(原審・東京地方裁判所八王子支部平成8年(ワ)第2506号(原審言渡日平成12年6月28日)) 主文 1 原判決中,控訴人らに関する部分を取り消す。 2 控訴人らと被控訴人との間において,控訴人らが,55歳時年度以降の給与について,平成5年4月1日から施行すると規定された被控訴人の就業規則第42条に基づく給与規程第1章第3条(3)に定められた労働契約上の地位を有することを確認する。 3 被控訴人は,控訴人Aに対し,金699万1162円,並びに内金160万3910円に対する平成10年10月21日から,内金342万4010円に対する平成12年2月19日から,内金118万4711円に対する同年11月21日から,内金77万8531円に対する平成13年5月19日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人は,控訴人Bに対し,金638万1279円,並びに内金149万0190円に対する平成10年10月21日から,内金309万0349円に対する平成12年2月19日から,内金108万6655円に対する同年11月21日から,内金71万4085円に対する平成13年5月19日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 6 この判決は,第3,第4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨(当審で拡張された請求を含む。)主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,被控訴人の職員である控訴人らが,被控訴人による就業規則及びこれに基づく給与規程の不利益変更は,控訴人らの同意がなく,かつ必要性も合理性も認められないものであるから,控訴人らに対しては効力を有しないとして,同変更前の被控訴人との労働契約上の地位にあることの確認を求めるとと 規程の不利益変更は,控訴人らの同意がなく,かつ必要性も合理性も認められないものであるから,控訴人らに対しては効力を有しないとして,同変更前の被控訴人との労働契約上の地位にあることの確認を求めるとともに,変更前の給与規程等により支払われるべき給与及び賞与(以下「給与等」という。)と,変更後の給与規程等によって支払われた給与等との差額の金員の支払を求めた事案である。 2 原判決は,上記の就業規則等の変更は,控訴人らに対する不利益を法的に受忍させることもやむを得ない程度の高度な必要性に基づいた合理的な内容のものであると認められると判断して,控訴人らを含む合計7名の一審原告らの請求を全部棄却した。 同原告らのうち,控訴人ら2名がこれを不服として控訴したものである。 なお,控訴人らは,当審において,給与等の差額支払の請求を拡張した。 3 当事者の主張は,次項に控訴人らの当審における請求の原因の追加分を含めた請求の要約,並びに後記第3,第4項に当審における双方の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄第三「当事者の主張」(原判決7頁8行目から37頁4行目までと,40頁末行から104頁4行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,控訴していない一審原告らのみに関する部分を除く。)。 なお,本件で問題となる「歳時年度」の意味(原判決11,12頁),平成4年3月31日に行われた定年の延長及び給与制度の変更に関する就業規則及び給与規程の改正を「旧制度」と呼称すること(同12頁),並びに平成8年7月8日に行われた給与体系及び人事考課制度の改正を主たる内容とする就業規則及び給与規程の変更を「本件就業規則等変更」といい,同変更に伴う体制を「新制度」と呼称すること(同15頁)は,いずれも原判決と同様である。 また,当事者双方が引用する株式 を主たる内容とする就業規則及び給与規程の変更を「本件就業規則等変更」といい,同変更に伴う体制を「新制度」と呼称すること(同15頁)は,いずれも原判決と同様である。 また,当事者双方が引用する株式会社みちのく銀行事件の上告審判決は,最高裁判所平成8年(オ)第1677号・平成12年9月7日第一小法廷判決(民集54巻7号2075頁)であり,以下,これを「みちのく銀行事件上告審判決」と略称し,同判決の事案を単に「みちのく銀行事件」という。 4 よって,控訴人らは,被控訴人に対し,控訴人らがいずれも旧制度に基づく労働契約上の地位にあることの確認を求めるとともに,被控訴人との雇用契約に基づいて,旧制度のもとで支払われるべき給与等の合計額と,新制度によって現実に支払われた給与等の合計額との差額として,原判決別表1及び3記載の各金員に,本判決別表Ⅰ及びⅡ記載の各金員を加えた金員の合計である控訴の趣旨記載のとおりの各金員の支払を求める。 5 控訴人らが求める上記給与等の差額が,控訴人ら主張のとおりの金額であることは,被控訴人もこれを認める。 第3 当審における控訴人らの主張 1 原判決の概括的批判と,みちのく銀行事件上告審判決の判断の枠組み(1) 原判決の概括的批判原判決は,本件就業規則等変更によって55歳時以上の高年齢職員という特定の層のみに著しい不利益を与えることを容認し,高年齢職員から人間らしく生きていく権利を奪い,人間を年齢によって差別する不当な判決である。 アまず,本件では,就業規則変更前に既に62歳定年制は導入されており,職員は誰でもこれを前提としてそれぞれの生活設計を立てていたものであるから,本件は,定年制延長に伴う賃金切り下げの事案とは明らかに性格を異にしている。しかも,55歳時以上の職員は,旧制度下でも賃金が毎年6%ずつ減額される としてそれぞれの生活設計を立てていたものであるから,本件は,定年制延長に伴う賃金切り下げの事案とは明らかに性格を異にしている。しかも,55歳時以上の職員は,旧制度下でも賃金が毎年6%ずつ減額されるという大幅な不利益を受けていたものであり,その上に本件の変更によって,旧制度に比して,18・8%又は21・2%の減額(コースを選択しない場合に適用される原判決(ウ)(a)のコースでは,基本給が57歳時年度から54歳時に比して50%の減額となる。)という著しい不利益を被ることとなったものである。 この点に関し,被控訴人は,54歳時年度の賃金額を100として,旧制度の減額率が76%で,新制度のそれが61・71%だから,その差はわずか14・29%にすぎないと主張するが,これは誤りである。すなわち,被控訴人は,54歳時年度の賃金額を旧制度下でも新制度下でも同じとみているところに誤りがあり,旧制度からみれば,新制度の賃金が18・8%又は21・2%ダウンすることは計算上明らかである(なお,旧制度下でも,それ以前と比べ7年間で24%も減少するのであり,これに被控訴人の主張する14・29%を合わせると,新制度では38・29%も減少するのである。)。 イ次に,控訴人らは,いずれも8級職以上の管理職資格であり,55歳時までは支店長などの極めて重要かつ中核的な地位にあって,重要な職責と役割を担ってきたものである。被控訴人においても,55歳時以降のスタッフの重要性を強調していたものであり(甲21),したがって55歳時以降の職位がラインからはずれても,それまでの経験・知識・能力を有用活用し,公正に処遇することを予定していた。 本件の一審原告らも,55歳時になると直ちに原判決のいうような「定型的で軽易な職務」に就いたのではなく,監督的業務などに携わってきたものである 能力を有用活用し,公正に処遇することを予定していた。 本件の一審原告らも,55歳時になると直ちに原判決のいうような「定型的で軽易な職務」に就いたのではなく,監督的業務などに携わってきたものであるから,原判決が,控訴人らの職務を概ね定型的で軽易な職務であるとして,本件就業規則等変更の合理性の判断要素としていることは,事実誤認であり,結果的に高年齢者の立場をないがしろにするものである。 ウまた,原判決は,証拠に基づかないで,中高年齢職員層の増加及びこれに伴う人件費の増加・偏在化が若手・中堅職員の士気低下につながるとか,人事の停滞,企業の活力低下という状況を招きかねないなどと認定する誤りを犯している。 エさらに,年齢による差別禁止の考え方は,国際的人事慣行基準(ILO111号条約「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約」,162号同勧告「高年齢労働者に関する勧告」)であり,国内法においても憲法14条,労働基準法3条,4条等により公序となっているが,原判決は,このような公序にも反する不当な差別判決である。 (2) みちのく銀行上告審判決の判断の枠組み原判決の論旨は,みちのく銀行上告審判決の原審である仙台高裁判決の論旨を下敷きにしたものであり,同高裁判決が上告審で破棄された以上,本件の原判決も当然に破棄されるべきである。 同最高裁判決は,本件事案にもほぼそのまま適用されるといえる。 ア両事案は,定年の年齢に違いはあるものの,定年の延長を伴うことなく,就業規則変更によって55歳以上の高年齢職員の賃金を大幅に減額する点で共通である。 イ賃金の減額率も,みちのく銀行事件では「得べかりし標準賃金額に比しておおむね40数%程度から50数%程度」であり,本件では,標準的コースで57歳時以降62歳時まで50%減となり,結果的に両事案とも同じ程度 減額率も,みちのく銀行事件では「得べかりし標準賃金額に比しておおむね40数%程度から50数%程度」であり,本件では,標準的コースで57歳時以降62歳時まで50%減となり,結果的に両事案とも同じ程度の賃金減額幅ということができる。 ウみちのく銀行事件では,約73%を組織する多数者労働組合の合意を得て就業規則を変更しているが,本件では,55歳時未満の職員で構成する組合との交渉において,55歳時以降の賃金減額を交渉事項とすることを拒否して利益調整は行われておらず,最終的にも組合の合意を得ていない。 エさらに,みちのく銀行事件では一定の緩和の経過措置や代償措置がとられているが,本件では,それらの措置は何らとられていない。 オみちのく銀行事件上告審判決は,当該労働者の受ける不利益の大きさに着目し,そのような大きな不利益を課すことを正当化するには,「差し迫った必要性」が必要であるとし,同事件ではそのような差し迫った必要性は認められないとしたものである。 したがって,被控訴人が,みちのく銀行事件を本件とは事案を異にすると位置づけて指摘するような「中堅層の賃金等が改善された等の事実」は,差し迫った必要性を否定する間接事実として位置づけられているにすぎない。 そして,後記に詳述するとおり,本件の新制度により受ける控訴人らの不利益は極めて大きいのに比し,被控訴人に「差し迫った必要性」がなかったことは明らかである。 差し迫った必要性とは,被控訴人主張のような自己資本比率の維持等のことを指すのではなく,上記最高裁判決が判示するように,当該企業の存続自体が危ぶまれたり,経営危機による雇用調整が予想される場合を指すのである。 (3) ディスクロージャーされた被控訴人の経営指標の恣意的使い分け被控訴人は,原審において本件就業規則等変更の必要性を主張するた れたり,経営危機による雇用調整が予想される場合を指すのである。 (3) ディスクロージャーされた被控訴人の経営指標の恣意的使い分け被控訴人は,原審において本件就業規則等変更の必要性を主張するために,被控訴人の経営悪化を盛んに主張したが,本件訴訟外では,以下のとおり,広く外部に対して経営状態を良好なものとして宣伝したり,別件訴訟でも経営状態がよいことを主張しており,このような被控訴人の態度は,禁反言の原則に反するものであって,このようなアンフェアで禁反言の原則に反するような理由付けで行われた本件就業規則等変更には合理性を認めることはできないはずである。 ア平成7年8月29日付け読売新聞(甲18)で,E理事長は,平成6年度の預金伸び率が都内51信用金庫中,2年連続でトップとなった理由について「不良債権が少ない」と答えている。 イ地元紙である平成8年5月7日の東京速報(甲14)によれば,被控訴人の平成7年度決算については,「業務純益前年比36・7%増」「31億円と大巾増益」との見出しで,預金,貸出金とも3年連続6~8%台の伸びを記録し,質の向上を伴って業容の拡大が図られたことが報じられている。 ウ被控訴人の業績を報告したディスクロージャー誌(甲13)でも,平成7年度末での破綻先債権額は42億円であるが,担保及び保証で18億円が保全され,債権償却特別勘定として23億円が既に経費計上されているので,実質破綻先債権は1億円であり,これについては法定の貸倒引当金が別途7億円計上されているので,最終的には全く懸念がない旨記載されている。 エ平成8年度決算報告を報じた平成9年5月13日付け東京速報(甲15)にも,「27億円の好決算」「預金・四年連続一位」とある。 オ上記E理事長が当事者となっている別件の会員代表訴訟において同理事長は,被控訴人 決算報告を報じた平成9年5月13日付け東京速報(甲15)にも,「27億円の好決算」「預金・四年連続一位」とある。 オ上記E理事長が当事者となっている別件の会員代表訴訟において同理事長は,被控訴人の経営状態がよいことを縷々主張している(甲57の1~3)。 2 原判決の「不利益性論」の誤り(1) 原判決の不利益性判断の誤り原判決は,秋北バス事件以来の従来の判例理論によって確立されたリアルな比較衡量判断の枠組みを意図的に形骸化し,本件就業規則等変更によって控訴人らが被る重大な不利益をことさら軽視し,他方で,被控訴人のいう新たな情勢(「金融機関を取り巻く厳しい環境」などというもの)に応じて経営効率化を図るための新制度の必要性なるものを鵜呑みにし,そして,これを補うためか,本来はあくまでも付随的な判断要素に過ぎない同業他社水準や高年齢者に対する社会的趨勢などについて,あたかも基本的判断要素であるかのように格上げし,これらに重きを置き過ぎているところに問題がある。 (2) 原判決が故意に見ようとしない控訴人らの重大な不利益ア原判決は,新制度により控訴人らが被る賃金上の重大な不利益について,数年間の合計金額という形で極めて抽象的に述べているだけであり,控訴人らが毎月どのような思いで,どれだけの窮乏生活を強いられているのかなどについて全く言及もされていない。 イ原判決は,本件不利益変更後の控訴人らの月々の手取額を看過している。 控訴人らについて,①賃金切り下げ前の平成7年度,②旧制度適用時期であった平成9年度,③新制度の適用による平成10年度における各月額賃金は,以下のとおりとなる。 