平成9(ワ)492

裁判年月日・裁判所
平成16年7月28日 岐阜地方裁判所
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判決文本文34,424 文字)

主文 1 被告社団法人岐阜病院は原告Aに対し,30万円及びこれに対する平成9年8月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告社団法人岐阜病院及び被告Bは原告Aに対し,連帯して20万円及びこれに対する平成9年8月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを10分し,その1を被告らの負担とし,その余を原告らの負担とする。 5 この判決は,第1項,第2項及び第4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告C及び被告社団法人岐阜病院(以下「被告病院」という。)は,原告Aに対し連帯して200万円,原告Dに対し連帯して150万円及びこれらに対する下記の日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 記被告C 平成9年8月24日被告病院平成9年8月22日 2 被告C,被告B及び被告病院は原告Aに対し,連帯して548万2848円及びこれに対する下記の日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 記被告C 平成9年8月24日被告B 平成9年8月22日被告病院平成9年8月22日 3 被告B及び被告病院は原告Dに対し,連帯して50万円及びこれに対する平成9年8月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告病院において原告Aに対してされた診療行為に過誤があり,その結果,原告Aに障害が生じたとして,原告らが被告らに対し,診療契約上の債務不履行及び不法行為に基づき,下記の損害賠償及びこれらに対する遅延損害金 において原告Aに対してされた診療行為に過誤があり,その結果,原告Aに障害が生じたとして,原告らが被告らに対し,診療契約上の債務不履行及び不法行為に基づき,下記の損害賠償及びこれらに対する遅延損害金を請求している事件である。 記(1) 請求1(被告C及び被告病院に対して)ア被告Cが原告Aに対し,プロペリシアジン(商品名ニューレプチル,以下「ニューレプチル」という。)を処方し,服用させ,その副作用により,原告Aに歩行失調,流涎等を惹起させた行為について,被告C及び被告病院の債務不履行責任又は不法行為責任に基づき,原告Aに対する慰謝料100万円イ被告Cその他被告病院の保健指定医が原告Aに対する違法な隔離及び拘束を行ったことについて,被告Cら及び被告病院の債務不履行責任又は不法行為責任に基づき,原告Aに対する慰謝料100万円ウ被告Cが原告Dに対し,原告Aに生じた硬膜下血腫の受傷状況及び療養経過について報告をしなかったことについて,被告C及び被告病院の債務不履行責任又は不法行為責任に基づき,原告Dに対する慰謝料50万円エ被告Cが原告Dに対し,原告Aを被告病院から退院させなければ,原告Aを歩行・会話不能の状態にすると告知して,原告Aの退院をさせようとした行為について,被告C及び被告病院の債務不履行責任又は不法行為責任に基づき,原告Dに対する慰謝料100万円(2) 請求2(被告C,被告B及び被告病院に対して)平成8年4月11日,原告Aが何らかの原因で頭部を強打するなどして,被告病院内で硬膜下血腫の傷害を負ったところ,被告Cが副作用のあるニューレプチルの投与を続けるなどして,原告Aの転倒等による頭部強打を防止する措置を怠り,被告Bが原告Aの意識消失及び瞳孔不同を確認しながらすみや 硬膜下血腫の傷害を負ったところ,被告Cが副作用のあるニューレプチルの投与を続けるなどして,原告Aの転倒等による頭部強打を防止する措置を怠り,被告Bが原告Aの意識消失及び瞳孔不同を確認しながらすみやかに他の病院へ転院させるなどの措置を怠ったことについて,被告C,被告B及び被告病院の債務不履行責任又は不法行為責任に基づき,原告Aに生じた以下の損害の賠償合計548万2848円ア慰謝料 500万円イ治療費 24万2848円ウ入院雑費 24万円(3) 請求3(被告B及び被告病院に対して)平成8年4月11日,原告Aが何らかの原因で頭部を強打するなどして,被告病院内で硬膜下血腫の傷害を負ったところ,被告Bが原告Dに対し,原告Aに生じた硬膜下血腫の症状について報告をしなかったことについて,被告B及び被告病院の債務不履行責任又は不法行為責任に基づき,原告Dに対する慰謝料50万円 2 前提となる事実当事者間に争いがない事実及び以下に摘示する証拠により容易に認められる事実を総合すると,本件の前提となる事実は以下のとおりである。 (1) 原告Aは,てんかん,てんかん性精神病及び精神発達遅滞の病名で被告病院に入院していた。原告Dは,原告Aの父であり,Eは,原告Aの母である。 (2) 被告病院は,F市内において脳神経精神病の研究及び治療をする病院である。 下記の各医師は,下記の各期間に被告病院に勤務していた医師であり,各医師が精神保健医の資格を取得したのは下記の日である。(乙4,9,12から14まで)記医師名勤務時期精神保健医資格取得被告C  平成6年4月以降 取得したのは下記の日である。(乙4,9,12から14まで)記医師名勤務時期精神保健医資格取得被告C  平成6年4月以降平成8年10月被告B  昭和57年4月以降平成5年9月G 昭和43年7月から平成9年7月まで昭和62年9月H 平成7年4月以降平成2年11月I 昭和53年10月以降平成2年11月このうち,被告Cは,平成6年4月から平成8年4月12日までの間,原告Aの主治医であった(乙4)。Jは,昭和62年7月から被告病院に勤務する看護師であり,平成7年当時,原告Aが入院していた被告病院南上病棟(以下「南上病棟」という。)の主任であった。(乙10)(3) 原告Aの病歴等ア原告Aは,2歳のころ点頭てんかんと診断され,その後の発作の頻発により知能発達が停滞した。昭和53年3月ころの原告Aの知能は5歳児程度であり,昭和54年1月,岐阜県は,原告Aを重度の精神薄弱と認定した。(甲9,31,原告D)原告Aは,会話による意思疎通は不十分であり,質問に対して的確に答えることはできなかった。また,原告Aは,他人から暴力を受けた場合には,付近にあるものを投げるなど反抗的な態度に出ることがあり,また,自己の意に添わない出来事があると,暴力的になることがあった。(甲31,乙5,原告D)イ原告Aは,中学時に国立長良小児科病院に通院し,昭和53年4月20日から同年6月1日までの間,日野病院(現被告病院)に入院した。その後,昭和54年6月ころ,原告Aは岐阜県K市の須田病院に入院し,昭和56年6月1日から平成8年4月12 に通院し,昭和53年4月20日から同年6月1日までの間,日野病院(現被告病院)に入院した。その後,昭和54年6月ころ,原告Aは岐阜県K市の須田病院に入院し,昭和56年6月1日から平成8年4月12日までの間,再び被告病院に入院した。(甲31)ウ原告D及びEは,昭和56年4月に原告Aが被告病院に入院してから,毎週1回の面会,月1回の外出,年1回年末年始に自宅で外泊をさせていた。被告Cは,原告Aの主治医となった平成6年4月以降,原告Dと面接したことは一度もなく,Eとの面接も,半年から1年に1回程度の割合で,挨拶程度の短時間のものであった。(甲31,乙4,被告C)エ原告Aは,多いときは週に2,3回,少ない時は2,3か月に1回くらいの頻度でてんかん発作を起こし,平成7年12月4日から平成8年4月11日までの間には6回の発作を起こした。(乙3,被告C)(3) 被告病院は,以下の期間,原告Aを隔離し,又は拘束した。 ア平成7年11月7日午後0時から同月8日午後1時まで拘束イ平成7年11月15日午後9時30分から同月17日午後3時30分まで拘束,同日午後3時30分から同月23日午前10時40分まで隔離ウ平成8年1月9日午後0時から同月10日午前10時10分まで拘束エ平成8年2月22日午前11時40分から同年3月8日午後3時30分まで隔離,同年2月22日午後1時から同月23日午後4時20分まで拘束オ平成8年3月10日午前11時15分から同月15日午前10時まで隔離カ平成8年4月8日午後1時30分から同月11日午後7時50分まで隔離(4) 被告Cは,平成8年1月6日から4月11日まで,原告Aに対し,ニューレプチルを処方した。 1日あたりの投与量は,同年1月6日以降30ミ 時30分から同月11日午後7時50分まで隔離(4) 被告Cは,平成8年1月6日から4月11日まで,原告Aに対し,ニューレプチルを処方した。 1日あたりの投与量は,同年1月6日以降30ミリグラム,同年3月2日以降70ミリグラム,同月16日以降50ミリグラムであった。 また,被告Cは,同年4月4日から,抗パーキンソン薬であるアーテンを1日6ミリグラム処方した。 (5) 平成8年4月11日午後5時から被告病院で当直勤務をしていた被告Bは,同日午後7時50分ころ,原告Aが隔離室内で倒れているとの報告を受けて,原告Aを診察し,脳の器質的疾患の可能性は少なく,病棟職員の経過説明,診療記録,看護記録から考えて,てんかん発作が最も疑われ,てんかん発作遷延状態(意識の鮮明度が落ちる意識障害がある状態)及び発作後もうろう状態であると診断した(乙1,3,9,10,被告B,証人J看護師)。その後,同日午後11時30分ころまで,被告Bは,原告Aの状態を観察し,処置を行った(乙1,9,被告B)。同月12日午前7時50分ころ,被告Bが原告Aを診察したところ,硬直状態はなく,全身脱力しており,右瞳孔は散大気味であった(乙1,9,被告B)。そして,同日午前9時30分,被告Cは,当直医であった被告Bの指示で,原告Aの頭部CT検査を行ったところ,右硬膜下血腫の所見を認めたため,直ちに岐阜県立岐阜病院脳外科に電話で診察を依頼し,同日午前10時10分ころ,原告Aを岐阜県立岐阜病院脳外科に転送した。 3 争点(1) 平成7年11月7日以降,原告Aに対してされた隔離及び拘束の違法性の有無(2) 平成7年11月22日,被告Cが原告Dに対し,原告Aの退院を強要したか否か。 (3) 平成8年1月6日以降,原告Aにニューレプチル及びアーテンを投与したこ れた隔離及び拘束の違法性の有無(2) 平成7年11月22日,被告Cが原告Dに対し,原告Aの退院を強要したか否か。 (3) 平成8年1月6日以降,原告Aにニューレプチル及びアーテンを投与したことについて,被告らに過失があったか否か。 (4) 平成8年4月11日,原告Aが硬膜下血腫の傷害を負ったことについて,被告らに過失があったか否か。 (5) 平成8年4月11日午後7時50分ころ,意識喪失状態の原告Aを発見した後の処置において,転院させなかったことなどの過失があったか否か。 (6) ニューレプチルの投与及び原告Aが硬膜下血腫の傷害を負ったことについての説明義務違反の有無(7) 原告らに発生した損害の有無及び額 4 争点についての当事者の主張別紙1記載のとおり第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(平成7年11月7日以降,原告Aに対してされた隔離及び拘束の違法性の有無)について(1) 平成7年11月当時の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律は,精神病院に入院中の者の行動の制限について,「精神病院の管理者は,入院中の者につき,その医療又は保護に欠くことのできない限度において,その行動について必要な制限を行うことができる。」とした(同法第36条第1項)上で,「第1項の規定による行動の制限のうち,厚生大臣があらかじめ公衆衛生審議会の意見を聴いて定める患者の隔離その他の行動の制限は,指定医が必要と認める場合でなければ行うことができない。この場合において,当該指定医は,遅滞なく,厚生省令で定める事項を診療録に記載しなければならない。」とし(同条第3項),「厚生大臣は,前条に定めるもののほか,精神病院に入院中の者の処遇について必要な基準を定めることができる。」こととしていた(同法第37条第1項)。厚生大臣が同法第 ばならない。」とし(同条第3項),「厚生大臣は,前条に定めるもののほか,精神病院に入院中の者の処遇について必要な基準を定めることができる。」こととしていた(同法第37条第1項)。厚生大臣が同法第36条第3項及び第37条第1項に基づいて定める行動の制限等の基準(以下「行動制限基準」という。)は,厚生省告示第129号(別紙2)及び第130号(別紙3)等に示されている。 これらの法令によれば,同法第36条第3項に基づく患者の行動の制限には,「隔離」及び「身体的拘束」の2種類がある。 まず,「隔離」とは,「内側から患者本人の意思によっては出ることができない部屋の中へ一人だけ入室させることにより当該患者を他の患者から遮断する行動の制限をいい,12時間を超えるものに限る」ものである。「患者の隔離(以下「隔離」という。)は,患者の症状からみて,本人又は周囲の者に危険が及ぶ可能性が著しく高く,隔離以外の方法ではその危険を回避することが著しく困難であると判断される場合に,その危険を最小限に減らし,患者本人の医療又は保護を図ることを目的として行われるもの」であり,その対象は,「主として次のような場合に該当すると認められる患者であり,隔離以外によい代替方法がない場合において行われるものとする。 ア他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等,その言動が患者の病状の経過や予後に著しく悪く影響する場合イ自殺企図又は自傷行為が切迫している場合ウ他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為,器物破損行為が認められ,他の方法ではこれを防ぎきれない場合エ急性精神運動興奮等のため,不穏,多動,爆発性などが目立ち,一般の精神病室では医療又は保護を図ることが著しく困難な場合オ身体的合併症を有する患者について,検査及び 防ぎきれない場合エ急性精神運動興奮等のため,不穏,多動,爆発性などが目立ち,一般の精神病室では医療又は保護を図ることが著しく困難な場合オ身体的合併症を有する患者について,検査及び処置等のため,隔離が必要な場合」次に,「身体的拘束」とは,「衣類又は綿入り帯等を使用して,一時的に当該患者の身体を拘束し,その運動を抑制する行動の制限をいう。」。「身体的拘束は,制限の程度が強く,また,二次的な身体的障害を生ぜしめる可能性もあるため,代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われる行動の制限であり,できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければならないもの」であり,その対象は,「主として次のような場合に該当すると認められる患者であり,身体的拘束以外によい代替方法がない場合において行われるものとする。 ア自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している場合イ多動又は不穏が顕著である場合ウア又はイのほか精神障害のために,そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合」また,「隔離」,「身体的拘束」のいずれについても,「制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われるようなことは厳にあつてはならない」とされている。 (2) 平成7年11月7日午後0時から同月8日午後1時までの拘束についてア証拠(乙1,3,4,12,証人I医師)によれば,以下の事実が認められる。 平成7年11月7日,原告Aが他患者の昼食の副食を取ったため,看護師が注意すると,原告Aは他患者のスリッパを取り上げて投げつけるなどした。報告を受けたI医師が,診察室で原告Aを診察したところ,原告Aは黙って椅子に座っていたが,I医師が話しかけても返事をせずに睨み返すなどしていた。I医師は,カルテに,拘束 り上げて投げつけるなどした。報告を受けたI医師が,診察室で原告Aを診察したところ,原告Aは黙って椅子に座っていたが,I医師が話しかけても返事をせずに睨み返すなどしていた。I医師は,カルテに,拘束の理由として「他害」に丸を記し,「昼食時他人の副食を盗んだ」「注意されたらハラをたて他患にあたりちらし,物を投げておさまらない」と記載した上,拘束を指示し,同日午後0時ころ,原告Aに保護衣を着せて両手を拘束し,個室に移動させた上,ベッドに寝かせて拘束帯で上半身及び足をベッドに固定して拘束を開始した。その後,原告Aが沈静化したため,同月8日午後1時ころ拘束を終了した。また,同月7日から,抗てんかん薬であるカルバマゼピン(商品名テグレトール。以下「テグレトール」という。)を1日1200ミリグラム投与した。 イ乙第1号証には,平成7年11月7日午後0時からの拘束の理由として「他害」に丸が記され,「昼食時,他人の副食を盗んだ」「注意されたらハラをたて他患にあたりちらし,物を投げおさまらない」と記載されており,カルテ上の拘束の理由は,他の患者への暴力行為等の他害のおそれであったと認められる。 しかし,行動制限基準によれば,「身体的拘束は,当該患者の生命を保護すること及び重大な身体損傷を防ぐことに重点を置いた行動の制限」であり,「隔離」と「身体的拘束」の対象となる患者の定め方が異なり,他の患者への暴力行為等は,主として「隔離」の要件である。「身体的拘束」は,「代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われる行動の制限であり,できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければならないもの」であることからすれば,他害のおそれという危険に対する上では,「隔離」によって目的を達成することができない場合に,「身体的拘束」が選択されるべきであ 他の方法に切り替えるよう努めなければならないもの」であることからすれば,他害のおそれという危険に対する上では,「隔離」によって目的を達成することができない場合に,「身体的拘束」が選択されるべきであると解される。 そして,行動制限基準(厚生省告示第130号第4の2)に規定される身体的拘束が認められるためのアからウまでの各事由も,上記の趣旨に沿うように解釈するのが相当であり,特にイの「多動又は不穏が顕著である場合」とは,患者の生命・身体に危険が生ずる可能性が著しく高いと認められる「多動又は不穏」と解するべきである。したがって,他患者への暴力行為等だけでは原則として拘束の理由にはならない。 ウ乙第1号証及び第3号証によれば,原告Aは,平成7年11月7日午前11時50分ころ,他患者の副食を取ったことで看護師に注意されて興奮し,スリッパを投げるなどの行為が治まらない状態であったが,I医師が原告Aを診察した際は,原告Aは黙って椅子に座って同医師を睨み返すなどしていたことが認められる。 また,平成7年4月ころからは,原告Aが他患者に暴力をふるう行為が頻出しており,同月3日には突然椅子を蹴飛ばす行為が認められていたことを考えると,この時点での原告Aは非常に興奮しやすい状態であったと推認され,I医師が原告Aを診察した時点で,スリッパを投げる行為が継続していなかったとしても,依然として興奮状態が継続していたと考えられる。また,I医師は,拘束の理由としてカルテに前記のような記載をしたが,これらは隔離の理由であり,拘束の理由としては,原告Aが興奮状態から壁などに体を打ちつけて負傷するおそれがあり,保護する必要があるとも記載すべきであった旨証言しており,診察時に原告Aに自ら負傷するおそれがあると判断していたことが認められる。 原告Aは,興奮状 などに体を打ちつけて負傷するおそれがあり,保護する必要があるとも記載すべきであった旨証言しており,診察時に原告Aに自ら負傷するおそれがあると判断していたことが認められる。 原告Aは,興奮状態になると壁を叩いたり,壁に体を打ち付けたりすることがあったこと(証人I医師)から考えると,看護師や他患者の刺激により原告Aの興奮状態が再び顕在化し,壁に体を打ち付けるなどの行為をする危険もあったということができ,この危険は,「隔離」のみで防止することは困難であったと認められる。 