令和6年11月22日宣告主文被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中710日をその刑に算入する。 新潟地方検察庁で保管中のロープ1本(領置番号省略)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、かねて職場の同僚であったAと不倫関係にあり、妻であるB及び長女であるCを疎ましく思っていたところ、第1 令和3年3月29日午前7時過ぎ頃、当時の被告人方である新潟市中央区(住所省略①)において、前記B(当時29歳)に対し、催眠作用等を有する薬物であるニトラゼパムを混入した飲料を提供したものの、同人が直ちに同飲料を飲むことはなかったところ、同日午後5時50分頃、前記被告人方において、情を知らない前記Bが同飲料を飲んだ可能性がある上、同人が同所から新潟県魚沼市(住所省略②)所在のD方に向けて自動車の運転を開始する予定であることを認識したことにより、前記Bがそのまま自動車を運転すれば、同薬物の薬理作用により意識障害等が生じて交通事故を惹起し、同人及び同車に同乗する予定の前記C(当時生後約5か月)が死ぬ可能性があることを認識したのであるから、直ちに前記Bの運転を制止すべき義務を負っていたのに、同人らが交通事故により死亡するかもしれないことを認識しながら、あえて前記Bの運転を制止しなかったことにより、同日午後6時頃、同人をして自動車を運転して前記被告人方を出発させ、その後、前記Bに前記薬物の薬理作用により意識障害等を生じさせて、同日午後7時32分頃、新潟市南区(住所省略③)付近道路を同車を運転して進行中の同人に、前記意識障害等の影響により同車を路外に逸走させて同所付近に設置されたデリネーターポールに衝突させる交通事故を惹起させたが、前記Bらを殺害するには至らなかった、 第2 前記Bを殺害しようと考 障害等の影響により同車を路外に逸走させて同所付近に設置されたデリネーターポールに衝突させる交通事故を惹起させたが、前記Bらを殺害するには至らなかった、 第2 前記Bを殺害しようと考え、令和3年9月10日午後6時14分頃から同日午後6時20分頃までの間に、新潟市南区(住所省略④)所在のE病院東棟2階薬剤科保管庫において、同病院長F管理の薬剤である塩化カリウム10本(仕入価格合計約1666円相当)を、同病院長に無断で持ち出し、もって、前記薬剤を窃取するとともに殺人の予備をした、第3 令和3年11月7日午前10時30分頃、新潟市南区(住所省略⑤)所在の被告人方において、前記B(当時29歳)に対し、殺意をもって、その頸部をロープ(領置番号省略)で絞め付け、よって、その頃、同所において、同人を頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した、第4 前記第3の日時場所において、前記C(当時1歳)に対し、殺意をもって、その頸部を同ロープで絞め付け、よって、その頃、同所において、同人を頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害したものである。 (事実認定の補足説明)第1 争点弁護人は、殺人未遂事件に関して、①被告人がB(以下「B」という。)の運転を制止しなかった不作為(以下「本件不作為」という。)は、作為による殺人と同価値と評価されるべきほどに人を死亡させる現実的危険性を有する行為ではなく、殺人の実行行為に該当しない、②BやC(以下「C」という。)が死んでも構わないとは考えていなかったとして、無罪である旨主張し、殺人予備、窃盗事件に関しても、塩化カリウムを無断で持ち出したが、③塩化カリウムを用いてBを殺害しようと考えて持ち出したものではなく、④殺人の予備行為にも該当しないとして、殺人予備についても無罪である旨主張する。 しても、塩化カリウムを無断で持ち出したが、③塩化カリウムを用いてBを殺害しようと考えて持ち出したものではなく、④殺人の予備行為にも該当しないとして、殺人予備についても無罪である旨主張する。 すなわち、本件における事実認定上の争点は、殺人未遂事件につき、①実行行為該当性(作為義務違反の有無)及び②殺意の有無であり、殺人予備、窃盗事件につき、③殺意の有無及び④予備行為該当性である。 第2 殺人未遂事件について 1 事実関係関係証拠によると、以下の各事実が認められる(これらの事実については弁護人及び被告人も争っていない。)。 ⑴ 令和3年3月までの被告人の人的関係等被告人は、平成30年5月にBと婚姻したが、令和元年10月頃には職場の同僚であったA(以下「A」という。)と不倫関係にあった。被告人とBとの間には、令和2年10月、長女であるCが誕生したものの、被告人とAの不倫関係はその後もほぼ間断なく続いた。 