控訴人A ①54万9740円(うち基本給51万9740円)②50万5760円(同 45万8260円)③30万7 各月額賃金は,以下のとおりとなる。 控訴人A ①54万9740円(うち基本給51万9740円)②50万5760円(同 45万8260円)③30万7870円(同 26万0370円)控訴人B ①52万7620円(同 47万6620円)②46万0810円(同 42万0310円)③27万9310円(同 23万8810円)以上のように,控訴人Aにあっては,平成10年4月以降の支給総額は,平成7年度に比べ約44%のダウン,平成9年度に比べても約36%のダウン,控訴人Bにあっては,同様にそれぞれ約47%,約39%のダウンとなっている。しかも控訴人Bは,平成11年度からは事務課長権限も奪われ,職務手当7500円がさらに減額されている。 しかも,実際の手取額は,上記の金額からさらに法定控除等が引かれたものであり,新制度は,わずかな年金しかない年老いた父母や,教育費のかかる大学・高校生の子供らを抱え,また多額の住宅ローンの返済にあえいでいる年代に当たる控訴人らの家計を直撃し,家族の生活を根底から覆しかねないほどの重大な経済的不利益を与えているのである。 ウ毎月の賃金の減少は,これに連動して夏期及び冬季賞与の減額をもたらすものである。さらに控訴人らについては,平成9年度以降,報復的に支給月数が切り下げられ,結果としてさらに多額の減収となっている。 エ原判決は,以上のような控訴人らの生活の窮状を看過している。 控訴人らは,この点について原審においても控訴人Aの家庭を例に詳細に主張・立証したにもかかわらず,原判決は全く触れようともしていない。 控訴人Aの窮状は,甲31の1,61の1~7,63及び原審の本人尋問の結果のとおりであり,控訴人Bも も控訴人Aの家庭を例に詳細に主張・立証したにもかかわらず,原判決は全く触れようともしていない。 控訴人Aの窮状は,甲31の1,61の1~7,63及び原審の本人尋問の結果のとおりであり,控訴人Bも同様に困窮状態にあり,生活費の切り詰め,貯金の取り崩しその他の自己防衛に追われているものである。 オ原判決は,新制度が旧制度に比べて更なる賃金切り下げであったことを看過している。 この点は,前記1(1)アのとおりであるが,原判決は,旧制度との比較でしか新制度の不利益性を捉えていない。 (3) 新制度による55歳時年度未満の一部管理職の賃金の上昇についてア原判決は,新制度によって55歳時年度以降の職員のみではなく,55歳時年度未満の職員の本給も平均4・31%の減額となっていることを認定する(原判決140頁)。 しかし,55歳時年度未満の職員については,現実には減収にならないように,上位資格等級昇格時まで調整給与支給という形で,代償措置がとられている(甲8,D証言)。 しかも,55歳時年度未満の職員のうち,8級職ないし10級職の管理職については,新制度の適用により,逆に基本的に賃金が上昇することになっている。 原判決は,この点を全く看過している。 イすなわち,新制度の賃金体系は,旧制度下の年齢給が廃止された代わりに,1級職ないし7級職の一般職は職能給,55歳時年度未満の職員のうち8級職ないし10級職の管理職は職能給+業績給,55歳時年度以降の職員は職能給が各支給されるという3本立てとなったところ,このうち,職能給については,資格等級・年齢に関係なく,平成8年度から一律1000円アップしたので問題はないが,業績給については,同年度から年齢に関係なく基本的に一律19万1700円に統一され,ただ業績査定により20%の幅でプラスマイナスされること く,平成8年度から一律1000円アップしたので問題はないが,業績給については,同年度から年齢に関係なく基本的に一律19万1700円に統一され,ただ業績査定により20%の幅でプラスマイナスされることとなった。 平成8年4月時点では,55歳時年度未満の職員のうち8級職ないし10級職の管理職は約80名いたが,これらの職員は,旧制度では,年齢給として最高でも49歳で19万0200円,40歳では17万3700円しか支給されなかったのに,新制度実施により,一律基本ベースとして19万1700円を支給されることとなった結果,毎月1500円ないし最高で1万8000円もの賃金水準のアップとなったのである。 ウ被控訴人は,もとより上記の事実を知りながらあえて新制度を実施したものであり,このように55歳時年度未満の者と同歳時年度以降の者とで差別をし,後者にのみ重大な不利益を課すことは,みちのく銀行事件上告審判決の判示するところからしても,効力を生じないというべきである。 (4) 原判決の安易な「金融業界での世間相場」論の誤りア原判決は,被控訴人提出の「中小企業の賃金事情」(乙104)のみを根拠にして,東京都内の中小金融・保険業に勤務する55歳及び60歳男子の平均年収と,被控訴人における新制度下の平均年収とを比較し,後者の賃金水準が他の金融機関のそれと比較して特に遜色ないこと(原判決191,204頁),並びに全信協の資料から,全国の信用金庫における定年年齢前の高齢職員に対する処遇の概況なるものを示した上で,新制度の内容自体の相当性を肯定する(原判決189~191頁,205,206頁)。 イしかし,前記(1)のとおり,同業他社との比較は,判例上確立された基本的判断枠組みとの関係では,あくまで付随的な要素にすぎないから,これに重きを置いて本件就業規則等不利益 ,205,206頁)。 イしかし,前記(1)のとおり,同業他社との比較は,判例上確立された基本的判断枠組みとの関係では,あくまで付随的な要素にすぎないから,これに重きを置いて本件就業規則等不利益変更の合理性を判断することは許されない。仮にこれを重視すれば,労働条件が重大な不利益な内容に変更されることの合理性,必要性の判断がおろそかにされる上,そもそも同業他社との比較といっても,それぞれの企業・労使関係の歴史的経過や考え方の違いがあり,単純に比較できるものではない。 ウ仮に比較するとしても,都内金融機関における賃金水準の相場は,原判決の認定するようなものではない。そもそも,原判決の認定するところによっても,東京都内の中小金融・保険業に勤務する55歳男子の平均年収が917万2600円,60歳のそれが682万円であり,他方,新制度による控訴人Aの平均年収は644万円,控訴人Bのそれは613万円というのであるから,その単純な比較だけからしても,控訴人らの平均年収が大きく下回っていることは明らかであり,なぜ「特に遜色ない」と断定できるのか甚だ疑問である。 しかも,原判決の上記認定のもとなった被控訴人提出の資料は何故か平成4年の数値を集めた平成5年版であり,平成6年以降の調査結果を調べれば,それら数値が控訴人らの平均年収よりも大きく上回ることは明らかである。 エ次に,原判決が引用する定年年齢前の高齢職員の処遇の概況に関する数値は,故意に数字を大きくしたもので不適切である。 すなわち,原判決は,「過半数の信用金庫で,新制度と同様に高齢者に対する処遇についてその給与を逓減するという制度を採用しているところ,その逓減率についても,新制度と同じ程度のところが3割以上存在している。」旨認定するが(原判決205頁),原判決は,乙57の29頁第4表の数値を いてその給与を逓減するという制度を採用しているところ,その逓減率についても,新制度と同じ程度のところが3割以上存在している。」旨認定するが(原判決205頁),原判決は,乙57の29頁第4表の数値を誤って引用している上(原判決は,189頁において,処遇の変更をするという信用金庫の数を417金庫中の273金庫として過半数であると認定するが,本件と同様に「基準内給与」について処遇を変更するものは,同号証によれば,417金庫中192金庫しかないから,過半数ではない。),給与の逓減率が70%台の信用金庫をも本件の新制度と「同じ程度」と強弁することで,故意に新制度と同様の逓減率の割合の数値を「3割以上」と高く見せようとしている点で不適切である。 真実は,本件と同様の切り下げ率(60%台の前半)で実施している金庫のは,417金庫中の32金庫,わずか7・7%でしかないのである。 (5) 原判決の「職務内容比例」論の誤りア原判決は,一審原告らの職務内容を概ね「定型的で軽易な職務」と認定した上で(原判決188頁),同原告らの賃金水準は,その職務内容に照らして不相当に低いものとまではいえないとした(原判決204頁)。 しかし,控訴人らが55歳時年度以降担当している職務は,決して定型的で軽易な職務ではない。 しかも,「定型的で軽易な職務」などという主張は,本件訴訟対策として被控訴人がにわかに始めた後付け主張であって,原判決は,同主張が苦しい言い訳けであることを全く看過している。 イみちのく銀行事件上告審判決は,「賃金が減額されても,これに相応した労働の減少が認められるのであれば,全体的にみた実質的な不利益は小さいことになる。」としながら,他方,①所定労働時間の変更の有無,②就業規則改定による賃金切り下げ前後での職務軽減の有無,程度をメルクマールとして挙 められるのであれば,全体的にみた実質的な不利益は小さいことになる。」としながら,他方,①所定労働時間の変更の有無,②就業規則改定による賃金切り下げ前後での職務軽減の有無,程度をメルクマールとして挙げている。 本件では,まず,新制度導入後も,労働時間の変更は一切ない。 次に,質的な側面においても,55歳時年度以降の職務が新制度によって軽減された事実はない。 もともと55歳に到達した職員を原則的に役職を離脱させる制度は,昭和57年11月の定年年齢延長の就業規則改定の際に既に発足していたものであり,本件の新制度の導入とは全く連動しないものであるから,55歳時年度以降の役職離脱は,新制度による賃金切り下げの相当性を裏付ける理由とはならない。 しかも,甲72の1,2からも明らかなとおり,55歳時年度以降の本部勤務の職員及び「支店長席」の職務も,決して定型的で軽易なものではない(そもそも「支店長席」の定義やその職務内容を定めた規定は存在しない。)。 実際にも,控訴人Aは,55歳で役職離脱後,平成8年4月から事務課長権限を付与された支店長席であったが,その間,監督職としての課長がいない支店もあったため,自ら広範な職務内容を持つ課長の職を全て担当していたものである。 ウ原判決は,被控訴人の悪意の職務軽減政策に惑わされている。 被控訴人の「定型的で軽易な職務」などという主張が後付けの訴訟対策でしかないことは,甲21(平成7年2月中旬に配布された「高齢者の職務について」と題する書面)からも明らかである。 すなわち,同書面では,「支店長席」の職務の範囲を「指導的,管理的なもの等職務基準に基づき決定する。」と定めており,「定型的で軽易な職務」とは全く逆の概念となっている。 しかも,高年齢職員の知識と経験を活用し,指導的,管理的な職務を担当させようとの 的,管理的なもの等職務基準に基づき決定する。」と定めており,「定型的で軽易な職務」とは全く逆の概念となっている。 しかも,高年齢職員の知識と経験を活用し,指導的,管理的な職務を担当させようとの考え方は,旧制度実施後,被控訴人が一貫して取ってきた考え方である(乙117参照)。被控訴人が,新制度による賃金切り下げの理由として,55歳時年度以降の職員の職務内容が定型的で軽易であり,5級職ないし6級職に相当するにすぎないなどと説明したことは一度もないのである。 原判決は,上記のような被控訴人の後付け主張を鵜呑みにしたところに決定的な誤りの一つがある。 エ控訴人らが担当させられた職務は,見せしめ的なものである。 控訴人らは,現在営業店に配属され,控訴人Bについては,平成11年度から事務課長権限を奪われ,支店長席の職務さえ奪われている。控訴人らが55歳時年度以降担当させられた職務の全部ないし一部が見せしめ的なものであることは,次のような被控訴人の言動からも明らかである。 ① 被控訴人が平成8年3月18日,故FとGを呼びつけた際,E理事長は「申入書は見た。覚悟ができているのですか。」と述べ,不利益処分を匂わせて恫喝した。 ② 上記Gは,同年8月23日にも,被控訴人のH常務らから,「該当者(組合結成者)の解雇はやる。」などと恫喝された。 ③ 平成9年8月26日,控訴人らが加わる「Cユニオン」と被控訴人との団体交渉の席上,D理事は,第一審原告ら4名の夏期賞与がマイナス査定されたことについて「企業防衛のためマイナス考課したことは一理あると判断する。」旨述べて,これが報復的なマイナス査定であったことを露骨に明らかにした。 以上のように,控訴人らは,見せしめ的に屈辱的な職務を担当させられたものであり,本来の職務を担当したものではないから,控訴人らが実際 ,これが報復的なマイナス査定であったことを露骨に明らかにした。 以上のように,控訴人らは,見せしめ的に屈辱的な職務を担当させられたものであり,本来の職務を担当したものではないから,控訴人らが実際に担当した職をもって控訴人らの賃金切り下げを正当化することは絶対に許されない。 オ控訴人らは,これまで被控訴人の発展に寄与するべく,自分の体調を崩すほどに職務に一生懸命精励してきたものであり,控訴人らには,被控訴人の発展に寄与する能力も経験も意欲もある。 (6) 原判決の「高齢者の雇用確保における社会的趨勢」論の誤りア原判決は,「高齢者の雇用についての社会情勢等」という項目をわざわざ設け(原判決」192頁),I電力とJ電機の例を根拠に,本件の新制度が給与面だけでも特に高齢者に不利に設定されているとはいえず,雇用確保の観点からはむしろ有利に設定されているとすらいうことができるとする(原判決206頁)。 イしかし,同業他社との単純な比較や社会趨勢論を安易に持ち出すことが不当であることは前記のとおりであるが,そもそもI電力やJ電機の例は,本件とは全く事案を異にする「定年後再雇用制度」の問題である(甲80,81)。しかも原判決は,新聞記事や被控訴人の準備書面のみで事実認定をするといった判決のあり方としてはあまりにお粗末で乱暴な手法を取っている。 ウ新制度は,近年の国際社会において認められてきている高齢者労働者の人権保障の流れ(昭和23年世界人権宣言,昭和41年「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(通称A規約)並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約(通称B規約)」,昭和55年の高齢労働者に関する勧告(ILO第162号勧告)等の様々な国際条約や勧告)に逆行するものである。 