- 1 -平成24年5月30日判決言渡平成23年(行ケ)第10221号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年5月9日判決 原告ライカミクロジュステムスツェーエムエスゲーエムベーハー 訴訟代理人弁理士加藤朝道 内田潔人 青木 充 被告特許庁長官指定代理人 川陽吾 神 悦彦 田部元史 田村正明 主文 特許庁が不服2009-15839号事件について平成23年2月28日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告が求めた判決 - 2 -主文同旨 第2 事案の概要本件訴訟は,特許出願拒絶査定を不服とする審判請求を成り立たないとした審決の取消訴訟である。争点は,進歩性の有無である。 1 特許庁における手続の経緯原告は,平成13年11月14日,名称を「走査型顕微鏡検査における照明用光源装置,及び走査型顕微鏡」とする発明につき,パリ条約に基づく優先日を平成12年(2000年)11月14日,優先権主張国をドイツ連邦共和国として,特許出願し(特願2001-348265号,請求項の数は6),平成21年3月13日,特許請求の範囲の記載の一部及び発明の詳細な説明の記載の一部を改める旨の本件補正をしたが,同年4月22日,上記補正を却下する決定を受けるとともに,拒絶査定を受けたので,同年8月28日,不服審判請求をした(不服2009-15839号)。 特許庁は,平成23年2月28日,上記請求につき「本件審判の請求は,成り立たない。 決定を受けるとともに,拒絶査定を受けたので,同年8月28日,不服審判請求をした(不服2009-15839号)。 特許庁は,平成23年2月28日,上記請求につき「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,この審決の謄本は同年3月15日に原告に送達された。 2 本願発明の要旨本願発明は,走査型顕微鏡及びこれに用いられる照明用光源装置に関する発明で,本件補正後の請求項1の特許請求の範囲は以下のとおりである。 【請求項1(補正発明)】「1つの波長の光線(17)を発する1つの電磁的エネルギー源(3)を有すること,該電磁的エネルギー源(3)には,前記光線(17)を空間的に分割して少なくとも2つの分割光線(19,21)を形成する手段(5)が後置されていること,及び前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の少なくとも1つの分割光線には, - 3 -波長を変化させるための中間素子(9,25)が配されていること,前記中間素子(9,25)は,前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の第1の分割光線(19)が,試料(41)に直接投光され,そこで第一合焦領域(62)を光学的に励起し,前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の第2の分割光線(21)が,試料(41)の第二合焦領域に投光され,そこで重畳領域(63)を形成し,該第1の分割光線(19)のみによって照射された試料領域のみが検出されるよう,該重畳領域(63)において前記第1の分割光線(19)の光によって励起された試料領域が誘導されて基底状態に戻されるように,当該中間素子(9,25)を通過する分割光線の波長を変化すること,及び前記第2の分割光線(21)には,合焦形態変化手段(61)が配されていることを特徴とするSTED走査型顕微鏡検査における照明用光源装置。」(下 5)を通過する分割光線の波長を変化すること,及び前記第2の分割光線(21)には,合焦形態変化手段(61)が配されていることを特徴とするSTED走査型顕微鏡検査における照明用光源装置。」(下線を付した部分が本件補正により補正された部分である。) また,本件補正前の請求項1の特許請求の範囲(平成19年12月20日付け手続補正書に記載のもの)は以下のとおりである。 【請求項1(補正前発明)】「1つの波長の光線(17)を発する1つの電磁的エネルギー源(3)を有すること,該電磁的エネルギー源(3)には,前記光線(17)を空間的に分割して少なくとも2つの分割光線(19,21)を形成する手段(5)が後置されていること,及び前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の少なくとも1つの分割光線には,波長を変化させるための中間素子(9,25)が配されていること前記中間素子(9,25)は, - 4 -前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の第1の分割光線(19)が,試料(41)に直接投光され,そこで第一領域(62)を光学的に励起し,前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の第2の分割光線(21)が,試料(41)の第二領域に投光され,そこで重畳領域(63)を形成し,該第1の分割光線(19)のみによって照射された試料領域のみが検出されるよう,該重畳領域(63)において前記第1の分割光線(19)の光によって励起された試料領域が誘導されて基底状態に戻されるように,当該中間素子(9,25)を通過する分割光線の波長を変化することを特徴とするSTED走査型顕微鏡検査における照明用光源装置。」 3 審決の理由の要点(1) 補正発明は,本件優先日以前に頒布された下記引用文献1に記載された発明に下記引用文献2に記載された発明を適 徴とするSTED走査型顕微鏡検査における照明用光源装置。」 3 審決の理由の要点(1) 補正発明は,本件優先日以前に頒布された下記引用文献1に記載された発明に下記引用文献2に記載された発明を適用することで,本件優先日当時,当業者において容易に発明することができたもので(特許法29条2項),特許出願の際,独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項に違反し,却下すべきである(同法53条1項)。 【引用文献1】米国特許第5731588号明細書(甲1)【引用文献2】特開平10-142151号公報(甲2)【引用文献1に記載された発明】「第1のレーザー(2)からの励起光を反射し,試料(8)の一点に合焦させる,2つのダイクロイックミラー(4,5)とレンズ(6)とからなる光学系と,試料から放射された発光光(18)を検出する検出器(9)を備え,第2のレーザー(3)からの,励起光とは異なる波長の誘導光を2つの誘導光に分けるためのスプリッター(23)とミラー(24)を有し,励起光と誘導光が一方のダイクロイックミラー(4)で合流し,他方のダイクロイックミラー(5)で反射した後にレンズを通過して,レンズの合焦領域で両光線 - 5 -の強度分布が部分的に重なり,第2のレーザーからの誘導光線(17)にり,励起光で励起された試料のエネルギー状態が誘導放出により緩和されるレーザー顕微鏡。」【引用文献1記載発明と補正発明の一致点】「電磁的エネルギー源を有すること,少なくとも2つの光線の第1の光線が,試料に直接投光され,そこで第一合焦領域を光学的に励起し,前記少なくとも2つの光線の第2の光線が,試料の第二合焦領域に投光され,そこで重畳領域を形成し,該第1の光線のみによ 2つの光線の第1の光線が,試料に直接投光され,そこで第一合焦領域を光学的に励起し,前記少なくとも2つの光線の第2の光線が,試料の第二合焦領域に投光され,そこで重畳領域を形成し,該第1の光線のみによって照射された試料領域のみが検出されるよう,該重畳領域において前記第1の光線の光によって励起された試料領域が誘導されて基底状態に戻されるように,第2の光線の波長を設定すること,及び前記第2の光線には,合焦形態変化手段が配されているSTED走査型顕微鏡検査における照明用光源装置」である点。 【引用文献1記載発明と補正発明の相違点】(波長の異なる)2つの光線を,補正発明では,1つの波長の光線を発する1つの電磁的エネルギー源に,前記光線を空間的に分割して少なくとも2つの分割光線を形成する手段を後置し,前記少なくとも2つの分割光線の少なくとも1つの分割光線に,波長を変化させるための中間素子が配することによって形成しているのに対して,引用文献1記載の発明では,異なる波長の電磁的エネルギー源で形成している点。 【相違点に係る構成の容易想到性等についての判断(11,12頁)】「補正発明と引用文献2記載の発明を比較すると,引用文献2記載の発明の『Nd:YAGLaser』は,DyeLaser を励起するための特定の光(電磁波)を発生するものであることから,補正発明の『1つの電磁的エネルギー源』に相当する。 