そうすると,カルテの記載は不十分であったといわざるを得ないが,診察時の原告Aは,興奮状態が顕在化していないとしても,自ら負傷する可能性が著しく高い「多動又は不穏が顕著である場合」であったと認められ,身体的拘束以外によりよい代替方法がないと認められる。 エ上記の拘束をしている間,診療録に医師が診察した旨の記載はないが,拘束期間が1日余りとそれほど長くなく,看護録には定期的に観察記録が記載されていることを考慮すると,漫然と拘束が継続されていたとはいえない。 オ前記認定事実からは,前記拘束が,制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われたとは認められない。 カ以上の点を総合すると,医師の診察がされなかったことは妥当ではないが,平成7年11月7日午後0時から同月8日午後1時までの拘束が違法とまではいえない。 (3) 平成7年11月15日午後9時30分から同月17日午後3時30分までの拘束及び同日午後3時30分から同月23日午前10時40分までの隔離についてア証拠(乙1,3,4,13,被告C,証人H医師)によれば,以下の事実が認められる。 平成7年11月15日,原告Aは,他患者が部屋のドアを開けて覗いていったと言って興奮し始め,他患者に向け ア証拠(乙1,3,4,13,被告C,証人H医師)によれば,以下の事実が認められる。 平成7年11月15日,原告Aは,他患者が部屋のドアを開けて覗いていったと言って興奮し始め,他患者に向けてベッドの枕元にある台の引き出しを投げつける,他の患者の食事を勝手に持っていってしまうなどの行為をしたため,報告を受けたH医師が原告Aを診察したところ,原告Aは6人部屋の自室の床の上で寝転がっている状態で,床には引き出しの中身が散乱していた。H医師が原告Aに話しかけると,険しい目つきで黙っており,身構える素振りをするなどした。H医師は,原告Aを診察室に移動させたが,その際原告Aは興奮して抵抗する状態であった。そこで,H医師は,カルテに,拘束の理由として「他害」に丸を記し,「他患への暴力行為」と記載した上,同日午後9時30分ころ拘束の指示を出し,原告Aに保護衣を着させて両手を拘束し,さらに個室に移動させた上,パープスボード(長さ170から180センチ,幅50から60センチのボード)に原告Aの胸,腹及び足を幅約30センチのマジックテープで固定して拘束を開始した。 被告Cは,平成7年11月16日,原告Aにテグレトールを1400ミリグラムに増量して投与したが,原告Aは,同日午後8時ころ,パープスボードを抜け出して拘束をほどき,隔離室内に大便を塗りたくった。同月17日午後3時30分ころ,被告病院に勤務する熊木医師の判断で拘束は終了したが,報告を受けたH医師は,カルテに,隔離の理由として「興奮」に丸を記し,「器物破壊,興奮」と記載した上,隔離を指示し,原告Aの隔離を開始した。同月22日午後11時40分ころ,原告Aを一般室に移動させて経過を観察していたところ,原告Aの興奮状態は徐々に治まったため,同月23日午前10時50分ころ,原告AをEと共に外出さ Aの隔離を開始した。同月22日午後11時40分ころ,原告Aを一般室に移動させて経過を観察していたところ,原告Aの興奮状態は徐々に治まったため,同月23日午前10時50分ころ,原告AをEと共に外出させ,隔離を終了した。また,医師による診察は,少なくとも同月15日午後9時30分ころから同月17日午後3時30分ころまでの間に3回,その後,同月23日午前10時40分ころまでの間に3回行われた。 イ乙第1号証には,拘束の理由として「他害」に丸が記され,「他患への暴力行為」と記載されており,他患者への暴力行為が拘束の主な理由とされていたことがうかがえるが,前記のとおり,他患者への暴力行為だけでは原則として拘束の理由にはならない。 もっとも,前記認定事実によれば,平成7年11月15日午後9時30分ころ,H医師が原告Aを診察したとき,原告Aは,床の上に寝転がり,話しかけても険しい目つきで黙っており,身構えるそぶりを見せるなどしており,また,H医師が,原告Aを診察室に移動させた際,原告Aは興奮して抵抗する状態であったのであるから,診察の直前の,引き出しを投げるなどの原告Aの興奮状態と合わせて考えると,引き出しを投げる行為自体が継続していないとしても,些細な刺激により再度興奮状態が顕在化し,自己の体を壁に打ち付けるなどの危険が高かったと認められる。また,H医師は,原告Aが些細な刺激により興奮して暴れ,自ら傷害を負う危険があったと証言しており,診察時に,原告Aに自ら負傷するおそれがあったと判断していたことが推認される。 そうすると,カルテの記載は不十分であったといわざるを得ないが,診察時の原告Aは,些細な刺激により興奮し,自ら負傷する可能性が著しく高い「多動又は不穏が顕著である場合」であったと認められ,身体的拘束以外によりよい代替方法 は不十分であったといわざるを得ないが,診察時の原告Aは,些細な刺激により興奮し,自ら負傷する可能性が著しく高い「多動又は不穏が顕著である場合」であったと認められ,身体的拘束以外によりよい代替方法がないと認められる。 ウ乙第1号証には,平成7年11月17日午後3時30分ころ隔離を開始した理由として,「興奮」に丸が記され,「器物破壊,興奮」と記載されているところ,同月16日,原告Aにテグレトール200ミリグラムが増量投与されていること,同日午後8時ころ,原告Aは拘束を抜け出して,大便を隔離室内に塗る行為をしたことからすると,同日時ころ,H医師が原告Aを診察した際の原告Aの病状は興奮傾向にあって,一度拘束をしても,それから抜け出したことに鑑みれば,再度器物破損行為をする可能性が高く,「他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為,器物破損行為が認められ,他の方法ではこれを防ぎきれない場合」に該当し,隔離以外によい代替方法がないと認められる。 エ医師の診察は,3日弱の拘束及び隔離中に少なくとも3回,5日弱の隔離中に3回認められるところ,診察の回数が十分であったとはいえないが,看護録には定期的に観察の記録が記載されていることを考慮すれば,漫然と拘束及び隔離が継続されたとはいえず,違法とまではいえない。 原告らは,拘束及び隔離の開始だけではなく,継続についても精神保健指定医の診察及び判断が必要であると主張するが,厚生省告示第130号に,拘束及び隔離中に医師による診察を行うとされているが,精神保健指定医によらなければならないとは規定していないことからすれば,拘束又は隔離の継続については精神保健指定医の資格のない医師による診察でも足りると解される。 オ前記認定事実からは,前記拘束及び隔離が,制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われ ことからすれば,拘束又は隔離の継続については精神保健指定医の資格のない医師による診察でも足りると解される。 オ前記認定事実からは,前記拘束及び隔離が,制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われたとは認められない。 カ以上の点を総合すると,平成7年11月15日午後9時30分から同月17日午後3時30分までの拘束及び同日午後3時30分から同月23日午前10時40分までの隔離は,いずれも違法ではない。 (4) 平成8年1月9日午後0時から同月10日午前10時10分までの拘束についてア証拠(乙1,2,4,14,被告C,証人H医師)によれば,以下の事実が認められる。 原告Aは,平成7年12月31日から平成8年1月3日まで自宅で外泊し,同日被告病院に戻ったが,その際,原告Aの左目付近に発赤と腫脹が認められた。帰院してからの原告Aは,怒りっぽく,そわそわしている様子であったので,被告Cが「どうしたの」と聞くと,同月5日になって,原告Aは,自宅で外泊した際,餅を食べ過ぎて兄(乙1では弟)に殴られたと言い,その後も非常に興奮しやすい状態であった。被告Cは,平成8年1月6日から,原告Aに対し,テグレトール1日1400ミリグラムとともに,ニューレプチル1日30ミリグラムを3回に分けて投与した。ニューレプチルの投与後,原告Aはほぼ上機嫌な状態が続き,不機嫌状態がみられても軽い程度で短時間で治まったため,被告Cはニューレプチルの投与を継続した。 平成8年1月9日,原告Aは,昼食時に他患者が副食をくれないことに腹を立て,他患者に「殺してやる」と大声で怒鳴って長さ約80センチ,高さ約40センチの金属製のベッド柵を投げつけたため,報告を受けたH医師が原告Aを診察したところ,原告Aは険しい目つきで,問いかけにも何も答えなかった。H医師は る」と大声で怒鳴って長さ約80センチ,高さ約40センチの金属製のベッド柵を投げつけたため,報告を受けたH医師が原告Aを診察したところ,原告Aは険しい目つきで,問いかけにも何も答えなかった。H医師は,カルテに,拘束の理由として「興奮,他患に暴行」と記載した上,拘束を指示し,同日午後0時ころ,原告Aを個室に移動させた上,前記同様保護衣,パープスボードなどを使用して拘束を開始し,同月10日午前10時10分ころ,原告Aの興奮が沈静化したため拘束を終了した。医師による診察は,少なくとも同月9日午後0時から同月10日午前10時10分ころまでの間に1回行われた。 イ乙第1号証には,平成8年1月9日午後0時から拘束を開始した理由として,「興奮,他患に暴行」と記載され,また,「昼食時,他患とモメ,ベッドさくを投げつける→抑制して様子みる」との記載があり,他患者への暴力行為が拘束の主な理由とされていたと考えられるが,前記のとおり,他患者への暴力行為のみを理由とする拘束は原則として認められない。 もっとも,前記認定事実によれば,平成8年1月9日午後0時ころ,H医師が原告Aを診察した際,原告Aは険しい目つきで問いかけにも何も答えない状態であった。この時点で,ベッド柵を投げつけるなどの行為が継続していたものではないが,診察の直前には,原告Aは,他患者に対して「殺してやる」と大声で怒鳴り,長さ約80センチ,高さ約40センチの金属製のベッド柵を投げつけるなどしており,興奮の程度は相当高かったと考えられる。また,H医師は,原告Aをそのまま放置すれば,他患者との接触などの些細な刺激から興奮状態が顕在化し,自らも傷害を負う危険があったと証言しており,診察時,原告Aが自ら負傷するおそれがあると判断していたことが推認される。 