令和4(行ケ)10074 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年5月31日 知的財産高等裁判所 1部 判決 請求棄却
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令和5年5月31日判決言渡 令和4年(行ケ)第10074号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和5年3月13日判決 原告 ディーパックファスナーズ(シャノン)リミテッド 同訴訟代理人弁護士 尾関孝彰 松阪絵里佳 佐藤慧太 河合哲志 同補佐人弁理士 浜田廣士 被告 Y 同訴訟代理人弁護士 山田威一郎 松本響子 柴田和彦 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 特許庁が無効2020-890081号事件について令和4年3月25日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は、以下のとおりの商標登録第6162919号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1、97)。 商標 UNBRAKO(標準文字)登録出願日平成30年10月20日登録 おりの商標登録第6162919号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1、97)。 商標 UNBRAKO(標準文字)登録出願日平成30年10月20日登録査定日平成31年4月12日設定登録日令和元年7月19日指定商品第6類「金属製金具」 ⑵ 原告は、令和2年11月16日、本件商標について商標登録無効審判を請求した(甲97)。 特許庁は、上記請求を無効2020-890081号事件として審理を行い、令和4年3月25日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年4月4日、原告に送達され た。 ⑶ 原告は、令和4年7月23日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は、別紙審決書(写し)記載のとおりであり、本件商標の商 標登録は、商標法4条1項7号、10号及び19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法46条1 項の規定により、無効とすることはできないというものである。その理由の要旨は、以下のとおりである。 (1) 商標法4条1項10号について引用商標1は、別紙記載のとおり、オレンジ色の横長長方形の内側に白抜 きで「Unbrako」の欧文字を横書きした構成からなり、引用商標2は、 「アンブラコ」の片仮名と「UNBRAKO」の欧文字を上下二段に横書きした構成からなり、引用商標3は、「UNBRAKO」の欧文字を横書きした構成からなるものであるところ(以下、引用商標1ないし3を併せて「引用商標」という。)、引用商標は、請求人(原告)が提出した証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、原告の業務に係る商品「ボ ルト」 ころ(以下、引用商標1ないし3を併せて「引用商標」という。)、引用商標は、請求人(原告)が提出した証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、原告の業務に係る商品「ボ ルト」を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められない。 したがって、本件商標は、商標法4条1項10号に該当しない。 (2) 商標法4条1項7号及び19号について引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、原告の業務 に係る商品「ボルト」を表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないから、本件商標は、引用商標の知名度や名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 また、本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と いうべき事情は見いだせず、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法4条1項19号及び7号のいずれにも該当しない。 第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件商標の商標法4条1項10号該当性の判断の誤り)⑴ 原告の主張ア周知性の判断の誤り(ア)a 「UNBRAKO」は、米国SPSTechnologies,Inc(旧名称「StandardPressedSteelC ompany」・合併後の名称「SPSTechnologies LLC」。