平成28(行ウ)395 法人税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年3月11日 東京地方裁判所
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判決文本文30,080 文字)

令和2年3月11日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成28年(行ウ)第395号法人税更正処分等取消請求事件口頭弁論終結日令和元年10月9日判決主文 1 東税務署長が原告に対し平成26年9月11日付けでした原告の平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分(ただし,平成27年1月27日付け更正処分による減額後のもの)のうち,所得金額がマイナス381億1413万8105円を超え,翌期へ繰り越す欠損金額が381億1413万8105円を下回り,納付すべき税額がマイナス2億0 498万7856円を超える部分及び同法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,同日付け変更決定処分による減額後のもの)のうち,過少申告加算税の額が19万1000円を超える部分をいずれも取り消す。 2 東税務署長が原告に対し平成26年9月11日付けでした原告の平成24年4月1日から平成25年3月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更 正処分(ただし,平成27年1月27日付け更正処分による減額後のもの)のうち,納付すべき税額がマイナス71万7845円を超える部分及び同復興特別法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,同日付け変更決定処分による減額後のもの)をいずれも取り消す。 3 東税務署長が原告に対し平成27年1月27日付けでした原告の平成25年 4月1日から平成26年3月31日までの事業年度の法人税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 4 東税務署長が原告に対し平成27年1月27日付けでした原告の平成25年4月1日から平成26年3月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取 4 東税務署長が原告に対し平成27年1月27日付けでした原告の平成25年4月1日から平成26年3月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 5 原告のその余の請求を棄却する。 6 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 東税務署長が原告に対し平成26年9月11日付けでした原告の平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分(ただ し,平成27年1月27日付け更正処分による減額後のもの)のうち,所得金額がマイナス381億1413万8105円を超え,翌期へ繰り越す欠損金額が381億1413万8105円を下回り,納付すべき税額がマイナス2億0498万7856円を超える部分及び同法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,同日付け変更決定処分による減額後のもの)をいずれも取り 消す。 2 主文第2項から第4項までと同旨第2 事案の概要(以下,別紙1記載の略称も用いる。)内国法人である原告は,米国法人との間で,医薬品用化合物の共同開発等を行うジョイントベンチャー(以下「本件JV」という。)を形成する契約を締 結し,同契約に基づき,英国領ケイマン諸島(以下「ケイマン」という。)において,特例有限責任パートナーシップであるCILPを設立し,そのパートナーシップ持分を保有していたが,その後の本件JVの枠組みの変更に際し,平成24年10月31日,上記CILPのパートナーシップ持分全部を原告の英国完全子会社に対し,現物出資(以下「本件現物出資」という。)により移 転した。 原告は,本件現物出資が法人税法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下同じ。)2条12号 を原告の英国完全子会社に対し,現物出資(以下「本件現物出資」という。)により移 転した。 原告は,本件現物出資が法人税法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下同じ。)2条12号の14に規定する適格現物出資に該当し,同法62条の4第1項の規定によりその譲渡益の計上が繰り延べられるとして,平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度及び課税事業年度 (以下「平成25年3月期」という。)の法人税及び復興特別法人税(以下 「法人税等」という。)につき確定申告をし,同確定申告に係る繰越欠損金の額を前提として,平成25年4月1日から平成26年3月31日までの事業年度及び課税事業年度(以下「平成26年3月期」という。)の法人税等につき確定申告をしたところ,東税務署長から本件現物出資が適格現物出資に該当しないことなどを理由に平成25年3月期の法人税等につき各更正処分及び過少 申告加算税の賦課決定処分を受けたため,平成26年3月期の法人税等について,上記各更正処分による繰越欠損金の額の減少等を前提に修正申告をした上で更正の請求をしたが,東税務署長から更正をすべき理由がない旨の各通知処分を受けた。 本件は,原告が,本件現物出資は,法人税法施行令(平成28年政令第14 6号による改正前のもの。以下「施行令」という。)4条の3第9項に規定する「国内にある事業所に属する資産」を外国法人に移転するものではなく,適格現物出資に該当すると主張して,上記各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,その後の更正処分及び変更決定処分による減額後のもの。 以下「本件各更正処分等」という。)並びに上記各通知処分(以下「本件各通 知処分」といい,本件各更正処分等と併せて「本件各処分」という。)の各取消し(各更正 び変更決定処分による減額後のもの。 以下「本件各更正処分等」という。)並びに上記各通知処分(以下「本件各通 知処分」といい,本件各更正処分等と併せて「本件各処分」という。)の各取消し(各更正処分については,本件現物出資が適格現物出資に該当するとの原告の主張に反する部分の取消し)を求める事案である。 1 関係法令等の定め法人税法の定め ア法人税法2条12号の14は,適格現物出資とは,同号イ~ハのいずれかに該当する現物出資(外国法人に国内にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債の移転を行うもの及び外国法人が内国法人に国外にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債の移転を行うもの等を除き,現物出資法人に被現物出資法人の株式のみが交付されるものに限 る。)をいう旨を定め,同号イにおいて,その現物出資に係る現物出資法 人と被現物出資法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係その他の政令で定める関係がある場合の当該現物出資を掲げる。 イ法人税法62条の4第1項は,内国法人が適格現物出資により被現物出資法人にその有する資産の移転をし,又はこれと併せてその有する負債の移転をしたときは,当該被現物出資法人に当該移転をした資産及び負債の 当該適格現物出資の直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして,当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する旨を定める。 施行令の定めア施行令4条の3第9項は,法人税法2条12号の14に規定する国内にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債は,国内にある不動産, 国内にある不動産の上に存する権利,鉱業法の規定による鉱業権及び採石法の規定による採石権その他国内にある事業所に属する資産(外国法人の発行済株式等の総数の100分の25以上の数 ある不動産, 国内にある不動産の上に存する権利,鉱業法の規定による鉱業権及び採石法の規定による採石権その他国内にある事業所に属する資産(外国法人の発行済株式等の総数の100分の25以上の数の株式を有する場合におけるその外国法人の株式を除く。なお,この「株式」には「出資」が含まれる〔施行令4条の3第4項5号〕。)