明の黒色の再帰反射材は、「黒色層」と「再帰反射性を有するガラスビーズ」から構成されるものであるから、本件衣服も本件発明もいずれ も、「黒色層」、「再帰反射性を有するガラスビーズ」及び「透光性インク」から構成されている点において同一である。 b 以上によれば、本件特許出願前には、黒色基材に再帰反射塗料を実際に印刷することにより、本件発明と同様に、「黒色層」、「再帰反射性を有するガラスビーズ」及び「透光性インク」から構成さ れ、かつ、本件特許発明と同一の課題解決をし、同一の効果を実現 する技術が公知となっていたということができる。 そして、これに触れた当業者が、「黒色層」及び「再帰反射性を有するガラスビーズ」を組み合わせた「物」として黒色再帰反射材に相当し、これに「透光性インク」を設けるためにインクジェット印刷を行おうとすることは、出願当時の技術常識から当然のことで ある。 c 原告は、ニンジャインクはインクの中にガラスビーズが含まれている旨主張するが、ニンジャインクに用いられるガラスビーズとインクでは、前者の比重が大きいため、前者が布地側に集まるのは、物理上当然である。 容易想到性以下のような点に照らせば、乙A4発明に接した当業者は、乙A4発明の黒色の再帰反射材に透光性印刷で図柄を印刷した場合、通常光下では図柄を視認することができないものの、フラッシュ光下では図柄を視認することができる印刷物となるこ A4発明に接した当業者は、乙A4発明の黒色の再帰反射材に透光性印刷で図柄を印刷した場合、通常光下では図柄を視認することができないものの、フラッシュ光下では図柄を視認することができる印刷物となることを当然に理解することが できるから、本件発明は、引用発明に基づき容易に想到し得たものである。 a 主引例である乙A4発明には、「溶剤インクジェット印刷に対応した黒色の再帰反射フィルム」であることが開示されている以上、乙A4発明には、それ自体に、実際に印刷を行うことについて直接 的な動機付けがある。すなわち、本件発明は、乙A4発明をカタログに記載した使用方法どおりに印刷したものにすぎない。 b また、本件発明の課題である「所定の照明下において図柄等を視認できる図柄表示媒体であって、簡素な装置により使用可能な図柄表示媒体を提供すること」(段落【0006】)は、本件特許出願 時には既に周知な課題となっていたものである。 そして、前記エのとおり、再帰反射材に図柄を印刷することにより上記課題を解決する技術も、本件特許出願前には周知となっていた。さらにいえば、乙A9発明のように、黒色の再帰反射材に透光性印刷を施す技術を利用することにより、通常光下と再帰反射時とで視認される図柄を変化させる発明も公知になっていた。 c 本件特許出願時には、現に、黒色の基材に再帰反射インクを使用して、前記課題を解決した物(衣服)も生み出されていた。 (原告の主張)ア乙A4発明以下のとおり、乙A4発明は、単に、黒色であってもよい再帰反射フィ ルムが本件特許出願日前に販売されていたことを意味するにすぎない。 乙A4には、「再帰反射性の」 発明以下のとおり、乙A4発明は、単に、黒色であってもよい再帰反射フィ ルムが本件特許出願日前に販売されていたことを意味するにすぎない。 乙A4には、「再帰反射性の」を意味する「Retroreflective」ではなく、「反射性の」を意味する「Reflective」という記載があるにとどまり、再帰反射材であることが開示されているとはいえない。 乙A4発明は、トラック等の車両用のステッカーやマーキングに使用されるものであることからすれば、せいぜい文字等を印刷することが考えられる程度であり、図柄を視認できるようにするという技術思想は全く示唆されていない。 また、通常光下では視認し難い図柄を用いるという発想はなく、通常 光下では視認し難い図柄がフラッシュ光下ではフルカラーで現れるという技術思想についても示唆がない。 さらに、透光性の印刷層を用いるという技術思想も開示されていない。 「溶剤インク」というのは、インクを溶かす液体(溶媒)の種類が、 水系でなく、有機溶剤であるという意味であり、インク自体の透光性と は何ら関係しない。溶剤インクジェット印刷でも、例えば、黒や白、シルバー及びゴールドなどは、非透光性である。 イ一致点それゆえ、乙A4発明は、単に、黒色であってもよい再帰反射フィルムが本件特許出願日前に販売されていたことを意味するにすぎない。 ウ相違点及び容易想到性以上のとおり、乙A4発明は、①文字でなく、図柄を視認できるようにするという技術思想、②通常光下では視認し難い図柄がフラッシュ光下ではフルカラーで現れるという技術思想、③透光性の印刷層を用いるという技術思想のいずれについて 、①文字でなく、図柄を視認できるようにするという技術思想、②通常光下では視認し難い図柄がフラッシュ光下ではフルカラーで現れるという技術思想、③透光性の印刷層を用いるという技術思想のいずれについても開示、示唆するものではない。 そして、本件発明に至るためには、多数のカラーバリエーションの中から、「黒色」の再帰反射材を選択した上で、かつ、当該再帰反射材上に「透光性の印刷層」を設ける必要があるところ、以下のとおり、被告の主張する公知技術を乙A4発明と組み合せる動機付けはない上に、仮に組み合わせたとして、本件発明には至らない。 乙A8発明乙A8公報については、被告自身も自認しているように、印刷層には透光性がない。したがって、仮に乙A8発明を参照することにより、乙A4発明に印刷層を設けることができたとしても、当該印刷層は非透光性となるから、本件発明に至ることはない。 乙A9発明被告は、乙A9公報が「再帰反射材に図柄を印刷することにより課題を解決する技術の存在」を示すものである旨主張するが、以下のとおり、理由がない。 a 黒色の再帰反射材について開示がないこと まず、乙A9公報においては、再帰反射材自体は「好ましくは銀色 である背景」であり、「着色された顔料を含有するビードボンド層90」を含むものとされているにすぎず、「入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材」そのものが開示されているわけではない。 b 透光性の印刷層を設けることについて開示がないこと また、乙A9公報には、「着色インク・・・でプリントされた・・・証印」パターンは、「着色されたビードボンドのある再帰反射層の前面より上の何れかの位置でプリントするときは有用」 開示がないこと また、乙A9公報には、「着色インク・・・でプリントされた・・・証印」パターンは、「着色されたビードボンドのある再帰反射層の前面より上の何れかの位置でプリントするときは有用」と記載されているとおり、非透光性の印刷層を設けることは開示されているが、透光性の印刷層を設けることは開示されていない。 