3 原判決の「必要性論」の誤り(1) 原判決の誤り原判決は, 規約(通称B規約)」,昭和55年の高齢労働者に関する勧告(ILO第162号勧告)等の様々な国際条約や勧告)に逆行するものである。 3 原判決の「必要性論」の誤り(1) 原判決の誤り原判決は,本件就業規則等変更の必要性について,①被控訴人の経営状態が良好ではなく,早期に経営を立て直す必要に迫られていたこと,②自己資本比率を維持・上昇させる必要があったことを指摘した上で,他と比較して高水準にある物件費や人件費を削減せざるを得ない状況にあったとする(原判決199から201頁)が,これは,以下の点において誤っている。 (2) 被控訴人の経営状態は,決して悪くないことアまず,平成8年7月8日に導入された本件就業規則等変更の必要性を判断するのに,平成8年度の終了をもって初めて判明する平成8年度の経常利益や当期利益に関する指標をもって判断するのは誤っている。また,預金保険制度に基づく預金保険料の大幅な増加も同年11月のことであるから,この点を考慮することも間違っている。 指標とすべきものは,平成7年度のものまでである。 イ次に,原判決は,経常利益や当期利益が減少した原因の一つに,貸出金利息収入の減少を挙げている(原判決147頁)が,平成4年度から7年度にかけては,公定歩合が3・75から1・00と約4分の1に下降しているのであるから(甲58),貸出金利息収入が減少するのは当然である。他方において預金金利支出も減少するのであるから,何ら経営悪化を示すものではない。 ウ原判決は,経常利益と当期利益のみに基づいて,被控訴人の経営状態を判断しているが,これは誤りである。 金融機関の基本的な業務の成果を示す金融機関固有の利益指標である「業務純益」をみると,平成5年度から7年度にかけて,14億0109万1000円,22億8061万4000円,31億 は誤りである。 金融機関の基本的な業務の成果を示す金融機関固有の利益指標である「業務純益」をみると,平成5年度から7年度にかけて,14億0109万1000円,22億8061万4000円,31億1751万8000円と劇的に増加している(甲13の16頁)。 また,被控訴人が,ディスクロージャー誌において平成7年度の業績の安定等を訴え,東京速報でも被控訴人の経営の好調ぶりが記事にされていることは,いずれも前記のとおりであり(甲13~l5),これを社内報にも回している(甲19)。 なお,原判決は,平成7年4月27日に全役職員に一律2万円の報奨金が支払われていること(甲32,K証言)も無視している。 その他,預金残高,貸出金残高,有価証券残高,総資産額は,いずれも右肩上がりに伸びていること,預貸率も総資産が相当増加していることからすれば好調であること,総資金利鞘は劇的に増加していること,自己資本比率も極めて安定していることは,いずれも原審において控訴人らが指摘していたところであるが,原判決は,何故かこれらの事実を判断の対象から除外している。 このように被控訴人の経営状態は好調であったのであり,原判決は,以上の点を一切無視している。 エ不良債権問題原判決は,平成8年度の償却額が31億円以上に上ったことを認定するが(原判決173頁),同数値を示すものは乙88や乙84の陳述書のみであり,客観的な資料ではなく,とうてい証明があったとはいえない。 しかも,平成8年度の償却額は,本件就業規則等変更後のことであり,変更の必要性を判断する際に考慮すべきことではない。 そして,特別積立金15億円の取り崩し(原判決174頁)は,次年度以降,会計処理が変更となることから行われたことであり,同変更を契機として不良債権償却を一気に進めただけである(甲14 とではない。 そして,特別積立金15億円の取り崩し(原判決174頁)は,次年度以降,会計処理が変更となることから行われたことであり,同変更を契機として不良債権償却を一気に進めただけである(甲14)。その証拠に,その後の償却額(貸出金償却額)は,平成9年度が1億8711万4000円,10年度が9816万3000円(以上,乙130),11年度が5349万6000円と激減している。 (3) 人件費を削減してまで自己資本比率を維持・上昇させる必要はなかったことアまず,原判決は,ここでも平成8年度の自己資本比率を挙げるという誤りを犯している。数値は平成7年度のものまでである。 イまた,原判決は,被控訴人の自己資本比率について,何の説明もなく「低水準で推移した」と断ずるが(原判決167頁),被控訴人の自己資本比率は,決して低水準ではない。被控訴人の平成4年度から7年度までのそれは,5%以上で安定しており(原判決164,165頁),問題となる4%との比較では1%以上もの余裕があり,少なくとも緊急に維持・上昇させなければならない事態ではない。 都内の信用金庫の加重平均値と比べても,平成4年度から7年度では5%台で推移しており,被控訴人の数値と大差ない。 ウさらに原判決は,被控訴人が自己資本比率が低くなる施策を敢えて選択実行している点を看過している。 被控訴人は,預金や貸出金について拡大路線をとり(原判決141,142,146,147頁),物件費をかけて新規支店を積極的に開設しているが,貸出金は自己資本比率の計算において分母となるから,貸出金が増えると自己資本比率は減少するのである。すなわち,被控訴人の拡大路線は,自己資本比率を低下させているのである。 自ら自己資本比率を低下させておきながら,それが問題であるとして,賃金を切り下げることが許され 資本比率は減少するのである。すなわち,被控訴人の拡大路線は,自己資本比率を低下させているのである。 自ら自己資本比率を低下させておきながら,それが問題であるとして,賃金を切り下げることが許されるはずはないし,そもそも被控訴人にとって自己資本比率は全く問題でなかったことは,E理事長の「成長性と自己資本比率とは矛盾するが,一般的には成長性を評価する。」という主張からも明らかである(甲57の3)。 なお,被控訴人が拡大している「債務保証見返」業務も,自己資本比率を低くさせるものであり(K証言),原判決は,この点も無視,看過している。 エ自己資本比率を上昇させるための方法として,原判決は,会員を追加募集することによる自己資本額の増加は困難であるとするが(原判決168,169頁),被控訴人自身,平成10年度に6億0500万円から6億2800万円に増資をし(乙130),平成11年度にはさらに9億0300万円に増資をし,平成12年9月現在では自己資本額が25億1000万円となっている(甲90の3)のであるから,原判決の同認定は誤りである。都内の他の信用金庫の多くも同様に増資を行っており,会員を追加募集することによって自己資本額を増加することは容易なのである。 かかる観点からも,自己資本比率を上昇させるために,人件費を削減する必要性などなかったことは明らかである。 オそもそも本件就業規則等変更の問題と,被控訴人の自己資本比率の維持・上昇とは全く無関係であった。 このことは,上記イ,ウ,エの各点のほか,①自己資本の充実は,平成4年3月31日以前から要請されていたことであり,4%という数値も従来からの国内基準にすぎないところ,被控訴人は,これまで同基準を充たしてきたのであるから,平成7年末になって突然,自己資本比率を理由に本件不利益変更をしたとい されていたことであり,4%という数値も従来からの国内基準にすぎないところ,被控訴人は,これまで同基準を充たしてきたのであるから,平成7年末になって突然,自己資本比率を理由に本件不利益変更をしたというのは不自然であること,②被控訴人が本件就業規則等変更をしなければ自己資本率が4%を下回ってしまうという主張を裏付けるものとして提出された乙42の1ないし4は,本訴提起後の平成9年2月に作成されたものであり(K証言),被控訴人は,本件就業規則の改定前には,自己資本比率と賃金切り下げの関係をシミュレーションで検討することさえ全くしていなかったこと,③被控訴人が人事制度改定に際しての説明資料として配付した甲7,甲8には,自己資本比率の維持・上昇が必要であるとの趣旨の記載は一切ないこと,④K証言のいう人件費削減の目標額が2億円であるとする根拠がないこと,以上の諸点からも明らかである。 (4) 物件費や人件費は高水準ではないことア原判決は,他の信用金庫と比較して,被控訴人の物件費や人件費が高水準にあるとしており,その理由は明確ではないが,おそらく物件費率や人件費率を比較したものと考えられる(原判決155,157,161頁)。 ところで,物件費率や人件費率は,物件費や人件費を預金・積金期中平均残高で除したもの(原判決155,157,158頁)であるから,預金・積金期中平均残高が大きい金庫,すなわち経営規模の大きい金庫ほど費率が低くなるのであり,したがって経営規模の異なる金庫間で費率を単純比較しても意味はない。 原判決は,同じ地域内で競合関係にある信用金庫の人件費率を比較して,被控訴人のそれが高水準にあるとするが(原判決161頁),預金量についてみると,一番低額のL信用金庫でさえ約2倍の預金量であり,M信用金庫では約4倍であって,単純比較することが不 件費率を比較して,被控訴人のそれが高水準にあるとするが(原判決161頁),預金量についてみると,一番低額のL信用金庫でさえ約2倍の預金量であり,M信用金庫では約4倍であって,単純比較することが不適切な規模の差違があり,被控訴人の人件費率が上記各金庫よりある程度高くても何ら問題はないのである。しかも,平成7年度の人件費率の差は,0・14%から0・32%であり,全く問題ない数値である。 イ物件費増加の原因について,原判決は,平成7年度と8年度に3つの支店を開設したこと,並びに被控訴人が負担すべき預金保険料が7倍にも跳ね上がったことを挙げる(原判決154頁)。 しかし,預金保険料が増額となったのは平成8年度以降であり,その負担が決まったのは平成8年11月であって(乙19の1),本件就業規則等変更前には保険料増額の事実はなかったものであるから,同事実を就業規則等変更の必要性を判断する資料とするのは誤っている。そうすると,同変更の必要性との関係でいえば,被控訴人の積極的な店舗出店という営業方針が,物件費増額の主な原因であるということになる。 ウまた,人件費率についても,原判決は,被控訴人のそれが年々低下していることを認定しているのであるから(原判決158頁),被控訴人の経営について人件費率の問題は発生していなかったものである。 にもかかわらず,原判決は,何故かこの点を無視し,他の信用金庫との比較を問題視して,本件就業規則等変更の必要性を認めており,極めて不合理な判断である。 エさらに,原判決は,被控訴人のパーヘッドが良好であり,効率性が上昇していることを認定している(原判決162頁)。 パーヘッドが良好であることは,職員の生産性が上がっていることを示し(K証言),人件費削減の必要性を減少させる一要素となるのであるから,原判決が,就業規 ることを認定している(原判決162頁)。 パーヘッドが良好であることは,職員の生産性が上がっていることを示し(K証言),人件費削減の必要性を減少させる一要素となるのであるから,原判決が,就業規則の変更の必要性を判断する際に,この点を考慮しなかったのは不当である。 (5) 物件費を増額させる等の不合理な経営ア労働者にとって最も重要な賃金を一方的に切り下げることが許容されるためには,使用者において賃金切り下げを回避するための様々な努力をしたことが必要であるところ,被控訴人は,このような努力をほとんどしていない。 にもかかわらず,原判決は,経費削減の必要性を認めることから直ちに人件費削減の必要性を肯定するという,論理の飛躍も甚だしい誤りをしている。 イ以下,被控訴人が賃金切り下げを回避する努力をしていない事実を指摘する。 ① 物件費の増大(乙81)前記のとおり,被控訴人は,積極的な店舗出店という営業方針を取ったため,物件費を激増させた。 ② 新規採用(甲51添付の表)他の都内信用金庫が新規採用を減らしている中で(甲17の31頁),被控訴人は,新規採用を積極的に行っており,それでいながら賃金を大幅に切り下げることは許されない。 ③ 役員の人数増・役員報酬の据え置き被控訴人は,役員を減らすどころか,平成7年度には,常勤理事を2名増員して6名とした(乙25,26)。この2名の増員がなければ,約3200万円の経費が削減でき,人件費の削減率を16%も減らすことができたのであり(K証言),控訴人ら55歳以上の職員の賃金切り下げを,55歳未満のそれと同程度に押さえることもできたのである。 しかも,被控訴人は,役員報酬は全く切り下げていない。役員についても,55歳以上の職員と同様の切り下げをすべきである。 (6) 中高年齢層の増加と賃 のそれと同程度に押さえることもできたのである。 しかも,被控訴人は,役員報酬は全く切り下げていない。役員についても,55歳以上の職員と同様の切り下げをすべきである。 (6) 中高年齢層の増加と賃金配分の偏在化という認定の誤りア被控訴人は,原審において,本件就業規則等変更の必要性として,昭和50年代から始まった金融自由化まで持ち出しながら,これとは別次元のことである中高年齢層の増加と賃金配分の偏在化を主張したところ,原判決は,わが国社会の高齢化の進展に伴い,被控訴人においても中高年齢職員の増加が見込まれること等を挙げて,人件費,とりわけ高齢職員の人件費削減のため,新制度の導入の必要性が高度なものであった旨判示するが(原判決201~204頁),これは以下に述べるとおり事実誤認であり,評価の誤りでもある。 イまず,原判決は,平成4年度から21年度までの18年間に,被控訴人における55歳以上の職員の人数が17倍以上になると予想された旨認定しているが(原判決201頁),その証拠とされた乙43とD証言は,全く根拠薄弱な証拠であり,信用性がない上,同証拠によっても,18年後の高齢者の人数は7・8倍にしかならず,計算違いも甚だしい。 しかも,乙117からも明らかなように,今後は他の年齢層の職員の増加も見込まれるのであるから,高齢者の人数増だけを取り上げても意味がない。 また,そもそも被控訴人は,本件就業規則等の変更に際して,平成21年度などという長期予測など検討してはいない。このことは,平成4年における旧制度の制定の際にも長期予測をしていなかったことからも明らかである。 ウ次に,原判決には,中高年齢層(40歳以上)と55歳以上の職員の混同がみられる。 原判決は,被控訴人における中高年齢(40歳以上)職員が占める割合と人件費の占める割合の推移 らも明らかである。 ウ次に,原判決には,中高年齢層(40歳以上)と55歳以上の職員の混同がみられる。 