又は負債とし,法人税法2条12号 の14に規定する国外にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債は,国外にある事業所に属する資産(国内にある不動産,国内にある不動産の上に存する権利,鉱業法の規定による鉱業権及び採石法の規定による採石権を除く。)又は負債とする旨を定める。 イ施行令4条の3第10項1号は,法人税法2条12号の14イに規定す る政令で定める関係として,現物出資前に当該現物出資に係る現物出資法人と被現物出資法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係があり,かつ,当該現物出資後に当該現物出資法人と被現物出資法人との間に当該完全支配関係が継続することが見込まれている場合における当該現物出資法人と被現物出資法人との間の関係を掲げる。 法人税基本通達(平成29年課法2-17による改正前のもの。以下同 じ。)の定め法人税基本通達1-4-12は,施行令4条の3第9項に規定する「国内にある事業所に属する資産又は負債」に該当するかどうかは,原則として,当該資産又は負債が国内にある事業所又は国外にある事業所のいずれの事業所の帳簿に記帳されているかにより判定するものとし,ただし,国外にある 事業所の帳簿に記帳されている資産又は負債であっても,実質的に国内にある事業所において経常的な管理が行われていたと認められる資産又は負債については,国内にある事業所に属する資産又は負債に該当する 事業所の帳簿に記帳されている資産又は負債であっても,実質的に国内にある事業所において経常的な管理が行われていたと認められる資産又は負債については,国内にある事業所に属する資産又は負債に該当することになるのであるから留意する旨を定める。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の各証拠等により認めることがで きる事実) CILPについてアケイマンにおける特例有限責任パートナーシップ法(ExemptedLimitedPartnershipLaw。以下「ELPS法」という。)は,次のように定めている(2012年改正後のもの。乙18の1・2)。 特例有限責任パートナーシップは,1人以上の無限責任パートナー(generalpartner。以下「GP」という。)と1人以上の有限責任パートナー(limitedpartner。以下「LP」という。)で構成され,GPは,特例有限責任パートナーシップの資産が不十分である場合には,その特例有限責任パートナーシップの全ての負債又は債務について責任 を負い,LPは,パートナーシップ契約又は本法で定めるほかは,特例有限責任パートナーシップの負債又は債務について責任を負わない(4 特例有限責任パートナーシップの財産は,GPが1人の場合はそのGPが,複数である場合はその複数のGPらが共同で,パートナーシップ 契約の条件に従い,特例有限責任パートナーシップの資産として委託に より LPは,特例有限責任パートナーシップの事業運営に参加してはならず,全ての書簡,契約書等の文書は,特例有限責任パートナーシップを代表してGP又はGPの代理人が作成する。 LPが特例有限責任パートナーシップの事業に関してGPと協議し, 特例有限責任パートナーシッ 書簡,契約書等の文書は,特例有限責任パートナーシップを代表してGP又はGPの代理人が作成する。 LPが特例有限責任パートナーシップの事業に関してGPと協議し, 特例有限責任パートナーシップの会計や業務について調査し又は報告を受け,特例有限責任パートナーシップの解散や資産の取得等に関して議決権を行使することなどは,特例有限責任パートナーシップの事業運営への参加に当たらない。 本法において「パートナーシップ持分」とは,特例有限責任パートナ ーシップのパートナーが,パートナーシップ契約又は本法に基づき保有し又は服する,利益,資本及び議決その他の権利,恩恵又は義務に関する持分をいう(2項)。 パートナーシップ契約の条件に従い,LPのパートナーシップ持分の全部又は一部が譲渡されたときは,譲受人は,その譲渡の範囲内で,当 該譲渡に係るパートナーシップ持分又はその一部に関し,パートナーシップ契約及び本法に従い,譲渡人の権利を有し及び譲渡人の義務に服するLPとなる。 上記を前提として,LPは,自己のパートナーシップ持分の全部又は一部を譲渡抵当に入れることができる⒝)。 イ CILPは,ELPS法上の特例有限責任パートナーシップとして設立されたものであり,CILPの設立及び各パートナーの権利義務等に関する有限責任パートナーシップ契約(以下「本件パートナーシップ契約」という。)では,次のように定められていた(乙6の1~3)。 CILPは,法人格を持った主体ではなく,CILPの財産は,GP が,本契約の条件に従い,CILPの資産として委託により保有し,又 は保有しているとみなされる(条項2.5⒜⒝)。 GPは,CILPのいかなる負債及び義務に対しても連帯責任を負い,L ,本契約の条件に従い,CILPの資産として委託により保有し,又 は保有しているとみなされる(条項2.5⒜⒝)。 GPは,CILPのいかなる負債及び義務に対しても連帯責任を負い,LPは,本契約及びELPS法に規定されている場合を除き,CILPのいかなる負債及び義務に対しても責任を負わない(条項2.5⒞⒟)。 CILPの運営及び管理の権限は,GPに独占的に与えられ,LP は,CILPの運営及び管理に介入してはならず,また,いかなる事項に関連してもCILPのために活動する権利又は権限を有しないが,各LPは,CILPの帳簿及び記録を検査及び調査する権利並びに各GPに対してCILPの活動について質問する権利を有する(条項4.1⒜,4.4)。 各パートナーは,契約日に,パートナーシップ持分の割合に比例した所定の金額の現金出資をしなければならず,また,各特定化合物に対応するマイルストーン事象の正常な発生において,特定化合物に関して,CILPへの更なる資本拠出を行わなければならない(条項5.1⒜⒝)。 CILPの収益,利益,損失及び控除の全ての科目は,各自のパートナーシップ持分の割合に比例して各パートナーに配賦されるが,本契約の定め又はその他のGPの決定によるのでない限り,各パートナーは,CILPからの分配を受けること,CILPの資本勘定から金額の払戻しを受けることはできない(条項6.2)。 パートナーは,次のいずれかの同意がなければ,パートナーシップ持分を,直接間接を問わず,売却,質入れ,担保権の設定その他の移転に供してはならず,これに従わない移転等は,無効である(条項7.2⒜⒝)。 ⅰ GPのパートナーシップ持分,LPのパートナーシップ持分又はそ の他の保有持分の全 の設定その他の移転に供してはならず,これに従わない移転等は,無効である(条項7.2⒜⒝)。 ⅰ GPのパートナーシップ持分,LPのパートナーシップ持分又はそ の他の保有持分の全部又は一部を第三者に移転等する場合他のパー トナーの書面による事前同意(この同意は当該他のパートナーの単独かつ絶対的な自由裁量により留保することができる。)ⅱ GPのパートナーシップ持分を関連者に移転等する場合他のパートナーの書面による事前同意(この同意は合理的な理由なく留保することができない。) ⅲ LPのパートナーシップ持分を関連者に移転等する場合その持分の移転等を行うLPの関連者であるGPの同意(この同意は当該GPの単独かつ絶対的な自由裁量により留保することができる。)及び他のパートナーの同意(この同意は合理的な理由なく留保することができない。) ウこれらの定めによれば,CILPは,その債務に対して無限責任を負う1人以上の無限責任パートナー(GP)とその債務に対して原則として出資を限度とする有限責任しか負わない1人以上の有限責任パートナー(LP)とで構成される,我が国の組合に類似した法人格のない事業体であり,法人税法上の法人には該当しないものである。 本件JVの概要ア本件JV設立当初医薬品の製造,販売等を業とする株式会社である原告は,平成13年,原告の米国所在の完全子会社であるSGHと共に,ケイマンにおいて,CILPを設立し,そのパートナーシップ持分の割合をLPである原告 が99.98%,GPであるSGHが0.02%と定めた。 CILPは,同年,米国において,その全額を出資して,米国デラウェア州法上のLLC(有限責任会社)であるUSOpCoを設立し 原告 が99.98%,GPであるSGHが0.02%と定めた。 CILPは,同年,米国において,その全額を出資して,米国デラウェア州法上のLLC(有限責任会社)であるUSOpCoを設立した。 原告は,平成13年9月27日,英国所在の製薬会社であるGSK親会社の完全子会社である米国所在のGSKとの間で,CILPを基盤に 医薬品用化合物の共同開発等を行うジョイントベンチャー契約(甲7。 以下「本件JV契約」という。)を締結して,本件JVを組成し,同年10月19日,SGH,GSK及びGSKの米国所在の完全子会社であるGSK子会社との間で,本件パートナーシップ契約を締結した。 