したがって、仮に乙A8発明を参照することにより、乙A4発明に印刷層を設けることができたとしても、当該印刷層は非透光性となるから、本件発明に至ることはない。 これに対し、被告は、「再帰反射ライティング状態では、着色された証印は、好ましくは銀色である背景に対して鮮明に目視され」との 記載を根拠として、乙A9発明は透光性の印刷層を備えている旨主張するが、証印が「鮮明に」目視されるからといって、印刷層が非透光性ではないとはいえない。かえって、「再帰反射ライティング状態では・・・銀色である背景に対して」との文言からすれは、再帰反射時には銀色の背景に対して証印のシルエットが鮮明に浮かび上がると読 むことができる。 c むしろ、乙A9発明はホログラフィーを必須の構成とする発明であるから、これを除外して乙A4発明に組み合わせることについては阻害要因がある。 ニンジャインク a ニンジャインクの施された衣服と本件特許発明は、前者が黒色の生 地の上にガラスビーズを含んだインクを塗布したものであるのに対し、後者は黒色の再帰反射材の表面に設けられた透光性の印刷層を有するものであるという点で、全く相違するものである。 b ニンジャインクは、飽くまでガラスビーズを含むインクであり、だからこそ、様々な物品に塗布することが可能であるところ、そのよう するものであるという点で、全く相違するものである。 b ニンジャインクは、飽くまでガラスビーズを含むインクであり、だからこそ、様々な物品に塗布することが可能であるところ、そのよう なインクからガラスビーズを取り除いた上で、さらに、塗布対象を黒色の再帰反射材に置き換える動機付けは存在しない。 4 争点4(原告の損害額)について(原告の主張)以下のとおり、原告は、被告の侵害行為により、少なくとも192万3900 円の損害を被った。 ア特許法102条3項に基づく損害(174万9000円) 被告の売上高被告は、遅くとも平成30年4月19日から現在に至るまで、被告各製品の製造等を行っているところ、これらの行為による被告の売上高は、少なく とも年間1000万円に上る。したがって、本件特許権登録の日である平成30年11月30日項に被告が侵害行為により得た売上高は、583万円を下らない。 実施料率本件発明の技術分野は比較的新しく、かつ、本件発明は図柄表示媒体の視 認性を変更するための基本ともいえる重要な発明である。したがって、本件発明に係る相当実施料率は、30%を下らない。 損害額以上によれば、特許法102条3項に基づく損害の額は、174万9000円(=583万円×0.3)となる。 イ弁護士費用:17万4900円 (被告の主張)争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の内容本件明細書等には、次のとおりの記載があることが認められる(甲2)。 ア技術分野「本発明は、普段は視認できない図柄等を所定の条件下において視認することのできる図柄表示媒体に関する 本件明細書等には、次のとおりの記載があることが認められる(甲2)。 ア技術分野「本発明は、普段は視認できない図柄等を所定の条件下において視認することのできる図柄表示媒体に関する。」(段落【0001】)イ背景技術「従来から、広告などに用いられる図柄等の表示媒体であって、普段は 図柄等が視認できないが、照明を当てる等の所定の条件下で図柄が視認できるように構成された表示媒体が提供されている。」(段落【0002】)「例えば、下記特許文献1には、透明なプラスチックシートの表面にヘアライン加工を施したメインシートと、プラスチックフィルムの表面にハーフミラーとして作用する程度の極めて薄い金属蒸着層が配置され、裏面 には所定のディスプレイパターンが印刷配置された蒸着フィルムとから構成され、背面から光を照射することによってディスプレイパターンが浮き出るコンソール用表示シートが開示されている。」(段落【0003】)ウ先行技術文献「【特許文献1】実開昭59-147185号公報」(段落【0004】) エ発明が解決しようとする課題「しかし、特許文献1に開示されたコンソール用表示シートでは、図柄等を視認できるようにするためには裏側に照明光源を設置する必要があり、使用の際に装置が大掛かりになってしまう。」(段落【0005】)「本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、所定の照明 下において図柄等を視認できる図柄表示媒体であって、簡素な装置により 使用可能な図柄表示媒体を提供することを目的とする。」(段落【0006】)オ課題を解決するための手段「上記課題を解決するために、本発明に係る図柄表示媒体は、入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材と、前記再 ことを目的とする。」(段落【0006】)オ課題を解決するための手段「上記課題を解決するために、本発明に係る図柄表示媒体は、入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材と、前記再帰反射材の 表面に印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層と、を備えることを特徴とする。」(段落【0007】)カ発明の効果「本発明に係る図柄表示媒体によれば、通常の照明下では図柄を視認できないが、相対的に強い光を照らすだけで、光源方向から図柄を視認する ことができる。」(段落【0008】)キ発明を実施するための形態「以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る図柄表示媒体の模式断面図である。図2は、本実施形態に係る再帰反射シートの模式断面図である。」(段落【0010】) 【図1】「図柄表示媒体1は、上側(表側)から順に積層された、透過光の光量を減少させる減光シート11と、図柄である印刷層12と、黒色の再帰反射シート20とを備えている。」(段落【0011】)「ここで、再帰反射シート20は、入射光をそのまま光源方向へ反射(再 帰反射)する性質を備えている。また、黒色の再帰反射シート20は、太 陽光や室内の通常の照明等によって照らされている場合には、照明光の大部分を吸収するため、シート全体が黒色に見えるが、所定の強度以上の照明光源で照らした場合や、夜などの暗い環境において照明光源で照らした場合には、照明光源と略同じ方向から観察すると、反射光の略全てが照明光源の方向に反射し、シートが白く光って見える。」(段落【0012】) 「よって、このような構成の図柄表示媒体1を表側から見た場合、普段は黒色一色のシート ら観察すると、反射光の略全てが照明光源の方向に反射し、シートが白く光って見える。」