そして,引用文献2記載の発明においてYAGLaser から2つのレーザー光が照射されていること,及び,当該技術分野における技術常識を考慮すれば,引用文献2記載の発明が,『光線を空間的に分割して少なくとも2つの分割光線を形成する手段』を有することは明らかである。 ここで,YAGLaser から2つのレーザー光を,YAGLaser からの1つの波長の光 2記載の発明が,『光線を空間的に分割して少なくとも2つの分割光線を形成する手段』を有することは明らかである。 ここで,YAGLaser から2つのレーザー光を,YAGLaser からの1つの波長の光線を分割するこ - 6 -とにより形成することは,技術常識を踏まえれば,自明な事項である。 また,引用文献2記載の発明では『Nd:YAGLaser からの他方のレーザー光によるDyeLaser の励起により,波長λ2光として波長400~500nmの光が発振される』ことから,引用文献2記載の発明が『波長を変化させるための中間素子』を有することは明らかである。 してみると,引用文献2記載の発明は,上記相違点に係る構成を有している。 そして,引用文献1記載の発明と引用文献2記載の発明は同一の技術分野に属し,しかも,異なる波長の2つのレーザー光を用いるという共通の構成を有するから,引用文献2記載の発明を引用文献1記載の発明の,波長の異なる2つの光を形成する手段として採用することによって,補正発明を構成することに,格別の困難性はない。 なお,原告は,審判請求書において,補正発明の『1つの波長の光線を発する1つの電磁的エネルギー源を用い,これを2分割し,少なくとも1つの分割光線には,波長を変化させるための中間素子を配し,この中間素子として特定の中間素子を用いることが,それぞれ2以上のレーザ光線の使用を不可欠とする全く異なった解決原理による引用文献2から,容易に導き出しえない』旨主張している・・・。 しかしながら,上記のとおり,引用文献2記載の発明は,2つの分割光線を形成する手段として,1つの波長の光線を発する1つの電磁的エネルギー源を用いており,引用文献2記載の発明の色素レーザーが,それ自体は発振のためのエネルギー源を有していないことを考慮すれば,引 光線を形成する手段として,1つの波長の光線を発する1つの電磁的エネルギー源を用いており,引用文献2記載の発明の色素レーザーが,それ自体は発振のためのエネルギー源を有していないことを考慮すれば,引用文献2記載の発明の『DyeLaser』は,当該中間素子に相当する。そして,補正発明は,そのような発明を排除していない。 また,仮にそうでないとしても,本願明細書の段落【0018】には,『中間素子9(これは光学パラメトリック発振器として構成されている)』と記載されており,引用文献2の『波長λ1光と波長λ2光とを発振する光源としては,・・・波長可変のオプチカルパラメトリクオシレータレーザシステム等が備えられていてもよい。』と記載(上記摘記事項(2b)(判決注:段落【0032】)参照)されているのであるから,引用文献2記載の発明の中間素子として,光学パラメトリック発振器を用いることは,設計的事項である。 いずれにしても,原告の上記主張は,採用することができない。 そして,補正発明全体の効果も,引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 したがって,補正発明は,引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。」(2) 上記のとおり本件補正は不適法なので,補正前発明について判断するに,補正前発明は,本件優先日以前に頒布された前記引用文献1に記載された発明に前記引用文献2に記載された発明を適用することで,本件優先日当時,当業者におい - 7 -て容易に発明することができたもので,進歩性を欠く。 第3 原告主張の審決取消事由 1 引用文献1 前記引用文献2に記載された発明を適用することで,本件優先日当時,当業者におい - 7 -て容易に発明することができたもので,進歩性を欠く。 第3 原告主張の審決取消事由 1 引用文献1記載発明と補正発明との一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由1)(1) 引用文献1の図1には,ビームスプリッター23とミラー24とが第2のレーザー3からの光ビームを2つの誘導光ビームに分割・偏向する様子が図示され,6欄20ないし22行にも同趣旨の記載があるし,6欄22ないし27行の記載はこれらの記載を受けたものとなっている。誘導光及び励起光の焦点面での強度分布は図2のとおりであるところ,誘導光の焦点面での強度分布の各ピーク26,26は,励起光のピーク25の中心に対して横方向に位置がずれているだけであり,焦点の形態には変化がない(7欄30~47行参照)。 他方,補正発明にいう「合焦形態」とは文字どおり「焦点の形態」,とりわけ第2の分割光線の「焦点の形態」を意味する(例えば,段落【0021】参照)。また,補正発明にいう「合焦形態変化手段」も,この手段を通過する光線の焦点の形態を変化させるものを意味する。 そうすると,引用文献1のスプリッター及びミラーは補正発明にいう「合焦形態変化手段」に相当するものではないし,引用文献1の第2の光線には,補正発明にいう「合焦形態変化手段」が配されているとはいえないから,これに反する審決の一致点及び相違点の認定は誤りである。 (2) 引用文献1記載発明では,焦点面における励起光のピーク25の両横部分で誘導光の分割光線(2本)のピークが重なる領域(重畳領域)が生じ,焦点面における誘導光の強度の分布を微妙に調整する必要があるが,補正発明では,1本の誘導光の焦点と1本の励起光の焦点とを重ね合わせれば足り,焦点面にお (2本)のピークが重なる領域(重畳領域)が生じ,焦点面における誘導光の強度の分布を微妙に調整する必要があるが,補正発明では,1本の誘導光の焦点と1本の励起光の焦点とを重ね合わせれば足り,焦点面における誘導光の強度の分布を厳密に調整する必要がない(焦点合わせの簡素化)。したがって,引用文献1記載発明と補正発明とが「第2の光線が,試料の第二合焦領域に投光さ - 8 -れ,そこで重畳領域を形成」する点で一致するとした審決の判断は誤りである。 (3) 補正発明では,誘導光の分割光線の波長を変化させる中間手段を,「前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の第1の分割光線(19)が,試料(41)に直接投光され,そこで第一合焦領域(62)を光学的に励起し,前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の第2の分割光線(21)が,試料(41)の第二合焦領域に投光され,そこで重畳領域(63)を形成し,該第1の分割光線(19)のみによって照射された試料領域のみが検出されるよう,該重畳領域(63)において前記第1の分割光線(19)の光によって励起された試料領域が誘導されて基底状態に戻されるように,当該中間素子(9,25)を通過する分割光線の波長を変化すること,」との特定の構成を有するものに限定しているのであって,これを単なる「中間素子」としてしまうのは誤りである。したがって,補正発明が「前記少なくとも2つの分割光線の少なくとも1つの分割光線に,波長を変化させるための中間素子が配することによって形成しているのに対して,引用文献1記載の発明では,異なる波長の電磁的エネルギー源で形成している点」を相違点とする審決の判断は誤りである。 2 引用文献1記載発明と補正発明との相違点に係る構成の容易想到性の判断の誤り(取消事由2)(1) 引用文献1記載発明では, ネルギー源で形成している点」を相違点とする審決の判断は誤りである。 2 引用文献1記載発明と補正発明との相違点に係る構成の容易想到性の判断の誤り(取消事由2)(1) 引用文献1記載発明では,1本の誘導光ビームを2本のビームに分割し,2本のビームを,励起光ビームの焦点面における焦点の強度分布の両裾の部分で励起光ビームと誘導光(分割光)ビームとが重なり合うように照射する構成が採用されているのであって,かかる重なり合いを生ずるためにはビームの強度分布を微調整しなければならず,複雑であった。補正発明は,かかる複雑な微調整の必要が生じるという問題を踏まえ,1本の誘導光ビームの焦点と1本の励起光ビームの焦点とを重ね合わせれば足りるようにし,焦点面における誘導光ビームの強度分布の調整を簡素化したものであって,補正発明と引用文献1記載発明とでは,解決すべき技術的課題が異なる。 - 9 -(2) 前記のとおり,引用文献1記載発明は,誘導光(分割光)ビームの焦点面における焦点を横にずらして,励起光ビームの焦点面における強度分布の両裾の部分で重なり合うようにするというものであるところ,引用文献2記載の光学顕微鏡は,1本のレーザーを2本のレーザーに分割して,うち1本を第1波長の励起光源として,他の1本を第2波長の励起光源として用い(色素レーザー),これら2本(第1波長及び第2波長)の励起光レーザーを合一して,焦点面における第1波長の励起光レーザーの強度分布の裾部分(両側周辺部)で第2波長の励起光レーザーを重畳させ,励起光レーザーによる解像度を向上させようとするものである。ここで,引用文献2の第1波長の励起光レーザーは焦点面で焦点を結ぶが,第2波長の励起光レーザーは焦点面で焦点を結ばず,焦点面に集光されるのみで,1点に収束せず,広がった状態で焦点 とするものである。ここで,引用文献2の第1波長の励起光レーザーは焦点面で焦点を結ぶが,第2波長の励起光レーザーは焦点面で焦点を結ばず,焦点面に集光されるのみで,1点に収束せず,広がった状態で焦点面に入射される。したがって,引用文献2の光学顕微鏡では,焦点面における励起光ビームの強度分布(曲線)の中心に誘導光ビームが明確な焦点を結ぶものではなく,焦点面の励起光ビームの強度分布(曲線)の中心に誘導光ビームが明確な焦点を結ぶ補正発明とは課題解決原理が異なる。 また,引用文献2の第2波長の色素レーザーは,レーザー光源の出力光の分割光を入力光として発振する構成のもので(引用文献2のDyeLaser は入力レーザー光による励起を受けて別個のレーザー光を発振,出力するもので,単にレーザー光の波長を変化させているわけではないし,入力レーザー光も単にDyeLaser を通過しているわけではない。),単にレーザーの波長を変化させる中間素子を利用するものではなく,むしろ2つのレーザー光源を利用する顕微鏡の変形例である。このとおり,引用文献2の光学顕微鏡と引用文献1記載発明とは2つのレーザー光源を用い,また2つの波長の異なるレーザーを用いるものであって,1つのレーザー光源しか用いない補正発明とはその技術的性格が異なる。 したがって,引用文献1記載発明に引用文献2記載発明を適用しても,引用文献1記載発明と補正発明の相違点に係る構成に想到する動機付けを欠き,当業者においてかかる構成に想到することは容易でない。 - 10 -(3) 補正発明は,1つのレーザー光源からのレーザー光線をビームスプリッターで分割して2本の分割光線(励起光レーザー及び誘導光レーザー)を生成し,中間素子でこれを通過する分割光線の波長を変化させた後,励起光レーザーと誘導光レーザー 源からのレーザー光線をビームスプリッターで分割して2本の分割光線(励起光レーザー及び誘導光レーザー)を生成し,中間素子でこれを通過する分割光線の波長を変化させた後,励起光レーザーと誘導光レーザーの焦点を一致させるとともに,誘導光レーザーの焦点の形態を変化させて重畳領域を形成し,この重畳領域で誘導放射を生じさせて,励起光レーザーで励起された試料を基底状態に戻すという簡潔な構成のもので,引用文献1記載発明のように,複数のレーザー光源を用いたり,スプリッター及びミラーを用いて誘導光(レーザー)自体を分割したり,誘導光が焦点を結ぶ位置を微調整したりする必要がない。また,補正発明では,励起光レーザーの焦点と誘導光レーザーの焦点が一致すれば足り,両焦点の位置が僅かにずれていても,走査型顕微鏡の動作に支障がない。 そして,励起光レーザーの焦点と誘導光レーザーの焦点とで,中空の焦点形態を成す場合には,高い分解能を発揮することができる。 これらのとおり,補正発明は,引用文献1記載発明及び引用文献2記載発明からは当業者が予測し得ない格別有利な効果を奏することができるものである。 (4) 以上のとおり,本件優先日当時,引用文献1記載発明に引用文献2記載発明を適用しても,当業者において補正発明と引用文献1記載発明の相違点に係る構成に容易に想到できたものではないし,補正発明は,引用文献1記載発明及び引用文献2記載発明からは当業者が予測し得ない格別有利な効果を奏することができるから,補正発明は進歩性を欠くものではない。 なお,従前,「引用文献1記載発明の『スプリッターとミラー』によって,誘導光が2つの誘導光に分けられ,レンズの合焦範囲で励起光ビームと部分的に重なるようなビームの強度分布とされることから,当該『スプリッターとミラー』は,補正発明の『合焦形態変化手 ミラー』によって,誘導光が2つの誘導光に分けられ,レンズの合焦範囲で励起光ビームと部分的に重なるようなビームの強度分布とされることから,当該『スプリッターとミラー』は,補正発明の『合焦形態変化手段』に相当する。」などとの解釈・認定を示してこなかったにもかかわらず,審決は抜打ちでかかる判断をしたもので,原告は意見を述べる機会を付与されなかったから,審決のかかる判断は手続上の違法を構成する(特許法50条,159条2項)。 - 11 -第4 取消事由に対する被告の反論 1 取消事由1に対し(1) 本願明細書の段落【0021】,【0023】によれば,補正発明の「合焦形態」とは,光線が最も絞り込まれた位置ないし回折限界によりビームウエストを形成している位置である合焦位置における光線の配置を意味し,「合焦形態変化手段」も,合焦位置における第2の分割光線の配置を内側が空の形態に変化させる手段を意味する。 他方,引用文献1記載発明においても,誘導光がスプリッター及びミラーによって2つに分割され,中心軸から互いに反対方向に同じ距離だけずれるように対称に,すなわち内側が空の形態になるように,合焦位置における光線の配置を変化させているから,スプリッター及びミラーは「合焦形態変化手段」に相当する。 したがって,引用文献1記載発明にいうスプリッター及びミラーが補正発明にいう「合焦形態変化手段」に相当し,引用文献1記載発明においても「合焦形態変化手段」が配されているとした審決の一致点の認定に誤りはない。 (2) 審決は,引用文献1記載発明にいう「誘導光」が「第2の光線」である旨を認定し,「第2の光線」である「誘導光」が試料の第2合焦領域に投光され,重畳領域を形成する旨を認定したのであって,審決がした一致点の認定に誤りはない。 また,補正発明におけ 「第2の光線」である旨を認定し,「第2の光線」である「誘導光」が試料の第2合焦領域に投光され,重畳領域を形成する旨を認定したのであって,審決がした一致点の認定に誤りはない。 また,補正発明における「第2の分割光線」に関する発明特定事項は,「第2の分割光線」が1本か複数本かを特定してされたものではなく,「第2の分割光線」が2本の引用文献1記載発明の構成も,補正発明の構成に含まれる。したがって,引用文献1記載発明と異なり,補正発明においては,1本の励起光の焦点に対して1本の誘導光の焦点を重ね合わせるのみであるとする原告の主張は,補正発明の特許請求の範囲の記載に基づかないものにすぎない。 (3) 出願当初の明細書の請求項2,3の特許請求の範囲の記載及び段落【0015】の記載に照らしても,分割光線が「中間素子」を通過することや,「中間素子」を通過する分割光線の波長が変化することは記載も示唆もされていないのであって, - 12 -補正発明にいう「中間素子」は単に入射された光の波長を変化させて出射する部材にすぎない。したがって,補正発明においては「中間素子」を介して入射光の波長を変化させているとした審決の認定に誤りはない。 2 取消事由2に対し(1) 補正発明にいう「中間素子」は波長を変化させるために用いられるもので,DyeLaser を有する構成を排除していない。また,引用文献記載2発明のDyeLaserは,励起光が入射されることにより励起され,励起光とは異なる波長の光を発振するもので,それ自体が自発的に発振するものではないから,電磁エネルギー源に当たらない一方,入射光の波長を変化させるためのものであるから,補正発明にいう「中間素子」に当たる。 したがって,引用文献1記載発明に引用文献2記載発明を適用できるとした審決の判断に誤り ギー源に当たらない一方,入射光の波長を変化させるためのものであるから,補正発明にいう「中間素子」に当たる。 したがって,引用文献1記載発明に引用文献2記載発明を適用できるとした審決の判断に誤りはない。 (2) 補正発明において誘導光と励起光の重なり合いのずれが許容される範囲は,「合焦形態変化手段」によって内側が空の形態に変化させられることにより形成された第2の分割光線の中空部が第1の分割光線の合焦領域内に収まっている程度をいうところ(本願明細書の段落【0023】,図4,5参照),引用文献記載1発明においても,誘導光の内側の空の領域が励起光の合焦領域内に収まっている範囲内で,ずれが許容されるものである。そうすると,ずれの許容の点において,引用文献1記載発明は補正発明と異なるものではない。 (3) 補正発明にいう「合焦形態変化手段」は,合焦位置における「第2の分割光線」の配置を内側が空の形態に変化させる手段であって,当業者である原告においても,2つの誘導光を中心軸上に配置されている状態から,互いに反対方向に同じ距離だけずれるよう,対称に配置されている状態に光線の配置が変化し,内側が空の形態となるように変化させる引用文献1のスプリッター及びミラーが補正発明にいう「合焦形態変化手段」に相当することを容易に認識できたものである。 したがって,審決がした認定に原告に対する不意打ちはなく,手続の違法はない。 - 13 -第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(引用文献1記載発明と補正発明との一致点及び相違点の認定の誤り)について(1)ア原告は,審決には補正発明にいう「合焦形態変化手段」の有無に関し,引用文献1記載発明と補正発明との一致点,相違点の認定の誤りがある旨主張するところ,補正発明の特許請求の範囲では,「合焦領域」及び「合焦形 は,審決には補正発明にいう「合焦形態変化手段」の有無に関し,引用文献1記載発明と補正発明との一致点,相違点の認定の誤りがある旨主張するところ,補正発明の特許請求の範囲では,「合焦領域」及び「合焦形態変化手段」に関し,「前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の第1の分割光線(19)が,試料(41)に直接投光され,そこで第一合焦領域(62)を光学的に励起し,・・・第2の分割光線(21)が,試料(41)の第二合焦領域に投光され,そこで重畳領域(63)を形成し,」,「前記第2の分割光線(21)には,合焦形態変化手段(61)が配されている」と記載されているのみであるから,上記「合焦形態変化手段」は,「第2の分割光線(21)」の光路の途中に設けられ,分割光線の焦点が合う形態を変化させるための手段程度の意味合いであることは理解できるものの,特許請求の範囲の記載のみからは,その具体的な構成も,補正発明の作用効果に対して果たす機能も,当業者において理解することができない。そこで,本願明細書(甲3,6,10)の発明の詳細な説明の記載をみるに,上記「合焦形態変化手段」に関し,次のとおりの記載がある。 ・段落【0004】「特に共焦点走査型顕微鏡の場合,被検物の走査は,三次元での光線の合焦のより行われる。」・段落【0008】「共焦点走査型顕微鏡の分解能は,とりわけ照明光線の合焦(スポット)の強度分布及び空間的広がりによって与えられる。蛍光の利用に関して分解能を大きくするための装置が,・・・既知である。その装置では,第二レーザ光源から放出される異なる波長のレーザ光によって照明合焦空間の辺縁領域が照明され,そこで第一レーザ光源の光によって励起された試料領域が誘導され基底状態に戻る。この場合検 - 14 -出されるのは,第二レーザ光によって照明さ のレーザ光によって照明合焦空間の辺縁領域が照明され,そこで第一レーザ光源の光によって励起された試料領域が誘導され基底状態に戻る。この場合検 - 14 -出されるのは,第二レーザ光によって照明されない領域から自発的に生じる光のみであり,そのため分解能は全体として改善される。この方法を行うために,STED(誘導放射空乏:StimulatedEmissionDepletion)が一般に使用されてきた。」・段落【0009】「STED顕微鏡の分野では,通常,2つのレーザが使用されるが,一方のレーザは試料領域を励起するためのものであり,他方は誘導放射を惹き起すためのものである。」・段落【0019】(以下は実施例に関する記載)「図2に共焦点走査型顕微鏡として構成されている本発明の走査型顕微鏡を示す。 ここに示した実施例では,光源装置1は,分割光線23の光路に,光学パラメトリック発振器9に続いて,合焦形態に影響を与える手段(これは,λ/2プレート61として構成されており,かつ分割光線23の断面の中央部分のみによって通過される)を含む。・・・λ/2プレート61を通過した分割光線23は,ダイクロイック光線結合器13に達し,そこで分割光線27と結合し,光源装置1から射出する照明光線29を形成する。」・段落【0021】「図3に非走査型構成及び多光子励起の形態をとる本発明の走査型顕微鏡を示した。照明には,基本的には,図1に示した光源装置1が用いられるが,合焦形態に影響を与える手段(これはλ/2プレート61として構成され,かつ分割光線53の断面の中央部分のみのよって通過される)を更に含む。λ/2プレート61を通過した分割光線53は,ミラー55によって反射されダイクロイック光線結合器31へ向かい,そこで分割光線19と結合し,光源装置1から射 中央部分のみのよって通過される)を更に含む。λ/2プレート61を通過した分割光線53は,ミラー55によって反射されダイクロイック光線結合器31へ向かい,そこで分割光線19と結合し,光源装置1から射出する照明光線51を形成する。試料41の照明は,図2の装置と同様にして行われる。試料41の領域の励起は,照明光線51の一成分(これは分割光線19の波長を有する)によって惹き起される。誘導放出(射)は,照明光線51の別の成分(これは分割光線23の波長を有する)によって惹き起される。λ/2プレート61によって,照明光 - 15 -線51の後者の成分は,内側が空(中空)の(中央に光の成分を持たない)合焦(形態)を持ち,そのためその空間の全方向において(誘導)放射空間(ボリューム)が制限(ないし削限)され,従って軸方向及び横方向の分解能は大きくなる。」・段落【0023】「図4は,検査されるべき試料41の内部又は表面における,第一分割光線19及び第二分割光線23の空間配置を明確に示している。第二分割光線23の直径(又は太さ)は,第一分割光線19より大きく,そのため第一分割光線19は,第二分割光線23によって合焦領域内において完全に取囲まれている。第二分割光線23は,内部が空の合焦形態を持つ。第一及び第二分割光線19及び23の重畳によって,合焦領域において,三次元の重畳領域(図4ではハッチングが付された断面部分として描かれている)63が画成される。第一分割光線19の合焦領域でかつ第二分割光線23の中空部分内に在る領域は,放射空間65を画成する。」・図4 そうすると,補正発明にいう「合焦形態変化手段」は,分割光線を形成する手段(5)によって分割された分割光線のうち第2分割光線(21)が試料表面上又は試料内部で成す焦点の形態を変化させる そうすると,補正発明にいう「合焦形態変化手段」は,分割光線を形成する手段(5)によって分割された分割光線のうち第2分割光線(21)が試料表面上又は試料内部で成す焦点の形態を変化させる手段,例えば,前記図4のように,外側を環状の第2分割光線(21,誘導光)の焦点(照射部分)が取り囲み,内側が空になるように,第2分割光線(21)の焦点の形態を変化させる手段を意味するものというべきである。 この点,被告は,補正発明にいう「合焦形態」は光線が最も絞り込まれた位置に - 16 -おける光線の配置を意味する等と主張するが,上記のとおり,補正発明にいう「合焦形態変化手段」は焦点(照射部分)の配置(位置)のみならずその形(形態)をも変化させる手段を意味するから,被告の上記主張を採用することはできない。 イ他方,走査型顕微鏡の励起光及び誘導光の試料表面に対する照射に関し,引用文献1には次のとおりの記載がある。 ・5欄35ないし50行「Anotherimprovementinthelocalresolutionofthedevicecanbeachievedbyarrangingafilterelementpermeableforthewavelengthofthestimulatinglightbetweenthelightsourceandthelensthathasanimpermeablemiddleareaandapermeableouterareaforthewavelengthofexcitationlight. Suchafilterelementmoveslightfromthemainmaximumint forthewavelengthofexcitationlight. Suchafilterelementmoveslightfromthemainmaximumintothebendingauxiliarymaximaintheintensitydistributionoftheexcitationlightinthefocalrange, whereinthemainmaximumismadeclearlynarrower. Thisleadstoanothernarrowingoftheeffectivepoint-imagingfunction. Theincreaseintheintensityoftheauxiliarymaximaoftheintensitydistributionoftheexcitationlightis, inthiscase, notdisturbing, sincetheyaresuppressedbecauseoftheintensitydistributionofthesimulationlightintheeffectivepoint-imagingfunction, sincetheintensitydistributionspartiallyoverlap.」(光源とレンズの間に,励起光の波長を,その中心部は透過しないが周囲部分は透過し,誘導光の波長を透過するフィルターを置くことで,装置の局所的解像度の向上が図れる。このようなフィルターによって,合焦領域における励起光の強度分布の主たる極大値の光を従たる極大値の方に移動させるこ し,誘導光の波長を透過するフィルターを置くことで,装置の局所的解像度の向上が図れる。このようなフィルターによって,合焦領域における励起光の強度分布の主たる極大値の光を従たる極大値の方に移動させることができる。そこでは,主たる極大値は,明らかに狭くなっている。その結果,有効点像関数の狭窄化が起こる。この場合,励起光の2つの従たる極大値の強度は増加するが,有効点像関数における誘導光の強度分布が部分的に重なり,それらが抑制されるから問題とならない。) - 17 -・5欄65行ないし6欄27行「DETAILEDDESCRIPTIONFIG.1 shows, thearrangementofarastermicroscopeasanexampleofembodimentofthedeviceintheinvention.Therastermicroscopeincludesalightsource 1 withalaser 2 toemitexcitinglightandalaser 3 toemitstimulatinglight. Therearealsodichroiticmirrors 4 and 5 andalens 6,withwhichtheexcitinglightandstimulatinglightcomingfromlasers 2 and 3 aredeflectedorfocusedononepoint 7 ofthesample 8. Thepoint 7 hasalocalexpansionwhichisanexpansionofthesurfacehere. Adet fthesample 8. Thepoint 7 hasalocalexpansionwhichisanexpansionofthesurfacehere. Adetector 9 isarrangedtodetecttheemissionlightemittedbythesample 8 whichisseparatedfromtheexcitationlight 18 withthedichroiticmirror 5. Thesampleisarrangedonapositioningtable 10. Betweenthelightsource 1 andthelens 6 isabeam-rasterdevice 11 forcontrolledscanningofthesample 8 withtheexcitinglightandthestimulatinglight. Thelightsource 1 includes, inadditiontothelasers 2 and 3, lenses 12 and 13 andafilter14. Withthelenses 12, thelaserbeamcomingfromthelaser 2 isfocusedonthefilter 14. Thelens 13 isusedtoadjustthedivergenceoftheexcitinglightbeamandthestimulatinglightbeams, sothattheycanbefocusedinthesamep theexcitinglightbeamandthestimulatinglightbeams, sothattheycanbefocusedinthesameplaneusingthelens 6. Aperturesareusuallyusedasfilters. Behindthelaser 3, thereisabeamsplitter 23 andamirror 24 fordividingupthebeamcomingfromthelaser 3 intotwostimulatinglightbeams 17. Thearrangementisselectedsothattheexcitinglightbeamandthestimulatinglightbeamsmeetonthemirror 4 insuchawaythatafterdeflectionatthemirror 5 andpassagethroughthelens 6, theintensitydistributionsofthebeamspartiallyoverlapinthefocalrangeofthelens 6.」(詳細な説明図1は,この発明の一実施例のレーザー顕微鏡の配置を示している。 レーザー顕微鏡は,励起光を放射するレーザー2と,誘導光を放射するレーザー3を備える光源1を含む。レーザー2と3からの励起光と誘導光を反射し,試料8 - 18 -の一点に合焦させるダイクロイックミラー4,5とレンズ6も備えられている。点7は局所的に広がった表面を有する。検出器9が,試料8か レーザー2と3からの励起光と誘導光を反射し,試料8 - 18 -の一点に合焦させるダイクロイックミラー4,5とレンズ6も備えられている。点7は局所的に広がった表面を有する。検出器9が,試料8から放射され,ダイクロイックミラー5によって励起光18から分離された発光光を検出するように,配置されている。試料は,位置決めテーブル10に配置されている。光源1とレンズ6の間に,励起光と誘導光を試料8に走査するためのビーム走査装置11が配置されている。光源1はレーザー2と3に加え,レンズ12,13とフィルター14を備えている。レンズ12で,レーザー2からのレーザービームがフィルター14上に合焦される。レンズ13は,レンズ6を用いて2つの励起光と誘導光が同一平面上に合焦するように,発散を調節するために用いられる。アパーチャーは,通常フィルターとして用いられる。レーザー3の後ろに,レーザー3からの光線を2つの誘導光に分けるためのスプリッター23とミラー24が配置されている。各要素は,励起光と2つの誘導光がミラー4で合流し,ミラー5で反射した後にレンズ6を通過して,レンズ6の合焦領域で光の強度分布が部分的に重なるように配置されている。)