【DRY-RUN】主 文 原決定を取消す。 相手方(証人)Aの別紙(一)の一記載の、同Bの別紙(一)の二記載 の、同Cの別紙(一)の三記載の事項についての各証言拒絶はいずれも理由がな い。
主文原決定を取消す。 相手方(証人)Aの別紙(一)の一記載の、同Bの別紙(一)の二記載の、同Cの別紙(一)の三記載の事項についての各証言拒絶はいずれも理由がない。 手続費用は原審及び当審を通じ相手方(証人)らの負担とする。 理由一抗告代理人は、抗告の趣旨として主文第一、二項同旨の裁判を求める旨申し立て、その理由として別紙(二)記載のとおり述べた。 二本件申立に対する当裁判所の判断1 本件記録によれば、事実関係の経緯は次のとおりであることが認められる。 (一) 東京地方裁判所昭和五三年(ワ)第九〇二八号報酬金等請求事件(以下「本件訴訟」という。)において、原告たる抗告人らは、原審被告(以下「被告」という。)に対し訴訟委任に基づく未払報酬金等の支払を求めている。右請求の原因は、(1)被告は全国各地の裁判所に係属中のいわゆるスモン訴訟の当事者であるところ、抗告人Eは昭和五〇年三月に、同Bは同年七月に、直接もしくは抗告人Eは相手方(証人)C(以下、相手方(証人)を「相手方」と表示する。)を、抗告人Bは相手方Dをそれぞれ代理人として、被告との間で右スモン訴訟について被告の代理人として弁護活動を行うことを内容とする訴訟委任契約を締結した、(2)右契約において、被告は抗告人らに対し抗告人らの弁護活動一時間あたり一万二〇〇〇円の報酬及び成功報酬を支払うことを約した、(3)よつて、抗告人らは被告に対し、未払報酬の支払及び抗告人らが昭和五三年七月二七日に被告から一方的に右委任契約を解除されたことによつて蒙つた得べかりし利益相当の損害の賠償を求める、というものである。 (二) これに対して、被告は、抗告人らに対してスモン訴訟の弁護活動を委任したことはなく、単に同訴訟について代理権を たことによつて蒙つた得べかりし利益相当の損害の賠償を求める、というものである。 (二) これに対して、被告は、抗告人らに対してスモン訴訟の弁護活動を委任したことはなく、単に同訴訟について代理権を授与したにすぎず被告が抗告人らに報酬を支払う旨の契約を締結したことはない。被告は右スモン訴訟については相手方A、同C、同Dらの弁護士に委任し、同弁護士らの判断において、同弁護士らが抗告人らに対して右訴訟について弁護活動を委任したものであり、被告は右弁護士らに対してその約定に従つた報酬を支払済である、と主張した。 (三) 被告の右主張に対して抗告人らは、スモン訴訟については抗告人らと被告との間で訴訟委任契約が締結されたものであり、被告において相手方らに報酬を支払つたとしても、抗告人らへの報酬の支払に関しては相手方らは被告の履行補助者にすぎないから、抗告人らに対する有効な弁済とはいえないものであると主張した。 (四) 抗告人らは、その主張事実を立証するため、昭和五三年一二月九日被告の所持する別紙(三)記載の文書について文書提出命令の申立をし、東京地方裁判所は別紙(三)の三記載の文書については昭和五四年二月二三日に、同一記載の文書については昭和五五年一一月一〇日にそれぞれ被告に対してその提出を命ずる旨の決定をした(なお、別紙(三)の二記載の文書については抗告人らにおいて申立を取下げた。)。しかしながら、被告は右別紙(三)の三記載の文書については提出を拒絶し、同一記載の文書については存在しないとして、今日まで提出していない。 (五) 抗告人らはさらに自己の主張事実を立証するため相手方らを証人として尋問することを申請し、相手方Aについては昭和五五年一月一八日、同年七月七日、昭和五六年二月九日、同年三月三〇日に、同Cについては昭和五七年四月一二日に の主張事実を立証するため相手方らを証人として尋問することを申請し、相手方Aについては昭和五五年一月一八日、同年七月七日、昭和五六年二月九日、同年三月三〇日に、同Cについては昭和五七年四月一二日に、同Dについては同年七月五日にそれぞれ取調べが行われた。しかしながら相手方らはいずれも別紙(一)記載の各期日に民事訴訟法二八一条一項二、三号に該当するとして同記載の各事項について証言することを拒絶し、これにつき原裁判所は冒頭のとおり決定したものである。 以上のとおりであることを認めることができる。 <要旨第一>2 相手方らは、本件証言拒絶にかかる事実は抗告人らの要証事実と関連性がなく、抗告人らの主張事実の</要旨第一>立証として必要性がないと主張するので、先ずこの点について判断するに、尋問の内容が関連性・必要性を有するか否かは、受訴裁判所(第一次的には裁判長)が訴訟資料全体の総合的評価に基づいて判断すべき事柄であり(民事訴訟法二九四条四項、二九五条)、これに対して独立の不服申立はできないものとされている。このような訴訟手続の構造からみると、証言拒絶権の有無に関する裁判について法が即時抗告を許している趣旨は、抗告審裁判所が尋問内容の関連性・必要性の点をも含めて審査することを予定するものではなく、尋問そのものが相当であり必要であることを所与の前提として、端的に民事訴訟法二八〇条、二八一条所定の要件の存否のみを審査させるにあるものと解される。したがつて、相手方の前記主張は、それ自体証言拒絶の正当性を根拠づけるべき性質のものとはいい難い。 <要旨第二>3 そこで、本件証言拒絶事由が民事訴訟法二八一条一項二号に当るか否かについて判断する。</要旨第二>(一) 民事訴訟法二八一条一項二号は、弁護士等一定の職業にある者は、その職務の性質上他人の秘密を そこで、本件証言拒絶事由が民事訴訟法二八一条一項二号に当るか否かについて判断する。