本件JV契約及び本件パートナーシップ契約に基づき,CILPのパートナーシップ持分は,LPである原告とGSKが49.99%ずつを, GPであるSGHとGSK子会社が0.01%ずつを,それぞれ保有することとなった。平成13年10月19日時点における出資関係等の概要は,別紙2-1のとおりである。 本件JV契約では,USOpCoが,JVテリトリー(米国,英国,フランス,ドイツ,イタリア,スペイン)内における特定の化合物の開 発,当該化合物の商業化活動及び製造・供給活動等を行うものとされ,平成13年10月19日にCILP,USOpCo,原告,SGH,GSK及びGSK子会社の間で締結された開発・製造・販売・分配契約(乙9の1~3。以下「本件運営契約」という。)において,USOpCoの管理,運営等の詳細が定められた。 原告は,平成13年10月19日,本件JV契約に基づき,CILPとの間で,CILPに対し,原告又はその関係会社が保有する知的財産(本件JV契約が定めるところの特許,ノウハウ〔一切の薬理学的,技術的又は科学的な情報,デ 0月19日,本件JV契約に基づき,CILPとの間で,CILPに対し,原告又はその関係会社が保有する知的財産(本件JV契約が定めるところの特許,ノウハウ〔一切の薬理学的,技術的又は科学的な情報,データ,ソフトウェア,工程,方法,手法,アルゴリズム,化学式,システム,デザイン,発見,発明その他類似の財 産的情報又は秘密情報〕,商標,著作権,秘密情報の使用開示制限権等)の使用及び実施を許諾する旨の契約を締結し,GSKも,同日,CILPとの間で同様の契約を締結した。 原告及びGSKは,平成14年8月22日,インテグレース阻害剤(抗HIV薬)に係る化合物の開発に関する共同研究を行う旨の契約を 締結して,当該共同研究を開始し,その結果,平成18年頃,インテグ レース阻害剤向けの医薬品化合物として有望な3種類の化合物について,動物実験等により,その有効性を確認した。 原告及びGSKは,平成19年7月,上記化合物について,本件JVの枠組みの中でその後の臨床試験等の開発活動を進めていくことを決定した。 イ ViiV親会社設立後GSK親会社は,米国所在のファイザー社(PfizerInc.)と共に英国に製薬会社であるViiV親会社を設立し,GSK及びGSK子会社は,平成21年11月3日,それぞれが保有するCILPの全てのパートナーシップ持分(GSK49.99%,GSK子会社0.01%)及び本件J Vにおける化合物の開発活動に関連する全ての契約(本件JV契約,本件運営契約等)における契約上の地位を,ViiV親会社の米国所在の完全子会社であるViiV及びその米国所在の完全子会社であるViiV子会社に,それぞれ譲渡した。 その結果,LPであるViiVが49.99%,GPであるViiV子 会社が0.01 米国所在の完全子会社であるViiV及びその米国所在の完全子会社であるViiV子会社に,それぞれ譲渡した。 その結果,LPであるViiVが49.99%,GPであるViiV子 会社が0.01%のCILPのパートナーシップ持分を,それぞれ保有することとなった。平成21年11月3日時点における出資関係等の概要は,別紙2-2のとおりである。 ⑶ 本件現物出資の実行等ア原告側は,平成24年10月31日,本件JVの枠組みを変更するため に,次のとおり,契約を締結し,取引を実行した。 まず,原告が,平成24年2月に設立していた原告の英国所在の完全子会社であるSLとの間で,本件現物出資に係る契約(以下「本件現物出資契約」という。)を締結し,同契約に基づいて,原告の保有するCILPのパートナーシップ持分(49.99%。以下「本件CILP持 分」という。)をSLに給付し,その対価としてSLの新株の割当及び 発行を受け(本件現物出資),SGHも,その保有するCILPのパートナーシップ持分(0.01%)をSLに有償譲渡した。この時点における出資関係等の概要は,別紙2-3のとおりである。 次いで,SLが,上記のとおり取得したCILPのパートナーシップ持分の全てを,ViiV親会社に対して現物出資し,ViiV親会社の 発行済株式の10%を取得するとともに,ViiV親会社の取締役1名の指名権を得た。この時点における出資関係等の概要は,別紙2-4のとおりである。 イ本件現物出資契約では,本件CILP持分を「本件リミテッドパートナーシップ持分」と定義した上で(条項1.1),原告は一切の負担を伴わ ない「本件リミテッドパートナーシップ持分」をこれに付随する全ての権利と共に出資し又は出資させ,SLはこの出資を受け入れ ナーシップ持分」と定義した上で(条項1.1),原告は一切の負担を伴わ ない「本件リミテッドパートナーシップ持分」をこれに付随する全ての権利と共に出資し又は出資させ,SLはこの出資を受け入れるものとし(条項2.1),その出資の対価は,SLから原告への普通新株の割当及び発行とする(条項3.1)旨が定められていた(乙16の1~3)。 本件現物出資に係る原告の照会 原告は,平成24年10月15日,大阪国税局調査第一部調査総括課長宛ての同日付け「ケイマンパートナーシップ再編に関する税務上の取扱いについて」と題する書面(甲35。以下「本件照会文書」という。)を提出し,本件現物出資が適格現物出資に該当するか否かについての照会(以下「本件照会」という。)をした。 大阪国税局調査第一部調査総括課長及び同課課長補佐(以下「本件照会担当者ら」という。)は,同年11月19日,原告に対し,本件照会に対する回答として,本件現物出資は適格現物出資に該当する旨を口頭で伝えた(以下,この回答を「本件回答」という。)。 本件各処分等の経緯 ア原告は,平成25年6月28日,平成25年3月期の法人税等につき, 本件現物出資が適格現物出資に該当し,その譲渡益の計上が繰り延べられるとして,別紙3-1及び4-1の各「確定申告」欄記載のとおり,確定申告をした(甲1の1,2の1)。 イ原告は,平成26年6月30日,平成26年3月期の法人税等につき,上記アの確定申告に係る繰越欠損金の額を前提として,別紙3-2及び4 -2の各「確定申告」欄記載のとおり,確定申告をした。 ウ東税務署長は,平成26年9月11日付けで,原告に対し,平成25年3月期の法人税等につき,本件現物出資が外国法人に「国内にある事業所に属する資産 各「確定申告」欄記載のとおり,確定申告をした。 ウ東税務署長は,平成26年9月11日付けで,原告に対し,平成25年3月期の法人税等につき,本件現物出資が外国法人に「国内にある事業所に属する資産」の移転を行うものであり適格現物出資に該当しないなどとして,別紙3-1及び4-1の各「更正処分等」欄記載のとおり,各更正 処分及び過少申告加算税の賦課決定処分等をした(甲1の1,2の1)。 エ原告は,上記ウの各更正処分を受けて,平成26年3月期の法人税等につき,平成26年10月10日,繰越欠損金の額の減少等を前提に,別紙3-2及び4-2の各「修正申告」欄記載のとおり,修正申告をした上で,同月31日,本件現物出資が適格現物出資に該当するとして,同各別紙の 各「更正の請求」欄記載のとおり,更正の請求をしたが,東税務署長は,平成27年1月27日付けで,原告に対し,更正をすべき理由がない旨の各通知処分をした(甲3,4)。 オ東税務署長は,原告の更正の請求に基づいて,平成27年1月27日付けで,原告に対し,平成25年3月期の法人税等につき,別紙3-1及び 4-1の各「更正処分等(更正の請求に基づくもの)」欄記載のとおり,各更正処分及び過少申告加算税の変更決定処分等をした。 本件訴訟に至る経緯ア原告は,平成26年11月10日,大阪国税局長に対し,の各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分につき,異議申立てをしたが, 大阪国税局長は,平成27年2月9日付けで,同異議申立てを棄却する旨 の決定をした。 イ原告は,平成27年3月9日,国税不服審判所長に対し,前記各処分による減額後の同ウの各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(本件各更正処分等)及び同エの各通知処分(本件各通知処分)につき,審査 告は,平成27年3月9日,国税不服審判所長に対し,前記各処分による減額後の同ウの各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(本件各更正処分等)及び同エの各通知処分(本件各通知処分)につき,審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成28年2月23日付けで, 同審査請求を棄却する旨の裁決をした。 ウ原告は,平成28年9月2日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点本件各処分の適法性に関する争点は,次のとおりである。 