・7欄30ないし57行「FIG.2 showstheintensitydistribution 25 oftheexcitinglightbeamandtheintensitydistributions 26 oftwostimulatinglightbeams 17. Theintensitydistribution 25 oftheexcitinglightbeam 16 hasamainmaximumandsymmetricalauxiliarymaxima ydistribution 25 oftheexcitinglightbeam 16 hasamainmaximumandsymmetricalauxiliarymaximainthelateraldirection. Theintensitydistribution 26 ofthestimulatingbeams 17 areGaussian. ThemaximaoftheGaussdistributionsofthestimulatinglightarestaggeredlaterallyinrelationtothemaximumoftheintensitydistribution 25 oftheexcitationlight. Asymmetricalarrangementischoseninwhichthetwostimulatinglightbeamsaremovedintheoppositedirectionatthesamedistanceinrelationtothecentralaxisbytheintensitydistributionoftheexcitinglight. Theintensityofthestimulatinglightisclearlygreaterthantheintensityoftheexcitationlight. Theintensityofthestimulatinglightbeamischosensothatthereisanonlinearconnectionbet . Theintensityofthestimulatinglightbeamischosensothatthereisanonlinearconnectionbetweenthatintensityandtheoccupationofthe - 19 -energystateofthesample.FIG.3 showstheeffectivepoint-imagingfunctioninthefocalplaneofthelens, inwhichtheintensitydistributionsinFIG.2 go. Theeffectivepoint-imagingfunctiondeterminesthelocalresolutionofarastermicroscope. Ascanbeseeninthefigure, theresultingeffectivepoint-imagingfunctionhasamaximumwhosehalf-widthvalueisclearlynarrowerthanthehalf-widthvalueoftheintensitydistributionoftheexcitinglight, seeFIG.2. Also,throughtheoveralleffectoftheintensitydistributionsshowninFIG.2, theauxiliarymaximacontainedintheexcitationlightareeliminated.」(図2は,励起光 sshowninFIG.2, theauxiliarymaximacontainedintheexcitationlightareeliminated.」(図2は,励起光線の強度分布25と2つの誘導光線17の強度分布26を示す。 励起光線16の強度分布25は,1つの主たる極大値と,横方向に対称な従たる極大値を有する。2つの誘導光線17の強度分布26はガウス形状である。誘導光のガウス分布の極大値は,励起光の強度分布25の極大値に関連して,横方向にずらしてある。2つの誘導光線は,励起光の強度分布25の中心軸から反対方向に同じ距離だけずれるように対称に配置されている。誘導光の強度は,明らかに励起光の強度より大きい。誘導光線の強度は,試料のエネルギー状態の占有と強度の関係が非線形になるように選択される。)・図1 - 20 -・図2 ウそうすると,引用文献1記載発明においては,レーザー(2)から照射される励起光が試料表面(又は試料内部)で成す強度分布25のピーク(極大部)の両横の裾の部分に,同ピークから横方向に対称にずれて2つの分割光線(誘導光)のピークが来るようにするべく,ダイクロイックミラー(4,5)及びレンズ(6)を操作するものであるが,上記図2の記載からも明らかなように,誘導光のピークは励起光のピークの一部と概ね一直線上に並び,励起光のピークの裾の部分と誘導光のピーク(2つ)が一直線上に重なり合うだけで,誘導光の焦点の形態が変化しているものではない。 一方,前記のとおり,補正発明においては,「合焦形態変化手段」が,第2分割光線(21)が試料表面上又は試料内部で成す焦点の形態を,例えば,外側を環状の第2分割光線(21,誘導光)の焦点(照射部分)が取り囲み,内側が空になるように変化させるか 焦形態変化手段」が,第2分割光線(21)が試料表面上又は試料内部で成す焦点の形態を,例えば,外側を環状の第2分割光線(21,誘導光)の焦点(照射部分)が取り囲み,内側が空になるように変化させるから,補正発明では第2分割光線(21),引用文献1記載発明では誘導光の各光路上に設けられた機器が,焦点の形態を変化させるか否かにおいて互 - 21 -いに異なるというべきである。 したがって,引用文献1記載発明の「『スプリッターとミラー』は,補正発明の『合焦形態変化手段』に相当する」とした審決の判断(11頁)は誤りであるし,審決がした引用文献1記載発明と補正発明の一致点の認定のうち,「前記第2の光線には,合焦形態変化手段が配されている」との部分は誤りである。 (2) なお,原告は,審決が「第2の光線が,試料の第二合焦領域に投光され,そこで重畳領域を形成」する点も引用文献1記載発明と補正発明の一致点であるとした認定には誤りがあると主張するが,審決は,「引用文献1記載の発明の『誘導光』が,2つの誘導光に分けられ,レンズの合焦範囲で励起光線と強度分布が部分的に重なる誘導光ビームにより,励起光で励起された試料のエネルギー状態が誘導放出により緩和されることは,補正発明の『試料の第二合焦領域に投光され』ると,『そこで重畳領域を形成し,該重畳領域において第1の光線の光によって励起された試料領域が誘導されて基底状態に戻される』ことに実質的に等しい。・・・引用文献1記載の発明と補正発明とは,ともに,『重畳領域において前記第1の光線の光によって励起された試料領域が誘導されて基底状態に戻されるように,第2の光線の波長を設定する』点で共通する。」(10頁)と説示しており,補正発明にいう「第2の分割光線」,引用文献1記載発明にいう「誘導光」の本数を捨象して,当該 誘導されて基底状態に戻されるように,第2の光線の波長を設定する』点で共通する。」(10頁)と説示しており,補正発明にいう「第2の分割光線」,引用文献1記載発明にいう「誘導光」の本数を捨象して,当該「第2の分割光線」等の機能に着目し,上記一致点の認定をしたにすぎないことが明らかである。他方,審決は,引用文献1記載発明と補正発明の相違点の認定において,補正発明にいう「第2の分割光線」と引用文献1記載発明にいう「誘導光」の本数が異なることを前提とした認定を行っている。したがって,原告の上記主張は理由がない。 (3) 以上のとおり,審決がした引用文献1記載発明と補正発明の一致点及び相違点の認定には,相違点の看過がある。原告はこの相違点看過を前提として取消事由2を主張し,被告もこの点について反論しているので,前記(1)の相違点が存することを前提として,引用文献1記載発明と補正発明の相違点に係る構成の容易想到 - 22 -性に関する取消事由2について,次に判断する。 2 取消事由2(引用文献1記載発明と補正発明の相違点に係る構成の容易想到性等の判断の誤り)について(1) 引用文献2(甲2)には,次のとおりの記載がある。 ・段落【0001】「この発明は,光学顕微鏡に関するものである。さらに詳しくは,この発明は,第2励起状態からの発光収率が小さい分子により構成されている試料に対しても高い空間分解能で,高画質の発光像を得ることができる,高性能且つ高機能な,新しい光学顕微鏡に関するものである。」・段落【0006】「このように,従来の光学顕微鏡では,得られる像のコントラスト等の画質や情報量が不十分であり,観察が不安定であるといった問題があった。」・段落【0007】「このような従来の光学顕微鏡の欠点を克服するために,この発明の発明者 では,得られる像のコントラスト等の画質や情報量が不十分であり,観察が不安定であるといった問題があった。」・段落【0007】「このような従来の光学顕微鏡の欠点を克服するために,この発明の発明者は,新しい光学顕微鏡として,像のコントラストの制御を行うことができ,さらに試料の化学分析をも行うことのできる高性能且つ高機能な光学顕微鏡をすでに提案している。この新しい光学顕微鏡は,お互いに異なる波長を有する複数の光を試料に照射して二重共鳴吸収過程を引き起こすことにより,特定分子の光学遷移に起因する吸収像や発光像を得るものである。」・段落【0012】「このように,新しく提案された多波長光光学顕微鏡は,分光された各光の波長を調整することにより,コントラストを調整して,高コントラストの像を得ることができ,さらに化学組成や配向方向の同定などのような多くの情報量を得ることができる。