そうすると,カルテの記載は不 触などの些細な刺激から興奮状態が顕在化し,自らも傷害を負う危険があったと証言しており,診察時,原告Aが自ら負傷するおそれがあると判断していたことが推認される。 そうすると,カルテの記載は不十分であったといわざるを得ないが,診察時の原告Aは,外見上興奮状態が現れていないとしても,なお相当程度の興奮状態にあったと認めるのが相当であり,些細な刺激により興奮状態が顕在化し,自ら負傷する可能性が著しく高い「多動又は不穏が顕著である場合」であったと認められ,身体的拘束以外によりよい代替方法がないと認められる。 ウ医師による診察は,1日弱の拘束中に,少なくとも1回認められ,看護録には定期的に観察の記録が記載されていることを考慮すれば,漫然と拘束が継続されたとは考えられない。 エ前記認定事実からは,前記拘束が,制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われたとは認められない。 オ以上の点を総合すると,平成8年1月9日午後0時から同月10日午前10時10分までの拘束は違法ではない。 (5) 平成8年2月22日午前11時40分から同年3月8日午後3時30分までの隔離,同年2月22日午後1時から同月23日午後4時20分までの拘束についてア証拠(乙1,3,4,13,被告C,被告B)によれば,以下の事実が認められる。 平成8年2月22日,原告Aは,他患者をコップで叩くなど興奮が激しく,看護師が助言しても逃げてしまうなどしたため,報告を受けた被告Bが原告Aを診察して隔離の指示をし,同日午前11時40分ころ,原告Aの隔離を開始したが,同室内に大便を塗りたくる行為が見られたため,同日午後1時ころ,拘束の指示をして,隔離室内で原告Aをパープスボードによって拘束を開始した。同日午後3時ころ,原告Aが拘束を解く行為をしたため,担架抑制による に大便を塗りたくる行為が見られたため,同日午後1時ころ,拘束の指示をして,隔離室内で原告Aをパープスボードによって拘束を開始した。同日午後3時ころ,原告Aが拘束を解く行為をしたため,担架抑制による拘束に切り替えた。同月23日午後4時20分ころ,原告Aの興奮がやや沈静化したため,拘束を終了したが,隔離は継続した。被告Bは,カルテに,当該隔離,拘束の理由として「他害」に丸を記し,「他患に対する暴力行為(コップでたたく)」と記載した。 原告Aには,同月26日にも隔離室内を大便で汚す行為があり,それ以降,尿又は便失禁が頻回に認められた。被告Cは,同年3月2日からニューレプチルを1日70ミリグラムに増量して投与したところ,同月4日ころから,原告Aのふらつき,流涎の増加が認められたが,同月5日ころから興奮状態は鎮静化されたため,同月8日午後3時30分ころ,隔離を終了した。医師による診察は,少なくとも同年2月23日午後4時20分ころから同年3月8日午後3時30分ころまでの間に14回行われた。 イ乙第1号証には,平成8年2月22日午前11時40分ころ隔離(同号証には「保護室」及び「拘束」に丸が記されているが,前記認定のとおり,拘束は同日午後1時ころに開始されているから,当該記載は隔離についてのものと認められる。)を開始した理由として,「他害」に丸が記され,「他患に対する暴力行為(コップでたたく)」と記載されているところ,前記認定事実によれば,同日時ころ,原告Aは他患者をコップで叩くなど他の患者に対する暴力行為があり,この時点での原告Aの病状は,「他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為,器物破損行為が認められ,他の方法ではこれを防ぎきれない場合」に該当し,隔離以外によい代替方法がないと認められる。 ウ平成8年2月22日午前11時40 他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為,器物破損行為が認められ,他の方法ではこれを防ぎきれない場合」に該当し,隔離以外によい代替方法がないと認められる。 ウ平成8年2月22日午前11時40分ころ,原告Aが他患者をコップで叩くなどした際,拘束ではなく隔離という措置がされていることからすれば,この時点での原告Aの精神興奮の程度は,自ら負傷する可能性が著しく高いために拘束が必要な程度までは至っていないと判断されていたことになる。そして,同日午後1時ころ,カルテに「他患をコップで叩いて興奮著しいため,保護室へ入室したところ,大便を周囲にぬりたくる不潔行為あり,拘束とする」と記載され,拘束が開始されていることからすると,この時点で,隔離の上更に拘束をする理由とされたのは,「大便を周囲にぬりたくる不潔行為」という器物破損のおそれであったと推認される。大便を周囲に塗りたくるなどの不潔行為により,被告病院の看護師等には清掃等の負担が生じるのであり,このような不潔行為をやめさせたいとの考えは理解し得ないではない。しかし,精神病患者を収容する被告病院においては,ある程度の負担は業務上予想される範囲内のものであり,負担の軽減を理由に,行動制限基準に規定のない拘束が許されるものではない。したがって,前記のとおり,器物破損行為等は,隔離の理由とはなり得ても,原則として拘束の理由とはならない。 上記拘束について,カルテ(乙1)に指定医として被告Bのサインがあるところ,被告Bは,原告Aの拘束を行ったことはなく,この記載は被告Cが記載したと供述するのに対し,被告Cは,同日の拘束の指定医は被告Bであると供述している。上記拘束を指示した指定医として被告Bのサインがあるから,上記拘束は被告Bの指示によるものと一応認められるが,被告Bが実質的に判断をせず,サ 被告Cは,同日の拘束の指定医は被告Bであると供述している。上記拘束を指示した指定医として被告Bのサインがあるから,上記拘束は被告Bの指示によるものと一応認められるが,被告Bが実質的に判断をせず,サインのみをした可能性も否定することはできない。拘束の判断を下した者についてこのような供述の食い違いがあるから,被告C又は被告Bの供述をもってカルテの記載以外に拘束の理由を認定するための証拠とすることができない。 したがって,拘束開始を指示した判断理由は,カルテの記載から認定するよりほかになく,前記のとおり,原告Aの拘束は,器物破損(大便を周囲にぬりたくる不潔行為)を理由として行われたと認められる。そして,隔離室内で便を壁に塗りたくるなどの原告Aの行動は,精神興奮状態を示す行為の一つとも考えられるが,かかる精神興奮が,自己の負傷につながる可能性が著しく高いといえる程度のものであったと推認するに足りる証拠はなく,行動制限基準にいう身体的拘束の要件のいずれも認められない。 以上からすれば,当該拘束開始時において,原告Aには拘束が認められるための事由はなかったといわざるを得ない。 この点について,被告らは,隔離,拘束の判断に当たっては,行動制限基準に該当するか否かだけでなく,精神保健指定医の臨床医療的な裁量判断を尊重すべきであると主張する。隔離や拘束の要件となる事由の認定は,資格のある医師の判断によらざるを得ないから,その判断に裁量の幅が存在することは当然であるとしても,医師の裁量によって隔離や拘束の要件となる事由を新たに設けることは許されない。厚生省告示第130号第4の2において,身体的拘束の対象となる患者は,「主として」アからウまでに該当すると認められる患者であると規定されており,身体的拘束が認められるのは,同アからウに該当 されない。厚生省告示第130号第4の2において,身体的拘束の対象となる患者は,「主として」アからウまでに該当すると認められる患者であると規定されており,身体的拘束が認められるのは,同アからウに該当する場合に限られないようにみえる。しかし,前記のとおり,同告示第4の1に,身体的拘束は当該患者の生命を保護すること及び重大な身体的損傷を防ぐことに重点を置いた行動の制限であることが明記されており,包括的事由である同2ウが「ア又はイのほか精神障害のために,そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合」と規定されていることからすれば,同2アからウまでに該当しない場合で身体的拘束が認められるのは,緊急に隔離する必要がある場合において,保護室が満室であるなどやむを得ない理由で隔離が不能であるため,隔離が可能になるまでの間,患者の生命身体を保護するために最小限の身体的拘束を行うときなど,極めて限られた例外的場合だけであると解するのが相当である。 前記認定事実によれば,平成8年2月22日午後1時ころの時点で,このような例外的場合に当たる事情は認められない。 エ医師による診察は,約15日間の隔離中に1日に1回以上行われており,厚生省告示第130号第3の基準を満たしている。 オ前記認定事実からは,前記拘束及び隔離が,制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われたとは認められない。 カ結局,平成8年2月22日午前11時40分から同年3月8日午後3時30分までの隔離は違法とはいえないが,同年2月22日午後1時から同月23日午後4時20分までの拘束は,行動制限基準に該当しない違法なものといわざるを得ない。 (6) 平成8年3月10日午前11時15分から同月15日午前10時までの隔離についてア証拠(乙1,3,4,14,被告 分までの拘束は,行動制限基準に該当しない違法なものといわざるを得ない。 (6) 平成8年3月10日午前11時15分から同月15日午前10時までの隔離についてア証拠(乙1,3,4,14,被告C)によれば,以下の事実が認められる。 平成8年3月10日午前7時30分ころ,原告Aは,「昨夜からこんな感じです。足と頭がふらふらする。」と述べ,歩行時のふらつきが顕著に認められたが,看護師の指示に従わず歩き回るなどしていた。報告を受けたG医師が原告Aを診察した際も,原告Aは,多くの机や椅子,配膳用の車などがある病棟内のホールで歩いていた。G医師は原告Aを説得し,カルテに,隔離の理由として「身体のフラツキがひどく,保ゴのため保護室へ」と記載した上,午前11時15分ころ,隔離室に入室させて隔離を開始した。同月14日,原告Aを日中隔離室から出させてホールで過ごさせる等していたが,同月15日午前10時,原告Aのふらつきが軽減したため,隔離を終了した。