(段落【0012】) 「よって、このような構成の図柄表示媒体1を表側から見た場合、普段は黒色一色のシートに見えるだけであるが、図柄表示媒体1を周囲と比べて相対的に強力な光源で照らすと共に光源と略同じ方向から観察すると、印刷層12の図柄を視認することができる。」(段落【0013】)「図2に示すように、再帰反射シート20は、上側から順に積層された、 トップコート層21と、ガラスビーズ層22と、接着剤層26と、台紙27と、を備えている。剥離シートである台紙27を剥がすと、接着剤層26が露出するため、図柄表示媒体1を所望の面に張り付けて固定することができる。」(段落【0014】) 【図2】「トップコート層21は、ガラスビーズ層22をカバーするフィルムであり、柔軟性のあるプラスチックフィルム等が用いられる。ガラスビーズ層22は、平面上に多数整列設置されたガラスビーズ23と、ガラスビーズ23間に充填された合成樹脂であるバインダー25と、ガラスビーズ2 3の下側に設置された上向きに凹の椀型の反射膜24とを備えている。」 (段落【0015】)「ガラスビーズ層22においては、ガラスビーズ層22への入射光をそのまま入射方向へと反射(再帰反射)させるように、ガラスビーズ23及び反射膜24が構成されている。よって、再帰反射シート20に表側から入射した光は、ガラスビーズ層22において再帰反射する。」(段落【0 016】)「但し、上述したように、本実施形態では、黒色の再帰反射シート20を採用しており、トップコート層21が黒色に着色されている。よって、再帰 層22において再帰反射する。」(段落【0 016】)「但し、上述したように、本実施形態では、黒色の再帰反射シート20を採用しており、トップコート層21が黒色に着色されている。よって、再帰反射シート20に入射した光は、黒色に着色された部分(トップコート層21)に吸収され、通常の照明下では、再帰反射シート20からの再 帰反射光は極めて少量である。」(段落【0017】)「再帰反射材である再帰反射シート20は、例えば、3M社のスコッチカル(登録商標)反射シート680-85を用いることができる。再帰反射シート20の構成は適宜変更可能であり、例えば、トップコート層21が無い構成でも良いし、ガラスビーズの代わりにプリズムを設置したプリズムタ イプの再帰反射シート20であっても良い。また、再帰反射材は、再帰反射性を有する部材であれば、シート状のものでなくても良く、例えば、プレート等に再帰反射性の塗料を塗布したものでも良い。」(段落【0018】)「印刷層12は、再帰反射シート20の上面に、カラーレーザープリン タを用いてフルカラー図柄を印刷することにより形成される。印刷層12の形成は、カラーレーザープリンタを用いた印刷による形成に限らず、溶剤インクジェットプリンタやシルクスクリーンを用いた印刷等により形成しても良い。」(段落【0019】)「また、トナーやインクの乗りを良くするために、印刷層12の形成前 に、再帰反射シート20の上面にプライマー(下塗り剤)を塗布(プライ マー処理)しておくのが望ましい。」(段落【0020】)「減光層である減光シート11は、透過する光の光量を減少させるシートであり、通常の照明下において、印刷層12の図柄を見え難くするために設置されている。減光シート11としては、紫外 落【0020】)「減光層である減光シート11は、透過する光の光量を減少させるシートであり、通常の照明下において、印刷層12の図柄を見え難くするために設置されている。減光シート11としては、紫外線や赤外線等をカットするために自動車の窓ガラスに貼られる市販のカーフィルムを用いること ができる。市販のカーフィルムは、例えば、染料によって均一に着色されたPET樹脂から構成されている。」(段落【0021】)「本実施形態では、減光シート11として、可視光線の透過率が約25%のものを使用している。減光シート11が設置されると、表側から印刷層12に入射する照明光が減少すると共に、印刷層12及び再帰反射シート 20の反射光のうち減光シート11を透過して図柄表示媒体1の表側に出射する反射光が減少する。」(段落【0022】)「このように、減光シート11を設置することで、減光シート11を設置していない場合と比較して、図柄表示媒体1の表側に出射する印刷層12の反射光及び透過光が減少し、印刷層12の図柄が視認し難くなる。特 に、通常の照明下においては、減光シート11を設置することで、何れの方向から見ても印刷層12の図柄を略完全に見えないようにすることができる。」(段落【0023】)「以上、本実施形態に係る図柄表示媒体1の構成について説明したが、図柄表示媒体1においては、通常の照明下では再帰反射光が極少量である ため、図柄表示媒体1を表側から見た観者は、印刷層12の図柄をほとんど視認することができない。」(段落【0024】)「一方、強力な照明光源によって図柄表示媒体1の表面側を照らした場合には、入射光の光量が増大するにつれて、再帰反射シート20からの再帰反射光の光量が増え、再帰反射光のうち、印刷層12及び減光シート1 方、強力な照明光源によって図柄表示媒体1の表面側を照らした場合には、入射光の光量が増大するにつれて、再帰反射シート20からの再帰反射光の光量が増え、再帰反射光のうち、印刷層12及び減光シート1 1を透過してくる出射光の光量も増える。そして、再帰反射光は、光源に 向けて戻ってくるため、強力な照明光源の近傍から図柄表示媒体1を観察する観者は、印刷層12の図柄を視認することができる。」(段落【0025】)「また、暗い室内であれば、光量の小さな照明光源によって照らす場合であっても、周囲と比べて相対的に強力な光源になるため、相対的に強力 な照明光源の近傍から図柄表示媒体1を観察する観者は、同様に印刷層12の図柄を視認することができる。」(段落【0026】)「このように、図柄表示媒体1は、通常の照明下では図柄を視認できないが、カメラのフラッシュライトや指向性の高い懐中電灯等の相対的に強い光源で照らすだけで、光源方向からフルカラーの図柄を視認することが でき、簡素な構成により使用することができる。」(段落【0027】)「続いて、図柄表示媒体1を使用した手品用具5について説明する。通常の照明下では黒く視認され、強力な照明光源によって照らされたときのみフルカラーの図柄を視認することのできる図柄表示媒体1であれば、手品用具等として使用することができる。」(段落【0028】) 「図3は、本実施形態に係る手品用具の構成を概略的に示す模式図である。図4は、本実施形態に係る手品用具の使用方法を説明するための図である。」(段落【0029】)「手品用具5は、上述した図柄表示媒体1と、デジタルカメラ50とを備えている。