被告人は、同年秋頃から、競馬投資の資金を得るため、Bに伝えることなく消費者金融から借入れを行っていたが、その後返済に窮するようになり、令和3年1月頃から、Bに無断でB名義の口座預金を流用し、返済に充てるなどしていた。 ⑵ 令和3年2月23日に被告人がBに睡眠薬を摂取させたことBは、令和3年2月22日、予定されていた児童手当の振込みが貯金通帳上見当たらないことを心配し、被告人に対して、郵便局に直接確認に行きたい旨を伝えた。 被告人は、上記流用がBに発覚することをおそれ、郵便局の翌営業日の前日である同月23日の午後9時頃、Bに睡眠薬を摂取させ、その薬理作用により外出を控えさせるため、職場から持ち帰っていた睡眠薬であるゾルピデム2、3錠を砕き、粉状になった同睡眠薬の混入したコーヒー牛乳を作成して、入浴後 の午後9時頃、Bに睡眠薬を摂取させ、その薬理作用により外出を控えさせるため、職場から持ち帰っていた睡眠薬であるゾルピデム2、3錠を砕き、粉状になった同睡眠薬の混入したコーヒー牛乳を作成して、入浴後のBに提供し、これを飲ませた。Bは、その約15分から20分後、めまい、眠気及び吐き気を訴え、ほどなくして眠り始め、更にその約10分から20分後からは、尿失禁、おう吐、足取りが大きくふらつくなどの症状が生じた。Bは、同月24日午前1時37分頃、被告人運転の自動車で訪れた急患センターにふらつきながら来院した。Bは、その頃行われた診察時にも、眠そうで呂律が回らない状態であった。 ⑶ 令和3年3月29日に被告人がBに睡眠薬入りの飲料を提供したこと等Bは、令和3年3月26日から同月27日にかけて、被告人に対し、B名義の口 座預金に不審な入出金があるため、銀行に直接確認に行きたい旨を伝えた。被告人は、銀行の翌営業日である同月29日午前7時15分頃、Bに意識障害を生じさせようと考え、職場から持って帰っていた睡眠薬2錠を砕き、粉状になった同睡眠薬の混入したコーヒー牛乳を作成して、テーブル上に置いてBに提供したが、Bはこれを飲まなかった。なお、被告人は、その当時、コーヒー牛乳に混入させた同睡眠薬はゾルピデムであると認識していた。 被告人及びBは、同日午前11時頃にCを連れて銀行の支店を訪れ、昼頃にBが銀行員との間で上述した不審な入出金に関するやり取りをするなどした後、午後4時頃、帰宅の道中において、Bが母親とメッセージのやり取りをしていたところ、被告人が前記流用に及んだことを認めた。Bは、同日午後5時頃、被告人及びCと共に帰宅して、被告人を怒って責め立て、同日午後5時15分頃から約10分間Cに授乳をした後、被告人に対してCを連れて実家に帰る旨 人が前記流用に及んだことを認めた。Bは、同日午後5時頃、被告人及びCと共に帰宅して、被告人を怒って責め立て、同日午後5時15分頃から約10分間Cに授乳をした後、被告人に対してCを連れて実家に帰る旨を伝えた上で、荷造りを始めた。なお、Bの実家は、新潟県魚沼市に所在しており、当時の被告人方から自動車で向かう場合、幹線道路を含む片道約80キロメートルの経路を経由して、最短でも約1時間30分をかけて運転する必要があるところ、このことは被告人も当時認識していた。 被告人は、同日午後5時50分頃、テーブル上の上記コーヒー牛乳を見た際、その量が少ないように感じた。 Bは、同日午後6時頃、Cを乗せた自動車を運転して、当時の被告人方を出発した。被告人は、これを見送った後、同日午後6時8分頃、Bに対して「気を付けてね!」とメッセージを送信した。被告人は、その後、Bが同日午後7時46分頃に「じこった」とメッセージを送信するまでの間、Bとの間で、断続的にメッセージのやり取りをしていた。 ⑷ 本件事故の態様等Bは、Cの同乗する上記自動車を運転して出発した後、Bの実家とは逆方向に進行するなどしながら、交差点を右折して進入した広域農道上を時速約60キロメー トルで進行していたところ、一度左側にそれて進行方向左側のガードレールに接近し、これに接触することなく走行車線側に戻ったものの、その後も更に10回ほど進行方向左側にそれては戻るようにしてふらついた後、同日午後7時32分頃、新潟市南区(住所省略③)の同広域農道上を進行していた際、進行方向左側の路外に逸走し、同所付近に約18.7メートルの間隔を置いて設置されていたデリネーターポール2本に順次衝突してなぎ倒し(以下、この交通事故を「本件事故」という。)、停止した。なお、本件事故の現場付近の上記広域 走し、同所付近に約18.7メートルの間隔を置いて設置されていたデリネーターポール2本に順次衝突してなぎ倒し(以下、この交通事故を「本件事故」という。)、停止した。なお、本件事故の現場付近の上記広域農道は、制限速度時速60キロメートルである直線状の片側一車線道路となっており、対向車線への進入を妨げる中央分離帯等の障害物は設けられていない。 