以下「SPS社」という。)製の商品「六角穴付きボルト」のブランド名である。1961年にSPS社の日本法人である「日本アンブラコ株式会社」が設立され、「UNBRAKO」ブランドのファスナー事業を開始し、以後、日本総代理店となった。 「六角穴付きボルト」のブランド名である。1961年にSPS社の日本法人である「日本アンブラコ株式会社」が設立され、「UNBRAKO」ブランドのファスナー事業を開始し、以後、日本総代理店となった。その後、日本アンブラコ株式会社は、「エス・ピー・エスアンブラコ株式会社」(通称 「SPSアンブラコ」)、PCCディストリビューション・ジャパン株式会社(以下「PCCジャパン」という。)に商号変更された。 bSPS社及びその企業グループは、2008年、原告に対し、全世界におけるファスナー事業及び「UNBRAKO」ブランドを譲渡した。 (イ) 原告の業務に係るボルト商品の需要者は、機械部品メーカー、製造プラント建造・メンテナンス業者、半導体製造装置メーカー、建設機械メーカー、建設業者、自動車メーカー、自動車部品メーカー等である(甲45ないし49)。 (ウ) 日本国内において、①2004年までの間に頒布された雑誌の広告 (甲11ないし13)及び2005年から2017年までの間に発行された業界紙又は産業誌の広告(甲50ないし62)に、引用商標1又は「UNBRAKO」ないし「アンブラコ」が「ボルト」のブランドを表示するものとして記載されていたこと、②「アンブラコエンジニアリングガイド」と題する「ボルト」商品の商品カタログ(甲63ないし6 9(枝番のあるものは枝番を含む。以下同じ。))の広告には、いずれも、引用商標1のロゴが上部に掲載されたカタログの表紙の写真が添付されていること、③「アンブラコ・ロックウェル」という名称のボルトの広告が、1992年に日刊工業新聞社が主催する「日本産業広告賞」を受賞したこと(甲70、71)、④業界紙「金属産業新聞」の昭和3 6年11月13日版(甲72)及び昭和37年2月1日版(甲 トの広告が、1992年に日刊工業新聞社が主催する「日本産業広告賞」を受賞したこと(甲70、71)、④業界紙「金属産業新聞」の昭和3 6年11月13日版(甲72)及び昭和37年2月1日版(甲73)の 一面記事に「アンブラコねじ」というボルト商品が取り上げられたこと、以上の事実を踏まえると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、原告の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして、我が国の需要者の相当部分に認識されていたものといえるから、需要者の間に広く認識されていたものというべきである。 これに反する本件審決の判断は誤りである。 イ小括以上のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、原告の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものであり、本件商標と引用商標は類似の 商標であり、本件商標の指定商品及び引用商標の使用商品は類似の商品である。 したがって、本件商標は、商標法4条1項10号に該当するから、これを否定した本件審決の判断には誤りがある。 ⑵ 被告の主張 原告が提出した証拠(甲50ないし73)を踏まえても、「UNBRAKO」ブランドの「ボルト」の宣伝広告はごく僅かしか行われておらず、これらの宣伝広告活動により、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、原告の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたとは到底いえない。 したがって、本件商標は商標法4条1項10号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(本件商標の商標法4条1項19号該当性の判断の誤り)⑴ 原告の主張ア外国における周知性の判断の誤り 法4条1項10号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(本件商標の商標法4条1項19号該当性の判断の誤り)⑴ 原告の主張ア外国における周知性の判断の誤り ①米国及びインドにおいて、雑誌に「UNBRAKO」ブランドの「ボ ルト」に関する記事が掲載されていること(甲74、75)、②2012年から2017年にかけて「UNBRAKO」ブランドの「ボルト」製品が世界各地の大規模な展示会(ドイツのシュトゥットガルト、米国のラスベガス等)のブースで紹介されていたこと(甲30ないし35、76、77)、③2012年から2019年までの間の「UNBRAKO」ブランドの「ボ ルト」の日本を含む全世界での年間売上総額が1億183万USドルないし1億768万USドルに上り、相当のシェアを獲得していること(甲78)、④原告が2008年にSPS社から全世界における引用商標の商標権を譲り受けた際の譲渡対価が500万USドル(当時の為替レートで5億円)であったこと(甲79)、⑤「UNBRAKO」ブランドのボルト製 品を網羅した多数のチラシないしカタログが外国において頒布されていたこと(甲36)、以上の事実を踏まえると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、原告の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして、外国(インド、英国、米国、アイルランド、ドイツ等)の需要者の間に広く認識されていたものというべきである。 これに反する本件審決の判断は誤りである。 イ不正の目的の判断の誤り被告は、長年にわたって、「UNBRAKO」ブランドのボルトを取り扱っていたのであるから、引用商標2及び3の商標登録が存続期間満了により抹消されたのは、原告の失念によるものであることを理解でき 被告は、長年にわたって、「UNBRAKO」ブランドのボルトを取り扱っていたのであるから、引用商標2及び3の商標登録が存続期間満了により抹消されたのは、原告の失念によるものであることを理解できたはずで あり、少なくとも、被告は、原告又はその日本総代理店であるPCCジャパンに問い合わせることができたものである。 しかるところ、被告が、そのような問合せをすることなく、本件商標の登録出願をし、その登録を受けたのは、長年にわたる取引相手である原告及びPCCジャパンによる引用商標の使用を排除し、損害を加えることを 目的とし、また、自ら製造したボルトに本件商標を使用し、既存の「UN BRAKO」ブランドの顧客誘引力にただ乗りすることを目的とするものであるといえるから、被告は、本件商標を「不正の目的」をもって使用をするものである。 これに反する本件審決の判断は誤りである。 ウ小括 以上によれば、本件商標は、原告の業務に係る商品を表示するものとして外国の需要者の間に広く認識されている引用商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものといえるから、商標法4条1項19号に該当する。 したがって、これを否定した本件審決の判断には誤りがある。 ⑵ 被告の主張原告が提出した証拠(甲30ないし37、74ないし78)を踏まえても、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、原告の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして、外国の需要者の間に広く知られていたとは到底いえない。 したがって、本件商標は商標法4条1項19号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。 3 取消事由3(本件商標の商標法4条1項7号該当性の判断の誤り)⑴ 原告の主張ア(ア) したがって、本件商標は商標法4条1項19号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。 3 取消事由3(本件商標の商標法4条1項7号該当性の判断の誤り)⑴ 原告の主張ア(ア) SPS社が製造する「UNBRAKO」ブランドのファスナー(以 下「UNBRAKOファスナー」という場合がある。)は、1961年(昭和36年)に日本に導入された。その時点で、既に、UNBRAKOファスナー(特に、六角穴付きボルト)は工業用ファスナーの国内需要者(工作機械メーカー等)の間で高度の技術を用いて製造されたファスナーとして有名であった(甲72、73)。UNBRAKOファスナーは、 それから60年以上にわたって、工業用ファスナーのユーザーに販売さ れてきた。 また、PCCジャパンは、1961年にUNBRAKOファスナーが日本に導入された当時から、UNBRAKOファスナーの日本総代理店(日本における独占的販売代理店)・輸入者・販売元であり(甲23、24、45、73)、2008年にUNBRAKOファスナー事業がSPS 社から原告に譲渡された後も、現在に至るまで、UNBRAKOファスナーの日本総代理店である。 一方、被告が代表取締役を務める中島工機株式会社(以下「中島工機社」という。)は、UNBRAKOファスナーについて、本件商標の出願時(出願日平成30年10月20日)まで、約40年の長期間にわたり PCCジャパンの取引先であり、本件商標の出願時の5年以上前には、原告の「復販売代理店」になっていた。 