昭和60(オ)726 貸金

裁判年月日・裁判所
昭和62年7月17日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 昭和59(ネ)1582
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。      上告費用は上告人の負担とする。          理    由  上告代理人小河原泉、同小野寺賢隆の上告理由第一点について  口頭弁論調書(以下

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判決文本文4,027 文字)

主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人小河原泉、同小野寺賢隆の上告理由第一点について口頭弁論調書(以下「調書」という。)は、作成権限を有する裁判所書記官(以下「書記官」という。)がこれを作成して、署名(又は記名)捺印し、裁判長が認証のため捺印することによつて完成するが、外部的には、完成された調書が当事者及び利害関係人の閲覧請求に応じ得る状態に置かれた時、通常は当該事件記録に編綴されて書記官の保管のもとに置かれた時に成立するものと解するのが相当である。 そして、調書は、期日に行われた当事者その他の訴訟関係人及び裁判所の行為を法律の規定に従つて記載することにより、手続の経過及び内容並びに裁判の基礎となる訴訟資料を客観的かつ正確に記録するものであつて、弁論の方式に関する規定の遵守については、調書によつてのみ証明することができるものであり(民訴法一四七条)、また、弁論の方式に属しない弁論の内容等に関する事項についても、調書は強い事実上の証明力を有するというべきであるから、調書の記載内容については、その真実性及び正確性が法律上強く要請されるというべきである。したがつて、調書が作成され、書記官及び裁判長の捺印がされた後においても、記載内容に誤りがある場合には、その誤りを是正することなく放置することの許されないことはいうまでもないところであり、当該調書を作成した書記官において、その認証者である裁判長の認証ないし承認のもとに、その誤りの内容に応じ適宜の方法によりこれを更正することができるものと解するのが相当であるが、調書が外部的に成立した後における調書の更正については、裁判所の公正に対する無用の不信を招かないよう、原調書とは別に更正調書を作成するか又は原調書の 更正することができるものと解するのが相当であるが、調書が外部的に成立した後における調書の更正については、裁判所の公正に対する無用の不信を招かないよう、原調書とは別に更正調書を作成するか又は原調書の欄外に更正の箇所・内容を明記- 1 -して署名(又は記名)捺印する等、更正であること及びその内容を明らかにするため適宜の措置を講ずることを要するものというべきである。もつとも、例えば訴訟代理人が更迭し、当該期日に出廷していなかつた新代理人が誤りのある当該期日の調書の記載を誤りのないものと信じたことに起因して当事者に訴訟上の不利益が生ずるおそれがあるなど特別の事情がある場合には、適宜格別の配慮、措置をすべきであるが、そのことから誤りのある調書の更正が妨げられるものではない。 ところで、記録によれば、原審の第六回口頭弁論期日の調書として本件記録に編綴されている調書(以下「本件調書」という。)には、控訴人(被上告人)の陳述として、「被控訴人Aは、その所有不動産に抵当権を設定して訴外株式会社D銀行から被控訴人Eに融資する資金を借り受けるために、右不動産に設定されていた先順位の抵当権を抹消する資金に充てるため、被控訴人Eを連帯保証人として控訴人と本件消費貸借契約を締結したものである。本件消費貸借は、商行為ではない。」との、商法五〇三条二項による推定を覆す事実が主張されたことが記載されている。 しかるところ、上告代理人の主張するところによれば、上告代理人が原判決言渡後に本件記録を閲覧・謄写した時点においては、本件記録には、本件調書のほかに、同じく第六回口頭弁論調書と表示された別の書面(上告理由書添付の乙第八号証はその写しである。)が編綴されていたというのであり、同号証によれば、右書面(以下「本件書面」という。)は法定の方式に従つて作成された調書であり、 調書と表示された別の書面(上告理由書添付の乙第八号証はその写しである。)が編綴されていたというのであり、同号証によれば、右書面(以下「本件書面」という。)は法定の方式に従つて作成された調書であり、本件調書の作成者と同一の書記官が記名捺印し、裁判長認印欄には原審裁判長の捺印があり、かつ、控訴人(被上告人)の陳述として、「本件の行為が商行為であるとの主張は否認する。」との主張がされた旨の記載があつたが、本件調書にある前記主張の記載はなかつたことが窺われる。 しかし、本件書面は当審に送付された本件記録には編綴されておらず、原審第六回口頭弁論期日の調書としては本件調書のみが編綴されているから、本件記録上は- 2 -本件調書のみが右期日の調書とみるほかはないところ、本件書面が、本件調書作成の時点で既に調書として外部的にも成立していたものであるか、あるいは外部的には成立しておらず、したがつて本件調書作成に伴い本来廃棄されるべきものがたまたま残存し誤つて一時本件記録に編綴されていたものであるかは、明らかでないが、もし前者であつたとすれば、前記説示に照らし、その更正調書としての本件調書の作成の方式は、相当でないといわざるを得ない。