デジタルカメラ50は、写真撮影に同期して閃光するフラッ シュライト51を備え、フラッシュをた 段落【0029】)「手品用具5は、上述した図柄表示媒体1と、デジタルカメラ50とを備えている。デジタルカメラ50は、写真撮影に同期して閃光するフラッ シュライト51を備え、フラッシュをたいた写真撮影が可能である。なお、デジタルカメラ50ではなく、フラッシュライト付きのフィルムカメラであっても良い。」(段落【0030】)「フラッシュライト51は、強力な照明光源であり、フラッシュライト51のストロボ光により図柄表示媒体1を表側から照らすと、印刷層12 を透過した再帰反射光が光源であるフラッシュライト51へ向けて戻って くる。よって、フラッシュライト51が発光した瞬間に、フラッシュライト51近傍から図柄表示媒体1を観察すると、印刷層12の図柄を視認することができる。」(段落【0031】)「手品用具5を用いてマジックを実演する場合には、まず、通常の照明下において、図柄表示媒体1を観客に見せる。そうすると、黒色の再帰反 射シート20を用いた図柄表示媒体1は、表面が黒色に見えるだけであり、観客は印刷層12の図柄を視認することはできない。」(段落【0032】)「続いて、フラッシュライト51を用いてフラッシュをたきながら、デジタルカメラ50により表側正面から図柄表示媒体1を写真撮影する。強力なフラッシュ光で図柄表示媒体1を照らしながら写真撮影を行うと、印 刷層12を透過した再帰反射光が光源であるフラッシュライト51へと戻ってくるため、光源近傍に位置するデジタルカメラ50の撮影レンズへ再帰反射光が入射し、撮像素子に受光される。」(段落【0033】)「通常、黒色のシートをデジタルカメラ50で撮影すると、フラッシュをたきながら撮影したとしても撮影写真には黒色が写るだけであるが、黒 色の図柄表示媒体1 に受光される。」(段落【0033】)「通常、黒色のシートをデジタルカメラ50で撮影すると、フラッシュをたきながら撮影したとしても撮影写真には黒色が写るだけであるが、黒 色の図柄表示媒体1を撮影した場合には、上述した現象により、印刷層12の図柄が写ることになる。」(段落【0034】)「図4(a)は、通常の照明下においてフラッシュをたかずにデジタルカメラ50により図柄表示媒体1を撮影した際の撮影写真であり、図4(b)は、フラッシュをたいてデジタルカメラ50により図柄表示媒体1を撮影 した際の撮影写真である。(段落【0035】)」 【図4(a)】 【図4(b)】「また、印刷層12を透過した再帰反射光は、光源であるフラッシュライト51の方向へのみ戻るため、フラッシュライト51による照明時に、光源方向以外から図柄表示媒体1を見ても図柄を視認することはできず、 黒色の図柄表示媒体1として見えるだけである。」(段落【0037】)「よって、観客にとっては、黒色のシートにしか見えない図柄表示媒体1をデジタルカメラ50で撮影すると、撮影写真には図柄が写るように見え、手品用具5は、このような不思議な現象を起こす手品の用具として使用することができる。」(段落【0038】) 「以上、本実施形態について説明したが、本発明の実施の形態は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、図柄表示媒体を構成する各部材の形状やサイズ等は適宜変更可能である。」(段落【0039】)「また、上記実施形態では、減光シートを設置しているが、減光シート を省略しても良い。上述したように、黒色の再帰反射シートであれば、印 状やサイズ等は適宜変更可能である。」(段落【0039】)「また、上記実施形態では、減光シートを設置しているが、減光シート を省略しても良い。上述したように、黒色の再帰反射シートであれば、印刷層の図柄は見難いため、例えば、照明の暗い室内で図柄表示媒体を用いる場合には、減光シートが無くても印刷層の図柄はほとんど見えない。よって、照明の暗い室内で使用する図柄表示媒体の場合などには、減光シートを省略することができる。」(段落【0040】) 「また、上記実施形態では、図柄表示媒体を手品用具として使用した場 合について説明したが、相対的に強力な照明光源によって照らされたときのみ照明光源の方向からフルカラーの図柄を視認することのできる図柄表示媒体は、看板やポスター等の広告表示媒体、ノベルティグッズ、玩具等の種々の用途に使用することができる。」(段落【0041】)「また、印刷層の図柄としては、写真、模様、図形、文字等や、これら の組み合わせ等、種々のものを使用することができる。」(段落【0042】) 本件特許の特許請求の範囲の記載及び上記⑴の記載内容によれば、本件発明は、簡素な装置を使用することによって、普段は視認することのできない図柄を視認可能にすることを課題とするものである。そして、本件発明は、このよ うな課題を解決するために、請求項記載の構成を備えることによって、通常光下では視認することのできない図柄につき、入射光をそのまま光源方向に反射する再帰反射光を照射することにより、当該図柄を視認可能にするという効果を実現するものであると認められる。 2 争点1(被告は、被告製品2を製造・販売等しているか)について 原告は、被告が被告製品2を製造・販売等している旨主張する。しかしながら、被 効果を実現するものであると認められる。 2 争点1(被告は、被告製品2を製造・販売等しているか)について 原告は、被告が被告製品2を製造・販売等している旨主張する。しかしながら、被告はこれを否認しているところ、原告の主張を裏付ける客観的な証拠は提出されていない。したがって、原告の主張は、採用することができない。 3 争点2(被告製品1は「透光性の印刷層」(構成要件B)を有するか)について ⑴ 被告製品1の構成要件充足性前記前提事実によれば、被告製品1は、黒色の再帰反射材の上に、①透光性印刷層と②白色の非透光性の印刷層の上に透光性の印刷層を施したもの(非透光性印刷層)が、ストライプ状に交互に配置された構成を有するものであることが認められる。 そうすると、被告製品1は、ストライプ状ではあるものの、再帰反射材の表 面に透光性印刷層を備えているものといえる。したがって、被告製品1は、構成要件Bの「透光性の印刷層」を充足するものと認めるのが相当である。 ⑵ 被告の主張についてア被告は、本件発明の技術的意義に照らせば、「透光性の印刷層」とは、「通常光下では視認することができない透光性の印刷層」に限定解釈すべきであ るところ、被告製品1は、通常光下で図柄を視認することができるのであるから、「透光性の印刷層」を備えていない旨主張する。 しかしながら、構成要件Bは、単に「前記再帰反射材の表面に印刷により形成された図柄からなる透光性の印刷層」(構成要件B)と規定しているにすぎず、本件発明の特許請求の範囲には、文言上「透光性の印刷層」 の視認性について限定するような記載は存在しない。 