したがって、中島工機社は、UNBRAKOファスナーについて、PCCジャパンとの間の取引上の信頼関係を維持するとともに、原告の国際的商標権を尊重する義務を負っていたものであり、中島工機社と実質 的に同一 中島工機社は、UNBRAKOファスナーについて、PCCジャパンとの間の取引上の信頼関係を維持するとともに、原告の国際的商標権を尊重する義務を負っていたものであり、中島工機社と実質 的に同一人格である被告による本件商標の出願及び登録は、これらの義務に反する背信行為である。 (イ) 原告は、少なくとも、米国、カナダ、インド、中国、ヨーロッパ各国、オーストラリア、ニュージーランドで「UNBRAKO」を商標登録しており(甲8、80)、UNBRAKOファスナーは56か国以上の 国で長年にわたり販売されてきた(甲78、81、82)。その結果、100年以上の歴史を有する「UNBRAKO」ブランドを信用するユーザーが世界中に多数存在する。それにもかかわらず、被告が本件商標の商標権を行使し、被告が経営する会社(中島工機社又はトルク株式会社(以下「トルク社」という。))の模造品ファスナーに本件商標を付すこ とが合法行為になってしまうと、「UNBRAKO」ブランドに化体した 国際的信用性を毀損するとともに、越境流通によりUNBRAKOファスナーの国際市場に混乱をもたらすことになる。 もっとも、現時点では、被告は、本件商標の商標権を行使しておらず、UNBRAKOファスナーは従前どおりに国内市場で流通している。 しかしながら、被告が原告及びPCCジャパンとの関係を悪化させる 覚悟で本件商標の出願及び登録をする行為に及んだのは、時機を見て本件商標の商標権を行使する意図があるものとしか考えられない。 イ以上によれば、本件商標は、被告が供給する模造品UNBRAKOファスナーによる真正品UNBRAKOファスナーの国内需要者間の出所の混乱、真正品UNBRAKOファスナーの確立された国内市場流通網の破 壊、低品質 商標は、被告が供給する模造品UNBRAKOファスナーによる真正品UNBRAKOファスナーの国内需要者間の出所の混乱、真正品UNBRAKOファスナーの確立された国内市場流通網の破 壊、低品質・安価の模造品UNBRAKOファスナーによる「UNBRAKO」ブランドに化体した国際的信用性の毀損、これが越境流通することによるUNBRAKOファスナーの国際市場における混乱という点で、公序良俗を害するおそれがある。また、本件商標は、原告及びその日本総代理店(独占的販売代理店)に対する背信行為により登録されているという 点でも公序良俗を害するものである。 したがって、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」(商標法4条1項7号)に該当するから、これを否定した本件審決の判断には誤りがある。 ⑵ 被告の主張 ア(ア) 原告は、2008年にSPS社との間で商標権の譲渡契約(甲7)を締結した後、登録第605499号(引用商標3)の移転登録申請の手続を怠ったため、引用商標3の登録名義は、SPS社のままとなっていたところ、引用商標3は、2013年2月15日に存続期間が満了する商標権であったが、原告が更新申請の手続も怠ったため、引用商標3の 商標権は、同日に消滅した。また、譲渡の対象とされていなかった登録 第1329512号(引用商標2)に関しても、SPS社の名義のまま放置されていたが、引用商標2に関しても、更新申請の手続はされず、引用商標2の商標権は2018年3月27日に存続期間の満了によって消滅した。 原告が、引用商標2及び3の商標権の移転申請及び更新申請の手続を 怠った理由は判然とはしないが、譲渡対象に引用商標2の商標権が含まれていなかったことから考えると、原告は日本における商標権の 。 原告が、引用商標2及び3の商標権の移転申請及び更新申請の手続を 怠った理由は判然とはしないが、譲渡対象に引用商標2の商標権が含まれていなかったことから考えると、原告は日本における商標権の維持、日本におけるビジネスに重要性を見出していなかったため、これらの手続を怠ったと考えるほかない。 そして、原告が、上記の移転登録申請及び更新登録申請の手続を怠っ たことを正当化する理由は一切存在せず、その責任は全て原告にあるといわざるを得ない。 この点に関し、原告は、中島工機社は、PCCジャパンとの取引上の信頼関係を維持し、原告の国際商標権を尊重する義務を負っていた旨主張するが、PCCジャパンは「UNBRAKO」の商標に関する権利を 保有する主体ではない以上、PCCジャパンとの取引上の信頼関係があるからといって、原告の商標権を尊重する義務が生じるものではない。 (イ) 被告は、中島工機社の代表取締役であり、中島工機社は、原告が製造する「UNBRAKO」ブランドのボルトを、PCCジャパンから購入し、日本において販売している。 被告は、2018年9月ころ、「UNBRAKO」ブランドのボルトに関連する引用商標2の商標権が存続期間満了によって消滅したことを知り、同年10月20日に本件商標の出願を行ったものであるが、被告の出願の目的は、第三者が本件商標と同一又は類似の商標を商標登録し、第三者から権利行使を受けることを避けるためであり、不正な利益を得 る目的ではない。 