しかしながら,このような多波光光学顕微鏡では,分子によっては第二励起状態からの発光収率が必ずしも大きくなく,蛍光や燐光の発光が極めて弱くなってしまうことがあり,この場合では,得られる像のS/N比が悪く,感度が不十分 - 23 -になるといった問題があった。このような画質の劣化は,特に暗視野型の蛍光顕微鏡に適用する場合において顕著となる。」・段落【0013】「そこで,この発明は,以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり,第二励起状態からの発光収率が小さい分子に対しても,非常に高い空間分解能で,画質の優れた発光像を得ることができる,高性能且つ高機能な,新しい光学顕微鏡を提供することを目的としている。」・段落【0014】「この発明は,上記の課題を解決するものとして,試料を構成する基底状態の分子を第1励起状態へ励起させる波長λ1光の光源と,第1励起状態の分 を提供することを目的としている。」・段落【0014】「この発明は,上記の課題を解決するものとして,試料を構成する基底状態の分子を第1励起状態へ励起させる波長λ1光の光源と,第1励起状態の分子を第2励起状態へ励起させる波長λ2光の光源と,波長λ1光と波長λ2光とを試料に集光させる集光光学系と,試料からの発光を検出器に集光させる発光検出光学系とを有し,各励起状態に励起された分子が基底状態へ脱励起する際の発光を検出器により検出する光学顕微鏡であって,波長λ1光の照射領域と波長λ2光の照射領域とを一部分重ね合わせる重ね手段を備え,この重ね手段を通して波長λ1光と波長λ2光とを試料に照射することにより,第1励起状態から基底状態へ脱励起する際の発光の領域を抑制することを特徴とする光学顕微鏡(請求項1)を提供する。」・段落【0015】「また,この発明は,上記の光学顕微鏡において,重ね手段が,入射光を波長的且つ空間的に分離して透過する光学瞳を有していること(請求項2)や,重ね手段として,波長λ1光に対する透過率が高く且つ波長λ2光に対する透過率が低い輪帯と,波長λ2光に対する透過率が高く且つ波長λ1光に対する透過率が低い輪帯とによりなる輪帯構造を有する光学フィルタが備えられていること(請求項3)や,重ね手段として,波長λ1光に対する透過率が高く且つ波長λ2光に対する透過率が低い材料もしくは誘電体多層膜と,波長λ2光に対する透過率が高く且つ波長λ1光に対する透過率が低い材料もしくは誘電体多層膜とが,表面にコーティングさ - 24 -れた集光レンズが備えられていること(請求項4)等をその好ましい態様としている。」・段落【0016】「また,この発明は,上記の光学顕微鏡において,集光光学系が,2枚以上の集光ガラスレンズにより構成され ンズが備えられていること(請求項4)等をその好ましい態様としている。」・段落【0016】「また,この発明は,上記の光学顕微鏡において,集光光学系が,2枚以上の集光ガラスレンズにより構成されていること(請求項5)や,集光光学系が,反射光学系であること(請求項6)や,集光光学系と発光検出光学系とが,結像性能が等しい共焦点光学系であること(請求項7)等をもその好ましい態様としている。」・段落【0027】「この図7に例示した光学顕微鏡では,波長λ1光および波長λ2光の光源として,Nd:YAGLaser(7)とDyeLaser(8)とが組み合わせれた光源系が備えられており,Nd:YAGLaser(7)により,たとえばトリプトファン含有サンプル分子(17)を基底状態から第1励起状態へ励起させる波長λ1光として波長266nmの4倍波光が発振され,Nd:YAGLaser(7)励起のDyeLaser(8)により,第1励起状態のサンプル分子(17)を第2励起状態へ励起させる波長λ2光として波長400~500nmの光が発振される。トリプトファン含有サンプル分子(17)は,第2励起状態の蛍光収率が小さい分子である。もちろん,様々なサンプル分子(17)の種類によって,波長λ1と波長λ2の共鳴波長は異なった波長帯域に存在するため,各分子における共鳴波長に従ってレーザの発振波長も調整する必要がある。」・段落【0028】「Nd:YAGLaser(7)により発振された波長266nmの4倍波光とDyeLaser(8)により発振された波長400~500nm光とは,ダイクロックミラー(9)により同じ光軸上に合わされ,前述のような波長λ1帯域と波長λ2帯域とで同じ結像性能を持つ2波長帯光学系である第1集光レンズ(10)により,重ね手段であるピンホール(11 ,ダイクロックミラー(9)により同じ光軸上に合わされ,前述のような波長λ1帯域と波長λ2帯域とで同じ結像性能を持つ2波長帯光学系である第1集光レンズ(10)により,重ね手段であるピンホール(11)に集光される。」 - 25 -・段落【0029】「このピンホール(11)は,前述の図6に例示したように,たとえば波長266nmの4倍波光を透過する輪帯と波長400~500nmの光を透過する輪帯とにより構成されており,このようなピンホール(11)に集光された各波長光は,それぞれを透過する輪帯を透過して,2波長帯光学系である第2集光レンズ(12)によりサンプル分子(17)表面に集光される。第1集光レンズ(10)と第2集光レンズ(12)との2枚の集光ガラスレンズにより集光光学系が構成されている。」・段落【0030】「このようにサンプル分子(17)に集光された各波長光の照射領域は,ピンホール(11)により一部分重なり合ったものとなっており,重なり合った部分では,分子が第2励起状態へ励起するために蛍光の発光が抑制されるため,蛍光の発光領域は,波長λ1光である波長266nmの4倍波光のみが照射される領域に限定される。つまり,この領域においてのみ,分子が第1励起状態から基底状態へ脱励起する際に波長λ3の強い蛍光が発光される。」・段落【0032】「もちろん,波長λ1光と波長λ2光とを発振する光源としては,Nd:YAGLaser(7)とDyeLaser(8)とが組み合わせれた光源系だけでなく,たとえば,チタンサファイアレーザ,CW半導体レーザー,波長可変のオプチカルパラメトリクオシレータレーザシステム等が備えられていてもよい。また,この発明の光学顕微鏡において,蛍光集光用レンズを,第3集光レンズ(14)と同じ結像性能を持つ共焦点光学系に 波長可変のオプチカルパラメトリクオシレータレーザシステム等が備えられていてもよい。また,この発明の光学顕微鏡において,蛍光集光用レンズを,第3集光レンズ(14)と同じ結像性能を持つ共焦点光学系に設計して配置させ,さらに,図9に例示したように,ピンホール(20)を検出器である第2フォトマル(16)の直前に配置させることにより,深さ方向を含む3次元解析をも行うことができる。」 - 26 -・図6(重ね手段としてのピンホールの一例を示した構造図) ・図7(光学系及び各波長光の結像パターンを例示した概念図) ・図8(要部構成図) そうすると,引用文献1記載発明の顕微鏡と同様に,励起光(レーザー)を試料に照射して励起状態にすると同時に,誘導光(レーザー)を試料に照射して基底状態に脱励起する照明用光源装置を備える引用文献2記載発明の光学顕微鏡において - 27 -は,レーザー光源であるNd:YAGLaser(7)から2本のレーザー光(波長λ1)が発振され,うち1本のレーザー光がDyeLaser(8)に入射されて別の波長λ2のレーザー光(誘導光)が発振された後,ダイクロックミラー(9)を経て,DyeLaser(8)を経ない上記波長λ1のレーザー光(励起光)と同一の光路に至る構成を有するものである。そして,引用文献2記載発明においては,波長λ1の励起光と波長λ2の誘導光が同一の光路に至った後に,内側の輪帯は波長λ1の光の透過率が高いが波長λ2の光の透過率が低く,外側の輪帯は逆に波長λ2の光の透過率が高いが波長λ1の光の透過率が低い同心円状の構造を有するピンホール(11)によって(請求項2ないし4,段落【0015】,【0029】),試料表面又は内部において,内側は励起光(波長λ1光)が焦点を結び,外側は誘導光(波長λ2 が低い同心円状の構造を有するピンホール(11)によって(請求項2ないし4,段落【0015】,【0029】),試料表面又は内部において,内側は励起光(波長λ1光)が焦点を結び,外側は誘導光(波長λ2光)が照射されて,両光線が重なり合う外側部分は蛍光が抑制され(段落【0014】,【0030】),専ら励起光のみが照射される内側部分が蛍光(又は燐光)を発して明るくなるという構成を有するものである。 