医師による診察は,同隔離中に少なくとも4回行われた。 イ乙第1号証には,平成8年3月10日午前11時15分から隔離を開始した理由として,「身体のバランスがひどく,保ゴのため保護室へ」と記載されているところ,前記認定事実によれば,平成8年3月10日午前7時30分ころ,原告A自身が「頭と足」のふらつきを申告しており,原告Aの歩行状態が不安定であったことが認められるが,原告Aは,看護師の指示に従わず,歩行の障害物となる机や椅子が置いてあるホールを歩き回るなどしていた。原告Aをそのまま放置すれば,これらの障害物によって転倒したり,意図せずに他の患者と身体的接触をしたりするなどして,他の患者との間の喧嘩に発展するおそれがあり,さらに,その行動の予測が困難であったと認められる。したがって,G医師が診察し 害物によって転倒したり,意図せずに他の患者と身体的接触をしたりするなどして,他の患者との間の喧嘩に発展するおそれがあり,さらに,その行動の予測が困難であったと認められる。したがって,G医師が診察した際の原告Aの病状は,「他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為,器物破損行為が認められ,他の方法ではこれを防ぎきれない場合」に該当し,隔離以外によい代替方法がないと認められる。 原告Aのふらつきは,後記の通り,ニューレプチルの副作用である可能性が高く,ニューレプチルの投与を止めることも代替方法の一つであるが,投与の中止によって直ちにふらつきが止むとは考えられないから,当分の間隔離することはやむを得ない。また,隔離室には高さ10センチ程度のマットと合成樹脂製のポータブルトイレがあるだけで(証人G医師),歩行の際に障害となるものが少なく,転倒した場合も負傷する可能性が一般室の場合に比べて低いと考えられるから,原告Aを転倒による負傷の危険から保護するために,隔離室に入室させたことは妥当であったといえる。 ウ医師による診察は,約5日間の隔離中に少なくとも4回行われたことが認められるところ,診察が十分であったとはいえないが,看護録には定期的に観察の記録が記載されていることを考慮すれば,漫然と隔離が継続されたとは考えられない。 エ前記認定事実からは,前記隔離が,制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われたとは認められない。 オしたがって,平成8年3月10日午前11時15分から同月15日午前10時までの隔離は違法ではない。 (7) 平成8年4月8日午後1時30分から同月11日午後7時50分までの隔離についてア証拠(乙1,3,4,13,14,被告C,証人H医師証人,J看護師)によれば,以下の事実が認められる。 被 成8年4月8日午後1時30分から同月11日午後7時50分までの隔離についてア証拠(乙1,3,4,13,14,被告C,証人H医師証人,J看護師)によれば,以下の事実が認められる。 被告Cは,ニューレプチル投与による随伴症状である流涎とふらつきを防止するため,平成8年3月16日から,原告Aにニューレプチルを1日50ミリグラムに減量して投与し,同年4月4日から,抗パーキンソン薬であるアーテンを1日6ミリグラム投与した。 平成8年4月7日午前8時55分ころ,原告Aが被告病院の詰所前で転倒し,左側頭部を壁に打ち付け,壁に10センチ程度の穴が空いたが,原告Aに外傷はみられなかった。 平成8年4月8日,原告Aにふらつきがみられ,同日午前8時10分ころ及び午前10時30分ころ転倒が認められた。報告を受けたH医師が原告Aを診察したところ,原告Aは看護師の指示に従わず室内を歩いていたが,歩行が非常に不安定でふらつきが目立つ状態であった。H医師は,隔離の理由として「ふらつき著明につき転倒防止のため」と記載した上,午後1時30分ころから隔離を開始した。 その後,医師による診察は,同月11日午後7時50分ころまでの間に,少なくとも6回行われた。 イ乙第1号証には,平成8年4月8日午後1時30分ころ隔離を開始した理由として,「ふらつき著明につき転倒防止のため」と記載されているところ,前記認定事実によれば,平成8年4月7日午前8時55分ころ,原告Aは,病院内で転倒して左側頭部を壁に打ち付け,同月8日午前8時10分ころ及び同日午前10時30分ころにも転倒が見られ,原告Aの歩行状態が不安定であったことが認められる。報告を受けたH医師が診察した際,原告Aは,看護師の指示に従わず室内を歩き回っており,そのまま放置すれば,転倒により身体的損 ころにも転倒が見られ,原告Aの歩行状態が不安定であったことが認められる。報告を受けたH医師が診察した際,原告Aは,看護師の指示に従わず室内を歩き回っており,そのまま放置すれば,転倒により身体的損傷を負い,また,意図せずに他の患者と身体的接触をしたりするなどして,他の患者との間の喧嘩に発展するおそれがあり,さらに,その行動の予測が困難であったと推認される。したがって,この時点での原告Aの病状は,「他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為,器物破損行為が認められ,他の方法ではこれを防ぎきれない場合」に該当し,隔離以外によい代替方法がないと認められる。 ウ医師による診察は,3日と7時間20分の隔離中に少なくとも6回認められ,診察回数は十分であった。 エ前記認定事実からは,前記隔離が,制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われたとは認められない。 オしたがって,平成8年4月8日午後1時30分から同月11日午後7時50分までの隔離は違法ではない。 2 争点(2)(平成7年11月22日,被告Cが原告Dに対し,原告Aの退院を強要したか否か。)について(1) 以下に摘示する証拠によれば,次の事実が認められる。 ア原告Aは,平成7年4月ころから,他患者の床灯台を倒す,洋服,コップ,ベッド柵を投げる,他患者を殴る,興奮して自室入口のガラスを割るなど,粗暴行為が出現する頻度が増加しており,同年10月27日には,被告病院の看護師であるNの左手第4指腹側に縫合を要する怪我を負わせた。その後も,同月29日他患者の背部を叩く,同月31日他患者と殴り合う,同年11月3日ホールの椅子を蹴飛ばすなどの粗暴行為があった。(乙3,4,被告C)イ被告Cは,平成7年11月初旬,原告Aの自宅に電話し,原告Aの今後の治療について話し合いを求めた。被 り合う,同年11月3日ホールの椅子を蹴飛ばすなどの粗暴行為があった。(乙3,4,被告C)イ被告Cは,平成7年11月初旬,原告Aの自宅に電話し,原告Aの今後の治療について話し合いを求めた。被告Cは,平成7年11月20日,南上病棟の面接室でEと面談し,原告Aのてんかんについては大きな発作は数ヶ月に一度程度の頻度であること,南上病棟での入院期間は4年を経過し,原告Aは看護師などの注意にも従わなくなっていること,原告Aが他の弱い患者に当たることが多くなっていることなど,長期入院の弊害が出現してることを説明し,この点については薬物療法の効果も十分には期待できないため,治療方針として在宅療養あるいは療養施設への入所もあり得ることを説明した。これに対し,Eは,原告Dでなければ返事ができないと述べた。(乙1,4,被告C)ウそこで,被告Cは,平成7年11月22日,南上病棟の面接室で原告D及びEと面談し,原告Aの退院を考えた場合どのような問題があるか尋ねた。原告Dは,原告Aには普通の生活はできない,外でうろうろしてしまう可能性があるし,他人に怪我をさせてしまうかもしれないなどと述べた。被告Cが,療養施設への入所や他病院への転院について尋ねると,原告Dは,どこへ行っても同じ結論が出ることは分かっている,退院は難しいなどと述べた。そこで,被告Cは,1か月に1度,1泊2日程度の外泊を行い,原告Aの欲求不満を和らげたり,解消したりする方法を提案したところ,原告D及びEは,そのくらいのことは当然いたします,などと述べた。また,被告Cが,原告Aの興奮が激しい場合は,隔離室の利用,拘束,鎮静剤の投与が必要になると説明したところ,原告Dは,すべて先生にお任せしますと述べた。原告Aの月1回の外泊は,平成7年12月2日から1泊2日,同年12月31日から3泊4 合は,隔離室の利用,拘束,鎮静剤の投与が必要になると説明したところ,原告Dは,すべて先生にお任せしますと述べた。原告Aの月1回の外泊は,平成7年12月2日から1泊2日,同年12月31日から3泊4日,平成8年2月11日から1泊2日,同年3月23日から1泊2日で,それぞれ実施された。(乙1,4,被告C)(2) 原告Dは,被告Cが原告Dに対し,「退院させないのなら,退院させなくてもよい。 1,2か月の間,様子を見ていて,それでも退院させないときは,A君を歩くことも話をすることもできないようにした上,暗い穴のような部屋に閉じ込めておく。」と申し向け,原告Aを被告病院から退院させなければ,原告Aに害悪を加えることを告知して,原告Aの退院をさせようとしたと主張する。 前記認定のとおり,平成7年11月22日,被告Cは原告Dに対して,原告Aを他の病院や施設へ転院させ,又は在宅医療を行うことにより,被告病院から退院させることを慫慂した。被告C本人尋問の結果によれば,被告Cが原告Aの退院を勧めたのは,①原告Aの発作が減少してきており,てんかん発作抑制の目的での入院治療は必ずしも必要ではなくなったこと,②原告Aには他患者に暴力をふるうなどの問題行動が増加し,長期入院の弊害が生じていること,③問題行動の際の興奮状態によりてんかん発作が誘発されやすくなること,④被告病院の患者の大部分は精神分裂病患者で,精神遅滞者である原告Aの場合は,在宅医療や療養施設への入所が適当であること等の理由があったことが認められ,乙第1号証には,被告らが原告Dに説明したと主張する内容に沿う記載がある。 鑑定の結果によれば,被告Cが原告Dに対して原告Aの退院を勧めたことは,医学的に妥当な判断であったことが認められる。しかし,鑑定の結果にも指摘されているように,原告Dは 容に沿う記載がある。 鑑定の結果によれば,被告Cが原告Dに対して原告Aの退院を勧めたことは,医学的に妥当な判断であったことが認められる。しかし,鑑定の結果にも指摘されているように,原告Dはそれまでに原告Aを育てる上で多大な苦労を経験したことから,原告Aを退院させ自宅に引き取った事態を想定して,家庭生活や職業の継続の面で大きな不安を持ち,退院に難色を示したことが推認される。