また、中島工機社は、本件商標の出願後も、PCCジャパンと円満な関係を継続し、同社から購入したボルトの販売を行っているところ、被告及び中島工機社は、今後も、「UNBRAKO」ブランドのボルトの日本における普及活動に尽力していく意思を有しており、原 パンと円満な関係を継続し、同社から購入したボルトの販売を行っているところ、被告及び中島工機社は、今後も、「UNBRAKO」ブランドのボルトの日本における普及活動に尽力していく意思を有しており、原告が指摘するような模造品を製造したり、模造品を日本及び海外で販売する意思もな いため、市場における誤認混同や市場の混乱が生じるおそれもない。 さらに、被告は、これまで、原告及び原告の商品を取り扱う業者に対し、本件商標権の権利行使をしたことはなく、今後も権利行使をする意思はない。 イ以上の諸点に鑑みると、被告が本件商標の出願及び登録をしたことにつ いて不正な意図はないといえるし、また、本件商標の商標権の帰属に関する原告と被告間の争いは、「当事者同士の私的な問題」として解決すべき問題にすぎない。 したがって、本件において、「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情があるということはできないから、本件商標は商標法4条1項7号に該 当しないとした本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件商標の商標法4条1項10号該当性の判断の誤り)について⑴ 認定事実 証拠(甲4、7、8、45、50ないし73、96)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア(ア) 米国のSPS社は、「UNBRAKO」のブランド名で、商品「六角穴付きボルト」を製造販売していた。 (イ) 昭和33年8月29日、SPS社の関連企業のアンブラコ、ソケッ ト、スクリュー、コムパニー、リミテッドが「」の商標につ いて商標登録出願をし、昭和38年2月15日、商標登録第605499号(以下「第605499号商標」という。)として設定登録された(甲4)。 (ウ) 1961年(昭和36年)、SP につ いて商標登録出願をし、昭和38年2月15日、商標登録第605499号(以下「第605499号商標」という。)として設定登録された(甲4)。 (ウ) 1961年(昭和36年)、SPS社の日本法人として「日本アンブラコ株式会社」が設立され、同社は、昭和37年2月頃、日本において、 「UNBRAKO」ブランドのファスナー事業を開始し、SPS社の日本総代理店となった。 その後、日本アンブラコ株式会社は、「エス・ピー・エスアンブラコ株式会社」(通称「SPSアンブラコ」)に商号変更された後、平成29年10月1日、「PCCディストリビューション・ジャパン株式会社」(「P CCジャパン」)に商号変更された。 (エ) 2008年(平成20年)3月、SPS社及びその企業グループは、原告及びDeepakFastenersLimitedに対し、世界各国におけるファスナー事業(製造設備を含む。)及び「UNBRAKO」の商標等のブランドを譲渡(以下「本件事業譲渡」という。)した (甲96)。 同年12月31日、SPS社は、本件事業譲渡に従い、原告に対し、その保有する第605499号商標の商標権を譲渡した(甲7)。 イ(ア) 平成17年発行の雑誌「エン・ジャパン」(甲50)には、「アンブラコ六角穴付きボルト」の広告が「SPSアンブラコ(株)」との記載ととも に掲載されている。 (イ) 平成17年2月27日発行の雑誌「プラントエンジニア」(甲51)には、「アンブラコ六角穴付きボルト」の広告が「SPSアンブラコ(株)」との記載とともに掲載されている。 (ウ) 平成17年7月1日発行の雑誌「プレス技術」(甲52)には、「Un brako」の「六角穴付きボルト」の広告が「Unbrako」のロ ゴ、 」との記載とともに掲載されている。 (ウ) 平成17年7月1日発行の雑誌「プレス技術」(甲52)には、「Un brako」の「六角穴付きボルト」の広告が「Unbrako」のロ ゴ、「SPSアンブラコ株式会社」との記載とともに掲載されている。 (エ) 平成17年6月1日発行の雑誌「機械と工具」(甲53)には、「アンブラコ六角穴付きボルト」の広告が「SPSアンブラコ株式会社」との記載とともに掲載されている。 (オ) 2005年(平成17年)4月発行の雑誌「CivilEngin eeringJournal」(甲54)には、「アンブラコ六角穴付きボルト」の広告が「SPSアンブラコ」との記載とともに掲載されている。 (カ) 平成17年7月1日発行の雑誌「機械技術」(甲55)には、「Unbrako」の「六角穴付きボルト」の広告が「Unbrako」のロゴ、 「SPSアンブラコ株式会社」との記載とともに掲載されている。 (キ) 平成17年7月1日発行の雑誌「機械設計」(甲56)には、「Unbrako」の「六角穴付きボルト」の広告が「Unbrako」のロゴ、「SPSアンブラコ株式会社」との記載とともに掲載されている。 (ク) 平成17年7月1日発行の雑誌「型技術」(甲57)には、「Unbr ako」の「六角穴付きボルト」の広告が「Unbrako」のロゴ、「SPSアンブラコ株式会社」との記載とともに掲載されている。 (ケ) 平成17年7月1日発行の雑誌「工場管理」(甲58)には、「Unbrako」の「六角穴付きボルト」の広告が「Unbrako」のロゴ、「SPSアンブラコ株式会社」との記載とともに掲載されている。 (コ) 平成18年6月1日発行の雑誌「国際技術情報誌M&E」(甲59)には、「アンブラコ六角穴 告が「Unbrako」のロゴ、「SPSアンブラコ株式会社」との記載とともに掲載されている。 (コ) 平成18年6月1日発行の雑誌「国際技術情報誌M&E」(甲59)には、「アンブラコ六角穴付きボルト」の広告が「SPSアンブラコ株式会社」との記載とともに掲載されている。 (サ) 平成19年6月1日発行の雑誌「国際技術情報誌M&E」(甲60)には、「アンブラコ六角穴付き止めねじLoc-Wel」の広告が「SP Sアンブラコ株式会社」との記載とともに掲載されている。 (シ) 平成28年1月4日発行の「金属産業新聞」(甲61)には、新年のあいさつの広告の欄に、「Unbrako」のロゴ、「SPSアンブラコ株式会社」との記載が、「Unbrakoソケットスクリュー」との記載とともに掲載されている。 (ス) 平成29年7月31日発行の「金属産業新聞」(甲62)には、暑中 見舞いの広告の欄に、「Unbrako」のロゴ、「SPSアンブラコ株式会社」との記載が、「Unbrakoソケットスクリュー」との記載とともに掲載されている。 (セ) 平成18年発行の雑誌「国際技術情報誌M&E」、「NEP」、「機械と工具」、「機械設計」、「電子材料」、「新製品情報」(甲63ないし68)に は、「アンブラコエンジニアリングガイド」と題するカタログの広告が掲載されている。平成18年3月発行の上記カタログ(甲69の2)の表紙には、「Unbrako」のロゴが掲載されており、その中には、「六角穴付きボルト」ほか、「Unbrako」のねじ等の製品が掲載されている。 また、上記カタログは、令和元年10月に改訂版(甲69の3。発行者PCCジャパン)が発行されている。 (ソ) 「Unbrako」のロゴ、SPSアンブラコ株式会社との記載と ている。 また、上記カタログは、令和元年10月に改訂版(甲69の3。発行者PCCジャパン)が発行されている。 (ソ) 「Unbrako」のロゴ、SPSアンブラコ株式会社との記載とともに表示された「アンブラコロックウェル」の広告は、平成4年日本産業広告賞の情報誌部門第2位に入賞した(甲70)。 (タ) 昭和36年11月13日の「金属産業新聞」(甲72)、昭和37年2月1日の「金属産業新聞」(甲73)には、SPS社のボルトの日本市場への参入について取り上げた記事が掲載されている。 ⑵ 日本国内における引用商標の周知性の有無についてア原告主張の引用商標が付された「使用商品」は、「ボルト」であるから、 「使用商品」の需要者は、機械部品メーカー等を含む、工業製品を扱う業 者であると認められる。 イ前記(1)の認定事実によれば、平成17年から平成19年までの間、「Unbrako」の「六角穴付きボルト」の広告が一定程度、業界誌に掲載されており、その当時、「Unbrako」の欧文字が工業製品を扱う業者間でPCCジャパン(当時の商号は「エス・ピー・エスアンブラコ株式会 社」(通称「SPSアンブラコ」))の商標として、一定程度認識されていたことが認められる。他方で、前記(1)の認定事実によれば、平成20年以降、本件商標の登録査定時(平成31年4月12日)までの間、「Unbrako」又は「アンブラコ」が原告又はPCCジャパンの「ボルト」等の商品を表示するものとして使用されていたことが証拠上認められるのは、「金 属産業新聞」のあいさつ広告(前記(1)イ(シ)、(ス))にとどまり、他に引用商標が原告又はPCCジャパンの業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして使用された事実を認めるに足りる証拠 金 属産業新聞」のあいさつ広告(前記(1)イ(シ)、(ス))にとどまり、他に引用商標が原告又はPCCジャパンの業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして使用された事実を認めるに足りる証拠はない。 以上によれば、引用商標は、本件商標の登録出願時(平成30年10月20日)及び登録査定時(平成31年4月12日)において、日本国内に おいて、原告の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 これに反する原告の主張は採用することができない。 (3) 小括したがって、本件商標が商標法4条1項10号に該当しないとした本件審 決の判断に誤りはないから、原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本件商標の商標法4条1項19号該当性の判断の誤り)について⑴ 認定事実証拠(甲30ないし36、74、75)及び弁論の全趣旨によれば、次の 事実が認められる。 ア 1999年(平成11年)12月に米国で発行された雑誌「FASTENING」(甲74)には、「UNBRAKOⓇ」との記載とともに、「UNBRAKO」のソケットスクリューを紹介する記事が掲載されている。 イ 2018年(平成30年)10月にインドで発行された雑誌「FASTENERSINDIA」(甲75)には、引用商標1が掲載され、「Unb rako」がインド最大の産業ファスナーメーカーである旨の記載がされている。 ウ原告は、2012年(平成24年)にドイツで開催された展示会、2013年(平成25年)にインドで開催された展示会、2014年(平成26年)にメキシコで開催された展示会、同年に米国で開催された展示会、 2015年(平成27年)にドイツで開催された展示会、2 13年(平成25年)にインドで開催された展示会、2014年(平成26年)にメキシコで開催された展示会、同年に米国で開催された展示会、 2015年(平成27年)にドイツで開催された展示会、2017年(平成29年)にインドで開催された展示会にそれぞれ出展し、引用商標1とともに原告のボルト等の商品を展示した(甲30ないし35)。 エ 2009年(平成21年)から2020年(令和2年)にかけて、引用商標1が付された英語によるカタログ等が作成されていた(甲36)。 ⑵ 外国における引用商標の周知性の有無についてア前記1(1)ア(エ)の認定事実及び前記(1)の認定事実によれば、2008年(平成20年)以降、引用商標1が原告の業務に係る商品を表示する商標として、世界各地で一定程度使用されていたことがうかがわれるが、それ以上に、本件全証拠によっても、引用商標が、本件商標の登録出願時(平 成30年10月20日)及び登録査定時(平成31年4月12日)、外国(インド、英国、米国、アイルランド又はドイツ等のいずれかの国)において、原告の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 イなお、原告が提出した「RREKHA & ASSOCIATESL UDHIANA」が作成した書面(甲78)には、2012年から201 9年までの間の全世界における「UNBRAKO」ブランド製品の年間の売上高が、最小で約1億1836万USドル(2015年)、最大で1億7687万USドル(2012年)であり、また、同製品の年間の広告宣伝費が、最小で約415万USドル、最大で546万USドルであるとの記載がある。しかし、上記書面の内容については、具体的な根拠が何ら示さ 万USドル(2012年)であり、また、同製品の年間の広告宣伝費が、最小で約415万USドル、最大で546万USドルであるとの記載がある。しかし、上記書面の内容については、具体的な根拠が何ら示さ れていないから、上記内容を事実として認めることはできない。 また、仮にそれが事実であるとしても、原告の商品について引用商標がどのような態様で表示されていたかは明らかでなく、各国における原告の商品のシェアも不明であることからすれば、上記書面によって、引用商標が外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 (3) 小括したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件商標は商標法4条1項19号に該当しないから、本件審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(本件商標の商標法4条1項7号該当性の判断の誤り)について ⑴ 認定事実前記1⑴アの認定事実と証拠(甲45、73、86ないし90)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア中島工機社は、平成13年1月から現在に至るまで、PCCジャパンから、「UNBRAKO」ブランドのファスナーを仕入れ、販売している(甲 45、86ないし90)。 イ平成20年3月、SPS社及びその企業グループは、原告及びDeepakFastenersLimitedに対し、世界各国におけるファスナー事業(製造設備を含む。)及び「UNBRAKO」の商標等のブランドを譲渡(本件事業譲渡)した後、同年12月31日、SPS社は、本 件事業譲渡に従い、原告に対し、その保有する第605499号商標 ()の商標権を譲渡した。 ウ平成20年7月18日、原告は、PCCジャパン(当時の商号はエス・ PS社は、本 件事業譲渡に従い、原告に対し、その保有する第605499号商標 ()の商標権を譲渡した。 