昭和35(う)306 著作権法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和35年8月17日 名古屋高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件各控訴を棄却する。          理    由  本件控訴の趣意は、被告人両名の弁護人籏進提出の控訴趣意書記載のとおりであ るから、ここにこれを引用し、これに対する当裁

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判決文本文4,162 文字)

主文 本件各控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は、被告人両名の弁護人籏進提出の控訴趣意書記載のとおりであるから、ここにこれを引用し、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。 一、 本件控訴趣意中理由不備の論旨について、<要旨>著作権法三七条にいわゆる著作権侵害行為として「偽作を為した者」とは、他人が著作権を有する著作物につ</要旨>いて、発行の意図をもつて、その著作権者の許諾を得ず該著作物と同一のものを再製し、あるいはその枝葉において多少の修正、増減を加える等の方法により第三者をして原著作物の再生と感知せしめ得る模造物を作成した者をいうものと解すべく、罪となるべき事実として、右三七条に該当する事実を判示するには、右の各要件を充足するに足りる事実を具体的に摘示すれば足りるわけである。そして、この場合、犯人の偽作した原著作物について、そのいかなる部分が著作権の対象となつているかについて逐一、詳細にこれを判示する必要はなく、原著作物について他人が著作権を有することを示せば足りるものというべきである。そして、この理は、地図についても又同様である。(本件において、原判示名古屋市全住宅案内図帳(中区)昭和三二年度版なるものは、単なる市街図の類と異り、住宅案内の目的のためにAが独自の考案を施し集成、整理した著作物であることは、後記説明のとおりである。)次に又、偽作の方法を示すについても、必ずしも所論の如く原著作物のいかなる部分に、いかなる修正、増減を加え、そして、その結果偽作とされた物のいかなる程度において原著作物の模造物として認められるかを逐一判示する必要はなく、著作権者の許諾を得ずに、その著作物に多少の修正、増減を加え、結局原著作物の模造物を作成した事実さえ摘示すれば足りるものというべき おいて原著作物の模造物として認められるかを逐一判示する必要はなく、著作権者の許諾を得ずに、その著作物に多少の修正、増減を加え、結局原著作物の模造物を作成した事実さえ摘示すれば足りるものというべきである。本件において、原判決は、被告人らの偽作の対象となつた名古屋市全住宅案内図帳(中区)昭和三二年度版についてAが著作権を有すること(従つて、それが著作権法上の著作物に該当すること)、被告人らが、右Aに無断で、右全住宅案内図帳を利用し、これに若干の修正、増減を加え、名古屋市全商工、住宅案内図(中区)の標題を附した模造物を謄写印刷して作成した事実を摘示している。(もつとも、原判決は右被告人らの作成にかかる全商工住宅案内図が全商工住宅案内図帳の模造物であることを明示していないが、原判決に、被告人らが云々全住宅案内図帳の偽作をなした、というだけであるが、その意味するところは、右模造物を作成したことをいうものと解すべきである。)果して然らば、原判決は被告人らの著作権法三七条該当の罪となるべき事実を摘示するについて欠くるところはないものというべく、論旨は理由がない。 二、 本件控訴趣意中理由くいちがいの論旨について、所論にかんがみ、原判示事実と、原判決が引用する各証拠の内容を逐一検討してみると、原判決中には原判示名古屋市全住宅案内図帳(中区)昭和三二年度版の著作権者がAである旨の記載があることは所論のとおりであるが、右の事実は、原判決引用の各証拠特に証第一号、証第三号、検察官名義のBに対する鑑定嘱託書、並びに右B作成の鑑定答申書、原審鑑定人Cの鑑定書を綜合すれば、次の各事実を窺知することができる。すなわち、右全住宅案内図帳は著作物の対象となりうるか否かにつき、その基礎をなす普通の市街地図の部分と市街図の上に記入された住宅案内図の二つの部分にわけて すれば、次の各事実を窺知することができる。すなわち、右全住宅案内図帳は著作物の対象となりうるか否かにつき、その基礎をなす普通の市街地図の部分と市街図の上に記入された住宅案内図の二つの部分にわけて考察されること、市街地図の部分についてはAがみずからの調査に基づいて作成したものであれば、独自の著作権が成立するが、既に巷間に流布されている市街図を利用したものであるときは、模製の場合はもちろん、拡大敷延、修正等を加えられる場合は原則として新著作物とはならないこと、そして本件においてはそのいずれであるかが不明であること、したがつて右市街図の部分について同人に著作権があるとの事実は認められないこと、次に前記住宅案内図の部分は全く作成者の独創と努力の結果として生れた新規の著作物というべきものであつて、これは中区全体にわたつて正確、精密に居住者を調査し、これを合理的に配列し統一的に編集しているのであるから著作権法一条にいわゆる図画の一種である地図として当然に著作権の対象となること、そしてこの部分については同人が昭和三〇年中に作成し、著作権を取得した著作物に同人がその著作権に基づき多少の修正、増減を加えた複製であつて同人に著作権があること、そしてこの住宅案内図に著作権がある限り市街地図の部分についての著作権がなくても全体として一つの住宅案内図という著作物を形成するものであること、したがつて同人が右住宅案内図全体について著作権を有すること以上の各事実を窺知することができる。