そして、本件明細書等にも、透光性の印刷層が「通常光下では図柄を視認することができない」ものであ 許請求の範囲には、文言上「透光性の印刷層」 の視認性について限定するような記載は存在しない。 そして、本件明細書等にも、透光性の印刷層が「通常光下では図柄を視認することができない」ものであることを必須とするような記載は存在せず、かえって、本件明細書等の記載(段落【0021】ないし【0024】)によれば、通常の照明下において、印刷層の図柄を視認し難くするための 実施例として、印刷層の上に減光シートを設ける構成が示されていることからすれば、「透光性の印刷層」それ自体については、通常光下において一定程度図柄を視認可能であるものを含むことが前提とされているものと認められる。 そうすると、被告の主張は、本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書 等の各記載に整合するものとはいえない。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 イ被告は、被告製品1は、透光性印刷層と非透光性印刷層を交互にストライプ状に配する構成を備えることにより、通常光下と再帰反射時とで異なる図柄が視認されるという効果をもたらすものであり、本件発明とは構成・ 作用機序を全く異にするものであるから、本件発明の技術的範囲に属する ものではない旨主張する。 しかしながら、被告製品1が、黒色の再帰反射材の上に透光性の印刷層を備えた構成を有するものであることは、上記において判示したとおりである。そして、被告製品1が、透光性の印刷層に加え、非透光性の印刷層をも備えていることは、単に、被告製品1が本件発明にはない構成を単に 付加するものにすぎず、仮に当該構成によって付随的な作用が生じたとしても、被告製品1の構成要件充足性を左右するものとはいえない。 したがって、被告の前記主張は、採用することができない。 ⑶ 以上によれば、被告製品1は に当該構成によって付随的な作用が生じたとしても、被告製品1の構成要件充足性を左右するものとはいえない。 したがって、被告の前記主張は、採用することができない。 ⑶ 以上によれば、被告製品1は、本件発明の構成要件をいずれも充足することになる。 4 争点3-1(公然実施による新規性の欠如)について⑴ 認定事実前記前提事実に加え、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができる。 ア広仁社商品2の構成 広仁社商品2は、通常光下では、下記の図の「通常撮影」のとおり視認されるのに対し、フラッシュ光下では、「フラッシュ撮影」のとおり視認されるものである。(乙A2) 【図】また、広仁社商品2のドッグタグ部分の断面をデジタル顕微鏡で解析したところ、アルミプレートの上に、下から順に、粘着剤の層、ガラスビーズの層及び赤色の「溶剤カラーインク」とされる層が存在することが確認 された(乙A1の2、乙A2)。 上記認定事実によれば、広仁社商品2は、フラッシュ光下では、赤色の背景に白色の豹が描かれた図柄が視認できるのに対し、通常光下では、全体的に黒色であり、同図柄を視認することができず、当該赤色の背景部分は赤色の透 光性インクにより印刷されたものであることが認められる。そうすると、広仁社商品2は、黒色の再帰反射材の表面に、透光性の印刷層をもって図柄を形成したものであり、本件発明と同様の構成を備えたものと認めるのが相当である。 イ危機管理産業展2009における出品 広仁社は、平成21年10月21日から同月23日まで東京ビッグサイトにて開催された危機管理産業展2009においてブースを出し、多数の商品を出品した。出 機管理産業展2009における出品 広仁社は、平成21年10月21日から同月23日まで東京ビッグサイトにて開催された危機管理産業展2009においてブースを出し、多数の商品を出品した。出品された商品の中には、図柄1と同じ鷲の図柄のキーホルダーが含まれていた(乙A1の2〔資料4、5〕、乙A1の3、弁論の全趣旨)。 ウ広仁社による材料の購入 広仁社は、平成16年10月15日、紀和化学から、黒色の再帰反射材を購入し、その頃、納品を受けた(乙A1の2〔資料9・10〕)。 広仁社は、平成20年4月22日、東高金商株式会社から、ドッグタグ部分の材料となるドッグタグプレートやゴム枠を購入し、その頃、納品を受けた(乙A1の2〔資料3〕) エ広仁社におけるデザインの開発状況広仁社は、遅くとも平成20年4月23日までには、図柄1及び2のデザインを完成させた(乙A17〔資料19、20〕)。 オ広仁社は、平成23年10月21日頃、同月19日から同 月21日まで開催された危機管理産業展2011の「ドッグ【図柄2】【図柄1】 タグ販売分」として、「ブラックレフピカドッグタグキーホルダー表=ブラック反射/裏=レフピカ」、「ブラックレフピカドッグタグボールチェーンネックレス表=ブラック反射/裏=レフピカ」という商品を納品した(乙A1の2〔資料6~8〕)⑵ 公然実施事実1について ア広仁社商品2の出品の事実について 広仁社商品2が本件発明と同一の構成を備えたものであることは、既に説示したとおりである。 そして、被告は、広仁社が危機管理産業展2009に広仁社商品2を出品した旨主張し、その裏付けとして、これに沿う 仁社商品2が本件発明と同一の構成を備えたものであることは、既に説示したとおりである。 そして、被告は、広仁社が危機管理産業展2009に広仁社商品2を出品した旨主張し、その裏付けとして、これに沿う内容のW報告書(乙A1 の2及び3、乙A17)を提出する。 しかしながら、危機管理産業展2009における広仁社のブースを撮影した写真(乙A1の2〔資料4及び5〕)には、図柄1と同一の図柄のキーホルダーは複数写っていることが認められるものの、広仁社商品2は写っていないことが認められる。この点につき、被告は、広仁社商品2はサ ンプル配布されていたため、写真撮影時に一時的に展示されていなかったにすぎない旨主張するが、同主張は客観的な裏付けを欠くものであり、採用の限りでない。 そうすると、W報告書の記載内容は、客観的な証拠と必ずしも整合するものとはいえず、直ちに信用することはできない。そして、その他に広仁 社商品2が危機管理産業展2009に出品されていたことを認めるに足りる的確な証拠は存在しない。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 また、被告は、広仁社商品2と同時期に作成された広仁社商品1が危機管理産業展2009に出品されていたことからすれば、広仁社商品2も同 様に出品されていたと考えるのが合理的であり、W報告書の記載内容が裏 付けられる旨主張する。 