令和7(わ)8 暴行被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年10月28日 山口地方裁判所 岩国支部
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判決文本文3,992 文字)

主文 1 被告人を罰金10万円に処する。 2 その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。 3 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 本判決書において、被害者及び証人の氏名については、別紙(添付省略)記載のとおり、刑事訴訟規則196条の4及び196条の7に基づく呼称を用いる。 (罪となるべき事実)被告人は、令和6年11月8日午後3時15分頃から同日午後3時30分頃まで の間、山口県岩国市ab丁目c番d号C高等学校管理棟2階印刷室において、Aに対し、その臀部を着衣の上から両手で触る暴行を加えたものである。 (証拠の標目)省略(争点に対する判断) 1 暴行の故意について被告人は、手がAの臀部に当たったかどうかは覚えておらず、仮に当たったとしたら偶然当たったもので故意ではない旨述べ、弁護人は、被告人は印刷室内の段ボールの上に置かれたコピー用紙の包み紙が落ちそうになったために手を差し出した際に、偶然両手がAの臀部に当たった可能性があり、被告人には故意がな いから無罪である旨主張する。 ⑴ Aの供述の信用性についてア Aは、要旨、次のとおり証言している。 被告人に頼まれてBと二人で印刷室を掃除していると、被告人が掃除の指示をしに印刷室に入ってきた。印刷室の南東の角に置かれた作業台の前で東 の壁の方を向いて立っていたところ、被告人が作業台の端に置いてあったご み袋を取りにきた。被告人はごみ袋を取ってから後ろに下がるときに、Aの左右のお尻を両手の手のひらがお尻にぴったりくっつく形で下から持ち上げるようにして触ってきた。お尻を触られていた時間は一瞬であった。最初はBに触ら 被告人はごみ袋を取ってから後ろに下がるときに、Aの左右のお尻を両手の手のひらがお尻にぴったりくっつく形で下から持ち上げるようにして触ってきた。お尻を触られていた時間は一瞬であった。最初はBに触られたのかと思ったが、振り返ると被告人だったので驚いた。振り返って見たとき、被告人は、Aの右斜め後ろに立ち、少し前かがみの姿勢で、 身体はAの方を向き、Aの方に向けて手のひらを上にして両腕を伸ばしていた。 イ Aの上記供述には特段不自然不合理な点は見当たらず、当時の心情を交えて具体的かつ詳細に述べており、Aが、掃除が終わってから間もなく、母親と友人に対して「掃除中に教頭におしり触られた」、「両手で」などとLI NEでメッセージを送っていること(甲10)とも整合している。Aと被告人は、過去に1年間Aが被告人の授業を受けていたという程度の関係であり、Aにはあえて虚偽の被害申告をして被告人を陥れる動機も認められない。 ウ弁護人は、Aの供述によれば被告人はごみ袋を取った直後にAの臀部を触ったことになるが、少なくとも片手がふさがった動きづらい状態であえて触 りにいくのは不自然であると主張する。しかしながら、ごみ袋程度であればたとえそれを手に持っていたとしてもさほど動きが制約されるとは考え難いし、脇に抱えたり一旦床に置いたりすることもできたのであるから、弁護人の主張する点からAの供述が不自然であるなどということはできない。 また、弁護人は、Aは被告人の手が偶然当たったのを被害的にとらえて誇 張した供述をしている可能性があるなどと主張する。しかしながら、被告人の手がAの臀部に触れた態様についてA及びBの供述は一致しており、AがBと口裏合わせをしてまで、偶然被告人の手が臀部に触れたのを誇張して被害申告する動機があるなどとは到底 する。しかしながら、被告人の手がAの臀部に触れた態様についてA及びBの供述は一致しており、AがBと口裏合わせをしてまで、偶然被告人の手が臀部に触れたのを誇張して被害申告する動機があるなどとは到底いえない。 ⑵ Bの供述の信用性について ア Bは、要旨、次のとおり証言している。 被告人に頼まれてAと二人で印刷室を掃除していると、被告人が掃除の指示をしに印刷室に入ってきた。被告人は、作業台の前に作業台の方を向いて立っていたAのところに向かっていき、Aのお尻を触った。被告人は、少しひざを曲げた状態で、Aの右斜め後ろに立ち、Aのお尻に両手をぴったりくっつけるような状態で触っていた。また、このとき、Bは、印刷室の南の壁 際に置かれたごみ箱の前で、ごみ箱のある南側を向いて立ち、ごみ袋をまとめる作業をしていた。 イ Bの上記供述には特段不自然不合理な点は見当たらず、詳細かつ具体的である。