平成10(行ツ)86 建物収去土地明渡等,損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年10月15日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他 仙台高等裁判所 平成8(行コ)16
ファイル
hanrei-pdf-62420.txt

判決文本文4,892 文字)

主文 1 原判決中被上告人B1に対する承諾料の請求に係る部分を破棄し,第1審判決中同部分を取り消し,同部分につき本件訴えを却下する。 2 上告人のその余の上告を棄却する。 3 上告人の被上告人B1に対する承諾料の請求に関する訴訟の総費用及び前項の部分に関する上告費用は,上告人の負担とする。 理由 第1 上告代理人小野寺信一,同半澤力の上告理由第三について 1 第1審仙台地方裁判所平成元年(行ウ)第1号事件(以下「第1事件」という。)は,仙台市(以下「市」という。)の住民である上告人が,市の締結した第1審判決別紙物件目録二記載の土地(以下「本件土地」という。)の賃貸借契約には,随意契約の方法により締結された点に地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下「法」という。)234条2項違反があり,適正な対価を伴わないのに条例の定め又は議会の議決に基づかないで締結された法237条2項違反があるため,無効であると主張して,法242条の2第1項4号に基づき,市に代位して,市長として同契約を締結した被上告人B2及び当該行為に係る相手方であるその余の被上告人らに対し損害賠償を,被上告人B3電子計算機株式会社(以下「B3電子」という。)及び被上告人学校法人B4学園(以下「学園」という。)に対し本件土地の所有権に基づいてその地上建物の収去,本件土地の明渡し及び賃借権設定登記の抹消登記手続を,それぞれ求めたものである。 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1) 市は,昭和62年7月1日,被上告人B1の被相続人D(以下「亡D」という。)及び被上告人B3電子との間で,本件土地の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結し,亡D及び被上告人B3電子に対し は,昭和62年7月1日,被上告人B1の被相続人D(以下「亡D」という。)及び被上告人B3電子との間で,本件土地の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結し,亡D及び被上告人B3電子に対し,本件土地を引き渡- 1 -した。そして,同年10月31日,本件土地について,亡D及び被上告人B3電子の持分を各2分の1とする賃借権設定登記がされた。 (2) 亡D及び被上告人B3電子は,平成元年2月ころ,本件土地上に第1審判決別紙物件目録一記載の建物(以下「本件建物」という。)を建築した。亡Dは,同年3月7日,本件建物の区分所有権を被上告人B3電子及び被上告人学園に譲渡するとともに,本件土地の賃借権持分1万分の1324を被上告人B3電子に,同持分1万分の3676を被上告人学園に譲渡し,同年4月7日,賃借権移転の付記登記がされた。 (3) 上告人は,平成元年1月20日,市監査委員に対し,市長が本件賃貸借契約を締結したことにつき,① その前提として,市の公募に対し応募のあった本件土地等の開発計画の提案のうち亡D,被上告人B3電子外3社から成るグループの提案を最優秀計画と決定したことは手続的にも内容的にも合理的理由を欠き,賃借人を総合的事業遂行能力を欠く被上告人B3電子及び亡Dに絞ったことは不当な財産の貸付けに当たり,② 本件賃貸借契約で合意された権利金及び賃料の額が鑑定評価を下回るなど適正な対価を伴わないのに財産を貸し付けた違法があると主張して,その是正と損害補てんのために必要な措置を求める監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。 3 論旨は,本件監査請求の対象が本件賃貸借契約の締結であるとしてその締結の日を基準に法242条2項本文を適用すべきものとした原審の判断には,法令解釈の誤りがある旨をいう。 同項本文にいう当該行為のあった日とは 本件監査請求の対象が本件賃貸借契約の締結であるとしてその締結の日を基準に法242条2項本文を適用すべきものとした原審の判断には,法令解釈の誤りがある旨をいう。 同項本文にいう当該行為のあった日とは一時的行為のあった日を,当該行為の終わった日とは継続的行為についてその行為が終わった日を,それぞれ意味するものと解するのが相当である。【要旨1】前記事実関係によれば,本件監査請求においては,本件賃貸借契約の締結がその対象となる行為とされているところ,契約の締結- 2 -行為は一時的行為であるから,これを対象とする監査請求においては契約締結の日を基準として同項本文の規定を適用すべきである。これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 第2 上告代理人小野寺信一,同半澤力の上告理由のうち第1事件について法242条2項ただし書にいう正当な理由の解釈適用の誤りをいう部分について 1 普通地方公共団体の執行機関,職員の財務会計上の行為が秘密裡にされた場合に限らず,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,法242条2項ただし書にいう正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁平成10年(行ツ)第69号,第70号同14年9月12日第一小法廷判決・裁判所時報1323号4頁〔編注:民集56巻7号1481頁〕,最高裁平成13年(行ツ)第38号,同年(行ヒ)第36号同14年9月17日第三小法廷判決・裁判所時 0号同14年9月12日第一小法廷判決・裁判所時報1323号4頁〔編注:民集56巻7号1481頁〕,最高裁平成13年(行ツ)第38号,同年(行ヒ)第36号同14年9月17日第三小法廷判決・裁判所時報同号11頁〔編注:裁判集(民事)207号111頁〕参照)。