本件現物出資が適格現物出資に該当するか否か(本件現物出資の対象資産 が施行令4条の3第9項に規定する「国内にある事業所に属する資産」に該当するか否か))本件各処分が信義則に反するか否か)国税通則法65条4項の「正当な理由」があるか否か(争点) 4 争点に関する当事者の主張の概要 本件現物出資が適格現物出資に該当するか否か)について(被告の主張)ア本件現物出資の対象資産 法人税法及び施行令における「現物出資」の対象となる資産は,会社法における「現物出資」の対象となる資産と同様に,金銭以外の財産で, 財産的価値があり,譲渡可能なものを広く含むと解される(借用概念論における統一説)。 そして,実際に行われた現物出資の対象資産が何であるかについては,契約当事者が合意し,実行した私法上の法律行為及びそれによって生じた法律関係によって判断されるべきである。 ELPS法上,LPのパートナーシップ持分が譲渡された場合,その 譲受人は,当該持分に関して譲渡人の権利義務を承継したLPになるとされているほか,同持分が譲渡抵当の対象となることが予定されているから,当該持分自体を財産的価値がある譲渡可能な資産として捉えることが可能で ,当該持分に関して譲渡人の権利義務を承継したLPになるとされているほか,同持分が譲渡抵当の対象となることが予定されているから,当該持分自体を財産的価値がある譲渡可能な資産として捉えることが可能である。そして,本件現物出資契約の内容からすれば,当事者が現物出資の対象資産としたのは,原告が保有していたLPのパートナ ーシップ持分である本件CILP持分自体であることは明らかである。 以上のとおり,本件現物出資の対象資産は,本件CILP持分そのものであり,その内実は,CILPのLPたる地位に基づく各種権利義務の総体(個々の事業用財産の共有持分を含む。)である。 原告は,本件現物出資の対象資産をCILPの事業用財産である旨主 張するが,ELPS法の定めや本件パートナーシップ契約上,LPである原告はCILPの持分を離れて,CILPの事業用財産のみを現物出資することはできないから,原告の主張は失当である。 また,原告は,組合に関するパススルー課税を根拠として,組合に対する出資持分を現物出資の対象資産と捉える考え方を否定するが,パス スルー課税の考え方は,組合に生じた損益に係る課税について,その組織体の事業主体性が無視されて,各組合員が納税義務の主体となるというものであり,租税法令上,およそ組合の団体性に基づく私法上の出資持分の存在が無視されるということを意味するものではなく,本件は,パススルー課税の考え方が当てはまる場面ではない。 イ本件CILP持分が「国内にある事業所に属する資産」に該当すること法人税法2条12号の14の規定のうち適格現物出資の範囲から「外国法人に国内にある資産として政令で定める資産の移転を行うもの」を除外する旨を定めた部分及びこれを受けた施行令4条の3第9項の規定は, 法人税法2条12号の14の規定のうち適格現物出資の範囲から「外国法人に国内にある資産として政令で定める資産の移転を行うもの」を除外する旨を定めた部分及びこれを受けた施行令4条の3第9項の規定は,現物出資法人の事業所が国内外に複数存在する場合において,国内 にある資産を現物出資した際の含み益に対する課税が行われなくなるこ とを規制し,我が国の課税権を確保しようとする趣旨で規定されたものである。 内国法人が国内にある事業所において経常的に管理している特定の資産は国内にある資産であるといえ,当該資産の譲渡益には我が国の課税権を確保する必要性が高いから,施行令4条の3第9項にいう「国内に ある事業所に属する資産」とは,国内にある事業所において経常的な管理が行われている資産と解するのが相当である。そして,通常,資産は,当該資産を経常的に管理している事業所において帳簿に記帳されていると考えられるから,特にこれと異なる事情がない限り,当該資産が記帳されている事業所と当該資産の属する事業所とは一致すると解される。 よって,現物出資の対象資産が「国内にある事業所に属する資産」であるか否かは,当該資産が記帳されている事業所が国内にあるか否かを検討し,次いで,当該資産の記帳された事業所とは別の事業所で実質的に経常的な管理が行われていたと認定できるほどの事実が認められるか否かで判断するのが相当である(法人税基本通達1-4-12参照)。 本件において,原告は,本件CILP持分の持分割合に基づき,CILPに出資する義務やその収益及び費用等の配賦を受ける地位を有していたところ,本件CILP持分は,国内にある原告の本社経理財務部が管理する有価証券台帳に投資有価証券として記帳されており,かつ,同台帳には原告が各出資を行ったこと び費用等の配賦を受ける地位を有していたところ,本件CILP持分は,国内にある原告の本社経理財務部が管理する有価証券台帳に投資有価証券として記帳されており,かつ,同台帳には原告が各出資を行ったことやCILPに係る費用等の配賦の結 果等が適宜記帳されていたことからすれば,本件CILP持分は「国内にある事業所に属する資産」に該当すると推認される。そして,現に本件現物出資は原告本社の取締役会で意思決定が行われ,その他の本件CILP持分に係る追加出資の意思決定等が原告本社において継続的に行われていたのであるから,本件CILP持分は,本件現物出資に至るま で,原告本社において経常的に管理されていたといえる。 他方,CILP及びUSOpCoは独自の事業所を有しておらず,原告もケイマン及び米国に事業所を有していなかったことからすれば,CILP設立当初においては原告の保有するCILPのパートナーシップ持分は原告の国内にある事業所において管理されていたと解さざるを得ず,その後も本件現物出資に至るまで,本件CILP持分がその管理の 場所を移転したと認められる特段の事情はない。 よって,本件CILP持分は,国内にある事業所において記帳され,経常的に管理されていたものであり,原告の国内にある事業所に属する資産に該当する。 仮に,本件現物出資の対象資産がCILPの事業用財産であるとして も,適格現物出資に該当するか否かは,現物出資行為(契約)ごとに判断されると解され,現物出資行為(契約)の対象資産が複数ある場合,その中に一つでも国内にある事業所に属する資産が含まれている場合には,外国法人に国内にある事業所に属する資産の移転を行うものとして,その現物出資全体が適格現物出資に当たらないと解するのが相当である。 に一つでも国内にある事業所に属する資産が含まれている場合には,外国法人に国内にある事業所に属する資産の移転を行うものとして,その現物出資全体が適格現物出資に当たらないと解するのが相当である。 本件JVにおける新薬の開発活動においては,治験原薬の開発が原告の責任において行われ,非臨床試験の一部についても原告又はその委託により日本国内で行われていたから,国内にある事業所もその治験プロセスに密接に関与していたということができる上,CILPの事業用財産の少なくとも一部は国内でその価値が創出ないし増大されたというべ きである。このように,治験原薬,非臨床試験データ等は原告の国内にある事業所において経常的な管理がされているものであって,これらは国内にある事業所に属する資産に該当するから,本件現物出資は適格現物出資に該当しない。 ウ施行令4条の3第9項の外国法人の株式に係る例外規定が本件CILP 持分に適用されないこと なお,施行令4条の3第9項は,外国法人の発行済株式等の総数の100分の25以上の数の株式を有する場合におけるその外国法人の株式については「国内にある事業所に属する資産」から除く旨の例外規定を定めているところ,同例外規定は,内国法人が保有する海外子会社の株式を現物出資して海外に統括子会社を設立するような場合に,国外における子会社 の再編成を妨げることのないように政策的に定められたものである。 ケイマンの特例有限責任パートナーシップは「外国法人」には該当しないから,その持分である本件CILP持分は上記例外規定にいう「外国法人の株式」に該当しない。また,租税特別措置法は,「外国法人」と「組合事業」及び「外国法人の株式」と「組合事業に係る出資」とを区別して おり,法人税法においても同様 上記例外規定にいう「外国法人の株式」に該当しない。また,租税特別措置法は,「外国法人」と「組合事業」及び「外国法人の株式」と「組合事業に係る出資」とを区別して おり,法人税法においても同様と解すべきところ,本件CILP持分は租税特別措置法67条の12第1項にいう「組合事業に係る出資」に該当するから,この点からも「外国法人の株式」に該当しないことが明らかである。 したがって,上記例外規定は,本件CILP持分に適用されない。 エ以上のとおり,本件現物出資の対象資産は本件CILP持分であり,その対象資産は「国内にある事業所に属する資産」に該当するから,本件現物出資は適格現物出資には該当しない。 (原告の主張)ア本件現物出資の対象資産 租税法における「資産」は,租税法上の固有概念であるから,本件現物出資の対象となった「資産」が何であるかは,租税法独自の見地から検討されるべきである。 