Bの視力は両目とも0.1程度であったというが、BとA及び被告人との距離は1.3メートルほどしかなかったこと(甲7)からすれば、Bの 視力が目撃供述の信用性を損ねるとはいえない。また、Bの供述は、Aが母親と友人に対して被告人に臀部を触られたことを訴えるメッセージを送っていること(甲10)と整合し、前記⑴アのAの供述とも一致している。Bと被告人は、直接的なかかわりはほぼなく、過去に一度被告人が掃除の際のBの態度を注意したことがあるという程度であり、Bにはあえて虚偽の被害申 告をして被告人を陥れる動機は認められない。 ウ弁護人は、Bの供述についても供述の不自然さや虚偽供述の動機等を指摘するが、弁護人の指摘する点がBの供述の信用性を損ねるものではないことは前記⑴ウと同様であり、その他弁護人の主張する点を踏まえてもBの供 人は、Bの供述についても供述の不自然さや虚偽供述の動機等を指摘するが、弁護人の指摘する点がBの供述の信用性を損ねるものではないことは前記⑴ウと同様であり、その他弁護人の主張する点を踏まえてもBの供述の信用性に関する前記認定を左右しない。 ⑶ 被告人は、包み紙が落ちそうになったため手を差し出したことについても、Aの臀部に手が当たったことについても、明確な記憶があるわけではなく、当たったとすればわざとではなく偶然当たったとしか考えられないという推測を述べているにすぎないのであるから、被告人の供述はA及びBの供述の信用性を覆すものではない。 ⑷ 以上によれば、Aの前記⑴アの供述及びBの前記⑵アの供述はいずれも信用 できる。これらの供述によれば、被告人の両手の手のひらがAの臀部にぴったりとくっつくような形で触れたと認められるところ、被告人が供述するように偶然手が触れたのであれば、このような態様で触れることは考え難い。また、A及びBの供述によれば、被告人は、Aの臀部に手が触れた際、作業台の前で作業台の方を向いて立つAの右斜め後ろにAの方を向いて立っていたと認めら れるところ、こうしたA、被告人及び作業台の位置関係を考慮すると、仮に、被告人が、作業台の端に置かれていたごみ袋を取る際や、同じく作業台の端に置かれた段ボール箱の上に置かれた包み紙の束が落ちそうになったのを支えようとした際に手を差し出したとしたら、ごみ袋等が置かれた方向とは異なるAの身体の方向に手が伸びるのは不自然である。 以上からすれば、被告人は故意にAの臀部を両手で触ったものと認められる。 その他弁護人の主張する点を慎重に検討しても、上記認定を左右しない。 2 暴行罪の構成要件該当性ないし違法性について弁護人は、被告人はAの臀部を触ったとして の臀部を両手で触ったものと認められる。 その他弁護人の主張する点を慎重に検討しても、上記認定を左右しない。 2 暴行罪の構成要件該当性ないし違法性について弁護人は、被告人はAの臀部を触ったとしても一瞬触れた程度のことに過ぎず、不法な有形力の行使とはいえない、あるいは、違法性が認められないと主張する。 弁護人の上記主張は、被告人がAの臀部に触れた態様に関するA及びBの供述に信用性が認められないことを前提とするものと解されるところ、A及びBの供述が信用できることは前記1⑷のとおりである。そして、被告人がAの臀部に触れた態様は、被告人の両手の手のひらがAの臀部にぴったりとくっつくような形で触れたというものであるところ、こうした接触の態様、接触部位からすれば、 触れている時間が一瞬であったとしても、被告人の行為はAに相当の苦痛、不快感をもたらすものであったといえ、社会通念上許容されうる範囲を超えた不法な有形力の行使に当たり、違法性が認められるといえる。 したがって、弁護人の上記主張は採用できない。 (法令の適用) 罰条令和4年法律第68号441条1項により同年 法律第67号2条による改正前の刑法208条刑種の選択罰金刑労役場留置刑法18条訴訟費用の負担刑事訴訟法181条1項本文(量刑の理由) 被告人は、高校の教頭として生徒の指導教育に責任のある立場にありながら、生徒である被害者に対し本件犯行に及んだものであり、厳しい非難に値する。また、被告人は手がAの臀部に当たったかどうかは覚えておらず、仮に当たったとしたら偶然当たったもので故意ではないとの弁解に終始しており、真摯な反省は見られない。 他方で、本件の暴行の態様 また、被告人は手がAの臀部に当たったかどうかは覚えておらず、仮に当たったとしたら偶然当たったもので故意ではないとの弁解に終始しており、真摯な反省は見られない。 他方で、本件の暴行の態様は、着衣の上から被害者の臀部を触るというものであり、その時間もごく短時間に留まる。以上に加え、被告人には前科前歴がないことも考慮すると、主文のとおりの罰金刑を科すのが相当である。 (検察官久保田晶子、弁護人上住亮裕(私選)各出席)(求刑・罰金10万円) 令和7年10月28日山口地方裁判所岩国支部 裁判官佐野東吾

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