もっとも,当該普通地方公共団体の一般住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて上記の程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなくても,監査請求をした者が上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される場合には,上記正当な理由の有無は,そのように解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである。 2 原審の適法に確定した事実関係によれば,本件賃貸借契約の締結に至る事実経過については逐一新聞報道されていたというのであるから,本件賃貸借契約が締結されたこと自体については,これに近接する時点において,市の一般住民が相当の- 3 -注意力をもって調査すれば客観的にみてこれを知ることができたということができる。そして,記録によれば,① 本件監査請求の代理人である弁護士は,昭和63年11月10日ころ,市の内部資料を入手したが,その中には,本件賃貸借契約において定められた権利金及び賃料の算定根拠に用いられた本件土地の更地価格が1㎡当たり57万4750円であることを示す資料のほかに,同62年4月1日時点の本件土地の1㎡当たりの更地価格を71万5000円とする鑑定評価書,これを64万9000円とする鑑定評価書が含まれていたこと,② 上告人は,昭和63年11月17日付けで自ら不動産鑑定士として本件賃貸借契約における権利金及び賃料の額の適否について意見書を作成したが,その内容は,上記の権利金及び賃料の算定根拠となった本件土地の1㎡当たりの更地価格57 1月17日付けで自ら不動産鑑定士として本件賃貸借契約における権利金及び賃料の額の適否について意見書を作成したが,その内容は,上記の権利金及び賃料の算定根拠となった本件土地の1㎡当たりの更地価格57万4750円は,類似地域の公示価格により算定される契約時点における1㎡当たりの更地価格74万4000円と比べて20%程度低くなっており,権利金及び賃料を総合すると,対象不動産の価値に比して低いと考えると結論付けたものであることが認められる。 そうすると,【要旨2】上告人は,市の内部資料により本件賃貸借契約における権利金及び賃料の算定根拠を知ることができたのであり,これに基づいて,遅くとも昭和63年11月17日ころまでには,上記権利金及び賃料が適正な額より低いとする旨の不動産鑑定士としての意見を明らかにすることができたのであるから,そのころには既に本件賃貸借契約の締結について直ちに監査請求をするに足りる程度にその内容を認識していたというべきである。このような上告人の認識に基づいて考えると,平成元年1月20日にされた本件監査請求は前記の相当な期間内にされたものということができず,本件監査請求に法242条2項ただし書にいう正当な理由があるということはできない。 以上によれば,本件監査請求に上記正当な理由がないとした原審の判断は,結論において是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は採用することがで- 4 -きない。 第3 職権による検討第1審仙台地方裁判所平成2年(行ウ)第2号事件(以下「第2事件」という。)のうち被上告人B5に対する請求に係る部分は,上告人,原審控訴人E,同F,同G,同H及び同I(以下「上告人外5名」という。)が,亡Dが被上告人学園に対してした前記第1の2(2)の賃借権持分の譲渡につき,亡Dを相続した被上告人B5には本 分は,上告人,原審控訴人E,同F,同G,同H及び同I(以下「上告人外5名」という。)が,亡Dが被上告人学園に対してした前記第1の2(2)の賃借権持分の譲渡につき,亡Dを相続した被上告人B5には本件賃貸借契約により承諾料7954万5887円の支払義務があると主張して,法242条の2第1項4号に基づくものとして,市に代位し,上記承諾料及びこれに対する遅延損害金の支払を請求した事件である。原審は,同請求に係る訴えを適法とした上で,その請求を棄却すべきものとした。 しかしながら,【要旨3】上記請求のうち遅延損害金請求は同号所定の怠る事実に係る相手方に対する損害賠償の請求に該当するから,同請求に係る訴えは適法であるが,承諾料請求は,契約に基づき債務の履行を求めるものであり,同号所定のいずれの請求にも該当せず,他にこのような請求を許容する法律の定めはないから,同請求に係る訴えは不適法である。 そうすると,原判決中,上記承諾料請求を棄却すべきものとした部分には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるから,原判決中上記部分を破棄して,第1審判決中同部分を取り消し,上告人外5名の上記請求に係る訴えを却下すべきである。 第4 上告代理人小野寺信一,同半澤力の上告理由のうち第2事件(前記承諾料請求の部分を除く。)に係る部分について原審の適法に確定した事実関係の下においては,所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができ,その過程に所論の違法はない。論旨は採用することができない。 - 5 -第5 訴訟費用の負担について以上のとおり,【要旨4】前記承諾料請求に係る部分について,原判決を破棄し,第1審判決を取り消して,上告人外5名の被上告人B5に対する上記請求に係る訴えを却下するとともに,その余の上告を棄却すべきところ,本件は,上告人外5 前記承諾料請求に係る部分について,原判決を破棄し,第1審判決を取り消して,上告人外5名の被上告人B5に対する上記請求に係る訴えを却下するとともに,その余の上告を棄却すべきところ,本件は,上告人外5名のうち上告人のみが上告をしたものであるから,上告人と被上告人らとの間において生じた訴訟費用についてのみ負担の裁判をすべきである。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官濱田邦夫裁判官金谷利廣裁判官奥田昌道裁判官上田豊三)- 6 -

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る