CILPは,ELPS法に基づき組成された特例有限責任パートナーシップであり,民法上の組合に類似した事業体として,日本の租税実務 上,パススルー課税が適用される。株式会社と組合では,法人格が認め られるか否かで根本的な相違があり,法人は,法人格によって組織体自体の権利義務主体性が認められ,構成員と組織体の財産との間の関係が切断されているのに対し,組合においては,組織体自体は権利義務の帰属主体ではなく,構成員が持分割合に応じて個々の組合財産を共有しているとされるものであって,組合に対する抽象的な持分は,租税法上, 独立の財産権として観念し得ない。 よって,租税法上,組合の出資持分が譲渡される場合,法人格を有する組織体における抽象的な出資持分(株式等)とは異なり,個々の組合財産に対する は,租税法上, 独立の財産権として観念し得ない。 よって,租税法上,組合の出資持分が譲渡される場合,法人格を有する組織体における抽象的な出資持分(株式等)とは異なり,個々の組合財産に対する持分権が移転したものとして取り扱われる。 仮に,租税法における「資産」が借用概念であるとしても,組合に対 する出資持分は組合員たる地位と切り離して譲渡できず,組合員たる地位は譲渡できないから,かかる抽象的な持分には譲渡性がない。また,私法上の性質としても,抽象的な所有権や組合の組合員が組合財産に対して有する共有持分権は,その目的物と切り離して管理(使用・収益)の対象とすることはできず,その抽象的持分そのものを譲渡ないし現物 出資等の取引の客体となる財産権として観念する意味はない。 以上のとおり,CILPは日本の租税法上,組合と同様に取り扱われるから,本件現物出資の対象資産は,本件JVが行う事業を構成し,有機的一体として機能するCILPの事業用財産(に対する原告の有する持分割合相当の持分権)であり,出資持分それ自体ではない。 イ CILPの事業用財産が「国内にある事業所に属する資産」に該当しないこと 「国内にある事業所に属する資産」の外国法人への現物出資を適格現物出資に該当しないこととしたのは,国内で創出ないし価値の増大した資産(含み益のある国内資産)を外国法人に対する現物出資の方法によ って国外へと移転することを通じた不当な課税繰延べや租税回避を防ぐ 点にあり,海外支店の海外現地法人化については,課税の繰延べが意図されている。このことは,「国内にある事業所に属する資産」から生じる所得は,当該事業所が所在する日本にその源泉があり,日本が無制限の第一次課税権を有するのに対し,海外支店を海外現 課税の繰延べが意図されている。このことは,「国内にある事業所に属する資産」から生じる所得は,当該事業所が所在する日本にその源泉があり,日本が無制限の第一次課税権を有するのに対し,海外支店を海外現地法人化する場合には,第一次課税権を有する場合ではないから,日本の課税権を及ぼす のは不適切であるとする国際的な課税権の配分ルールにも合致するものであり,合理的である。 上記趣旨に照らせば,施行令4条の3第9項にいう「国内にある事業所に属する資産」の「属する」とは,我が国が国際的な源泉地管轄に基づく第一次課税権を有することを意味する。そして,資産を経常的に管 理している事業所(法人税基本通達1-4-12参照)は,その経常的な管理を通じて,その資産の価値を創造又は増大させていると考えられるから,本件でも,資産が「属する」事業所は,CILPの事業用財産の経常的な管理を通じて,その資産の価値を創造又は増大させている事業所と解すべきであり,それが国内にある事業所か否かで適格現物出資 該当性を判断すべきである。 そして,事業用財産を一括して現物出資する場合,個々の事業用財産が有機的一体となって機能することにより,いわゆる「のれん」が発生するのであるから,「のれん」を含む事業全体の含み益が創出された事業所を特定するに当たっては,個々の財産について個別に判断するので はなく,一つの事業を構成する事業用財産が全体として属する事業所を判断する必要がある。 CILPの新薬開発事業は,新薬の開発,製造・販売のために組織化され,有機的一体として機能する財産であり,その事業全体を一つの財産と捉えて一括して本件現物出資に供したものであるから,これらの事 業用財産の属する事業所を検討するに当たっては,1個の財産として把 機的一体として機能する財産であり,その事業全体を一つの財産と捉えて一括して本件現物出資に供したものであるから,これらの事 業用財産の属する事業所を検討するに当たっては,1個の財産として把 握された事業用財産の帰属する事業所が検討されなければならない。 組合において業務執行者が選任されている場合には,その事業用財産は,当該業務執行者により,組合の対内的な業務執行の一環として管理され,使用収益される。そして,業務執行者が,その業務執行全般を非組合員である第三者に委任した場合,委任を受けた第三者は,自己の計 算ではなく,組合の計算により当該業務執行を行うものと解されるから,当該第三者の事業所は当該組合の事業所となる。 本件では,CILPから新薬開発に関する業務執行全般の委任を受けたUSOpCoにおける本件JVの意思決定機関であるJSC(JointSteeringCommittee)及びGSK/ViiV側が,GSK/ViiV側 が有する米国フィラデルフィアの事業所及びノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パークの事業所において,新薬開発事業における重要な意思決定と経営管理,新薬開発の核心である治験(臨床試験)の実施管理,特に治験(臨床試験)の継続・中止に直結する安全性モニタリングと問題事象への対応判断等の新薬開発の成否に直結する業務を行 っていた。 また,CILPの事業用財産は,上記米国事業所において作成・保管されていたCILPとUSOpCoの帳簿に記帳され,原告の本社の帳簿には,本件JVに対する出資持分の記帳がされていたものの,CILPの事業用財産に関する記帳はされていなかった。 CILPの事業用財産を構成する資金を保管していた本件JV名義の口座も米国に存在しており,日本国内における口 の記帳がされていたものの,CILPの事業用財産に関する記帳はされていなかった。 CILPの事業用財産を構成する資金を保管していた本件JV名義の口座も米国に存在しており,日本国内における口座は存在しておらず,これらの預金口座への出入金の管理は,GSK/ViiV側が行っていた。 以上によれば,CILPの事業所である上記米国事業所においてCI LPの事業執行が行われ,CILPの事業用財産の経常的な管理が行わ れていたと解すべきである。 CILPの事業用財産の含み益の額は,本件JVが開発した新薬をJVテリトリーで販売することにより将来得ることができる収益の割引現在価格相当額である。本件JVの事業である治験(臨床試験)は全て日本国外で実施され,その成果物である治験データベースもGSK/Vi iV側の事業所により管理され,原告側は,当該治験データにアクセスすることすら許されていなかったのであり,CILPの事業用財産の含み益は日本国外で実施した治験を通じて,創出ないし増大されたものである。 一方,製薬会社においては,非臨床試験・臨床試験の実施や治験原薬 の製造等を外部の医薬品開発受託機関(CRO)や医薬品製造受託機関(CMO)に委託することはごく一般に行われているところ,原告がCILPから委託を受けて国内において行っていた開発及び製造も,これらのCROやCMOに相当する業務を行っていたものと同様であり,業務委託においては,その業務を委託するという意思決定が価値を増大さ せているのであって,単に原告がCILPの手足として具体的な開発・製造行為を行った場所が,無形資産の価値が創出ないし増大された場所となるものではない。 課税実務上,組合の事業活動が行われている事業所は,他の組合員に CILPの手足として具体的な開発・製造行為を行った場所が,無形資産の価値が創出ないし増大された場所となるものではない。 課税実務上,組合の事業活動が行われている事業所は,他の組合員にとっても,恒久的施設として取り扱われるものとされる(平成26年度 税制改正前の所得税基本通達164-7参照)。そして,法人税法上,「恒久的施設」とは「事業所」を含む概念であり,組合がある事業所をその事業活動の用に供している場合,その事業所は,当該組合の組合員全員にとっての事業所となる。 CILPは,原告とGSK/ViiVとの間の共同事業を行う主体で あるから,本件JVの事業活動を行っていた前記米国事業所は,原告の 国外にある事業所を構成する。 ウ結論以上によれば,CILPの事業用財産全体により構成される新薬開発事業は原告の国外にある事業所に属し,国外にある事業所で経常的な管理が行われていたことが明らかであるから,「国内にある事業所に属する資 産」には該当せず,本件現物出資は適格現物出資に該当する。 