Bは、同月30日及び同年4月1日、本件事故及びその前後の状況に関し、被告人及び弟に対して「私マジで昨日の事故はまた意識飛んでたんかな」「そういえばどんな道を走ったかあんまり記憶にないし、妙にふらついてたし、コンビニもどこ寄ったかとか覚えてないわ」「別に眠くもなかったのよ」「なんで道間違えたんだかもわかんないや」「なんだっけ」「自分が怖い」「なんかどうやらまた意識飛んでた系かもしれん」「あまり覚えてないのよ」「体感的には気づいたら寝てたみたい、起きてからも体が重くてめちゃ眠いみたいな」などとメッセージで伝えた。 ⑸ Bの毛髪鑑定の結果等Bの毛髪鑑定の結果、Bは、ゾルピデム及びニトラゼパムを常用しておらず、単回摂取したと考えて矛盾はなく、ゾルピデムを令和3年2月23日に摂取したと仮定した場合、同年3月30日から同年4月1日まで、あるいはその前後5日ほどの間に、ニトラゼパムを摂取したと推定される。なお、Bは、少なくとも令和2年1月以降、これらの処方を受けたことはない。 ⑹ ゾルピデム、ニトラゼパムの効用等ゾルピデム及びニトラゼパムは、いずれもいわゆる睡眠薬であり、薬理作用として催眠作用、鎮静作用、筋弛緩作用がある上、一過性前向性健忘(薬物摂取後、覚醒までの間の記憶が障害される状態)、もうろう状態(意識レベルが低下し、意識が はっきりしない状態)、ふらつきといった副作用の症状がある。 緩作用がある上、一過性前向性健忘(薬物摂取後、覚醒までの間の記憶が障害される状態)、もうろう状態(意識レベルが低下し、意識が はっきりしない状態)、ふらつきといった副作用の症状がある。いずれの投薬説明書にも、服用した場合には自動車運転を含む機械操作を控えるべきである旨の注意書が付されている。 ゾルピデムは、摂取後30分程度で作用が現れ、おおむね1時間以内で最高血中濃度に達し、その効果は2時間から3時間程度持続する。ニトラゼパムは、摂取後15分から45分程度で作用が現れ、おおむね2時間程度で最高血中濃度に達し、その効果は6時間から8時間程度持続する。 2 争点①(本件不作為の実行行為該当性)について⑴ 本件不作為の危険性についてア本件不作為の危険性を判断する前提として、Bのニトラゼパムの摂取の有無及び時期を検討する。 Bの毛髪鑑定の結果によれば、Bがゾルピデムを令和3年2月23日に摂取したと仮定した場合、同年3月30日から同年4月1日まで、あるいはその前後5日ほどの間に、ニトラゼパムを摂取したと推定されるところ、現にBは同年2月23日に被告人が粉状のゾルピデムを混入させたコーヒー牛乳を飲んで同薬物を摂取していることに加え、被告人自身、本件不作為の当日である同年3月29日に睡眠薬入りのコーヒー牛乳を作成し、Bに提供したこと自体は認めていることに照らせば、Bは同日にニトラゼパムを摂取したと認められる。 次いで、同日にBが摂取した時間を検討する。 関係証拠によれば、昼頃にBとやり取りをした銀行員がBの様子に変わった点はなかった旨述べていることや、Bが銀行から帰宅する道中で行っていた母親とのメッセージのやり取りには特段異常が見当たらないことに照らせば、Bがニトラゼパムを摂取したのは銀行からの帰宅後である午後5時以降と った旨述べていることや、Bが銀行から帰宅する道中で行っていた母親とのメッセージのやり取りには特段異常が見当たらないことに照らせば、Bがニトラゼパムを摂取したのは銀行からの帰宅後である午後5時以降と認められる。その上で、被告人が、BがCへの授乳を始めるまでにコーヒー牛乳を飲んだ様子を見ていない旨供述していることからすれば、Bは、Cへの授乳を始めた午後5時15分頃から、当時の被告人方を出発する午後6時頃までの間に、ニトラゼパムを摂取したと認め るのが相当である。 イ上記検討を踏まえ、本件事故の原因について検討する。 上記の事実によれば、Bは、本件不作為の当日である令和3年3月29日午後5時15分頃から同日午後6時頃までの間に、上述した薬理作用を有するニトラゼパムを摂取して、同日午後6時頃、自動車を運転して当時の被告人方を出発し、Bの実家とは逆方向に進行するなどした後、運転をしてから約1時間30分後である同日午後7時32分頃、直前に10回ほどふらついていた上で、デリネーターポール1本に衝突し、それにもかかわらず約18.7メートルにわたり進行を継続して、もう1本のデリネーターポールに衝突したことが認められる。 このような本件事故の経過及び態様に照らせば、本件事故の当時、Bの意識レベルは相当程度低下して、意識障害が生じていたというべきであり、薬学博士である証人Gは、Bが本件事故及びその前の状況に関する記憶があまりない旨述べていたことはニトラゼパムの副作用である一過性前向性健忘と整合する、Bが途中から目的地であるBの実家とは逆方向に進行していることはニトラゼパムの作用としての集中力や周辺を把握する意識レベルの低下が影響したと考えられる旨証言しており、ニトラゼパムの薬理作用等によって本件事故が生じたことを裏付けている。 以上によれ ていることはニトラゼパムの作用としての集中力や周辺を把握する意識レベルの低下が影響したと考えられる旨証言しており、ニトラゼパムの薬理作用等によって本件事故が生じたことを裏付けている。 