従つて弁護人の原判決引用の各証拠を綜合しても、原判決摘示の被告人に住宅案内図についての著作権が認められないから、原判決には理由の内部にくいちがいがある旨の所論は採用し難い。論旨は理由がない。 三、 本件控訴趣意中事実誤認の論旨について所論にかんがみ、本件記録を検討し、原判決引用の 作権が認められないから、原判決には理由の内部にくいちがいがある旨の所論は採用し難い。論旨は理由がない。 三、 本件控訴趣意中事実誤認の論旨について所論にかんがみ、本件記録を検討し、原判決引用の各証拠、特に被告人Dの検察官に対する供述調書、同Eの同右供述調書、Fの司法警察員に対する供述調書によれば、被告人Dは、原判示名古屋市全住宅案内図(中区)昭和三二年版が住宅協会から発行されたものであり、当時相当に市販されていることを承知しながら、被告人Eを通じてこれを購入し、作成者の許諾を得ないで、これを利用して、それに当時異動のあつた住宅、会社等について訂正を加え、あるいは多少の修正、増減を施したものの(元来、被告人Dは当初右全住宅案内図帳と同一のものを作成するはずであつたが、歳月の経過による住宅、会社等の異動のあつたことを考慮して、この点の訂正を図つたものである。)結局、右全住宅案内図帳を殆んど引き写した原判示全商工住宅案内図の原稿(それは、既存の右全住宅案内図帳を利用し、それに鉛筆を以つさて訂正、増減の箇所を記入したものである。)を作成し、これを販売の目的で原判示Fをして謄写印刷させたというのであるから、同被告人において著作権法三七条にいう偽作することの犯意のあつたことは、明らかなものというべきである。同被告人は、右全住宅案内図帳について他人が著作権を有することは知らなかつたと弁疏しているが、たとえ同被告人において、かかる事実があつたとしても、未だその不知の故を以つて、同被告人が本件事実について故意を欠くものということはできないし、同被告人の本件についての責任を阻却すべき事由となすに足りないものである。なお、同被告人は他人の著作物と同一又は模造物を作成しても法に触れるところはないものと考えていた、と検察官に対して述べているが、それこそ単 についての責任を阻却すべき事由となすに足りないものである。なお、同被告人は他人の著作物と同一又は模造物を作成しても法に触れるところはないものと考えていた、と検察官に対して述べているが、それこそ単なる法の不知であつて、同被告人の罪責を左右するものではない。 次に被告人Eには警察、検察庁、原審公判を通じて終始犯意を否認しているが、前掲各証拠を綜合すると、被告人Eは(イ)昭和三二年三月ごろから昭和三三年四月ごろまでAが主宰していた住宅協会に勤めていたが同人と感情上そごを来し、昭和三三年四月ごろ同協会をやめ、同年五月ころ被告人Dの主宰する日本住宅協会に勤めたこと、(ロ)被告人Dの依頼に基づきAの主宰する住宅協会発行の本件全住宅案内図帳を含め名古屋住宅案内図帳各一部を購入していること、(ハ)その後被告人Dと共に予て知つていたG印刷所に赴き、被告人Dを同印刷所を主宰するFに紹介し、オフセツト印刷の住宅図、すなわち、右全住宅案内図帳(中区)昭和三二年版に鉛筆で修正を加えたものを持参し、その印刷、製本を依頼していること、(ニ)その後間もなくFが製本を引受けてから、本件偽作物の原稿であるオフセツト印刷で作られた住宅図に鉛筆で修正を加えた中区の原稿を番号をつけて四、五枚持つて来て置いて帰つていること、右(イ)ないし(ニ)の事実を綜合すると、被告人EはAの作成した本件全住宅案内図を同人の許諾を得ず利用して若干の修正、増減を加えた案内図を作成することの認識すなわち著作権侵害の犯意のあつたことはもちろん本件偽作罪の犯行を行うことにつき被告人Dとの間に共謀の事実のあつたことを推認するに難くない。論旨は理由がない。 (なお弁護人は被告人両名に訴訟費用負担能力がないのに訴訟費用を連帯負担せしめたことは不当である旨主張しているが、本件記録に徴し、原審訴訟費用の負 つたことを推認するに難くない。論旨は理由がない。 (なお弁護人は被告人両名に訴訟費用負担能力がないのに訴訟費用を連帯負担せしめたことは不当である旨主張しているが、本件記録に徴し、原審訴訟費用の負担を命じたことにつき被告人両名は原審当時においては所論のような不当のかどある事由を発見しえない。)よつて本件各控訴は理由がないので、刑事訴訟法三九六条に従い、これを棄却することとし、被告人両名の当審における訴訟費用(国選弁護人の費用)は刑事訴訟法一八一条一項但書により被告人両名をして負担させないこととし、主文のとおり判決する。 (裁判長判事影山正雄判事谷口正孝判事中谷直久)

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