エ被告の主張によれば外国法人の株式に係る例外規定が類推適用されること仮に,被告が主張するように本件CILP持分を,あたかも法人に対する株式ないし出資持分と同様に取り扱うべきというのであれば,原告は, 現物出資の対象資産であるCILPの持分を25%以上保有していたことから,施行令4条の3第9項の外国法人の株式に係る例外規定が,CILPについても類推適用されなければならない。 本件各処分が信義則に反するか否か)について(原告の主張) 租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に に反するか否か)について(原告の主張) 租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような「特別の事情」が存する場合には,信義則の法理の適用により,当該課税処分を違法なものとして取り消すことができ,この「特別の事情」が存するかどうかの判断に当たっては,少なくとも,税務官庁が納税者に 対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ,後にその表示に反する課税処分が行われ,そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また,納税者が税務官庁の上記表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかを考慮して判断す べきである(最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決参照)。 本件照会担当者らは,平成24年10月15日の面談において,本件照会に対し,適格現物出資に該当するとの回答になる可能性が高い旨の見解(以下「本件面談時見解」という。)を口頭で回答し,その後,本件回答をしたところ,本件照会担当者らは,大阪国税局内の法令適合性を審査する部局における経歴と経験を有し,租税法令の解釈適用について責任と権限のある地位にある 者であり,口頭による回答であっても国税局等の内部での相当の検討を経ているものであるから,本件面談時見解及び本件回答は公的見解の表示に該当する。 このように,原告は,大阪国税局から本件面談時見解及び本件回答という信頼の対象となる公的見解を表示されたことから,その表示を信頼して行動したものであり,原告が大阪国税局の表示を信頼してその信頼に基づいて行動した 告は,大阪国税局から本件面談時見解及び本件回答という信頼の対象となる公的見解を表示されたことから,その表示を信頼して行動したものであり,原告が大阪国税局の表示を信頼してその信頼に基づいて行動した ことについて,納税者の責めに帰すべき事由があったという事情もないから,本件各処分を違法とすべき「特別の事情」がある。 よって,本件各処分は原告の信頼を害して違法であり,取り消されるべきものである。 (被告の主張) ア信義則の法理の適用対象となる公的見解とは,少なくともその内容に沿った取扱いを確実に受けられると信頼してしかるべきものに限られ,形式面において税務署長等権限のある者の公式の表明である必要があり,その内容面においても,公表された通達又はこれに準ずるもののような確定した見解の表示である必要がある。 税務相談は,相談者の一方的な申立てに基づいて,限られた情報と資料の中でその申立ての範囲内で指導又は助言を行うものであり,その性質からすれば,相談者において,その内容に沿った取扱いを確実に受けられると信頼してしかるべきものとは認められないから,信義則の法理の適用対象となる公的見解には当たらない。そして,本件面談時見解は,本件照会文書の提出 を受けた当日に,本件照会担当者らが最終的な回答を行うことはできないと 明示的に判断を留保した上で,本件照会担当者らがその場で一応の感触を示したにすぎないから,公式の見解の表示に当たるものではない。 イまた,税務申告自体は,積極的な経済的不利益をもたらす行動ではなく,内容的に適法な課税処分によって税額が増額すること自体は,経済的不利益には該当しないし,本件では仮に本件照会の結果,課税庁から本件現物出資 が適格現物出資に当たらないとの見解を示されたとしても 内容的に適法な課税処分によって税額が増額すること自体は,経済的不利益には該当しないし,本件では仮に本件照会の結果,課税庁から本件現物出資 が適格現物出資に当たらないとの見解を示されたとしても,その時点で,本件現物出資契約の重要部分について契約内容を変更することはなかったと解されるから,原告が本件面会時見解及び本件回答を信頼して本件現物出資によるスキームを維持したとはいえない。 ウさらに,本件照会文書には,原告が法的に恒久的施設と評価できる程度の 実体を伴った事業所を米国に有しており,かつ,当該事業所において本件現物出資の対象資産が記帳及び管理されているかのような記述がされており,原告は,適格現物出資に該当するか否かの判断に当たり,重要な要素となる事実を説明していなかったから,原告の責めに帰すべき事由が認められる。 エ以上のとおり,本件は信義則の法理が適用される例外的な場合には該当し ない。 国税通則法65条4項の「正当な理由」があるか否か)について(原告の主張)原告は,大阪国税局への事前照会において,本件照会担当者らに事前に準備した資料を提供した上で質問にも応じ,本件現物出資が適格現物出資に該当す る旨の回答を得た上で,かかる回答を信頼して申告していたものであり,事後的にそれが誤っていたとしても,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があるから,国税通則法65条4項の「正当な理由」があり,本件各更正処分等のうち過少申告加算税の賦課決定処分は違法である。 (被告の主張) のとおり,本件において,課税庁が申告時以前に当該事案に適用され るべき公的見解を表明ないし明示していたとはいえず,また,原告は,本件回答の有無及び内容にかかわらず,本 張) のとおり,本件において,課税庁が申告時以前に当該事案に適用され るべき公的見解を表明ないし明示していたとはいえず,また,原告は,本件回答の有無及び内容にかかわらず,本件現物出資が適格現物出資に該当することを前提とした確定申告をしていたと解されるから,本件回答を信頼した結果として原告が確定申告をしたとはいえない。仮に原告が本件回答の内容によって本件現物出資が適格現物出資に該当すると信頼したとしても,それは原告が適 切な資料を提出しなかったことに基づくものであり,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があるとはいえない。 以上のとおり,原告に国税通則法65条4項の「正当な理由」があるとは認められない。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実に加え,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 新薬開発の一般的なプロセス(甲9,135,乙4)薬(医薬品)は,ヒトの疾病に対して有効に作用すると同時に,何らかの副作用を有していることから,新薬の研究開発においては,目的とする疾 病に有効に作用する化合物を探索し,当該化合物がヒトに対して有効に作用し,かつ,重篤な副作用を有していない安全なものであることを証明する情報を収集する作業が必要となる。 新薬の研究・開発の過程は,大要,①新薬の元となる新規化合物を合成し,その性状や化学構造を解析してスクリーニングを行い,新薬候補となる化合 物を取捨選択するプロセス,②新薬候補化合物を対象に,動物や培養細胞を用いて,主に体内動態(吸収・分布・代謝・排泄されるまでの体内における動き)を検証し,有効性及び動物での安全性を評価する非臨床試験を行うプロセス,③非臨床試験において一定の有効性及び安全性 養細胞を用いて,主に体内動態(吸収・分布・代謝・排泄されるまでの体内における動き)を検証し,有効性及び動物での安全性を評価する非臨床試験を行うプロセス,③非臨床試験において一定の有効性及び安全性を確認することができた新薬候補化合物を健康な人や患者に投与して有効性及び安全性を更に検 証する治験(臨床試験)を行うプロセスを経る。通常,①のプロセスに2~ 5年,②のプロセスに1~3年,③のプロセスに3~7年を要する。なお,薬剤投与期間が1年に及ぶ動物長期安全性試験は臨床開発プロセスに移行した後にも治験と並行して実施される。 このうち,③治験(臨床試験)を行うためには,治験の目的に照らした試験方法をデザインし,治験実施計画書を作成し,治験が始まってからは,治 験期間中に集積していくデータベースから新薬の安全性等に関する情報等を抽出するなどして治験の実施状況を監視し,問題が生じればその対応を行うことが必要となる。 本件JVについてア本件JVの設立の経緯(甲135) 本件JVの設立当時,原告は,欧米先進国で需要が高い脳梗塞薬,抗アルツハイマー薬及び抗HIV薬のそれぞれについて新薬の開発を進めていたが,海外における新薬の開発(臨床試験や承認申請等)を行うための人材・ノウハウを有しておらず,海外における医薬品販売事業を行う拠点もなく,海外において新薬承認申請を行ったことがなかったため,これらの 新薬の開発を進めるために,欧米の製薬会社と組む必要があった。