しかしながら、前者であつたとしても、記録によれば、本件貸金債権が消滅時効の完成により消滅したとの上告人の主張(抗弁)は、(イ)上告人が商人であること(商法五〇三条二項の推定の根拠事実)及び(ロ)弁済期から五年が経過したことであるが、被上告人は、第一審以来、右(イ)の事実を認めつつ((ロ)の事実については明らかに争つていない。)、本件消費貸借契約が上告人の商行為であることを否認しているのであり(そのことは本件書面にも記載されている。)、このことは取りも直さず右推定を覆す事実すなわち本件消費貸借契約が商行為に当たらないとの事 本件消費貸借契約が上告人の商行為であることを否認しているのであり(そのことは本件書面にも記載されている。)、このことは取りも直さず右推定を覆す事実すなわち本件消費貸借契約が商行為に当たらないとの事実主張を前提としているものというべきであるところ、右の再抗弁事実に相当する事実関係(本件調書に記載された前記事実関係)は第一審及び原審における証拠調にあらわれている事実であつて、しかも右事実の主張がなければ被上告人の主張は一貫しないのであるから、被上告人は右事実の主張をしていたものとみることができる。 そうすると、前記商法五〇三条二項による推定を覆す事実は、原審において被上告人が主張し、これが本件調書に記載されたものとみることができ、この主張と同旨の事実を被上告人の再抗弁事実として事実摘示したうえ、証拠調の結果に基づき、右主張にそう事実を認定して右再抗弁を採用し、上告人の消滅時効の抗弁を排斥した原判決には、所論の違法はないというべきである。論旨は、採用することができない。 同第二点について- 3 -原審は、被上告人の上告人に対する本件消費貸借契約上の債権は商行為によつて生じたものではなく、したがつて右債権が商行為によつて生じたものであることを前提として短期消滅時効の完成をいう上告人の抗弁は理由がないとしているのであるから、論旨は、原判決の結論に影響のない説示部分につきその違法をいうものにすぎず、採用することができない。 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、上告理由第一点につき裁判官島谷六郎、同林藤之輔の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 上告理由第一点についての裁判官島谷六郎の補足意見は、次のとおりである。 本件では、原審における第六回口頭弁論期日調書の作成及び更正の経過が明らかでないとこ 一致の意見で、主文のとおり判決する。 上告理由第一点についての裁判官島谷六郎の補足意見は、次のとおりである。 本件では、原審における第六回口頭弁論期日調書の作成及び更正の経過が明らかでないところから、同期日において本件調書に記載のような控訴人(被上告人)の陳述がなされたか否かが上告人によつて争われたものであり、調書の更正の方式については、法廷意見において当審の考えるところを判示したのであるが、この際調書の作成及び更正についての私の見解を述べておきたい。 民訴法は、調書の記載の正確性を担保するため、調書の記載は申立により法廷において関係人にこれを読み聞かせ又は閲覧させることを要し、その旨を調書に記載するとともに、調書の記載について関係人が異議を述べたときは調書にその趣旨を記載することを要するものとしているが(一四六条)、実際には、書記官は多くの場合、法廷では、関係人の申立があつても読み聞かせ又は閲覧させることのできるような調書を作成せず、簡単な覚書を作るにとどめ、調書は期日終了後に作成するのが実情であつて、同条は所期のとおりには機能していないのである。そこで、このような実情を踏まえたうえ、むしろ調書は期日終了後に作成されるものであることを前提として、その正確性を担保するにはどのような方策をとるのが最も適当であるかを検討し、調書の作成についての規定を改めるとともに、調書更正の方式に- 4 -ついても明確な定めをすることによつて、その手続の公正を期することが必要であると考える。現状のままでは、再び本件のような争いの生ずるおそれがないとはいえない。既に調書の作成、更正等について極めて詳細な規定をもつ立法例もあり、わが国においても民訴法及び民訴規則にこれに関する規定を設けることが期待される。 裁判官林藤之輔は、裁判官島谷六郎の補足意見に い。既に調書の作成、更正等について極めて詳細な規定をもつ立法例もあり、わが国においても民訴法及び民訴規則にこれに関する規定を設けることが期待される。 裁判官林藤之輔は、裁判官島谷六郎の補足意見に同調する。 最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官林藤之輔裁判官牧圭次裁判官島谷六郎裁判官藤島昭裁判官香川保一- 5 -

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