平成27(行コ)371 法人税更正処分等取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成28年3月24日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文6,310 文字)

- 1 -平成28年3月24日判決言渡平成27年(行コ)第371号法人税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成25年(行ウ)第822号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 処分行政庁が,平成24年5月30日付けで控訴人に対してした控訴人の平成18年4月1日から平成19年3月31日までの事業年度に係る法人税の更正処分のうち,所得金額56億2310万4758円,納付すべき税額16億0184万2300円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,控訴人が,タイ王国(以下「タイ」という。)に所在する控訴人の関連法人であるALimited(以下「A」という。)が平成19年3月に発行した新株(以下「本件株式」という。)を額面価額で引き受け,その払込金額を本件株式の取得価額に計上して平成18年4月1日から平成19年3月31日までの事業年度(以下「平成19年3月期」という。)の法人税の確定申告をしたところ,処分行政庁が,本件株式は法人税法施行令(平成19年政令第83号による改正前のもの。以下同じ。)119条1項4号に規定する有価証券(以下「有利発行有価証券」という。)に該当し,本件株式の取得価額はその取得のために通常要する価額となるから,当該価額と払込価額との差額は受贈益(以下「本件受贈益」という。)として益金の額に算入すべきであるなどとして法人税の増額更正処分(以下「本件増額 - 2 -更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件増額更正処分と併せて「本件増額更正処分等」という。)をしたのに対し, 処分(以下「本件増額 - 2 -更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件増額更正処分と併せて「本件増額更正処分等」という。)をしたのに対し,本件株式は有利発行有価証券に該当しないなどと主張して,本件増額更正処分等の一部の取消しを求めた事案である。 原審は,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が控訴を提起した。 2 関係法令等の定めの概要,前提事実,税額等に関する当事者の主張,争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は,第3の2で当審における控訴人の主張を摘示するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」1ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。 ただし,原判決3頁18行目冒頭から4頁3行目末尾までを次のとおり改める。 「4号有価証券と引換えに払込みをした金銭の額及び給付をした金銭以外の資産の価額の合計額がその取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額である場合における当該払込み又は当該給付(以下この号において「払込み等」という。)により取得をした有価証券(新たな払込み等をせずに取得をした有価証券を含むものとし,法人の株主等が当該株主等として金銭その他の資産の払込み等又は株式等無償交付により取得をした当該法人の株式又は新株予約権(当該法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合における当該株式又は新株予約権に限る。),第十九号に掲げる有価証券に該当するもの及び適格現物出資により取得をしたものを除く。) その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額」第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件増額更正処分等は適法なものであって,控訴人の請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判断する。その けるその有価証券の取得のために通常要する価額」第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件増額更正処分等は適法なものであって,控訴人の請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は,次項のとおり - 3 -当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほか,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。 ただし,原判決22頁14行目の「その所得の時における」を「その取得の時における」と,26頁末行の「上場されて」から27頁1行目の「照らすと」までを「上場されていないことに照らすと」と,31頁末行の「新株予約権」を「株式の割当を受ける権利」とそれぞれ改め,32頁3行目冒頭から17行目末尾までを削り,18行目の「新株予約権」から19行目の「かかる場合に」までを「株式の割当を受ける権利が与えられたが,一部の株主が引き受けなかった場合」と改め,23行目の「失権株主」から24行目の「格別として,」までを削り,33頁2行目の「行使した」を「引き受けた」と改める。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 控訴人は,法人税法施行令119条1項4号において「判定の時価」と「計算の時価」が定められているところ,「判定の時価」の算定にあたっては,上場されておらず,売買実例のない株式についても,法人税基本通達2-3-7の注2が挙げるような諸事情を勘案する必要があり,Aが発行する株式は,譲渡制限が付されているものの,本件増資以前に多くの売買実例が存在することから,処分行政庁は上記諸事情を勘案して「判定の時価」を算定すべきであったと主張する。 しかし,法人税基本通達2-3-7は,有利発行かどうかを判定する際の「その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価 上記諸事情を勘案して「判定の時価」を算定すべきであったと主張する。 しかし,法人税基本通達2-3-7は,有利発行かどうかを判定する際の「その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額」(法人税法施行令119条1項4号)につき,払込金額等を決定する日の現況における当該発行法人の株式の価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下回る価額をいうとした上,比較の対象となる上記株式の価額については,注2により,払込金額等の決定の日の価額に限定されず,払込金額等を決定するための基礎として相当と認められ - 4 -る価額であるとし,その例として決定日前1月間の平均株価を挙げているにすぎず,必ずしも控訴人主張のような事情の勘案を義務づけるものとは解されない。そして,証拠(甲23ないし27)及び弁論の全趣旨によれば,平成19年3月27日の本件増資の前にA株式の売買実例が5件あったことが認められるが,そのうち4件の譲渡価格はいずれも発行価額(額面価額)と同額の1株1000バーツという通常の売買価額とはいい難いものであり,他の1件の譲渡価格も不明というのであるし,これらのうち最も新しいものでも平成16年1月であって本件株式の取得よりも3年も前のものである。しかも,控訴人自身,本件増額更正処分等に対して不服を申し立てた審査請求書(甲2)において,控訴人以外の株主が保有するA株式はいわゆる名義株にすぎず,実質的には控訴人がAの一人株主であると主張しており,そのような状況下での株式売買価額は通常の売買におけるものとは異なる可能性が大きいといえる。そうすると,上記の売買実例における1株1000バーツという価額がその取得のために通常要する価額に近似するとは到底考え難く,これを勘案することは相当でないというべきである。 性が大きいといえる。そうすると,上記の売買実例における1株1000バーツという価額がその取得のために通常要する価額に近似するとは到底考え難く,これを勘案することは相当でないというべきである。 本件株式については,「払い込むべき金銭の額又は給付すべき金銭以外の資産の額を定める時」における取得のために通常要する価額と「取得の時」における取得のために通常要する価額とが相違する特段の事情があるともうかがわれないから,後者の額を法人税基本通達2-3-7の注2にいう「払込金額等を決定するための基礎として相当と認められる額」として,法人税基本通達2-3-9の(3)により,法人税基本通達4-1-5及び4-1-6に準じて算定するのが合理的である。 この点,控訴人は,法人税基本通達の解説書(甲21)において,「上場株式の場合であっても」,新株の発行価額を決定する日の価額のみによるのではなく,平均株価等によることも認める旨記載されていることを根 - 5 -拠に,A株式のような非上場株式の場合であれば,当然に,「判定の時価」の算定方法は弾力的なものでなければならないと主張するが,控訴人は,控訴人の指摘する売買実例を勘案して弾力的に算定する方法を具体的に明示しないのであるから,それが処分行政庁の採る算定方法よりも合理的であるということはできない。 したがって,本件株式の取得のために通常要する価額につき,処分行政庁の算定に誤りがあるとは認められない。 (2) 控訴人は,本件株式と他の株主が有するA株式とが「内容の異なる株式」(法人税基本通達2-3-8)であるから,本件増資は,「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」(法人税法施行令119条1項4号)として,有利発行には当たらないと主張する。 しかし,原判決説示のとおり,A株式について から,本件増資は,「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」(法人税法施行令119条1項4号)として,有利発行には当たらないと主張する。 しかし,原判決説示のとおり,A株式については,株主間契約によって差異が設けられてはいるが,その差異は,事実上のものであって,かつ,流動的なものであり,株式の内容となっていると解することはできないから,本件株式と他の株主が有するA株式とが「内容の異なる株式」であるとは認められない。