したがって,引用文献2からは,励起光(波長λ1光)と同一の波長のレーザー光をもとに,これと異なる波長の誘導光(波長λ2光)を生成し,上記の励起光と誘導光を重ね合わせるとの技術的事項を読み取ることができるが,試料におけるレーザー光の焦点の形状に影響を与えるピンホール(11)は,励起光と誘導光が重なり合った後の光路に設けられているものであって,励起光と重なり合う前の,誘導光の光路の途中に「合焦形態変化手段」が設けられている補正発明とはその構成が異なる。そうすると,引用文献1記載発明に引用文献2記載発明を適用したとしても,本件優先日当時,当業者において補正発明をすることが容易であったとはいい難い。 (2) また,補正発明は1つの電磁的エネルギー源(3)のみを用いて発振されたレーザー光を2つに分割し,うち1つのレーザー光をそのまま励起光(第2の分割光線(19))として用い,うち1つのレーザー光(第1の分割光線)は中間素子(9,25)を経て波長を変化させて誘導光とし,さらに「合焦形態変化手段(6 - 28 -1)」によりその焦点の形態を変化させることによって,従来技術では通常2つの高価なレーザー発振器が必要であり,正確な調整が必要であったのを(本願明細書の段落【0009】),1つの電磁的エネルギー源で足りるようにするとともに,顕微鏡の照明装置の構成を 従来技術では通常2つの高価なレーザー発振器が必要であり,正確な調整が必要であったのを(本願明細書の段落【0009】),1つの電磁的エネルギー源で足りるようにするとともに,顕微鏡の照明装置の構成を単純,低価格で,調節が容易で安定的に動作するものとし(段落【0014】,【0025】),また高解像度を実現でき(段落【0025】),さらに上記電磁的エネルギー源(レーザー光源)をパルスレーザーとするときには光源間の同期化を省略できる(段落【0016】)という作用効果を奏することができるところ,特に誘導光(第1の分割光線)の焦点の形態を外側を環状の第2分割光線(21,誘導光)の焦点(照射部分)が取り囲み,内側に略円状の第1分割光線(19,励起光)の焦点(照射部分)が位置するように変化させるときは,かような簡素な構成でも,より解像度を上げることができる。他方,引用文献1記載発明においては2つのレーザー光源(2),(3)を用い,うちレーザー光源(3)から発振されるレーザー光線を2つに分割して2本の誘導光としていること,引用文献2記載発明においても,レーザー光線発生装置であるNd:YAGLaser(7)は1つであるものの2本のレーザー光線が発振されて,うち1本がその後に誘導光とされていることからすると,顕微鏡の照明装置の構成の単純化,低価格化が図られているとはいい難い。また,引用文献1記載発明等が上記のとおりの特徴を有することからすると,引用文献1記載発明に引用文献2記載発明を適用しても,従来技術に係る照明装置より,調節が容易で安定的に動作するものとすることができるかどうかは不明であるといわざるを得ない。そうすると,補正発明は,引用文献1記載発明及び引用文献2記載発明からは当業者が予測し得ない格別有利な作用効果を奏することができるものであるというこ ができるかどうかは不明であるといわざるを得ない。そうすると,補正発明は,引用文献1記載発明及び引用文献2記載発明からは当業者が予測し得ない格別有利な作用効果を奏することができるものであるということができる。 (3) 結局,補正発明によって奏される格別有利な作用効果にもかんがみれば,本件優先日当時,引用文献1記載発明に引用文献2記載発明を適用することによっても,当業者において,補正発明をすることが容易であったとはいえないから,補正発明は進歩性を欠くものとはいえない。 - 29 -(4) 審決は,「引用文献2記載の発明においてYAGLaser から2つのレーザー光が照射されていること,及び,当該技術分野における技術常識を考慮すれば,引用文献2記載の発明が,『光線を空間的に分割して少なくとも2つの分割光線を形成する手段』を有することは明らかである。ここで,YAGLaser から2つのレーザー光を,YAGLaser からの1つの波長の光線を分割することにより形成することは,技術常識を踏まえれば,自明な事項である。また,引用文献2記載の発明では『Nd:YAGLaser からの他方のレーザー光によるDyeLaser の励起により,波長λ2光として波長400~500nmの光が発振される』ことから,引用文献2記載の発明が『波長を変化させるための中間素子』を有することは明らかである。してみると,引用文献2記載の発明は,上記相違点に係る構成を有している。そして,引用文献1記載の発明と引用文献2記載の発明は同一の技術分野に属し,しかも,異なる波長の2つのレーザー光を用いるという共通の構成を有するから,引用文献2記載の発明を引用文献1記載の発明の,波長の異なる2つの光を形成する手段として採用することによって,補正発明を構成することに,格別の困難性 のレーザー光を用いるという共通の構成を有するから,引用文献2記載の発明を引用文献1記載の発明の,波長の異なる2つの光を形成する手段として採用することによって,補正発明を構成することに,格別の困難性はない。」(11,12頁)と説示するところ,引用文献2のNd:YAGLaser(7)からの2本のレーザー光線を,発振装置(レーザー光線発生装置)からの1本のレーザー光線を例えばスプリッターで2本に分割することで生成し,分割後のレーザー光線のうち1本をDyeLaser(8)に入射して波長が異なるレーザー光線を発振させることとすれば,補正発明にいう「当該中間素子(9,25)を通過する分割光線の波長を変化させる」に想到することができ,さらにNd:YAGLaser(7)をパルスレーザーとすれば,補正発明の作用効果のうち,光源の同期化を省略することができるともいい得る。しかしながら,その後に誘導光レーザーとして用いられるレーザー光線の波長を変化させる手段に係る構成の違いの問題を解消することができるとしても,前記のとおり,補正発明の「合焦形態変化手段」の構成に想到することは容易ではなく,補正発明の格別有利な作用効果を否定することもできないから,上記の「中間素子」の構成の容易想到性を肯定するだけで,補正発明の進歩性を否定することは - 30 -できない。 なお,本願明細書の段落【0015】には,「第二分割光線の波長は,中間素子によって変化させられる。この中間素子は,好ましくは,光学パラメトリック発振器(OPO)である。」との記載があるのみであって,補正発明においては,中間素子(9)は入射(入力)されるレーザー光線と発振(出力)されるレーザ光線との間で波長を変化させる機能を果たす点に意味があることは明らかであるから,引用文献2発明の「DyeLa 明においては,中間素子(9)は入射(入力)されるレーザー光線と発振(出力)されるレーザ光線との間で波長を変化させる機能を果たす点に意味があることは明らかであるから,引用文献2発明の「DyeLaser(8)」と補正発明の「中間素子(9)」の相違をもとに補正発明の「中間素子(9)」の想到が困難であるとする原告の主張は採用することができない。 (5) また,審決は,引用文献1記載発明も補正発明もずれの許容の点において異なるものではないなどとして,補正発明の格別有利な作用効果を否定するが,補正発明では出発点となるレーザー光源を1つのものとすることで,光軸等の調整を容易にしたもので(パルスレーザーを用いるときには,複数の光源間の同期調整も不要になる。),2つのレーザー光源を用いる引用文献1記載発明と調整の容易さを同等視することはできない。 (6) 以上のとおり,補正発明は進歩性を欠くとはいえないから,これに反する審決の判断は結論において誤りであるというべきである。したがって,原告が主張する取消事由2は理由がある。 第6 結論以上によれば,原告が主張する取消事由はいずれも理由があるから,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 - 31 - 裁判長裁判官塩月秀平 裁判官真辺朋子 裁判官田邉 実 裁判官田邉 実 主文 本件訴えを棄却する。 理由 原告は被告に対し、損害賠償を求めるものであるが、被告の行為は違法ではないため、請求は認められない。 事実 原告は被告が行った行為により損害を被ったと主張しているが、被告はその行為が正当であると反論している。 争点 本件における被告の行為が違法であるか否か。 判断 被告の行為は社会通念上許容される範囲内であり、原告の主張は認められない。
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