原判決は,被控訴人における中高年齢(40歳以上)職員が占める割合と人件費の占める割合の推移を認定し(原判決176~179頁),その証拠として乙44と45の1~8を挙げているが,D証言によっても,これらの書証の作成過程や数値の根拠は全く不明であり,このような根拠薄弱な書証と証言により具体的な人数の推移を事実認定すること自体問題である上,そもそも55歳以上の職員の賃金切り下げの合理性が問題となっている本件において,何故40歳以上の職員の割合や人件費が判断の基準となるのであろうか。 乙45の1~8からすれば,40歳は職員の年齢構成のちょうど中間点に当たるから,40歳以上の職員が40%になり,人件費の割合が54%になったとしても,何ら問題視される理由はない。 また,原判決は,昭和59年当時と平成4年当時の各割合を比較するが,従前の定年は60歳であったから,62歳定年制が導入された平成4年以降と単純比較することも妥当でない。 エさらに原判決は,平成14年度に被控訴人の預金量が5000億円に達することを前提としてシミュレーションすると,人件費に占める中高年齢層の割合が50・44%に達することを認定する(原判決111から112頁)。 しかし,ここでも「中高年齢層」とは40歳以上の職員を指しており,そうであるならば,人件費の占める割合が上記の数値になったとしても何ら問題ではないし,そもそも40歳以上の者を判断の対象とすることが不適切であることは前記のとおりである。 しかも,上記判断の前提となる5000億円という数字も,乙117によると,あくまで「仮説ではあるが」と留保された不確定要素であり,同号証における予測の正確性にも疑問がある。 オ原 とおりである。 しかも,上記判断の前提となる5000億円という数字も,乙117によると,あくまで「仮説ではあるが」と留保された不確定要素であり,同号証における予測の正確性にも疑問がある。 オ原判決は,支店長の年収を上回る支店長席の職員が存在したことの具体例を認定するが(原判決179~180頁),その基礎となった乙98は,匿名のデータであり,その真偽を確認するすべもなく,しかもわずか2名分の比較にすぎず,就業規則変更の「高度の必要性」を認定する証拠としては,あまりに薄弱である。しかも,同号証では,10歳も年齢が離れた職員間の比較であり,これだけの年齢差があれば,年収でこの程度の差が出たからといって,何ら不当ということはできない。 カ以上のように,40歳以上の職員数の割合や人件費の割合は,何らアンバランスではなく,偏在化と呼べるものではない。 にもかかわらず,原判決が,中高年齢職員に対する人件費の増加・偏在化が,志気の低下や人事の停滞,企業の活力低下という状況を招きかねないなどと判断して「高度の必要性」を認めたことは,客観的な証拠もない事実認定に基づく,まことに杜撰としか言いようがない判断である。 4 代償措置及び経過措置について(1) 本件では代償措置がないこと原判決も,本件の新制度において,55歳時年度以降の職員に対する直接的な代償措置が設けられていないことは認めた(原判決207頁)。 しかし,原判決は,①家族手当Bが新設されたこと,②新制度では給与体系として8つのコースが設けられ,職員は生活設計等を考慮して,最も望ましいコースを選択できること,③退職金額が減額されないことをもって,新制度の内容の相当性を肯定する方向に働く重要な事情であるとする点で誤っている。 (2) 家族手当Bは,不利益緩和措置とはなり得ない。 ア同手当は 択できること,③退職金額が減額されないことをもって,新制度の内容の相当性を肯定する方向に働く重要な事情であるとする点で誤っている。 (2) 家族手当Bは,不利益緩和措置とはなり得ない。 ア同手当は,新制度による収入減に比し,極めて少額である。 控訴人Aは,平成8年4月から平成13年3月分まで月額1万円を受給するが,その総額は60万円にすぎない。 控訴人Bは,平成8年4月から平成11年3月分まで,同様に受給するが,その総額は36万円にすぎない。 イそもそも同手当は,55歳時以上の全職員に支給されるものではなく,満15歳以上22歳未満までの扶養子女がいる職員に対してのみ支給される制度にすぎない。 ウまた,被控訴人も,同手当を代償措置であるとは主張していない。 被控訴人は,原審において「雇用維持という大きな代償措置を得ている。」と主張しているだけである。 したがって,原判決は,この点で弁論主義違反,不意打ち的判断をした重大な違法がある。 (3) 給与体系の選択肢は拡大されておらず,新制度の相当性を導き得ない。 アどのコースも大幅に賃金が切り下げられているものであり,生活設計をぶち壊しにする制度である。 イ 8つのコースのうち,60歳時定年コースを選択した場合の55歳時から定年までの賃金は「410」であるが,他方62歳時定年コースを選択すると,7年間の賃金は「432」であり,その差はわずか「22」にすぎず,仮に54歳時の年間給与を1000万円とすると,2年多く働いても220万円(月額10万円を切る。)の低額しかもらえない。 また,61歳時定年コースを選択すると,支給総額は「419」であり,上記と同様の給与を前提とすると,1年間多く働いても90万円しか得ることができない。 すなわち,62歳時定年コースでは2年間,61歳時定年コースでは1年 スを選択すると,支給総額は「419」であり,上記と同様の給与を前提とすると,1年間多く働いても90万円しか得ることができない。 すなわち,62歳時定年コースでは2年間,61歳時定年コースでは1年間,ほぼただ働きと同様の給与しか得られないのであって,選択を迫られた職員は,必ず60歳時定年コースを選択せざるを得なくなる。 したがって,8つのコースのうち最も望ましいコースを選択できるとする原判決の認定は,実態を全く無視した暴論である。 (4) 退職金額の変更がないことは,代償措置とは無関係退職金額に変更がないことは,大幅に減額された賃金について何ら不利益を緩和するものではなく,これが代償措置に当たらないことは当然である。むしろ,賃金の切り下げに対し,退職金が増額されてしかるべきである。 みちのく銀行上告審判決では,退職金が増額されていても代償措置とはならないと判示している。 しかも,この点も,被控訴人が代償措置と主張していなかったものであり,原判決は,ここでも弁論主義違反,不意打ち的判断をしている。 (5) 不利益が大きいにもかかわらず,代償措置等がとられていない。 55歳時未満の職員については,小幅な減額率(平均4・31%)に止まっているのに,現実には減収にならないように,前記のとおり調整給支給という形で代償措置がとられている(甲8,D証言)。 これに対し,55歳時以降の職員については,前記のとおり大幅な減額率(18・8%又は21・2%)にもかかわらず,金銭的な代償措置は全く設定されていない。 (6) 経過措置についての考え方みちのく銀行事件では,業績給の削減率について年度ごとの経過措置を取り,かつ,早期退職した場合の加算金や特別融資制度の新設等の代償措置も取られた事案であるが,それにもかかわらず,最高裁は,上記経過措置や代 く銀行事件では,業績給の削減率について年度ごとの経過措置を取り,かつ,早期退職した場合の加算金や特別融資制度の新設等の代償措置も取られた事案であるが,それにもかかわらず,最高裁は,上記経過措置や代償措置は不利益の緩和措置としては十分でないとして,就業規則不利益変更の効力を否定した。 したがって,経過措置も代償措置も全く講じられていない本件では,就業規則変更の効力が生じないことは明らかである。 5 労使間の利益調整について(1) 平成8年7月1日当時,55歳以上の組合員はいなかったこと原判決は,55歳以上の組合員も一人所属していたと認定するが(原判決208頁),その証拠を乙120(Dの陳述書)のみに依ることは,あまりにも粗雑な事実認定である。 55歳以上の組合員として認定されたQ本人に確認すると,当時,同人はC信労の組合員ではなかったことが判明した。 (2) 当時の組合員の構成原判決は,50歳以上55歳未満の組合員が8名,40歳以上50歳未満の組合員が14名所属していたことを認定するが(原判決208頁),全体の組合員に占める割合は,前者が1・88%,後者が3・3%にすぎない。 このような割合が少ないものを過大視し,利益調整が行われたことの重要な事情とする原判決の判断は,明らかに不合理な認定手法といわざるを得ない。 (3) 労使交渉における被控訴人の不誠実さ原判決は,被控訴人が,控訴人ら組合員以外の職員に対しても個別的に説明会を開催し,意見を述べる機会を十分に保証した旨認定するが(原判決210~211頁),これは,以下のとおり全くの事実誤認である。 ア平成7年2月の説明会において,原判決が「平成7年度からの導入は性急すぎるとの意見が出た。」とする部分(原判決114頁)についての証拠はない。 イ同年12月頃から平成8年2月頃 事実誤認である。 ア平成7年2月の説明会において,原判決が「平成7年度からの導入は性急すぎるとの意見が出た。」とする部分(原判決114頁)についての証拠はない。 イ同年12月頃から平成8年2月頃にかけての説明会については,原判決は,書面による新制度の説明があったことを認定しているだけで,口頭による具体的かつ真摯な説明があったとの認定にはなっていない(原判決116~117頁)。 ウ原判決の122~123頁にかけての事実認定によっても,被控訴人が控訴人らに対し誠実な交渉を拒否していたことは明らかである。 被控訴人は,以下の事実経過のとおり,控訴人らを含む55歳以上の者の要求を一切無視し,控訴人らに対する説得,協議の機会を一切持とうとしなかった。 ① 平成7年12月,被控訴人は,新制度についての説明会を行ったが,その直後から55歳以上の職員を中心として,控訴人ら非組合員から新制度に反対するグループが生まれた。 ② 平成8年2月以降,Fら8名がN常務と面談し,生活維持の崩壊を訴えたが,N常務は全く聞く耳を持たず,「勤められることをよしとしなければならない。」との発言に終始した。 ③ 同年3月8日,控訴人らを含む12名が被控訴人に協議を申し入れ,新制度に反対する申入書(甲9)を被控訴人に提出し,その後内容証明郵便をも送付した。 ④ 同月18日,被控訴人のE理事長は,上記のFとGを呼びつけ,「申入書は見た。あなた達はこれにより覚悟はできているのか。」と恫喝した。 ⑤ 同年4月3日,同月15日にも一審原告O,同Pらが上記申入書の回答を求めたが,被控訴人から拒否された。 ⑥ 控訴人らは,以降,C信労との情報交換を深めつつ,訴訟提起を含め対策を練った。 ⑦ 同年7月8日,本件の新制度が強行された。 そこで,控訴人らは,同年8月19日,被控訴人に対しユニオ された。 ⑥ 控訴人らは,以降,C信労との情報交換を深めつつ,訴訟提起を含め対策を練った。 ⑦ 同年7月8日,本件の新制度が強行された。 そこで,控訴人らは,同年8月19日,被控訴人に対しユニオンの結成を通知し,新制度撤回のための協議を申し入れた。 同年8月23日,上記Gは,N常務らに呼びつけられ,「組合の結成に関与した者は全員解雇する。」「負けるのは覚悟で(解雇を)やる。」 との組合蔑視発言で威嚇された。 エ被控訴人は,C信労との対応においても,新制度のうち,55歳時年度以降の部分については,交渉を拒否し,誠実に交渉に応じていないのである(原判決118~119頁からも明らかである。)。 (4) C信労の態度C信労は,55歳時年度以降の職員に関する部分を除いて,新制度導入に同意したものである。 この点に関する原判決の認定(原判決209頁)は明らかに誤りであり,乙56の2の証拠判断を誤っている。 そして,甲26~28により明らかな交渉経過からしても,被控訴人とC信労との間では,少なくとも55歳以上の部分については,利益調整が全く行われていないのである。 (5) 組合の同意の位置づけ仮に,労働組合の同意があったとしても,本件では,そもそも不利益の程度が甚だしく大きいのであるから,同意の有無を大きな考慮要素として評価することは相当でない。 この理は,みちのく銀行事件上告審判決でも判示されている。 第4 当審における被控訴人の主張 1 原判決の判断の正当性と,みちのく銀行事件上告審判決(1) 原判決の正当性原判決は,これまでの判例の考え方を踏襲した正当なものであり,就業規則変更の合理性及び必要性に関する判断手法も,確立した判例の考え方と同様であって,この点に関する控訴人らの主張は失当である。 (2) みちのく銀行事件上 判例の考え方を踏襲した正当なものであり,就業規則変更の合理性及び必要性に関する判断手法も,確立した判例の考え方と同様であって,この点に関する控訴人らの主張は失当である。 (2) みちのく銀行事件上告審判決の事案と本件事案との基本的な違いア 55歳時以上の職員のみを不利益にした事案ではないことみちのく銀行事件は,60歳定年制の下で,就業規則変更により55歳に達した行員を専任職に発令し,基本給の約半額程度を占める業績給の一律50%減額・管理職手当及び役職手当の不支給,賞与支給率の削減をしたものであり,人件費総額が増加している中で,55歳未満の職員の基本給等を増額し,とりわけ中堅職員層の賃金を格段に改善しながら,他方で,55歳以上の高年層のみを対象に本給等を大幅に引き下げた事案である。 これに対し,本件では,次の点で同上告審判決と異なる。 ① 本件の賃金引き下げは,55歳時以上の高年層のみならず,55歳時未満の職員層全体に対し,応分になされたものである。 ② 55歳時以上の高年層は,引き下げ前の賃金水準による利益を得ている。むしろ55歳時未満の若年の中堅層は,将来にわたり高年層の受ける不利益よりも大きな不利益を受けるものである。 換言すれば,本件の新制度の導入により,55歳時以降の職員に比べ,55歳時未満の職員の方がはるかに賃金上の不利益が大きい。 55歳時未満の一般・監督職層の職能給(基本給に相当するもの)は,次のとおり,旧制度に比べ大幅にベースダウンする。 1~3級職ほぼ旧制度と同様4級職 2・72%減5級職 3・81%減6級職 6・46%減7級職 7・00%減55歳時未満の職員は,55歳に達するまで上記の不利益を受けるほか, 5級職 3・81%減6級職 6・46%減7級職 7・00%減55歳時未満の職員は,55歳に達するまで上記の不利益を受けるほか,55歳に到達後は,控訴人らと同様の処遇を受ける。 そこで,被控訴人は,新制度の導入に際し,55歳時未満の職員に対しては,旧制度と新制度との差額を調整給として支給し,昇格時に調整給を解消することとしたものである(以上,乙106,120,D証言)。 ③ なお,控訴人らは,55歳時年度未満の職員のうち8ないし10級の管理職では,新制度の適用により逆に賃金が上昇する旨主張するが,同主張が誤りであることは後記のとおりである。 ④ 控訴人らは,本件が55歳時以上という特定層のみに著しい不利益を与えるものである旨主張するが,これは前記上告審判決になぞらえるため,本件事案を歪曲して主張するものであり,そもそも控訴人らは,原審ではこのような主張を全くしていなかった。 イ変更の高度の必要性があったこと次に,本件では,就業規則の変更は,被控訴人の維持・存続上不可欠な差し迫った高度の経営上の必要性に基づくものであり,総人件費コストでいえば約2億円の削減を図る目的を有するものである(実際に,人件費コストは,今回の新制度の完全実施時点である平成11年度末で約2億円の削減となっている。)。 信用金庫を含め金融機関が生き残りをかけて経営維持の施策をとっていることは公知の事実であり,とりわけ被控訴人は,小規模の信用金庫として厳しい状況にあるものである。近時において,一方で経営破綻や危機に瀕した金庫の救済合併・営業譲渡が依然として続いており,他方で平成14年4月に予定されるペイオフ(預金等の払戻保証を一定額までとする措置)解禁後の信用維持のため,経営規模の拡大・自己資本比率8 機に瀕した金庫の救済合併・営業譲渡が依然として続いており,他方で平成14年4月に予定されるペイオフ(預金等の払戻保証を一定額までとする措置)解禁後の信用維持のため,経営規模の拡大・自己資本比率8%が大きな目標とされており,そのための預金量の拡大,合併・営業譲渡等が急がれており(乙133~143),このような再編が迫られる中で,被控訴人の本件新制度の必要性も位置づけられるのである。 この点に関し,控訴人らは,みちのく銀行事件上告審判決が「差し迫った必要性」を必要とする旨判示したと主張するが,誤りである。同判決は,就業規則変更に関する高度の経営上の必要性については肯定した上で,変更内容の合理性との関係で「差し迫った必要性」を論じているのであって,同事件を離れて一般的にこれを要件としているわけではない。 ウ担当職務の内容の変更みちのく銀行事件上告審判決は,職員に対する不利益の程度を判断する場合の一要素として,担当職務の変更を考慮要素としており,同事件では,55歳の前後で担当職務にさほど変更がない事案であった。 しかし,本件では,55歳到達の年度末をもって,職位から離脱し,原則としてスタッフ職として「定型的で軽易な」職務を担当することになっており,実際に控訴人らは,定型的で軽易な職務を担当しているものである。 すなわち,55歳時以降の職員は,専任職として位置づけ,原則として支店長席の職務を担当する。その主要な職務の内容は,概ね定型的で軽易な専任的職務で,部下の管理監督を伴わないものである。支店長席は,新制度の資格等級上は,5級ないし6級職の職務に位置づけられる(乙89,D証言)。 原判決も同様の認定をしており,したがって,本件では不利益性は減弱される事案である。 エ労使間の利益調整手続上の相違みちのく銀行事件では,当時二つの労働組合 位置づけられる(乙89,D証言)。 原判決も同様の認定をしており,したがって,本件では不利益性は減弱される事案である。 エ労使間の利益調整手続上の相違みちのく銀行事件では,当時二つの労働組合が併存し,多数組合は変更に同意したが,少数組合は変更に反対した事案である。 これに対し,本件は,職員の大多数を組織する労働組合が唯一存在していた事案であり,かつ,変更について同組合の同意を得ていただけでなく,事前に控訴人らを含む非組合員に対しても,度々説明会を開いて理解を得る手続を行い,実際に控訴人らを含む非組合員からは反対の意思表示もなかったのである。 この点に関する控訴人らの主張は失当である。 オ代償措置又は経過措置について上記のとおり,本件は,みちのく銀行事件とは事案を異にするから,同上告審判決の代償措置及び経過措置に関する判断をそのまま当てはめることも誤りである。 カまとめ以上のように,みちのく銀行事件上告審判決の判断を本件に当てはめようとする控訴人らの主張は,牽強付会の乱暴な議論であり,失当である。 2 不利益の程度について(控訴人ら主張の「原判決の不利益性論の誤り」に対する反論)(1) 原判決批判への反論控訴人らは,原判決が控訴人らの被る不利益を十分に把握していない旨主張するが,就業規則等変更の内容そのものは当事者間に争いがなく,原判決も正しく内容を把握しているところである。 まず,控訴人らは,原判決が控訴人らの毎月の手取額を考慮していない旨主張するが,毎月の手取額は,法定控除項目のほか,各職員が自ら任意に加入する貯蓄性の高い生命保険料や,損害保険料,月賦払い等の控除が含まれており,このような控除額が各職員ごとに異なるから,最終的な手取額を不利益内容とすることはできない。 また,個々の職員の私生活状況も様々であるか い生命保険料や,損害保険料,月賦払い等の控除が含まれており,このような控除額が各職員ごとに異なるから,最終的な手取額を不利益内容とすることはできない。 また,個々の職員の私生活状況も様々であるから,第三者にとって関知できないこれらの事情を不利益性の内容とすること自体も失当である。そもそも賃金体系は多数の職員を対象として集団的・画一的に定められるものであるから,就業規則等変更による不利益の程度については,各職員ごとの私生活に立ち入って判断すべき事柄ではない。 (2) 賃金減額の程度ア新制度の賃金減額の程度控訴人らは,本件就業規則等変更による賃金の減額幅につき,旧制度に比して18・8%又は21・2%と主張するが,これは,退職までの賃金総額を旧制度と比べた場合の数字である。 同数値を年収平均でみると,コースを選択しない場合に適用される原判決(ウ)(a)のコースでは,54歳時給与年度の年収を100とすると,旧制度では62歳定年までの平均年収は76%であったのが,新制度では61・71%となり,その差は14・29%にすぎない。 控訴人らは,56歳時と57歳時の月例賃金の差(50%減額)だけを取り上げて大幅ダウンであると主張するが,制度全体の減額率を論じるものでなく,不当である。 新制度の合理性を判断するには,55歳時以上の7年間通算の減額の程度を評価する必要がある。 また,控訴人らは,新制度が旧制度の更なる賃金切り下げであった旨主張するが,旧制度は定年を60歳から62歳に延長するのに伴って行われたものであるから,単純に55歳時以上の高齢職員のみを対象とした賃金切り下げということは誤りであるし,本件で問題となっているのは,あくまで新制度の合理性であり,旧制度と新制度を併せた合理性ではないから,控訴人らの主張は失当である。 イ控訴人らの賃金 対象とした賃金切り下げということは誤りであるし,本件で問題となっているのは,あくまで新制度の合理性であり,旧制度と新制度を併せた合理性ではないから,控訴人らの主張は失当である。 イ控訴人らの賃金減額の程度まず,不利益の程度を判断する上で,控訴人らの毎月の手取額や私生活の状況を考慮すべきでないことは前記のとおりである。 控訴人Aの55歳時以降の7年間の平均年収は644万円であり(乙54の2),控訴人Bのそれは613万2000円である(乙53の2)。 なお,控訴人Bについて,控訴人らは平成11年度から事務課長権限剥奪により職務手当7500円の減額も加わった旨主張するが,同控訴人は平成11年4月から配置転換によりa支店事務課員となったため,支店長席に伴う職務権限手当が支給されなくなっただけのことであり,権限剥奪による減額ではない。 また,控訴人らは,賞与の減額をも主張するが,賞与は,毎年労使交渉により決定されるもので既得の権利ではなく,この点は新制度下でも同様であり,職員全体の問題である。 (3) 新制度による55歳時年度未満の一部管理職については賃金が上昇されるとの控訴人ら主張の誤りについてアまず,55歳時未満の職員に調整給を支給することとした理由は,前記のとおり55歳時以上の職員に比べ賃金減収の程度がはるかに大きいためであって,賃金条件を上昇させたものではない。 イ次に,控訴人らは,55歳時年度未満の職員のうち,8級職ないし10級職の管理職の賃金が上昇することを主張するが,原審ではこのような主張は全くなかった上,主張自体も誤りである。 ① まず,8級職ないし10級職は,概ね40歳程度から昇格できるものではなく,42歳以上でなければならない。 ② 賃金体系は,旧制度では,職能給+年齢給であったのを,新制度により,職能給+業績給とした。 まず,8級職ないし10級職は,概ね40歳程度から昇格できるものではなく,42歳以上でなければならない。 ② 賃金体系は,旧制度では,職能給+年齢給であったのを,新制度により,職能給+業績給とした。旧制度では,8級職以上の職員の年齢給として月額最高19万1700円から最低17万7700円であったが,新制度では年齢給を廃止し,業績給の基本を一律19万1700円とした。 この点は,新制度の内容として,当初から明らかにしてるところである(甲8)。 そして,この基本となる業績給では,50歳以上でなければ昇格できない10級職の職員では全く増額はない。最高でも42歳職員で1年間に限り1万4000円であるが,これも毎年減少する。 ③ しかも,控訴人らは,業績給のみを取り上げて賃金が上昇すると主張するが,8級職及び9級職の職員のうち,49歳までは業績給は制度上増額となったが,同時に8級職ないし10級職の職員の職能給は減額されている(乙151の1~3)。 すなわち,業績給と職能給の合計でみると,8級職の42歳から45歳までと,9級職の46歳から47歳までが最高で1万4000円,最低で1280円の増額となるが,加齢とともに増額金額は減少し,さらにマイナスとなる。その余の8級職ないし10級職の職員は全て賃金総額が減額となるのである。 (4) 控訴人らの「安易な金融業界での世間相場論の誤り」の主張に対する反論ア原判決は,定着した判例の見解を踏襲したもので,同業他社の水準等のみに重きを置いて判断したものではない。みちのく銀行上告審判決でも,従来の判例と同様に,同業他社の水準等を考慮要素にすることを明言しており,決して付随的要素であるが故に考慮しないというものではない。 イ被控訴人は,原審において,「つまみ食い」的に乙104を提出したものではなく,敢えて平成 社の水準等を考慮要素にすることを明言しており,決して付随的要素であるが故に考慮しないというものではない。 イ被控訴人は,原審において,「つまみ食い」的に乙104を提出したものではなく,敢えて平成4年の資料のみを提出したものでもない。被控訴人は,平成5年3月,全信連コンサルティングの提言(乙96の別紙)が出されたことを受けて本件の人事制度の見直しに着手したものであり,同年12月24日に発行された平成5年版「中小企業の賃金事情」(乙104)を参考としたのである。そこでこれを書証として提出したものであり,あくまで参考資料の一つである。 各金融機関の賃金内容は公表されていないが,被控訴人は,上記資料のほか,同業他社の賃金水準等を非公式に集め,これらを参考にして,少なくとも同業他社の水準を下回らない賃金水準にしているのである。 ウ控訴人らが他社の賃金水準として数値を挙げていることの根拠とする甲74~78や甲88の1,2は,公表されたものでなく,その出所も不明であり,都合のよいケースを集めたとしか考えられない。 エ控訴人らは,原判決が乙57の数値を誤って引用した旨主張するが,誤っているのは控訴人らの方である。 すなわち原判決は,乙57の27頁第3表を引用しているのであり,これが正しい引用なのである。控訴人らのいう同号証29頁の第4表は基準内給与の取り扱いであり,原判決の認定とは異なる。 また,控訴人らは,原判決が「逓減率が70%台の信用金庫をも新制度と同じ程度である」と強弁したなどと批判するが,乙57は,あくまでも調査時点の前年度年収に対する変更割合を集計した資料であり,これと同様に前年度年収に対する変更割合で本件をみると,初年度(55歳時年度)の減額割合は90%台となる。本件では,初年度以降賃金が逓減する制度となっているから,原判決は,こ 合を集計した資料であり,これと同様に前年度年収に対する変更割合で本件をみると,初年度(55歳時年度)の減額割合は90%台となる。本件では,初年度以降賃金が逓減する制度となっているから,原判決は,このような逓減制度をも考慮して,総じて60~70%程度の信用金庫は本件の新制度と同程度と判断しているのである。 (5) 担当職務内容の変更についてア控訴人らは,55歳時年度以降の高年齢職員の職務が軽減された事実はないと主張するが,事実に反する。 まず,控訴人らが従前,重要な職位にあったことは,控訴人らも自認する(ただし,控訴人らには支店長の経験はない。)。 そして,新制度の実施により,55歳時年度以降は,組織上ラインの役職その他の管理職務(いわゆるスタッフ管理職)に就いていた職員は,原則としてその職から離れ,支店長席や一般の事務職を担当し,部下を持たなくなる。 控訴人らについていうと,以下のとおりとなる。 ① 控訴人A 平成2年4月(49歳,8級職)b町支店次長(ラインの管理職で部下有り)4年1月(51歳,9級職)事務部事務管理課臨店指導(スタッフ管理職)8年4月(55歳,9級職)c支店支店長席以降,他支店の支店長席② 控訴人B 3年4月(50歳,7級職)事務部事務課 主任調査役5年1月(51歳,8級職)d支店e出張 主任調査役5年1月(51歳,8級職)d支店e出張 所長(ライン管理職で部下有り)8年4月(55歳,8級職)f支店支店長席11年4月以降,事務課員(前記のとおり)イ支店長席の主たる職務は,次のとおりである。 ① 支店の顧客との取引等で生じた伝票額のチェック(伝票検印)② 現金自動預け払い機の管理(現金補填,故障対応等)③ 夜間金庫,両替機の集計,補填等の管理(なお,これは夜勤業務ではない。)④ 売上金の集金業務⑤ 預金の解約,更新等の手続(ローカウンター対応)上記の職務は,いずれも定型的で軽易なものであることは説明するまでもない。 ウ支店長席が設けられたのは,平成6年1月1日であり,その大きな理由は,高齢化の進展により増加する高年齢職員に与える職務がなかったことにある。すなわち役職ポストが限られている中で,人事の停滞と職員全体のやる気の喪失を防止するため,高年齢職員の経験を活用し,かつ,役職ポスト,監督職ポストを与えられないところから考えられたものである。 エ控訴人らの支店長席としての職務内容も上記のとおりであり,部下の管理・監督を伴わない5~6級職程度の職務である。 