以上によれば、本件事故の原因は、Bがニトラゼパムを摂取したことで意識障害が生じていたことによって生じたものと認められる。 これに対し、弁護人は、①Bは育児等の疲労による眠気のため事故を起こした可能性がある、②Bが当時の被告人方を出発してから約45キロメートルもの距離を約1時間20分程度事故なく運転できていたこと、その道中に母親と特段問題なく連絡を取り合うことができていたこと、事故直後にBがした119番及び110番通報の際の受け答えが正常であったことなどから、仮にニトラゼパムの影響があったとしても、その影響はほとんどなかったなどと主張する。 しかし、①については、Bが通い慣れたはずの実家への経路を長距離にわたって道迷いをしたことの説明がつかない。また、事故直前には10回ほどふらついてい たことからして、単なる疲労による眠気とは異なる意識障害があったことがうかがえる上、Bは本件事故の際眠気は感じておらず、気が付いていたら寝ていたようである旨述べており、このことも疲労による眠気とすれば不自然であることに照らせば、本件事故の原因が疲労等による眠気とは認められない。②についても、ニトラゼパムが摂取後最高血中濃度に達するまで約2時間を要することに照らせば、摂取後約1時間30分で発生した本件事故の前後において比較的正常な行動が見られたとしても、本件事故の当時にニトラゼパムが強く影響したことと矛盾する事情とはいえない。現に本件事故直前の走行状況によれば、少なくともその時点ではニトラゼパムの影響が強く生じていたと認められることからすると、かかる弁護人の主 にニトラゼパムが強く影響したことと矛盾する事情とはいえない。現に本件事故直前の走行状況によれば、少なくともその時点ではニトラゼパムの影響が強く生じていたと認められることからすると、かかる弁護人の主張も上記認定を揺るがすものではない。 ウ以上を踏まえ、本件不作為の危険性について検討する。 Bは、服用した場合には自動車運転を含む機械操作は控えるべきである旨の注意書が付されているニトラゼパムを摂取した上で、約80キロメートル離れた実家に向けて、夕方から夜間にかけて、視認状況も悪く、交通量も多く見込まれる時間帯に、最短でも1時間30分ほどの道のりを運転しようとしていたのであり、ニトラゼパムが最高血中濃度に達するまで2時間ほどであったことからすれば、その道中でニトラゼパムの影響により運転操作を誤る可能性は十分にあったものといえる。 そうすると、実際に本件事故が生じたことを度外視しても、そもそも、ニトラゼパムを摂取させた上で運転をさせることは、交通事故を引き起こす危険性が高いものであったといえる。 そして、現にBはニトラゼパムの影響により、道に迷い、実家への経路から大きく外れた末、運転操作を誤って本件事故を生じたところ、本件現場ではたまたま路外に逸走してデリネーターポールを損壊し、運転車両が一部損壊したにとどまり、Bらには怪我も生じてはいなかったものの、本件事故現場ですら、交通量は少ないものの、制限速度60キロメートルの片側一車線道路であって、対向車線へ逸走すれば、対向車と衝突し、大きな事故が生じる可能性も当然にあり得たものである上、 まして、Bは道迷いの末に交通量の多い幹線道路も走行していた経過もあったことに照らせば、Bが摂取したニトラゼパムの量は証拠上は必ずしも判然としないことを踏まえても、本件不作為は、Bをして交通事故を引き して、Bは道迷いの末に交通量の多い幹線道路も走行していた経過もあったことに照らせば、Bが摂取したニトラゼパムの量は証拠上は必ずしも判然としないことを踏まえても、本件不作為は、Bをして交通事故を引き起こす危険性が高い行為であったというべきである。 交通事故が発生した場合、事故態様次第では、当事車両の運転者及び同乗者の生命に危険が及ぶことは十分想定されるところ、Bは、本件不作為の当時、夕方から夜間、視認状況が悪く、交通量も多く見込まれる時間帯に長時間・長距離にわたる運転操作を具体的に予定していたこと、Bはひそかにニトラゼパムを摂取させられたのであって、自身で体調の変化に気付き、途中で休憩することを期待できる状況にあったともいえないこと、ニトラゼパムには筋弛緩作用があり、事故が生じた際には反射能力が低下して自分の身を守ることが困難となり得ることに照らせば、本件不作為の当時、本件不作為により、BをしてCが同乗する自動車を運転させれば、Bが途中休憩することなく運転を継続する間に、ニトラゼパムの影響により運転操作を誤って、たとえば対向車線に逸走して他の車両と正面衝突したり、壁、建造物等に激突するなどし、その際にBが受け身を取ることもできない結果、運転者であるB及び同乗者であるCが死亡する交通事故を引き起こす危険性が具体的に想定し得たということができる。 