主文 被告人両名をそれぞれ懲役4年6月に処する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人両名は,共謀の上,金品窃取の目的で,平成27年12月31日,北海 道苫小牧市a町b丁目c番d号A方に,居間の窓の施錠を解くなどして侵入し,その頃,同所において,B所有の現金約11万1000円在中の財布1個(時価約1000円相当)を窃取した。 第2 被告人両名は,前記A方に押し入って,同人らから金品を強取しようと考え,共謀の上,平成28年1月4日午前1時35分頃,被告人甲において,前記A方 のインターフォン越しに「苫小牧警察署の者です。パトロールで来ました。」などと言って前記Aに開けさせた玄関ドアから同人方に侵入し,その頃から同日午前1時45分頃までの間,同人方廊下及び居間において,前記A(当時25歳)に対し,手に持った包丁様の刃物を突き付けた上,「騒ぐな。金を出せ。」などと言う暴行脅迫を加えるとともに,同人方居間において,前記B(当時25歳)に対 し,前記刃物を示した上,「金を出せ。」と言うなどの脅迫を加え,同人らの反抗を抑圧し,前記Aから同人所有の現金3万1000円を,前記Bから同人所有の現金1万7000円をそれぞれ強取し,その際,前記Aが前記刃物をつかんで抵抗したため,同人に加療約10日間を要する両手挫傷の傷害を負わせた。 (判示第1の事実について) 判示第1の事実について,被害者は,現金11万1000円在中の財布を盗まれたと供述しており,その供述は,①本件直前に被害者が被告人乙とのやり取りの中で,「小遣いもらったら全部貯金してるから貯まるの意外と早い」と発信したり,本件直後に友人らとのやり取りの中で,「貯金用サイフいかれました」,「11万ちょい」と発信したりするなど,公判供述に整合的な言動をして いもらったら全部貯金してるから貯まるの意外と早い」と発信したり,本件直後に友人らとのやり取りの中で,「貯金用サイフいかれました」,「11万ちょい」と発信したりするなど,公判供述に整合的な言動をしていること,②被害者が盗まれたの は貯金用の財布であって,被害者はこれに在中する現金を小まめに数えており,最後 に確認して少なくともこの程度は間違いないという金額を申告したというのであり,かかる被害者が虚偽の被害申告をしたり,記憶違いをしたりしているとは考え難いことからすれば,十分信用することができる。 (確定裁判)被告人甲は,平成28年7月28日札幌地方裁判所で建造物侵入,窃盗の各罪によ り懲役2年8月に処せられ,その裁判は平成28年10月3日確定したものであり,被告人乙は,平成28年8月24日札幌地方裁判所で建造物侵入,窃盗の各罪により懲役2年4月に処せられ,その裁判は平成28年10月3日確定したものである。これらの事実は捜査報告書によって認める。 (法令の適用) 被告人両名について罰条判示第1の所為のうち住居侵入の点それぞれ刑法60条,130条前段窃盗の点それぞれ刑法60条,235条 判示第2の所為のうち住居侵入の点それぞれ刑法60条,130条前段強盗の点それぞれ刑法60条,236条1項強盗致傷の点それぞれ刑法60条,240条前段科刑上一罪の処理 判示第1の所為についてそれぞれ刑法54条1項後段,10条(住居侵入と窃盗との間には手段結果の関係があるので,一罪として重い窃盗罪の刑で処断)判示第2の所為についてそれぞれ刑法54条1項前段,後段,10条(強盗と強盗致傷は,1個の行為が 10条(住居侵入と窃盗との間には手段結果の関係があるので,一罪として重い窃盗罪の刑で処断)判示第2の所為についてそれぞれ刑法54条1項前段,後段,10条(強盗と強盗致傷は,1個の行為が2個の罪名に触 れる場合であり,住居侵入と上記強盗及び上記 強盗致傷との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を一罪として最も重い強盗致傷罪の刑で処断)刑種の選択判示第1の罪についてそれぞれ懲役刑を選択 判示第2の罪についてそれぞれ有期懲役刑を選択併合罪の処理それぞれ刑法45条後段,50条(判示各罪はそれぞれ前記確定裁判があった罪とは刑法45条後段により併合罪の関係にあるから,まだ確定判決を経ていない判示各罪についてそれ ぞれ更に処断),刑法45条前段,47条本文,10条(判示各罪もまた刑法45条前段により併合罪の関係にあるから,それぞれ重い判示第2の罪の刑に法定の加重)酌量減軽それぞれ刑法66条,71条,68条3号 訴訟費用の不負担それぞれ刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)量刑の中心となる住居侵入,強盗致傷,強盗(判示第2)の事案について見るに,本件犯行は,人を傷つける危険性の高い包丁様の刃物を用いて,被害者両名にとって逃げ場のないその住居に押し入るという態様であり,被害者両名に精神的苦痛を与え るとともに,持ち込んだ刃物で意図的ではないにせよ被害者1名を負傷させたものであるところ,共犯による強盗致傷事案のうち,凶器として刃物類を用いた侵入強盗の量刑傾向を基礎として,被告人両名に対する刑を量定するのが相当である。 