しかしながら、本件全証拠によっても、広仁社商品1及び2がセットで展示・販売されていたというような事情はうかがわれないから、仮に両商品が同時期に作成され、かつ、広仁社商品1が危機管理産業展2009に出品されていたとしても、そのことをもって、広仁社商品2も危機管理産 業展2009に出品されていたということはできない。 次に、被告は、平成1 れ、かつ、広仁社商品1が危機管理産業展2009に出品されていたとしても、そのことをもって、広仁社商品2も危機管理産 業展2009に出品されていたということはできない。 次に、被告は、平成16年10月に黒色の再帰反射材を、平成20年4月にドッグタグプレートをそれぞれ購入しており、広仁社が同年頃に広仁社商品1及び2の製造に必要な材料を全て入手していることからも、上記報告書の記載内容が裏付けられる旨主張する。 しかしながら、これらの事情により、広仁社が平成20年4月頃、少なくとも、広仁社商品1及び2を開発・製造していたことがうかがわれるとしても、それ以上に、広仁社において広仁社商品1及び2を危機管理産業展2009に出品した事実までを裏付けるものとはいえない。 さらに、被告は、消防協会カタログ(乙A3)に、図柄1と同じ図柄(図 柄1の文字部分を除いたもの)を印刷した商品が掲載されていることからも、広仁社商品1及び2が出品及び販売されていた事実が裏付けられる旨主張する。 しかしながら、被告自身も自認するように、消防協会カタログ(乙A3)に掲載された商品は、白色の再帰反射材の上に透光性の印刷層を施したも のであることからすれば、同商品が平成21年当時販売されていたという事実をもって、黒色の再帰反射材に透光性の印刷層で図柄2を施した広仁社商品2が同じ頃に存在し、かつ、出品及び販売されていた事実が推認されるとはいえない。 その他に、被告の提出する準備書面及び証拠を改めて検討しても、その 裏付けを欠くものに帰し、以上の判断を左右するに至らない。したがって、 上記判断と異なる被告の主張は、いずれも採用することができない。 イ広仁社商品1の構成及び出品の事実について広仁社商品1の 帰し、以上の判断を左右するに至らない。したがって、 上記判断と異なる被告の主張は、いずれも採用することができない。 イ広仁社商品1の構成及び出品の事実について広仁社商品1の出品の事実について被告は、広仁社が危機管理産業展2009において、本件発明の実施品である広仁社商品1を出品していた旨主張し、その裏付けとして、これに 沿う内容のW報告書(乙A1の2及び3、乙A17)を提出する。 しかしながら、W報告書に信用性が認められないことは、既に説示したとおりである。 また、ブースの写真(乙A1の2〔資料5〕)によれば、広仁社のブースの中央部に、①通常光下では無地の黒色であるのに対し、フラッシュ光 下では、白味がかった色の、図柄1と同じ鷲柄が浮かび上がるキーホルダー、②通常光下では、白色の背景に黒味がかった色の、図柄1と同じ鷲柄が印刷されているのに対し、フラッシュ光下では、再帰反射により表面全体が光って見え、図柄が視認できないキーホルダーの2種類が展示されていることが一応認められる。しかしながら、その画像は鮮明ではなく、特 に背景の色が必ずしも明確に視認できず、その上、広仁社は白色の再帰反射材に透光性の印刷層を施した製品も製造・販売していることからすれば、これらのキーホルダーが、黒色の再帰反射材の上に図柄から成る透光性の印刷層を備えたものであるとまでは認めるに足りない。その他に、広仁社のブースに展示されていた上記キーホルダーが黒色の再帰反射材の上に 透光性の印刷層を施した構成を備えたものであることを認めるに足りる的確な証拠は存在しない。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 これに対し、被告は、平成20年4月23日付けの「レフピカドッグタグ-黒」という名称 ことを認めるに足りる的確な証拠は存在しない。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 これに対し、被告は、平成20年4月23日付けの「レフピカドッグタグ-黒」という名称のファイルにおいて、図柄1と共に図柄2の画像デー タが保存されていることを根拠として、広仁社商品1は、広仁社商品2と 同時期に、同じ構成を備えたものとして作成されたものと考えるのが合理的である旨主張する。 しかしながら、「レフピカドッグタグ-黒」という名称のファイルに図柄1及び2のデータが保存されているという事情をもって、図柄1及び2が黒色の再帰反射材のみに印刷されることが予定されたものであると いうことはできない。 また、上記ファイルに保存されている図柄1とブースの写真に写った鷲の図柄(乙A1の2〔資料4、5〕)が同一であることは、既に説示したとおりであるものの、上記のとおり、同写真は必ずしも鮮明ではなく、同写真に写った鷲の図柄の背景が緑色であることまでは認められないから、 同図柄が、上記のファイルの画像データをそのまま印刷したものであるとまでは認められない。 したがって、被告の主張は、前提を欠くものであり、採用することができない。 また、被告は、現存する広仁社商品1’が本件発明の実施品であること を前提として、広仁社商品1’と同様に鷲柄と文字部分から構成されている広仁社商品1も、黒色の再帰反射材の上に透光性インクで図柄を印刷した構成を有するものであった旨主張する。 しかしながら、広仁社商品1’の作成時期を裏付ける客観的な証拠は存在しないところ、広仁社商品1と広仁社商品1’が同時期に作成されたこ とまで認めるには足りない。むしろ、広仁社商品1の背景が緑色であるのに対し、広仁社商品1’の背景 を裏付ける客観的な証拠は存在しないところ、広仁社商品1と広仁社商品1’が同時期に作成されたこ とまで認めるには足りない。むしろ、広仁社商品1の背景が緑色であるのに対し、広仁社商品1’の背景部分には何も印刷されていないように見えること(甲17〔10頁〕)に照らしても、広仁社商品1と広仁社商品1'が同一の構成を備えているとも認め難い。 その他に、被告の提出する準備書面及び証拠を改めて検討しても、その 裏付けを欠くものに帰し、以上の判断を左右するに至らない。したがって、 上記判断と異なる被告の主張は、いずれも採用することができない。 ⑶ 公然実施事実2についてア被告は、広仁社が平成23年10月に、本件発明の実施品である広仁社商品3をエフケイワークスに販売した事実をもって、公然実施事実に当たる旨主張する。 