控訴人らの職務が定型的で軽易な業務であることに変わりはなく,この点に関する控訴人らの主張は全て誤りである。 しかも,帰宅は定時というのが実情であり,仕事の質・量ともに軽減されたのである。 控訴人らは,原判決は被控訴人の「定型的で軽易」という訴訟提起後の悪意の訴訟対策でしかない主張を鵜呑 誤りである。 しかも,帰宅は定時というのが実情であり,仕事の質・量ともに軽減されたのである。 控訴人らは,原判決は被控訴人の「定型的で軽易」という訴訟提起後の悪意の訴訟対策でしかない主張を鵜呑みにした不当な判決であるなどと主張するが,支店長席は,上記のとおり平成6年には既に設けられ,以来「拠点支援面接カード」により,本人,支店長,人事部長の三者で話し合い,職務の範囲を設定してきたものであり,本件訴訟以前から存在した制度を無視して悪意の訴訟対策など主張できる根拠はどこにもなく,控訴人らの主張は原判決を愚弄するものである。 また,控訴人らは,控訴人らが担当させられた職務は「見せしめ的なもの」である旨主張するが,その根拠もなく,被害妄想としかいいようがない。この点に関し,被控訴人がFとGを呼びつけ,E理事長が恫喝したなどという控訴人らの主張も事実無根であり,その余の団体交渉の内容も事実に反するものである。 (6) 控訴人らの「高齢者の処遇論に関する原判決の誤り」の主張に対する反論ア控訴人らは,原判決が高齢者の雇用確保における社会的趨勢を考慮したことが不当である旨の主張をするが,前記の同業他社との比較論と同様の意味で,控訴人らの主張は誤りであり,この事情を考慮すべきことはむしろ当然である。 イ原判決がI電力やJ電機の例を出したことは,これらの企業の制度を本件の新制度と全く同列に扱ってその当否を論じているものではないから,この点についての控訴人らの主張は,原判決を曲解するものである。 今後,高年齢者の増加は既定の事実であり,年金支給開始年齢の引き上げ等に伴い,60歳定年の延長や雇用継続が企業の大きな課題となっていることは明らかである。被控訴人は,既に62歳定年制を導入しており,しかも厳しい金融環境の中で本件の新制度を導入したものである。 げ等に伴い,60歳定年の延長や雇用継続が企業の大きな課題となっていることは明らかである。被控訴人は,既に62歳定年制を導入しており,しかも厳しい金融環境の中で本件の新制度を導入したものである。 したがって,不利益変更の合理性の判断についても,こうした企業における高年齢者の処遇状況を勘案することなしに,適切な結論は導き得ないのである。 ウまた,控訴人らは,原判決が新聞記事を引用して事実認定をしたことがお粗末で乱暴な手法であると非難するが,新聞記事を事実認定の一資料とすることは何ら不当ではなく,また,乙111,145からも明らかなように,I電力やJ電機においてさえも,62歳までの雇用確保の困難さについては例外ではなく,雇用延長には賃金引き下げを伴っていることを物語っている。 3 変更の必要性について(控訴人ら主張の「原判決の必要性論の誤り」に対する反論(1) 原判決の正当性控訴人らは,被控訴人の経営状態や各種経営指標について論難するが,原判決の認定は正しく,控訴人らの主張は誤りか,あるいは恣意的に事実から目をそらし,断片的に都合のよい数字だけを挙げるものである。 (2) 被控訴人の経営状態についてアまず,控訴人らは,原判決が平成8年度の指標をもって判断したことを非難するが,原判決は同年度の指標のみをもって判断したものではないし,同年度の指標は,それ以前に被控訴人において概略予想済みであり,当然に本件就業規則等変更の理由として考慮したところである。 また,預金保険制度に基づく預金保険料の大幅増加に関していえば,預金保険制度に基づく責任準備金は,平成6年度末現在で9000億円弱しかなく,地方銀行1行分の破綻にも耐えられない状態であったから,平成7年当時から近々預金保険料が大幅に引き上げられることことは金融業界において当然予想されてい 金は,平成6年度末現在で9000億円弱しかなく,地方銀行1行分の破綻にも耐えられない状態であったから,平成7年当時から近々預金保険料が大幅に引き上げられることことは金融業界において当然予想されていた。そして,平成7年12月22日の金融制度調査会の答申(乙147)の中に預金保険料の大幅引き上げが盛り込まれたことにより,実質上引き上げ実施が決定されたのであるから,被控訴人においても,平成7年の時点で預金保険料の大幅な増加を前提事実として認識していたものである。 なお,預金保険料がこれまでの7倍に増額されることが正式に決定したのは,平成8年3月29日であり(乙148),控訴人ら主張のように同年11月ではない。 イ次に,控訴人らは,公定歩合の下降から貸出金利息収入が減少するのは当然である旨主張するが,これは金融機関人であれば当然認識すべきことを無視した空論であり,認識不足である。 すなわち,貸出金利回りの低下は,現実には,預金利回りの低下に先行し,しかも直利鞘も圧縮されたものであり,金融機関にとって金融自由化,金利自由化とは利鞘の減少を意味し,これがまさに実際に加速度的に進行し,被控訴人の経営を悪化させていたのである(乙121)。 ウ控訴人らは,原判決が経常利益と当期利益のみに基づいて被控訴人の経営状態を判断したことが誤りであると主張する。しかし,① まず,控訴人ら指摘の「業務純益」は,あくまで経営指標の一つにすぎず,これのみで経営状態を判断することはできない。ちなみに,同指標は,平成10年度以降のディスクロージャー誌への記載も不要とされており,経営指標としての重要性も低いものである。 乙79からも明らかなとおり,被控訴人は,平成5年度以降,不良債権の償却財源捻出のため,被控訴人の最優良資産であった高利回りの国債,地方債等の債券を売 ,経営指標としての重要性も低いものである。 乙79からも明らかなとおり,被控訴人は,平成5年度以降,不良債権の償却財源捻出のため,被控訴人の最優良資産であった高利回りの国債,地方債等の債券を売却し,大幅な益出しを行って利益計上せざるを得なかったのであり,到底経営状態が好調であるといえる状況ではなかった。 ② 控訴人らは,平成8年度版のディスクロージャー誌等(甲13~15,19)において被控訴人の業績がよい旨が記載されていることを主張する。 しかし,控訴人らの上記主張は,金融機関のパブリシティー活動を理解しない主張である。この時期は,金融機関の破綻が多発し出した時期で,信用不安も一挙に高まっていたため,被控訴人をはじめとする金融機関は,経営情報の開示に当たり,信用不安を高めないよう慎重な判断を要請されていたのである。 ③ 控訴人らは,平成7年4月27日に一律2万円の報奨金が支給されたことを主張するが,この事実と経営状況とは直接関連するものではなく,同主張はこじつけである。 報奨金は,平成6年度の預金と貸出金の増加率が都内信用金庫の中で比較的高かったことから,厳しい経営状況の中で職員のなお一層の奮起を促すために支給したものであり,経営状態が良好であったために支給したものではない。 平成6年度決算では,不良債権(貸出金+投資信託)の償却額は16億3700万円に達しており,保有有価証券の売却益5億6700万円を計上することにより,何とか赤字決算を回避したというのが実情である。 ④ 控訴人らは,総資金利鞘が劇的に増加していると主張するが,数字上はこれが増加しているように見えるものの(特に平成7年度の0・70%),実際には,大幅な金利変動に伴う一時的な現象にすぎず,これをもって経営状態が良好であったということにはならないのである。 ⑤ 控訴人ら 増加しているように見えるものの(特に平成7年度の0・70%),実際には,大幅な金利変動に伴う一時的な現象にすぎず,これをもって経営状態が良好であったということにはならないのである。 ⑤ 控訴人らは,被控訴人の自己資本比率が極めて安定していたと主張するが,実際は,被控訴人のそれは,常に業界内でも最下位グループに属している。平成11年度では,全国376金庫中,下位から19位と最悪の状態である(乙140)。 平成12年3月現在,自己資本比率7%以上の金庫は,全体の83%を占めており,被控訴人のように5%台の数値がいかに低く,問題であるかが理解できよう。 しかも,前記のとおり,ペイオフ解禁を平成14年4月に控え,地方銀行では,自己資本比率8%以上,信用金庫でもこれを6%以上にする必要があるとされており(乙142,143),5%台では経営の存続上厳しい状況であって,顧客やマスコミを通して風評リスクに晒されているのが現実である。 エ不良債権問題① 控訴人らは,平成8年度決算において不良債権の償却額が31億円以上に上ったことの客観的な資料がない旨主張するが,同年度の業務報告書(乙27)をみれば一目瞭然である。 すなわち,同報告書中の損益計算書における経常費用の部の「貸出金償却額」13億1600万円と,特別損失の部の「その他の特別損失」17億2500万円のうち,「注1」に記載された「貸倒引当金繰入額」16億9400万円の合計額30億1000万円が,貸出金償却に該当する。そのほか,一部有価証券の不良債権(大幅な元本割れで回復の見込みのないもの)の処分額を経常費用の部の「国債等債券償還損」として1億6800万円処理し,以上の合計31億7800万円が不良債権の償却額である。 この点からも,被控訴人の経営状態に関する控訴人らの無理解ぶりが分かるので を経常費用の部の「国債等債券償還損」として1億6800万円処理し,以上の合計31億7800万円が不良債権の償却額である。 この点からも,被控訴人の経営状態に関する控訴人らの無理解ぶりが分かるのである。 ② 特別積立金15億円の取り崩しについては,控訴人らは,次年度以降会計処理が変更となることから行われたものである旨主張するが,事実に反する。 上記の取り崩しは,現実に平成8年3月に被控訴人の大口貸出先が倒産したことにより,貸出金の償却を余儀なくされたために行ったものである(控訴人らも,この事実を十分に承知しているはずである。)。 また,控訴人らは,平成9年度の貸出金償却額が約1億8700万円であったと主張するが,同年度においても,前年度と同様,同償却のほか,特別損失での貸出金償却が52億7900万円あり,合計の貸出金償却は54億6600万円と莫大な金額に達していた。そこで,平成9年度においても,特別積立金を50億円も取り崩さざるを得なかったのである。 不良債権の償却額が巨額に達し,通常の経常利益だけでは財源が大幅に不足したときは,そのままでは赤字決算となるため,これを回避するため,不良債権償却分を特別損失として処理することがあり,これに対応する財源として特別積立金を取り崩して特別利益として計上し,特別損益の段階で収支バランスさせるのであるが,控訴人らは,このような最も基本的な経理処理さえ理解できずに,単純な経理書類の字面のみをみて主張するものであって問題外である。 ③ 以上,①及び②については,乙154を参照されたい。 (3) 控訴人らが「人件費を削減してまで自己資本比率を維持・上昇させる必要はなかった。」と主張する点についての反論アまず,控訴人ら主張の「平成8年度の数値を挙げることの不当性」については,前記のとおり(3(2)ア) 件費を削減してまで自己資本比率を維持・上昇させる必要はなかった。」と主張する点についての反論アまず,控訴人ら主張の「平成8年度の数値を挙げることの不当性」については,前記のとおり(3(2)ア),被控訴人は,平成7年の時点で8年度の自己資本比率も予測しており,このままでは近い将来被控訴人の経営は立ち行かなくなるとの認識に基づいて,本件就業規則等を変更したものであり,何ら不当なものでも,誤りでもない。平成8年度の自己資本率が4・81%にまで低下したことは予測どおりの事実であり,本件就業規則等の変更を迫られていた事実を雄弁に物語るものである。 イ控訴人らは,平成4年度から7年度までの自己資本比率が安定していたなどと主張するが,絶対値が問題なのであって,控訴人らの同主張は,信用金庫の金融機関としての特質を全く理解していない。 「都内の信用金庫の加重平均との比較」というのも全く意味のない主張であり,都内平均と比較するのであれば,ランキングが可能な単純平均で比較すべきである。単純平均で比較すれば,被控訴人と他の都内信用金庫との自己資本比率の差は年々拡大していた。 しかも,前記のとおり(3(2)ウ⑤),被控訴人の自己資本比率は,全信用金庫のランキングでは最下位グループに属していたのであり,同比率を引き上げて他の信用金庫との差を解消することが,被控訴人の経営上の緊急の課題であった。 ウ控訴人らは,被控訴人が自己資本比率を低下させる拡大路線を敢え取ってきた旨主張するが,失当である。 ① 厳しい経営環境の中で,今後,信用金庫が生き残っていくための最低資金量は,地方信用金庫で5000億円,都市型信用金庫では1兆円というのが今や信用金庫業界の常識である。そのため被控訴人は,量を拡大し,収益増加を図る施策をとっているのであり,自己資本比率の低下とは何ら は,地方信用金庫で5000億円,都市型信用金庫では1兆円というのが今や信用金庫業界の常識である。そのため被控訴人は,量を拡大し,収益増加を図る施策をとっているのであり,自己資本比率の低下とは何ら関係がない。 自己資本比率低下の最大の要因は,不良債権の償却の問題である。 ② 控訴人らは,別件訴訟におけるE理事長の主張を引用して,自己資本比率が全く問題でなかったことを被控訴人も認めるかのような主張をするが,誤りである。 同理事長が,自己資本の増加率が都内信金を上回っている旨述べたことは事実であるが,同時に分母となる総資産も大幅に増加していたから(その増加率は都内平均の2・04倍であり,自己資本増加率の都内平均の1・62倍をはるかに上回っていた。),自己資本比率の引き上げという課題は,依然として大きな問題であったのである。 ③ 控訴人らは,「債務保証見返」業務も自己資本比率を低下させる旨主張するが,これは,被控訴人の適用貸出金利が到底太刀打ちできない場合に,低金利の代理貸付業務を利用するのであり,平成9年度には優良貸出先で金利競合が発生したため,優良顧客をつなぎ止める策を図ったことにより,一時的に利用度が高まったにすぎない。ちなみにその後の年度以降は大幅に低下している。 控訴人らは,平成8年度の数値を持ち出すことが誤りであると主張しながら,ここでは平成8年度や9年度の計数を持ち出すなど,自己矛盾も甚だしい。 エ控訴人らは,被控訴人が平成10年度以降増資を行っており,他の信用金庫でも増資を行っていることから,会員の追加募集による自己資本額の増加は容易であったと主張する。 