以上によれば、本件不作為は、Bをして交通事故を生じさせる危険の高い行為であり、事故態様によっては、運転者であるBや同乗者であるCを死亡させることも具体的に想定できる程度の危険性を有していたというべきである。 ⑵ 被告人はBの睡眠薬入りコーヒー牛乳の摂取を認識していたか作為義務の検討の前提として、本件不作為の当時、被告人がBが睡眠薬入りのコーヒー牛乳を摂取していたことを認識していたかについて検 る。 ⑵ 被告人はBの睡眠薬入りコーヒー牛乳の摂取を認識していたか作為義務の検討の前提として、本件不作為の当時、被告人がBが睡眠薬入りのコーヒー牛乳を摂取していたことを認識していたかについて検討する。 被告人は、公判廷において、本件不作為の当日午後5時50分頃、自分が作成して提供したコーヒー牛乳を見て量が少ないように感じたものの、朝の作成時にBに早く飲ませるべく焦っていつもより少なく作成してしまっただけだと考え、Bが飲 んだとは思わなかった旨供述する。 しかし、被告人は、同じく公判廷において、Bがコーヒー牛乳を絶対に飲んでないと断言はできなかった、もし睡眠薬を飲んでいたとすれば何かしら影響が出るだろうと考えながら、出発したBとメッセージをやり取りしていた、もしBが運転中眠くなれば途中で運転をやめて休むだろうと考えていたなどとして、コーヒー牛乳を飲んだ可能性があることを前提とした供述をしている。これらは前記供述とは相反するものであるが、このような公判供述も踏まえると、本件不作為の当時、被告人の認識において、Bが睡眠薬入りのコーヒー牛乳を飲んだ可能性は排除されていなかったものと認められる。 これらに加え、被告人は、捜査段階では、Bがコーヒー牛乳を飲んだことに気が付いたのは、Bの運転開始前であった旨供述しているところ(乙29)、当該供述は、検察官により、「コーヒー牛乳を飲んだことに気付いたのは、奥さんが運転を始めた後のことではないか。」との質問に対し、それを否定して述べたものである。検察官と被告人のやりとりは、問答形式で記載されており、当該供述調書について被告人は読み聞かせを受けた上で署名押印をしており、基本的に信用性を疑うようなものではない。 このような被告人の公判供述並びに捜査段階の供述及びこれが得られた過程を通 れており、当該供述調書について被告人は読み聞かせを受けた上で署名押印をしており、基本的に信用性を疑うようなものではない。 このような被告人の公判供述並びに捜査段階の供述及びこれが得られた過程を通覧すれば、被告人の公判供述のうち、Bが睡眠薬入りのコーヒー牛乳を飲んだとは思わなかった旨をいう上記部分は信用できず、少なくとも、被告人は、本件不作為の当時、出発前のBが睡眠薬入りのコーヒー牛乳を飲んだ可能性があること自体は認識していたものと認めるのが相当である。 弁護人は、捜査段階における上記供述は、本件不作為の当日、コーヒー牛乳にゾルピデムを混ぜたことを前提としており、検察官の誘導によって供述が導かれたか、令和3年2月の出来事と混同して供述されたもので、信用性が認められない旨主張する。 しかし、検察官による誘導があったことを疑うべき具体的な事情は見当たらない。 また、上記供述は、朝方に睡眠薬入りのコーヒー牛乳を作成したものの、Bは手を付けず、帰宅後、Bが自動車を運転して出発をする前に、同コーヒー牛乳の量を確認したところ減っていることを確認したというものであり、このような経過は、夜間に入浴後のBに対して睡眠薬入りのコーヒー牛乳を提供した同月23日の経過とは全く異なるものである。これらを混同し、記憶違いをすることは考え難い。コーヒー牛乳に混入させた睡眠薬の種類に関する記憶の混同があり得たとしても、被告人において、本件不作為の当時、自動車を運転して出発する前のBが睡眠薬入りのコーヒー牛乳を飲んだ可能性があること自体を認識したということが勘違いによるものとは考え難く、信用できるというべきである。この点に関する弁護人の主張も採用できない。 ⑶ 本件不作為における作為義務についてそもそも、B及びCを死亡させることを具体的に想 とが勘違いによるものとは考え難く、信用できるというべきである。この点に関する弁護人の主張も採用できない。 ⑶ 本件不作為における作為義務についてそもそも、B及びCを死亡させることを具体的に想定できる程度の危険性が生じたのは、被告人が睡眠薬入りのコーヒー牛乳を作成し、Bに提供したことにしか求めることができない上、出発前のBが睡眠薬入りのコーヒー牛乳を飲んだ可能性があることを認識し、上記危険性が現実化し得る事態となったことを認識していたのは、被告人以外に存在しない。 以上によれば、被告人は、自己の責めに帰すべき事由によりB及びCを死亡させることを具体的に想定できる程度の危険を生じさせ、その危険が現実化し得る事態を解消できる唯一の存在であったということができる上、被告人は、本来であれば、妻であるBを扶助し、子であるCを扶養すべき立場にあったことも併せ考えれば、本件不作為の当時、直ちにBの運転を制止すべき義務があったというべきであるし、そのような制止は可能かつ容易であったといえる。 ⑷ 作為義務違反による殺人の実行行為該当性について以上によれば、被告人は、かかる作為義務に違反し、判示のBが運転することを制止せずにBの運転を開始させたものであるところ、かかる不作為は、交通事故による死の結果発生の危険性の高い行為であったというべきであり、実際にも本件事 故が生じていることからしても、作為による殺人と同価値といえるものであり、不作為による殺人の実行行為に該当するものということができる。 3 争点②(殺意の有無)について上述のとおり、被告人が、本件不作為の当時、出発前のBが睡眠薬入りのコーヒー牛乳を飲んだ可能性について認識していたと認められる。また、被告人は、本件事故の約1か月前、ゾルピデムをBに摂取させ、その際Bに現れ おり、被告人が、本件不作為の当時、出発前のBが睡眠薬入りのコーヒー牛乳を飲んだ可能性について認識していたと認められる。また、被告人は、本件事故の約1か月前、ゾルピデムをBに摂取させ、その際Bに現れた強い意識障害の症状も間近でよく認識していたものといえる。そうすると、本件不作為の当時、被告人は、Bがゾルピデムを混入させたコーヒー牛乳を飲んだ可能性を認識していたことからすれば、出発後運転中に睡眠薬を摂取したBに生じ得る症状は十分想定できたといえ、そのようなBが実家に向けて長距離・長時間にわたり運転操作をすること、その際には幹線道路も経由することから、意識障害が生じて交通事故を起こし、事故によりBやCが死亡する具体的な可能性も十分に認識していたものと推認できる。被告人は、本件不作為の当時、本件不作為が有する上記危険性を十分認識した上で、なおBらが死亡しても構わないと考えて、本件不作為に及んだものというべきであり、未必ながらも殺意を有していたものと認めるのが相当である。 その他、弁護人の主張を検討しても、殺意に欠けるところはない。 4 結論以上によれば、被告人は、本件不作為の当時、直ちにBの運転を制止すべき義務を負っていたのに、殺意をもって、あえてBの運転を制止しなかったものというべきであり、このことにより、本件事故を惹起したが、B及びCを殺害するには至らなかったから、判示第1のとおり、被告人には殺人未遂罪が成立する。 第3 殺人予備、窃盗事件について 1 事実関係関係証拠によると、以下の事実が認められる(以下の事実については弁護人及び被告人も争っていない。)。 ⑴ 被告人のインターネット検索履歴 被告人は、インターネットにおいて、令和3年7月12日「塩化カリウム致死量」等、同年8月2日「高カリウム血症 被告人も争っていない。)。 ⑴ 被告人のインターネット検索履歴 被告人は、インターネットにおいて、令和3年7月12日「塩化カリウム致死量」等、同年8月2日「高カリウム血症心停止」「高カリウム血症心停止解剖でわかる?」「司法解剖カリウム」等、同月17日には「塩化カリウム注射」「塩化カリウム製剤死ぬ」等を検索した。 ⑵ 被告人が薬剤科保管庫から塩化カリウム10本を窃取した状況等被告人は、令和3年9月10日の勤務中、職場である病院の薬剤科保管庫に薬を取りに行くように指示を受けた際、塩化カリウム10本を同病院長に無断で持ち出し、自宅に保管した。そのほかにも、同年11月15日及び16日、被告人方から、被告人が同病院から持ち出した注射針、延長チューブ付き三方活栓、輸液セット、その他薬剤等が発見された。 被告人が看護師として勤務していた病院では注射針やシリンジが保管されていたが、使用した数を記録することはしていなかった。このため、同病院で勤務する看護師であれば、注射針やシリンジを持ち帰ることは容易であった。 ⑶ 塩化カリウムについて塩化カリウムそれ自体は劇薬ではないが、希釈して用いることが前提となっており、被告人が窃取した塩化カリウムキットを希釈せずに、短時間で静脈注射をした場合、心停止によって死に至る危険性が高い。 ⑷ 令和3年8月21日頃及び同年9月11日頃に被告人がBにリスペリドンを摂取させていること被告人は、リスペリドンの錠剤4、5錠とグリメピリドの錠剤1、2錠をそれぞれ砕いて粉状にした上で、令和3年8月21日頃と同年9月11日頃の2回に分けて、コーヒー牛乳に混入させてBに提供して飲ませ、Bに体調不良を起こさせた。 2 争点③(殺意の有無)について被告人及びBはいずれも塩化カリウ 令和3年8月21日頃と同年9月11日頃の2回に分けて、コーヒー牛乳に混入させてBに提供して飲ませ、Bに体調不良を起こさせた。 2 争点③(殺意の有無)について被告人及びBはいずれも塩化カリウムの処方を受けていなかったことに照らせば、被告人において、加害目的で人体に投与すること以外に、塩化カリウムを持ち出す合理的理由は見当たらないというべきである。