ウ平成20年7月18日、原告は、PCCジャパン(当時の商号はエス・ピー・エスアンブラコ株式会社)との間で、PCCジャパンを、日本における「UNBRAKO」ブランドのファスナーの独占的販売代理店とする旨の独占的販売代理店契約を締結した(甲24、45)。 エ平成25年2月15日、第605499号商標の商標権は、存続期間満了により消滅した(甲4)。 オ平成29年3月12日、商標登録第3270347号()の商標権が存続期間満了により消滅した。当時の登録名義人は、「エスピーエステクノロジーズインコーポレイテッド」であった(甲102)。 カ平成29年7月、被告が経営するトルク社(当時の商号「小林産業株式会社」)が、中島工機社の株式を100%取得し、同社をその完全子会社にした(甲45、85)。 キ被告は、平成29年12月25日、中島工機社の代表取締役に就任した(甲29)。 ク平成30年3月27日、商標登録第1329512号()の商標権が存続期間満了により消滅した。当時の登録名義人は、「SPSTechnologiesLLC」であった(甲3)。 ケ被告は、平成30年10月20日、本件商標について登録出願をし、令和元年7月19日、その設定登録を受けた(甲97)。 ⑵ 商標法4条1項7号該当性についてア前記⑴の認定事実によれば、原告は、平成20年12月31日、SPS社から第605499号商標(引用商標3と同じ構成)の商標権の譲渡を受けたものの、その移転登録手続をすることなく、更新申請の手続もしなかったため、平成25年2月25日 平成20年12月31日、SPS社から第605499号商標(引用商標3と同じ構成)の商標権の譲渡を受けたものの、その移転登録手続をすることなく、更新申請の手続もしなかったため、平成25年2月25日に上記商標権は存続期間満了により、 消滅したことが認められる。 また、原告は、本件事業譲渡に伴って、SPS社やその関連会社から商標登録第3270347号及び商標登録第1329512号の商標(引用商標2と同じ構成)の商標権を譲り受けることはなく、また、これらの商標の商標権については更新申請の手続がされなかったため、それぞれ、平成29年3月12日及び平成30年3月27日に商標権が存続期間満了 により消滅したことが認められる。 以上の経緯に鑑みると、原告は、日本における「UNBRAKO」の商標の商標登録について、十分な関心を持つことなく、適切な管理を怠っていたものと認められる。 イ次に、前記⑴の認定事実によれば、PCCジャパンは、原告の日本にお ける、「UNBRAKO」ブランドのファスナーの独占的販売代理店であり、中島工機社は、遅くとも平成13年以降、PCCジャパンから「UNBRAKO」ブランドのファスナーを仕入れ、販売しているものと認められるが、一方で、中島工機社と原告との間において別段の契約関係があるものとは認められない。 さらに、被告は、本件訴訟において、本件商標の出願をした目的は、第三者が本件商標と同一又は類似の商標を商標登録し、第三者から権利行使を受けることを避けるためである旨を述べ、被告は、これまで、原告及び原告の商品を取り扱う業者に対し、本件商標権の行使をしたことはなく、今後もそのような権利行使をする意思はない旨を表明している。 ウ前記ア及びイの事 ある旨を述べ、被告は、これまで、原告及び原告の商品を取り扱う業者に対し、本件商標権の行使をしたことはなく、今後もそのような権利行使をする意思はない旨を表明している。 ウ前記ア及びイの事情に照らすと、本件商標は、原告が主張するように、真正品UNBRAKOファスナーの国内需要者間の出所の混乱、UNBRAKOファスナーの国際市場における混乱等をもたらすものとは認められず、また、原告及びその日本総代理店(独占的販売代理店)であるPCCジャパンに対する背信行為により登録されたものと認めることはでき ない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」(商標法4条1項7号)に該当するものと認めることはできない。 (3) 小括よって、本件商標が商標法4条1項7号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはないから、原告主張の取消事由3は理由がない。 第5 結論以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 したがって、原告の請求は棄却されるべきものであるから、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官遠山敦士 裁判官小川卓逸は、転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官大鷹一郎 (別紙) 引用商標1 別紙)引用商標1

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