そこで,原告は,これらの新薬の早期発見と海外における医薬品の販売事業を行うことを視野に入れた拠点の設立を主な目的として,GSKとの間で本件JVを設立した。 イ本件JV契約の定め(甲7) 本件JV契約では,各パートナーは本件パートナー る医薬品の販売事業を行うことを視野に入れた拠点の設立を主な目的として,GSKとの間で本件JVを設立した。 イ本件JV契約の定め(甲7) 本件JV契約では,各パートナーは本件パートナーシップ契約に従ってCILPに対し出資を行い,CILPはその出資金額をUSOpCoに提供し,USOpCoは本件運営契約に従い当該金額を使用すること(条項6.1),CILPは,JVテリトリー内で特定化合物を開発する独占的な権利を有し,本件運営契約に従い,USOpCoのみにその 開発を委託すること(条項8.1CILPは,本件JV契約及び その他の関連契約の条件に従い,JVテリトリー内で特定化合物を商品化する独占的な権利を有すること(条項9.4),CILPは,本件JVにより又は本件JVのために創造,発見又は開発された範囲における全ての合剤知的財産権(合剤又は配合用分子の基礎となる知的財産権)及び基本となる特定化合物に関連する新規特定化合物の特徴的性質を基 礎として本件JVにより又は本件JVのために創造,発見又は開発された範囲における新規特定化合物に対する全ての知的財産権に対する全ての権利,権原及び権益を有すること(条項11.2⒝)などが定められていた。 ウ本件運営契約の定め(乙9の1~3) 本件運営契約では,USOpCoは最高統治機関である執行委員会(後のJSC。甲92,乙8)を置き,執行委員会はUSOpCoの事業を運営・管理すること(条項2.1),執行委員会は,6名で構成され,各パートナーが3名を指定し,そのうち1名を共同議長とすること 催し,USOpCoの開発及び商品化に関する業務全般の決定及び監督等について最終的に責任を負うこと(条項2.2⒝⒞),CILPは,JVテリトリー内での特定化合物の開発を を共同議長とすること 催し,USOpCoの開発及び商品化に関する業務全般の決定及び監督等について最終的に責任を負うこと(条項2.2⒝⒞),CILPは,JVテリトリー内での特定化合物の開発をUSOpCoに委託し,受託したUSOpCoは,執行委員会の事前同意を得て,原告,GSK又は他の第三者である開発業務受託機関との間で特定化合物に係る実際の開発 活動に関する契約を締結することができること(条項5.1),CILPは,原告及びGSKの知的財産権に対する開発,製造及び商品化についての2次ライセンスの権利を有し,この権利をUSOpCoに付与す エ原告のCILPに対する出資等の状況(乙5の1・2,乙13) 平成13年9月頃,CILPの設立に当たり,原告は,知的財産の使 用許諾を出資してLPのパートナーシップ持分99.98%を取得し,SGHは,9002米ドルを出資してGPのパートナーシップ持分0. 02%を取得した。 平成13年10月19日,原告は,CILPのLPのパートナーシップ持分の半分(49.99%)をGSKに2250万米ドルで,SGH は,CILPのGPのパートナーシップ持分の半分(0.01%)をGSK子会社に4501米ドルで,それぞれ譲渡し,同日,原告は2250万米ドルを,GSKは知的財産の使用許諾と2250万米ドルを,SGH及びGSK子会社は4501米ドルずつを,それぞれCILPに出資した。 原告のCILPに対する出資は,その後の追加出資等による増加及びCILPにおいて計上した試験研究費のうち原告の持分に対応する金額の取込みに伴う減少等により増減し,本件現物出資によるSLへの移転処理が行われる直前(平成25年3月31日時点)の帳簿残高は72億7794万 において計上した試験研究費のうち原告の持分に対応する金額の取込みに伴う減少等により増減し,本件現物出資によるSLへの移転処理が行われる直前(平成25年3月31日時点)の帳簿残高は72億7794万0738円となっていた。 これらの原告のCILPに対する出資やその増減は,原告の本社の経理財務部において管理されている帳簿に勘定科目を「投資有価証券」として記帳されていた。 オ CILPの事業用財産の管理の状況(甲19の1~11,甲20の1~11,甲21,22の1・2,甲79,135,136,乙14) CILPの事業用財産は,①原告,GSK/ViiV等の各パートナーからの出資に由来する現金,②原告及びGSK/ViiVから供与された知的財産のライセンス,③新薬向けの化合物についての開発活動によって得られた治験データ等の無形資産,④USOpCoへの出資等で構成されている。 このうち,現金は,米国で開設されたCILP又はUSOpCo名義 の預金口座に入金され,また,CILPの事業に係る記帳,会計処理,税務申告等の経理業務は,GSK/ViiV側が有する米国フィラデルフィアの事業所において行われ,知的財産のライセンスも,CILP及びUSOpCoの連結財務諸表に取得価格零円で記録されていた。 また,治験データは,GSK/ViiV側のデータベースに保管され, GSK/ViiV側は,原告に対し,同データベースへのアクセス権を付与しておらず,原告が治験データを必要とする場合には,その都度,GSK/ViiV側に対して特定のデータの提供を要請する必要があり,その際も,GSK/ViiV側によって同データベースから抽出されたデータがポータルサイト等を通じて提供されていた。 ,その都度,GSK/ViiV側に対して特定のデータの提供を要請する必要があり,その際も,GSK/ViiV側によって同データベースから抽出されたデータがポータルサイト等を通じて提供されていた。 本件現物出資の経緯(甲8,乙3,38)原告は,平成24年2月,英国にSLを設立し,SLの事業として,本件JVにおいて開発活動が進められてきた化合物の製品上市の準備をしていたが,抗HIV薬については合剤での治療が主流であり,合剤を含めた経営ができる会社に販売を任せた方がよいこと,別の外国会社を買収したことから 本件JVを足がかりとした米国の拠点獲得も不要になったことなどから,ViiVとの間で,本件JVの枠組みの変更を協議した。 また,原告において,本件JVの枠組みを維持した場合と,本件JVの枠組みを変更してCILPのパートナーシップ持分をViiV親会社に移転し,その株式の10%を取得した場合の収益性を比較したところ,変更後の価値 の合計の方が大きくなるとの試算結果を得た。 そこで,原告は,平成24年10月1日開催の取締役会において承認を得た上で,本件現物出資を実施し,さらにSLにおいてViiV親会社への再現物出資を実施した。 本件現物出資が適格現物出資に該当するか否か)について 適格現物出資制度の概要 適格現物出資制度は,平成13年度税制改正で導入された組織再編税制の一部であり,内国法人が法人に対して行う資産(資産と併せて負債を出資する場合の負債を含む。)の現物出資は,法人税法上は資産の譲渡として扱われ,現物出資の時点で当該資産の時価による譲渡があったものとして法人税の課税対象となるのが原則であるが(法人税法22条2項),その現物出資 が適格現物出資に該当する場合には 資産の譲渡として扱われ,現物出資の時点で当該資産の時価による譲渡があったものとして法人税の課税対象となるのが原則であるが(法人税法22条2項),その現物出資 が適格現物出資に該当する場合には,それによる譲渡損益の繰延べが認められている(法人税法62条の4第1項)。これは,法人税の負担が現物出資による企業再編の阻害要因となることを防止し,企業再編を容易にするために定められたものであると解される。 ただし,法人税法2条12号の14の括弧書きにおいて「外国法人に国内 にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債の移転を行うもの」が適格現物出資から除かれており,この規定を受けた施行令4条の3第9項は,国内にある資産又は負債として「国内にある不動産,国内にある不動産の上に存する権利,鉱業法の規定による鉱業権及び採石法の規定による採石権その他国内にある事業所に属する資産又は負債」を定めている。これらの定め は,国内にある含み益のある資産を外国法人に移転することでその含み益に対する課税が行われなくなることを規制し,我が国の課税権を確保しようとする趣旨で規定されたものであると解される。 