その上で、被告人が、塩化カリ ウムを持ち出す前に、塩化カリウムの致死量やその注射に関わること、高カリウム血症で心停止となった場合に解剖でその原因が判明するかなどにつき、約1か月間にわたり複数回検索していたことからすれば、被告人は、塩化カリウムの危険性及び投与方法のみならず、これを殺害に用いた場合における犯行発覚リスクに関心を抱いていたものということができる。また、被告人は上記のとおり令和3年8月26日頃及び本件翌日である同年9月11日頃にも、職場から持ち出したリスペリドンやグリメピリドをBに摂取させて体調不良を起こさせており、上記2回にわたる摂取の間で塩化カリウムを持ち出していることからすれば、リスペリドン等と同様に、被告人はBへの加害目的で持ち出したことが推認される。そのような被告人が、それらの検索と近接した時期に塩化カリウムを持ち出し、自宅に保管していたことからすれば、被告人がBを殺害する目的で塩化カリウムを持ち出したことが強く推認される。したがって、被告人が塩化カリウムを無断で持ち出した時点で、被告人はBを殺害しようと考えていたものと認めるのが相当であり、殺意が認められる。 これに対し、被告人は、公判廷において、塩化カリウムを持ち出したのは、Bの殺害に用いるためではなく、Bに対して精神的な意味で対等になり、強い気持ちになれると思ったためである旨供述する。必ずしもその これに対し、被告人は、公判廷において、塩化カリウムを持ち出したのは、Bの殺害に用いるためではなく、Bに対して精神的な意味で対等になり、強い気持ちになれると思ったためである旨供述する。必ずしもその趣旨は明らかではないが、上記のとおり塩化カリウムを自宅に持ち帰っても被告人には殺害に用いる以外の用途は見当たらない上、Bに対する立場を高めるということは、いざとなれば塩化カリウムをBに投与することも含意していると解されることからして、殺害目的ではなかったという被告人の上記供述は信用できない。 3 争点④(予備行為該当性)について塩化カリウムは希釈しないまま短時間で静脈注射した場合、死の危険を生じさせるものであることは前記認定のとおりである上、被告人が看護師であるが故、静脈注射を行う技術を有し、シリンジや注射針はいつでも被告人が職場から持ち出せる立場にあったこと、持出し時期は明らかではないものの、現に被告人方からは複数の注射針が押収されていることを併せ考えれば、そのような被告人が、人に投与し て殺害する目的で塩化カリウムを持ち出していた以上、被告人が塩化カリウムを持ち出した時点で、塩化カリウムを静脈注射することを決意すればいつでも実行できる状態になったといえ、殺人に至る客観的実質的危険性は生じていたものと認められる。したがって、被告人が塩化カリウムを無断で持ち出したことは、殺人の予備行為に該当するというべきである。 4 結論その他、弁護人の主張を検討しても、上記認定を左右するものはなく、判示第2のとおり、殺人予備罪が成立する。 第4 結論以上の次第で、当裁判所は判示の各事実を認定した。 なお、被告人は、判示第2の殺人予備の後、判示第3のとおりBに対する殺人も行っているものの、それらの間には約2か月もの時間的間 第4 結論以上の次第で、当裁判所は判示の各事実を認定した。 なお、被告人は、判示第2の殺人予備の後、判示第3のとおりBに対する殺人も行っているものの、それらの間には約2か月もの時間的間隔がある上、殺人予備では塩化カリウムの静脈注射による殺害を企図していた一方、殺人ではロープによる絞殺を実行したことからすれば、両者は別個の犯意に基づいて行われたものと認められ、それぞれ別罪を構成すると判断した。 (量刑の理由)本件は、被告人が、妻に睡眠薬を摂取させその自動車の運転を制止しなかった不作為による殺人未遂1件、妻を殺害するために塩化カリウムを持ち出した殺人予備・窃盗1件並びに妻及び長女を絞殺した殺人2件の事案である。 まずもって、2名の尊い生命が奪われたという結果は誠に重大である。妻は、婚姻後、間もなくして被告人による不倫や預金の使い込みがありながらも、変わらず夫婦であり続けようとし、長女の誕生後はひたむきに育児に励みつつ、新居で被告人と共に新生活を始めた矢先、被告人に裏切られ、最期は長女の目の前で命を奪われた。愛する我が子を育てることも、その成長を見届けることもできないまま命を奪われた無念さは察するに余りある。長女は、当時1歳になったばかりで、周囲から愛され、本来父親である被告人に庇護されるべき立場にあったのに、その被告人 から突然殺害されたものである。妻の悔しさ、無念さ、悲しさ、絶望は筆舌に尽くし難いものといえるし、長女の死も痛ましいというほかない。 殺害の態様は、ロープを用いて2名を手早く絞め殺すというものであった。すなわち、被告人は、まず妻に対して、背後から近づいて突如首にロープをかけ、これを外そうともがく妻の抵抗を排して2、3分絞め上げ、ぐったりとして鼻から血が出ていたにもかかわらず、手が震えているよう すなわち、被告人は、まず妻に対して、背後から近づいて突如首にロープをかけ、これを外そうともがく妻の抵抗を排して2、3分絞め上げ、ぐったりとして鼻から血が出ていたにもかかわらず、手が震えているように見えたため、まだ息があると考え、再度首を絞め上げて、完全に動かなくなったことを確認した。