しかし,信用金庫の場合,自己資本比率が国内基準の4%を上回っていればよいというものではなく,4%台,5%台では風評リスクに晒されるのが現実である上,平成11年6月,地方銀 であったと主張する。 しかし,信用金庫の場合,自己資本比率が国内基準の4%を上回っていればよいというものではなく,4%台,5%台では風評リスクに晒されるのが現実である上,平成11年6月,地方銀行に対する公的資金導入の際に柳沢金融再生委員長が「国内基準行でも国際基準である8%が望ましい。」と発言したこと(乙137)により,信用金庫をとりまく状況は一変した。 そこで,自己資本比率が4%台,5%台の信用金庫は,昨今の経済環境下では利益の積み増しによる内部留保の向上は不可能であるから,窮余の一策として万やむを得ず出資金の増加を図っているものであるが,これとても短期間で0・5~1・0%程度の引き上げ効果しかなく,銀行のように株式増資による8%達成までには至らないのである。 制度上,出資金に対する出資者保護はなく,また配当負担もあるため,信用金庫においては,銀行や株式会社のように預金を集めるのとは訳が違い,出資金の増額は容易ではない。 ことにペイオフ解禁後は,顧客が金融機関を選択する場合の最大の基準は自己資本比率の高低であり,上記のとおり現在では8%が常識となっているから,被控訴人としても,風評リスク回避のため,少しでも8%に近づけるべく,窮余の一策として平成12年11月までに出資金20億円の増強を図ったのが現実である。 しかし,この20億円の増加によっても,自己資本比率引き上げ効果は,わずかに0・8~0・9%でしかなく,風評リスクに耐えられる水準ではないのである。 オ控訴人らは,本件就業規則等変更の問題と,被控訴人の自己資本比率の維持・上昇とは全く無関係であったと主張し,平成4年当時の問題を引き合いにするが,①金融破綻など考えられない時期であった平成4年度と,金融不安が一挙に高まってきた平成7年度とでは,自己資本比率の持つ意味は全く異な 全く無関係であったと主張し,平成4年当時の問題を引き合いにするが,①金融破綻など考えられない時期であった平成4年度と,金融不安が一挙に高まってきた平成7年度とでは,自己資本比率の持つ意味は全く異なること,②被控訴人が,新制度導入前に自己資本比率と賃金との関係のシミュレーションをしていなかったとする控訴人の主張は,事実に反すること(乙42は,本裁判でわかりやすいように一覧表にまとめたものであり,当然ながら本訴訟前に,必要な分析や予測は行っている。),③甲7,甲8には,「自己資本比率の向上」「自己資本比率は都内信金平均と比較して大きく見劣りする。」旨の記載があり,控訴人らの主張は誤りであること,④K証人が人件費削減の目標額を約2億円と証言したことの根拠はあること,以上の点からして控訴人らの上記主張は不当である。 (4) 物件費・人件費についてア異なる経営規模の信用金庫間の比較について控訴人らは,経営規模の異なる信用金庫間で単純に物件費率や人件費率を比較しても意味がないと主張するが,理解に苦しむ主張である。 被控訴人は,同一営業地域内の競合信用金庫との間で,経営規模の大小にかかわらず,同じ土俵で競争をしているところであり,むしろ競合信用金庫に比べ小規模であるからこそ,一層の人件費率等の低下が求められているのである。したがって,規模が小さいから人件費率がある程度高くても問題ないなどというのはナンセンスである。 しかも,控訴人らは,人件費率の差が0・14%(正しくは0・11%)から0・32%であるから問題ないと主張するが,これを被控訴人の人件費の金額に置き換えると,0・14%では3億8600万円,0・32%では実に8億8400万円に相当するものであり,これを問題ないとする控訴人らの主張は,人件費率の持つ重要性を全く理解しないものである。 金額に置き換えると,0・14%では3億8600万円,0・32%では実に8億8400万円に相当するものであり,これを問題ないとする控訴人らの主張は,人件費率の持つ重要性を全く理解しないものである。 イ物件費の増加について物件費増加の原因について,まず,控訴人らは,預金保険料の増額が決定した平成8年11月であるから本件就業規則等変更の必要性とは関係ない旨主張するが,これは誤りである。 すなわち,前記のとおり(3(2)ア),預金保険料の増額は平成7年12月から事実上決定されたが(正式決定は平成8年3月29日),平成7年中には,その大幅な増額が予想されていた。 なお,控訴人らが掲げる乙19の1は,全く関係のない証拠であり,前記のとおり乙147,148が正しい。 次に,物件費の増加の原因についていえば,被控訴人は,平成7年度にg支店を出店したが,物件費率は前年度の0・65%と同率に抑制し,また,平成8年度にはh支店とi支店を出店し,預金保険料の7倍の引き上げにより,物件費率は0・70%に上昇したが,預金保険料の増加分を控除すれば,物件費率は0・63%となり,前年度より下回る結果となる。このように,被控訴人は,物件費の増加を抑制するため可能な限りの努力を行っているのであり,それにもかかわらず物件費が増加した原因は,ひとえに預金保険料の増額にあるのである。 ウ人件費率の低下について控訴人らは,被控訴人の人件費率が年々低下していたから,人件費率の問題は発生していなかった旨主張するが,誤りである。 人件費率は,低下すればよいというものではなく,そのレベルが問題であり,被控訴人の人件費率は,他の信用金庫や同一営業地域内の競合信用金庫と比べて高い水準にあったから,人件費率の改善が大きな経営課題であったのである。 エパーヘッドについて控 そのレベルが問題であり,被控訴人の人件費率は,他の信用金庫や同一営業地域内の競合信用金庫と比べて高い水準にあったから,人件費率の改善が大きな経営課題であったのである。 エパーヘッドについて控訴人らは,被控訴人のパーヘッドが良好であったと主張するが,被控訴人のパーヘッドのランクは,平成6年度は都内51信用金庫中19位,7年度は同13位,8年度は49信用金庫中11位と一時的に上昇したが(乙82),これは採用人員を抑制し,欠員状態で業務運営を行った結果であり,このような一時的現象をもって,被控訴人の生産性が向上したとみることはできない。 現に,その後の採用により欠員を解消した平成9年度は47信用金庫中14位,10年度は44信用金庫中20位に低下した。 (5) 物件費を増額させる経営を行ったものではないことア控訴人らは,被控訴人が賃金切り下げを回避する努力をしなかった旨主張するが,以下のとおり,事実に反する。 イ被控訴人の経営努力① 物件費の抑制被控訴人は,出店はしても,物件費の増加を抑制したことは前記(4)イのとおりである。ことに平成6年度からはゼロシーリング方式を導入し,現在はさらにマイナスシーリング(物件費の抑制)である。 しかし,物件費の抑制だけでは経費全体の抑制には至らないことから,やむなく人件費も削減せざるを得なかったのである。 ② 新規採用被控訴人は,敢えて積極的に新規採用を行っているわけではなく,新規採用はあくまで新店舗出店に伴う欠員補充のみである。 ③ 役員の人数増・役員報酬の据置平成7年度に常勤理事に就任した2名は,いずれも職員からの就任であり,職員給与と役員報酬との差は,2名分でも560万円にすぎない。 常勤理事を増員した主たる目的は,各々の部署の責任を明確化するためであり,非難されるべき筋合いで 2名は,いずれも職員からの就任であり,職員給与と役員報酬との差は,2名分でも560万円にすぎない。 常勤理事を増員した主たる目的は,各々の部署の責任を明確化するためであり,非難されるべき筋合いではない。 また,控訴人らは,役員報酬を切り下げるべきであると主張するが,役員賞与は平成4年度以降毎年引き下げられており,8年度以降はゼロとなっており,さらに引き下げろというのは,役員と職員との地位及び責任の違いを無視した暴論である。 (6) 中高年齢層の増加と賃金配分の偏在化についてアまず,55歳以上の高齢職員の数について,原判決201頁に「18年間で17倍以上」とあるは,単なる誤植であり,約8倍が正しい。 イ次に,控訴人らが非難する乙44と45の1~8は,被控訴人の人事記録に基づき作成された正しいものである。 また,控訴人らは,40歳以上の職員の数や人件費の問題は,本件の55歳以上の職員の賃金切り下げとは関係ない旨主張するが,40歳以上の職員の人数割合及び人件費割合は,近い将来確実に55歳以上の高年齢職員となる関係にあるから,将来の人件費偏在の予測として,当然重要な資料であり,本件の新制度の策定に際しても考慮したところである。 しかも,本件の新制度は,前記のとおり55歳未満の職員の賃金も引き下げたものであり,55歳未満の職員は,55歳以上の職員と比べ,退職時までの賃金引き下げ総額がはるかに大きいのであるから,40歳以上の職員の人数割合,人件費割合が高率であることも,新制度導入の大きな理由の一つなのである。 ウ控訴人らが非難する乙117は,控訴人らも認めるとおり,将来を予測して作成されたものであるが,現実には,平成9年以降の実数は予測以上に悪い数字となっており,ここでも,本件新制度の合理性がより強く肯定されるものである。 エ控訴人らが 人らも認めるとおり,将来を予測して作成されたものであるが,現実には,平成9年以降の実数は予測以上に悪い数字となっており,ここでも,本件新制度の合理性がより強く肯定されるものである。 エ控訴人らが非難する乙98も,実例に基づくものであり,控訴人らの主張は,金融機関の支店長に課せられている重大な権限と責任の実態に対する無理解に基づく無責任な言いがかりにすぎない。単に年齢が高いというだけで,支店長でもない55歳以上の職員の収入が高いことが不合理でないというのは暴論である。 オ中高年齢層の増加と,本件就業規則等変更の「高度の必要性」について① 控訴人らは,40歳以上の職員数の割合や人件費の割合はアンバランスではなく,偏在化と呼べるものではないと主張するが,誤りである。 乙43によれば,40歳以上の職員数の割合や人件費の割合が年々増加することは明らかであり,これを放置すれば,企業発展を担う若手・中堅職員の志気低下,さらには人事の停滞,企業活力の低下につながることが明らかであったため,被控訴人は,このようなアンバランスと賃金配分の偏在化を是正するため,本件就業規則等の変更を行ったものであり,原判決の認定は相当である。 ② 控訴人らは,若手・中堅職員の志気の低下,人事の停滞,企業活力の低下に関する客観的証拠がない旨主張するが,被控訴人は,原審においても乙44,45の1~8,97,98のほか乙89,D証言等,必要な証拠を提出した。 当時,被控訴人においては,支店長を含む若手・中堅職員から,責任に見合う賃金が反映されていないという批判が相当あり,特に,責任と権限と賃金とのバランスが最も乖離していたのが55歳時以上の高齢職員であり,被控訴人は,この点の解決を迫られていた。 控訴人らは,高年齢化の進展により多くの企業で生じているような明白な問題点につい 限と賃金とのバランスが最も乖離していたのが55歳時以上の高齢職員であり,被控訴人は,この点の解決を迫られていた。 控訴人らは,高年齢化の進展により多くの企業で生じているような明白な問題点についてまで「客観的な証拠がない」と主張し,ひたすら自らの高収入の維持にのみ腐心しているとしか考えられない。 4 代償措置及び経過措置について(1) 代償措置の位置づけそもそも代償措置は,就業規則変更の合理性を肯定するための絶対条件ではない。 この点を措くとしても,本件の新制度は,前記のとおり55歳時以上の職員のみを対象としたものではない。そして,賃金上の不利益が最も大きい55歳時未満の職員については,前記のとおりの調整給(前記1(2)ア②)を支給するという代償措置を考慮している。 また,55歳時以上の職員については,特別に賃金上の代償措置はなくとも,62歳までの雇用維持という大きな代償を得ている。 (2) 家族手当Bについて同手当は,本件の新制度により新設されたものであり,一定の扶養子女のいる全職員を対象とするものである。厳しい経営環境下で,雇用を確保しつつ支給されるものであり,不利益を緩和するものであるから,これが低額であると考えること自体理解に苦しむ主張である。 (3) 新給与体系の8つのコースについて新制度の新給与体系は,各個人の人生設計において自分にあったコースを選択できるようにしたものであり,7年間の全体的な総収入額は,世間相場と比較しても決して低額なものではない。 控訴人らは,客観的なトータルの計算で判断せずに,短期的な狭い部分を捉えて同制度を批判するもので不当である。 (4) 経過措置について本件は,前記のとおり(前記1(2)),そもそも特定の層の労働者に大きい不利益を負わせる場合ではなく,みちのく銀行事件上告審判決 えて同制度を批判するもので不当である。 (4) 経過措置について本件は,前記のとおり(前記1(2)),そもそも特定の層の労働者に大きい不利益を負わせる場合ではなく,みちのく銀行事件上告審判決とは事案を異にするから,同判示を本件に当てはめることは誤りである。 5 労使間の利益調整について(1) 55歳以上の組合員の存在問題となるQが当時組合員であったことは,控訴人らも原審で争っておらず,原審における原告Fも,その本人尋問の中で明確にこれを認めている。 したがって,原判決の認定に誤りはなく,むしろ控訴人らの当審における主張こそ,Qからの伝聞による根拠のないもので不当である。 (2) 当時の組合員の構成について控訴人らの主張は,単なる組合員の年齢構成の問題であって,本件の問題をすり替えるものである。 C信労は,ユニオンショップ協定を締結しており,全職員のうち非組合員の範囲に属する職員を除く全員が加入してのであって,このような組合が本件の新制度導入に賛成したことは,労使関係の利益調整がなされたことの重要な事情になることは明らかである。 さらに,被控訴人は,非組合員に対しても,説明会,意見聴取手続等,十分な利益調整を行ったものである。 (3) 労使交渉の事実経過についてこの点に関する控訴人らの主張は,いずれも事実に反するもので不当であり,原判決の認定は正当である。 被控訴人が,控訴人ら主張のような交渉における不誠実な態度や,恫喝のごとき行動をとった事実は全くない。 (4) C信労の態度についてC信労が本件の新制度の導入に同意をしたことは,原判決の認定するとおりであり,この点に関する原判決の判断も正当であって,控訴人らの主張は全く理由がない。 