「国内にある事業所に属する資産」の判断基準について本件では,本件現物出資の対象資産が施行令4条の3第9項にいう「国内 にある事業所に属する資産」に該当するか否かが争点であるところ,この点の判断基準に関し,法人税基本通達1-4-12は,「国内にある事業所に属する資産」に該当するか否かは,原則として,当該資産が国内にある事業所又は国外にある事業所のいずれの事業所の帳簿に記帳されているかにより判定するが,実質的に国内にある事業所において経常的な管理が行われてい たと認められる資産については,国内にある事業所に属する資産に該当 ある事業所のいずれの事業所の帳簿に記帳されているかにより判定するが,実質的に国内にある事業所において経常的な管理が行われてい たと認められる資産については,国内にある事業所に属する資産に該当する ことになる旨を定めている。 この法人税基本通達が示す判断基準は,まず,その資産の経常的な管理がどの事業所において行われていたかを判定し,その判定に当たっては当該資産が当該事業所の帳簿に記帳されていたか否かを重要な考慮要素とし,次いで,その判定の結果当該資産の経常的な管理が行われていたと認められる事 業所が国内にある事業所に当たるか否かを判定し,それが肯定された場合に「国内にある事業所に属する資産」に該当すると認める旨をいう趣旨に理解することが可能である。このように理解される判断基準は,前記法令の趣旨に鑑みて,合理性を有するものということができ,本件においても,基本的にこの基準に沿って検討するのが相当である。 本件現物出資の対象資産についてその検討の前提問題として,本件現物出資の対象資産の捉え方について争いがあるので,まず,この点を検討する。 ア ELPS法上,パートナーシップ持分とは,特例有限責任パートナーシップのパートナーが,パートナーシップ契約又は同法に基づき保有し又は 服する,利益,資本及び議決その他の権利,恩恵又は義務に関する持分をいうとされ(2項),同法上,LPのパートナーシップ持分を譲渡した場合の権利義務の承継に関する規定(7項)や,LPのパートナーシップ持分を譲渡抵当に入れることができる旨の規定(7項)があり,本件パートナーシップ契約においても,他のパートナーの同意があれば,G P及びLPのパートナーシップ持分につき売却,質入れ,担保権の設定その他の移転が可能であ できる旨の規定(7項)があり,本件パートナーシップ契約においても,他のパートナーの同意があれば,G P及びLPのパートナーシップ持分につき売却,質入れ,担保権の設定その他の移転が可能であるとされ(条項7.2),これらの定めを通じて,CILPのパートナーシップ持分は譲渡可能な資産として位置付けられている。 そして,本件現物出資契約においては,本件CILP持分が「本件リミ テッドパートナーシップ持分」と定義され(条項1.1),当該「本件 リミテッドパートナーシップ持分」が現物出資の対象資産とされていた(条項2.1)のであるから,本件現物出資の対象資産は本件CILP持分であったと解するのが相当である。 イもっとも,CILPは,我が国の組合に類似した事業体であり,ELPS法及び本件パートナーシップ契約においても,CILPの事業用財産の 共有持分(準共有持分を含む。)と切り離されたパートナーとしての契約上の地位のみが他に移転することは想定されていないものと解される。この点が,法人における株式の移転とは根本的に異なる点である。 そうすると,本件現物出資の対象資産となった本件CILP持分についても,その内実は,CILPの事業用財産の共有持分とLPとしての契約 上の地位とが不可分に結合されたものと捉えられなければならない。 本件現物出資の対象資産の経常的な管理が行われていた事業所についてそこで次に,このような本件CILP持分の経常的な管理がどの事業所において行われていたかについて,検討する。 ア本件CILP持分は,上記のとおり,CILPの事業用財産の共有持分 とLPとしての契約上の地位とが不可分に結合された資産であるから,これを経常的な管理の対象として捉える場合においても,こ ア本件CILP持分は,上記のとおり,CILPの事業用財産の共有持分 とLPとしての契約上の地位とが不可分に結合された資産であるから,これを経常的な管理の対象として捉える場合においても,これを個々の事業用財産の持分やパートナーシップ契約上の個々の権利等に分解してそれぞれを管理する事業所を個別に検討するのは相当ではなく,これらが全て結合された1個の資産とみてその管理が行われていた事業所を特定するのが 相当である。 そして,パートナーがCILPの事業に参加する目的は,その出資に由来する事業用財産の運用により利益を得ることであり,パートナーとしての契約上の地位は,その運用のための手段と位置付けられるものであるから,CILPのパートナーシップ持分の価値の源泉はCILPの事業用財 産の共有持分にあるということができ,また,CILPの事業用財産の共 有持分とパートナーとしての契約上の地位との関係は,前者を主とする主物と従たる権利義務との関係に類似する関係にあるものと捉えることが可能である。したがって,本件CILP持分を1個の資産とみた場合のその経常的な管理が行われていた事業所は,CILPの事業用財産,中でもその主要なものの経常的な管理が行われていた事業所とみるのが相当である。 イ前記認定のとおり,CILPの事業用財産は,①現金,②知的財産のライセンス,③治験データ等の無形資産,④USOpCoへの出資等で構成されている。そして,このうち,現金は,米国で開設されたCILP又はUSOpCo名義の預金口座に入金され,また,CILPの事業に係る記帳,会計処理,税務申告等の経理業務は,GSK/ViiV側が有する米 国フィラデルフィアの事業所において行われ,知的財産のライセンスも,CILP及びUSOpC れ,また,CILPの事業に係る記帳,会計処理,税務申告等の経理業務は,GSK/ViiV側が有する米 国フィラデルフィアの事業所において行われ,知的財産のライセンスも,CILP及びUSOpCoの連結財務諸表に記録されていたというのである。さらに,治験データは,GSK/ViiV側のデータベースに保管され,原告には同データベースへのアクセス権が付与されていなかったというのであり,GSK/ViiV側が同データベースを管理する事業所を我 が国内に有していたとは認められない。 そうすると,CILPの事業用財産のうち主要なものの経常的な管理は,いずれにしてもGSK/ViiV側が米国その他の我が国以外の地域に有する事業所において行われていたということができる。 当該事業所が国内にある事業所に当たるか否かについて CILPの事業用財産の経常的な管理は,CILPの事業活動の一部であり,それを行う事業所がCILPの事業所に当たることは明らかであるから,CILPのパートナーであった原告にとっても,当該事業所はCILPの事業活動を行う原告の事業所であったということができる。 しかし,CILPの事業用財産のうち主要なものの経常的な管理が行われ ていた事業所は,前記のとおり,米国その他の我が国以外の地域に所在して いたから,当該事業所が原告の国内にある事業所に当たるとはいえない。 小括以上のとおり,本件現物出資の対象財産であった本件CILP持分は,その主たる構成要素であるCILPの事業用財産(の共有持分)のうち主要なものの経常的な管理が国内にある事業所ではない事業所において行われてい たということができるから,「国内にある事業所に属する資産」には該当しないというべきである。 したがっ )のうち主要なものの経常的な管理が国内にある事業所ではない事業所において行われてい たということができるから,「国内にある事業所に属する資産」には該当しないというべきである。 したがって,本件現物出資は,適格現物出資に該当するものと認められる。 3 本件各処分の適法性について本件現物出資が適格現物出資に該当することを前提に,原告の平成25年3 月期の所得金額,翌期へ繰り越す欠損金額,納付すべき税額,更正処分に基づく過少申告加算税の額等を計算すると,別紙5-1~5-4記載のとおりとなることが認められる(弁論の全趣旨)。これによれば,本件各更正処分等の取消しを求める原告の請求は,法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税の額が19万1000円を超えない部分(適格現物出資該当 性とは無関係な本税増額部分に対応する部分)の取消しを求める部分を除いて,いずれも理由がある。 また,そうである以上,原告がした平成26年3月期の法人税等の更正の請求に対する本件各通知処分も違法であるから,これらの取消しを求める原告の請求もいずれも理由がある。 本件各処分が信義則に反するか否か)及び(国税通則法65条4項の「正当な理由」があるか否か)についての判断がいかようになっても左右されるものではない。 4 よって,原告の請求は主文第1項から第4項までの限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり 判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官古田孝夫 裁判官高田公輝 裁判官中野晴行 判長 裁判官古田孝夫 裁判官高田公輝 裁判官中野晴行

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