</要旨第二>(一) 民事訴訟法二八一条一項二号は、弁護士等一定の職業にある者は、その職務の性質上他人の秘密を知る機会が多いところから、かかる他人の秘密が不当に暴露されることがないようこれを保護するとともに、同号掲記の者とその相手方との信頼関係そのものをも保護する趣旨の規定であると解される。 (二) そして、右のような見地からするならば、同号の「職務上知リタル事実」とは、同号に定める者がその職務を遂行するについて知りえた事実を広く包含し、本件証言拒絶にかかる事実のような職務遂行の機縁となつた契約内容などもこれに該当すると解するのが相当である。 (三) 一方、右規定の「黙秘スヘキモノ」とは、一般に知られておらず、かつ、それが公表されれば、名誉、信用その他につき社会的、経済的に不利な影響を受ける事項であつて、本人が特に秘匿することを欲するとともに、他人が同じ立場に立つた場合においても同じように秘匿しておきたいと考えるような事実を指すものというべきである。 しかして、本件記録によれば、被告代表者は、同代表者尋問において、被告は被告が直接委任した弁護士に対して着手金、時間制報酬、成功報酬を支払つた旨供述したが、その具体的金額、その算出料率、報酬額についての約定の内容等については供述を拒否していることが認められ、相手方らが証言を拒否している事項は、被告代表者が供述を拒否した事項と同一のものであり、同代表者の右のような態度からして被告としては秘匿しておきたい内容のものであることは容易に推認できるところである。 しかしながら、民事訴訟法二八一条一項二号の「黙秘スヘキモノ」に該当するというためには、前記のように、単に本人がそれを秘匿することを望むばかりでなく、 であることは容易に推認できるところである。 しかしながら、民事訴訟法二八一条一項二号の「黙秘スヘキモノ」に該当するというためには、前記のように、単に本人がそれを秘匿することを望むばかりでなく、客観的に見てこれを秘匿することについて保護に値するような社会的、経済的利益が認められることを要するところ、本件の相手方による証言拒絶にかかる事実は、客観的に見て、これを秘匿することにつき依頼者たる被告に保護に値する程の社会的、経済的利益が存するような性質の事実であるとはいい難い。この点について相手方Aは、原審で提出した「証言拒絶理由疎明書」(原決定添付別紙(二))において、本件証言拒絶が認められなければ、現在和解手続が進められているスモン訴訟に影響を及ぼし、ひいては被告の利益を害すると主張する。スモン訴訟が現在なお全国の裁判所に係属し和解手続が進められていることは公知の事実であるが、そもそも相手方Aの右主張自体現段階では具体性の乏しい単なる危倶の域を出ないものである。 また、仮に弁護士報酬額のいかんがスモン訴訟の和解で問題にされるおそれが相当程度にあるとしても、元来、弁護士報酬の額のように広い意味での市場原理に服し、かつ、右訴訟の追行の前提として決定されている事実をどの程度右和解において問題にしうるかは、極めて疑問であつて、単に右訴訟の原告側からこのことを和解交渉の材料として持ち出され、あるいは宣伝材料として利用されることが懸念されるからといつて、右報酬額等の秘匿につき被告に保護されるべき客観的利益があるとはいえない。 その他本件記録を精査しても、証言拒絶にかかる事実が明らかにされたからといつて、被告の名誉、信用その他につき社会的、経済的に不利な影響を及ぼすおそれがあると認めることはできない。 (四) 以上のとおりであるから、本件証言拒絶 証言拒絶にかかる事実が明らかにされたからといつて、被告の名誉、信用その他につき社会的、経済的に不利な影響を及ぼすおそれがあると認めることはできない。 (四) 以上のとおりであるから、本件証言拒絶は民事訴訟法二八一条一項二号に該当しないというべきである。 4 次に、本件証言拒絶が民事訴訟法二八一条一項三号に該当するか否かについて(この点は原審において相手方らが主張したが、原審は同項二号の事由について理由があると判断したため、当抗告の理由とはされていない。しかし、二号の事由について理由がないとされる以上証言拒絶を理由ないとするためにはこの点について判断する必要がある。)判断する。民事訴訟法二八一条一項三号は、技術または職業の秘密に関する事項についてその秘密が公開されてしまうと、その技術の存在価値が失われ、またはその職業を維持することが困難になるので、これを防止し、その技術または職業を保護する趣旨と解されるところ、本件証言拒絶にかかる事実を公表されたからといつて、弁護士である相手方らの職業を維持することが困難になると認めることはできないというべきである。 してみると、本件証言拒絶は民事訴訟法二八一条一項三号に該当しないというべきである。 三以上説示するとおりであるから、相手方らの証言拒絶は理由がないといわざるをえず、これと結論を異にする原決定は失当として取消しを免れない。よつて、民事訴訟法四一四条、三八六条に従い、手続費用の負担につき同法九六条、八九条、九三条を適用して主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官鈴木重信裁判官加茂紀久男裁判官片桐春一)別紙 (一)<記載内容は末尾1添付><記載内容は末尾1添付><記載内容は末尾1添付>別紙 (二)<記載内容は末尾2添付><記載内容は末尾2添付><記載内容は末尾2 裁判官片桐春一)別紙 (一)<記載内容は末尾1添付><記載内容は末尾1添付><記載内容は末尾1添付>別紙 (二)<記載内容は末尾2添付><記載内容は末尾2添付><記載内容は末尾2添付><記載内容は末尾2添付><記載内容は末尾2添付><記載内容は末尾2添付>別紙 (三)<記載内容は末尾3添付><記載内容は末尾3添付>
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