第5 当裁判所の判断 1 当裁判所は,控訴人らの請求はいずれも理由があり,認容される とは,原判決の認定するとおりであり,この点に関する原判決の判断も正当であって,控訴人らの主張は全く理由がない。 第5 当裁判所の判断 1 当裁判所は,控訴人らの請求はいずれも理由があり,認容されるべきであると判断するものであり,その理由は,以下のとおりである。 2 判断の基礎となる事実の認定にかかる部分は,原判決挙示の各証拠により,いずれも原判決摘示のとおりの事実を認定することができるから(原判決106頁3行目から194頁9行目まで),これを引用する。 控訴人らの主張中,被控訴人の平均賃金と他の金融機関の賃金水準との比較及び高年齢職員の給与の逓減率に関する部分(2(4)),控訴人らの職務の内容及びそれが見せしめ的なものであるとの部分(2(5)),高齢者の雇用確保における社会的趨勢に関する部分(2(6)),控訴人の経営状態に関する部分(3(2)),自己資本比率の問題に関する部分(3(3)),物件費及び人件費に関する部分(3(4)),中高年齢層の増加と賃金配分の偏在化に関する部分(3(6)),労使間の利益調整についての組合の立場及び被控訴人の交渉における態度に関する部分(5(1)ないし(4))について,原判決の事実認定を不当とする点については,上記のとおり,いずれも原判決の認定を正当として是認することができるから,控訴人らのこの点に関する主張は失当である。 ただし,原判決中,被控訴人における中高年齢職員(40歳以上)の数が平成4年度から平成21年度までの18年間に17倍以上に増加することが予測されるとの点(原判決201頁)については,控訴人ら指摘のとおり,「7倍以上」の誤記であると認められる。 また,自己資本比率は,預金や貸出金を増やせば,その計算の分母となる総資産が増えるため,当然に減少するものであり,少なくとも平成7年当時,被控訴 摘のとおり,「7倍以上」の誤記であると認められる。 また,自己資本比率は,預金や貸出金を増やせば,その計算の分母となる総資産が増えるため,当然に減少するものであり,少なくとも平成7年当時,被控訴人において総資産が増加していたことは,被控訴人も争わないところであり(被控訴人の主張3(3)ウ②),物件費の増加に関し,被控訴人が新店舗を出店し,その限度で新規採用をしたこと,常勤理事を2名増員したことは,いずれも被控訴人も認めるところである(被控訴人の主張3(4)(5))。 なお,被控訴人の原審における本案前の主張が採用できず,控訴人らが賃金差額の給付を求めるとともに,労働契約上の地位の確認を求める訴えの利益があると解されるべきであることも,原判決の説示するとおりである(原判決105頁冒頭から同頁8行目まで)。 3 以上の認定事実をもとに,本件就業規則等変更の効力につき判断する。 (1) 新たな就業規則の作成又は変更によって労働者の既得の権利を奪い,労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは,原則として許されないが,労働条件の集合的処理,特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって,当該規則条項が合理的なものである限り,個々の労働者において,これに同意しないことを理由として,その適用を拒むことは許されないこと,そして,当該規則条項が合理的なものであるとは,当該就業規則の作成又は変更が,その必要性及び内容の両面からみて,それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても,なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい,特に,賃金,退職金など労働者にとって重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については,当該条項が,そ 是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい,特に,賃金,退職金など労働者にとって重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については,当該条項が,そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において,その効力を生ずるものというべきであること,合理性の有無は,具体的には,就業規則によって労働者が被る不利益の程度,使用者側の変更の必要性の内容・程度,変更後の就業規則の内容自体の相当性,代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況,労働組合等との交渉の経緯,他の労働組合又は他の従業員の対応,同種事項における我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきであること,以上はいずれも,みちのく銀行事件上告審判決並びに同判決が引用する最高裁判例の判示するとおりである。 (2) 本件についてこれをみるに,被控訴人において,本件就業規則等変更が検討された当時,経常利益,当期利益ともに相当の割合で減少し,ことに不良債権償却のための有価証券売却や諸償却準備積立金取崩しによる特別利益の計上を除外した実質的な経常利益,当期利益が大幅に落ち込んでいたこと,自己資本比率が恒常的に低水準で推移していたため,その維持・上昇を図る必要があると考えられていたこと,全国や都内信用金庫の平均と比較して高水準にある人件費や物件費をできるだけ削減する必要があったこと,とりわけ我が国社会における高齢化の進展に伴い,被控訴人においても40歳以上の中高年齢職員の大幅増加が見込まれ,その人数比及び人件費の増加及び偏在化も重大な問題となっていたことは,いずれも原判決の説示するとおりであり(原判決199ないし203頁),これに当審における乙133ないし140 大幅増加が見込まれ,その人数比及び人件費の増加及び偏在化も重大な問題となっていたことは,いずれも原判決の説示するとおりであり(原判決199ないし203頁),これに当審における乙133ないし140,141の1,2,142ないし146,152ないし164から認められる新制度施行後今日に至る被控訴人及びこれを取り巻く近時の経済状況をも加え検討すると,被控訴人においては,新制度の施行当時においても,人件費の削減,とりわけ55歳時年度以降の高齢者の人件費を削減する必要性があったものと認められ,したがって,本件就業規則等変更は,被控訴人にとって,高度の経営上の必要性があったということができる。 (3) しかしながら,本件就業規則等変更により被る55歳時年度以降の職員の不利益の程度についてみると,新制度による賃金の減少について原判決が認定した事実関係(当事者間に争いがない。)によれば,1年平均の本給額(平均年収額)は,54歳時年度の本給額を100とした場合(以下同じ),平成4年改正の旧制度で76,平成8年改正の新制度で59・8ないし82となり,旧制度と新制度を比較すると,最大で約21・3%の減少となり,また,55歳時年度以降退職までの本給支給総額は,旧制度で532,新制度で410ないし444となり,旧制度と新制度の減額幅は最大で約23%となり(原判決125ないし133頁,196,197頁。なお,控訴人らが主張する平均年収額減額の最大21・2%の数値は,54歳時の年収を1000万円と仮定して計算しているため,小数点以下若干の数値の差が出ているものである。),しかも控訴人らのように自らコースを選択しなかった場合に適用される原判決(ウ)(a)のコースを適用した場合,57歳時から一挙に50%減額されるものであって,55歳時年度以降の職員の被る賃金の減少の程 しかも控訴人らのように自らコースを選択しなかった場合に適用される原判決(ウ)(a)のコースを適用した場合,57歳時から一挙に50%減額されるものであって,55歳時年度以降の職員の被る賃金の減少の程度及び内容は,極めて重大なものであると認めざるを得ない。 この点に関し,被控訴人は,旧制度と新制度との平均年収の差は14・29%にすぎない旨主張するが,これは両制度の減額率の差を単純に算出したにすぎず,新制度における減額幅が上記のとおりであることは否定できない。 また,被控訴人は,本件の新制度は,みちのく銀行事件と異なり,55歳時以上の高年層のみならず,55歳時未満の職員も含めた職員全体の賃金減額措置であり,しかも55歳時未満の職員は,55歳に達するまでの不利益のほか,同年齢に達した後も控訴人らと同様の不利益を受けるものであるから,55歳時未満の職員の被る不利益の方がはるかに大きいものである旨主張する。 しかしながら,55歳時未満の職員についての減額幅は,原判決も認定するとおり(原判決140,141頁),1級職から7級職までで0・52%から7・00%(平均4・31%)の減額にすぎず,55歳時以上の職員についてみた上記の減額幅とは画然とした差がある上,被控訴人も認めるように55歳時未満の職員には調整給の支給といった代償措置が講じられているのに比し,55歳時以上の職員については,後記のとおり何らの代償措置も講じられていないことからみて,その減額による不利益の程度には大きな差違があるというべきである。また,当審において取り調べた前記の乙号各証により認められる近時における厳しい経済状況からみて,55歳時未満の職員が将来55歳時に達したときに被るであろう不利益が,今後さらに増大する可能性があることは否定できないとしても,本件の新制度の導入によって, れる近時における厳しい経済状況からみて,55歳時未満の職員が将来55歳時に達したときに被るであろう不利益が,今後さらに増大する可能性があることは否定できないとしても,本件の新制度の導入によって,既に55歳時に達しているか又はその直前であった職員が,前記最高裁判例が指摘する労働者の既得の権利を奪われることにより現に被る不利益の大きさと,55歳時未満の職員が将来被ることになるであろう抽象的な不利益とを単純に比較衡量することは適切でないというべきである。 さらに,被控訴人は,新制度下の55歳時以上の職員の職務が概ね定型的で軽易なものになったから,不利益の程度も軽減される旨主張し,原判決も同様の認定をするが,原判決挙示の各証拠によっても,前記のとおりの賃金削減を正当化するに足りるほどの職務の軽減が図られたものと認めるには足りない。 したがって,これらの点に関する被控訴人の上記主張は,いずれも失当である。 (4) 次に,本件において,直接的な代償措置が設けられていないことは,原判決も指摘するとおりである(原判決207頁)。そして,新制度に伴う55歳時年度以降の職員についての賃金減額による前記のとおりの不利益の大きさに比べれば,家族手当Bが新設されたこと,8つの選択コースがあること,並びに退職金額に変更がないことは,いずれも不利益の緩和にはなり得ても,これをもって代償措置とみることができないのはいうまでもない(原判決も,これらの措置が代償措置とはいえないと説示している。)。 この点に関し,被控訴人は,62歳までの雇用維持という大きな代償を得ている旨主張するが,本件の新制度は,定年制の延長と一体となった措置ではなく,従前の定年制を維持したままで賃金体系を変更したものであり,雇用の維持自体がその代償措置とならないことも明らかであるから,被控訴人の同 するが,本件の新制度は,定年制の延長と一体となった措置ではなく,従前の定年制を維持したままで賃金体系を変更したものであり,雇用の維持自体がその代償措置とならないことも明らかであるから,被控訴人の同主張は失当である。 (5) 加えて,本件においては,新制度の施行により差し迫った不利益を被る55歳時年度以降の職員に対し,みちのく銀行事件におけるような新制度施行後一定期間は賃金の削減割合を小幅にする等の不利益を緩和する経過措置も全く設けられていないものであって,以上のような55歳時年度以降の職員の被る不利益の重大性に鑑みると,他方において,前記のとおり被控訴人が本件就業規則等の変更を行うについて高度の経営上の必要性が認められ,かつ,原判決の説示するとおり変更後の本件就業規則等そのものに格別不合理な点は見当たらないとしても,制度しての就業規則等変更の必要性と,特定の層の個々の労働者が被る不利益との調整は,上記の代償措置及び経過措置によって,その調和を図ることも可能であったのであるから,これらの措置を全く講じていない本件にあっては,その必要性の肯定される本件就業規則等も,未だ,その不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの法的規範性を是認することはできず,結局のところ,本件就業規則等変更が高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるということはできないのであって,同変更に同意しない控訴人らに対し,その有効性を主張することはできないというほかない。 上記の判断は,前記のとおりの我が国社会における高齢化の進展と,近時の厳しい経済環境及び雇用情勢,並びに新制度下における55歳時年度以降の職員の職務内容,さらには原判決が認定するとおりの新制度の賃金水準,組合の同意を含めた労使間の利益調整の経緯等の諸事情を考慮しても,なお左右され 及び雇用情勢,並びに新制度下における55歳時年度以降の職員の職務内容,さらには原判決が認定するとおりの新制度の賃金水準,組合の同意を含めた労使間の利益調整の経緯等の諸事情を考慮しても,なお左右されるものではない。 第6 結論以上によれば,本件就業規則等変更は,控訴人らに対してその効力を生じないというべきであるところ,このように効力が生じない部分については,本件就業規則等の新規定への変更は無効であり,旧規定が控訴人らに適用されるものというべきであるから,被控訴人に対し,旧制度に基づく労働契約上の地位を有することの確認,並びに旧制度と新制度との賃金の差額の支払を求める控訴人らの請求はいずれも理由がある。 そして,上記賃金の差額が控訴人ら主張のとおりの金額であることは,被控訴人において争わない。 したがって,控訴人らの請求はいずれも理由があるから全部認容すべきところ,これを棄却した原判決は不当であって,取消を免れない。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第21民事部裁判長裁判官石垣君雄裁判官大和陽一郎裁判官橋本昌純
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