被告Cが退院に難色を示す原告Dに対して,原告Dの主張するとおりの言辞を用いて退院を迫ったとも認め難いが,被告Cの発言は原告Dにとって極めて重大かつ敏感な問題についてのものであるから,強く原告Dの記憶に残っていると考えられ,原告Dが架空の被告Cの言辞を作り上げて主張しているとも認め難い。 被告Cが退院を慫慂した後も原告Aが実際に退院させられていないこと及び被告Cが退院を慫慂したことに医学的根拠があることに鑑みれば,被告Cの原告Dに対する退院の勧め方が相当でなかったことはあるとしても,被告Cが原告Dの退院を強要した事実は認められず,損害賠償責任が発生するほどのものではないと考えられる。 3 争点(3)(平成8年1月6日以降,原告Aにニューレプチル及びアーテンを投与したことについて,被告らに過失があったか否か。)について (1) ニューレプチルは,厚生省の認可を受けた強力精神安定薬の一種であり,保険診療上の適応症は統合失調症であるが,その他にも「てんかん衝動にも有効とされる」唯一の薬物であり,精神科薬物療法の指導書,解説書において,てんかん等の行動障害に対して有効であるとされ,臨床においても広く用いられてきた。もっとも,一般に強力精神安定薬は痙攣閾値を低下させることがあるため,てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者には「慎重投与」とされてお 効であるとされ,臨床においても広く用いられてきた。もっとも,一般に強力精神安定薬は痙攣閾値を低下させることがあるため,てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者には「慎重投与」とされており,これはニューレプチルも同様であった。ニューレプチルの副作用としては,錐体外路症状(筋肉のこわばりや手の震え,歩行の際のふらつきなど)や,自律神経症状(流涎等)がある。また,通常,成人には1日10から60ミリグラムを分割投与し,年齢,症状により適宜増減するとされている。(鑑定の結果,甲15,乙16)アーテンはパーキンソン病の治療薬で,前記ニューレプチル等の抗精神病薬の副作用である錐体外路症状や自律神経症状を軽減する目的で日常的に使用されている。(鑑定の結果)(2) 前記認定のとおり,被告Cは,平成7年4月ころから原告Aの粗暴行為が増加しており,同年11月7日には他患者にスリッパを投げるなどの行為があったため,原告Aに対し,同日からテグレトールを1000ミリグラムから1200ミリグラムに増量して投与した。その後,同年11月16日に,再度テグレトール1400ミリグラムまで増量して投与した。しかし,平成8年1月3日,自宅での外泊から帰院した原告Aは,怒りっぽく,そわそわして,非常に興奮しやすい状態であったため,被告Cは,原告Aに対し,平成8年1月6日からテグレトール1400ミリグラムに加えて,ニューレプチル1日30ミリグラムの投与を開始した。 このように,被告Cは,原告Aの粗暴行為の増加に対し,まずはテグレトールの増量投与で対応していたが,テグレトールの投与は1日1400ミリグラムに達し,原告Aの場合,テグレトールの増量は難しくなっており(被告C),原告Aをテグレトールではコントロールすることができなくなったため,精神安定薬の たが,テグレトールの投与は1日1400ミリグラムに達し,原告Aの場合,テグレトールの増量は難しくなっており(被告C),原告Aをテグレトールではコントロールすることができなくなったため,精神安定薬の投与が必要になり,ニューレプチルを保険診療上の投与量の中間にあたる1日30ミリグラム投与したものであるから,その投与は必要かつ妥当であったと認められる。 その後,平成8年3月2日からは,ニューレプチルが,保険診療上の投与量の上限である1日60ミリグラム(甲15)を超える1日70ミリグラム投与されており,この増量は,鑑定の結果及び乙第16号証で指摘されるように,やや唐突で,慎重さに欠けるとしても,保険診療上の投与量は医師の目安にすぎず,年齢,症状により適宜増減されるものであること,当時の原告Aの興奮状態が激しく,隔離室に入室させても治まらない状態であったことからすると,70ミリグラムに増量して投与したことは医師の裁量的判断の範囲内であり,そのこと自体が違法とはいえない。 平成8年3月4日ころから原告Aのふらつき及び流涎が目立ち始め,同月10日には,転倒による負傷から保護するため隔離が必要となったため,被告Cは,ニューレプチルの副作用であるふらつき及び流涎等を軽減させる目的で,同月16日からニューレプチルを1日50ミリグラムに減量し,同年4月4日からアーテンの投与を開始している。前記のとおり,アーテンはニューレプチルの副作用であるふらつき及び流涎等を軽減する目的で使用されるものであり,ニューレプチルの減量とアーテンの投与を行ったのは妥当な処置であった。もっとも,鑑定人が指摘するように,ニューレプチルの投与が,結果的には原告Aのふらつき及び流涎等を増長させたことは否定できず,ニューレプチルの減量,アーテンの投与,両薬の中止に若干の遅 置であった。もっとも,鑑定人が指摘するように,ニューレプチルの投与が,結果的には原告Aのふらつき及び流涎等を増長させたことは否定できず,ニューレプチルの減量,アーテンの投与,両薬の中止に若干の遅れがあったと考えられるが,このことをもって,ニューレプチル及びアーテンの投与が不当であったとまではいえない。 (3) したがって,被告Cが原告Aにニューレプチル及びアーテンを投与したことは違法ではない。 4 争点(4)(平成8年4月11日,原告Aが硬膜下血腫の傷害を負ったことについて,被告らに過失があったか否か。)について(1) 以下に摘示する証拠によれば,次の事実が認められる。 ア平成8年4月9日又は同月10日,原告Aは数秒間の意識消失発作を起こし,手に持っていたコップを落としたり,ふらつきがみられたりしたため,被告Cは,転倒した際の受傷を防止するため,原告Aにヘルメットを着用するよう指導した。(乙1,3,4,被告C)イ平成8年4月11日,原告Aの食欲が減退し,37度の発熱があったため,被告Cは,同日午後2時20分ころ,原告Aを詰所に近い集中治療室(以下「ICU」という。)に移させた。被告Cは,同日午後4時ころ,原告Aの眠気が強く,食欲が低下しているとの報告を受けて,原告Aの診察をしたところ,原告AはICUのベッドの上で寝ており,呼びかけると反応があった。同日午後4時30分ころ,原告Aは自力で食事を3分の2摂取したが,その際,ベッドから降りようとして頭からずり落ちるような格好となったため,看護師が原告Aの体を支え,負傷はなかった。 被告Cは,同日午後4時40分ころ,原告Aを,高さ10センチ程度のベッドを使用している隔離室に入室させた。被告Cは,原告Aのふらつき,流涎,眠気を軽減する目的で,同日夕食後からニューレプチルとアー 被告Cは,同日午後4時40分ころ,原告Aを,高さ10センチ程度のベッドを使用している隔離室に入室させた。被告Cは,原告Aのふらつき,流涎,眠気を軽減する目的で,同日夕食後からニューレプチルとアーテンの投与を中止した。(乙1,3,4,10,14,被告C,証人J看護師)ウ平成8年4月11日,午後5時から被告病院で当直勤務をしていた被告Bは,同日午後7時50分ころ,原告Aが隔離室内で倒れているとの報告を受けて,原告AをICUに移すよう指示したが,ICUが満室であったため,ICUに準ずる特室に移させ,J看護師と共に原告Aのもとへ行き診察をした。その際,原告Aには全身の筋肉の収縮と弛緩を律動的に繰り返す間代性痙攣があり,5分から10分後に治まったが,体に触るとまた痙攣に近い状態になり,手を動かそうとすると全身が硬直し,血圧は測定不能であった。呼名には反応がなく,痛み刺激を与えると,全身の緊張が高まり,刺激から逃れようとする反応があった。しかし,体温は38.2度で発熱が認められ,瞳孔系は左3ミリ,右5ミリで左右差があった。原告Aは,当時,左後頭部を負傷していたが,原告Aの痙攣が治まった後,被告Bが原告Aの頭部を視診,触診した際,外傷は確認できなかったため,被告Bは,脳の器質的疾患の可能性は少ないと判断し,病棟職員の経過説明等から考えて,てんかん発作が最も疑われ,てんかん発作遷延状態(意識の鮮明度が落ちる意識障害がある状態)及び発作後もうろう状態であると診断した。(乙1,3,9,10,被告B,証人J看護師)エ平成8年4月11日午後8時40分ころ,被告Bが原告Aを診察したところ,呼名に反応はないが,全身の硬直はゆるんでおり,体温は38.7度と高くなったため,被告Bは,看護師に解熱剤のボルタレンを使用するように指示した。同日午後9時4 ころ,被告Bが原告Aを診察したところ,呼名に反応はないが,全身の硬直はゆるんでおり,体温は38.7度と高くなったため,被告Bは,看護師に解熱剤のボルタレンを使用するように指示した。同日午後9時40分ころには,原告Aの下肢の硬直は消失し,上肢に軽度の緊張がみられた。痛み刺激に対しても,針を刺そうとした腕を引っ込めるなど,しっかりした反応が見られた。しかし,体温は依然38.7度に上昇しており,再度のてんかん発作を起こす可能性があったため,被告Bは原告Aに点滴を行った。同日午後11時30分ころ,被告Bは,原告Aの体温が39.2度に上昇したとの連絡を受け,再度ボルタレンを投与するよう指示した。(乙1,9,被告B)オ平成8年4月12日午前7時50分ころ,被告Bが原告Aを診察したところ,硬直状態はなく全身脱力しており,右瞳孔は散大気味で,体温は37.2度に下がっていた。(乙1,9,被告B)カ平成8年4月12日午前9時30分,被告Cは,当直医であった被告Bの指示で,原告Aの頭部CT検査を行ったところ,右硬膜下血腫の所見を認めたため,直ちに岐阜県立岐阜病院脳外科に電話で診察を依頼した。また,原告Aの自宅に電話してEにその旨を知らせた。同日午前10時過ぎ,被告Cが付き添って,原告Aを救急車で同病院に搬送した。原告Aが同病院に搬送された際,原告Aには,左後頭部に皮下血腫,右の側頭部に硬膜下血腫及び皮下血腫,上顎歯槽骨骨折,外傷性下口唇裂傷が認められ,原告Aは急性硬膜下血腫,頭部外傷Ⅲ型(頭部外傷によって意識障害,神経症状等が継続している状態)と診断された上,同日手術を受けた。