そこで検討するに、被告は、広仁社商品3は、平成23年7月に名城大学で開催された研究会においても展示されていた旨主張しているところ、証拠(乙A29、30)によれば、実際に同研究会で展示されていた商品は、通常光下でも、白地に黒色又は黒地に白色のドクロ柄が鮮明に看取されることが認められるから、広仁社商品3が黒色の再帰反射材に透光性の印刷層を施 した構成を有するものと直ちに認めるのは相当ではない。 したがって、被告主張に係る上記公然実施事実を認めることはできない。 イ被告の主張についてこれに対し、被告は、広仁社商品3の図柄である図柄3のデータが保存されたファイルには、本件発明の実施品であることが現物により確認され ている広仁社商品2に印刷された図柄2(レフピカドッグタグ-黒.ai。 乙A17〔資料19、20〕)と同様のファイル名が付されていることを根拠として、広仁社 施品であることが現物により確認され ている広仁社商品2に印刷された図柄2(レフピカドッグタグ-黒.ai。 乙A17〔資料19、20〕)と同様のファイル名が付されていることを根拠として、広仁社発明3についても、本件発明の実施品であると考えるのが自然である旨主張する。 しかしながら、図柄3のデータが保存されたファイルの名称は、「11 0702FKWドッグタグ_ブラックレフピカ出力.ai」であるところ(乙A33)、このようなファイル名それ自体から、広仁社商品3についても、黒色の再帰反射材に溶剤カラーインクで透光性印刷を施した構成を備えるものとまで認めるのは相当ではなく、ファイル名が画像2の保存されたファイル名と同様であるという事実も、この認定を左右するものとは いえない。 また、被告は、広仁社が紀和化学から黒色再帰反射材を購入していることや、エフケイワークスが平成23年10月21日に、図柄3の表示があるドッグタグを実際に展示・販売していたことからも(乙A17〔資料25、26〕)、広仁社商品3の構成が裏付けられる旨主張する。 しかしながら、黒色の再帰反射材は汎用品であることや、広仁社は白色 の再帰反射材の上に透光性の印刷層を施した製品をも製造していることに照らせば、上記のような材料の購入の事実をもって、広仁社商品3が黒色の再帰反射材を備えたものであるということはできない。むしろ、証拠(乙A17〔資料25〕)によれば、エフケイワークスのブースに展示されていた商品は、通常光下でも、白地に黒色又は黒地に白色のドクロ柄が 鮮明に看取されることが認められることからすると、黒色の再帰反射材に透光性の印刷層を施した構成を有するものとはいえない。 その他に、被告の提出する準備書面及び証拠を改めて検討 が 鮮明に看取されることが認められることからすると、黒色の再帰反射材に透光性の印刷層を施した構成を有するものとはいえない。 その他に、被告の提出する準備書面及び証拠を改めて検討しても、その裏付けを欠くものに帰し、以上の判断を左右するに至らない。したがって、上記判断と異なる被告の主張は、いずれも採用することができない。 ⑷ まとめ以上によれば、本件発明に特許法29条1項2号の無効理由があるとは認められない。 5 争点3-2(乙A4発明に基づく進歩性の欠如)⑴ 乙A4文献の記載事項 ア証拠(乙A4)及び弁論の全趣旨によれば、乙A4(下記【図1】参照)には、次のとおりの記載があることが認められる。 【図1】車両のグラフィック(FleetGraphics)再帰反射粘着性フィルム(ReflectivePressure-SensitiveFilm) 商品名(Product):REFLECTAmark® WhiteFMGSheet 利点(Benefits) ・色の選択が可能:黄色、緑、青、赤、オレンジ及び黒・従来の印刷手法のみならず、溶剤インクジェット及びUVインクジェット印刷にも適合している(使用予定のインクシステムと本製品との適 合性について、事前に確認することをお勧めします。)。 色見本次の【図2】のとおり、白、黄色、オレンジ、赤、緑、青及び黒の7色の再帰反射フィルム(FMG)の色見本が示されている。 【図2】 イ上記認定事実によれば、乙A4発明には、グラフィック広告用の黒色の再帰反射材が開示されていることが認められる。 ウ原告の主張について原告は、乙 示されている。 【図2】 イ上記認定事実によれば、乙A4発明には、グラフィック広告用の黒色の再帰反射材が開示されていることが認められる。 ウ原告の主張について原告は、乙A4文献には、「Retroreflective」という単語ではなく、「Reflective」という表現が用いられていることからすれば、再帰反射材で あることが開示されているとはいえない旨主張する。 しかしながら、乙A4文献には、「REFLECTIVITYDATA」として、再帰反射シートにつき、色ごとの反射性能が記載されているところ、当該反射性能は、紀和化学が販売する再帰反射シートのパンフレット(乙A5の1)に記載された反射性能と同様の条件(観測角、入射角)によるものと認められること からすれば、乙A4発明も上記パンフレット記載の再帰反射シートと同様に、再帰反射材としての性質を有するものと認めるのが相当である。そうすると、乙A4文献には、黒色の再帰反射材が開示されているものといえる。 したがって、原告の主張は、採用することができない。 一致点及び相違点 上記⑴に認定した乙A4の構成によれば、本件発明と乙A4発明は、入射光をそのまま光源方向へ再帰反射する黒色の再帰反射材を備えていることで一致し、以下において相違するものと認められる。 (相違点)本件発明は、「前記再帰反射材の表面に印刷により形成された図柄からなる 透光性の印刷層」(構成要件B)を備えているのに対し、乙A4発明には、再帰反射材の表面に「図柄からなる透光性の印刷層」が実際に印刷されていることが特定されていない。 容易想到性についてア証拠(乙A4)及び弁論の全趣旨によれば、乙A4文献には、車両用のス に「図柄からなる透光性の印刷層」が実際に印刷されていることが特定されていない。 容易想到性についてア証拠(乙A4)及び弁論の全趣旨によれば、乙A4文献には、車両用のス テッカーやマーキングに使用するための再帰反射材の一つとして、黒色の再帰反射材が開示されているところ、乙A4文献は、当該再帰反射材の上にインクジェット印刷(溶剤インクジェット又はUVインクジェット)により印刷して使用するものであることを直接明示している。 そして、証拠(乙A18ないし乙A20)及び弁論の全趣旨によれば、溶 剤インクジェット等の印刷において、CMYKの4色によって原稿の色を再現するフルカラー印刷が一般に行われており、CMYKを重ね合わせて様々な色を再現するために、これらのインク層が透光性であることも一般に知られていたことが認められる。そうすると、インクジェット印刷を用いて透光性の印刷層を形成することは、一般的な技術常識であると認めるのが相当で ある。