そして,本件各犯行の経緯を見ると,被告人甲が被告人乙に対し,金庫荒らしほど 盗致傷事案のうち,凶器として刃物類を用いた侵入強盗の量刑傾向を基礎として,被告人両名に対する刑を量定するのが相当である。 そして,本件各犯行の経緯を見ると,被告人甲が被告人乙に対し,金庫荒らしほどの危険を冒さずに金銭を入手する方法はないかと尋ね,被告人乙が職場の同僚の交際 相手が多額の現金を持っているとの情報を提供し,これに被告人甲が関心を示し,被 告人乙を通じて被害者両名の動向を探った上,被告人両名で空き巣に入ったものの,そのねらいとしていた現金70万円までは盗むことができずに終わったため(判示第1),さらに,その後も同現金を手に入れることに執着していた被告人甲の意を受けて,被告人乙が被害者両名の動向を探り続け,被告人甲の発案で,同人が刃物を持って被害者方に押し入り,被害者両名を脅して現金を奪い取ることとし,その直後に被 告人甲が実行役,被告人乙が見張り役を務める方法でこれを実行した(判示第2)というものである。このように,被告人両名は,金銭を手に入れるために,窃盗にとどまらず,安易に強盗を計画して実行するにまで至っているのであるから,その経緯に酌むべき点はなく,先に述べた犯行態様からしても,本件を同種事案の中で軽くみることはできない。他方で,被告人両名は被害者両名を負傷させることを意図しておら ず,被告人甲も被害者をあえて刃物で刺してはいないこと,被害者の負った怪我の内容・程度が幸いにも軽いものにとどまっていること,被害金額が,窃盗の分を合わせても約16万円であることからすれば,上記量刑傾向の中で重い部類に属するとはいえず,中程度に位置づけるべきである。 次に,被告人両名に犯情面で軽重があるかを検討すると,本件に至る経緯に見られ るように,被告人甲は,より積極的な役割を果たしていたといえ,被告人乙はこ いえず,中程度に位置づけるべきである。 次に,被告人両名に犯情面で軽重があるかを検討すると,本件に至る経緯に見られ るように,被告人甲は,より積極的な役割を果たしていたといえ,被告人乙はこうした被告人甲の意向にのっている面があることは否定できない。もっとも,被告人乙についても,親しい職場の同僚であるにもかかわらず,その同僚から前記の犯行に必要な情報を収集し,これを被告人甲に提供しており,その情報提供がなければ本件は起きておらず,果たした役割が重要である。そうすると,被告人甲の方が少し責任が重 いといえるが,その量刑に差をつけるほどに被告人両名の責任が大きく異なるとはいえない。また,本件各犯行の被害額は,それぞれ判示のとおりと認められるが,本件の利得の分配状況は判然としない上,被告人両名が行った本件以外の他の犯行における利得の分配状況に関する被告人両名の供述からすれば,仮に本件の利得に多寡があったとしても,このことがその責任の重さに関する評価を左右するものとはいえない。 さらに,被告人両名については,前記の確定裁判があり,本件がそれと併合罪の関 係にあるため,執行猶予中であるにもかかわらず,他人の財産をとる行為を繰り返していたことに対する非難の部分については,既に量刑に当たり考慮されていることを被告人両名のために相応に斟酌することとする。また,被告人両名が反省の態度を示していることや,それぞれ母親による社会復帰後の更生に向けた支援があること,被害者両名の被害を回復するには不十分ながらも被告人甲の母親が強盗事件で奪われ た現金について弁償していることも一定程度考慮する。 そこで,本件が同種事案の中で中程度の事案であって,被告人両名の刑に差異が生じるほど責任の重さに大きな差はないことを前提にして,前記の被告 た現金について弁償していることも一定程度考慮する。そこで,本件が同種事案の中で中程度の事案であって,被告人両名の刑に差異が生じるほど責任の重さに大きな差はないことを前提にして,前記の被告人両名のために酌むべき事情も考慮し,被告人両名に対してはいずれも主文の刑が相当と判断した。(求刑被告人両名につき,それぞれ懲役5年) 令和元年6月19日 札幌地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官中川正隆 裁判官牛島武人 裁判官岩竹遼
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