(甲1,19の2,20,乙1,4,被告C,証人L医師)キ平成8年4月12日午前10時30分ころ,被告Cは,県立岐阜病院救急センター玄関前で,原告D及びEに対し, された上,同日手術を受けた。(甲1,19の2,20,乙1,4,被告C,証人L医師)キ平成8年4月12日午前10時30分ころ,被告Cは,県立岐阜病院救急センター玄関前で,原告D及びEに対し,同日朝行った頭部CT検査で頭蓋内の出血が確認されたこと,緊急手術が必要となる可能性があるので,救急車で同病院に搬送したことなどを説明した。(甲31,乙4)ク平成8年4月30日午前11時ころ,原告D及びEが被告病院に来院し,説明を求めたので,被告Cは,M看護長と共に原告D及びEと面会し,同月11日午後4時に原告Aを診察したときには,原告AはICUのベッドの上で眠っており,身体的異常はなかったこと,原告Aは,同日午後4時30分に夕食を自力で摂取していたが,ベッドの上でじっとしていられなかったため,転落の危険の少ない低いベッドを使用している隔離室に移動させたこと,その後,当日の当直医であった被告Bが,同月12日の朝にかけて数回回診を行い,詳細に経過を観察し,頭部CT,脳波検査の指示を出したこと,同日午前9時に頭部CT検査を行ったところ,右硬膜下血腫と判明し,岐阜県立岐阜病院脳外科に転院となったこと,右硬膜下血腫の原因は,転倒あるいは頭部打撲も考えられるが,いつの頭部打撲か,又は打撲以外の別の原因なのかは今のところ分からない旨説明した。(乙1,4)(2) 平成8年4月12日の朝撮られた原告Aの頭部CT写真で左後頭部及び右側頭部に皮下血腫が認められ,原告Aが岐阜県立岐阜病院に搬送された際も,左後頭部及び右側頭部に皮下血腫が確認されていること,同月11日午後7時50分以降は,原告Aは特室で処置を受けており,同日午後8時40分,同日午後9時40分には医師による診察が行われ,その後も看護師によって定期的に観察がされているところ,同月12日にCT写 日午後7時50分以降は,原告Aは特室で処置を受けており,同日午後8時40分,同日午後9時40分には医師による診察が行われ,その後も看護師によって定期的に観察がされているところ,同月12日にCT写真を撮るまでの間に頭部外傷を負うような事実は認められないことからすると,原告Aが頭部外傷を負ったのは,同月11日午後7時50分以前であると考えられる。 一般に,急性硬膜下血腫は受傷から3日以内に発症し,大抵は24時間以内に発症するものが多く,前記CT写真において認められる原告Aの皮下血腫の症状からすると,当該部分に負傷の原因となった衝撃を受けてから数時間から1日以内であると考えられること(証人L医師),甲第1号証に「病名急性硬膜下血腫」「平成8年4月11日受傷」と記載されており,岐阜県立岐阜病院においても,同月11日に受傷したものと判断されていたこと(証人L医師)からすると,原告Aが頭部外傷を負ったのは同月11日であると推認される。 乙第3号証によれば,原告Aは,平成8年4月11日午後4時10分ころ,ICUのベッドで頭部からずり落ちることがあったが,この際に頭部負傷は認められておらず,その後も原告Aは午後4時30分に夕食を摂取し,午後4時40分に保護室に入室しており,この時点での意識障害は認められていない。したがって,午後4時10分ころベッドからずり落ちた際に皮下血腫の原因となる頭部外傷を負ったとは考えられない。そうすると,原告Aには,同月11日午後4時40分ころまでは何ら異常は認められていないのであるから,原告Aが頭部外傷を負ったのは,同日午後4時40分以降同日午後7時50分までの間と考えらる。 同日午後7時50分ころ,原告Aの病状がてんかん硬直間代発作の回復過程であったと考えられること(鑑定の結果),原告Aは,その数 ,同日午後4時40分以降同日午後7時50分までの間と考えらる。 同日午後7時50分ころ,原告Aの病状がてんかん硬直間代発作の回復過程であったと考えられること(鑑定の結果),原告Aは,その数日前にも転倒したことが複数回確認されており(乙3),転倒した場合は壁に穴が空くほど頭部を強打することがあったこと,被告Cは,同年4月10日午後4時ころ,原告Aが意識消失発作を起こし,ふらつきもみられたため,転倒による受傷を防止するためヘルメットの着用を指示していることなどからすれば,当時の原告Aは,発作による意識消失等のため転倒する危険が高い状態にあったことがうかがわれ,皮下血腫及び硬膜下血腫の原因となった頭部負傷は,同月11日午後4時40分ころから同日午後7時50分ころに起きたてんかん発作による転倒によって生じたものである可能性が高い。被告Bは,同日午後7時50分ころ,原告Aの頭部を触診した際,頭部外傷を確認していないところ,頭部外傷を負った直後には,触診によって確認できないこともあり得る(証人L医師)ことを考慮すれば,被告Bがこのころに頭部外傷に気付かなかったとしても矛盾はない。 (3) 原告らは,平成8年4月11日午後3時ないし4時ころ,被告病院の関係者某が原告Aの頭部を強打する等の暴行を加えたと主張する。 原告Aは,岐阜県立岐阜病院に転院した際,上顎歯槽骨骨折,外傷性下唇裂傷が認められ,また,原告Dは,平成8年7月ころ,原告Aの背中に長さ20から30センチ,幅1センチくらいの傷跡が数箇所あったと供述し,L医師も,原告Aが岐阜県立岐阜病院に転院した際,背部に打撲傷等の傷があっただろうとは思いますと証言しており,原告Aにこのような外傷があったことは認められる。しかし,これらの証拠からは,外傷が転倒等の事故によって生じたものではな 病院に転院した際,背部に打撲傷等の傷があっただろうとは思いますと証言しており,原告Aにこのような外傷があったことは認められる。しかし,これらの証拠からは,外傷が転倒等の事故によって生じたものではなく,病院関係者が暴行を加えたことによって生じたものであると認めることはできない。したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (4) 以上の検討結果によると,原告Aの皮下血腫及び硬膜下血腫の原因となった頭部外傷は,平成8年4月11日午後4時40分以降同日午後7時50分までの間に起きた頭部の強打によって生じたものであると考えられる。そして,頭部を強打した原因としては,このころに発生したと考えられるてんかん発作によって転倒し,左後頭部を強打したものと推認される。 一般に,てんかん発作の発生時期を予測することは難しく,前記認定のとおり,頭部の強打以前に,原告Aは転倒の危険の少ない隔離室内に入れられており,被告病院としては,原告Aのてんかん発作による転倒及びこれによる頭部の強打を予想して,原告Aに対する予防処置を講じていたと認められ,処置として不適切とはいえない。 したがって,原告Aが硬膜下血腫を負ったことについて,被告B及び被告病院に過失はない。 5 争点(5)(平成8年4月11日午後7時50分ころ,意識喪失状態の原告Aを発見した後の処置において,転院させなかったことなどの過失があったか否か。)について(1) 前記認定のとおり,平成8年4月11日午後7時50分ころまでに,原告Aは,てんかん発作により転倒するなどして頭部を強打し,頭部外傷を負い,その後に意識を失った状態で発見された。 証人I看護師は,原告Aが「はーい」と返事をしたと証言するが,乙第1号証の診療録及び第3号証の看護録にはそのような記載がなく,一 打し,頭部外傷を負い,その後に意識を失った状態で発見された。 証人I看護師は,原告Aが「はーい」と返事をしたと証言するが,乙第1号証の診療録及び第3号証の看護録にはそのような記載がなく,一緒にいた被告Bもそのような供述をしていない。意識レベルを診断する上で重要な呼名への反応という事実について,診療録及び看護録に記載されないのは不自然であるし,かえって,看護録には,同日午後8時40分ころ,「相変わらず呼名反応なし」との記載があることからすると,同日午後7時50分ころにも呼名反応はなかったと考えられ,証人I看護師の証言は採用することができない。したがって,原告Aが発見された同月11日午後7時50分ころには呼名に反応しなかったことが認められる。 原告Aが発見された時点では,全身硬直があり,呼名にも反応せず,痛み刺激を与えると全身の緊張が高まり,刺激から逃れようとするなどの病状であったが,同日午後8時40分ころ,呼名には反応しないが,硬直がやや緩み,同日午後9時40分ころには下肢の硬直が消失し,痛み刺激に対しても針を刺そうとした腕を引っ込めるなどしっかりした反応が見られ,病状の改善が認められる。 (2) 被告B及び被告病院は,急性硬膜下血腫の症状としての意識障害を中心とする病状は進行的に悪化するのが通例である(鑑定の結果)のに,原告Aには前記のような病状の改善が見られることから,平成8年4月11日午後7時50分ころの原告Aの病状をてんかん硬直間代発作の回復過程であったと診断したことは相当で,原告Aを転院させなかったとしても過失はないと主張する。 しかし,この時点で原告Aがてんかん硬直間代発作の回復過程にあったとしても,以下の理由から,原告Aに頭部の強打による硬膜下出血の可能性を否定することはできなかったと認められる。 主張する。 しかし,この時点で原告Aがてんかん硬直間代発作の回復過程にあったとしても,以下の理由から,原告Aに頭部の強打による硬膜下出血の可能性を否定することはできなかったと認められる。 ア平成8年4月11日午後7時50分以前における原告Aの下記の状態からすれば,てんかん発作により転倒し,頭部を強打することは十分予測することができた。 記前記認定のとおり,原告Aに対しては,平成8年3月2日以降,ニューレプチルが,保険診療上の投与量の上限である1日60ミリグラム(甲15)を超える1日70ミリグラム投与されており,同月4日ころから原告Aのふらつき及び流涎が目立ち始め,同月10日には,転倒による負傷から保護するために隔離が必要となったため,被告Cは,ニューレプチルの副作用であるふらつき及び流涎等を軽減させる目的で,同月16日からニューレプチルを1日50ミリグラムに減量し,同年4月4日からアーテンの投与を開始した。同月10日午後4時ころ,原告Aは数秒間の意識消失発作を起こし,手に持っていたコップを落としたり,ふらつきがみられたりしたため,被告Cは,転倒した際の受傷を防止するため,同月9日から原告Aにヘルメットを着用するよう指導した。