その上、インクジェット印刷によって透光性の印刷層を形成するに当 たり、どのような文字や図柄を印刷するかどうかについては、その宣伝効果等に鑑み、当業者が創作能力を発揮して適宜なし得るものといえる。 これらの事情の下においては、乙A4発明に接した当業者は、乙A4発明で開示された黒色の再帰反射材につき、乙A4発明で直接的に明示されているインクジェット印刷を採用して、これにより透光性の印刷層で図柄を作成 し、もって本件発明の構成に想到することは容易であるということができる。 イこれに対し、原告は、乙A4発明に図柄から成る透光性の印刷層を設けることには阻害要因がある旨主張するが、以下のとおり、同主張は、いずれも採用することができない。 できる。 イこれに対し、原告は、乙A4発明に図柄から成る透光性の印刷層を設けることには阻害要因がある旨主張するが、以下のとおり、同主張は、いずれも採用することができない。 原告は、乙A4発明が車両用のステッカーやマーキングを使用用途とす るものであることに照らせば、乙A4発明は、再帰反射材の上に文字等を印刷することを示唆するものにとどまり、図柄を視認可能にするという技術思想は開示されていない旨主張する。 しかしながら、乙A4発明は、広告目的で車両にステッカーやマーキングに使用されるものであるから、その用途に照らしても、これに接した者 が文字に限り使用するものと認めるのは相当ではない。かえって、証拠(乙A4)及び弁論の全趣旨によれば、乙A4文献には、再帰反射材に印刷するものにつき、「side-graphicadvertisingontheirtrailers」などとして、図柄(graphic)という用語が採用されているのであるから、これに接した当業者が図柄を採用するための示唆があるものといえる。現に、証 拠(乙A50ないし53。なお、乙A53については、別紙「乙A53において表示されている画像」参照)及び弁論の全趣旨によれば、本件特許出願当時、車両等に図柄を使用した実例が広く存在することが認められ、これらの事情を踏まえても、原告の主張は、上記判断を左右するに至らない。 原告は、「溶剤インク」とは、インクを溶かす溶媒の種類が有機溶剤で あることを意味するものにすぎず、インク自体が透光性であることを意味するものではないため、乙A4発明は、黒色の再帰反射シートに透光性の印刷層を施すという技術思想を開示するものではない旨主張する。 しかしながら、既に ものにすぎず、インク自体が透光性であることを意味するものではないため、乙A4発明は、黒色の再帰反射シートに透光性の印刷層を施すという技術思想を開示するものではない旨主張する。 しかしながら、既に説示したとおり、インクジェット印刷を用いて透光性の印刷層を形成することは、一般的な技術常識であることが認められる ことからすると、乙A4発明の「溶剤インクジェットに適合している」旨の記載に接した当業者は、上記技術常識に照らし、その示唆に基づき、乙A4発明には透光性の印刷層が形成可能であることを容易に認識することができるものと認めるのが相当である。 したがって、原告の主張は、上記認定を左右するものとはいえない。 原告は、本件発明は通常光下では視認し難い図柄がフラッシュ光下ではフルカラーで現れるという作用効果をもたらすものであるところ、乙A4発明には、そのような技術思想が開示されていない旨主張する。 しかしながら、本件発明の特許請求の範囲には、上記のようにフラッシュ光下では図柄がフルカラーで視認可能であることを特定するような記 載は存在せず、本件明細書等にも、同様に、フラッシュ光下で視認可能となる図柄がフルカラーであることを必須とするような記載は存在しない。 そうすると、原告の主張は、前提を欠くものであり、仮に乙A4発明が図柄をフルカラーで浮かび上がらせる構成を必ずしも直接開示していないとしても、上記動機付けに関する認定を左右するものとはいえない。 原告は、乙A4発明から本件発明に至るためには、①数ある再帰反射材の中から、黒色の再帰反射材を選択した上で、かつ、②透光性の印刷層を設ける必要があるという前提に立った上で、これらについての動機付けがない旨主張する。 しかし には、①数ある再帰反射材の中から、黒色の再帰反射材を選択した上で、かつ、②透光性の印刷層を設ける必要があるという前提に立った上で、これらについての動機付けがない旨主張する。 しかしながら、乙A4発明には、グラフィック広告用の黒色の再帰反射 材が開示されるとともに、インクジェット印刷(溶剤インクジェット又は UVインクジェット)に適合する旨が明記されていることは、上記において説示したとおりである。そうすると、乙A4発明には、前記技術常識に照らし、黒色の再帰反射材上にインクジェット印刷によって透光性の印刷層を設ける旨の示唆があるといえるから、動機付けを認めるのが相当である。しかも、車の側面等に貼付するために黒色の再帰反射材の上に透光性 の印刷層を含む図柄を印刷することは、当裁判所が技術説明会でその後の主張の補充を求めた証拠(乙A50ないし53。第7回弁論準備手続調書参照)及び弁論の全趣旨を踏まえても、本件特許出願当時、通常に広く知られたものであることが認められ、当業者が創作能力を発揮して適宜なし得るものといえる。そうすると、阻害要因がある旨の原告の主張は、乙A 4発明において示唆されている技術的事項を正解するものとはいえない。 その他に、技術説明会の結果に照らし、原告の提出する準備書面及び証拠を改めて検討しても、原告の主張は、乙A4発明において示唆されている技術的事項を正解しないものに帰し、上記判断を左右するに至らない。 したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。 ウしたがって、本件発明は、特許法29条2項に違反するものであり、特許審判により無効とされるべきものである。 以上によれば、原告はその権利を行使することができず、その余の争点について判断するま ウしたがって、本件発明は、特許法29条2項に違反するものであり、特許審判により無効とされるべきものである。以上によれば、原告はその権利を行使することができず、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がない。 6 結論 よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 中島基至 裁判官 小田誉太郎 裁判官 國井陽平 (別紙)物件目録 1 図柄表示媒体 商品名:フラッシュプリント 2 メディア商品名⑴:専用の糊つきメディア商品名⑵:フラッシュプリント専用メディア 商品名⑶:専用メディア型番:YFP-01 (別紙)乙A53において表示されている画像

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