続けて、妻を起こすようにその肩辺りをたたく長女を見て、その首にロープをかけて絞め始め、眼前で苦しそうに泣く姿にも構わず2、3分間力を緩めず絞め続けた結果、泣くこともできなくなってぐったりとしたにもかかわらず、鼻提灯が膨らんでいるのを見てまだ息があると考え、再度首を絞め上げて、完全に動かなくなるまで続けていた。いずれも一度目に相応の時間を掛けて首を絞め上げているにもかかわらず、僅かでも生きている可能性を認識するや再度絞め上げて息の根を止めたのであり、強固な殺意に基づく極めて悪質なものといわなければならない。絞殺するため事前にロープを購入したり、窒息死に至る時間や血痕の拭い方を事前に検索するなど、犯行は計画的である上、殺害後は稚拙ながらも妻による無理心中に見せかけるため、妻の携帯電話機を用いて遺書を作成したり、ロープを現場に垂らしておくなどの偽装工作も行っており、犯行後の情状も相当悪い。 殺害に至る経緯をみると、被告人は、令和3年3月末には、妻に睡眠薬を摂取させ、未必的でありながらも殺意をもって、その運転を制止せず被害者らを死の危険にさらす殺人未遂を犯し、同年9月には、妻を殺害するために塩化カリウムを職場から持ち出す殺人予備・窃盗を犯した末、同年11月、計画的に妻及び長女の殺害を実行した。少なくとも妻に対しては、徐々に殺害への意欲を高める中で都度殺意を生じ、遂には殺害を実現したものといえ、殺害への執拗さが目に余る。妻殺害の動機は、不倫相手との関係に居心地の び長女の殺害を実行した。少なくとも妻に対しては、徐々に殺害への意欲を高める中で都度殺意を生じ、遂には殺害を実現したものといえ、殺害への執拗さが目に余る。妻殺害の動機は、不倫相手との関係に居心地の良さを覚え、仲が深まっていく一方で、不倫や使い込みが発覚して家庭内で肩身の狭さを覚えるようになった結果、妻への不満 が高まったが故のものといえる。自身の非を棚上げにした極めて自己中心的で身勝手なものというほかない。長女殺害に関しても、不倫相手との関係性の高まりが背景にあったといえ、妻の殺害を目撃され、恐怖を覚えたことにも動機の一端があるとしても、これまた誠に身勝手である。他方で、いうまでもなく、被害者らには何らの落ち度もない。経緯や動機に酌むべき点は皆無である。また、看護師である被告人が、その知識、技術及び立場を悪用し、本来治療目的で使うはずの薬剤等を利用して殺人未遂及び殺人予備等の各犯行に及んだことも強い非難に値する。 以上によれば、被告人の刑事責任は極めて重大である。その上で、同種事案(処断罪が殺人、動機が男女関係又はその他家族関係、処断罪と同一又は同種の罪の件数が2~4件)の量刑傾向をみると、その多くが無期懲役刑に処せられた事案である。本件では被害者に落ち度は皆無であり、有期懲役刑に処せられた同種の事案に見られるような事情は本件には見当たらない。 以上のほか、被告人は、勾留中、被害者遺族に対する謝罪文を作成する傍らで、不倫相手に対し恋文を送っていたほか、公判廷において、2名殺害の事実自体は認めつつも、殺人未遂及び殺人予備等に関しては不合理な弁解を繰り返し、自己の責任を矮小化しようとする態度に終始しており、自己の犯した罪の重大さに真摯に向き合っているとも言い難い。被害者参加人を含む被害者遺族は、理不尽な経過で愛する家族2名 は不合理な弁解を繰り返し、自己の責任を矮小化しようとする態度に終始しており、自己の犯した罪の重大さに真摯に向き合っているとも言い難い。被害者参加人を含む被害者遺族は、理不尽な経過で愛する家族2名を奪われたことはもとより、このような犯行後の著しく不誠実な態度や公判における身勝手な言動によりその心情は踏みにじられている。妻の実母は被告人に対して二度死んでほしいと悲痛な心境を述べており、遺族が極刑を求めるのも至極当然である。 先にみた犯情の悪質さを主としつつ、このような事情も踏まえれば、被告人の父が被害者遺族に合計390万円の被害弁償をしていること、被告人の父が出廷し今後も被告人に関わっていく旨述べていること、被告人が2名殺害の事実自体は認めていること、前科前歴がないことなど、被告人に有利な事情を最大限考慮しても、本件に関しては、有期懲役刑を選択すべきとは到底いえず、被告人を無期懲役刑に 処することが相当である。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑無期懲役、主文掲記の没収)令和6年12月4日新潟地方裁判所刑事部裁判長裁判官小林謙介裁判官塚本友樹裁判官池田弘毅
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