(乙1,4,被告C)。 平成8年4月11日,原告Aの食欲が減退し,37度の発熱があったため,被告Cは,同日午後2時20分ころ,原告Aを詰所に近いICUに移した。被告Cは,同日午後4時ころ,原告Aの眠気が強く,食欲が低下しているとの報告を受けて,原告Aの診察をしたところ,原告AはICUのベッドの上で寝ており,呼びかけると反応があった。同日午後4時30分ころ,原告Aは自力で食事を3分の2摂取したが,その際,ベッドから降りようとして頭からずり落ちるような格好となったた 原告AはICUのベッドの上で寝ており,呼びかけると反応があった。同日午後4時30分ころ,原告Aは自力で食事を3分の2摂取したが,その際,ベッドから降りようとして頭からずり落ちるような格好となったため,看護師が原告Aの体を支え,負傷はなかった。被告Cは,同日午後4時40分ころ,原告Aを,高さ10センチ程度のベッドを使用している隔離室に入室させた。 被告Cは,原告Aのふらつき,流延,眠気を軽減する目的で,同日夕食後からニューレプチルとアーテンの投与を中止した。(乙1,3,4,10,14,被告C,証人J看護師)イ被告Bは,原告Aの頭部外傷を触診によっても確認できなかったと供述するが,前記認定のとおり,岐阜県立岐阜病院に転院した際の診断では,上顎歯槽骨骨折,外傷性下唇裂傷が認められている。これらの外傷は平成8年4月11日午後7時50分以前に生じた(これ以後,原告Aは意識を回復していない。)としか考えられないから,外見からも発見することのできる外傷性下唇裂傷が存在し,しかも意識がなく,高熱が続くという事態を合わせて考慮すると,頭部の外表面に外傷はなくても,頭部を強打した疑いを持つべきである。 ウ被告Bは,原告Aを診察した時に,瞳孔不同(左3ミリ,右5ミリ)を認めており,このことから頭蓋内の出血その他の脳の損傷を疑うべきであったと認められる。 被告Cは,原告Aには従前から瞳孔不同の症状があり,そのことは数年前のカルテに記載されていると述べているが,提出された証拠中に該当する記載はなく,採用することはできない。したがって,このときの瞳孔不同が原告Aに従前からあったものと認めることはできない。また,被告Bは,原告Aにもともと瞳孔不同の症状があったことを知らない状態で診察を行ったものと推認される。この事実からすれば,意識がなく,瞳孔不 が原告Aに従前からあったものと認めることはできない。また,被告Bは,原告Aにもともと瞳孔不同の症状があったことを知らない状態で診察を行ったものと推認される。この事実からすれば,意識がなく,瞳孔不同があり,高熱が続いている状況を認識しながら,翌日にやっと頭部のCT検査が行われたことは,遅きに失したものである(甲33)。 被告病院において,平成8年4月12日午前9時30分,当直医であった被告Bの指示で,被告Cが原告Aの頭部CT検査を行っているところ,乙1の同月11日午後7時50分の記載として「明日 CTEEG」と書かれており,被告Bは,この時点でCT検査の必要性を認識し,指示をしていたことが認められる。当直医であった被告Bが,当初からCT検査は翌日でよいと考えていたとすれば,急性であるかもしれない疾患を前にして,人的体制の手薄な当直時間帯(少なくとも翌朝の診療開始時まで続く。)に入ることを選択した点において不適切な措置といわざるを得ない。また,同月11日午後7時50分ころに被告Bが指示を出しても,CT検査を行う当直の技師がいないために検査を実施することができなかったとすれば,その時点で他の病院へ転院させるべきであったと考えられる。(乙17)鑑定の結果では,4月11日中にCT検査を実施しても,血腫が画像による診断が可能な大きさに達していないため,発見されなかったであろうと推測されている。 しかし,このことは,4月11日中にCT検査を実施する必要がなかったことを意味するものではない。また,硬膜下血腫は頭蓋内の出血が徐々に続いて血腫が大きくなるものであり,被告病院では血腫除去の手術ができないことからすれば,CT検査を適宜行いながら経過観察をし,血腫が1.0センチメートル以上となり手術の必要(鑑定の結果)が生ずれば直ちに手術をす きくなるものであり,被告病院では血腫除去の手術ができないことからすれば,CT検査を適宜行いながら経過観察をし,血腫が1.0センチメートル以上となり手術の必要(鑑定の結果)が生ずれば直ちに手術をすることのできる病院へと転院させるべきであったと認められる。 エ被告Bが原告Aの病状をてんかん硬直間代発作の回復過程であったと診断したとしても,そのことによって頭部を強打した可能性を否定することはできないだけでなく,むしろ,看護師等が見ていないところでてんかんの発作があったと診断したのであれば,発作に伴って意識レベルが低下して転倒し,頭部を強打していたことも推測されるはずである。 (3) 以上の検討結果からすると,被告Bは,平成8年4月11日午後7時50分ころに,意識を失っている原告Aを発見し,瞳孔不同,高熱の持続を認識して直ちにCT検査を行うか,遅くとも同日午後11時30分ころに原告Aの体温が39.2度に上昇した時点で,原告AをCT検査を適宜行いながら経過観察をし,手術の必要が生ずれば直ちに手術をすることのできる病院へと転院させるべきであったというべきである。 6 争点(6)(ニューレプチルの投与及び原告Aが硬膜下血腫の傷害を負ったことについての説明義務違反の有無)について(1) ニューレプチル投与についての説明義務医師が患者に投薬をする場合,いかなる薬を選択するかは医師の裁量的判断によって決定することができるものであるが,その投薬に際しては,緊急時などの特別な事情がない限り,投薬の目的,効果及び副作用等について,患者に説明すべき義務を負うというべきである。もっとも,専門的な薬の名称や,考えられる副作用の全てを説明する義務はなく,患者の自己決定権の行使に必要な範囲内で説明義務を負うと解するのが相当である。 前記 べき義務を負うというべきである。もっとも,専門的な薬の名称や,考えられる副作用の全てを説明する義務はなく,患者の自己決定権の行使に必要な範囲内で説明義務を負うと解するのが相当である。 前記認定のとおり,平成7年1月22日,被告Cは原告D及びEに対し,原告Aの興奮が激しい場合には,鎮静剤の投与も必要になる旨説明しているが,具体的にニューレプチルを投与するとの説明をしたとまで認定する証拠はなく,また,ニューレプチルの副作用を具体的に説明した事実も認められない。しかし,ニューレプチルは全国の精神科においてかなり使用頻度の高い抗精神薬であり,前記のとおり,ニューレプチルの投与自体は適切な医療行為であったことからすると,副作用についての説明が不十分であったことは否定できないものの,これにより原告らの自己決定権を侵害した違法があるとは認められない。 (2) 平成8年4月11日の硬膜下血腫についての説明義務前記認定のとおり,平成8年4月11日午後7時50分の時点で,被告Bは,原告Aをてんかん発作遷延状態及び発作後もうろう状態と診断しており,また,この時点では,硬膜下血腫はCT検査の画像による診断が可能な大きさに達していない(鑑定の結果)から,被告Bが原告らに対し,原告Aが硬膜下血腫の傷害を負った旨の説明をすべき義務があるとは認められない。 (3) 平成8年4月30日の硬膜下血腫についての説明義務前記認定のとおり,平成8年4月30日午前11時ころ,被告CはM看護師とともに,原告D及びEと面会し,同月11日午後4時ころから翌日岐阜県立岐阜病院に転院するまでの経緯について説明しており,被告Cに原告らが主張するような説明義務違反はない。 7 争点(7)(原告らに発生した損害の有無及び額)について前記認定のとおり,損害賠 立岐阜病院に転院するまでの経緯について説明しており,被告Cに原告らが主張するような説明義務違反はない。 7 争点(7)(原告らに発生した損害の有無及び額)について前記認定のとおり,損害賠償責任が認められるのは,①平成8年2月22日午後1時から同月23日午後4時20分までの拘束が違法であること及び②同年4月11日午後7時50分ころに意識のない状態で発見された原告Aに対し,直ちにCT検査を行うか,遅くとも同日午後11時30分ころまでに硬膜下出血その他の頭蓋内出血の治療のための転院を決断すべきであったのに,これを怠ったことについてである。 ①については,違法な拘束によって原告Aに生じた精神的損害の慰謝料として,30万円が相当である。原告Aは,違法な隔離及び拘束が行われたことによる慰謝料を被告C及び被告病院に対して請求しており(請求1),①の拘束を決断した医師は被告Bであるから,原告Aの被告病院に対する慰謝料請求の一部を認容することとする。 ②については,当直医である被告Bによる転院の決断の遅れ等の過失があるものの,これと因果関係のある原告Aの損害を特定することができないから,診療行為が適切でなかったことによる慰謝料のみを認め,その額としては20万円が相当である。原告Aは,硬膜下血腫の傷害を負ったことに基づく損害賠償請求を被告C,被告B及び被告病院に対して請求している(請求2)から,このうち,被告B及び被告病院に対する慰謝料請求の一部を認容することとする。 8 以上の次第であるから,原告Aの請求は主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し,原告らのその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法第61条,第64条本文,第65条第1項本文,仮執行の宣言につき同法第259条をそれぞれ適用し を認容し,原告らのその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法第61条,第64条本文,第65条第1項本文,仮執行の宣言につき同法第259条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第2部裁判長裁判官古閑裕二裁判官久保田優奈裁判官宮﨑朋紀は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官古閑裕二

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