そして,本件増資により,控訴人のみが本件株式を取得した結果,控訴人が有するA株式が発行済み株式の29パーセントから97パーセントを占める至った以上,「株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ」(法人税基本通達2-3-8)たとはいえず,本件増資が「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」に該当するとは認められない。 この点に関し,控訴人は,平成20年4月にA株式を純資産価額で買い取ったのは,タイにおいて業務を行う外部の専門家により指導を受けたことによるもので,当初は,この取引についても株主間契約等による事前の取決めどおりに取得価額によって行うことが予定されていたものであって,このように,本件増資の1年以上も後に行われ,外部の専門家の指導という異例の - 6 -事情によって行われた取引を根拠として,株主間契約等による制限が事実上の流動的なものであるということはできないと主張する。しかし,仮に上記の指導を受けた事実が認められるとしても,そのような事情によって株主間契約どおりの実行がされないのであれば,株主間契約の拘束力が強いものであったとは認め難く,やはり,同契約によって設けられた差異は,事実上のものにすぎず,かつ,流動的なものにすぎないといわざるを得 間契約どおりの実行がされないのであれば,株主間契約の拘束力が強いものであったとは認め難く,やはり,同契約によって設けられた差異は,事実上のものにすぎず,かつ,流動的なものにすぎないといわざるを得ない。 また,控訴人は,法人税基本通達2-3-8の注において,「株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」に該当するか否かは「株式の内容」のみならず「当該新株予約権無償割当ての状況などを総合的に勘案して判定する必要がある」とされていることから,A株式についても,本件増資前に行われた全ての売買取引が株主間契約等による事前の取決めに従って取得価額によって行われたことを重要な勘案事項とすべきであり,そうすると,本件増資が額面金額で行われても,Aの株主間で株式の含み益が移転することにはならず,控訴人が本件増資によって受贈益を得るということにもならないと主張する。しかし,法人税法施行令119条1項4号が「他の株主等に損害を及ぼすおそれ」がない場合に有利発行有価証券とならないとしたのは,時価と異なる有利な払込金額による新株発行であっても,株主が平等に新株を引き受ける場合には,持株比率が変わらないことから,新株発行による利益と旧株について生じる株価,利益配当率,議決権の比率等に係る損失とが実質的に相殺されるためであると解される。そして,本件増資によって控訴人のみが有利な発行価額で本件株式を取得すれば,控訴人が主張する過去の事情を勘案したとしても,控訴人は旧株に係る損失を被ることなく新株による利益のみを得て,反面,他の株主に株価の下落や会社支配力の低下が生じることに変わりはなく,本件増資が「株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」に該当するとは認められない。 - 7 -そして,上記株式が控訴人主張のとおり「内容の異なる株式」であ 生じることに変わりはなく,本件増資が「株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」に該当するとは認められない。 - 7 -そして,上記株式が控訴人主張のとおり「内容の異なる株式」であるとしても,後記(3)のとおり,控訴人と他の株主との間において,株式が平等に与えられることはなく,経済的な衡平も維持されることがなかったのであるから,いずれにせよ,本件増資は「株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」には当たらないというべきである。 以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。 (3) 控訴人は,仮に,本件株式が控訴人以外の株主が保有するAの株式と「内容の異なる株式」には当たらないとしても,本件増資においては,全ての株主に対し,その保有するA株式の株数に比例して新株を引き受ける権利が付与されたが,控訴人以外の株主がその権利を行使しなかったことにより,結果的に控訴人のみが新株を取得することになったにすぎず,他の株主等に損害を及ぼすおそれがあったと認められないから,法人税法施行令119条1項4号に規定された有利発行に対する課税の対象から除外されると主張する。 しかし,全ての株主に等しい割合で新株を引き受ける権利が付与されても,控訴人以外の株主にも株式が平等に与えられることはなかったのであり,経済的な衡平も維持されなかったものであるから,「株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」に該当すると認められず,控訴人の上記主張は採用することができない。 (4) 以上のほか,控訴人が指摘し,主張する種々の事項について勘案しても,原判決の認定判断を覆すに足りない。 第4 結論よって,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等 いて勘案しても,原判決の認定判断を覆すに足りない。 第4 結論 よって,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第24民事部 裁判長裁判官髙野伸 裁判官河本晶子 裁判官國分隆文

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